JP3716892B2 - 流量検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用エンジン等の吸入空気量を検出するのに用いて好適な流量検出装置に関し、特にエッチング処理等の半導体製造技術によって基板上に形成される流量検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、例えば自動車用エンジン等の吸入空気量を算出するためにエンジンの吸気管内に設けられ、吸入空気の流量または流速(以下、流量という)を検出する流量検出装置は、例えば特開昭60−142268号公報等によって知られている。
【0003】
そこで、この種の従来技術による流量検出装置を図9および図10に基づいて説明する。
【0004】
図中、100はエンジンの吸気管(図示せず)内に配設される流量検出装置用の取付部材で、該取付部材100は板状に形成され、その先端側には後述の基板101等を取付けるための取付エリア100Aが設けられている。
【0005】
101は流量検出装置の本体部分を構成する基板で、該基板101は例えば数ミリ角程度の略四角形状をなすシリコン板からなり、取付部材100の取付エリア100A内に固着されると共に、前記吸気管内で露出状態に保持されるものである。
【0006】
ここで、基板101上には、該基板101上で一方向に延び外部からの給電により発熱するヒータ102と、図9中の矢示A方向に流れる吸入空気の流れに対して該ヒータ102の上流側と下流側とに離間し該ヒータ102に沿って一方向に延びる一対の感温抵抗体103A,103Bとが形成されている。そして、これらのヒータ102および感温抵抗体103A,103Bは、例えば基板101上に形成した白金等の薄膜に対してエッチング処理を施すことにより、微細な配線パターンとして基板101上に形成されている。
【0007】
このように構成される従来技術では、基板101が取付部材100の取付エリア100A内に取付けられた状態でエンジンの吸気管内に露出され、このとき基板101上のヒータ102および感温抵抗体103A,103Bは、その長さ方向が吸入空気の流れに対して垂直となるように配設されると共に、この状態でエンジン本体側に向けて前記吸気管内を流れる吸入空気と接触する。
【0008】
そして、流量検出装置の作動時には、ヒータ102からの熱が左,右両側の感温抵抗体103A,103Bにほぼ等しく伝わり、該感温抵抗体103A,103Bはその温度に応じた一定の抵抗値をもつようになる。そして、この状態でエンジンの運転中に吸入空気が前記吸気管内を矢示A方向に流れると、この吸入空気の流れを介してヒータ102からの熱は下流側の感温抵抗体103Bに効率よく伝わるようになるから、上流側の感温抵抗体103Aは下流側の感温抵抗体103Bよりも吸入空気によって冷却されやすくなる。
【0009】
これにより、感温抵抗体103A,103Bの間には吸入空気の流量に応じた温度(抵抗値)の差が生じるから、該感温抵抗体103A,103Bに接続される外部の検出回路等では、両者の抵抗値の差を吸入空気の流量として検出し、この検出結果に基づいてエンジンの吸入空気量を算出する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、感温抵抗体103A,103Bの間に配設したヒータ102からの熱が吸入空気の流れを介して下流側の感温抵抗体103Bに効率よく伝わるようにして、上流側と下流側の感温抵抗体103A,103B間に温度(抵抗値)の差を生じさせ、この抵抗値の差を吸入空気の流量として検出するようにしている。
【0011】
しかし、感温抵抗体103A,103Bの長さはヒータ102に対応してほぼ同等の長さをもって形成しているので、ヒータ102からの熱は感温抵抗体103A,103Bの長さ方向中間部に比較して長さ方向両端側の方が伝わりにくく、感温抵抗体103A,103Bの両端側部位は中間部に比較して相対的に低い温度分布となってしまう。また、吸入空気を介して感温抵抗体103A,103Bに伝わるヒータ102からの熱についても、感温抵抗体103A,103Bの両端側では中間部に比較してより低い温度分布の熱が吸入空気を介して伝わるようになり、これによっても感温抵抗体103A,103Bの温度分布は長さ方向に関して不均一になってしまう。
【0012】
このため、従来技術では、感温抵抗体103A,103Bの両端側が中間部に比較して低温傾向となることにより、その検出感度が感温抵抗体103A,103Bの両端側近傍で低下するようになり、ヒータ102や感温抵抗体103A,103Bの長さ寸法を大きくして全体を大型化しない限り、吸入空気の流量を高い精度で検出するのが難しいという問題がある。
【0013】
特に、エンジンの低回転時には、吸気管内を流れる吸入空気の流量が減少することにより、ヒータ102の上流側と下流側とで感温抵抗体103A,103B間の温度差が小さくなるために、感温抵抗体103A,103Bの検出感度を向上させない限り、吸入空気の流量を安定して検出できないという問題がある。
【0014】
さらに、基板101を取付部材100に取付けるときには、その取付位置にずれが生じることがあり、例えば基板101が図10に示す如く、正規の取付位置Sからずれ、取付部材100の取付エリア100Aに対して傾いた状態で取付けられると、取付部材100を吸入空気の流れに対して所定の向きに配設したとしても、矢示A方向に流れる吸入空気は、ヒータ102および感温抵抗体103A,103Bを長さ方向に対して斜めに横切るようになる。
【0015】
そして、この場合には、例えば感温抵抗体103Bの端部103B1 等がヒータ102と接触して矢示A方向に流れる吸入空気の流れから外れることがあり、この端部103B1 はヒータ102から吸入空気を介して伝わる熱が減少することにより感温抵抗体103Bの中間部側よりも低温傾向となる。このため、基板101を正規の取付位置Sに取付けた場合と比較して、下流側の感温抵抗体103Bは平均温度が低下し、感温抵抗体103A,103B間には吸入空気の流れに応じた大きな温度差を生じさせるのが難しくなり、特にアイドル運転等の空気流量が少ないときには空気流量の検出精度が低下し易くなるという問題がある。
【0016】
一方、感温抵抗体103A,103Bの配線パターンは、感温抵抗体103A,103Bの長さ方向中間部でパターン密度が密になり、その両端側で粗になるため、感温抵抗体103A,103Bをエッチング処理によって形成するときには、感温抵抗体103A,103Bの中間部と両端側との間でエッチング速度に差が生じる場合があり、これによって感温抵抗体103A,103Bの両端側では形状ばらつきが生じ易くなり、空気流量の検出精度が低下するという問題がある。
【0017】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明は感温抵抗体の温度分布が長さ方向で不均一となるのを防止でき、検出感度を向上させることができると共に、感温抵抗体のパターン形状をその両端側でも安定させることができ、流体の流路に対する基板の取付位置等の影響で流体が感温抵抗体に対して偏った方向に流れたり、流体の流量が少なかったりする場合でも、その流量を高精度に検出できるようにした流量検出装置を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため請求項1の発明は、流体の流路途中に配設される基板と、該基板上で一方向に延びるように形成され外部からの給電により発熱するヒータと、前記流体の流れに対して該ヒータの上流側と下流側とに離間し該ヒータに沿って一方向に延びて前記基板上に形成された一対の感温抵抗体と、該各感温抵抗体の長さ方向両端側から微小寸法だけ離間して前記基板上に形成され熱伝導性材料からなる複数の擬似抵抗体とを備え、前記一対の感温抵抗体は、互いに一定の間隔で離間しつつ略等しい一定の長さ寸法をもって前記ヒータに沿って延びる複数の延設部と、互いに隣り合う該各延設部の端部を略等しい位置で折返すことによって連結する複数の連結部とにより長尺のコ字形状に屈曲して構成し、前記各擬似抵抗体は、前記感温抵抗体の連結部の温度を高めるために、前記各感温抵抗体のパターン形状に対応して前記連結部の位置から延設部と同一方向に向けて互いに略等しい一定の長さ寸法をもって延びる一定のパターン形状をもって構成したことにある。
【0019】
上記構成によれば、各感温抵抗体をヒータから伝わる熱により一定の温度に保持した状態で、基板上に沿って流体が流れるときには、この流体の流れを介してヒータからの熱を下流側の感温抵抗体に効率よく伝えることができ、これにより上流側と下流側の感温抵抗体間に流体の流量に応じた温度(抵抗値)の差を生じさせ、この抵抗値の差を流体の流量として検出できる。この場合、各感温抵抗体の両端側に位置する各擬似抵抗体にもヒータからの熱を伝えることができ、これらの各擬似抵抗体と微小な隙間を介して対向する各感温抵抗体の両端側には、ヒータからの熱を各擬似抵抗体を介しても伝えることができるから、感温抵抗体の両端側に位置する連結部の温度を高めことができる。
【0020】
また、感温抵抗体の両端側に設けられる各擬似抵抗体を、感温抵抗体の連結部の位置から延設部と同一方向に向けて互いに略等しい一定の長さ寸法をもって延びる一定のパターン形状としたから、配線パターンの粗密度を感温抵抗体の中間部と両端側とでほぼ均一化できると共に、感温抵抗体をエッチング処理によりその全長に亘って安定的に形成できる。
【0021】
また、請求項2の発明では、前記基板はシリコン基板からなり、前記各擬似抵抗体は前記各感温抵抗体と共にエッチング処理により前記シリコン基板上に形成している。
【0022】
これにより、各感温抵抗体と各擬似抵抗体の形成時には、シリコン基板上に設けた抵抗体材料の薄膜に対してエッチング処理を施すことにより、各感温抵抗体と各擬似抵抗体とをシリコン基板上に同時に形成できる。そして、各擬似抵抗体のパターンは、感温抵抗体の配線パターンの両端側から微小寸法だけ離間した位置に配設されるから、配線パターンの粗密度が感温抵抗体の中間部に比較して両端側で大きく変化するのを各擬似抵抗体の配線パターンによって緩和でき、配線パターンの粗密度を感温抵抗体の中間部側と両端側とでほぼ等しくできる。この結果、感温抵抗体等をエッチング処理によって形成するときには、そのエッチング速度を感温抵抗体の中間部側と両端側とでほぼ等しくすることができ、感温抵抗体を全長に亘って安定的に形成できる。
【0023】
また、請求項3の発明では、前記ヒータは両端側が少なくとも前記各感温抵抗体の位置を越え、前記擬似抵抗体に対応する位置まで前記基板の一方向に延びる構成としている。
【0024】
これにより、各感温抵抗体の両端側と各擬似抵抗体とに対してヒータを大きな長さ寸法(面積)で対向させることができ、感温抵抗体の両端側部位に対してもヒータからの熱を良好に伝えることができる。
【0025】
そして、請求項4の発明では、前記基板は、厚肉部と、該厚肉部に対して熱的に絶縁される薄肉部とからなり、該薄肉部上には前記ヒータ、各感温抵抗体および各疑似抵抗体を設ける構成としている。
【0026】
これにより、ヒータからの熱を厚肉部に逃がすことなく各感温抵抗体および各擬似抵抗体に伝えることができ、各感温抵抗体の間に流体の流量に応じて大きな温度差を生じさせることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0028】
ここで、図1ないし図6は本発明による第1の実施例を示し、本実施例では、自動車用エンジン等の吸入空気量を検出する場合の流量検出装置を例に挙げて説明する。なお、本実施例では、従来技術と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0029】
図中、1は流量検出装置の基板を構成するシリコン基板を示し、該シリコン基板1は例えば数ミリ角程度の四角形状に形成され、その表面側には例えばシリコン酸化膜2Aおよびシリコン窒化膜2B等の熱伝導率が比較的小さい材料からなる薄膜部2が1μm程度の膜厚をもって形成されている。
【0030】
また、シリコン基板1には図3に示すように、例えば選択的なエッチング処理等を施すことにより、その裏面側から薄膜部2の位置まで達する凹部1Aが形成されている。そして、シリコン基板1は従来技術と同様に、取付部材100の取付エリア100A内に取付けられ、エンジンの吸気管内(図示せず)に露出されると共に、この状態で前記吸気管内を流れる吸入空気はシリコン基板1に沿って図2中の矢示A方向に流れつつ、後述のヒータ5および感温抵抗体6,6に接触する構成となっている。
【0031】
3はシリコン基板1に設けられた薄肉部で、該薄肉部3はシリコン基板1に凹部1Aを形成することで該凹部1Aの位置に残された薄膜部2によって構成され、周囲の厚肉部4よりも薄肉に形成されている。そして、薄肉部3は薄膜部2の熱伝導率が比較的小さいため周囲の厚肉部4から熱的に絶縁されている。
【0032】
5はシリコン基板1の薄肉部3上に一方向に延びるように設けられたヒータを示し、該ヒータ5は図2および図5に示す如く、例えば白金等の抵抗体材料から長尺なコ字形状をなすように形成され、その配線パターンの幅寸法は例えば30μm程度となっている。そして、ヒータ5は、例えば1mm程度の長さ寸法L1 を有する一対の伸長部5A,5Aと、該各伸長部5Aの一端側を連結する連結部5Bと、各伸長部5Aの他端側に一体形成された幅広の電極部5C,5Cとによって構成されている。
【0033】
ここで、ヒータ5の各伸長部5Aの長さ寸法L1 は、後述する各感温抵抗体6の検出部6Aの長さ寸法L2 よりも大きく形成され(L1 >L2 )、その両端側は各感温抵抗体6の各連結部6Cを越えて後述の擬似抵抗体7,7,…に対応する位置まで延びている。
【0034】
そして、ヒータ5は各電極部5Cを介して外部の回路(図示せず)等に接続され、この回路からの給電により所定の温度となるように発熱して各感温抵抗体6および各擬似抵抗体7に熱を伝える構成となっている。
【0035】
6,6は吸入空気の流量を検出するためシリコン基板1の薄肉部3上に形成された一対の感温抵抗体を示し、該各感温抵抗体6は図2に示す如く、例えば白金等の感温性材料により微細な配線パターンとして形成され、この配線パターンの幅寸法は例えば10μm程度となっている。また、各感温抵抗体6は吸入空気の流れに対してヒータ5の上流側と下流側とに所定の間隔をもって離間し、該ヒータ5に沿って一方向に延びるように配設されている。
【0036】
そして、各感温抵抗体6は、一定のパターン形状をもって長尺のコ字形状に屈曲して延びる検出部6Aを有し、該検出部6Aは、互いに一定の間隔で離間しつつ長さ寸法L2 をもってヒータ5の長さ方向へと互いに平行に延びる複数の延設部6B,6B,…と、互いに隣り合う該各延設部6Bの端部間を連結するように該各延設部6Bに一体形成された複数の連結部6C,6C,…とから構成され、各連結部6Cは感温抵抗体6により構成される配線パターンの折返し部となっている。
【0037】
また、各感温抵抗体6の離間方向(幅方向)に対して両端側に位置する延設部6B1 ,6B1 には、これらの長さ方向に延びる短尺な延長部6D,6Dを介して電極部6E,6Eが一体的に設けられている。そして、各感温抵抗体6は、両端側の各電極部6Eがブリッジ回路等を備えた外部の検出回路(図示せず)に接続され、この検出回路では各感温抵抗体6間の抵抗値の差を検出するようになっている。
【0038】
7,7,…はシリコン基板1の薄肉部3上に形成された複数の擬似抵抗体を示し、該各擬似抵抗体7は図2および図4に示す如く、例えば白金等の熱伝導性材料からなり、各感温抵抗体6の検出部6Aのパターン形状に対応して各延設部6Bの長さ方向両端側(各延設部6B1 の長さ方向一端側)から微小寸法dだけ離間した位置に配設され、該各延設部6B,6B1 と同一方向に延びている。
【0039】
そして、各擬似抵抗体7は、各感温抵抗体6の各延設部6B,6B1 と共にヒータ5に沿って一方向に延びる一定のパターン形状を構成し、これによりシリコン基板1上に形成された各感温抵抗体6および各擬似抵抗体7の配線パターンの粗密度は、各延設部6B,6B1 の中間部側と端部側(各連結部6C側)とでほぼ等しくなっている。
【0040】
また、各擬似抵抗体7の形成時には、シリコン基板1上に白金等からなる薄膜を介してレジスト膜を形成した後に、このシリコン基板1に対し予め用意された露光マスク(図示せず)を用いてエッチング処理を施すことにより、ヒータ5、各感温抵抗体6および各擬似抵抗体7をシリコン基板1上に同時に形成するようになっている。
【0041】
本実施例による流量検出装置は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0042】
まず、前述した外部の回路から給電されることによりヒータ5が発熱すると、この熱は各感温抵抗体6に伝わり、該各感温抵抗体6はその温度に応じた一定の抵抗値をもつようになる。そして、この状態でエンジンを作動させることにより吸入空気が前記吸気管内を流れると、この吸入空気はシリコン基板1に沿って図2中の矢示A方向に流れることによりヒータ5と各感温抵抗体6等とに接触するので、ヒータ5からの熱は吸入空気の流れを介して下流側の感温抵抗体6に効率よく伝わるようになる。
【0043】
この結果、上流側の感温抵抗体6は吸入空気によって冷却され、下流側の感温抵抗体6はヒータ5からの熱が吸入空気を介して伝えられるようになり、各感温抵抗体6の間には吸入空気の流量に応じた温度(抵抗値)の差が生じるから、該各感温抵抗体6に接続される前記検出回路では、これらの抵抗値の差を吸入空気の流量として検出する。
【0044】
一方、ヒータ5からの熱は各感温抵抗体6と共に各擬似抵抗体7にも伝わり、これらの各擬似抵抗体7は各感温抵抗体6に近い温度状態に保持される。そして、各擬似抵抗体7は各感温抵抗体6の各延設部6B,6B1 の端部側と微小寸法dを介して対向しているから、該各延設部6B,6B1 の端部側(各連結部6C)には、ヒータ5からの熱が各擬似抵抗体7を通じても伝わるようになる。
【0045】
これにより、各感温抵抗体6の長さ方向に関する温度分布を図6中に示すと、各延設部6B,6B1 の端部側の温度は実線で示す特性線8の如く、各擬似抵抗体7を省略した場合の点線で示す特性線9に比較して高温となり、各延設部6B,6B1 の中間部の温度とほぼ等しくなる。即ち、検出部6Aの温度分布は長さ方向に亘って全体的に均一化されることが確認できた。
【0046】
かくして、本実施例では、ヒータ5に沿って延びる各感温抵抗体6に対し各延設部6B,6B1 の端部側から微小寸法dだけ離間した位置に各擬似抵抗体7を設ける構成としたから、各感温抵抗体6と共に各擬似抵抗体7にもヒータ5からの熱を伝えることができ、各感温抵抗体6の各延設部6B,6B1 の端部側には、ヒータ5からの熱を各擬似抵抗体7を介しても伝えることができる。
【0047】
これにより、感温抵抗体6の各部位のうち比較的低温となりやすい検出部6Aの両端側(各連結部6C)の温度を各擬似抵抗体7からの熱によって確実に補償でき、検出部6Aの温度分布を図6中に実線で示す如く、その長さ方向に対して全体的に均一化することができる。
【0048】
従って、本実施例によれば、各感温抵抗体6の検出感度を検出部6Aの両端側で大幅に向上させることができ、検出部6Aの長さ方向に対する有効面積を確実に大きくすることができるから、吸入空気の流量に応じて各感温抵抗体6の間に大きな温度差を生じさせることができる。これにより、吸入空気の流量が減少するエンジンの低回転時等でも、その流量を各感温抵抗体6により正確に検出でき、シリコン基板1の取付位置のばらつき等が検出精度に与える影響を確実に低減できると共に、流量検出装置の検出精度を大幅に向上させることができる。
【0049】
また、各擬似抵抗体7を各感温抵抗体6の検出部6Aのパターン形状に対応してその両端側に配設するようにしたから、各感温抵抗体6をエッチング処理によりシリコン基板1上に形成するときには、各延設部6B,6B1 の端部側および各連結部6C等を高い精度で形成することができる。これにより、各検出部6Aの両端側に吸入空気の流れを安定して接触させることができ、これらの部位の検出感度を確実に向上させることができる。
【0050】
即ち、各擬似抵抗体7を各感温抵抗体6の各延設部6B,6B1 と同一方向に延びるパターン形状とすることができるから、配線パターンの粗密度が感温抵抗体6の中間部側に比較して両端側で大きく変化するのを各擬似抵抗体7によって確実に防止でき、配線パターンの粗密度を感温抵抗体6の中間部側と両端側とでほぼ均一化できる。これにより、各感温抵抗体6等をエッチング処理によって形成するときには、そのエッチング速度を各感温抵抗体6の中間部側と両端側とでほぼ等しくすることができ、各感温抵抗体6の検出部6Aを安定したエッチング処理により全長に亘って高い精度で形成することができる。また、各感温抵抗体6等をさらに微細な配線パターンとして形成することが可能となる。
【0051】
一方、ヒータ5の両端側を各感温抵抗体6の各連結部6Cを越えて各擬似抵抗体7に対応する位置まで延ばすようにしたから、各検出部6Aの両端側と各擬似抵抗体7とに対してヒータ5を大きな長さ寸法(面積)で対向させることができ、各検出部6Aの両端側に対してもヒータ5からの熱を効率よく伝えることができると共に、その温度分布を長さ方向で確実に均一化することができる。
【0052】
また、ヒータ5の長さ寸法L1 を長くすることにより、例えば吸入空気が図2中の矢示Bに示すように偏った方向に流れる場合でも、この流れをヒータ5と下流側の感温抵抗体6とに確実に接触させることができ、ヒータ5からの熱を下流側の感温抵抗体6に安定して伝えることができる。これにより、例えばエンジンの低回転時等に吸入空気の流れが乱れた場合や、取付部材100に対するシリコン基板1の取付位置がずれることで各感温抵抗体6の長さ方向が吸入空気の流れ方向に対して傾いた場合でも、偏った方向に流れる吸入空気の流量を各感温抵抗体6によって高精度に検出することができる。
【0053】
さらに、各擬似抵抗体7をエッチング処理によりヒータ5および各感温抵抗体6と共に形成するようにしたから、これらをシリコン基板1上に同時に形成でき、その形成工程を簡略化することができる。
【0054】
また、ヒータ5、各感温抵抗体6および各擬似抵抗体7をシリコン基板1の薄肉部3上に設けたから、ヒータ5からの熱を厚肉部4に逃がすことなく各感温抵抗体6および各擬似抵抗体7に確実に伝えることができ、各感温抵抗体6の間に吸入空気の流量に応じた大きな温度差を生じさせることができる。
【0055】
次に、図7は本発明による第2の実施例を示し、本実施例では、前記第1の実施例と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、本実施例の特徴は、ヒータ11の各伸長部11Aを第1の実施例よりも短尺に形成し、その一端側を連結する連結部11Bを各感温抵抗体6の一端側(各連結部6C)と長さ方向で同じ位置に配設したことにある。
【0056】
かくして、このように構成される本実施例でも、前記第1の実施例とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
次に、図8は本発明による第3の実施例を示し、本実施例では、前記第1の実施例と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、本実施例の特徴は、幅広の平板状をなす擬似抵抗体21を感温抵抗体6の検出部6Aの両端側に位置してシリコン基板1上に形成したことにある。そして、擬似抵抗体21は、検出部6Aの長さ方向に一定長さをもって延びると共に、各延設部6B1 の間隔に対応する幅寸法を有している。
【0058】
かくして、このように構成される本実施例でも、前記第1の実施例とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
なお、前記各実施例では、ヒータ5,11、各感温抵抗体6および各擬似抵抗体7,21を白金等の材料によって形成したが、本発明はこれに限らず、これらを例えば多結晶シリコン等の抵抗体材料により形成してもよい。
【0060】
また、前記各実施例では、シリコン基板1上の保護膜を省略する構成としたが、本発明はこれに限らず、ヒータ5,11、各感温抵抗体6および各擬似抵抗体7,21を覆う絶縁性の保護膜等を必要に応じてシリコン基板1上に形成するようにしてもよい。
【0061】
さらに、前記各実施例では、シリコン基板1、薄膜部2、ヒータ5および感温抵抗体6の各部寸法を例示したが、本発明はこれらの寸法に限定されるものではない。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1に記載の発明によれば、ヒータに沿って延びる各感温抵抗体の両端側から微小寸法だけ離間した位置に熱伝導性材料からなる複数の擬似抵抗体を設ける構成としたから、ヒータからの熱を各擬似抵抗体を介しても各感温抵抗体の両端側に位置する連結部に確実に伝えることができ、比較的低温となりやすい各感温抵抗体の連結部の温度を各擬似抵抗体から伝わる熱によって確実に補償して高めることできると共に、各感温抵抗体の温度分布を長さ方向で全体的に均一化することができる。従って、各感温抵抗体の両端側で検出感度を大幅に向上でき、流体の流量に応じて各感温抵抗体間に大きな温度差を生じさせることができるから、流体の流量が少ない場合でもその流量を各感温抵抗体によって正確に検出でき、基板の取付位置のばらつき等が検出精度に与える影響を確実に低減できると共に、流量検出装置の検出精度を向上させることができる。
【0063】
また、各擬似抵抗体を各感温抵抗体のパターン形状に対応して各感温抵抗体の連結部の位置から延設部と同一方向に向けて互いに略等しい一定の長さ寸法をもって延びる一定のパターン形状によって構成したから、配線パターンの粗密度を感温抵抗体の中間部側と両端側とでほぼ等しくできる。これにより、感温抵抗体を安定したエッチング処理により全長に亘って高い精度で形成できると共に、感温抵抗体の検出感度を特に両端側の連結部で向上させることができる。
【0064】
また、請求項2に記載の発明によれば、各擬似抵抗体を各感温抵抗体と共にエッチング処理によりシリコン基板上に形成する構成としたから、各感温抵抗体と各擬似抵抗体の形成時には、これらを配線パターンとしてシリコン基板上に同時に形成でき、その形成工程を簡略化できる。また、各擬似抵抗体は各感温抵抗体の両端側から微小寸法だけ離間した位置に配設されるので、配線パターンの粗密度が各感温抵抗体の両端側で大きく変化するのを各擬似抵抗体によって確実に緩和でき、感温抵抗体をエッチング処理によって形成するときには、そのエッチング速度を感温抵抗体の中間部側と両端側とでほぼ等しくすることができる。これにより、感温抵抗体を安定したエッチング処理により全長に亘って高い精度で形成でき、その検出感度を確実に向上させることができる。
【0065】
また、請求項3に記載の発明によれば、ヒータの両端側を各感温抵抗体の位置を越えて擬似抵抗体に対応する位置まで延ばす構成としたから、各感温抵抗体の両端側と各擬似抵抗体とに対してヒータからの熱を効率よく伝えることができ、各感温抵抗体の温度分布を長さ方向に対して確実に均一化することができる。また、例えば基板の取付位置のばらつきや流体の不安定な流れ等により流体が各感温抵抗体の対向方向に対し斜めに偏った方向に流れる場合でも、ヒータからの熱を下流側の感温抵抗体に確実に伝えることができ、この状態で流体の流量を安定して検出することができる。
【0066】
そして、請求項4に記載の発明によれば、ヒータ、各感温抵抗体および各疑似抵抗体を基板の厚肉部に対して熱的に絶縁される薄肉部上に設ける構成としたから、ヒータからの熱を厚肉部に逃がすことなく各感温抵抗体および各擬似抵抗体に効率よく伝えることができ、各感温抵抗体の間に流体の流量に応じて大きな温度差を生じさせることができると共に、流量検出装置の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例による流量検出装置を示す斜視図である。
【図2】流量検出装置を示す図1の平面図である。
【図3】図1中の矢示III − III方向からみた縦断面図である。
【図4】図1中の感温抵抗体の検出部と各擬似抵抗体等とを部分的に拡大して示す斜視図である。
【図5】図1中の矢示V−V方向からみた縦断面図である。
【図6】感温抵抗体の長さ方向に対する温度分布を示す特性線図である。
【図7】第2の実施例による流量検出装置を示す図2と同様の平面図である。
【図8】第3の実施例による流量検出装置の擬似抵抗体等を示す斜視図である。
【図9】従来技術による流量検出装置を取付部材と共に示す平面図である。
【図10】図9中のシリコン基板が取付部材に対して正規の取付位置からずれた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
1 シリコン基板(基板)
3 薄肉部
4 厚肉部
5,11 ヒータ
6 感温抵抗体
7,21 擬似抵抗体
Claims (4)
- 流体の流路途中に配設される基板と、
該基板上で一方向に延びるように形成され外部からの給電により発熱するヒータと、
前記流体の流れに対して該ヒータの上流側と下流側とに離間し、該ヒータに沿って一方向に延びて前記基板上に形成された一対の感温抵抗体と、
該各感温抵抗体の長さ方向両端側から微小寸法だけ離間して前記基板上に形成され熱伝導性材料からなる複数の擬似抵抗体とを備え、
前記一対の感温抵抗体は、互いに一定の間隔で離間しつつ略等しい一定の長さ寸法をもって前記ヒータに沿って延びる複数の延設部と、互いに隣り合う該各延設部の端部を略等しい位置で折返すことによって連結する複数の連結部とにより長尺のコ字形状に屈曲して構成し、
前記各擬似抵抗体は、前記感温抵抗体の連結部の温度を高めるために、前記各感温抵抗体のパターン形状に対応して前記連結部の位置から延設部と同一方向に向けて互いに略等しい一定の長さ寸法をもって延びる一定のパターン形状をもって構成してなる流量検出装置。 - 前記基板はシリコン基板からなり、前記各擬似抵抗体は前記各感温抵抗体と共にエッチング処理により前記シリコン基板上に形成してなる請求項1に記載の流量検出装置。
- 前記ヒータは両端側が少なくとも前記各感温抵抗体の位置を越え、前記擬似抵抗体に対応する位置まで前記基板の一方向に延びる構成としてなる請求項1または2に記載の流量検出装置。
- 前記基板は、厚肉部と、該厚肉部に対して熱的に絶縁される薄肉部とからなり、該薄肉部上には前記ヒータ、各感温抵抗体および各疑似抵抗体を設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の流量検出装置。
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