JP3720321B2 - ドレッシング - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、体脂肪蓄積抑制作用を有するジグリセリドを含有し、呈味が改善されたドレッシングに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、油脂の多い食生活への変化に伴い、油脂の過剰摂取が肥満、体脂肪の増加を助長すると共に、野菜類の摂取不足が、血中コレステロールの上昇を促し、生活習慣病を引き起こす原因の一つになっている。
【0003】
これまでの研究から、ジグリセリドに体脂肪蓄積抑制作用があることが知られている(特許文献1、2など)。更に、ジグリセリドに植物ステロールを組み合わせることで、顕著な血中コレステロール低下作用が発現することが報告されている(特許文献3など)。
【0004】
ジグリセリドを配合したドレッシングについては、低脂肪分を目的とした配合や、たれやソース類の材料の調理性能向上を目的とした配合が知られている(特許文献4、5など)。また、ジグリセリドを含む水中油型乳化物の安定性を向上するために、特定のリン脂質や蛋白質等を用いる技術が知られている(特許文献6〜9など)。
【0005】
食事面からみると、ドレッシングは、単独では喫食せず、野菜類と共に喫食する副菜用の調味料で、いわば、脇役である。しかし、ドレッシングは、食事において、栄養面と呈味の点で極めて重要な役割を担っている。
栄養面からみると、ドレッシングの役割は、健康的な食事の提供(ビタミン、ミネラル、食物繊維等の供給)にある。呈味の観点からドレッシングに求められるものは、もちろん、美味しさであるが、更に、主菜の味を和らげる爽やかな酢の酸味、野菜の青臭さをマスキングする油のコク味、喫食に欠かせない塩味である。ところが、これらの要件を満たしたとしても、ドレッシングによる後味の持続時間が長くなると、再喫食に結びつきにくくなってしまい、食事が円滑に進まなくなる場合がある。主菜の味は消えるが、ドレッシングの味が口中に残ってしまうからである。例えば、豚カツ(主菜)と米飯(主食)のみで食事をした場合、豚カツの味が濃いため、次第にその味に飽きてしまう。その食事に、調味されたサラダを加えると、再びおいしく豚カツを食べることができる(主菜の再喫食)。
【0006】
ドレッシングに上記健康機能を有するジグリセリドを配合した場合、後味の持続感が長くなる(キレが悪い)傾向があり、再喫食に結びつきにくくなるという課題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−300826号公報
【特許文献2】
特開平10−176181号公報
【特許文献3】
国際公開第99/48378号パンフレット
【特許文献4】
特開平4−79858号公報
【特許文献5】
特開平4−51866号公報
【特許文献6】
特開平3−91451号公報
【特許文献7】
特開平3−91460号公報
【特許文献8】
特開平3−89936号公報
【特許文献9】
特開2001−138号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、健康機能を有するジグリセリドを含有し、後味の持続時間が短く、再喫食に優れたドレッシングを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題について検討したところ、ジグリセリドを含むドレッシングにおける後味の持続性は、通常のトリグリセリドにはないジグリセリド特有の両親媒性に起因することを見出した。すなわち、ドレッシングにおいてジグリセリドは油相に存在するにもかかわらず、両親媒性に起因して水相の後味に影響を与えていたのである。そこで更に検討したところ、水相に存在する食酢成分としてワインビネガーとリンゴ酢を併用し、かつその量を一定範囲とすることにより、後味の改善されたドレッシングが得られることを見出した。
【0010】
本発明は、ジグリセリドを15〜99.9重量%含有する油相、並びにワインビネガー及びリンゴ酢を酸度1.10〜1.60%となる量含有する水相を有するドレッシングを提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のドレッシングの油相は、ジグリセリドを15〜99.9重量%含有する。当該ジグリセリドとしては、十分な乳化安定性と保存時の外観を確保する点で、構成脂肪酸の70重量%以上が不飽和脂肪酸であるジグリセリドが好ましい。好ましい不飽和脂肪酸量は70〜100重量%、更に80〜100重量%であり、特に90〜100重量%、殊更93〜98重量%であるのがよい。当該不飽和脂肪酸としては、炭素数8〜24、特に16〜22の不飽和脂肪酸が乳化安定性、体脂肪蓄積抑制効果等の生理効果発現の点で好ましい。
【0012】
また当該不飽和脂肪酸としてはω3系不飽和脂肪酸、ω6系不飽和脂肪酸、及びω9系不飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上が含まれているのが、前記生理効果発現の点から好ましい。ここで、ω3系不飽和脂肪酸とは、ω位から3番目の炭素原子に最初の不飽和結合が位置し、且つ、不飽和結合を2個以上有する不飽和脂肪酸である。具体的には、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられるが、α−リノレン酸が特に好ましい。生理効果増強、酸化安定性の点で、α−リノレン酸の含有量は、5〜70重量%、特に20〜60重量%であることが好ましい。ω9系不飽和脂肪酸としては、炭素数8〜24、好ましくは16〜22のオレイン酸、エイコサモノエン酸、ドコサモノエン酸等が挙げられ、特にオレイン酸が好ましい。特に、オレイン酸の含有量は、20〜60重量%、好ましくは、25〜60重量%、特に、30〜50重量%、殊更、30〜45重量%であるのが、外観、脂肪酸の摂取バランスの点で望ましい。ω6系不飽和脂肪酸としては、炭素数18〜22のリノール酸、γ−リノレン酸等が好ましい。特に、リノール酸の含有量は、15〜65重量%、好ましくは、20〜60重量%、特に、30〜55重量%、殊更、35〜50重量%であるのが、外観、脂肪酸の摂取バランス、酸化安定性の点で望ましい。これらのうち、特に、酸化安定性、生理活性発現の点から、リノール酸/オレイン酸の含有重量比が0.01〜2.0、特に0.1〜1.8、更に0.3〜1.7であることが望ましい。残余の構成脂肪酸として、炭素数8〜24、好ましくは14〜22の飽和脂肪酸が挙げられる。
【0013】
油相中のジグリセリドの含有量は、前記生理効果の点から、15〜99.9重量%であるが、好ましくは20〜99.9重量%、より好ましくは40〜95重量%、更に好ましくは60〜95重量%、特に好ましくは80〜95重量%である。ジグリセリドには、1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドがあるが、1,3−ジグリセリドが好ましい。油相中の1,3−ジグリセリド含有量が15重量%以上であると、血中中性脂肪抑制効果、及び体脂肪蓄積抑制効果が、特に優れている。従って、本発明においても1,3−ジグリセリドの割合が高いジグリセリドを使用し、油相中の1,3−ジグリセリドの割合が15重量%以上、特に40重量%以上のグリセリド混合物を用いるのが好ましい。油相中のモノグリセリドの含有量は、乳化性、風味、工業的生産性の点で0.1〜5重量%、更に0.1〜2重量%、特に0.1〜1.5重量%であることが好ましい。モノグリセリドの構成脂肪酸は、ジグリセリドと同じであることが、工業的生産性の点で好ましい。油相中のトリグリセリドの含有量は、0〜84.9重量%、好ましくは0〜79.9重量%、更に3.5〜59.9重量%、特に3.5〜39.9重量%、最も好ましくは、3.5〜19.9重量%であることが、風味、安定性の点でよい。油相中の遊離脂肪酸(塩)の含有量は、3.5%以下に低減されているのがよく、好ましくは、0〜2重量%、更に、0〜1重量%、特に0〜0.5重量%、殊更、0.05〜0.2重量%とするのが、風味、工業的生産性の点で望ましい。
【0014】
上記ジグリセリドは、例えば(1)油脂とグリセリンとエステル交換反応をするか、又は(2)脂肪酸とグリセリンを用いてエステル化反応することにより製造できる。これらの反応は、アルカリ(土類)金属の水酸化物触媒による化学的反応又は酵素による反応のどちらでもよい。工業的に高純度のジグリセリドを製造する場合は、(1)の方法による化学的反応では、着色等の油脂の劣化を招きやすいので、(2)の方法による酵素反応が好ましい。更に、脱酸、水洗、脱臭等の精製を施すことにより、風味、安定性のよいものが得られる。
【0015】
ここで用いる原料脂肪酸としては油脂100重量部に対し、水を20〜180重量部加えて、水蒸気分解又は酵素分解して得られる脂肪酸、部分加水分解物が挙げられる。このようにして得られる脂肪酸を用い、1,3位選択的リパーゼの存在下、脱水条件下でエステル化反応をすることにより、80重量%以上の高純度の、変色の少ない淡色(ロビボンド法にて10R+Y値が20以下)のジグリセリド混合物(トリグリセリド20重量%未満、モノグリセリド5重量%未満)を収率よく得ることができる。また、本発明においてジグリセリドの原料として使用する油脂は、一般的な食用油脂であれば特に限定されず、天然の動植物油脂の他、それらにエステル交換、水素添加、分別等を施した加工油脂が挙げられる。好ましくは、大豆油、ナタネ油、米糠油、ひまわり油、綿実油、アマニ油、エゴマ油、コーン油、紅花油等の植物油及びそれらの加工油脂が用いられる。
【0016】
本発明ドレッシングの水相には、ワインビネガー及びリンゴ酢を酸度1.10〜1.60%となる量含有する。
ここでワインビネガーとは、ぶどう酢のことをいい、ぶどう果汁(酒)のアルコール分を酢酸菌が酸化させたものを指す。ワインビネガーとしては、赤ワインビネガー及び白ワインビネガーのいずれでもよい。ワインビネガーの市販品としては赤ワインビネガー及び白ワインビネガー((株)ナカノ酢)等が挙げられる。リンゴ酢はリンゴをアルコール発酵させて得られるリンゴ酒を酢酸発酵させたものをいい、市販品としてはリンゴ酢((株)ナカノ酢)等が挙げられる。
【0017】
当該ワインビネガーとリンゴ酢は、ジグリセリド含有ドレッシングの後味改善効果の点から水相中に酸度が1.10〜1.60%となる量含有させるが、酸度1.15〜1.40%、特に1.20〜1.40%となる量含有させるのが好ましい。
酸度が1.10%未満の場合にはジグリセリド含有ドレッシングの後味が十分に改善されず、1.60%を超える場合には酸味が強すぎ、味が悪化する。ここで酸度とは、日本農林規格(JAS)における食酢の強度測定に準拠した手順で測定したものを指す。酢酸の他、グルコン酸、クエン酸等の各種有機酸全てを酢酸量として算出した値の試料容量に対する百分率をいう。
【0018】
また、本発明ドレッシングの水相には、ワインビネガーとリンゴ酢の両者を含むことが後味改善効果の点で必要である。いずれか一方の配合では、十分な後味改善効果が得られない。ワインビネガーとリンゴ酢の含有比は、後味改善効果の点から酸度基準で3/1〜9/1、更に4/1〜8/1、特に4/1〜7/1が好ましい。
【0019】
本発明のドレッシングには、抗酸化剤を添加することが好ましい。抗酸化剤は、通常、食品に使用されるものであればいずれでもよいが、天然抗酸化剤、トコフェロール、カテキン、リン脂質、アスコルビン酸脂肪酸エステル、BHT、BHA、TBHQから選ばれる1種以上が好ましく、天然抗酸化剤、トコフェロール、アスコルビン酸パルミチン酸エステルから選ばれる1種以上が特に好ましい。抗酸化剤は、油相、水相どちらにも配合できるが、油相への添加が好ましい。特に好ましい抗酸化剤の含有量は、油相中50〜5000ppm、更に200〜2000ppmである。
【0020】
また、本発明のドレッシングには血中コレステロール低下作用を得る目的で植物ステロールを含有させるのが好ましい。植物ステロールとしては、血中コレステロール低下作用の点から、α−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノール等及びこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、桂皮酸エステル、配糖体などが好ましいものとして挙げられる。特に、脂肪酸とエステル結合したエステル体と、エステル化されていない非エステル体とを組合せて用いるのが、乳化安定性、コスト等の点から好ましく、そのモル比率は、99:1〜30:70、更に、90:10〜40:60、特に80:20〜50:50が望ましい。植物ステロールは通常油相中に配合され、その含有量は血中コレステロール低下作用及び油相中への溶解性の点から、0.05〜4.7重量%、更に0.3〜4.2重量%、特に1.2〜4重量%が好ましい。
【0021】
また、本発明のドレッシングの水相には、前記ワインビネガー及びリンゴ酢以外の食酢、例えばアルコール由来の醸造酢を配合することも可能であるが、刺激的な酸味(いわゆる酢カド)の観点から、水相中の酸度のうち0.001〜50%、好ましくは0.001〜45%、更に好ましくは0.001〜40%であれば併用も可能である。
【0022】
また、本発明のドレッシングの水相には、後味改善効果を更に向上させる目的でフルーツフレーバーを含有させるのが好ましい。本発明で使用するフ−レバーとは、食品衛生法に記載されているところの香料製剤及び天然香料が挙げられる。フルーツフレーバーは、天然又は合成のフルーツフレーバー、植物フレーバー及びそれらの混合物を意味する。フルーツフレーバーは種子植物の食用生殖部分、特に種子を伴う甘味果肉から得られる。植物フレーバーとは、フルーツ以外の植物の他の一部、例えば根又は葉から得られるフレーバーに関する。フルーツジュースは天然フレーバー物質である。フルーツフレーバーとしては、オレンジ、バナナ、ぶどう、梨、みかん、ゆず、りんご、アプリコット等のフレーバーが挙げられる。また、油溶性、水溶性どちらのフレーバーも使用できる。このうち、後味改善効果の点からオレンジ、ぶどう、みかん、りんごのフレーバーが好ましく、更に、オレンジ、ぶどうのフレーバーが好ましい。水相中のフルーツフレーバーの含有量は、0.001〜10.0重量%、更に0.001〜〜2.0重量%、特に0.01〜1.5重量%、殊更0.05〜1.0重量%が好ましい。
【0023】
本発明のドレッシングには、更に油相の副成分として、親油性の乳化剤等を配合できる。また、水相には、水溶性乳化剤、食塩、糖、アミノ酸等の旨味調味料、蛋白質、多糖類、デンプン、増粘剤等を配合できる。水相のpHが1〜6、更に2〜6、特に3〜5の酸性ドレッシングとするのが、保存性の点から好ましい。水相のpHを調節するためにクエン酸、リンゴ酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、レモン果汁等の酸味料を使用できる。
【0024】
本発明のドレッシングには、更にスパイス等の香味料、着色料、保存料、安定剤等を加えることもできる。
【0025】
本発明のドレッシングとは、具体的には、野菜にかけるタイプの一般的にドレッシングと呼ばれているものを指す。
【0026】
本発明のドレッシング中の油相と水相の重量比率は、栄養及び官能の点から5/95〜60/40、更に20/80〜40/60、特に25/75〜35/65であるのが好ましい。
【0027】
ドレッシングの剤型としては、油相を水相の上に積層した分離液状型、油を水相に分散させたO/W乳化型が挙げられる。分離液状型の場合、油相と水相の重量比率は、栄養及び官能の点から、5/95〜60/40、更に20/80〜40/60、特に25/75〜35/65が好ましい。O/W乳化型の場合、油相と水相の重量比率は、栄養、官能に加え乳化安定性の点から、5/95〜35/65、更に20/80〜32/68、特に25/75〜30/70が好ましい。
【0028】
【実施例】
ジグリセリド含有油脂の製造:
大豆脂肪酸をウインタリングして飽和脂肪酸を低減させたもの455重量部と菜種脂肪酸195重量部とグリセリン107重量部とを、固定化1,3−位選択リパーゼである市販リパーゼ製剤(商品名:「Lipozyme IM」、ノボインダストリーA.S.社製)を触媒として、0.07hPaで40℃5時間エステル化を行った。次いで、リパーゼ製剤を濾過した後、235℃で分子蒸留を行った。水洗した後、235℃で1時間脱臭して、ジグリセリド含有油脂を製造した。分析値を表1に示す。該油脂100重量部に対して、トコフェロール(エーザイ社製:イ−ミックスD)を0.02重量部加えた。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】
本発明のドレッシングは、ジグリセリドを高濃度に含有することから優れた体脂肪蓄積抑制効果を有し、かつ後味が良好である。
Claims (4)
- ジグリセリド15〜99.9重量%を含有する油相、並びにワインビネガー及びリンゴ酢を酸度1.10〜1.60%となる量含有する水相を有するドレッシング。
- ワインビネガーとリンゴ酢の含有比が、酸度基準で3/1〜9/1である請求項1記載のドレッシング。
- 水相が、更にフルーツフレーバーを含有するものである請求項1又は2記載のドレッシング。
- 水相のpHが1〜6である請求項1〜3のいずれか1項記載のドレッシング。
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