JP3720084B2 - 吸水性樹脂およびその製造方法並びに吸水性物品 - Google Patents

吸水性樹脂およびその製造方法並びに吸水性物品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性樹脂およびその製造方法並びに吸水性物品に関するものである。さらに詳しくは、水性液体の吸水能力に優れ、かつ、生分解性を備える吸水性樹脂およびその製造方法、並びに、例えば衛生材料等として有用な吸水性物品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、吸水性樹脂は、紙オムツや生理用品等の衛生材料としての利用のみならず、体液吸収材等の医療分野、シーリング材(止水材)や結露防止材等の土木・建築分野、鮮度保持材等の食品分野、溶剤から水を除去する脱水剤等の工業分野、緑化等の農業・園芸分野等、非常に多種多様な分野に利用されている。そして、これらの用途に応じた吸水性樹脂が種々提案されている。
【0003】
これら提案されている種々の吸水性樹脂のうち、一般に、ポリアクリル酸(塩)系の化合物が吸水能力に優れ、かつ、安価であるため、幅広く用いられている。ところが、ポリアクリル酸(塩)系の吸水性樹脂は、吸水状態では光分解性を若干備えるものの、生分解性を殆ど備えていない。従って、該吸水性樹脂を廃棄物として処理する際に、例えば埋め立て処分を行うと、土中の細菌や微生物等により分解されないので、環境汚染等の環境衛生問題を引き起こす。即ち、ポリアクリル酸(塩)系の吸水性樹脂は、廃棄処分に難点を有している。
【0004】
一方、生分解性を備える吸水性物品としては、一般に、デンプン、カルボキシメチルセルロース塩、セルロースからなるパルプや紙等が知られている。ところが、これら吸水性物品は、毛細管現象や増粘性を利用して水を吸収するようになっている。このため、該吸水性物品は、加圧下のゲル強度に劣り、外部から圧力がかかると吸水能力が低下して、一旦吸収した水を放出するという欠点を有している。
【0005】
そこで、従来より、吸水能力に優れ、かつ、生分解性を備える化合物として、多糖類をグラフト重合若しくは架橋させた吸水性樹脂が種々提案されている。上記吸水性樹脂の製造方法としては、例えば、多糖類に親水性モノマーをグラフト重合させる方法(特開昭56-76419号公報)、多糖類そのものを架橋させる方法(特開昭 56-5137号公報、特開昭60-58443号公報)等が知られている。また、多糖類としてセルロース誘導体を用い、このセルロース誘導体を架橋させる方法(特開昭 49-128987号公報、特開昭50-85689号公報、特開昭 54-163981号公報、特公昭 55-500785号公報、特開昭56-28755号公報、特開昭 57-137301号公報、特開昭58-1701 号公報、特開昭61-89364号公報、特開平4-161431号公報、特開平 5-49925号公報、特開平5-123573号公報)等も検討されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の吸水性樹脂、即ち、セルロース誘導体等の多糖類をグラフト重合若しくは架橋させて得られる吸水性樹脂は、その生分解性が、出発原料である多糖類よりも劣っている。つまり、上記従来の吸水性樹脂は、生分解性に劣っている。また、多糖類が備える生分解性を維持した状態で、該多糖類をグラフト重合若しくは架橋させると、得られる吸水性樹脂の吸水能力が著しく低下する。従って、上記従来の吸水性樹脂は、吸水能力および生分解性の何れか一方が劣っており、両方を満足させる性能を備えることができないという問題点を有している。
【0007】
このため、吸水能力および生分解性の両方に優れた吸水性樹脂、および、その製造方法が嘱望されている。即ち、本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、吸水能力および生分解性の両方に優れ、しかも、加圧下においても吸水能力を維持することができる吸水性樹脂およびその製造方法を提供することにある。また、該吸水性樹脂を用いた、例えば衛生材料等として有用な吸水性物品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記目的を達成すべく、吸水能力および生分解性の両方に優れた吸水性樹脂およびその製造方法について鋭意検討した結果、多糖類をアミノ酸類と混合し、加熱することにより得られる吸水性樹脂が、上記従来の吸水性樹脂が備えていない優れた性能を備えていることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、請求項1記載の発明の吸水性樹脂は、上記の課題を解決するために、多糖類をアミノ酸類により架橋させてなることを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の発明の吸水性樹脂は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の吸水性樹脂において、多糖類が、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルデンプン、および、これらの塩類からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明の吸水性樹脂は、上記の課題を解決するために、請求項1または2記載の吸水性樹脂において、アミノ酸類が酸性アミノ酸類からなることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明の吸水性樹脂は、上記の課題を解決するために、60 分間での生理食塩水 0.9 重量%塩化ナトリウム水溶液)の吸水倍率が10 g/g以上、60 分間での生理食塩水の加圧下(荷重 15.7 g/cm 2 の吸水倍率が10ml/g以上、かつ、修正MITI試験の 28 日間での生分解率が10%以上であることを特徴としている。
【0013】
また、請求項5記載の発明の吸水性樹脂の製造方法は、上記の課題を解決するために、多糖類をアミノ酸類と混合し、加熱することを特徴としている。
【0014】
請求項6記載の発明の吸水性樹脂の製造方法は、上記の課題を解決するために、請求項5記載の吸水性樹脂の製造方法において、多糖類をアミノ酸類と混合後、加熱し、加熱後、さらに水性液体で膨潤させて得られる水性ゲル中の水を親水性有機溶媒で置換することを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項7記載の発明の吸水性物品は、上記の課題を解決するために、60 分間での生理食塩水 0.9 重量%塩化ナトリウム水溶液)の吸水倍率が10 g/g以上、60 分間での生理食塩水の加圧下(荷重 15.7 g/cm 2 の吸水倍率が10ml/g以上、かつ、修正MITI試験の 28 日間での生分解率が10%以上である、請求項1から4の何れか1項に記載の吸水性樹脂を含むことを特徴としている。
【0016】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明において原料として用いられる多糖類としては、特に限定されるものではないが、多糖類や、多糖類の誘導体、および、これらの塩類が挙げられる。
【0017】
多糖類としては、具体的には、例えば、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヘミセルロース、デンプン、メチルデンプン、エチルデンプン、メチルエチルデンプン、寒天、カラギーナン、アルギン酸、ペクチン酸、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、デキストラン、ザンサンガム、プルラン、ゲランガム、キチン、キトサン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸等が挙げられる。
【0018】
多糖類の誘導体とは、上記の多糖類をカルボキシアルキル化、若しくはヒドロキシアルキル化した化合物を示す。上記多糖類の誘導体としては、具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプングリコール酸、寒天誘導体、カラギーナン誘導体等が挙げられる。
【0019】
これら多糖類は、単独で使用してもよく、また、二種類以上を適宜混合して使用してもよい。これら多糖類のうち、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルデンプン、および、これらの塩類が好ましい。尚、上記の塩類としては、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0020】
上記多糖類のカルボキシアルキル化物のアルカリ金属塩類は、例えば、セルロースを含有する、例えば針葉樹パルプ等の木材パルプや、リンターパルプ等を、含水親水性有機溶媒中で、クロロ酢酸等のエーテル化剤、および、アルカリ金属水酸化物と反応させることにより得られる。上記カルボキシアルキル化物のアルカリ金属塩類のエーテル化度は、通常、0.2 〜 1.0の範囲内であり、好ましくは、0.3 〜 0.8の範囲内である。エーテル化度が0.2 よりも低い場合には、所望の吸水倍率の吸水性樹脂が得られない。エーテル化度が1.0 よりも高い場合には、得られる吸水性樹脂の生分解率が低下するため好ましくない。
【0021】
本発明において多糖類の架橋に用いられるアミノ酸類としては、アミノ酸、および、アミノ酸重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。つまり、吸水性樹脂は、多糖類を、アミノ酸および/またはアミノ酸重合体により架橋させてなっている。
【0022】
上記のアミノ酸としては、該多糖類の水酸基やカルボキシル基と反応可能であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、シスチン、メチオニン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸やグルタミン酸等の酸性アミノ酸、および、これらの塩類等が挙げられる。これらアミノ酸は、単独で使用してもよく、また、二種類以上を適宜混合して使用してもよい。これらアミノ酸のうち、アスパラギン酸やグルタミン酸等の酸性アミノ酸、および、これらの塩類が好ましい。尚、上記の塩類としては、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0023】
また、上記のアミノ酸重合体としては、該多糖類の水酸基やカルボキシル基と反応可能であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、上記例示のアミノ酸の重合体、および、これらの塩類等が挙げられる。これらアミノ酸重合体は、単独で使用してもよく、また、二種類以上を適宜混合して使用してもよい。これらアミノ酸重合体のうち、ポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸、アスパラギン酸−グルタミン酸共重合体等の酸性ポリアミノ酸、および、これらの塩類が好ましい。尚、上記の塩類としては、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0024】
また、アミノ酸とアミノ酸重合体とを併用する場合の、両者の組み合わせや混合比率は、特に限定されるものではなく、多糖類の種類に応じて、適宜設定すればよい。
【0025】
多糖類に対するアミノ酸類の使用量は、特に限定されるものではなく、多糖類の種類、或いは、用いるアミノ酸類の種類に応じて、適宜設定すればよい。具体的には、例えば、多糖類 100重量部に対して、アミノ酸類は、0.01重量部〜30重量部の範囲内で用いればよく、好ましくは 0.1重量部〜10重量部の範囲内で用いればよく、より好ましくは 0.1重量部〜5重量部の範囲内で用いればよい。アミノ酸類の使用量が0.01重量部よりも少ない場合には、得られる吸水性樹脂の保水力等の性能が所望の値に達しないため、好ましくない。また、アミノ酸類の使用量が30重量部よりも多い場合には、不経済となるばかりか、得られる吸水性樹脂の吸水能力等の性能が劣るため、好ましくない。
【0026】
本発明にかかる吸水性樹脂は、多糖類をアミノ酸類と混合し、加熱することによって、即ち、多糖類をアミノ酸類により架橋させることによって得られる。
【0027】
多糖類をアミノ酸類によって架橋させる際には、均一な架橋反応が行われるように、両者を均一にかつ充分に混合することが好ましい。多糖類とアミノ酸類との混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、両者を固体同士で混合する方法(乾式混合方法)、両者をスラリー状態で混合する方法、何れか一方をスラリー状態とし、これに他方を添加して混合する方法、両者を溶液状態で混合する方法、何れか一方を溶液状態とし、これに他方を添加して混合する方法等、種々の方法を採用することができる。これら混合方法のうち、何れか一方を溶液状態とし、これに他方を添加して混合する方法が好ましい。
【0028】
上記の混合方法、つまり、吸水性樹脂の製造方法において、溶媒は、必要に応じて使用される。そして、溶媒を使用する場合には、以下に示す化合物が好適である。即ち、該溶媒としては、例えば、水、または、メチルアルコールやエチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール等の、水と均一に混合する親水性有機溶媒が挙げられる。親水性有機溶媒は、沸点が比較的低いものが好ましい。尚、溶媒として水と親水性有機溶媒とを併用する場合の両者の混合比率は、多糖類やアミノ酸類の種類や溶解度等を考慮に入れて適宜設定すればよい。具体的には、例えば、水 100重量部に対して、親水性有機溶媒は、 300重量部〜2000重量部の範囲内で用いればよい。また、上記の製造方法における溶媒の使用量は、多糖類やアミノ酸類の種類や溶解度等を考慮に入れて適宜設定すればよい。さらに、上記例示の親水性有機溶媒は、上記多糖類のカルボキシアルキル化物のアルカリ金属塩類を得る場合にも好適に用いられる。
【0029】
そして、上記混合方法のうち、溶媒を使用する場合には、何れか一方を水溶液とし、この水溶液に他方を添加して混合する方法がより好ましく、多糖類を水溶液とし、この水溶液にアミノ酸類を添加して混合する方法が最も好ましい。
【0030】
多糖類を水溶液とする場合には、多糖類水溶液の濃度は、 0.1重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましく、 0.5重量%〜10重量%の範囲内であることがより好ましい。濃度が 0.1重量%よりも低い場合には、該水溶液の量が多くなると共に、水を除去するために、例えば水溶液を長時間加熱しなければならないので、製造効率が低下する。また、濃度が20重量%よりも高い場合には、該水溶液の粘度が高くなり、水溶液、つまり、多糖類とアミノ酸類とを均一にかつ充分に混合することが困難となるため、好ましくない。
【0031】
上記の加熱温度は、70℃〜 200℃の範囲内であることが好ましく、 110℃〜 180℃の範囲内であることがより好ましい。架橋反応を行う際の加熱温度が70℃よりも低い場合には、上記の架橋反応が殆ど進行しないため、好ましくない。また、加熱温度が 200℃よりも高い場合には、多糖類が分解し、着色するため、好ましくない。尚、加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、遠赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法、或いは、熱風乾燥機、減圧乾燥機を用いる方法等、種々の方法を採用することができる。
【0032】
加熱時間は、特に限定されるものではなく、多糖類、アミノ酸類、および溶媒の種類や組み合わせ、加熱温度、所望する吸水性樹脂の物性等に応じて、適宜設定すればよい。具体的には、例えば、加熱温度が 120℃である場合には、加熱時間は、1分間〜5時間、好ましくは5分間〜 200分間とすればよい。
【0033】
そして、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法としては、多糖類を水溶液とし、この水溶液にアミノ酸類を添加して均一にかつ充分に混合した後、この混合物を加熱して架橋反応を行うと共に、該混合物から水を除去して混合物を乾燥させることにより固形物、即ち、吸水性樹脂を得る方法が好ましい。また、混合物を乾燥させる際には、水が5重量%以下となるように、つまり、吸水性樹脂の含水率が5重量%以下となるようにすることが好ましい。含水率を5重量%以下にすることにより、加圧下の吸水倍率に優れた吸水性樹脂を得ることができる。尚、上記の混合物から水を除去する際には、例えば、吸引濾過等の固液分離操作を行ってもよい。
【0034】
以上の方法により得られる吸水性樹脂は、例えば、繊維状の構造を有しており、自重の10倍から50倍程度の水性液体(生理食塩水)を吸水可能であり、また、加圧下において、自重の10倍以上の水性液体を吸水可能である。さらに、上記の吸水性樹脂は、10%以上の生分解率を備えている。つまり、上記の吸水性樹脂は、生理食塩水の吸水倍率が10 g/g以上、生理食塩水の加圧下の吸水倍率が10ml/g以上、かつ、生分解率が10%以上である。
【0035】
従って、吸水性樹脂は、吸水能力および生分解性の両方に優れ、しかも、加圧下においても吸水能力を維持することができる。尚、吸水性樹脂のこれら諸性能の測定方法は、後段の実施例にて詳述する。
【0036】
また、吸水性樹脂の加圧下の吸水倍率をより一層向上させるために、以下に示す操作を行うことにより、含水率をさらに低下させてもよい。即ち、先ず、上記の方法により得られる吸水性樹脂を130 ℃以上、好ましくは150 ℃以上の温度で5分間〜1時間、加熱処理する。尚、加熱処理温度が130 ℃よりも低い場合には、得られる吸水性樹脂の生分解性が低下すため、好ましくない。
【0037】
その後、該吸水性樹脂に脱イオン水を混合し、膨潤させることにより水性ゲルを生成する。該水性ゲルの膨潤度は10 g/g〜1000 g/g程度である。次に、この水性ゲルを大過剰の親水性有機溶媒に浸漬することにより、水性ゲルに含まれる水を親水性有機溶媒で置換する。つまり、水性ゲルを脱水する。その後、吸引濾過等の固液分離操作を行ってゲルを取り出し、このゲルを 150℃以下の温度で所定時間、乾燥させることにより、脱水がなされた吸水性樹脂とする。上記の親水性有機溶媒としては、上述した低級アルコールの他、アセトン等のケトン類を用いることができる。
【0038】
尚、上記の吸水性樹脂は、繊維状の他に、所定形状に造粒されていてもよく、また、不定形破砕状、球状、鱗片状、棒状、塊状等、種々の形状であってもよい。さらに、吸水性樹脂は、1次粒子であってもよく、また、1次粒子の造粒体であってもよい。吸水性樹脂を所定形状に造粒する場合の粒径および造粒方法は、特に限定されるものではない。また、上記の吸水性樹脂に、その吸水特性、例えば水性液体の浸透性や分散性、吸水速度等を向上させるために、種々の加工や修飾(モディファイ)等を施してもよい。
【0039】
以上の方法により得られる吸水性樹脂は、紙オムツや生理用品、各種清浄用具等の衛生材料等の衛生分野としての利用のみならず、以下に示すような非常に多種多様な分野に利用することができる。
【0040】
即ち、吸水性樹脂は、外科手術時の体液吸収材、創傷保護材等の医療分野;シールド工法時のシーリング材(止水材)、コンクリート養生材、ゲル水嚢、結露防止材等の土木・建築分野;肉や魚等のドリップ吸収材や鮮度保持材、野菜等の鮮度保持材等の食品分野;溶剤から水を除去する脱水剤等の工業分野;緑化等を行う際の土壌保水材や植物栽培用保水材、種子コーティング材等の農業・園芸分野等、さらには、油水分離材、廃液吸収材、防振材、防音材、家庭用雑貨品、玩具、人工雪等、非常に多種多様な分野に利用することができる。
【0041】
本発明にかかる吸水性物品は、吸水性樹脂を、例えば、少なくとも一部分が水透過性を備えたフィルム等で挟持したり、少なくとも一部分が水透過性を備えた容器に充填することにより形成される。或いは、吸水性物品は、吸水性樹脂を例えばシート状に成形することにより形成される。
【0042】
上記の吸水性樹脂を用いた吸水性物品は、土中の細菌や微生物等により分解可能な生分解性を有しているので、土中に埋めるだけで分解される。このため、廃棄処分が簡単であり、かつ、安全性に優れ、環境汚染等の環境衛生問題を引き起こすこともない。従って、吸水性物品は、従来より知られている吸水性物品の全ての用途に適用可能である。
【0043】
吸水性物品、即ち、吸水性樹脂は、生分解性や安全性に特に優れているので、上記分野のうち、衛生分野、医療分野、食品分野に好適である。尚、吸水性樹脂は、これらの用途に応じた最適な諸性能が得られるように、その組成(つまり、多糖類やアミノ酸類等の種類)を適宜選択すればよい。
【0044】
さらに、吸水性物品に、加工性の改良および品質性能の向上のために、必要に応じて、シリカ微粒子等の無機微粒子や、パルプ繊維等からなる充填剤、活性炭や鉄フタロシアニン誘導体、植物性精油等を吸着させたゼオライト等を主体とする消臭剤または脱臭剤、芳香剤、銀や銅、亜鉛等の金属等を主体とする抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、脱酸素剤(酸化防止剤)、界面活性剤、発泡剤、香料等を添加してもよい。これら添加剤を添加することにより、吸水性物品に種々の機能を付与することができる。上記添加剤の添加量は、添加剤の種類にもよるが、吸水性樹脂に対して0.01重量%〜5重量%程度の範囲内とすればよい。尚、添加剤の添加方法は、特に限定されるものではない。
【0045】
上記の構成によれば、吸水性樹脂は、多糖類をアミノ酸類により架橋させてなっており、生理食塩水の吸水倍率が10 g/g以上、生理食塩水の加圧下の吸水倍率が10ml/g以上、かつ、生分解率が10%以上である。
【0046】
従って、吸水性樹脂は、吸水能力および生分解性の両方に優れ、しかも、加圧下においても吸水能力を維持することができる。上記の吸水性樹脂は、紙オムツや生理用品等の衛生材料等の衛生分野としての利用のみならず、例えば、医療分野、土木・建築分野、食品分野、工業分野、農業・園芸分野等、さらには、油水分離材、廃液吸収材、防振材、防音材、家庭用雑貨品、玩具、人工雪等、非常に多種多様な分野に利用することができる。
【0047】
また、上記の方法によれば、多糖類をアミノ酸類と混合し、加熱して架橋させるので、上述した優れた性能を備えた吸水性樹脂を製造することができる。
【0048】
さらに、上記の構成によれば、吸水性物品は、土中の細菌や微生物等により分解可能な生分解性を有しているので、土中に埋めるだけで分解される。このため、廃棄処分が簡単であり、かつ、安全性に優れ、環境汚染等の環境衛生問題を引き起こすこともない。
【0049】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、吸水性樹脂の諸性能は、以下の方法で測定した。また、実施例および比較例に記載の「部」は、「重量部」を示している。
【0050】
(a)吸水倍率
吸水性樹脂 0.2gを不織布製のティーバッグ式袋(40mm×150 mm)に均一に入れ、0.9 重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。60分後にティーバッグ式袋を引き上げ、一定時間水切りを行った後、ティーバッグ式袋の重量W1 (g) を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、そのときのティーバッグ式袋の重量W0 (g) を測定した。そして、これら重量W1 ・W0 から、次式、
吸水倍率 (g/g)=(重量W1(g) −重量W0(g) )/吸水性樹脂重量(g)
に従って吸水倍率 (g/g)を算出した。
【0051】
(b)加圧下の吸水倍率
先ず、加圧下の吸水倍率の測定に用いる測定装置について、図1を参照しながら、以下に簡単に説明する。
【0052】
図1に示すように、測定装置は、天秤1と、この天秤1上に載置された所定容量の容器2と、外気吸入パイプ3と、導管4と、ガラスフィルタ6と、このガラスフィルタ6上に載置された測定部5とからなっている。上記の容器2は、その頂部に開口部2aを、その側面部に開口部2bをそれぞれ有しており、開口部2aに外気吸入パイプ3が嵌入される一方、開口部2bに導管4が取り付けられている。また、容器2には、所定量の生理食塩水12が入っている。外気吸入パイプ3の下端部は、生理食塩水12中に没している。外気吸入パイプ3は、容器2内の圧力をほぼ大気圧に保つために設けられている。上記のガラスフィルタ6は、直径55mmに形成されている。そして、容器2およびガラスフィルタ6は、シリコーン樹脂からなる導管4によって互いに連通している。また、ガラスフィルタ6は、容器2に対する位置および高さが固定されている。
【0053】
上記の測定部5は、濾紙7と、支持円筒9と、この支持円筒9の底部に貼着された金網10と、重り11とを有している。そして、測定部5は、ガラスフィルタ6上に、濾紙7、支持円筒9(つまり、金網10)がこの順に載置されると共に、支持円筒9内部、即ち、金網10上に重り11が載置されてなっている。金網10は、ステンレスからなり、400 メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されている。また、金網10の上面、つまり、金網10と吸水性樹脂15との接触面の高さは、外気吸入パイプ3の下端面3aの高さと等しくなるように設定されている。そして、金網10上に、所定量および所定粒径の吸水性樹脂15が均一に撒布されるようになっている。重り11は、金網10、即ち、吸水性樹脂15に対して、15.7 g/cm2の荷重を均一に加えることができるように、その重量が調整されている。
【0054】
上記構成の測定装置を用いて加圧下の吸水倍率を測定した。測定方法について以下に説明する。
【0055】
先ず、容器2に所定量の生理食塩水12を入れる、容器2に外気吸入パイプ3を嵌入する、等の所定の準備動作を行った。次に、ガラスフィルタ6上に濾紙7を載置した。また、この載置動作に並行して、支持円筒9内部、即ち、金網10上に、吸水性樹脂 0.2gを均一に撒布し、この吸水性樹脂15上に重り11を載置した。
【0056】
次いで、濾紙7上に、金網10、つまり、吸水性樹脂15および重り11を載置した上記支持円筒9を、その中心部がガラスフィルタ6の中心部に一致するようにして載置した。
【0057】
そして、濾紙7上に支持円筒9を載置した時点から、60分間にわたって該吸水性樹脂15が吸水した生理食塩水12の体積V1 (ml)を、天秤1の測定値から換算して求めた。また、同様の操作を吸水性樹脂15を用いないで行い、ブランク重量、つまり、吸水性樹脂15以外の例えば濾紙7等が吸水した生理食塩水12の体積V0 (ml)を、天秤1の測定値から換算して求めた。
【0058】
そして、これら体積V1 ・V0 から、次式、
加圧下の吸水倍率(ml/g)=
(体積V1(ml) −体積V0(ml) )/吸水性樹脂重量(g)
に従って、加圧下の吸水倍率(ml/g)を算出した。
【0059】
(c)生分解率
生分解試験は、修正MITI(Ministry of International Trade and Industry)試験に従って実施した。即ち、JIS K−0102における生物化学酸素消費量の項に規定されている組成液としての基礎培養液 200mlに、試験物質としての吸水性樹脂を 100 ppmとなるように添加すると共に、活性汚泥を30 ppmとなるように添加した。その後、この基礎培養液を暗所下で25℃に保ち、攪拌しながら28日間にわたって培養した。そして、上記培養期間中、活性汚泥により消費された酸素量を定期的に測定し、生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical Oxygen Demand )曲線を求めた。
【0060】
生分解率(%)は、上記のBOD曲線から得られる試験物質(吸水性樹脂)の生物化学的酸素要求量A(mg)と、BOD曲線から得られるブランク、つまり、基礎培養液の酸素消費量B(mg)と、試験物質を完全酸化させる場合に必要な全酸素要求量(TOD:Total Oxygen Demand )C(mg)とから、次式、
生分解率(%)={(A−B)/C}× 100
に従って算出した。
【0061】
〔実施例1〕
溶媒としての蒸留水 480部に、多糖類としてのカルボキシメチルセルロース(アクアロン(Aqualon) 株式会社製:商品名 アクアソルブB313)20部を溶解させることにより、4重量%カルボキシメチルセルロース水溶液 500部を調製した。また、溶媒としての蒸留水99.9部に、アミノ酸類としてのアスパラギン酸0.1 部を溶解させることにより、 0.1重量%アスパラギン酸水溶液 100部を調製した。
【0062】
次いで、カルボキシメチルセルロース水溶液にアスパラギン酸水溶液を混合して充分に攪拌した。続いて、得られた混合物を乾燥機を用いて、 120℃で70分間加熱することにより、乾燥物とした。この乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の吸水倍率、加圧下の吸水倍率、および、生分解率(以下、諸性能と記す)を測定した。これらの値(以下、単に結果と記す)を表1に合わせて記載した。
【0063】
〔実施例2〕
実施例1における加熱時間を70分間から 160分間に変更した以外は、実施例1と同様の反応および操作を行い、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。尚、実施例2にて得られた吸水性樹脂は、実施例1にて得られた吸水性樹脂よりも、いわゆるゲル強度に優れていた。
【0064】
〔実施例3〕
実施例1におけるアスパラギン酸 0.1部に代えて、アミノ酸類としてのポリアスパラギン酸 0.1部を用い、加熱時間を70分間から90分間に変更した以外は、実施例1と同様の反応および操作を行い、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。
【0065】
〔実施例4〕
実施例3におけるポリアスパラギン酸の使用量を 0.1部から 1.0部に変更し、加熱時間を90分間から30分間に変更した以外は、実施例3と同様の反応および操作を行い、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。
【0066】
〔実施例5〕
実施例3における加熱時間を90分間から 160分間に変更した以外は、実施例3と同様の反応および操作を行い、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。
【0067】
〔実施例6〕
実施例3における加熱温度を 120℃から 150℃に変更し、加熱時間を90分間から20分間に変更した以外は、実施例3と同様の反応および操作を行い、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。
【0068】
〔実施例7〕
実施例1におけるカルボキシメチルセルロース20部に代えて、多糖類としてのデンプングリコール酸(松谷化学工業株式会社製:商品名 プリモジェル)20部を用いた以外は、実施例1と同様の反応および操作を行い、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。
【0069】
〔実施例8〕
実施例7におけるアスパラギン酸 0.1部に代えて、アミノ酸類としてのポリアスパラギン酸 0.1部を用いた以外は、実施例7と同様の反応および操作を行い、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。
【0070】
〔実施例9〕
攪拌機を取り付けた反応器に、溶媒としてのイソプロピルアルコール83g、粉砕された針葉樹クラフトパルプ4g、および、15重量%水酸化ナトリウム水溶液20gを加え、この混合物を30℃で1時間攪拌した。次に、上記の混合物に、イソプロピルアルコール2gおよびクロロ酢酸(エーテル化剤)2gからなる溶液を、混合物(反応系)の温度が上昇しないように留意しながら添加した。添加後、該混合物を30℃で30分間攪拌し、次いで、30分間かけて30℃から74℃に昇温させ、さらに、74℃で1時間攪拌した。これにより、エーテル化度が 0.4であるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(多糖類の塩類)を相当量含有するイソプロピルアルコール−水混合溶液を調製した。
【0071】
次いで、上記の混合溶液にアミノ酸類としてのアスパラギン酸 4.1gを加え、74℃で充分に攪拌した後、該混合溶液を吸引濾過することにより、イソプロピルアルコールおよび水(濾液)を除去して反応生成物(ケーク)を得た。そして、この反応生成物を、各 200mlの60容量%メチルアルコール水溶液で2回、 200mlのメチルアルコールで1回洗浄した。洗浄後、上記の反応生成物を熱風乾燥機を用いて、 150℃で15分間加熱処理することにより、カルボキシメチルセルロース塩架橋体とした。
【0072】
続いて、上記のカルボキシメチルセルロース塩架橋体1gに脱イオン水50gを混合して水性ゲルを生成した。この水性ゲルを親水性有機溶媒としての大過剰のメチルアルコールに浸漬することにより、水性ゲルに含まれる水をメチルアルコールで置換した。即ち、水性ゲルを脱水した。その後、吸引濾過することにより固形物(ゲル)を得た。
【0073】
上記の固形物を乾燥機を用いて、50℃で1時間減圧乾燥させることにより、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。
【0074】
〔実施例10〕
実施例9におけるクロロ酢酸の使用量を2gから4gに変更した以外は、実施例9と同様の反応および操作を行い、エーテル化度が0.64であるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を相当量含有するイソプロピルアルコール−水混合溶液を調製した。
【0075】
次いで、上記の混合溶液に加えるアスパラギン酸の量を 4.1gから 0.5gに変更し、固形物を熱風乾燥機を用いて、130 ℃で60分間加熱処理した以外は、実施例9と同様の反応および操作を行い、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。
【0076】
〔比較例1〕
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、および窒素ガス吹き込み管を取り付けた2Lの四ツ口丸底フラスコを反応器とした。この反応器に、シクロヘキサン1150ml、および、エチルセルロース(ハーキュリーズ社製:商品名 エチルセルロースN−200) 9.0gを仕込んだ。次いで、反応系に窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した後、反応液を75℃に昇温させた。
【0077】
一方、98重量%水酸化ナトリウム65.8gをイオン交換水 200gに溶解させて水酸化ナトリウム水溶液を調製した。そして、別のフラスコに入ったアクリル酸 150gを、フラスコを冷却しながら、上記の水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。アクリル酸ナトリウム水溶液の濃度は45重量%であった。次いで、この水溶液に、重合開始剤である過硫酸カリウム 0.5gおよびN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.15gを添加した。アクリル酸に対する重合開始剤の割合は、0.1 重量%であった。そして、水溶液に窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
【0078】
この水溶液を上記の滴下ロートに入れ、1時間かけて該水溶液を反応液に滴下した。滴下終了後、反応液を75℃に保ちながら、1時間反応を続けた。そして、反応終了後、シクロヘキサンを減圧下に留去し、膨潤ポリマーを取り出した。得られた膨潤ポリマーを、80℃〜 100℃で減圧乾燥することにより、比較用の吸水性樹脂を得た。得られた比較用吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。
【0079】
〔比較例2〕
攪拌機、温度計、および窒素ガス吹き込み管を取り付けた反応器に、トウモロコシデンプン50部および水 300部を仕込んだ。この反応液を、窒素気流下、50℃で1時間攪拌した。続いて、反応液を30℃に冷却した後、アクリル酸20部、アクリル酸ナトリウム80部、N,N−メチレンビスアクリルアミド0.02部、および、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム 0.1部および亜硫酸水素ナトリウム0.01部を添加して重合を開始した。そして、反応温度30℃〜80℃で4時間反応させた後、含水ゲル重合体を取り出した。
【0080】
得られた含水ゲル重合体を、 120℃で熱風乾燥した。次いで、乾燥物を粉砕して、デンプングラフト重合体からなる比較用の吸水性樹脂を得た。得られた比較用吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載した。
【0081】
【表1】
Figure 0003720084
【0082】
実施例1〜実施例10および比較例1〜比較例2の結果から明らかなように、本実施例にかかる吸水性樹脂は、従来の吸水性樹脂と比較して、吸水能力である吸水倍率、および、生分解性の両方に優れ、しかも、加圧下においても吸水倍率を維持可能であることがわかった。
【0083】
〔実施例11〕
実施例1と同様の反応および操作を行って得られた吸水性樹脂を用いて、吸水性物品としての紙オムツを以下に示す方法により作成した。
【0084】
即ち、先ず、上記の吸水性樹脂8gと、粉砕パルプ30gとを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、所定のメッシュに形成されたワイヤースクリーン上に、バッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、14cm×40cmの大きさのウエブに成形した。さらに、このウエブの上下面をティッシュペーパーで挟持した後、所定圧力で 150℃、1分間エンボシングすることにより、吸水体を作成した。尚、上記ティッシュペーパーの坪量は0.0013 g/cm2であった。
【0085】
続いて、図2に示すように、バックシート21、上記の吸水体22、および、トップシート23を、両面テープを用いてこの順に互いに貼着した。上記のバックシート21は、液不透過性のポリエチレンからなっており、所定形状に切断されている。また、上記のトップシート23は、液透過性のポリプロピレンからなっており、バックシート21と略同一形状に切断されている。そして、上記貼着物における所定位置に、いわゆるレッグギャザー24・24、および、いわゆるウエストギャザー25・25を設けた。さらに、上記貼着物における所定位置に、いわゆるテープファスナー26・26を取り付けた。これにより、吸水性物品としての紙オムツを作成した。この紙オムツの重量は約54gであった。
【0086】
上記構成の紙オムツを評価するため、10名の赤ちゃんに各々30個ずつ、順次装着して使用してもらった。その結果、上記の紙オムツは、漏れ等が生じることなく、使用状態は良好であった。また、該紙オムツは、従来の紙オムツと比較して、生分解性に優れていた。
【0087】
〔実施例12〕
実施例10と同様の反応および操作を行って得られた吸水性樹脂を用い、実施例11と同様の操作を行なって紙オムツを作成した。そして、実施例11と同様の方法によって該紙オムツを評価した。その結果、上記の紙オムツは、漏れ等が生じることなく、使用状態は良好であった。また、該紙オムツは、従来の紙オムツと比較して、生分解性に優れていた。
【0088】
【発明の効果】
上記の構成によれば、吸水性樹脂は、多糖類をアミノ酸類により架橋させてなっている。また、 60 分間での生理食塩水 0.9 重量%塩化ナトリウム水溶液)の吸水倍率が10 g/g以上、60 分間での生理食塩水の加圧下(荷重 15.7 g/cm 2 の吸水倍率が10ml/g以上、かつ、修正MITI試験の 28 日間での生分解率が10%以上である。従って、吸水性樹脂は、吸水能力および生分解性の両方に優れ、しかも、加圧下においても吸水能力を維持することができるという効果を奏する。
【0089】
上記の吸水性樹脂は、紙オムツや生理用品等の衛生材料等の衛生分野としての利用のみならず、例えば、医療分野、土木・建築分野、食品分野、工業分野、農業・園芸分野等、さらには、油水分離材、廃液吸収材、防振材、防音材、家庭用雑貨品、玩具、人工雪等、非常に多種多様な分野に利用することができる。
【0090】
また、上記の方法によれば、多糖類をアミノ酸類と混合し、加熱して架橋させるので、上述した優れた性能を備えた吸水性樹脂を製造することができる。従って、上記の方法は、吸水性樹脂の製造方法として好適に使用されるという効果を奏する。
【0091】
さらに、上記の構成によれば、吸水性物品は、土中の細菌や微生物等により分解可能な生分解性を有しているので、土中に埋めるだけで分解される。このため、廃棄処分が簡単であり、かつ、安全性に優れ、環境汚染等の環境衛生問題を引き起こすこともないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における吸水性樹脂が示す性能の一つである加圧下の吸水倍率の測定に用いる測定装置の概略の断面図である。
【図2】本発明における吸水性樹脂を用いた吸水性物品としての紙オムツを一部破断面で示す概略の斜視図である。
【符号の説明】
1 天秤
2 容器
3 外気吸入パイプ
4 導管
5 測定部
6 ガラスフィルタ
7 濾紙
9 支持円筒
10 金網
11 重り
12 生理食塩水
15 吸水性樹脂
21 バックシート
22 吸水体
23 トップシート
24 レッグギャザー
25 ウエストギャザー
26 テープファスナー

Claims (7)

  1. 多糖類をアミノ酸類により架橋させてなることを特徴とする吸水性樹脂。
  2. 多糖類が、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルデンプン、および、これらの塩類からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の吸水性樹脂。
  3. アミノ酸類が酸性アミノ酸類からなることを特徴とする請求項1または2記載の吸水性樹脂。
  4. 60 分間での生理食塩水 0.9 重量%塩化ナトリウム水溶液)の吸水倍率が10 g/g以上、60 分間での生理食塩水の加圧下(荷重 15.7 g/cm 2 の吸水倍率が10ml/g以上、かつ、修正MITI試験の 28 日間での生分解率が10%以上であることを特徴とする吸水性樹脂。
  5. 多糖類をアミノ酸類と混合し、加熱することを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。
  6. 多糖類をアミノ酸類と混合後、加熱し、加熱後、さらに水性液体で膨潤させて得られる水性ゲル中の水を親水性有機溶媒で置換することを特徴とする請求項5記載の吸水性樹脂の製造方法。
  7. 60 分間での生理食塩水 0.9 重量%塩化ナトリウム水溶液)の吸水倍率が10 g/g以上、60 分間での生理食塩水の加圧下(荷重 15.7 g/cm 2 の吸水倍率が10ml/g以上、かつ、修正MITI試験の 28 日間での生分解率が10%以上である、請求項1から4の何れか1項に記載の吸水性樹脂を含むことを特徴とする吸水性物品。
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