JP3722435B2 - 発泡断熱シートと発泡断熱容器、およびその製法 - Google Patents

発泡断熱シートと発泡断熱容器、およびその製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、主に原紙の水分を用いて発泡させた発泡セル群をバキュームで真空吸引してなる発泡断熱シートと発泡断熱容器、およびその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原紙を基材とした断熱カップにおいて、基材に積層したラミネートフィルムを発泡させて触感の良さと断熱性を兼ね備えさせる構造が種々提案されている。
例えば、特開昭57−110439号では、紙の中に含まれている水分が加熱により気化し、この気化した水分を発泡材として用いて、ポリエチレンフィルム等のような熱可塑性合成樹脂を発泡させる構造が開示されている。
しかし、この方法では、発泡高さが限られてしまい、加熱時間を長くしても発泡高さを高くできない欠点があった。
一方、特開昭61−246041号では、発泡シートと多数の通気用小孔を貫通形成した板紙とを、多数の部分的接着剤で一体接合した複合シートを形成し、この発泡シートを加熱し軟化した後に部分的接着部以外の位置で発泡シート側から真空吸引することによって発泡シートを成型金型に沿って膨出成形して、発泡シートに膨出凸部を形成している。
この場合は、軟化した発泡シートを部分的接着部以外で吸引して膨出させる構成となっており、手間がかかると共に、膨出部分が大きく張り出して形成されるので、カップなどには適さず感触のよい発泡面を形成することは困難であった。
また、本出願人は、別の方法として特開2000−177039で、板紙にシリコンオイル等の接合阻止剤をスポット状に塗布し、その上にラミネートフィルムを接合し、前記ラミネートフィルムの接合された面を加熱した後、ラミネートフィルムの接合阻止剤が塗布された部分を真空吸引により膨出させた発泡構造を提案し、相応の成果を挙げている。
この構造では、接合阻止剤が板紙にスポット状に塗布されているので、加熱で可塑化したラミネートフィルムを上記塗布部分で真空吸引により引き延ばして膨出させ発泡部としているので、発泡部は散点状に配置され隙間無く連続させた発泡面を形成することはできない。
【0003】
本出願人は、上記事情に鑑みて研究の結果、原紙の水分を発泡剤として合成樹脂フィルムを発泡させて、発泡セルが隙間無く連続する発泡面を形成すると共に、この発泡面を真空吸引して発泡高さを可及的に高く且つ均一にする構成について開発を行った。
即ち、前述の特開昭57−110439号の水分発泡のように、原紙の中に含まれている水分を加熱により気化し、この気化した水分を発泡材としてポリエチレンフィルム等のような熱可塑性合成樹脂を発泡させる。
この発泡面を形成する合成樹脂フィルムは、ポリエチレンが好ましいが、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ナイロンなどのような熱可塑性のフィルムが用いられる。
原紙は、100g/m〜400g/m位の坪量のものが用いられ、約2〜10%、好ましくは4.5〜8%程度の含水率を有するものが使用される。
発泡のための加熱温度は、一般には、約110℃〜約200℃の範囲内であるが、使用する原紙および熱可塑性樹脂フィルムの種類により適宜決定される。
実験によると、低密度ポリエチレンの場合、加熱温度を135℃とし、加熱時間を90秒とした場合は8倍の発泡倍率を得たが、加熱時間を5分とすれば、発泡高さを15倍程度に大きくできることが確認された。
ここで加熱温度を上げると、原紙中の含水分は減少するが、発泡倍率は低下した。
これは樹脂温度が融点を大きく超えて発泡セルが破れることと、樹脂の強度が低下して、冷却時に発泡セルが収縮しているものと推測される。
このように原紙中の水分を利用した発泡の場合、一時的に発泡倍率を大きくできるが、冷却時に発泡セルが収縮してしまい、発泡高さを維持することができないという致命的な欠点があった。
これに関して、冷却時における発泡セルの収縮を防止するため、急冷することにより発泡セルの強度を大きくする方法が考えられる。
そこで、水冷、および−5℃の急冷を行ったが、発泡高さを高く維持することはできなかった。
次に、冷却時に発泡面を負圧にして発泡セルの収縮を抑える方法を試みた結果、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせると共に、隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って、見かけの発泡高さを高く均一に維持することができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の主たる課題は、主に原紙に含有する水分を利用して合成樹脂フィルムを発泡させ、冷却時に発泡セルを真空吸引し、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせて分離した状態とし、隣接する発泡セル同士を一体にくっつけ合って、見かけの発泡高さを均一に維持することができるようにしたことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、請求項1の発泡断熱シートの発明では、
原紙に合成樹脂フィルムを積層したシートを加熱し、主に原紙に含有する水分を用いて合成樹脂フィルムを発泡させて発泡セル群からなる発泡面を形成し、該発泡面の少なくとも一部を前記発泡面と金型に設けた吸引面との間に発泡セルを吸引するための隙間が生じるように大きさが設定された金型で真空吸引して、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせると共に、隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って見かけの発泡高さを均一にしてなる、という技術的手段を講じている。
請求項2の発明では、前記発泡面が、シートの一部に形成されている、という技術的手段を講じている。
請求項4の発泡断熱容器の発明では、
前記請求項1、2または3に記載の発泡断熱シートを、少なくとも容器の胴部に用いてなる、という技術的手段を講じている。
また、請求項5の発泡断熱容器の発明では、
発泡面を少なくとも胴部に有する発泡断熱容器であって、
原紙の少なくとも一方の面に合成樹脂フィルムを積層すると共に、他方の面もラミネートした上記胴部ないし容器を加熱し、主に原紙に含有する水分を用いて前記合成樹脂フィルムを発泡させて発泡セル群からなる発泡面を形成し、該発泡面の少なくとも一部を前記発泡面と金型に設けた吸引面との間に発泡セルを吸引するための隙間が生じるように大きさが設定された金型で真空吸引して、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせると共に、隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って見かけの発泡高さを均一にした、という技術的手段を講じている。
また、請求項6の発明では、前記発泡面が、胴部の一部または容器の一部に形成されている、という技術的手段を講じている。
また、請求項3および請求項7の発明では、前記請求項1または2および請求項5または6の発明で真空吸引を行う際に、発泡面に均等な吸引力が作用するように、発泡面が形成されたシートを金型内の所定位置で動いたり変形したりしないように拘束する拘束手段を設けてなる、という技術的手段を講じている。
次に、請求項8の発泡断熱シートの製法の発明では、
原紙に合成樹脂フィルムを積層したシートを加熱し、主に原紙に含有する水分を用いて合成樹脂フィルムを発泡させて連続する発泡セル群からなる発泡面を形成させる工程と、
該発泡面の少なくとも一部を前記発泡面と金型に設けた吸引面との間に発泡セルを吸引するための隙間が生じるように大きさが設定された金型で真空吸引して、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせると共に隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って見かけの発泡高さを均一にした工程とからなる、という技術的手段を講じている。
また、請求項10の発泡面を少なくとも胴部に有する発泡断熱容器の製法の発明では、
高発泡面を少なくとも胴部に有する発泡断熱容器の製法であって、
原紙の少なくとも一方の面に合成樹脂フィルムを積層すると共に、他方の面もラミネートした上記胴部ないし容器を加熱し、主に原紙に含有する水分を用いて前記合成樹脂フィルムを発泡させて発泡セル群からなる発泡面を形成する工程と、該発泡面の少なくとも一部を前記発泡面と金型に設けた吸引面との間に発泡セルを吸引するための隙間が生じるように大きさが設定された金型で真空吸引して、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせると共に、隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って見かけの発泡高さを均一にする工程とからなる、という技術的手段を講じている。
請求項9および11に係る発明では、前記請求項8および10の発明で真空吸引を行う際に、発泡面に均等な吸引力が作用するように、発泡面が形成されたシートを金型内の所定位置で動いたり変形したりしないように拘束する工程を設ける、という技術的手段を講じている。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の発泡断熱シートと発泡断熱容器、およびその製法の好適実施例について説明する。
発泡断熱シート1は、従来の水分発泡で用いられる構成と同様であり、図1に示すように、基材となる中層に原紙3を用い、発泡面には点線で図示した低密度ポリエチレンなどの合成樹脂フィルム2を積層し、内層には発泡しにくい合成樹脂フィルムやアルミ箔などのラミネートフィルム4が用いられる。
この発明で、上記水分発泡は、原紙に含有される水分が主に用いられるが、例えば、前記シート1にインクが塗布されている場合や、保水性物質が付加されている場合などは、これらの水分が共に用いられて水分発泡が行われる場合も含む。
【0007】
また、前記シート1は、予め上記のように積層されたラミネートシートとして構成されている場合に限らず、容器状に形成された後に、内外層のいずれか一方、または双方のフィルムが一体に積層されて三層構造が完成するものでもよい。
要するに、前記ラミネートシートを加熱する際に、原紙3の両面がラミネートフィルム等で覆われていればよい。これは、加熱時に原紙の一面が露出していると水分が直接大気に蒸散してしまうからである。
【0008】
なお、この発明では、合成樹脂フィルムの発泡体の1単位を発泡セル20とし、この発泡セル20が連続して密集している状態を発泡セル群21とし、発泡セル群21が面状に形成されている状態を発泡面22とする。
本実施例では、水分発泡により成形された発泡セル20は、真空吸引によって更に高さ方向に引き延ばされて完成された発泡セル20となるが、この発明では水分発泡により成形された発泡セル20と、真空吸引された発泡セル20とが実質的に高さが変わらない場合、即ち、水分発泡後の収縮を真空吸引で抑えたものであってもよい。
【0009】
また、上記水分発泡のための加熱工程とバキュームによる真空吸引工程とは、加熱工程の次に真空吸引工程が行われるもの、あるいは加熱工程中に真空吸引工程が行われるものに限らず、この発明では、前記加熱工程と真空吸引工程とが同時に行われるもの、更には、真空吸引工程のなかで、加熱工程を行う場合も含むものとする。
【0010】
次に、サンプルを用いた実験例を基に説明する。
本実施例では、サンプルは、コップ状の断熱紙容器の胴部を構成するシートとした。
この胴部のシートは、基材となる中層に坪量250g/mの原紙3を使用し、発泡面となる外層2には50μmの低密度ポリエチレンを積層し、内層4に18μmの低発泡の合成樹脂フィルムを使用した3層構造からなっている。
【0011】
加熱方法としては、恒温加熱装置のスーパーテンプオーブンSTPH−200(タバイエスペック(株)製)を使用し、風速はLOWとし、ダンパを全開し、ギアモータを使用して、サンプルを試料枠上に載せて回転させながら均等に加熱し、外層を発泡させた。
【0012】
サンプル1では、135℃で90秒加熱した。
サンプル2では、165℃で45秒加熱した。
サンプル3では、165℃で90秒加熱した。
対照品では、135℃で90秒加熱した。
【0013】
上記のように発泡させた後に、バキュームを用いて真空吸引を以下のように行った。
加熱後、前記オーブンから取り出してからすぐに、バケット状のバキューム用金型に入れ、発泡面に負圧をかける。
本実施例で、金型は、発泡面を有するシート、即ち、カップ状の容器の胴部を真空吸引するためのものであり、カップ状の容器は、拘束手段によってその中心線を金型の中心線と同軸上に固定されるようにセットされる。
【0014】
この拘束手段は、金型内周面から突出して発泡面側と衝合するもの、あるいは発泡面の裏面側を固定するもの、あるいはシートの端部を固定するものなど、どのような方法が用いられてもよい。
そして、金型は、カップ状の容器の発泡面と、金型の吸引面との間に収縮した発泡セルを吸引するための隙間が生じるように内周面の大きさが設定されている。
【0015】
サンプル1では、縦リブ12を拘束手段としてバケット状の金型10(図2参照)の内面に設けている。
縦リブ12は、胴部の外周方向に沿って等間隔(一例として2mmピッチ)に配置されており、その先端が発泡面に衝合している。
そして、サンプル1の発泡面が形成された容器を上記縦リブ12で固定し、真空吸引によって51kpa の負圧を10秒かけた。
この際に、縦リブ12は前記容器が金型内で僅かでも動いたり変形したりすることがないように固定しており、縦リブ12の押圧でこれと衝合する発泡セル群が押し潰されて扁平な面となり、縦リブ12の当たらない面の発泡セル群が真空吸引される。
【0016】
発泡の際に、発泡セル群の各発泡セルの発泡倍率にはバラツキが生じるが、発泡セルの真空吸引により、図1に示すように、発泡セル群の中の発泡倍率の低い発泡セルを原紙から浮き上がらせて分離した状態となり、発泡倍率の高い発泡セルは原紙に一体に接合した状態となり、これら隣接する発泡セル同士は一体にくっつき合う。
これにより、発泡セル群は、高倍率で発泡した発泡セルの実際の発泡高さと、これより低い倍率で発泡した発泡セルの見かけの発泡高さが全て同じ高さとなるので、発泡面の上面が均一に揃い凹凸が生じないので美感に優れる。
【0017】
サンプル2では、発泡面に対して衝合するリング状の横リブ13(図3参照)を拘束手段としてバケット状の金型10の内面に上下多段に設け、発泡面が形成された容器を上記横リブ13で固定し、真空吸引によって67kpa の負圧を10秒かけた。
この場合も、横リブ13は前記容器が金型内で動いたり変形したりしないように固定しており、横リブ13の押圧でこれと衝合する発泡セル群が押し潰されて扁平な面となり、横リブ13の当たらない面の発泡セル群が真空吸引される。
また、この場合も同様に、発泡セルの真空吸引により、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせて、隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って、発泡セル群の均一な見かけの発泡高さを維持することができる。
【0018】
サンプル3では、上記リブを設けないバケット状の金型10(図4の下方部分のみ)に入れて、真空吸引で67kpa の負圧を10秒かけた。
この場合、金型内にリブ等の発泡面が形成されたシートを固定する拘束手段は設けなかった。
対照品では、前記真空吸引を行わなかった。
【0019】
上記のようにして構成された発泡断熱容器を、マイクロスコープで断面観察し、発泡高さを4個所測定し平均値を求めた。
対照品では、発泡高さの平均値は283μmであった。
サンプル1では発泡セルの上端の平均値は967μmであり、発泡倍率が約20倍であった。
【0020】
この断面は図1に模式的に示している。20は無数に形成された発泡セルであって、一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせて離れており、発泡セル相互は密着し一体にくっつき合って発泡面の高さを維持している。また、21は浮き上がり部分に生じる空隙部である。
なお、サンプル1と同一条件で、加熱時間を70秒とした場合の平均値は870μm、90秒では1001μmとなった。
サンプル2では平均値は859μmであった。
サンプル3では平均値は400μmであった。
【0021】
これにより、加熱後直ちに発泡面をバキュームし、発泡セルを吸引することにより、発泡セルは冷却によって収縮することがなく、また水分で発泡させるだけの場合に比べて発泡高さを極めて大きくすることが確認できた。
また、発泡面の真空吸引は加熱後に行う場合を例示したが、加熱中に行う場合であってもよく、負圧の大きさや吸引時間は最適値を実験的に定めることができる。
【0022】
また、前述のように、発泡面を有する容器、またはシートが吸引時に金型内で動いたり変形したりして発泡セル群に均等な吸引力を作用させにくい場合には、発泡面に均等な吸引力が作用するように容器、またはシートを所定位置で動かないように固定または拘束して、発泡セルの吸引を行うことが好ましい。
この場合、吸引時において容器(またはシート)の発泡面に対して均一な真空吸引力が作用するので、均質な高い発泡倍率が得られる。
【0023】
サンプル3では、他のサンプル1、2に比べて発泡高さが低かったが、シートが真空吸引によって変形したためであり、金型内でシートを固定するための手段を設ける必要があることが確認された。
この場合、例えば図4の上部に示すように、容器形状に形成されたシートを、容器の内壁面で固定して、金型10の所定位置にセットしうるようにした固定具14を用いれば、他のサンプルと同様に更に高い発泡倍率を得ることができる。
【0024】
この容器状に形成されたシートを拘束する手段は、前記実施例に限らず、要するに真空吸引時に発泡面が形成されたシートが金型内で移動しないように金型中央の定位置固定するものであればよく、金型と一体に形成されているものでも、あるいは別体に形成されているものでもよく、また接触式でも非接触式でもよい。
更に、容器を外壁面側から定位置に固定したが、内壁側から定位置に固定する手段でもよい。
【0025】
また、前記実施例の縦リブや横リブなどのように、発泡面の一部に押し付けられる衝合面を有する拘束手段を用いる場合は、発泡面で衝合面に対応した個所が押し潰されて凹部となり、真空吸引される個所が相対的に隆起して凸部となるため、この発泡面に凹凸模様を施すことができる。
そこで、模様を星形や幾何図形、その他の所望の形状とする場合に、拘束手段の衝合面の形状を直接に模様の形状として模様を凹部で表現し、あるいは、模様が浮き上がって凸部で表現されるように衝合面の形状を模様の輪郭に沿って窪ませてもよく、またこれらを組合せて表現することもできる。
これにより、真空吸引時に容器やシートを拘束すると同時に、上記拘束手段の衝合面の形状を転写したような凹凸模様を発泡面に形成することが可能となる。
この模様は、発泡面の一部に形成されるもの、あるいは散点状に形成されるものや、エンボス状に形成されるもの、または連続模様のように形成されるものなど、衝合面の形状をデザインすることにより種々の模様を表現することができる。
【0026】
次に、このように成形された発泡セルは、真空吸引によってその形状が維持されるが、発泡セル内の空気が冷却により収縮し、図5に示すように、その先端の緊張が解けて緩やかに撓む。
これにより、完成された各発泡セル20の先端20’が柔らかくなるので、手指で触った感触が優れる。
【0027】
そして、この製法によれば、発泡セルを高倍率で発泡させることができ、触感の優れた発泡断熱シートや発泡断熱容器を得ることができる。
また、加熱時間と、負圧の調整による発泡高さのデータを実験的に得ることにより、発泡面を所望の発泡高さに調整することが可能である。
発泡面を形成する合成樹脂製フィルムに印刷インキを予め塗布しておくことで、発泡面を均一高さとせずに高さ調整を行うこともできる。
また、原紙の水分を用いた発泡に比べて、加熱時間の短縮が図れれると共に、加熱温度を下げることができ、省力化やコストダウンが図れる。
そして、発泡倍率を高くすることができるので、断熱性の向上が図れる。
また、真空吸引を行うので、インキや溶剤などの成型時に生じる各種臭いを同時に吸引し脱臭することができる。
【0028】
上記実施例では、発泡断熱シートをカップ状の容器とした場合を例示したが、容器以外のものであってもよい。
発泡面を形成する面は、原紙の内外面のいずれの側でもよい。
また、発泡、吸引は、予め所定形状に成型してから行うものでも、シートに行った後に、このシートを所望形状に組み立てるものでもよい。
更に、発泡面は、シートや胴部の一部に形成され、または容器に部分的に形成されるようにしたものでもよい。
その他要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、この発明では、原紙に含まれた水分を用いて合成樹脂フィルムを発泡させると共に、発泡セルを真空吸引することにより、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせると共に、隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って高倍率に発泡した発泡セルの発泡高さを維持することができる。
また、吸引に際して、発泡面が形成されたシートや容器を金型内の所定位置で動いたり変形しないように固定、拘束して、発泡面に均等な吸引力を作用させれば、より均質な高い発泡高さを得ることができる。
そして、加熱と真空吸引により発泡面を形成するので、加熱温度を下げたり、加熱時間を短縮することができ、また真空吸引によりインキや溶剤の臭い、樹脂臭やラミ臭などの臭いの脱臭を同時に行うことができる。
このように成形されたより高い発泡高さの発泡面は、断熱性を高めることができる。
また、発泡セルの先端は撓むので触感が良く、また原紙から浮き上がった発泡セルは、空隙部内で変位することができるので、発泡セルに力が加わった際の緩衝力を高め、触感の一層の向上を図ることができ、極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】発泡断熱シートを模式的に示す部分断面図である。
【図2】(a)は内周面にシート固定用の縦リブを有する真空吸引用の金型の平面図、(b)は断面図である。
【図3】内周面にシート固定用のリング状の横リブを有する真空吸引用の金型の断面図である。
【図4】内周面に固定手段を有しない真空吸引用の金型であって、容器の内壁面を固定する固定具を有し、吸引時に内部にセットする金型の断面図である。
【図5】発泡セルの先端の変形を説明する模式図である。
【符号の説明】
1 発泡断熱シート
2 発泡面となる合成樹脂フィルム(外層)
3 原紙(中層)
4 原紙の他方の面に積層される合成樹脂フィルム(内層)
10 真空吸引用の金型
11 真空吸引用のノズル
12 縦リブ
13 横リブ
14 固定具
15 吸引前の発泡断熱容器
20 発泡セル
21 空隙

Claims (11)

  1. 原紙に合成樹脂フィルムを積層したシートを加熱し、主に原紙に含有する水分を用いて合成樹脂フィルムを発泡させて発泡セル群からなる発泡面を形成し、該発泡面の少なくとも一部を前記発泡面と金型に設けた吸引面との間に発泡セルを吸引するための隙間が生じるように大きさが設定された金型で真空吸引して、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせると共に、隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って見かけの発泡高さを均一にしたことを特徴とする発泡断熱シート。
  2. 前記発泡面が、シートの一部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡断熱シート。
  3. 真空吸引を行う際に、発泡面に均等な吸引力が作用するように、発泡面が形成されたシートを金型内の所定位置で動いたり変形したりしないように拘束する拘束手段を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の発泡断熱シート。
  4. 請求項1、2または3に記載の発泡断熱シートを、少なくとも容器の胴部に用いてなることを特徴とする発泡断熱容器。
  5. 発泡面を少なくとも胴部に有する発泡断熱容器であって、
    原紙の少なくとも一方の面に合成樹脂フィルムを積層すると共に、他方の面もラミネートした上記胴部ないし容器を加熱し、主に原紙に含有する水分を用いて前記合成樹脂フィルムを発泡させて発泡セル群からなる発泡面を形成し、該発泡面の少なくとも一部を前記発泡面と金型に設けた吸引面との間に発泡セルを吸引するための隙間が生じるように大きさが設定された金型で真空吸引して、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせると共に、隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って見かけの発泡高さを均一にしたことを特徴とする発泡断熱容器。
  6. 前記発泡面が、胴部の一部または容器の一部に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の発泡断熱容器。
  7. 真空吸引を行う際に、発泡面に均等な吸引力が作用するように、発泡面が形成されたシートを金型内の所定位置で動いたり変形したりしないように拘束する拘束手段を設けてなることを特徴とする請求項5または6に記載の発泡断熱容器。
  8. 原紙に合成樹脂フィルムを積層したシートを加熱し、主に原紙に含有する水分を用いて合成樹脂フィルムを発泡させて発泡セル群からなる発泡面を形成させる工程と、
    該発泡面の少なくとも一部を前記発泡面と金型に設けた吸引面との間に発泡セルを吸引するための隙間が生じるように大きさが設定された金型で真空吸引して、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせると共に隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って見かけの発泡高さを均一にした工程とからなることを特徴とした発泡断熱シートの製法。
  9. 真空吸引を行う際に、発泡面に均等な吸引力が作用するように、発泡面が形成されたシートを金型内の所定位置で動いたり変形したりしないように拘束する工程を設けてなることを特徴とする請求項8に記載の発泡断熱シートの製法。
  10. 発泡面を少なくとも胴部に有する発泡断熱容器の製法であって、
    原紙の少なくとも一方の面に合成樹脂フィルムを積層すると共に、他方の面もラミネートした上記胴部ないし容器を加熱し、主に原紙に含有する水分を用いて前記合成樹脂フィルムを発泡させて発泡セル群からなる発泡面を形成する工程と、
    該発泡面の少なくとも一部を前記発泡面と金型に設けた吸引面との間に発泡セルを吸引するための隙間が生じるように大きさが設定された金型で真空吸引して、発泡セル群の一部の発泡セルを原紙から浮き上がらせると共に、隣接する発泡セル同士が一体にくっつき合って見かけの発泡高さを均一にする工程とからなることを特徴とする発泡断熱容器の製法。
  11. 真空吸引を行う際に、発泡面に均等な吸引力が作用するように、発泡面が形成されたシートを金型内の所定位置で動いたり変形したりしないように拘束する工程を設けてなることを特徴とする請求項10に記載の発泡断熱容器の製法。
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