JP3719308B2 - エチレン/極性基含有環状オレフィン共重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン/極性基含有環状オレフィン共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、またα−オレフイン共重合体は、耐熱性、耐老化性、耐薬品性等に優れ、汎用樹脂として自動車部品を始めとして幅広い工業分野で実用化されている。中でも、エステル基などの極性基を有するポリオレフィンはその透明性による光学用途への展開、金属や他の材料への接着性が良好である等の利点があり、期待されている。
【0003】
従来、エチレンと極性基を有するオレフィンとの共重合体に関しては、国際出願公開公報WO96−23010に、 PdやNiを中心金属に持つジイミン配位子錯体とアルミノキサン等の有機アルミニウム化合物からなる触媒が提案され、この触媒系(Brookhart型触媒と呼ばれる)を用いる付加重合により、エステル基に代表される極性基を持つ鎖状オレフィンとエチレンとのランダム共重合体を得ることが可能になった。また、RisseらはPd錯体とカチオン化剤との組み合わせにより、エステル基やカルボン酸基に代表される極性基を持つ多環状オレフィンの単独付加重合体の製造を報告している(Makromol.Chem., 193, 2915, 1992)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、Brookhart型触媒の使用によりメチルアクリレートに代表とされる鎖状極性オレフィンとエチレンとのランダム付加重合体の製造は報告されているが、極性基含有環状オレフィンとエチレンとの共重合体は製造できない。また、Risseらの触媒系では極性基含有環状オレフィンの単独付加重合が可能になるが、エチレン等の汎用オレフィンとの共重合体は得られない。
そこで、本発明は上記事情を鑑みなされたもので、エステル基や酸無水物基の極性基を有する環状オレフィンとエチレンとのランダム付加共重合体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
a)エチレンに由来の構造単位と、
b)一般式(1):
【0006】
【化2】
〔式中、AおよびBは同一または異なり、水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を示し;
XおよびYの一方は式:−(CH2)nCOOR(ここで、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基を示し、nは0〜10の整数を示す)で表されるエステル基を示し、他方は水素原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基または式:−(CH2)nCOOR(ここで、Rおよびnは前記のとおり)で表されるエステル基を示すか、あるいは
XおよびYは相互に結合して一緒に式:−〔(CH2)n−CO−O−CO−(CH2)n〕−(ここで、2つのnは同一または異なり、前記のとおりである)で表される二価の基を形成する。nは前記とおり、mは0または1を示す。〕
で表される極性基含有環状オレフィンに由来の構造単位を有してなる共重合体であって、ポリスチレン換算の数平均分子量が1,000〜100,000であり、かつ該共重合体中の極性基含有環状オレフィン由来の構造単位が1〜99モル%であるエチレン/極性基含有環状オレフィン共重合体を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
共重合体
本発明の共重合体は、エチレン由来の構造単位と極性基含有多環状オレフィン由来の構造単位を必須の構造単位として含み、場合によっては本発明の目的を損なわない範囲でこれらの単量体と共重合可能なその他の単量体由来の構造を含んでもよい。
【0008】
極性基含有環状オレフィン:
前記一般式(1)で表される極性基含有多環状オレフィンに由来する構造単位は本発明の共重合体中において、一般式(2):
【0009】
【化3】
〔式中、A,B,X,Yおよびmは前記のとおり〕
で表される構造単位を形成している。
【0010】
前記の一般式(1)において、AおよびBは同一でも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基である。代表的なものとしては水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル等の直鎖アルキルであって各同一または異なってもよい。
【0011】
XおよびYの一方は、式 −(CH2)nCOORで表されるエステル基であり、他方は水素原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基または式 −(CH2)nCOORで表されるエステル基である。エステル基 −(CH2)nCOORにおいて、 Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル等の鎖状アルキルであり、nは0〜10の整数を示す。また、XとYは相互に結合して一緒に式:−〔(CH2)n−CO−O−CO−(CH2)n〕−(ここで、2つのnは同一または異なり、前記のとおりである)で表される二価の基を形成してもよい。
【0012】
一般式(1)において、mは0または1である。
一般式(1)において代表的なものは、XおよびYの一方または両方が式 −(CH2)nCOOR(Rはメチル基、エチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、フェニル基またはシクロヘキシル基であり、nが0または2である)で表されるエステル基あって、XおよびYの一方が該エステル基でない場合には、それが水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル等の炭素原子数1〜20の鎖状アルキルであり、mが0〜1の化合物である。さらに合成の面から代表的なものは、XおよびYの両方が前記エステル基である場合、並びにXおよびYの一方が前記エステル基であり他方が水素原子である場合である。
【0013】
かかる極性基含有環状オレフィンの具体例としては、8−メチル−8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、5−カルボキシメチル−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5,6−ジカルボキシ−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン酸無水物等を挙げることができる。
【0014】
他の単量体:
エチレンおよび極性基含有環状オレフィン以外の場合により該共重合体に含まれるその他の重合性単量体の具体例としては、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素原子数3以上のα−オレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルシクロヘキセンなどのシクロオレフィン、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、ノルボルネン、メチルノルボルネン、エチルノルボルネン、イソブチルノルボルネンなどのノルボルネン類、2,3,3a,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのエンドメチレン系化合物あるいは1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエンなどの非共役ジエンを挙げることができる。これらの他の単量体に由来の構造単位は、共重合体に50モル%以下の範囲で含まれてもよい。
【0015】
本発明の共重合体は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以後、GPCという)の測定から得られるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が、1,000〜100,000の範囲にある。Mw/Mn(Mwは重量平均分子量)で表される分子量分布は、通常2.8〜4.0の範囲であり、GPCでは一つのピークのみが観測される。さらに、ガラス転移温度(以後、Tgと呼ぶ)は80〜120℃である。
共重合体の製造方法
本発明の共重合体を製造するには、下記化合物(A)および(B)からなる触媒を用いてエチレンと極性基含有環状オレフィンとを重合すればよい。
(A)遷移金属化合物
(B)有機アルミニウム化合物
該触媒には、場合によっては、さらに(C)イオン性化合物が含まれてもよい。
【0016】
触媒:
〔成分(A)〕
触媒の成分(A)である遷移金属化合物(以下、遷移金属化合物(A)という)は、遷移金属と少なくとも一つの環状アミド配位子とを有してなる遷移金属化合物である。
【0017】
遷移金属化合物(A)の中心金属は、周期律表3〜11族の金属元素、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ハフニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、並びに、ランタノイド系列の金属、例えば、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ルテチウム、イッテルビウムおよびガドリニウムから選ばれる遷移金属であり、好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、ニッケル、パラジウム、コバルト、ルテニウム、ロジウム、およびサマリウム、イットリビウム、ネオジムのランタノイド系列の金属元素であり、さらに好ましくはチタン、ジルコニウムである。
【0018】
該遷移金属化合物(A)に含まれる配位子は、主として炭素原子からなりかつ少なくとも一つの窒素原子を介して中心金属と結合し、主鎖骨格が環を形成している化合物である。この環状配位子は中心金属に対して一つ存在してもよいし複数存在してもよい。環状の主鎖骨格は炭素と窒素以外の元素として、例えば珪素、酸素、硫黄、硼素、リン等を含んでもよい。該配位子が中心金属とともに遷移金属化合物(A)を形成する際の中心金属と窒素原子との結合は共有結合であっても配位結合であってもよい。
【0019】
遷移金属化合物(A)には環状アミド配位子以外の配位子が一種または二種以上存在してもよく、例えば、水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基、ハロゲン、ハロゲン化炭化水素、またはアルキルシリル基等が挙げられる。
【0020】
遷移金属化合物(A)の中でも好ましいものは、配位子環中に窒素原子を2〜4個有するものであり、例えば、一般式(1)−A、(1)−B、(2)−A、(2)−B、(2)−C、(3)−A、(3)−B、(3)−C、(3)−Dで表される遷移金属化合物が挙げられる。
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
【化9】
【0027】
【化10】
【0028】
【化11】
【0029】
【化12】
(式中、n1, n2, n3 およびn4は1以上の整数、好ましくは1〜10の整数である。 n1, n2, n3 およびn4は同一でも異なってもよい。R1〜R11は、同一でも異なってもよく、水素原子、例えば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、フェニル、4−カルボキシフェニル、ベンジル、4−カルボキシベンジル、4−メトキシカルボニルフェニル等の炭素原子数1〜20の炭化水素基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ等の炭素原子数1〜22のアルコキシ基、フェノキシ、ベンゾキシ等の炭素原子数6〜22のアリーロキシ基またはアラルキルオキシ基、カルボキシル基、例えば、アセチル等の一般式 −COORx(Rxは炭素原子数1〜20のアルキル基、アリーロキシ基またはアラルキルオキシ基、例えば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、フェニル、ベンジルである)で表されるエステル基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、例えば、(モノ、ジもしくはトリ)フルオロメチル、(モノ、ジもしくはトリ)クロロメシル、テトラ(フルオロ、クロロもしくはブロモ)フェニル、ペンタ(フルオロ、クロロもしくはブロモ)フェニル、テトラ(フルオロ、クロロ、ブロモ)シクロペンテン等のハロゲン化炭化水素基、または例えば、トリメチルシリル、ジメチルエチルシリル、トリエチルシリル、ジメトキシシリル、ジエトキシシリル等のトリアルキルシリル基である。Mは周期律表第3〜11族の遷移金属、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ハフニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金等の遷移金属、並びに、例えば、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ルテチウム、イッテルビウム、ガドリニウム等のランタノイド系列の金属である。Xはフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子またはσ結合性の配位子またはキレート性配位子である。mは0〜3の整数であって、Mに配位しているNの数+m=Mの酸化数となる整数である。)
上に例示の遷移金属化合物(A)の中でも特に好ましいものは、一般式(2)−A、一般式(2)−B、一般式(3)−Bおよび一般式(3)−Cで表される化合物である。
【0030】
かかる好ましい遷移金属化合物(A)の代表例を以下に例示する。
一般式(2)−Aの遷移金属化合物の例:
1,3,5−トリアザシクロヘキサニルチタンクロライド、1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、1,6,11−トリアザシクロペンタデカニルチタンクロライド、1,7,13−トリアザシクロオクタデカニルチタンクロライド、(2−メチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2−メチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2−フェニル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2−フェニル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2−アセチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2−アセチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2−トリフルオロメチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2−トリフルオメチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2−メトキシ)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2−メトキシ)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2−フェノキシ)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2−フェノキシ)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2,5,8−トリメチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2,6,10−トリメチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2,5,8−トリフェニル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2,6,10−トリフェニル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2,5,8−トリアセチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2,6,10−トリアセチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2,5,8−トリトリフルオロメチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2,6,10−トリトリフルオロメチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2,5,8−トリメトキシ)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2,6,10−トリメトキシ)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド、(2,5,8−トリフェノキシ)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライド、(2,6,10−トリフェノキシ)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド等がある。
【0031】
一般式(2)−Bの遷移金属化合物の例:
N−メチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサニルチタンジクロライド、N−メチル−1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−1,6,11−トリアザシクロペンタデカニルチタンジクロライド、N−メチル−1,7,13−トリアザシクロオクタデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−メチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−メチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−フェニル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−フェニル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−アセチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−アセチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−トリフルオロメチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−トリフルオメチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−メトキシ)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−メトキシ)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−フェノキシ)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2−フェノキシ)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,5,8−トリメチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,6,10−トリメチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,5,8−トリフェニル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,6,10−トリフェニル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,5,8−トリアセチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,6,10−トリアセチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,5,8−トリトリフルオロメチル)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,6,10−トリトリフルオメチル)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,5,8−トリメトキシ)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,6,10−トリメトキシ)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,5,8−トリフェノキシ)1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンジクロライド、N−メチル−(2,6,10−トリフェノキシ)1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンジクロライド等がある。
【0032】
以上の例では、一般式(2)−BにおけるR1がメチル基である例を代表させたが、R1がフェニル基、ベンジル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フェノキシ基、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素または臭素)等でもよい。
【0033】
一般式(3)−Bの遷移金属化合物(A)の例:
N−メチル−1,3,5,7−テトラアザシクロオクタニルチタンクロライド、N−メチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−1,6,11,16−テトラアザシクロエイコサニルチタンクロライド、N−メチル−(2−メチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−メチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−フェニル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−フェニル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−アセチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−アセチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−フルオロ)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−フルオロ)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−トリフルオロメチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−トリフルオロメチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−メトキシ)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2−メトキシ)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,5,8,11−テトラメチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,6,10,14−テトラメチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,5,8,11−テトラフェニル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,6,10,14−テトラフェニル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,5,8,11−テトラアセチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,6,10,14−テトラアセチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,5,8,11−テトラフルオロ)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,6,10,14−テトラフルオロ)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,5,8,11−テトラトリフルオロメチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,6,10,14−テトラトリフルオロメチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,5,8,11−テトラメトキシ)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンクロライド、N−メチル−(2,6,10,14−テトラメトキシ)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンクロライド等が挙げられる。
【0034】
以上の例では、一般式(3)−BにおけるR1がメチル基である例を代表させたが、R1にはメチル基の代わりにフェニル基、ベンジル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フェノキシ基、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素または臭素)等でもよいがこれらに限定するものではない。
【0035】
一般式(3)−Cの遷移金属化合物の例:
N−メチル−N’−メチル−1,3,5,7−テトラアザシクロオクタニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−1,6,11,16−テトラアザシクロエイコサニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−メチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−メチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−フェニル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−フェニル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−アセチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−アセチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−フルオロ)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−フルオロ)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−トリフルオロメチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−トリフルオロメチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−メトキシ)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2−メトキシ)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,5,8,11−テトラメチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,6,10,14−テトラメチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,5,8,11−テトラフェニル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,6,10,14−テトラフェニル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,5,8,11−テトラアセチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,6,10,14−テトラアセチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,5,8,11−テトラフルオロ)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,6,10,14−テトラフルオロ)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,5,8,11−テトラトリフルオロメチル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,6,10,14−テトラトリフルオロメチル)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,5,8,11−テトラメトキシ)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニルチタンジクロライド、N−メチル−N’−メチル−(2,6,10,14−テトラメトキシ)1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカニルチタンジクロライド等がある。
【0036】
以上の例では、一般式(3)−CにおけるR1およびR4がメチル基である例を代表させたが、 R1およびR4がフェニル基、ベンジル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フェノキシ基、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素または臭素)等でもよい。
前記触媒には以上説明した遷移金属化合物(A)を一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
〔成分(B)〕
触媒の成分(B)である有機アルミニウム化合物(以下、有機アルミニウム化合物(B)という)としては、例えば、一般式(4):
RaAlZ3−a (4)
〔ここで、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、Zは水素原子、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、aは0≦a<3を満たす数である。〕
で表される有機アルミニウム化合物、および
一般式(5):
−[Al(Rxx)−O]b− (5)
〔ここで、Rxxは炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜40のアリール基、炭素原子数7〜40のアルカリール基または炭素原子数7〜40のアラルキル基であり、bは1以上の整数である〕
で示される構造を有する鎖状もしくは環状のアルミノキサン化合物が挙げられる。これらは一種単独でも二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
一般式(4)において、Rxxで表される炭素原子数1〜20の炭化水素基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、フェニル、ベンジル、1,5−ジイソプロピルフェニル、テトラメチルフェニルであり、好ましくは、メチル、エチル、イソブチルであり、Zで表されるアルコキシ基は例えば、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、フェノキシ、ベンゾキシであり、ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素等であり、好ましいZは水素原子、メトキシ、イトブトキシ、塩素原子である。aの好ましい範囲は、2〜3である。
【0039】
このような一般式(4)の有機アルミニウム化合物の具体例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、トリイソブチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、トリ t−ブチルアルミニウム、ジ t−ブチルアルミニウムクロライド、t−ブチルアルミニウムジクロライド、トリアミルアルミニウム、ジアミルアルミニウムクロライド、アミルアルミニウムジクロライド、トリエチルジアルミニウムトリクロライド等のアルキルアルミニウムハライド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジオクチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド、メチルアルミニウムジメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド等のアルキルアルミニウムアルコキシド等が挙げられる。
【0040】
一般式(5)において、Rxxで表される炭素原子数1〜20のアルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソブチル、イソプロピル、n−ブチル、ヘキシル、オクチル、ペンチルであり、炭素原子数6〜40のアリール基は、例えば、フェニル、ベンジルである。Rxxとして好ましいものはメチル基、エチル基およびイソブチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0041】
このような一般式(5)の化合物の具体例として、テトラメチルジアルミノキサン、テトラエチルジアルミノキサン、テトラブチルジアルミノキサン、テトラヘキシルジアルミノキサン、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、ヘキシルアルミノキサン等が挙げられる。
【0042】
以上説明した有機アルミニウム化合物(B)の中で触媒活性が優れる点で、一般式(4)の有機アルミニウム化合物ではトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物がより好ましく、一般式(5)の有機アルミニウム化合物ではメチルアルミノキサンが好ましい。
【0043】
〔成分(C)〕
触媒の成分(C)であるイオン性化合物は、化合物内に少なくとも一つのアニオンと少なくとも一つのカチオンの両方を持ち得るもので、溶液中ではカチオンとアニオンに分離して存在する化合物である。代表例としては下記一般式(6)で表される化合物である。
([L]k+)p(M’(A)n]-)q (6)
〔式中、[L]k+はブレンステッド酸またはルイス酸であり、M’は周期律表第13〜15族元素であり、nは2〜8の整数であり、n個存在するAは独立に水素原子、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル等の炭素原子数1〜20のアルキル基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジフェニルアミノ等の炭素原子数1〜30のジアルキルアミノ基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の炭素原子数1〜20のアルコキシ基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基等の炭素原子数6〜40のアリール基またはアラルキル基、フェノキシ、トリルオキシ、キシリルオキシ、ベンゾキシ、2,6−ジメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ等の炭素原子数6〜40のアリールオキシ基またはアラルキルオキシ基、p−フルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,4,5−トリフルオロフェニル、3,5−ジトリフルオロメチルフェニル基等の炭素原子数1〜40のハロゲン置換炭化水素基、アセトキシ基、エチルアセトキシ基、フェニルアセトキシ基等の炭素原子数1〜20のアシルオキシ基または5−メチルスチビノ、トリメチルシリル、トリメチルゲルミル、ジフェニルアルシノ、ジシクロヘキシルスチビノ、ジフェニルボリル等の有機メタロイド基であり、kはLのイオン価を示し1〜3の整数であり、pは1以上の整数であり、q=(k×p)の関係がある。〕
上記一般式(6)において、Lで表されるブレンステッド酸またはルイス酸としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、N,N−ジメチルアミン、ピリジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン等のアミン類、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン等のホスフィン類が挙げられ、好ましくはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等のエーテル類、アミン類(特にジメチルアミン、ジフェニルアミン、N,N−ジメチルアミン)、ジエチルチオエーテル、テトラヒドロチオフェン等のチオエーテル類、エチルベンゾエートである。また、M’で表される周期率表第13〜15族の元素としては、例えば、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、As、Sb、Biが挙げられ、特にBおよびPが好ましい。
【0044】
成分(C)の具体例としては、テトラフェニルほう酸トリメチルアンモニウム、テトラフェニルほう酸メチル(ジブチル)アンモニウム、テトラフェニルほう酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニルほう酸メチルピリジニウム、テトラフェニルほう酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸トリメチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス[ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル]ほう酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニルほう酸フェロセニウム、テトラフェニルほう酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸フェロセニウム等を挙げることができる。かかる化合物の中で触媒活性が特に優れる点で、一般式(6)で表される化合物の内、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ジメチルアニリニウムがより好ましいが、これらに限定されるものではない。
以上説明したイオン性化合物は、一種単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
【0045】
触媒の成分(A)および成分(B)、場合によってはさらに成分(C)は、その少なくとも一種を適当な担体に担持して用いることができる。担体の種類については特に制限はなく、無機酸化物担体、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等、それ以外の無機担体、例えば、ゼオライト、活性白土、モンモリロナイト、シリカーアルミナ、フェライト、並びに有機担体、例えば、カーボンブラック等のいずれも用いることができる。また担持方法についても特に制限はなく、公知の方法を適宜利用してよい。
【0046】
触媒の構成成分の組み合わせとしては、
(イ)遷移金属化合物(A)+有機アルミニウム化合物(B)と、
(ロ)遷移金属化合物(A)+有機アルミニウム化合物(B)+イオン性化合物(C)の二通りが可能である。(イ)の組み合わせとしては、遷移金属化合物(A)と一般式(5)で表されるアルミノキサン化合物の組み合せが好ましい。(ロ)の組み合わせとしては、遷移金属化合物(A)と一般式(4)で表される有機アルミニウム化合物(なかでもトリアルキルアルミニウム)とイオン性化合物(C)としてテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ジメチルアニリニウムの組み合せが好ましい。
【0047】
成分(A)、(B)、(C)の割合は特に限定はないが、好ましくはモル比で、(A):(B)=1:0.01〜1:20000、(B):(C)=1:0.01〜1:1000の範囲である。
触媒成分(A)、(B)、(C)は個別に反応系に供給してもよいし、成分に二種または三種をあらかじめ接触させておいて、しかる後に反応系に供給してもよい。
【0048】
条件:
前記単量体を前記触媒を用いて行う重合は溶液でもスラリーでも行うことができる。溶液で重合を行う場合、溶媒として一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、塩化メチレン等が挙げられ、またはオレフィン自身を溶媒として用いてもよい。
【0049】
重合温度は特に制限はないが、−100℃〜300℃までにわたって実施することができるが、好ましくは−20℃〜200℃である。重合圧力についても特に制限はないが、工業的かつ経済的であるという点では0.5〜1500気圧程度が望ましい。更に好ましくは1〜500気圧の範囲である。重合方法は、連続式でもバッチ式でも可能である。また、分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加することも可能である。
【0050】
また、本発明の効果を損なわない限り、上記の触媒以外の公知のいずれの触媒も適宜併用することができる。
有用性
本発明の共重合体の利用分野の一例を示すと、低分子量体(数平均分子量約1,000〜5,000)では、通常合成ワックスが利用できる分野、すなわち紙加工材、サイズ材、ゴム老化防止剤、電気絶縁体、撥水材、合成樹脂成型用滑材、接着剤などを挙げることができる。また高分子量体(数平均分子量約5,000〜100,000)の場合は、その透明性を利用した各種光学分野、光レンズ、光ファイバー、光ディスク、シート、フィルム等の用途、また極性基を持つことから各種バインダーへの用途、電気電子分野、液晶表示材料、高周波用回路基板材料、各種計器のハウジング、注射器等の医療分野、汎用シート、フィルム、ケース等の各種成型品などの分野に利用できる。また極性基含有環状オレフィンに由来する構造単位が30モル%以上ではその透明性を利用した光学分野に、また30モル%未満ではオレフィン樹脂の金属または他材料への接着性改良材として利用できる。
【0051】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、物性測定は次のように行った。
(イ)エステル含有環状オレフイン含量(重量%)
1H−NMRにより求めた。
(ロ)数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)
WATERS社製150C型ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置を用い、試料の重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解して、30℃で測定した。
(ハ)ガラス転移温度(Tg)
SII社製示差走査型熱量計(DSC)SSC5200Hを用い、50℃〜300℃の範囲、10℃/分の昇温速度、窒素雰囲気下で測定した。
【0052】
(実施例1)
充分に窒素置換した内容量3リットルのステンレス製オートクレーブに精製トルエン1.9リットル、8−メチル−8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン0.1リットル、精製トルエン4ミリリットル中に溶解したアルミニウム原子換算で6ミリモルのメチルアルミノキサンを加え、30℃に昇温したのち、エチレンで加圧して、エチレン分圧を1 kg/cm2とした。
次いで、精製トルエン1.2ミリリットル中に溶解した1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド1.2μモルを添加して、重合を開始させた。反応中は温度を30℃に保ち、エチレン分圧が1 kg/cm2に保持されるように連続的にエチレンを供給しつつ1時間反応を行った。反応終了後、ポリマー溶液を2リットルのメタノール中に投入してポリマーを析出させ、このポリマーをろ別し、減圧下で乾燥して、1.25gのポリマーを得た。
【0053】
このポリマーは、供した環状オレフィン含量が89モル%、数平均分子量(Mn)が9800、分子量分布(Mw/Mn)が2.87のエチレン/8−メチル−8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン共重合体であった。この共重合体のTgは121℃であった。
得られた共重合体の1H−NMRチャートを図1に示す。
【0054】
(実施例2)
充分に窒素置換した内容量3リットルのステンレス製オートクレーブに精製トルエン1.9リットル、8−メチル−8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン0.1リットル、精製トルエン4ミリリットル中に溶解したトリイソブチルアルミニウム0.6ミリモルを加え、さらにテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ジメチルアニリニウム1.5μモルを加え、30℃に昇温したのち、エチレンで加圧して、エチレン分圧1 kg/cm2とした。
【0055】
次いで、精製トルエン1.2ミリリットル中に溶解した1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライド1.2μモルを添加して、重合を開始させた。反応中は温度を30℃に保ち、エチレン分圧が1 kg/cm2に保持されるように連続的にエチレンを供給し、1時間反応を行った。反応終了後、ポリマー溶液を2リットルのメタノール中に投入してポリマーを析出させ、このポリマーをろ別し、減圧下で乾燥して、2.36gのポリマーを得た。
このポリマーは、供した環状オレフィン含量が82モル%、数平均分子量(Mn)が12200、分子量分布(Mw/Mn)が2.80のエチレン/8−メチル−8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン共重合体であった。この共重合体のTgは102℃であった。
【0056】
(実施例3)
実施例1において極性基含有環状オレフィンとして8−メチル−8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンの代わりに5−カルボキシメチル−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンを用いた以外は実施例と同様にして、0.78gのポリマーを得た。
このポリマーは、供した環状オレフィン含量が95モル%、数平均分子量(Mn)が9700、分子量分布(Mw/Mn)が3.01のエチレン/5−カルボキシメチル−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン共重合体であった。この共重合体のTgは104℃であった。
【0057】
(実施例4)
実施例2において極性基含有環状オレフィンとして8−メチル−8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンの代わりに5−カルボキシメチル−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンを用いた以外は実施例2と同様にして、1.55gのポリマーを得た。
このポリマーは、供した環状オレフィン含量が90モル%、数平均分子量(Mn)が10800、分子量分布(Mw/Mn)が2.99のエチレン/5−カルボキシメチル−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン共重合体であった。この共重合体のTgは107℃であった。
【0058】
(実施例5)
実施例1において、1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライドの代わりに1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライドを用いた以外は実施例1と同様にして、0.59gのポリマーを得た。
このポリマーは、供した環状オレフィン含量が88モル%、数平均分子量(Mn)が10200、分子量分布(Mw/Mn)が3.05のエチレン/8−メチル−8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン共重合体であった。この共重合体のTgは107℃であった。
【0059】
(実施例6)
実施例2において1,5,9−トリアザシクロドデカニルチタンクロライドの代わりに1,4,7−トリアザシクロノナニルチタンクロライドを用いた以外は実施例2と同様にして1.82gのポリマーを得た。
このポリマーは、供した環状オレフィン含量が93モル%、数平均分子量(Mn)が9200、分子量分布(Mw/Mn)が3.11のエチレン/8−メチル−8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン共重合体であった。この共重合体のTgは112℃であった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、前記の様々な分野での有用性を有する新規なエチレン/極性基含有環状オレフィン共重合体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたエチレン/8−メチル−8−カルボキメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン共重合体の1H−NMRチャートである。
Claims (2)
- (A)下記一般式:
で表される、遷移金属と一つの環状アミド配位子とを有してなる遷移金属化合物、および
(B)有機アルミニウム化合物
からなる触媒を用いて、エチレンと一般式(1):
XおよびYの一方は式:−(CH 2 ) n COOR(ここで、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基を示し、nは0〜10の整数を示す)で表されるエステル基を示し、他方は水素原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基または式:−(CH 2 ) n COOR(ここで、Rおよびnは前記の通り)で表されるエステル基を示すか、あるいは
XおよびYは相互に結合して一緒に式:−〔(CH2)n−CO−O−CO−(CH2)n〕−(ここで、2つのnは同一または異なり、前記のとおりである)で表される二価の基を形成する。mは0または1 を示す。〕
で表される極性基含有環状オレフィンとを重合することを特徴とする、
a)エチレンに由来の構造単位と、
b)前記一般式(1)で表される極性基含有環状オレフィンに由来の構造単位を有してなる共重合体にして、ポリスチレン換算の数平均分子量が1,000〜100,000であり、かつ該共重合体中の極性基含有環状オレフィン由来の構造単位が1〜99モル%であるエチレン/極性基含有環状オレフィン共重合体の製造方法。 - 前記(A)遷移金属と一つの環状アミド配位子とを有してなる遷移金属化合物が、前記一般式:(2)-A、(2)-B、(3)-Bまたは(3)-Cで表されるものである請求項1に係る製造方法。
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