JP3717112B2 - 法面安定化工法及び法面安定化構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、盛土、切土、自然斜面等の法面を補強することによって法面の安定化を図る工法及び構造に関し、法面に設置した押圧部材を、これを貫通して地山に挿入したアンカーやロックボルト等のアンカー材により法面に定着することにより地山を安定化するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
盛土、切土、自然斜面等の法面を補強する工法として、たとえば十字状のコンクリートブロックをアンカーにより法面に定着する工法について、近年多くの提案がなされ、現実にも多く採用されている。また、コンクリートブロックでは重量的に重いことに鑑み、特開平11−158877号公報には、施工性を改善するために鋳鉄製の軽量化した押圧部材が提案されている。
【0003】
ところが、この鋳鉄製の押圧部材を用いると、時の経過により鋳鉄自体に赤さびが生じるため、意匠的に好ましくない。他方、近年の環境に対する考えの変化に伴って、また景観を良好にする目的で、法面を可能な限り緑化したいとの要望もある。
【0004】
そこで、本出願人らは、先の特願平2000−392693号において、法面に設置した押圧部材を、これを貫通して地山に挿入したアンカー材により法面に定着することにより地山を安定化するにあたり、押圧部材の周辺部または全体を覆い隠して、法面上の対象とする領域に、客土層とその上の表面層とからなる保護土層を形成し、植生を図る法面安定化工法を提案した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる植生を図るために樹木などの植物を保護土層に植える場合、傾斜面に植えること及び保護土層の法面への定着力が弱いことに起因し、植物が倒れたり移動したりするという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、保護土層に植えた植物の転倒・移動等を防止することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
法面に設置した押圧部材を、これを貫通して地山に挿入したアンカー材により法面に定着することにより地山を安定化する方法であって、
前記押圧部材によって法面上に支持される植物支持体を設け、
この植物支持体の法頭側に植物を配置し、
しかる後、前記押圧部材の周辺部若しくは全体、並びに前記植物の少なくとも根部分を覆い隠して、法面上の対象領域に保護土層を形成するにあたり、
表面から裏面に貫通する貫通孔を形成した押圧部材を用い、
軸部材と網状体とからなり且つ前記軸部材により前記網状体を支持する構造の植物支持体を用い、
前記植物支持体を、前記植物支持体をなす軸部材を前記押圧部材の貫通孔を通して法面に突き刺して前記網状体が押圧部材により支持されるようになして設け、前記植物を前記植物支持体をなす網状体の法頭側に配置する、
ことを特徴とする法面安定化工法。
【0008】
(作用効果)
本発明では、押圧部材によって支持される植物支持体を設け、この植物支持体の法頭側(法面上側)に植物を配置する。植物支持体は、アンカー材を用いて法面に強固に定着された押圧部材によって支持されるため、配置された植物は植物支持体によって法面に対して強固に保持される。その結果、保護土層に植えた植物が転倒または移動するのを確実に阻止できる。
【0009】
また、押圧部材を覆うように保護土層を形成するので、押圧部材の設置領域においても植生を図ることができ、この場合、押圧部材が目立たないあるいは植生に隠れて押圧部材の存在が判らないようになる利点がもたらされる。
【0010】
そして、本発明においては、植物支持体を押圧部材によって支持する具体的な構造を提案する。すなわち、植物支持体をなす軸部材を押圧部材の貫通孔を通して法面に突き刺して、網状体が押圧部材により支持されるようにすることにより、植物支持体は押圧部材により支持され、また法面に対して直接に固定される。よって、強固に植物を支持できるようになる。
【0011】
<請求項2記載の発明>
前記保護土層は、客土層とその上に形成される表層とからなるように形成され、前記客土層は連続繊維を混入して形成される、請求項1記載の法面安定化工法。
【0012】
(作用効果)
このように保護土層を表層・客土層からなる二層構造となし、客土層に連続繊維を混入して形成すると、客土が連続繊維に付着して摩擦力により保持されるので客土層の流亡が効果的に防止されるとともに、表面に連続繊維が露出することによる問題、例えば景観が損なわれたり、周囲の生物がこれに絡まったりする等といった問題が発生しにくくなる。
【0013】
<請求項3記載の発明>
前記植物支持体をなす網状体を、折り畳み可能なように構成し、この網状体を広げた状態で前記植物の配置を行う、請求項1または2記載の法面安定化工法。
【0014】
(作用効果)
植物支持体の網状体は植物の支持に際しては、広い面積を有するのが望ましいが、法面上への持ち込みに際してはコンパクトなほうが持ち運びや携帯が容易であり好ましい。本請求項3記載のように、植物支持体の少なくとも網状体を折り畳み可能なように構成することによって、これらの相反する利点を兼ね備えることができ、作業の容易化、迅速化および安全化を図ることができる。
【0015】
<請求項4記載の発明>
法面に設置した押圧部材が、これを貫通して地山に挿入したアンカー材により法面に定着された構造であって、
前記押圧部材によって法面上に支持される植物支持体が設けられ、
この植物支持体の法頭側に植物が配置され、
前記押圧部材の周辺部若しくは全体、並びに前記植物の少なくとも根部分を覆い隠して、法面上の対象とする領域に保護土層が形成されており、
前記押圧部材に表面から裏面に貫通する貫通孔が形成され、
前記植物支持体が軸部材と網状体とからなり且つ前記軸部材により前記網状体が支持される構造であり、
この植物支持体が、前記軸部材を前記押圧部材の貫通孔を通して法面に突き刺して前記網状体が押圧部材により支持され、前記植物が前記植物支持体をなす網状体の法頭側に配置されている、
ことを特徴とする法面安定化構造。
【0016】
(作用効果)
請求項1と同様の作用効果を奏する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳説する。
<押圧部材の施工>
本発明では、図1に示すように、法面Gに設置した押圧部材10を、これを貫通して地山に挿入したアンカー材1により法面Gに定着することにより地山の安定化を図る。アンカー材1は、モルタル注入などのアンカー部2により固定され、定着座3との間に緊張力を作用させた状態で、押圧部材10を地山に定着させてある。
【0018】
この際に使用する押圧部材10の具体例については、さらに図2〜4に詳しく示した。押圧部材10は、鋳鉄製で鋳込みにより一体的に形成したものであり、法面Gに直接または下地材料を介して面するほぼ方形の底板11と、この底板11のみでは剛性が不十分なため、緊張力を与える際の耐力を高めるために補強し、押圧部材10全体として十分な剛性を確保するための、中央部に位置する補強板12…と、その周囲に張り出す周囲部に形成された周囲補強板13…とを備える。
【0019】
補強板12,13…は、中央補強板12…は方形をなして手前(法面から遠ざかる方向)に張出し、周囲補強板13…は中央補強板12の一辺を共通する方形の他の三辺を構成する。アンカーの緊張力が作用する底板11の中央部11aは周囲部より厚肉としてある。この中央部11aには、アンカー材1を挿通するアンカー材貫通孔19が形成されている。
【0020】
他方、中央補強板12…で囲まれる底板部分の中央、ならびにその一辺と周囲補強板13…とで囲まれる4箇所の底板部分の周辺部分には、水透過孔14がそれぞれ形成され、さらに各中央補強板12…、各周囲補強板13…の中央部の下部には貫通しかつ押圧部材10の下面にも連なる水透過孔15…がそれぞれ形成されている。また、中央補強板12…の交差位置に相当する底板11の下面4箇所には、突出する滑り止め部16,16…を形成し、押圧部材10を法面G上に設置したときの滑り止めを図っている。
【0021】
押圧部材の形状としては、平面的に見て上記の方形に限らず、円形、三角、5角以上の多角形などでもよい。これに応じて、中央補強板12及び周囲補強板13の配置形態も変えることができる。他の一例として、図5〜7に示す押圧部材20を挙げることができる。
【0022】
この第2の実施の形態で使用する押圧部材20は、第1の実施の形態の押圧部材10と異なり、十字形となっており、法面Gと接触する底板21と、この底板21を補強する中央補強板22,周囲補強板23…とを備える。底板21と補強板22,23…とは、鋳鉄で一体的に形成してある。
【0023】
この形態においては、押圧部材20とアンカー材1とのなす角度(アンカー材1の挿入角度)とを選択することができるように、底板21の中央部21aに工夫をこらしてある。すなわち、中央部21aには、アンカー材貫通孔29を有して手前に向かって突出する環状の突出部21bが形成されており、この突出部21bの上端面21cは、球面に沿う形状とされている。アンカー材1の定着座3を法面側の面を球面としておくことにより、アンカー材1の挿入角度を選択しつつその位置で、定着座3の固定を図ることができる。
【0024】
また、底板21の中央部21aを除いて各周辺部には、多数の(合計20個の)水透過孔25…が形成されている。さらに突出部21bの4つの補強リブと中央補強板22との交差部の両側(8箇所)、ならびに各周囲補強板23の各角部(4箇所×4)に裏面に抜ける水透過孔24…が形成されている。各周囲補強板23の中間底部には横に抜ける水透過孔26…が形成されている。
【0025】
なおここに、本発明での押圧部材10(20)とは、法面Gに対してアンカー材により押圧するための部材であり、したがって、押圧するに十分な下面の面積が必要となる。このためには、50cm角以上(0.25m2以上)の面積を有することが望ましい。したがって、押圧部材10(20)は、アンカーの引張り材やロックボルトの定着部材とは異なることを注記する。
【0026】
押圧部材10(20)の材質は、金属製が好ましく、特に鋳鉄製であると、成形及び孔の形成が容易であるために特に好ましい。鋳鉄としては、その種類を何ら限定するものではない。例えば、ねずみ鋳鉄(普通鋳鉄、高級鋳鉄)、球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄、ノジュラー鋳鉄)、黒心可鍛鋳鉄(可鍛鋳鉄、マレアブル)、白心可鍛鋳鉄、パーライト可鍛鋳鉄、低合金鋳鉄、アシキュラ鋳鉄、ニハード鋳鉄、高クロム鋳鉄、ニレジスト鋳鉄、高珪素鋳鉄、アルミ鋳鉄、チルド鋳鉄等を使用することができる。
【0027】
<植物支持体の施工>
本発明では、押圧部材10(20)の施工を行う一方で(施工の前後あるいは同時でも良い)、図8に示すように、押圧部材10(20)によって法面G上に支持される植物支持体30を設ける。
【0028】
本発明においては、植物支持体が押圧部材10によって支持されていれば足りるので、例えば図9に示すように、押圧部材10の法頭側に接して植物支持体30´を載置若しくは法面Gに突き刺して固定したり、或いは押圧部材10に対して直接または間接的にボルト・ナット等の連結具を用いて固定(図示せず)したり、溶接したりすることもできるが、前者は押圧部材10による支持が弱く、後者は法面Gでの作業になるので作業性の観点から好ましくない。そこで、次のような植物支持体の設置方法を推奨する。
【0029】
すなわち図8に示すように、押圧部材10として、表面から裏面に貫通する貫通孔18を形成したものを用い、また植物支持体30としては、頭部51uが逆さU字状に曲げ返された軸部材51と網状体52とからなり、これらが設置前においては別体とされたものを用いて、網状体52を所望の位置に配置するとともに、軸部材51のU字状頭部を網状体52に引っ掛けるようにして、軸部材51を押圧部材10の貫通孔18を通して法面Gに突き刺して網状体52を固定することができる。この場合、使用する軸部材51の数は一本であっても良いし、複数本であっても良い。また、図10に示すような軸部材41の頭部に網状体42を溶接等により固定したものを用いて、植物支持体30の軸部材41を押圧部材10の貫通孔18を通して法面Gに突き刺して固定することもできる。
【0030】
図11及び図12に示すように、植物支持体30をなす網状体52は折り畳み可能なように構成するのが望ましい。これにより、法面G上への持ち込みに際しては網状体52を折り畳みコンパクトにすることで持ち運びや携帯が容易となり、植物の支持に際しては網状体52を広げて支持面積を広くできる。
【0031】
具体的には、図示のように主平坦部分52aと、この左右両側に対して折り畳み可能に取り付けた側部平坦部分52b,52bとからなる構造を採用できる。図示例では、主平坦部分52aの側枠と側部平坦部分52b,52bの側枠とをらせん状の針金52wにより連結しているが、複数のリング部材により連結したり、蝶番により連結したりしても良い(図示せず)。網状体52を広げた時の形態は適宜定めることができ、法面高さ方向と直交する平面をなすように設けても良いが、図13に示すように法頭側の開いた略コ字状をなすように設けると、植物pが法尻側からのみならず左右両側からも支持されるようになるので好ましい。後者の場合、U字状頭部を有する軸部材51を、主平坦部分52a及び側部平坦部分52b,52bに対して各一つ以上用いて、網状体52をコ字状に固定することができる。
【0032】
網状体42,52は平面状とするほか、筒状(円筒のほか横断面が多角形のものを含む)にしたり、横断面がU字状またはV字状をなす屈曲板状とする等、適宜の形状とすることができる(図示せず)。なお、本発明の網状体は、板材に多数の透過孔を散点状に形成したもの(いわゆるパンチングメタル)も含み、素材としては鉄やアルミ等の金属、樹脂等とすることができる。特に、図11に示すように、網状体52を枠材52fとこれに固定された網材52nとからなるものとするのが好ましく、枠材52fは棒材により相対的に太く形成し、また網材52nは相対的に細く形成することができる。網材52nとしては金網や前述のパンチングメタル等の金属製のものの他、ワイヤーやロープ等からなるものも用いることができる。
【0033】
また図示しないが、軸部材41,51についても折り畳み又は伸縮可能にすることもできる。軸部材41,51の素材は、網状体42,52と同様に、鉄やアルミ等の金属、樹脂等とすることができ、法面Gに突き刺す場合には先端を尖らせておくのが望ましい。
【0034】
他方、植物支持体30の軸部材41,51を通すための押圧部材10の貫通孔18としては、前述の水透過孔14、25の一部または全部を用いることができる。植物支持体30の軸部材41,51とこれを通すための押圧部材10の貫通孔18としては同径か或いは後者を僅かに大径にすることができ、特に水透過機能を併せ持たせる場合には更に後者を大径にして、貫通孔18内面と植物支持体30の軸部材41,51の外面との間に隙間を形成したり、貫通孔としての水透過孔14,25の形状を軸部材41,51の横断面形状と異なるようにしたりすることができる。もちろん、別途植物支持体取り付け専用の貫通孔を形成することもできる。
【0035】
<植物の配置>
かくして、植物支持体30を押圧部材10によって支持されるように設置したならば、図8や図10に示すように、この植物支持体30の法頭側に樹木の苗木等の植物pを配置する。この際、植物pの根塊部分rを植物支持体30の網状体42,52の法頭側に接触させて配置する。
【0036】
<保護土層の施工>
植物pの配置の一方で、本発明では図14に示すように、押圧部材10の周辺部若しくは全体、並びに植物pの根部分rを実質的に覆い隠すようにして、法面G上の対象領域に保護土層4を形成する。植物支持体30の高さ位置に応じてある程度まで土層を形成した後に植物pを配置し、さらに所定の被り厚まで土層を形成して保護土層4とすることも可能である。
【0037】
保護土層4は、押圧部材10,10の周辺部(図示例では、底板11の中央部を除く部分)を覆い隠すように形成したり、押圧部材10全体(すなわち中央部を含めて)を完全に覆うように形成したりすることができる。しかし、アンカー材1の頭部1hについては露出させるのが望ましい。
【0038】
この保護土層4は、本発明では植生を図るために特に土層とされる。この保護土層4の形成態様に限定されるものではないが、客土層とすることができる。また、繊維混入客土層ともすることができる。本発明で言う客土層あるいは繊維混入客土層での客土層とは、客土(現地発生土であってもよい)そのもののほか、砂やさらにセメント混入砂、あるいは土砂に高分子接合剤を混入したものなどでもよい。
【0039】
繊維混入客土層に混入する繊維は、短繊維でも長繊維でもよいが、連続長繊維を混入するのが好ましい。繊維混入客土層を形成するに際しては、例えば、図15に示すように、連続長繊維103をコーン状に巻き取った巻取りチーズ104から繰り出し、給糸装置105に導入し、コンプレッサー106による圧空で繊維圧送ホース107を通し、その先端の吹付ノズル108において、他方の吹付機109からコンプレッサー106による圧空で吹付ホース110を介して導入される客土とともに、法面Gに向けて吹き付けるとよい。
【0040】
また、連続長繊維としては、嵩高加工糸を使用するのが好ましい。その材質としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アセテートなどの各系列の樹脂を挙げることができる。また、コンジュゲート糸、特に貼り合わせ糸を用いるのも有効である。この種の嵩高糸を用いると、繊維の圧送に際して、圧空との摩擦面積が増大し、より搬送性が高まり、さらに吹付後繊維が分散し易くなる。嵩高加工糸の捲縮数としては、JIS L 1015の25m当りで50〜9000、特に100〜3000が好ましい。また、嵩高加工糸として、トータルデニールの太い繊維の一本を用いるよりは、50〜1000d(デニール)の繊維を、2〜40本程度束ねて吹き付けた方が、吹き付けた対象面において、より均一に分散し、繊維混入客土層の安定性に優れるので好ましい。
【0041】
保護土層4の形態は法面の保護を図る機能を有する限り適宜である。保護土層4は法面上の対象とする領域において、その領域全体であることに限定されず、部分的でもよい。また保護土層4は、図14に示すように、複数の層をもっても形成することができる。実施の形態では、押圧部材10を実質的に覆い隠すように、法面G上に客土層4Aを形成し、この客土層4A上に表面層たる植生基盤材料を用いた植生基盤層(表面層)4Bを形成したものである。この客土層4Aに対して連続長繊維4fを混入すると、客土層4A自体の剪断力を高め、客土層4Aの形成材料の粘着力(付着力)を高めて雨や風による流亡や崩壊を防止することができる。
【0042】
植生基盤材料としては、例えば、有機質土壌改良剤であるピートモス、バーク堆肥を主原料に、高分子系および無機系の土壌改良剤、肥料、粘結剤、種子などを混ぜたものなどを挙げることができる。植生基盤層4B中にも短繊維や長繊維もしくは連続長繊維を混入することができる。
【0043】
保護土層4、客土層4A、植生基盤層4Bは吹付などによるほか、撒き出しや散布などにより形成してもよい。保護土層4の厚みとしては、植生を図る態様では、10cm以上であるのが望ましい。したがって、客土層4Aの厚みとしては、15cm〜50cm、植生基盤層4Bの厚みとしては1cm〜7cmが望ましい。
【0044】
これに対して、押圧部材10の補強部の張出し高さと、保護土層4の厚みとの関係で、保護土層4の厚みが押圧部材10の補強部の張出し高さより薄い場合には、押圧部材10の周辺部または全体は保護土層4により隠されるものの、補強部は部分的に外部に露出するものとなるが、見映えの大きな低下とはならない。この場合、必要ならば、押圧部材10及びその近傍部分のみを周囲より厚い層厚とし、押圧部材10のほぼ全体を隠すようにすることができる。
【0045】
押圧部材10の補強部は、前述の板状に限られることなく、種々の張出し突起などでもよい。また、押圧部材10は隣接配置したとき、相互にたとえば鉄筋などにより連結することができる。この連結は、押圧部材10が鋼製であるときには、溶接や適宜の金具により行うことができる。この種の連結材料についても、保護土層4により隠すのが望ましい。
【0046】
<安定化構造>
かくして形成される本発明の法面安定化構造においては、図14に示されるように、アンカー材1を用いて法面Gに強固に定着された押圧部材10によって植物支持体30が支持されるため、配置された植物pは植物支持体30によって法面Gに対して強固に保持される。その結果、保護土層4に植えた植物が転倒または移動するのを確実に阻止できる。また、押圧部材10を覆うように保護土層4を形成するので、押圧部材10の設置領域においても植生を図ることができ、この場合、押圧部材10が目立たないあるいは植生に隠れて押圧部材10の存在が判らないようになる利点がもたらされる。
【0047】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、保護土層に植えた植物の転倒・移動等を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 押圧部材の施工形態の断面図である。
【図2】 第1の押圧部材の平面図である。
【図3】 図2におけるA−A線相当部分の矢視図である。
【図4】 図2におけるB−B線相当部分の矢視図である。
【図5】 第2の押圧部材の平面図である。
【図6】 図5の正面図である。
【図7】 図5におけるA−A線相当部分の矢視図である。
【図8】 好ましい植物支持体を用いた場合の法面断面図である。
【図9】 他の植物支持体を用いた場合の法面断面図である。
【図10】 別の植物支持体を用いた場合の法面断面図である。
【図11】 折り畳み可能な植物支持体の例を示す正面図である。
【図12】 折り畳み可能な植物支持体の可動形態を示す平面図である。
【図13】 折り畳み可能な植物支持体を広げた状態を示す平面図である。
【図14】 本発明による法面安定化構造体の断面図である。
【図15】 繊維混入層(保護土層)の形成方法の説明図である。
【符号の説明】
1…アンカー材、2…アンカー部、3…定着座、4…保護土層、4A…植生基盤材層、4B…客土層、4f…連続繊維、10…押圧部材、11…底板、11a…底板中央部、12…中央補強板、13…周囲補強板、14,15…水透過孔、16…滑り止め部、19…アンカー材貫通孔、20…押圧部材、21…底板、21a…底板中央部、22…中央補強板,23…周囲補強板、21b…突出部、21c…上端面、24,25,26…水透過孔、29…アンカー材貫通孔、30…植物支持体、G…法面。
Claims (4)
- 法面に設置した押圧部材を、これを貫通して地山に挿入したアンカー材により法面に定着することにより地山を安定化する方法であって、
前記押圧部材によって法面上に支持される植物支持体を設け、
この植物支持体の法頭側に植物を配置し、
しかる後、前記押圧部材の周辺部若しくは全体、並びに前記植物の少なくとも根部分を覆い隠して、法面上の対象領域に保護土層を形成するにあたり、
表面から裏面に貫通する貫通孔を形成した押圧部材を用い、
軸部材と網状体とからなり且つ前記軸部材により前記網状体を支持する構造の植物支持体を用い、
前記植物支持体を、前記植物支持体をなす軸部材を前記押圧部材の貫通孔を通して法面に突き刺して前記網状体が押圧部材により支持されるようになして設け、前記植物を前記植物支持体をなす網状体の法頭側に配置する、
ことを特徴とする法面安定化工法。 - 前記保護土層は、客土層とその上に形成される表層とからなるように形成され、前記客土層は連続繊維を混入して形成される、請求項1記載の法面安定化工法。
- 前記植物支持体をなす網状体を、折り畳み可能なように構成し、この網状体を広げた状態で前記植物の配置を行う、請求項1または2記載の法面安定化工法。
- 法面に設置した押圧部材が、これを貫通して地山に挿入したアンカー材により法面に定着された構造であって、
前記押圧部材によって法面上に支持される植物支持体が設けられ、
この植物支持体の法頭側に植物が配置され、
前記押圧部材の周辺部若しくは全体、並びに前記植物の少なくとも根部分を覆い隠して、法面上の対象とする領域に保護土層が形成されており、
前記押圧部材に表面から裏面に貫通する貫通孔が形成され、
前記植物支持体が軸部材と網状体とからなり且つ前記軸部材により前記網状体が支持される構造であり、
この植物支持体が、前記軸部材を前記押圧部材の貫通孔を通して法面に突き刺して前記網状体が押圧部材により支持され、前記植物が前記植物支持体をなす網状体の法頭側に配置されている、
ことを特徴とする法面安定化構造。
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