JP3719099B2 - 車両用自動変速機制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載される自動変速機を変速制御する車両用自動変速機制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動変速機の変速歯車機構に設けられた摩擦係合要素には複数のクラッチやブレーキが用いられ、油圧制御によってそれらを適宜、係合または解放することで変速制御が達成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動変速機の変速歯車機構に設けられた摩擦係合要素には製造上の公差等に基づく個体差や経時変化による寸法変化、更には、摩擦係数やばね定数の変動等がある。例えば、個体差や経時変化によるクラッチの隙間寸法が異なることでクラッチストローク差が生じ、自動変速機の変速時の油圧制御におけるATF(Automatic Transmission Fluid:自動変速機用作動油)の充填状態が変化することとなる。
【0004】
一般的に、変速制御に伴う油圧制御では、クラッチを所望のタイミングで係合開始することができるように、制御油圧指令によってATFがクラッチのピストン側に予め急速充填される。そして、この急速充填後、ATFがクラッチのピストン側にリターンスプリングの付勢力よりやや高めで一定の待機圧まで充填完了されるよう待機相(Standby Phase)と称する期間がトルク相(Torque Phase)の前段に設けられている。そして、待機相におけるクラッチ油圧の充填完了を待ってトルク相の増圧制御に移行され、クラッチの係合が開始されている。
【0005】
ここで、トルク相とは、自動変速機が制御油圧指令に基づく変速過渡の油圧制御を実行している変速中で、待機相に続き自動変速機の入力軸回転数と出力軸回転数との変速比が変化し始める以前の期間を言う。また、このトルク相に続く変速中のイナーシャ相(Inertia Phase)とは、自動変速機の入力軸回転数と出力軸回転数との変速比が変化状態である期間を言う。
【0006】
ところが、摩擦係合要素には、上述のような個体差や経時変化等が存在するため、待機相におけるクラッチ油圧回路の調圧精度が低く、特に、トルク相開始油圧とトルク相終了油圧との差が小さいスロットルバルブの低開度領域では、待機圧のばらつきの方が大きくなってしまうこととなり、制御油圧指令値に基づくクラッチ油圧が適切に設定できなくなる。このとき、待機相の待機圧が制御油圧指令値に対して高過ぎると実油圧が充填完了後にオーバシュート気味となり、また、待機相の待機圧が制御油圧指令値に対して低過ぎると充填不足の状態となって、この後のトルク相制御中に充填が完了することとなる。この結果、充填の完了に伴って実油圧がトルク相中に急激に上昇する現象が起こり、共に変速ショックを発生させる要因となるという不具合があった。
【0007】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、自動変速機の摩擦係合要素における個体差や経時変化等に影響されず、変速制御における変速ショックの発生を防止可能な車両用自動変速機制御装置の提供を課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の車両用自動変速機制御装置によれば、自動変速機による変速制御を所定期間内に終了させるため、制御油圧指令に基づくクラッチ油圧が、変速歯車機構に設けられた摩擦係合要素の実際の係合直前のクラッチ油圧まで急速充填されたのち、緩やかに増圧される。上記係合直前のクラッチ油圧、即ち、増圧を開始するときの初期油圧は、自動変速機の変速制御における制御油圧指令の出力時点からイナーシャ相開始時点までの期間を用いて、学習補正されその都度、更新される。つまり、クラッチ油圧が前以って急速充填されクラッチ係合直前の初期油圧までオフセットされる。こののち、クラッチ油圧が初期油圧から緩増圧されることで、変速歯車機構に設けられた摩擦係合要素の係合が滑らかに進行される。このように、制御油圧指令によって緩増圧に移行する際の初期油圧が学習補正されその都度、更新されることで、緩増圧制御におけるクラッチ油圧指令値に対する実油圧が適切に補正されることとなる。これにより、自動変速機の摩擦係合要素における個体差や経時変化等に影響されず、変速制御における変速ショックの発生が防止されると共に、変速制御が所定の期間内にて好適に終了される。
【0009】
請求項2の車両用自動変速機制御装置では、発生する変速ショックの大きさに応じて設計的に得られる油圧制御機構の応答性能に見合った緩増圧勾配に設定される他、例えば、作動油の温度等に基づき自動変速機の油圧制御機構の応答速度が変動することに対処するため、増圧指令手段でクラッチ油圧の緩増圧勾配が、油圧制御機構の現在の油圧制御能力に見合ったように設定される。これにより、実際の変速制御で諸条件の影響を受け難くでき、変速ショックの発生が抑えられる。
【0011】
請求項3の車両用自動変速機制御装置では、増圧指令手段による制御油圧指令の初期油圧の学習補正が、作動油の油温が所定値未満と低いときには禁止されるため、油圧系の応答特性が悪化する低油温域における初期油圧の誤学習が防止される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態の一実施例にかかる車両用自動変速機制御装置の全体構成を示す概略図である。
【0014】
図1において、本実施例における車両は図示しない内燃機関、流体伝動機構としてのトルクコンバータ3と自動または手動で切換えられる変速歯車機構5とからなる自動変速機(AT:Automatic Transmission)1を搭載する所謂A/T車である。自動変速機1の作動によって、周知のように、内燃機関で生成されたトルク(回転駆動力)がトルクコンバータ3を介して変速歯車機構5に伝達され、変速歯車機構5内の複数のギヤ(遊星歯車)列にて変速されたトルク(回転駆動力)が車両の駆動輪(前輪または後輪)に伝達される。
【0015】
自動変速機1の油圧制御機構7は、図示しない油圧制御弁としてのデューティ比制御弁やリニア制御弁(電磁弁)等を有する自動変速回路9及びその周辺回路等からなり、変速歯車機構5下部の自動変速機1内部の図示しないオイルパン内にある。この自動変速回路9の周囲は油圧回路のドレンとなっている。
【0016】
変速歯車機構5内には、内燃機関の回転軸に直結され回転駆動される公知の油圧ポンプ11が設けられており、各油圧機構からオイルパン等に排出された作動流体としての駆動油が吸入ポート13より吸入され、図示しないデューティ比制御弁(電磁弁)等を有するライン圧制御回路15を介し各機構へ油圧が供給されている。この油圧ポンプ11からの油圧は、変動のある高ポンプ油圧であり、ライン圧制御回路15により一定の高圧なライン圧に制御され各油圧機器へ供給される。なお、ロックアップ制御回路25は、トルクコンバータ3のL/U(ロックアップ機構)4に加える油圧を調整するものである。
【0017】
図2は図1の自動変速機1の変速歯車機構5のギヤ列構成を示す模式図である。図2に示すように、摩擦係合要素であるクラッチC0 ,C1 ,C2 及びブレーキB0 ,B1 は、遊星歯車等の各変速比を構成するギヤに連結されており、これら摩擦係合要素を係合または解除することにより、変速比を切換えて車両の変速制御を行っている。
【0018】
この係合/解除のための油圧制御は、自動変速回路9内の図示しないデューティ比制御弁等により実行される。この自動変速回路9に対する指令は、図示しない内燃機関の出力軸(クランクシャフト)の機関回転数Neパルス情報を検出する回転数センサ17、トルクコンバータ3の入力軸回転数(タービン回転数)Ntパルス情報を検出する入力軸回転数センサ(タービン回転数センサ)19、変速歯車機構5の出力軸回転数No(車速V)パルス情報を検出する出力軸回転数センサ(車速センサ)21及びATF油温センサを含むその他の各種センサ情報に基づきAT−ECU(Automatic Transmission-Electronic Control Unit:自動変速機制御用電子制御ユニット)23にて演算される。なお、AT−ECU23は、周知の各種演算処理を実行する中央処理装置としてのCPU、制御プログラムを格納したROM、各種データを格納するRAM、B/U(バックアップ)RAM、入出力回路及びそれらを接続するバスライン等からなる論理演算回路として構成されている。
【0019】
次に、本発明の実施の形態の一実施例にかかる車両用自動変速機制御装置で使用されているAT−ECU23における変速制御の処理手順を示す図3のフローチャートに基づき、図4、図5及び図6を参照して説明する。ここで、図4は車速Vとスロットル開度TVOとをパラメータとする自動変速機1の変速段を示す変速線図であり、図5は図3の処理に対応する各種制御量等の遷移状態を示すタイムチャートである。また、図6は入力軸トルクと増圧勾配Δpとの関係をATF油温をパラメータとして示す特性図である。なお、この変速制御ルーチンは所定時間毎にAT−ECU23にて繰返し実行される。
【0020】
図3において、まず、ステップS101で、入力軸回転数センサ19からの入力軸回転数Ntパルス情報、出力軸回転数センサ21からの出力軸回転数Noパルス情報(=車速V)、図示しないスロットル開度センサからのスロットル開度TVO、回転数センサ17からの機関回転数Ne、図示しないATF油温センサからのATF油温が読込まれる。次にステップS102に移行して、変速有りであるかが判定される。この変速有無は、図4の変速線図における何れかの変速線を横切ったか否かに基づき判定される。ステップS102の判定条件が成立せず、即ち、図4に示す何れの変速線も横切っておらず変速なしのときには、そのまま本ルーチンを終了する。
【0021】
一方、ステップS102の判定条件が成立、即ち、図4に示す何れかの変速線を横切っており変速有りのときにはステップS103に移行する(図5の時刻T0 )。ステップS103では、変速指令時点での制御油圧指令によるクラッチ油圧指令値Pcの急速充填期間tqを設定する時間カウンタtが「0」にクリアされる。次にステップS104に移行して、クラッチ油圧指令値Pcが急速充填時のクラッチ油圧指令値Pquick に設定される。次にステップS105に移行して、時間カウンタtが「+1」インクリメントされる。次にステップS106に移行して、時間カウンタtが予め設定された急速充填期間tq 以上であるかが判定される。ステップS106の判定条件が成立しないときには上述のステップS104に戻り、同様の処理が繰返し実行される。
【0022】
そして、ステップS106で、時間カウンタtが急速充填期間tq 以上となるとステップS107に移行し、上述の時間カウンタtを、この急速充填終了後からイナーシャ相開始までクラッチ油圧を緩やかに増圧する緩増圧期間を設定する時間カウンタtとして用いるため「0」にクリアされる。次にステップS108に移行して、クラッチ油圧の急速充填後のクラッチ油圧指令値Pcがクラッチ油圧の緩増圧時の初期クラッチ油圧指令値Pcoに設定される。
【0023】
次にステップS109に移行して、図6に示す油圧系の応答性に基づき設定された増圧勾配特性図によって増圧勾配Δpが算出される。なお、入力軸トルクが大きいほどトルク相を形成するための油圧変化量は大きくなり充填不足等による油圧の動きが変速ショックに及ぼす影響が緩和されるため、増圧勾配Δpは、図6に示すように、入力軸トルクが大きいほど大きな値に設定される。また、ATF油温が高いほどトルク相を形成するための油圧変化量は大きくなり、充填不足等による油圧の動きが変速ショックに及ぼす影響が緩和されるため、増圧勾配Δpは、図6に示すように、ATF油温が高いほど大きな値に設定される。
【0024】
次にステップS110に移行して、次式(1)にてクラッチ油圧指令値Pcが算出される。ここで、Pc(n) は今回のクラッチ油圧指令値、Pc(n-1) は前回のクラッチ油圧指令値である。
【0025】
【数1】
Pc(n) ←Pc(n-1) +Δp ・・・(1)
【0026】
次にステップS111に移行して、時間カウンタtが「+1」インクリメントされる。次にステップS112に移行して、イナーシャ相開始であるかが判定される。このクラッチ油圧を緩増圧するトルク相からイナーシャ相への移行は、次の不等式(2)によって判定される。ここで、gr1は変速前ギヤ比、ΔN1 は判定閾値である。
【0027】
【数2】
No・gr1−Nt≧ΔN1 ・・・(2)
【0028】
ステップS112の判定条件が成立せず、即ち、未だイナーシャ相への移行が行われていないときには上述のステップS109に戻り、同様の処理が繰返し実行される。そして、ステップS112の判定条件が成立、即ち、イナーシャ相開始と判定されるとステップS113に移行し、ATF油温が所定値未満であるかが判定される。ステップS113の判定条件が成立せず、即ち、ATF油温が所定値以上と高いときにはステップS114に移行し、時間カウンタtがクラッチ油圧の緩増圧期間の基準設定値tnom に対する許容上限値(+Δt)以上となっているか、即ち、次の不等式(3)が成立するかが判定される。
【0029】
【数3】
t≧tnom +Δt ・・・(3)
【0030】
ステップS114で、不等式(3)が成立するときには元の初期クラッチ油圧指令値Pcoが小さいため緩増圧期間が長くなり、結果的に、時間カウンタtが大きくなり過ぎるとしてステップS115に移行し、初期クラッチ油圧指令値Pcoが次式(4)にて学習補正される。
【0031】
【数4】
Pco←Pco+Δp・{t−(tnom +Δt)} ・・・(4)
【0032】
一方、ステップS114の判定条件が成立せず、即ち、時間カウンタtがクラッチ油圧の緩増圧期間の基準設定値tnom に対する許容上限値(+Δt)未満であるときにはステップS116に移行し、時間カウンタtがクラッチ油圧の緩増圧期間の基準設定値tnom に対する許容下限値(−Δt)以下となっているか、即ち、次の不等式(5)が成立するかが判定される。
【0033】
【数5】
t≦tnom −Δt ・・・(5)
【0034】
ステップS116で、不等式(5)が成立するときには元の初期クラッチ油圧指令値Pcoが大きいため緩増圧期間が短くなり、結果的に、時間カウンタtが小さくなり過ぎるとしてステップS117に移行し、初期クラッチ油圧指令値Pcoが次式(6)にて学習補正される。
【0035】
【数6】
Pco←Pco−Δp・{(tnom −Δt)−t} ・・・(6)
【0036】
上述のステップS115またはステップS117にて初期クラッチ油圧指令値Pcoが学習補正され更新されたのちステップS118に移行する。また、ステップS113の判定条件が成立、即ち、ATF油温が所定値未満と低いときにはステップS114〜ステップS117までの初期クラッチ油圧指令値Pcoの学習補正がスキップされステップS118に移行する。更に、ステップS116の判定条件が成立せず、即ち、時間カウンタtがクラッチ油圧の緩増圧期間の基準設定値tnom に対する許容上限値(+Δt)と許容下限値(−Δt)との範囲内であるときにはステップS118に移行する。
【0037】
ステップS118では変速時におけるクラッチ油圧指令値Pcに基づき、入力軸回転数Ntを予め設定された目標入力軸回転数Ntrに追従させるようイナーシャ相F/B(フィードバック)制御処理が実行される。このイナーシャ相F/B制御では、例えば、周知のPID制御(Proportional Integral Differential Control;比例・積分・微分制御)が用いられる。このF/B制御としては、PID制御に限定されるものではなく、PI制御、PD制御、P制御でもよく、この他の制御理論に基づく種々の方法を適宜、用いることができる。
【0038】
次にステップS119に移行して、イナーシャ相終了であるかが判定される。このイナーシャ相終了判定は、次の不等式(7)によって判定される。ここで、gr2は変速後ギヤ比、ΔN2 は判定閾値である。
【0039】
【数7】
Nt−gr2・No<ΔN2 ・・・(7)
【0040】
ステップS119の判定条件が成立せず、即ち、Nt−gr2・No≧ΔN2 の不等式が成立し、未だイナーシャ相であるときにはステップS118に戻り、同様の処理が繰返し実行される。そして、ステップS119の判定条件が成立、即ち、Nt−gr2・No<ΔN2 の不等式が成立し、イナーシャ相が終了であるときには本ルーチンを終了する。
【0041】
このように、本実施例の車両用自動変速機制御装置は、図示しない内燃機関の出力軸に接続される流体伝動機構としてのトルクコンバータ3と変速歯車機構5とからなり、変速歯車機構5に設けられたクラッチC0 ,C1 ,C2 及びブレーキB0 ,B1 からなる摩擦係合要素の締結状態を所定の制御油圧により変更することで内燃機関と駆動輪とを結ぶ動力伝達経路を変更し変速を行う自動変速機1を備えたものであって、図示しない油圧制御弁によって調圧されるクラッチ油圧回路としての自動変速回路9を有する油圧制御機構7を用い、自動変速機1の変速制御における前記摩擦係合要素の係合/解放を油圧制御するAT−ECU23にて達成される油圧制御手段と、自動変速回路9への作動油充填制御を行うときには、急速充填直後、クラッチ油圧を緩やかに増圧するよう前記油圧制御手段に対して制御油圧指令を出力するAT−ECU23にて達成される増圧指令手段とを具備するものである。
【0042】
つまり、自動変速機1による変速制御を所定期間内に終了させるため、制御油圧指令に基づくクラッチ油圧が、変速歯車機構5に設けられたクラッチC0 ,C1 ,C2 及びブレーキB0 ,B1 からなる摩擦係合要素の実際のクラッチ係合直前のクラッチ油圧まで急速充填され、この待機相に必要な初期クラッチ油圧に素早く設定される。こののちのイナーシャ相ではクラッチ油圧が初期クラッチ油圧から緩増圧されることで、変速歯車機構5に設けられた摩擦係合要素の係合が滑らかに進行される。これにより、自動変速機1の摩擦係合要素における個体差や経時変化等に影響されず、変速制御における変速ショックの発生を防止することができる。
【0043】
また、本実施例の車両用自動変速機制御装置のAT−ECU23にて達成される増圧指令手段は、制御油圧指令に基づきクラッチ油圧を緩やかに増圧するときの勾配を、油圧制御機構7の応答速度に応じて設定するものである。つまり、油圧系の持つ固有の応答速度と、充填不足時に増圧させたとき充填完了と共に油圧が変化する幅が、トルク相形成に必要な油圧変化割合に応じて設定され、また、例えば、ATF油温等に基づき油圧制御機構7の応答速度が変動することを補正して設定されるため、クラッチ油圧の緩増圧勾配が油圧制御機構7の現在の油圧制御能力に見合ったように設定されることになる。これにより、実際の変速制御で諸条件の影響を受け難くなるため、変速ショックの発生を抑えることができる。
【0044】
そして、本実施例の車両用自動変速機制御装置のAT−ECU23にて達成される増圧指令手段は、変速制御における制御油圧指令の出力時点からイナーシャ相開始時点までの期間を用いて、クラッチ油圧を設定するクラッチ油圧指令値Pcの増圧を開始するときの初期油圧を設定する初期クラッチ油圧指令値Pcoを学習補正するものである。このように、緩増圧に移行する際の初期クラッチ油圧指令値Pcoが学習補正されその都度、更新されることで、緩増圧制御におけるクラッチ油圧指令値Pcに対する実油圧が適切に補正されることとなる。これにより、自動変速機1の変速制御における変速開始からイナーシャ相終了までの期間を予め設定された許容期間内に収めるようにでき、変速制御を所定の期間内に終了させることができる。また、この学習補正はATF油温が所定値以下では禁止することによって、低温時に油圧応答が遅いことに起因する誤学習を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施の形態の一実施例にかかる車両用自動変速機制御装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】 図2は図1における自動変速機の変速歯車機構のギヤ列構成を示す模式図である。
【図3】 図3は本発明の実施の形態の一実施例にかかる車両用自動変速機制御装置で使用されているAT−ECUにおける変速制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】 図4は本発明の実施の形態の一実施例にかかる車両用自動変速機制御装置で用いられている車速とスロットル開度とをパラメータとする自動変速機の変速段を示す変速線図である。
【図5】 図5は図3の処理に対応する各種制御量の遷移状態を示すタイムチャートである。
【図6】 図6は本発明の実施の形態の一実施例にかかる車両用自動変速機制御装置で用いられている入力軸トルクと増圧勾配との関係をATF油温をパラメータとして示す特性図である。
【符号の説明】
1 自動変速機
3 トルクコンバータ(流体伝動機構)
5 変速歯車機構
7 油圧制御機構
19 入力軸回転数センサ
21 出力軸回転数センサ
23 AT−ECU(自動変速機制御用電子制御ユニット)
Claims (3)
- 内燃機関の出力軸に接続される流体伝動機構と変速歯車機構とからなり、前記変速歯車機構に設けられた摩擦係合要素の締結状態を所定の制御油圧により変更することで、前記内燃機関と駆動輪とを結ぶ動力伝達経路を変更し変速を行う自動変速機を備えた車両用自動変速機制御装置において、
油圧制御弁によって調圧されるクラッチ油圧回路を有する油圧制御機構を用い、前記自動変速機の変速制御における前記摩擦係合要素の係合/解放を油圧制御する油圧制御手段と、
前記自動変速機の変速制御における制御油圧指令の出力時点からイナーシャ相開始時点までの期間を用いて、クラッチ油圧の増圧を開始するときの初期油圧を学習補正してその都度、更新し、前記クラッチ油圧回路への作動油充填制御を行うときには、急速充填直後、前記クラッチ油圧を前記初期油圧から緩やかに増圧するよう前記油圧制御手段に対して前記制御油圧指令を出力する増圧指令手段と
を具備することを特徴とする車両用自動変速機制御装置。 - 前記増圧指令手段は、前記制御油圧指令に基づき前記クラッチ油圧を緩やかに増圧するときの勾配を、前記油圧制御機構の応答速度に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用自動変速機制御装置。
- 前記自動変速機の作動油の温度が所定値よりも低いときには、前記学習補正を禁止することを特徴とする請求項1に記載の車両用自動変速機制御装置。
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