JP3721587B2 - 密閉型電動圧縮機 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、冷暖房装置、冷蔵庫などの冷却装置に用いる圧縮機、例えばスクロール圧縮機、ロータリー圧縮機のような密閉型電動圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷暖房装置、冷蔵庫などの冷却装置に用いる密閉型電動圧縮機として従来提案されているものについて、図9を参照してその構成を説明する。
【0003】
図9において、圧縮機構部101は、固定渦巻羽根102を有する固定スクロール103、旋回渦巻羽根104を旋回鏡板105の上に形成した旋回スクロール106、および旋回スクロール106の自転を阻止するオルダムリング107とから構成されており、固定スクロール103は、軸受部材108とともに密閉容器109に固定されている。旋回スクロール106の旋回鏡板105において、旋回渦巻羽根104が設けられている面と反対側の面には旋回スクロール軸110が設けられ、この旋回スクロール軸110は、軸受部材108と副軸受部材111とによって回転自在に支持されたクランク軸112の上端に形成された偏芯穴部113に嵌入されている。軸受部材108と副軸受部材111との間には、密閉容器109に固定された固定子114と、クランク軸112に固定されてクランク軸112とともに回転する回転子115とかになる電動機部116が配設されている。
【0004】
密閉容器109の内部は、圧縮機構部101により圧縮された高圧冷媒ガスを吐出する吐出口117が設けられている吐出口側室118と、電動機部116が設置されている電動機側室119とに、圧縮機構部101によって仕切られ、この吐出口側室118と電動機側室119とは、圧縮機構部101に設けた連通口120によって連通されている。
【0005】
以上のように構成されていることにより、吸入管129より吸入された低圧冷媒ガスは圧縮機構部101で圧縮されて高圧冷媒ガスとなり、吐出口側室118へ吐出された高圧冷媒ガスは、連通口120を通過して電動機側室119へ流入し、その主流は矢印のように下向きとなっている。電動機部116の固定子114の外周には、連通口120とほぼ同軸状で密閉容器109に対して上下方向の切欠部121が設けられているので、下向きの高圧冷媒ガスの主流は、この切欠部121を通過して密閉容器109の下部に達し、その後、固定子114の下部を通り、電動機部116の固定子114と回転子115との隙間を通過し、圧縮機構部101の下部に設けられた吐出ガス通路122を通り、最終的には吐出管123より密閉容器109の外部へ吐出される。
【0006】
一方、クランク軸112の下端には潤滑油ポンプ124が設置され、この潤滑油ポンプ124は、クランク軸112の回転に伴って、密閉容器109の底部に設けた潤滑油溜125に溜められている潤滑油を、クランク軸112の中心部に形成した連通路126を経て圧縮機構部101へ汲み上げる。連通路126を経由した潤滑油の大半は、旋回スクロール軸110を潤滑して主軸受127を潤滑したのち、油回収容器128の上部より吐出されて油回収容器128内に回収される。
【0007】
この油回収容器128に回収されて溜められた潤滑油は、クランク軸112に一体に取り付けた釣合をとるための偏芯重り129の回転により撹伴されて遠心力が付与され、この遠心力の作用により、油回収容器128に設けた部屋130へ連通孔131を通って押し出される。ついで、潤滑油はさらにこの部屋130の中を押し上げられ、圧縮機構部101の軸受部材108に設けた排油通路132の中を押し進んだのち、電動機部116の固定子114の外周に設けた切欠部121とほぼ同位相の位置に排出される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の密閉型電動圧縮機にあっては、油回収容器128の底部とクランク軸112との間に間隙133が存在し、しかも偏芯重り129による遠心力は偏芯重り129が存在しない部分では徐々に弱まるので、潤滑油は油回収容器128の内部に逆流し易く、また、偏芯重り129の端面は軸方向に垂直な面で形成されているので、潤滑油ポンプ124から汲み上げる潤滑油が多い場合、偏芯重り129の端面に潤滑油が集まって油回収容器128とクランク軸112との間隙133から下部へ流出し、この流出した潤滑油は、電動機部116の回転子115によって撹伴されて電動機側室119内で多量の油滴となって飛散することがあった。
【0009】
また、圧縮機構部101より吐き出され、連通口120を通って電動機側室119に導入された高圧冷媒ガスは、飛散した多量の油滴と接触してこれを捕集するので、多量の潤滑油を混入した高圧冷媒ガスが、吐出ガス通路122を通って吐出管123より密閉容器109の外部に排出され、この排出された高圧冷媒ガスに混入されている潤滑油が原因となって、冷凍サイクル中における配管圧力の損出が増加し、凝縮器や蒸発器などの熱交換器における熱交換効率の低下を招き、さらに圧縮器の信頼性や成績係数の低下をもたらすという問題点があった。
【0010】
本発明は、潤滑油の飛散、流出を抑制して信頼性、成績係数の高い密閉型電動圧縮機を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の密閉型電動圧縮機においては、密閉容器内に、圧縮機構部およびこの圧縮機構部をクランク軸を介して駆動する電動機部を収納し、上記圧縮機構部の下部には、上記クランク軸に取り付けた偏芯重りおよびこの偏芯重りを囲撓する油回収容器を有する潤滑油回収部を形成し、この潤滑油回収部に、回収した潤滑油を上記油回収容器の外周壁部に移動させる移動手段を設けたものである。
【0012】
また、回収した潤滑油を油回収容器の外周壁部に移動させる移動手段としては、偏芯重りの端面部に、クランク軸の軸方向に対して上方に傾斜する傾斜面を設けたり、偏芯重りの端面部に、クランク軸の半径方向に対して傾斜する傾斜面を設けたり、偏芯重りは中心部よりも外周部を肉厚とし、この偏芯重りの下端面に沿って平行にした底部を油回収容器に設けたり、油回収容器の外周壁部に段部を設けたり、あるいは、油回収容器の外周部と偏芯重りの外端面との間隙部よりも小さい間隙部を、油回収容器の底部と偏芯重りの下端面との間に設けたりして形成することができる。
【0013】
【作用】
上記のように構成された密閉型電動圧縮機にあっては、軸受部分を潤滑、冷却して油回収容器に回収された潤滑油は、クランク軸の回転による偏芯重りの回転に引きずられて移動すると同時に、その遠心力によって油回収容器の外周壁部に向かって移動して潤滑油溜に還流される。一方、偏芯重りが存在しない部分では、潤滑油の回転速度が徐々に弱まって遠心力が小さくなるので、油回収容器の外周壁部に移動した潤滑油は油回収容器の内側に向かって逆流してくるが、回収した潤滑油を油回収容器の外周壁部に移動させる移動手段によって、潤滑油は油回収容器の外周壁部に強制的に移動させられるので、油回収容器の底部から電動機部へ流出することはなくなる。
【0014】
また、油回収容器に逆流してきた潤滑油は、偏芯重りの端面部に形成したクランク軸の軸方向に対して上方に傾斜する傾斜面、あるいはクランク軸の半径方向に対して傾斜する傾斜面によって油回収容器の外周壁面の方向に移動させることができる。
【0015】
また、偏芯重りは中心部よりも外周部を肉厚とし、この偏芯重りの下端面に沿う形状の底部を油回収容器に設けると、電動機部と連通している油回収容器とクランク軸との隙間は、高い位置となって潤滑油が流出し難くなり、外周壁面に集まり易くなる。
【0016】
さらに、油回収容器の外周壁部に形成した段部に潤滑油が溜まって電動機部に流出し難くなり、また、油回収容器の外周部と偏芯重りの外端面との間隙部よりも小さい間隙部を、油回収容器の底部と偏芯重りの下端面との間に形成すると、油回収容器の底部に存在する潤滑油に遠心力が作用し易くなり、潤滑油が流出し難くなる。
【0017】
【実施例】
本発明の密閉型電動圧縮機について、密閉型電動スクロール圧縮機を実施例として図1ないし図8を参照して説明する。
【0018】
図1において、圧縮機構部1は、固定渦巻羽根2を有する固定スクロール3、旋回渦巻羽根4を旋回鏡板5の上に形成した旋回スクロール6、および旋回スクロール6の自転を阻止するオルダムリング7とから構成されており、固定スクロール3は、軸受部材8とともに密閉容器9に固定されている。旋回スクロール6の旋回鏡板5において、旋回渦巻羽根4が設けられている面と反対側の面には旋回スクロール軸10が設けられ、この旋回スクロール軸10は、軸受部材8と副軸受部材11とによって回転自在に支持されたクランク軸12の上端に形成された偏芯穴部13に嵌入されている。軸受部材8と副軸受部材11との間には、密閉容器9に固定された固定子14と、クランク軸12に固定されてクランク軸12とともに回転する回転子15とかになる電動機部16が配設されている。
【0019】
密閉容器9の内部は、圧縮機構部1により圧縮された高圧冷媒ガスを吐出する吐出口17が設けられている吐出口側室18と、電動機部16が設置されている電動機側室19とに、圧縮機構部1によって仕切られ、この吐出口側室18と電動機側室19とは、圧縮機構部1に設けた連通口20によって連通されている。
【0020】
以上のように構成されていることにより、吸入管29より吸入された低圧冷媒ガスは圧縮機構部1で圧縮されて高圧冷媒ガスとなり、吐出口側室18へ吐出された高圧冷媒ガスは、連通口20を通過して電動機側室19へ流入し、その主流は矢印(図1参照)のように下向きとなっている。電動機部16の固定子14の外周には、連通口20とほぼ同軸状で密閉容器9に対して上下方向の切欠部21が設けられているので、下向きの高圧冷媒ガスの主流は、この切欠部21を通過して密閉容器9の下部に達し、その後、固定子14の下部を通り、電動機部16の固定子14と回転子15との隙間を通過し、圧縮機構部1の下部に設けられた吐出ガス通路22を通り、最終的には吐出管23より密閉容器9の外部へ吐出される。
【0021】
一方、クランク軸12の下端には潤滑油ポンプ24が設置され、この潤滑油ポンプ24は、クランク軸12の回転に伴って、密閉容器9の底部に設けた潤滑油溜25に溜められている潤滑油を、クランク軸12の中心部に形成した連通路26を経て圧縮機構部1へ汲み上げる。連通路26を経由した潤滑油の大半は、旋回スクロール軸10を潤滑して主軸受27を潤滑したのち、油回収容器28の上部より吐出されて油回収容器28内に回収される。
【0022】
この油回収容器28に回収されて溜められた潤滑油は、クランク軸12の回転時の釣合をとるためにクランク軸12に一体に取り付けられ、油回収容器28により囲撓されている断面半円形の柱状の偏芯重り29(図3参照)の回転により撹伴されて遠心力が付与され、この遠心力の作用により、油回収容器28に設けた部屋30へ連通孔31を通って押し出される。ついで、潤滑油はさらにこの部屋30の中を押し上げられ、圧縮機構部1の軸受部材8に設けた排油通路32の中を押し進んだのち、電動機部16の固定子14の外周に設けた切欠部21とほぼ同位相の位置に排出されて潤滑油溜25に還流される。なお、33は偏芯重り29の端面部に形成した傾斜面で、クランク軸12の軸方向に対して上方に傾斜している。
【0023】
油回収容器28部分の模式図を示す図2および図2におけるA−A線断面図を示す図3を参照して油回収容器28内での潤滑油の動きについて説明する。なお、点Pは運転中の潤滑油の位置を示している。
【0024】
偏芯重り29と油回収容器28との間に存在する潤滑油Mは、クランク軸12の回転による偏芯重り29の回転に引きずられて移動すると同時に、その遠心力によって油回収容器28の外周壁部に向かって移動し、連通孔31より油回収容器28の部屋30に導入される。一方、偏芯重り29が存在しない部分34では、潤滑油Mの回転速度が徐々に弱まって遠心力が小さくなるので、油回収容器28の外周壁部に移動した潤滑油Mは油回収容器28の内側に向かって逆流してくる。この逆流してきた潤滑油Mは、偏芯重り29の端面部に当たると、傾斜面33の存在により、油回収容器28とクランク軸12との間隙35から電動機部16に流出することなく、クランク軸12の回転により、上記傾斜面33に沿って上方に移動して偏芯重り29の部分に集合するので、再び偏芯重り29によって遠心力が付与されて油回収容器28の外周壁部に移動する。
【0025】
したがって、回転子15による潤滑油Mの飛散は防止され、排出する高圧冷媒ガスの中に混入される量も少なくなり、排出された高圧冷媒ガスに混入されている潤滑油が原因で惹起される冷凍サイクル中における配管圧力の損出、凝縮器や蒸発器などの熱交換器における熱交換効率の低下がなくなり、さらに圧縮機の信頼性や成績係数の低下も起こらなくなる。
【0026】
また、図4および図5に示すように、偏芯重り29は断面扇形の柱状とし、その端面部にクランク軸12の半径方向に対して傾いている傾斜面36を設けることもできる。この場合は、逆流してきて偏芯重り29の端面部に当接した潤滑油Mは、傾斜面36の存在により外側、すなわち油回収容器28の外周の方向に押し出されるので、間隙35より電動機部16に流出することはなくなる。
【0027】
また、図6に示すように、偏芯重り29は断面半円形の柱状とし、クランク軸12側の中心部から外周部に向かって順次肉厚を厚くなるように下端面に傾斜面37を形成し、油回収容器28の底部はこの傾斜面37に沿った円錐状底面38にすると、油回収容器28の底部の形状が中高テーパー状となるので、底部に溜まった潤滑油Mは遠心力によりスムーズに油回収容器28の外周に移動させることができ、さらに間隙35が高い位置にあって潤滑油Mがこの間隙35から流出し難くなっている。なお、油回収容器28の底部は円錐状の例を説明したが、偏芯重り29の下端面を階段状にして肉厚を厚くしても同様の効果が得られる。
【0028】
また、図7に示すように、油回収容器28の外周壁に段部40を設け、偏芯重り29の外周部の上部においては、油回収容器28の内壁との間に比較的大きな間隙部41を形成し、下部においては小さな間隙部42を形成するようにすると、油回収容器28の上部から流れ込んだ潤滑油Mは、段部40にいったん溜められるとともに、下の間隙部42に存在する潤滑油は偏芯重り29による遠心力で段部40に押し上げられる。したがって、間隙35より電動機部16に流出する潤滑油はなくなる。
【0029】
さらに、図8に示すように、油回収容器28の底部と偏芯重り29の下端面との間隙部43は、油回収容器28の外周部と偏芯重り29の外端面との間隙部44よりも小さくすることもできる。この場合には、外側の間隙部43に大きな遠心力が働くので、下側の間隙部42から間隙35を経て電動機部16に潤滑油Mが流出する惧れはなくなる。
【0030】
なお、以上説明した偏芯重りと油回収容器とは適宜組み合わせることは可能であり、また以上は密閉型電動スクロール圧縮機の例について説明したが、例えば、密閉型ロータリ圧縮機のような他の密閉型電動圧縮機に適用しても充分な効果が得られる。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、回収された潤滑油が、油回収容器とクランク軸との間隙から電動機部に流出することはなく、クランク軸の回転による遠心力で的確に油回収容器の外周壁面に移動するので、電動機部に流出して惹起される潤滑油の飛散は防止され、排出する高圧冷媒ガスの中に混入される量も少くなり、排出された高圧冷媒ガスに混入されている潤滑油が原因で起こる冷凍サイクル中における配管圧力の損出、凝縮器や蒸発器などの熱交換器における熱交換効率の低下がなくなり、さらに圧縮機の信頼性や成績係数の低下も起こらなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における密閉型スクロール圧縮機の断面図
【図2】同密閉型スクロール圧縮機の油回収部の模式図
【図3】図2のA−A線における断面図
【図4】同密閉型スクロール圧縮機の油回収部の変形例の模式図
【図5】図4のB−B線における断面図
【図6】同密閉型スクロール圧縮機の油回収部の他の変形例の模式図
【図7】同密閉型スクロール圧縮機の油回収部の別の変形例の模式図
【図8】同密閉型スクロール圧縮機の油回収部のさらに別の変形例の模式図
【図9】従来における密閉型スクロール圧縮機の断面図
【符号の説明】
1 圧縮機構部
9 密閉容器
12 クランク軸
16 電動機部
28 油回収容器
29 偏芯重り
33、36、37 傾斜面
38 円錐状底面
40 段部
43、44 間隙部
M 潤滑油
Claims (5)
- 密閉容器内に、圧縮機構部およびこの圧縮機構部をクランク軸を介して駆動する電動機部を収納し、上記圧縮機構部の下部には、上記クランク軸に取り付けた偏芯重りおよびこの偏芯重りを囲撓しつつ隙間を介してクランク軸が貫通する穴を底面に有する油回収容器を備えた潤滑油回収部を形成し、この潤滑油回収部には、潤滑油を上記油回収容器の外周壁部に移動させる移動手段を設けた密閉型電動圧縮機。
- 偏芯重りの回転方向端面部に、クランク軸の軸方向に対して上方に傾斜する傾斜面を設けて移動手段とした請求項1記載の密閉型電動圧縮機。
- 偏芯重りの端面部に、クランク軸の半径方向に対して傾斜する傾斜面を設けて移動手段とした請求項1記載の密閉型電動圧縮機。
- 偏芯重りの底部を中心部よりも外周部が肉厚となる様に形成し、油回収容器の底部を前記偏芯重りの下端面と平行にした請求項1ないし3のいずれかに記載の密閉型電動圧縮機。
- 油回収容器の外周壁部を偏芯重りの外径よりも僅かに大きな内径を有する下段部と、該下段部よりも大きな内径を有する上段部とで構成し、上段部に排油通路と連通する連通孔を設けた請求項1ないし4のいずれかに記載の密閉型電動圧縮機。
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