JP3719905B2 - 身体表層部の床ずれ防止用シート状マット体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長期療養中の老人患者等に多発する所謂床ずれの防止用シート状マット体に関するものであり、遠赤外線を放射することにより身体表層部の血行を促進させると共に、通気性の確保と体重圧の分散を図ることにより、床ずれを有効に防止できるようにした身体表層部の床ずれ防止用シート状マット体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ねた切り老人等の身体表層部に生じ易い床ずれの防止策としては、従前から患者の体位を定期的に変えたり、圧迫を受けていた身体表層部を頻繁にマッサージする等の方法が多く採られている。
しかし、体位の変更や身体表層部の頻繁なマッサージには多くの人手が必要になるうえ、患者の管理がともすれば不正確となり、床ずれが発生してしまうことになる。
そのため、近年身体とベット等の体重圧を受ける部材との間に、外表面に多数の凹凸を形成したシート体、内部に冷水や温水を流通せしめる構成のマット体或いは内部に設けた空気流通路から多数の小孔を通して空気を外表面上へ噴出する構成のマット体等を介在させ、身体表層部の通気性を確保すると共に身体表層部にかかる体重圧を分散させることにより、床ずれの発生を防止するようにしたマット体が多く利用されている。
【0003】
しかし、内部に冷水や温水を通して身体の接触部を冷却又は加温する構造のマット体やシート体は、構造が複雑で製造コストが高かくつくうえクリーニングも容易でなく、一般家庭で簡単に使用することが出来ないと云う難点がある。
また、内部から空気を噴射する構成のマット体やシート体の場合も同様であり、空気加圧源を必要とするうえ騒音等の問題もあり、一般家庭では簡単に使用できないと云う問題がある。
更に、身体の表層部を外部から直接冷却又は加温するため、患者に不快感を与え易いうえ、身体表層部の末梢血管内の血行が十分に促進され難くて、床ずれ防止効果が相対的に低いと云う難点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、従前の床ずれ防止用マット体に於ける上述の如き問題、即ち(1)使用するマット等の構造が比較的複雑で製造コストが高かくつくうえ、簡単に洗濯等をすることができないこと、及び(2)皮ふの外表面へ直接に加温、冷却等の刺激が加わるため、患者に不快感を与えるうえ、十分な血行促進効果が得られないこと等の問題を解決せんとするものであり、比較的安価に製造することができ、しかも使用者に不快感を与えることなしに確実に身体表層部に生じ易い床ずれを防止できるようにした床ずれ防止用シート状マット体を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
一般に、人間の身体表層部がマッサージ等の外部刺激を受けると、神経伝達系の活動や毛細血管の活動が活発となり、身体表層部の血流が増加して所謂床ずれが生じ難くなることは、自明のことてある。また、身体表層部の通気性を良くすると共に身体表層部の局部へ体重圧が集中的にかからないようにすることにより、床ずれ防止効果が一層高くなることも、自明のことである。
【0006】
本願発明者は、上述の如き皮ふ外表面の刺激による血流の増加や神経伝達系の活動の活発化によって床ずれが防止されると云う事象に着目し、人間の皮ふ外表面へ直接に冷・温刺激や機械的な振動・圧迫等の刺激を加えるのではなしに、皮ふ外表層部へ遠赤外線エネルギーを吸収させることによりこれを静的に刺激し、毛細血管の活性化による血流の増加や神経伝達系の活性化を図ると共に、通気性の確保と体重圧の分散を図ることにより、マッサージ等の場合と同様に床ずれを防止できることを着想した。
【0007】
本発明は、本願発明者の上記着想に基づいて創作されたものであり、請求項1の発明は、身体とベッドや敷布団などの体重圧を受ける部材との間に介在させ、これに接触する身体表層部の末梢血管の血流を増加させる遠赤外線を放射すると共に、身体表層部の湿潤部を乾燥させる通気性と接触する身体表層部にかかる体重圧を分散させる弾力性とを備えたシート状のマット体Aにおいて、当該マット体Aを厚さ5〜30mmのシート状のマット材2と、当該マット材2の外表面に固着した薄いシート材1と、当該シート材1の外表層部へ接着剤又はインキに混入した状態で付着した遠赤外放射性セラミックス3とから形成すると共に、前記マット材2をポリエステル、ナイロン及びアクリルの中の何れか一種又は二種以上と繊維状活性炭とを混合した繊維を用いた弾力性を有するシート状の不織布製に、また前記シート材1をポリエステル、ナイロン及びアクリルの中の何れか一種又は二種以上と繊維状活性炭とを混合した繊維を用いた弾力性を有する薄いシート状の不織布製に、更に、前記遠赤外放射性セラミックス3の付着量を5〜10g/m2にしたことを発明の基本構成とするものである。
【0008】
本発明に於いては、人の皮ふ外表面がベッド等の上に介在させたマット体に近接又は直接に触れることにより、マット体に付着されているセラミック粉体が体温による熱エネルギーを吸収する。その結果、熱エネルギーの吸収によりセラミック粉体は活性化され、遠赤外線を再放射する。
セラミック粉体から放射された遠赤外線は、人の皮ふ外表層内へ高効率で吸収され、エネルギーの吸収による毛細血管や神経伝達系の活性化によりマッサージ等を受けた場合と同様の効果が奏され、血流が増加する。
【0009】
また、マット体は適宜の通気性と弾力性を有するため、マット体と接触する身体の外表層部は絶えず外気と直接触れる状態に置かれることになり、万一床ずれが始まったとしても皮ふ外表面の湿潤部の乾燥が促進される。
【0010】
更に、マット体は適宜の弾性力を有するため、体重圧はマット体と接触する身体の全外表層部に均等に分散され、外表層部の特定の局部のみに大きな体重圧がかかることはない。その結果、体重圧の局部的な印加に起因する床ずれの発症が有効に防止され、床ずれそのものが発生し難くなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係るマット体Aの第1実施形態を示すものであり、また、図2は第2実施形態に係るマット体Aの断面図である。図1及び図2に於いて、Aはマット体、1はシート材、2はマット材であり、マット体Aは適宜の形状の長方形状に裁断され、所謂敷布団やベット用の敷マット状に形成されている。
【0012】
前記図1のマット体Aは合成繊維の織布又は不織布から、適宜の厚さ、例えば5〜30mmの厚さを有するマット状に形成されており、その用途に応じて適宜の外形寸法に裁断されている。
また、前記図2のマット体Aは、薄い天然又は合成繊維の織布又は不織布製のシート材1の裏面側に、合成繊維の織布又は不織布製の比較的厚いマット材2を貼着又は溶着若しくは縫着することにより、前記図1の場合とほぼ同じ厚さのマット状に形成されている。
【0013】
前記図1のマット体Aに於いては、5g/m2以上の割合で遠赤外線放射セラミック3がマット体Aを形成する繊維の外表層部(即ちマット体Aの外表層部)に付着されている。
即ち、遠赤外線放射セラミック3は粉体の形で使用されており、接着剤(図示省略)によりマット体Aの外表層部へ固着するか、或いはインキの中へ混入し、このインキを用いてマット体Aの外表面へ模様(図示省略)を描くことにより、マット体Aの外表層部へ固着されている。
尚、遠赤外線放射セラミック3の付着量は5g/m2以上あれば十分に血行促進効果を挙げることができ、経済性の点から遠赤外線放射セラミック3の付着量は5〜10gr/m2に選定される。
【0014】
また、前記マット体Aそのものは、繊維の目付量が100gr/m2以上に選定されており、これによってマット体Aに必要とする高い弾力性が付与されている。尚、繊維の目付量は、弾力性の点から100gr/m2以上が望ましいが、通常は100〜200gr/m2の範囲に選定される。
【0015】
一方、前記図2のマット体Aに於いては、シート材1の外表面に遠赤外線放射セラミック3の粉体が、前記図1の場合と同様に接着又はインキを用いた描画の塗布層の形で固着されており、その接着量は5g/m2以上に選定されている。
【0016】
また、図2のマット体Aに於いては、マット材2は厚さ5〜30mm程度の合成樹脂製の織布又は不織布によって形成されており、必要な高弾力性を具備するために繊維の目付量は100gr/m2以上に選定されている。
【0017】
前記マット材A(図1の場合)又はシート材1(図2の場合)に付着させる遠赤外線放射セラミック3としては、体温域(35〜38℃)に於いて、波長6〜14μmの遠赤外線の平均分光放射率が、黒体の場合に比較して80%以上となるものが、人体外表層部内への遠赤外線の吸収性の点からして望ましく、本実施形態に於いては、遠赤外線放射セラミック3としてバイオメイト(日熱工業株式会社製のセラミック遠赤外放射体)の粉体を使用している。
【0018】
また、前記マット体A(図1の場合)やマット材2及びシート材1を形成する織布又は不織布の原材料としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル、アセテート等の合成樹脂製繊維が、単独又は二種以上の組み合せ状態で使用されている。
更に、前記図1及び図2の実施形態では示されていないが、前記織布又は不織布を形成する原材料の内部へ繊維状の活性炭を混合させるようにしてもよい。当該活性炭繊維を含めることにより、マット体Aに脱臭機能や乾燥機能が付与されることになり、実用上より便宜となる。
【0019】
前記マット体Aは、通常身体とベッドや敷布団等の体重圧を受ける部材の間へ挿入した状態で使用され、マット体Aによって身体の外表層部が受け止められることになる。
その結果、体温によってマット体Aに付着された遠赤外線放射セラミックが加熱され、これによってセラミックから人体に吸収され易い波長スペクトル(6〜14μm)の遠赤外線が放射される。
【0020】
前記放射された遠赤外線が身体外表層部へ吸収されると、身体外表層部内の末梢血管等が静的に加熱若しくは刺激されることになり、これにより末梢血管内の血流が増加して所謂床ずれが生じ難くなる。
また、マット体Aが適宜の通気性を具備しているため、身体外表層部の湿潤部は円滑に乾燥されて行く。
更に、マット体Aが適宜の弾力性を有しているため、身体の体重圧は人体外表層部とマット体Aとの接触部の全体によって均等に受け止められることになり、局部的に大きな体重圧が掛かることによる床ずれの発生が、有効に防止される。
【0021】
【発明の効果】
本発明に於いては、人体とベッド等の間へマット体Aを挿入するだけで、ねた切り老人等の身体外表層部に生じ易い床ずれを安全に、しかもほぼ完全に防止することができる。
また、マット体Aには適宜の通気性と弾力性が備えられているため、使用者が不快感を感ずることは全く無い。更に、マット体Aは比較的安価に製造できるうえ、使用に際しても騒音や振動を生ずることが無いため、一般家庭等に於いても容易に使用することができる。
本発明は上述の通り優れた実用的効用を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るマット体Aの部分断面概要図である。
【図2】 本発明に係るマット体Aの他の例を示す部分断面概要図である。
【符号の説明】
Aはマット体、1はシート材、2はマット材、3は遠赤外線放射セラミック。
Claims (1)
- 身体とベッドや敷布団などの体重圧を受ける部材との間に介在させ、これに接触する身体表層部の末梢血管の血流を増加させる遠赤外線を放射すると共に、身体表層部の湿潤部を乾燥させる通気性と接触する身体表層部にかかる体重圧を分散させる弾力性とを備えたシート状のマット体Aにおいて、当該マット体(A)を厚さ5〜30mmのシート状のマット材(2)と、当該マット材(2)の外表面に固着した薄いシート材(1)と、当該シート材(1)の外表層部へ接着剤又はインキに混入した状態で付着した遠赤外放射性セラミックス(3)とから形成すると共に、前記マット材(2)をポリエステル、ナイロン及びアクリルの中の何れか一種又は二種以上と繊維状活性炭とを混合した繊維を用いた弾力性を有するシート状の不織布製に、また前記シート材(1)をポリエステル、ナイロン及びアクリルの中の何れか一種又は二種以上と繊維状活性炭とを混合した繊維を用いた弾力性を有する薄いシート状の不織布製に、更に、前記遠赤外放射性セラミックス(3)の付着量を5〜10g/m2にしたことを特徴とする身体表層部の床ずれ防止用シート状マット体。
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