JP3721573B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置に係わり、特に帯電した色剤粒子を絶縁性液体中に分散させたインクに静電気力を作用させ、色剤粒子を記録媒体に飛翔させて記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ分野では、低価格、低騒音でさらに画質が写真にに迫る画像を得ることが出来るインクジェット記録方式を用いたインクジェットプリンタが広く普及している。しかし、従来のインクジェットプリンタでは、染料系インクを用いていることから、画像の保存性および耐光性が悪いなどの問題点があった。また、さらに、染料系インクは紙に滲みやすいため、写真画質に迫る画像を得るには、専用の記録紙が必要でありランニングコストが高くなってしまうという問題点もあった。
【0003】
これに引き替え、色剤として顔料粒子の使用を可能とし、染料系インクの上記問題点を解決した画像形成装置がWO93/11866号に開示されている。この装置は従来のインクジェットプリンタのような飛翔サイズを決定するノズルがなく、ヘッド基板上にインク飛翔用の吐出電極が設けられており、また、インクは絶縁性溶媒中に帯電した顔料粒子を分散させたものを使用する。そして、対向電極と吐出電極間に電圧が印加されると、溶媒中の帯電された顔料粒子に電界が作用し、吐出電極先端部に多くの顔料粒子が凝集してくる。電圧を更に上げるとインクの溶媒の表面張力よりも静電力が勝り、インクメニスカスの表面から凝集した顔料粒子が飛翔して記録を行う。飛翔の際には少量の溶媒を伴うものの、その飛翔成分のほとんどが顔料粒子であるため、従来のインクジェットプリンタの問題点であった画像の保存性および耐光性などの問題が解決され、さらに、記録媒体である記録紙の制約を受けずに高画質の画像を得ることが可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の帯電した顔料粒子を含むインクを用いるインクジェット記録装置も次の様な問題点が存在する。色剤粒子を飛翔させるための電極は通常、ガラス等の基板上に形成され、この基板にインクが供給される。電極先端が基板端部より内側に形成されている場合、電極先端の電界強度は基板が持つ誘電率の為低下し、電極先端から凝集した色剤粒子を溶媒の表面張力に打ち勝ち対向電極に飛翔させるためには、電極に高電圧を印加する電源が必要であった。また電極先端の電界強度を高くするために電極を基板端部より張り出すと、電極先端の電界強度は高くなるが、電極先端は基板より離れるため、インクは先端に供給されにくくなり、結果として、印加電圧を高くして、電界によりインクメニスカスを電極先端まで引っ張り上げる必要があった。結局、基板の持つ誘電率にため、インク中の色剤粒子を飛翔させるためには必要以上の高電圧を印加しなければならなかった。
【0005】
このように電極に必要以上の高電圧を印加すると、印加した電極の外周の電極に向かって色剤粒子が移動し、末端部で高濃度になり、その状態が維持されると、最悪には高濃度のインク液面が盛り上がり、盛り上がった部分と対抗電極間距離が近くなるため、ここから色剤粒子が飛び出す異常吐出現象を生じる。
【0006】
また色剤粒子が長時間このような強電界の下に置かれると、その色剤粒子は電極との間で帯電電荷の移動を生じ、帯電が消滅することにより電気力では動かすことが不可能となるため、結果として電極に色剤粒子が固着する現象を引き起こす。
【0007】
さらには、基板に供給するインクの供給圧力の変動で電極先端に存在するインクメニスカスが振動し、安定な吐出状態が得られにくいという問題点もある。
【0008】
本発明は、静電力でインク中の色剤成分を凝集し、飛翔させて記録するインクジェット記録装置において、色剤粒子の飛翔電圧を低電圧化することにより、異常吐出防止とインク中の色剤成分が電極に固着することを防止し、あわせてインク圧力変動に対しても安定して記録を行えるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、記録媒体から所定距離離間した位置にインクを吐出させるヘッド基板と、上記ヘッド基板上に設けられた先端が凸形状の複数の電極と、上記電極の近くに設置され電極との間に形成された隙間の毛管作用で電極の先端にインクを導くガイド部材と、帯電した色剤粒子を絶縁性液体中に分散させてなるインクと、上記インクを上記電極へ供給するためのインク供給手段と、上記電極に電圧を印加して電界を形成し、上記電極の先端に色剤粒子を濃縮させるためのバイアス電圧印加手段と、上記電極に上記バイアス電圧より高いパルス電圧を印加して、上記バイアス電圧印加手段にて濃縮された色剤粒子を上記記録媒体に向けて飛翔させるためのパルス電圧印加手段とを備えた構成を採っている。このため、本発明では、ヘッド基板内を流れるインクを電極とガイド部材間に生ずる毛管作用により、電極先端まで安定に導くことが容易にできる。
【0010】
また、電極はヘッド基板の端面から10〜1000μm吐出している構造を採っている。しかし、本発明では、電極がヘッド基板の端面から吐出しているためインクの表面張力が小さくなり、さらに電極先端部での電界強度が高まり、低い印加電圧で凝集した色剤粒子を飛翔させることが出来る。
【0011】
また、電極は、Cu, Cr, Ni, Al, Au, Ti, Ta, Ag, その他の合金を低誘電率材料の上にスパッタ法、電気メッキ法で形成されている構造を採っている。このため本発明では、低誘電率材料の上に電極を形成しているため、電極に発生した電界強度が弱められることがなく、効率良く電界を集中させることができる。また、スパッタ法、電気メッキ法でヘッド基板を形成するため、高解像度、高密度実装のラインヘッドを容易に形成することができる。
【0012】
また、電極の膜厚は、5〜100μmの範囲である構造を採っている。このため本発明では、電極先端の電界を狭い範囲に集中でき、電極先端に凝集したインク中の色剤成分は、同一点から安定に記録媒体に向けて飛翔し、記録媒体に形成されたインクドットは、位置精度、形状精度の良い円形形状となる。
【0013】
また、電極の表面には、薄い絶縁性樹脂が塗布されている構造を採っている。本発明では、樹脂のインクに対する濡れ性が一般的には電極材料の金属材料よりも良いことに着目し、電極とガイド部材で構成される隙間の毛管作用をより強め、電極先端に形成されるインクメニスカスをより安定に出来る。合わせて電極とインクは直に接することはなくなるので、電極先端近傍で色剤成分と電極の間で電荷の移動を生じ色剤粒子の固着を引き起こす現象も無くなる。
【0014】
また、ガイド部材と電極の隙間は、5〜50μmの範囲で、ガイド部材の厚さは5〜500μmの範囲の構造を採っている。このため、本発明では、電極先端部に常に安定したインクを供給し、かつ安定したインクメニスカス形状を確保することができる。
【0015】
また、ガイド部材は電極より5〜50μm短い構造を採っている。このため、本発明では、吐出ポイントを常に電極先端とし、且つ、インクを電極先端まで安定に供給することができる。
【0016】
また、ガイド部材は塗れ性の良い低誘電率材料で形成されている構造を採っている。このため、本発明では、インクの濡れ性が良く、吐出電極先端部まで安定にインクを供給することができる。また、低誘電率材料であるため、電極で発生する電界強度が弱められることがない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態について図1から図7に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施例に係わるライン型インクジェット記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置の概略構成図である。同図においてヘッド基板11は例えばガラス基板などの絶縁性基板であり、このヘッド基板11上に色剤粒子21を飛翔させるための電極40と、電極40に隣接してガイド部材50が形成され、電極40とガイド部材50を覆うようにヘッド基板11の上面に配置されたインクチャンバー80とで記録ヘッド10は構成されている。インクチャンバー80は、その端面がヘッド基板11の端面に揃えられてヘッド基板11上面に接着され、ヘッド基板11とともにインク保持部81を構成している。インクチャンバー80には、インク供給路83とインク排出路84が設けられ、ポンプ91とインクタンク92を含むインク還流機構90が接続されている。このインク保持部81にインク還流機構90から帯電した色剤粒子21を含むインク20が供給される。インク20はプラス耐電性の色剤粒子21を帯電制御剤やバインダとともに108Ωcm以上の体積固有抵抗率を有する絶縁性の溶媒中にコロイド状に分散させ浮遊させたもので、インク保持部81から電極40の吐出ポイント41まで運ばれるとともに、一部がインク排出路83からインク還流機構90に回収される。
【0019】
電極40は、記録解像度に応じた本数だけ設けられ、互いに電気的に絶縁された状態でヘッド基板11の上面に平行に配列されている。また、ガイド部材50も電極40に隣接して同一本数配置されている。
【0020】
なお、本実施例においては、64本の電極40が200μm間隔で配置されている。
【0021】
各電極40は、ヘッド基板11及びインクチャンバー80の端部から張り出しており、先端には電界の集中する凸部が設けられ、ここがインク20の飛翔する吐出ポイント41となる。
【0022】
また、電極40の吐出ポイント41とは反対側の基端部は、インクチャンバー80を貫通してヘッド基板11の上面に露出している。各電極40の基端部には、色剤粒子21と同極性のバイアス電圧印加手段60と、記録信号に応じたタイミングで色剤粒子21と同極性の高電圧パルスをバイアス電圧に重畳して印加するパルス電圧印加手段70が接続されている。電極40の先端部に対向する位置には、各電極との間に電界を形成するために接地された対向電極としての導電性材料からなるプラテンローラ100が設けられている。このプラテンローラ100には記録媒体30としての記録紙が保持される。なお、本実施例においては、電極40の先端部とプラテンローラ100間の距離は1.0mmに設定されている。
【0023】
図2は記録ヘッドの構成を示す一部を切り欠いた斜視図である。同図において電極40が配置されている範囲のヘッド基板11とインクチャンバー80の間には一定間隔の隙間であるスリット82が形成されており、このスリット82を通して電極40およびガイド部材50が、ヘッド基板11およびインクチャンバー80の端部面から突き出している。従って、インク保持部81内のインク20は、このスリット82を通って電極40とガイド部材50に供給され、電極40とガイド部材50とで構成される隙間の毛管現象で素早く電極40の先端部までインク20を導き、各電極40の先端部にインクメニスカスを形成する。なお、本実施例においては、スリット82の隙間間隔は0.4mmに形成した。
【0024】
また本実施ではスリット82部のインクメニスカスを安定に維持し易いように、電極40先端からインク20が飛翔する方向を垂直上向きに記録ヘッド10を配置した。
【0025】
上述した電極40およびガイド部材50は、例えば以下のように形成される。まず、ガラス等の低誘電率で絶縁性を有する基材上面の所定の位置に、ダイシングソーにより溝を形成する。その上に、全面にわたり低誘電率材料であるポリイミドフィルムをラミネーターで張り付ける。このフィルム上にAl等の導電性金属材料をスパッタ法で膜厚5μmに成膜し、フォトレジスト層を塗布して所定の電極パターンを有するフォトマスクを介してフォトレジスト層を露光する。露光後、現像してフォトレジストパターンを形成し、これをエッチングして先端部に凸部を有する電極パターンを形成する。さらにこの上に低誘電率材料であるポリイミドフィルムまたはワニス状ポリイミドで必要とされる厚さの膜を形成し、フォトレジスト層を塗布して、所定のガイド部材パターンを有するフォトマスクを介してフォトレジスト層を露光する。露光後、現像してフォトレジストパターンを形成する。これをドライエッチングにより基材上面までエッチングすることにより、電極とガイド部材が形成できる。次に電極の表面にポリイミド等の絶縁性樹脂をスピンコーティングし、約2μmの皮膜を形成する。最後に、基材の上面に形成した溝の下面をダイシングソーにより切断する。
【0026】
以上のようにして、基材上に電極40とガイド部材50が形成されると、基材上にインクチャンバー80が取り付けられて記録ヘッド10が形成される。
【0027】
なお、本実施形態においては、電極40のヘッド基板11端面からの張り出し量は、200μmとしている。
【0028】
電極40先端の電界強度は強いほど低電圧駆動が可能である。電極40先端の電界強度は誘電率を持つヘッド基板11から離れるほど強くなる。つまり電界強度を強めるためには(1)電極40を構成する低誘電率材料の厚さを厚くする、(2)電極40先端をヘッド基板11端面から張り出す、等の方法が考えられる。(1)の方法は後に詳細説明するように、インクの飛翔ポイントが不安定になったり、飛翔インクが記録媒体に到達する位置精度が低下すること、および低誘電率材料の厚さを厚くすると製造上加工時間がかかるという理由から実用的ではない。(2)の方法について検討するため電極40先端の電界解析を行った計算結果を図3に示す。計算条件は電極40の幅40μm、電極40の厚さ40μm(このうち導電部厚さは20μm)、電極40に印加する電圧1.8kV、ヘッド基板の誘電率ε=7.5である。横軸にはヘッド基板11端部から電極40先端までの張り出し量を、縦軸には電極40先端がヘッド基板11端部に位置したときの電界強度を1とした相対比較電界強度を示す。
【0029】
図3で電極40先端の電界強度は張り出し量が約0.5mmまでは急激に増加し、1mmを超えると増加は緩慢になる。従って本実施例のようなスケールの記録ヘッドでは電極40先端をヘッド基板11端面から張り出すことによって電界強度を強める効果は、張り出し量が1mm以上では少なくなる。また製造上からも電極40の張り出し量を大きくすると、電極40を構成する金属と樹脂材料の線膨張係数の違いにより製造工程途中で電極のそり,曲がり等で不良が発生し易く、また電極40の構造的強度も低下するため歩留まり低下といった不具合を生じる。従ってヘッド基板11端面から電極40先端の張り出し量は好ましくは10〜1000μmであり、より好ましくは100から500μmである。
【0030】
また、電極40は、ポリイミド等の低誘電率材料の上にスパッタでAl膜を形成しているため、電極40で発生する電界強度は弱められることなく、効率良く電界を形成することができる。また、スパッタまたはメッキ法で電極40を形成することは、 金属膜としてCu, Cr ,Ni, Al, Au, Ti, Ta, Ag, その他合金等の中から例えば耐食性、耐エレクトロマイグレーション良好な性質を示すもの、安価なものといった目的に応じた材料を自由に選択することができ、かつ薄膜プロセスを用いることができるため高解像度、高密度実装のラインヘッドを容易に形成することができた。
【0031】
また、電極40は、厚さ35μmのポリイミドフィルム上に膜厚5μmのAlをスパッタ法で形成したもので、電極40としての厚さは40μmである。図4に電極40の厚さと記録媒体30上に形成されたドットの形状の関係を調べた結果を示す。横軸には電極40の厚さを、縦軸には記録媒体30上に形成されたドットの電極厚さ方向のドット径およびそれとは直角方向のドット径を計測した結果を示す。試験条件はバイアス電圧1.5kV,パルス電圧0.3kV、パルス幅0.5msecの一定条件で行った。
【0032】
図4より電極40の膜厚が厚くなると、電極40先端部の吐出ポイント41は厚さ方向に広がり、結果としても記録媒体30上に形成されたドットの形状は厚さ方向に大きい楕円形状となることがわかる。この影響はが100μm以下で小さく、記録媒体30上に形成されるドットも比較的きれいな円形であるが、電極40の膜厚が100μmを超えると記録媒体30上に形成されるドットは電極40の厚さ方向に引き伸ばされた楕円形状となる。また着弾位置の精度を低下させる原因にもなり、画質を低下させる要因となった。この傾向は印加電圧が高いほど顕著であった。
【0033】
製造上からは電極40の膜厚を薄くすると製造工程途中で電極40のそり,曲がり等で不良が発生し易く、また電極40の構造的強度も低下するため歩留まり低下といった不具合を生じる。従って電極40膜厚は好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは10〜60μmである。
【0034】
また、一般的に樹脂のインクに対する濡れ性は金属材料よりも良いことに着目し、電極40表面にポリイミド等の絶縁性樹脂をスピンコーティングにより1〜3μmの厚さで被覆した。この結果、電極40の濡れ性が向上し、電極40とガイド部材50で構成される隙間の毛管作用が強まり、電極40先端に形成されるインクメニスカスをより安定に出来きた。合わせて電極40とインク20は直に接することはなくなるので、電極40先端近傍で色剤粒子21と電極40の間で電荷の移動を生じ色剤粒子21の固着を引き起こす現象も無くなった。また、電極40には数kVの高電圧が印加されるため、特に高密度実装ヘッド基板においては隣接する電極間距離も近いため、インクが無くなって電極が空気中に露出したときに放電により電極40を破壊してしまうなどの問題があり、電極40を樹脂で被覆することでこの問題を解決することもできた。
【0035】
また、上記ガイド部材50と電極40の隙間は15μm として形成している。電極40とガイド部材50で構成される隙間の毛管作用によりインク中の色剤粒子21を電極40先端に導くため、ガイド部材50と電極40の隙間が狭いときは、毛管作用力は大きくなり、電極40先端部にインクを導きやすくなるが、電極40先端部に供給されるインク20中の帯電した色剤粒子21の数は少なく、高い記録周波数においては、色剤粒子21の供給が間に合わなくなり、記録画像にかすれなどの画像不良が生じてしまった。特に隙間が5μm以下の時には、凝集した色剤粒子21がこの隙間に詰まり色剤粒子21が電極40先端部まで到達できなくなる現象が多発した。逆にガイド部材50と電極40の隙間が広すぎるときは、毛管作用力は弱くなり、基材端面から突き出した電極40の先端までインクを導きにくくなる。さらに、電極40とガイド部材50間に形成されるインクメニスカス形状が大きくなりすぎるため、インクの表面張力が大きくなり、この表面張力に勝る静電力を発生させるために、さらに高い電圧を印加しなければならなくなる。また、ヘッド基板11内のインク20流れの脈動や特定の電極40から色剤粒子21を吐出させるときに発生する振動がインクメニスカスに影響を及ぼす。そして吐出した電極40部においてもインクメニスカスの振動が大きくなり、安定なインクメニスカスを確保することが困難になる。隙間が50μm以上の場合には駆動電圧やインクメニスカスの振動等の影響がガイド部材50がない状態と全く同じであった。従って電極40とガイド部材50の隙間は好ましくは5〜50μmであり、より好ましくは10〜30μmである。
【0036】
ガイド部材50の厚さは、5μmより薄いと製造工程途中でそり,曲がり等で不良が発生しやすい。
【0037】
ガイド部材50を厚くすると、電極40とガイド部材50との隙間に毛管作用で保持されるインク量は大きくなり、結果として、電極40先端部に供給するインク20中の色剤粒子21の量を増やすことはできるが、その効果は高々ガイド部材50の厚さ500μmまでであった。従ってガイド部材50の厚さは好ましくは5〜500μmであり、より好ましくは10〜100μmである。
【0038】
また、ガイド部材50は電極40よりも20μm短い構造としている。ガイド部材50が電極40より長いと、ガイド部材50から色剤粒子21が飛翔してしまう。また、電極40がインクに濡れすぎてしまい、電界強度が弱くなってしまう。ガイド部材50が電極40より短すぎると、毛管作用力が弱くなり、インクを電極40先端まで安定に供給できなくなる。従ってガイド部材50の長さは、好ましくは電極40より5〜50μm短い形状であり、より好ましくは10〜30μm短い形状である。
【0039】
また、ガイド部材50には濡れ性がよく低誘電率材料のポリイミドを使用している。これにより、インク20の濡れ性が良く、電極40先端部まで安定にインクを供給することができ、低誘電率材料であるため、電極40で発生する電界強度が弱められることがない。
【0040】
なお、上述したインクチャンバー80に保持されるインク20は、帯電された色剤粒子21を絶縁性液体中に5%以下の重量比濃度で分散させて構成されている。絶縁性液体としてはアイソパーG(Esso社製)であり、インク内に分散された色剤粒子21は、電極40と同電位に帯電している顔料粒子からなる。なお、本発明においては、顔料粒子は約0.5μmの粒子径を有し、帯電量が+100μC/gに予め正の極性に帯電されているものである。
【0041】
インク流路は、外部のインクタンク92とチューブにより接続されており、インクタンク92をヘッド基板11より2〜5cmほど高い位置に設置され、インクタンク92とヘッド基板11との水頭差によりインク保持部81内のインク20に圧力を付与されると共に、強制的にインク循環が行われるようになっている。インク循環は、インク吐出口からのインク漏れを防止するため、インク流出側からポンプ91による吸引により行われ、インクタンク92に回収されるようになっている。
【0042】
次に、本実施形態における吐出動作を説明する。本実施形態おいて、記録電圧は、バイアス電圧Vb=1.5kV、パルス電圧Vp=0.3kV、パルス電圧の印加時間Tp=0.5ms、飛翔周期T=2.0msに設定している。
【0043】
図5は図1の部分拡大図を示す。図5において水頭差によりインク保持部81内のインク20に圧力が付与されると共に、強制的なインク循環が開始されると、インク20は、その表面張力により、まずスリット82部に第一のインクメニスカス23を形成する。電極40およびガイド部材50はヘッド基板11より張り出しているため、ヘッド基板11端面では側面からみると下向きに凹形状になっている。次に、電極40とガイド部材50で構成される隙間の毛管作用により電極40とガイド部材50の間にインク20が供給され、電極40とガイド部材50の間で第二のインクメニスカス24が形成される。スリット82での第一のインクメニスカス23形状は、水頭差の変動やインク流出側のポンプ91によるインク流れの脈動などの影響により、図5の矢印のように変動するが、電極40先端部に形成される第二のインクメニスカス24形状は、第一のインクメニスカス形状23が変化しても、その影響を受けることがほとんど無く、安定な状態を維持できた。
【0044】
そして、全ての電極40にバイアス印加手段60から1.5kVの電圧が印加されると、電極40とプラテンローラ100との間に電界が形成され、スリット82近傍の色剤粒子21が電気泳動し、電極40先端部の第二のインクメニスカス24表面に集まる。続いて、画像信号に応じて選択された電極40にパルス電圧印加手段70から0.3kVのパルス電圧Vpが0.5msのパルス幅でバイアス電圧Vbに重畳して印加されると、最も電界強度が高い電極40先端に色剤粒子21が集中的に移動する。そして、色剤粒子21同士に働く斥力より静電力方が遥かに大きいため、色剤粒子21同士が衝突して凝集色剤粒子21を形成する。そして、この凝集色剤粒子21がある大きさの径に成長すると、インク溶媒の表面張力よりも凝集色剤粒子21の静電反発力が勝り、インクメニスカス表面を破ってプラテンローラ100めがけて飛翔する。その後も、パルス電圧Vpが印加されている間は、凝集色剤粒子21は成長しては飛翔の動作を繰り返して、パルス幅Tpの長さに応じた数だけ飛翔して、記録媒体30上にドットを形成する。
【0045】
一方、色剤粒子21の吐出が行われると、第二のインクメニスカス24内の濃縮色剤粒子21は減少するが、バイアス電圧が常に印加されているため、次々と第二のインクメニスカス24に供給される。
【0046】
以上のような要領で、本実施形態のインクジェット記録装置は、色剤粒子21が第二のインクメニスカス24に移送され、色剤粒子21の濃度を十分に濃くした状態から、色剤粒子21を凝集して飛翔させるため、従来のインクジェット記録装置の印字で顕著な記録媒体30のにじみ等が発生せず、電子写真並の高印字品質が実現できる。また、色剤粒子21を常にバイアス電圧Vbにより電極40先端部に集めた状態から飛翔させるため、高い飛翔周波数を達成できる。さらに、パルス電圧パルス幅Tpに応じて、ドット径を可変することができるため、従来のインクジェット記録装置のように、ディザ法や誤差拡散法などの階調処理を必要とせず、解像度を低下することなく、容易に高品位のフルカラー記録画像が形成できる。
【0047】
次に、この発明の第二の実施例に係わるインクジェット記録装置について図7を用いて説明する。図7はガイド部材50の第二の実施例を示す平面図である。
【0048】
第二の実施例は、第一の実施例で説明したインクジェット記録装置のうち、ガイド部材50のを2倍に増やし、電極40先端部により早くより多くの色剤粒子21を移送させる構造を採っている。インクジェット記録装置の主要部の構造および吐出動作原理は、第一の実施形態と同じであるため、その概要の説明を省略する。以下、ヘッド基板11上の電極40とガイド部材50の構造について説明する。電極40は、記録解像度に応じた本数だけ設けられ、互いに電気的に絶縁された状態で基材の上面に平行に配列されている。電極40に隣接したガイド部材50は、2個で構成され、電極40を挟み込むように形成され、この隙間に毛管作用によりインク20が保持され、電極40先端に供給される構造である。
【0049】
本実施例における吐出動作において、記録電圧は、バイアス電圧Vb=1.5kV、パルス電圧Vp=0.3kV、パルス電圧の印加時間Tp=0.5ms、飛翔周期T=1.0msの第一の実施形態より、飛翔周期を2倍に高めて飛翔させても、ほぼ同じドット径が得られることを確認している。
【0050】
以上のような構造を採ることで、第一の実施例のインクジェット記録装置より、電極40先端部に約2倍の色剤粒子21を移送させることができ、さらに高い飛翔周波数を得ることができる。また、この効果は、電極40上のガイド部材50の数を増やし、ガイド部材50間の隙間の毛管作用によるインク供給量を増すことにより上がり、さらに高い飛翔周波数を得ることができることは言うまでもない。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば静電力でインク中の色剤成分を凝集し、飛翔させて記録するインクジェット記録装置において、電極を基板から張り出し、かつ電極に隣接してガイド部材を形成したことで電極近くに安定したインク液面が形成できるため色剤粒子を先端に集め、飛翔させる電圧を低電圧化可能である。この結果、印加電極以外の電極から吐出する異常吐出がなくなり、またインク中の色剤粒子は毛管作用で形成されたインク流路を通り電極先端に供給されるため安定した供給量となり、集まり過ぎて電極先端近傍で色剤成分と電極の間で電荷の移動が生じ色剤粒子が固着することは無くなる。その他、毛管作用により電極先端までインクを導くことで基板へのインク供給圧の変化で電極先端のインクメニスカスが変動することは無くなり、安定な記録を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になるインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】図1の記録ヘッドの構成を示す一部を切り欠いた斜視図である。
【図3】電極先端の電界解析結果を示す図である。
【図4】電極の厚さと記録媒体上に形成されたドットの形状の関係を示す図である。
【図5】図1の部分拡大図を示す図である。
【図6】ガイド部材の詳細を示す平面図を示す図である。
【図7】ガイド部材の第二の実施例を示す平面図を示す図である。
【符号の説明】
10:記録ヘッド、 11:ヘッド基板、 20:インク、 21:色剤粒子、 22:飛翔インク滴、 23:第一のインクメニスカス、 24:第二のインクメニスカス、 30:記録媒体、 40:電極、 41:吐出ポイント、 50:ガイド部材、 60:バイアス電圧印加手段、 70:パルス電圧印加手段、 80:インクチャンバ、 81:インク保持部 、 82:スリット、 83:インク供給路、 84:インク排出路、 90:インク還流機構、 91:ポンプ、 92:インクタンク、 100:プラテンローラ。
Claims (8)
- 記録媒体から所定距離離した位置にインクを吐出させるヘッド基板と、ヘッド基板上に設けられた先端が凸形状の複数の電極と、電極の近くに設置され電極との間に形成された隙間の毛管作用で電極の先端にインクを導くガイド部材と、帯電した色剤粒子を絶縁性液体中に分散させてなるインクと、インクを電極へ供給するためのインク供給手段と、電極に電圧を印加して電界を形成し電極の先端に色剤粒子を濃縮させるためのバイアス電圧印加手段と、電極にバイアス電圧より高いパルス電圧を印加してバイアス電圧印加手段にて濃縮された色剤粒子を記録媒体に向けて飛翔させるためのパルス電圧印加手段とを設けたことを特徴とするインクジェット記録装置。
- 電極は、ヘッド基板の端面から10〜1000μm張り出していることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 電極は、Cu,Cr,Ni,Al,Au,Ti,Ta、Ag,その他の合金を低誘電率材料の上にスパッタ法、もしくは電気メッキ法で形成したことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 電極の膜厚は、5〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 電極の表面には、絶縁性樹脂が塗布されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- ガイド部材と電極の隙間は5〜50μmの範囲であり、ガイド部材の厚さは5〜500μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- ガイド部材は電極より5〜50μm短いことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- ガイド部材は濡れ性の良い低誘電率材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
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