JP3720081B2 - 階調補正方法および装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、画像情報を担持する画像信号を所望とする階調曲線に基づいて可視像として再生する際に、この可視像が目的に応じて見易い階調の画像に再生されるように、基準となる階調曲線を補正して所望とする階調曲線を得る階調補正方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
画像信号に基づいて変調された光で写真感光材料を露光し、この写真感光材料に画像を再生記録する画像記録装置が種々の分野で用いられている。
【0003】
たとえば、後の画像処理に適合するように設計されたガンマ値の低いフイルムを用いてX線画像を記録し、このX線画像が記録されたフイルムからX線画像を読み取って電気信号に変換し、この電気信号(画像信号)に画像処理を施した後画像記録再生装置を用いて感光フイルム上に可視画像を再生することにより、コントラスト,シャープネス,粒状性等の画質性能の良好な再生画像を得ることのできるシステムが開発されている(特公昭61-5193 号公報参照)。
【0004】
また本出願人により、放射線(X線,α線,β線,γ線,電子線,紫外線等)を照射するとこの放射線エネルギーの一部が蓄積され、その後可視光等の励起光を照射すると蓄積されたエネルギーに応じて輝尽発光を示す蓄積性蛍光体(輝尽性蛍光体)を利用して、人体等の被写体の放射線画像を一旦シート状の蓄積性蛍光体に撮影記録し、この蓄積性蛍光体シートをレーザー光等の励起光で走査して輝尽発光光を生ぜしめ、得られた輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得、画像記録再生装置を用いてこの画像信号に基づき被写体の放射線画像を感光フイルム上に可視画像として出力する放射線画像記録再生システムがすでに提案されている(特開昭55-12429号等)。
【0005】
上述したシステムにおいては、あらかじめ撮影する対象物および各々の目的に適応する濃度−画像信号変換パターンである階調補正パターンを作成しておき、画像情報を担持する画像信号に対してこのパターンに応じた信号変換処理を施すことによって階調処理を行うことが多い。
【0006】
しかしながら、上記の階調処理において多種の撮影対象物および種々の目的に応じた階調補正曲線を作成する場合には、この階調補正曲線が数十種類程度必要になり、この階調補正曲線を作成するための粗データ収集労力およびデジタル変換して記憶させておくための電子計算機等の記憶容量は膨大なものとなり実用上簡便な方法とはいえない。
【0007】
このため、直角座標の一方の軸にこの可視像の濃度をとり、他方の軸にこの画像信号のレベルをとった信号レベル−濃度座標において、基準となる階調曲線を作成し、この座標系において曲線上の一点を中心としてこの曲線を回転かつ平行移動して所定の画像情報および目的に応じた所望の階調曲線を得る階調補正方法が提案されている。
【0008】
また、図15および図16に示すような種々の階調曲線を得るために基準となる階調曲線が所望とするカーブ形状および形状変化の程度を有する階調曲線となるように基準階調曲線の全体的な濃度やコントラストを変化させるようにした階調補正方法が提案されている。
【0009】
この方法では、図17に示すように基本階調曲線(実線で示す)を濃度軸に沿って伸縮した後(破線で示す)に、図18に示すように入力画像信号軸に沿って伸縮させてコントラストを変化させ、これにより所望とする階調曲線を得ている。
【0010】
さらに、図19に示すように、いくつかの特徴的な基本階調を用意しておき、その中から所望の階調に近いものを選択し、選択された階調の強調度(階調曲線の曲り具合の程度)を変えることにより所望とする階調を得る方法が提案されている。この方法では最高濃度、最低濃度を変えることなく階調の強調度を変化させることができる(特開平5-323750号)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述した画像信号を可視像として再生する際には、階調補正方法により補正された階調曲線を調整して再生画像の最高濃度および最低濃度を設定したり、再生画像の部分的な濃度およびコントラストを変化させることにより所望とする階調の画像を得たいという要望が大きかった。
【0012】
しかしながら、上述した基準階調曲線の全体的なコントラストや濃度を調整することにより階調曲線を補正する方法においては、補正後の階調曲線の最高濃度および最低濃度が変化してしまう上に、階調曲線の部分的な補正を行うことができないため、再生される画像を所定の濃度の範囲のものとするとともに、画像の所望とする濃度の部分のみの濃度およびコントラストを変化させたりすることができなかった。また、上述した特開平5-323750号に記載された階調曲線の最高濃度および最低濃度を固定しておいて階調曲線の全体的な曲り具合を変化させる方法では、補正後の階調補正曲線の最高濃度および最低濃度は変化しないが、再生画像の一部分のみの濃度およびコントラストを変化させることができなかった。
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、再生画像の最高濃度および最低濃度を設定できるとともに部分的な濃度およびコントラストの調整を行うことができる階調補正方法および装置を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明による階調補正方法は、基準となる基本階調曲線を補正して所望とする階調曲線を得、該所望とする階調曲線に基づいて画像情報を担持する画像信号を所望とする階調により可視像として記録再生する画像記録再生方法における階調補正方法において、
直角座標の一方の軸に前記可視像の濃度をとり、他方の軸に前記画像信号のレベルをとった濃度軸および信号レベル軸からなる信号レベル−濃度座標系において、前記基本階調曲線の最低濃度および最高濃度が、所望最低濃度および所望最高濃度となるように該基本階調曲線を前記濃度軸に沿って伸縮し、
該伸縮された基本階調曲線上の所定濃度に対応する点が所望とする濃度に対応する点となるように該基本階調曲線を前記濃度軸に平行に移動させ、
該移動された基本階調曲線上の前記所望濃度に対応する点を中心として、該点が所望とするコントラストとなるように該基本階調曲線を所定角度回転させ、
該回転された基本階調曲線の最低濃度および最高濃度がそれぞれ前記所望最低濃度および前記所望最高濃度となり、かつ前記所望濃度に対応する点が前記所望とする濃度およびコントラストとなるように、前記伸縮された基本階調曲線と前記回転された基本階調曲線とを所定の重み付け係数により重み付加算することにより所望とする階調曲線を得ることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、階調曲線とは、最終再生画像の光学濃度に対する被写体の輝度を光電変換した画像信号レベルの対応を表す特性曲線のことであり、画像を扱う分野において通常用いられているものである。
【0016】
また、本発明による階調補正装置は、上記方法を実施するためのものであり、基準となる基本階調曲線を補正して所望とする階調曲線を得、該所望とする階調曲線に基づいて画像情報を担持する画像信号を所望とする階調により可視像として記録再生する画像記録再生装置における階調補正装置において、
直角座標の一方の軸に前記可視像の濃度をとり、他方の軸に前記画像信号のレベルをとった濃度軸および信号レベル軸からなる信号レベル−濃度座標系において、基準となる基本階調曲線を記憶する基本階調記憶手段と、
該基本階調曲線記憶手段に記憶された基本階調曲線の最低濃度および最高濃度が、所望最低濃度および所望最高濃度となるように該基本階調曲線を前記濃度軸に沿って伸縮する伸縮手段と、
該伸縮手段により伸縮された基本階調曲線上の所定濃度に対応する点が所望とする濃度となるように該基本階調曲線を前記濃度軸に平行に移動させる移動手段と、
該移動手段により移動された基本階調曲線上の前記所望濃度に対応する点を中心として、該点が所望とするコントラストとなるように該基本階調曲線を所定角度回転させる回転手段と、
該回転手段により回転された基本階調曲線の最低濃度および最高濃度がそれぞれ前記所望最低濃度および前記所望最高濃度となり、かつ前記所望濃度に対応する点が前記所望とする濃度およびコントラストとなるように、前記伸縮された基本階調曲線と前記回転された基本階調曲線とを所定の重み付け係数により重み付加算する重み付け加算手段とからなることを特徴とするものである。
【0017】
さらに、上記方法および装置において、前記所望階調曲線が、前記所望濃度に対応する点で前記回転された基本階調曲線と滑らかに接するように前記所定の重み付け係数を設定することが好ましく、さらには、前記所望階調曲線が、前記所望最低濃度および前記所望最高濃度に対応する点で前記伸縮された基本階調曲線と滑らかに接するように前記所定の重み付け係数を設定することがさらに好ましい。
【0018】
また、記憶手段に前記基本階調曲線を複数記憶させ、該複数の基本階調曲線のうち1つの基本階調曲線を選択し、該選択された1つの基本階調曲線の伸縮、移動、回転および重み付け加算を行うようにしてもよい。
【0019】
さらに、前記所望階調曲線を前記基本階調曲線として、該基本階調曲線の伸縮、移動、回転および重み付け加算を繰り返すようにしてもよい。
【0020】
【作用】
本発明による階調補正方法および装置は、階調補正を行う基本となる基本階調曲線の最低濃度および最高濃度が所望最低濃度および所望最高濃度となるようにこの基本階調曲線を伸縮し、この伸縮された基本階調曲線の観察の対象とすべき所定濃度に対応する点が、所望の濃度およびコントラストとなるようにこの曲線を移動および回転させ、回転された基本階調曲線の最低濃度および最高濃度が所望最低濃度および所望最高濃度となり、かつ所望濃度に対応する点が所望濃度およびコントラストとなるように、伸縮された基本階調曲線と回転された基本階調曲線とを所定の重み付け係数により重み付け加算するようにしたものである。そして、階調曲線の信号値の最低レベルおよび最高レベルの点においては伸縮された基本階調曲線の重み付け係数が1、所望濃度の点においては回転された基本階調曲線の重み付け係数が1となるように重み付け加算することにより基本階調曲線を補正することにより、得られる階調曲線は最高濃度および最低濃度が所望最高濃度および所望最低濃度となり、かつ所望濃度に対応する部分的な点が所望とする濃度および所望とするコントラストを有する曲線となる。
【0021】
したがって、この所望階調曲線に基づいて画像信号を可視像として再生すれば、再生画像は所望最低濃度と所望最高濃度の範囲にあり、かつ観察の対象となる所定濃度に対応する点は所望とする濃度および所望とするコントラストで再生されることとなる。
【0022】
また、上述した放射線画像を再生する場合に限らず、断層撮影により得られた画像、電子顕微鏡像等の撮影する対象が異なる場合であっても、撮影により得られる画像信号の種類に応じて所望とする階調曲線を設定することができるため、再生画像の種類に拘らず所望とする階調の画像を再生することができる。
【0023】
また、所望濃度の点および/または所望最低濃度と所望最高濃度の点において回転された基本階調曲線と所望階調曲線が滑らかに接するように重み付け係数を設定することにより、伸縮された基本階調曲線および回転された基本階調曲線とが滑らかに接することとなり、この階調曲線に基いて再生された可視像は視覚的な印象が自然なものとなる。
【0024】
さらに、基本階調曲線を複数設け、この複数の基本階調曲線から補正をすべき基本階調曲線を選択することにより、補正をすべき基本階調曲線の選択の幅が広がることとなる。
【0025】
また、補正された所望階調曲線を基本階調曲線として、繰り返し補正を行うことにより、所望階調曲線をさらに所望とする濃度およびコントラストとすることができるため、この補正階調曲線により再生される画像はより観察に適したものとなる。
【0026】
【実施例】
以下図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【0027】
図1は本発明による階調補正方法および装置の概略を説明するブロック図である。図1に示すように本発明による階調補正方法および装置は、直角座標の一方の軸に可視像の濃度をとり、他方の軸に画像信号のレベルをとった濃度軸および信号レベル軸からなる信号レベル−濃度座標系において、基準となる基本階調曲線を記憶する基本階調記憶手段1と、
基本階調曲線記憶手段1に記憶された基本階調曲線の最低濃度および最高濃度が、所望最低濃度および所望最高濃度となるように基本階調曲線を濃度軸に沿って伸縮する伸縮手段2と、
伸縮手段2により伸縮された基本階調曲線上の所定濃度に対応する点が所望とする濃度となるように基本階調曲線を濃度軸に平行に移動させる移動手段3と、移動手段3により移動された基本階調曲線上の所望濃度に対応する点を中心として、この点が所望とするコントラストとなるように基本階調曲線を所定角度回転させる回転手段4と、
回転手段4により回転された基本階調曲線の最低濃度および最高濃度がそれぞれ前述した所望最低濃度および所望最高濃度となり、かつ所望濃度に対応する点が所望とする濃度およびコントラストとなるように、伸縮された基本階調曲線と回転された基本階調曲線とを所定の重み付け係数により重み付加算する重み付け加算手段5とからなり、上述した基本階調記憶手段1、伸縮手段2、移動手段3、回転手段4および重み付け加算手段5により基本階調曲線を補正して、所望とする階調曲線6を得るものである。
【0028】
以下本発明の実施例による階調補正装置の概略について説明する。
【0029】
図2は、放射線画像撮影装置の一例を表す図である。
【0030】
この放射線画像撮影装置10の放射線源11から放射線12が人体等の被写体13に向けて照射され、被写体13を透過した放射線12a が蓄積性蛍光体シート14に照射されることにより、被写体13の透過放射線画像がシート14に蓄積記録される。
【0031】
図3は、放射線画像読取装置の一例を表す斜視図である。
【0032】
上記のようにして放射線画像の蓄積記録が行われた蓄積性蛍光体シートがこの放射線画像読取装置の所定位置にセットされる。
【0033】
所定位置にセットされた蓄積性蛍光体シート14は、図示しない駆動手段により駆動されるエンドレスベルト等のシート搬送手段15により、矢印Y方向に搬送(副走査)される。一方、レーザ光源16から発せられた光ビーム17はモータ18により駆動され矢印Z方向に高速回転する回転多面鏡19によって反射偏向され、fθレンズ等の集束レンズ20を通過した後、ミラー21により光路をかえてシート14に入射し、副走査の方向(矢印Y方向)と略直角な矢印X方向に主走査する。シート14の光ビーム17が照射された箇所からは、蓄積記録されている放射線画像情報に応じた光量の輝尽発光光22が発せられ、この輝尽発光光22は光ガイド23によって導かれ、フォトマルチプライヤ(光電子増倍管)24によって光電的に検出される。光ガイド22はアクリル板等の導光性材料を成形して作られたものであり、直線状をなす入射端面23a が蓄積性蛍光体シート14上の主走査線にそって延びるように配され、円環状に形成された射出端面23b にフォトマルチプライヤ24の受光面が結合されている。入射端面23a から光ガイド23内に入射した輝尽発光光22は、該光ガイド23の内部を全反射を繰り返して進み、射出端面23b から射出してフォトマルチプライヤ24に受光され、放射線画像を表す輝尽発光光22がフォトマルチプライヤ24によって電気信号に変換される。
【0034】
フォトマルチプライヤ24から出力されたアナログ信号Sは、ログアンプ25で対数的に増幅された後A/D変換器26に入力されて、蓄積性蛍光体シート14上における所定のサンプリング間隔に対応する時間間隔でサンプリングしてディジタルの画像データS1に変換される。この画像データS1は、一旦記憶部27に記憶された後、画像処理装置28に送られる。
【0035】
この画像処理装置28は本発明の階調補正装置の一例を内包するものである。すなわち、前述した図1に示す基本階調記憶手段1、伸縮手段2、移動手段3、回転手段4および重み付け加算手段5を内包するものであり、入力手段29からの濃度、コントラスト等の入力により各手段における処理を行うものである。
【0036】
図4は画像処理装置28の基本階調記憶手段1に記憶された基本階調曲線の一例を表す図である。図4に示すように、基本階調曲線K1は縦軸に可視像の濃度値をとり、横軸に画像信号のレベルをとった濃度軸および信号レベル軸からなる信号レベル−濃度座標系において設定されており、本実施例においては図4に示す基本階調曲線K1を補正することにより所望とする階調曲線を得るものである。
【0037】
まず、伸縮手段2において基本階調曲線K1の伸縮がなされる。すなわち、図5に示すように基本階調曲線K1の最高濃度Dmax および最低濃度Dmin が入力手段29より入力された所望最高濃度dmax および所望最低濃度dmin となるように基本階調曲線K1を濃度軸に沿って伸縮し、伸縮された基本階調曲線K2を得る。
【0038】
次いで移動手段3において、伸縮手段2により伸縮された基本階調曲線K2上の所定濃度に対応する点が所望とする濃度となるように基本階調曲線K2を濃度軸に平行に移動させる。まず、入力手段29より所望とする画像濃度に対応する濃度値D0を入力するとともに、この濃度値D0の希望濃度DHを入力する。移動手段3においてはこの入力された濃度値D0と希望濃度値DHとに基づいて、伸縮された基本階調曲線K2を濃度軸に平行に移動させるための移動量ΔDが求められ、図6に示すように伸縮された基本階調曲線K2を移動させ、移動された基本階調曲線K3を得る。また、濃度値の入力方法はこれに限るものではなく、例えば濃度値D0と希望濃度値DHとの差ΔDを入力するようにしてもよい。
【0039】
次いで、回転手段4において、移動手段3により移動された基本階調曲線K3上の所望濃度に対応する点を中心として、この点が所望とするコントラストとなるように移動された基本階調曲線K3を所定角度回転させる。すなわち、まず入力手段29より移動された基本階調曲線K3の回転量Δαを入力する。回転手段4においては、この入力された回転量Δαに基づいて図7に示すように移動された基本階調曲線K3を所望濃度に対応する点Pを中心としてΔα回転させ、回転された基本階調曲線K4を得る。
【0040】
次いで、重み付け加算手段5において、回転手段4により回転された基本階調曲線K4の最低濃度および最高濃度がそれぞれ所望最低濃度dmin および所望最高濃度dmax となり、かつ所望濃度に対応する点Pが所望とする濃度DHおよびコントラストとなるように、伸縮された基本階調曲線K2と回転された基本階調曲線K4とを所定の重み付け係数により重み付け加算する。すなわち、伸縮された基本階調曲線K2と回転された基本階調曲線K4との重み付け加算により得られる階調曲線をK5とすると、
K5=W×K4+(1−W)×K2 …(1)
但し W:重み係数
の演算がなされ、階調曲線K5が得られる。ここで、重み係数Wの例としては図9に示すものが挙げられる。そして重み付け加算手段5においては重み係数Wを用いて式(1) に示す演算がなされ、図8に示すような階調曲線K5が得られる。
【0041】
ここで、重み係数Wは回転手段4により回転された基本階調曲線K4の最低濃度および最高濃度がそれぞれ所望最低濃度dmin および所望最高濃度dmax となり、かつ所望濃度に対応する点Pが所望とする濃度DHおよびコントラストとなるように、点P付近では階調曲線K4の重みが大きく、最高濃度および最低濃度付近では階調曲線K2の重みが大きくなるように設定され、かつ階調曲線K5が点P付近で階調曲線K4と滑らかに接しかつ最高濃度および最低濃度付近では階調曲線K2と滑らかに接するように重み付け係数の変化が連続するように設定される。このように重み付け係数を連続的に変化させることにより、補正された階調曲線に基づいて再生される可視像は視覚的な印象が自然なものとなる。
【0042】
ここで重み付け係数Wの設定の方法について説明する。なお、ここでは重み係数を4次の多項式を用いて求める場合の例を説明するものとし、変更した濃度とコントラストは階調5の全範囲に亘って影響を及ぼすものとする。図10に示すように希望濃度(DH)に対する入力デジタル値を(DHin)とし、各々の入力デジタル値をxとする。このとき、x<DHin,DHin<xの区間でそれぞれ重み係数W(x)を決める。各区間における重み係数の決定条件は以下のようになる。
【0043】
x<DHinのとき DHin<x
W(0)=0 ……1.…… W(DHin)=1
W(DHin)=1 ……2.…… W(MAX)=0
W′(0)=0 ……3.…… W′(DHin)=0
W′(DHin)=0 ……4.…… W′(MAX)=0
W″(k1)=0 ……5.…… W″(k2)=0
(0<k1<DHin) (DHin<k2<MAX)
これらの条件式の意味は
1.2.は先に述べた階調曲線K2の階調曲線K4の影響力を満たすための条件3.4.は滑らかな階調を作るための条件
5.は変更した濃度、コントラストが階調曲線K5に及ぼす影響の度合い調整のための条件である。5.の条件式において、k1,k2をDHin側にすれば階調曲線K5の影響力が強い範囲は狭くなる。
【0044】
この例では変更した濃度、コントラストは階調曲線K5の全範囲に影響を及ぼしていたが、この影響の及ぶ範囲を限定した重み係数の設定もできる。この例について図11を用いて説明する。今、0からDHinまでの範囲をL1 、DHinからMAXまでの範囲をL2 とする。このとき範囲L1 ,L2 とで範囲の狭い方の係数を求め、他方の係数についてはDHinで対称な係数を設定する。このような重み関数を設定すれば極端に最小(最大)濃度に近い部分の濃度とコントラストの変更をした場合にその影響が最大(最小)濃度側にまで及んでしまうという事態を避けることができ、局所的な階調の変更をすることができる。先に示した図9の重み係数はこの例である。
【0045】
上記の2つの例は4次の多項式を用いて係数を求める方法であるが、重み係数を求める方法はこれに限られるものではなく、他の多項式、三角関数、指数関数などを使用してもよい。
【0046】
また、基本階調曲線K5の計算方法は重み付け加算に限らず、
【0047】
【数1】
【0048】
のような式でもよく、入力値に依存して合成比率を変更できるものなら何でもよい。
【0049】
このようにして所望とする階調曲線K5が得られると画像処理装置28においてこの階調曲線K5に基づいて画像信号S1が処理され、処理された画像信号S2はレーザプリンタやCRT等の再生手段30に変換され、この再生手段30において可視像として再生される。
【0050】
なお、上述した実施例において求められた所望とする階調曲線K5を記憶手段27に記憶しておき、この階調曲線K5を基本階調として上述した伸縮手段2、移動手段3、回転手段4および重み付け加算手段5における処理を施すようにしてもよい。この場合、再度の補正としては前回の補正により設定した所定信号レベルに対応する点とは異なるレベルの点を所望とする濃度およびコントラストとなるように補正することが考えられる。またこの伸縮手段2、移動手段3、回転手段4および重み付け加算手段5における処理を繰り返すようにすれば、所望とする理想の階調に限りなく近い階調曲線を作成することができる。
【0051】
また、本発明においては、極端な階調の補正を行おうとすると、図12に示すように入力画像信号値に対して出力濃度値が単調増加にならない現象が起こることがある。このような場合には、補正後の階調曲線K5が単調増加となるような対策をとる。例えば図13に示すように濃度値が逆転している区間の出力濃度値を一定値にして階調曲線K6を得る方法や、図14に示すように出力濃度値が逆転した区間の前後を直線で変換して階調曲線K7を得る方法等が考えられる。もちろん、対策の方法としてはこれらに限定されるものではなく、階調曲線K5を単調増加となるように修正する方法であればいかなる方法を用いてもよいものである。
【0052】
また、上述した実施例においては、放射線画像を蓄積性蛍光体シートに記録し、この蓄積性蛍光体シートから放射線画像を表す画像信号を得て、この画像信号に対して階調処理を行う場合の階調曲線の補正について説明したが、これに限定されるものではなく、X線画像が記録されたフイルムからX線画像を読み取ることによって得られた画像信号に対して階調処理を行う場合の階調曲線を補正するようにしてもよい。また、CTスキャン等の断層撮影により得られた画像信号や、電子顕微鏡の撮影により得られた電子顕微鏡像を表す画像信号に対して階調処理を行う場合の階調曲線を補正するようにしてもよい。本発明による階調補正方法および装置は、再生画像の種類に限らず所望とする階調曲線を得ることができる。
【0053】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明による階調補正方法および装置は、基本階調曲線を補正しても補正後の階調曲線の最高濃度と最低濃度とは所望最高濃度および所望最低濃度の範囲にあり、かつ所望とする画像濃度に対応する点は所望とする濃度およびコントラストとなるため、この階調曲線により画像信号に階調処理を施してこれを再生すれば、再生画像は所望とする濃度およびコントラストで再生されることとなり、所望とする階調の再生画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による階調補正方法および装置の概略を表すブロック図
【図2】放射線画像撮影装置の一例を表す図
【図3】放射線画像読取装置の一例を表す図
【図4】基本階調曲線を表す図
【図5】基本階調曲線の伸縮を説明するための図
【図6】基本階調曲線の移動を説明するための図
【図7】基本階調曲線の回転を説明するための図
【図8】伸縮された基本階調曲線および回転された基本階調曲線の重み付け加算を説明するための図
【図9】重み付け加算の重み付け係数を表す図
【図10】重み付け係数の決定方法を説明するための図
【図11】重み付け係数の決定方法を説明するための図
【図12】出力濃度値が逆転した階調曲線を表す図
【図13】逆転した濃度値を補正した階調曲線を表す図
【図14】逆転した濃度値を補正した階調曲線を表す図
【図15】従来の階調曲線の補正を説明するための図
【図16】従来の階調曲線の補正を説明するための図
【図17】従来の階調曲線の補正を説明するための図
【図18】従来の階調曲線の補正を説明するための図
【図19】従来の階調曲線の補正を説明するための図
【符号の説明】
1 基本階調曲線記憶手段
2 伸縮手段
3 移動手段
4 回転手段
5 重み付け加算手段
6 所望階調曲線
K1 基本階調曲線
K2 伸縮された階調曲線
K3 移動された階調曲線
K4 回転された階調曲線
K5 重み付け加算された階調曲線
Claims (14)
- 基準となる基本階調曲線を補正して所望とする階調曲線を得、該所望とする階調曲線に基づいて画像情報を担持する画像信号を所望とする階調により可視像として記録再生する画像記録再生方法における階調補正方法において、
直角座標の一方の軸に前記可視像の濃度をとり、他方の軸に前記画像信号のレベルをとった濃度軸および信号レベル軸からなる信号レベル−濃度座標系において、前記基本階調曲線の最低濃度および最高濃度が、所望最低濃度および所望最高濃度となるように該基本階調曲線を前記濃度軸に沿って伸縮し、
該伸縮された基本階調曲線上の所定濃度に対応する点が所望とする濃度となるように該基本階調曲線を前記濃度軸に平行に移動させ、
該移動された基本階調曲線上の前記所望濃度に対応する点を中心として、該点が所望とするコントラストとなるように該基本階調曲線を所定角度回転させ、
該回転された基本階調曲線の最低濃度および最高濃度がそれぞれ前記所望最低濃度および前記所望最高濃度となり、かつ前記所定濃度に対応する点が前記所望とする濃度およびコントラストとなるように、前記伸縮された基本階調曲線と前記回転された基本階調曲線とを所定の重み付け係数により重み付加算することにより所望とする階調曲線を得ることを特徴とする階調補正方法。 - 前記所望階調曲線が、前記所望濃度に対応する点で前記回転された基本階調曲線と滑らかに接するように前記所定の重み付け係数を設定することを特徴とする請求項1記載の階調補正方法。
- 前記所望階調曲線が、前記所望最低濃度および前記所望最高濃度に対応する点で前記伸縮された基本階調曲線と滑らかに接するように前記所定の重み付け係数を設定することを特徴とする請求項1または2記載の階調補正方法。
- 前記基本階調曲線が複数あり、該複数の基本階調曲線のうち1つの基本階調曲線を選択し、該選択された1つの基本階調曲線の伸縮、移動、回転および重み付け加算を行うことを特徴とする請求項1、2または3記載の階調補正方法。
- 前記所望階調曲線を前記基本階調曲線として、該基本階調曲線の伸縮、移動、回転および重み付け加算を繰り返すことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の階調補正方法。
- 基準となる基本階調曲線を補正して所望とする階調曲線を得、該所望とする階調曲線に基づいて画像情報を担持する画像信号を所望とする階調により可視像として記録再生する画像記録再生装置における階調補正装置において、
直角座標の一方の軸に前記可視像の濃度をとり、他方の軸に前記画像信号のレベルをとった濃度軸および信号レベル軸からなる信号レベル−濃度座標系において、基準となる基本階調曲線を記憶する基本階調曲線記憶手段と、
該基本階調曲線記憶手段に記憶された基本階調曲線の最低濃度および最高濃度が、所望最低濃度および所望最高濃度となるように該基本階調曲線を前記濃度軸に沿って伸縮する伸縮手段と、
該伸縮手段により伸縮された基本階調曲線上の所定濃度に対応する点が所望とする濃度となるように該基本階調曲線を前記濃度軸に平行に移動させる移動手段と、
該移動手段により移動された基本階調曲線上の前記所望濃度に対応する点を中心として、該点が所望とするコントラストとなるように該基本階調曲線を所定角度回転させる回転手段と、
該回転手段により回転された基本階調曲線の最低濃度および最高濃度がそれぞれ前記所望最低濃度および前記所望最高濃度となり、かつ前記所定濃度に対応する点が前記所望とする濃度およびコントラストとなるように、前記伸縮された基本階調曲線と前記回転された基本階調曲線とを所定の重み付け係数により重み付加算する重み付け加算手段とからなることを特徴とする階調補正装置。 - 前記重み付け加算手段が、前記所望濃度に対応する点で前記回転された基本階調曲線と滑らかに接するように前記所定の重み付け係数を設定する手段であることを特徴とする請求項6記載の階調補正装置。
- 前記重み付け加算手段が、前記所望最低濃度および前記所望最高濃度に対応する点で前記伸縮された基本階調曲線と滑らかに接するように前記所定の重み付け係数を設定する手段であることを特徴とする請求項6または7記載の階調補正装置。
- 前記基本階調曲線記憶手段が複数の基本階調曲線を記憶した手段であり、該複数の基本階調曲線のうち1つの基本階調曲線を選択し、該選択された1つの基本階調曲線の伸縮、移動、回転および重み付け加算を行うことを特徴とする請求項6,7または8記載の階調補正装置。
- 前記所望階調曲線を記憶する所望階調記憶手段をさらに設け、
該所望階調記憶手段に記憶された所望階調曲線を前記伸縮手段に入力し、再度前記伸縮手段による伸縮、前記移動手段による移動、前記回転手段による回転および前記重み付け手段による重み付け加算を繰り返す制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項記載の階調補正装置。 - 前記所定の重み付け係数を多項式により算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の階調補正方法。
- 前記所望とする階調曲線が単調増加とならない場合には、該所望とする階調曲線が単調増加となるように前記所望とする階調曲線を修正することを特徴とする請求項1から5または11のいずれか1項記載の階調補正方法。
- 前記重み付け加算手段が、前記所定の重み付け係数を多項式により算出する手段であることを特徴とする請求項6から10のいずれか1項記載の階調補正装置。
- 前記重み付け加算手段が、前記所望とする階調曲線が単調増加とならない場合には、該所望とする階調曲線が単調増加となるように前記所望とする階調曲線を修正する手段であることを特徴とする請求項6から10または13のいずれか1項記載の階調補正装置。
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