JP3716189B2 - 浚渫泥土の処理方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
開示技術は、湖沼や河川、港湾等から得られる浚渫泥土を、送泥用の排砂管内で凝集剤を添加して凝集させ、しかる後に、底部に排水機構を設けた処理ヤードに排泥して自然脱水、乾燥させる浚渫泥土の処理方法の技術分野に属する。
【0002】
特に、該技術は、浚渫泥土を1秒間に0.0167m3 以上という大きな速度で廃泥処理する場合の処理方法の技術分野に属する。
【0003】
【従来の技術】
周知の如く、国土が狭隘で、山間林野部が多く、しかも、長い海岸線に近接している特殊な地勢条件の我が国にあっては、河川、湖沼が多く、長い海岸線には大小の港が設けられており、したがって、河川、湖沼、港岸には、経時的に大量のヘドロ等の高含水泥土が堆積し、河川、湖沼、港岸等に設置されている所謂ウォーターフロント等の施設の諸機能は経時的に次第に損なわれていく弊害がある。
【0004】
従来、当該湖沼や河川、港湾等から得られるかかる浚渫泥土2を処理するにあたっては、図7に示す様に、泥土2を浚渫船1で浚渫して堤防4で囲繞された処理ヤード5内に送泥し、そこで図8に示す様に、天日8を介して泥土7を乾燥す
る方法や、或いは、図9の
【イ】に示す如くポリアクリルアミド系等の凝集剤1
0を加えて凝集泥土7とさせたり同図
【ロ】に示す如く、脱水機11にかけ減容した泥土7´ とする方法が専ら採られてきた。
【0005】
而して、かかる技術は特開平9−168800号公報発明や特開2000−426006号公報発明等に開示されている。
【0006】
而して、これに対処するに堆積泥土2を処理ヤード5に送泥された泥土の該癈泥7については1つの資源材として有効に再利用するべく田畑の嵩上げや築堤等に建設用土として利用するようにしており、かかる浚渫泥土7の処理システムの在来態様を図3以下の図面によって略説すると、当該図3に示す様に、浚渫船1によりその海底に堆積している泥土2を所定に浚渫し、該浚渫船1から延設されている排砂管3を介し堤体4によって囲繞され処理ヤード5に癈泥7として送泥するに、該癈泥7が該排砂管3によって送泥されるプロセスは元来数百%を超える様な、高含水の状態の泥土2であるために、該処理ヤード5内で沈殿による重力選別を介し水分をオーバーフロー水15等で放水などにより排水し、該処理ヤード5に沈降して残留する癈泥7に対して図8に示す様に、太陽8の日照による天日乾燥と自然な自重圧密を介し2年乃至3年程度の長期の自然脱水を行い、経時的な癈泥7の固結を行って田畑の嵩上げや築堤等の建設用土として利用に供するようにされているものであるが、当該長期間の天日乾燥を介しての自然脱水だけでは癈泥7の表層部のみが乾燥し、中層部、深層部では有効に脱水が図れないために、図9の
【イ】に示す様に、ポリアクリルアミド系の凝集剤10を添加し混合攪拌して固化の促進を図ったり、当該図9の
【ロ】に示す様に、加圧脱水等の所定の固化処理装置11を介し癈泥7に加圧脱水作用を機械的に与えて、強度をアップした癈土7´ とし実用に供し得る良質な改良土として図10に示す様に、トラック12等により良質な改良土13として図11に示す様に、所定の建設用地まで搬送し、基礎土15上に改良土13´ として盛土し、当該図11に示す様に、その上に耕土13´ に覆土16してトラクターやコンバインや耕耘機の使用や植生17の育成が可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、湖沼や河川、港湾等の底には、多くの場合、ヘドロ状の物質や泥土2が沈殿、堆積しているが、それらは,栄養塩に富むヘドロ状物質である場合が多く、そこから溶け出る窒素、りんなどの富栄養素が植物プランクトンの異常発生やメタンガス発生の原因となって、著しい環境悪化をもたらしている。
【0008】
かかる、汚染の進んだ湖沼や河川、港湾の浄化の有力な方法の一つは、この栄養塩に富むヘドロ状物質の泥土2を浚渫船1により浚渫して排砂管3を介して処理ヤード5に送泥して取り除くことであり、国や多くの地方自治体が早くからこれに取り組んで一定の成果をそれなりに収めてはいるが、その方法は、前述した如く浚渫船1から排砂管3を介して送泥されるヘドロ2を処理ヤード5に泥土7として貯めて天日8により乾燥するものが殆どで、該処理ヤード5に大規模な築堤工事が必要な上、乾燥が終わって処理ヤード5を再利用することが可能になるまで長期間(1年以上)を要することから、処分地の確保に頭を悩ませているところがほとんどである。
【0009】
このような、天日8による乾燥は時間がかかる上、乾燥後といえども、処理ヤード5の泥土7に地耐圧が出ず、処分地の用途が制限される事から、凝集剤10を加えて機械攪拌装置11で固化させ、それを該機械11により脱水化し泥土7´ とする方法が一部で採用されている。しかし、機械攪拌装置、機械脱水装置11のいずれについても処理能力が小さいという難点があり、例えば、1秒間に0.0167m3 以上というような大量処理に向かず、仮に、大量処理を機械攪拌装置、機械脱水装置11等を用いて行うものとすると、その設備費用、運転費用、メンテナンス費用、所要敷地面積はコスト的に莫大なものとなり、現実的ではない不利点があった。
【0010】
尚、高含水の浚渫癈泥7に対する処理方法において、凝集剤10を用いた技術としては、前記特開平09−168800号公報等に開示されてはいるが、当該先行技術においては、高含水浚渫癈泥7に対し、セメント等の固化剤等を添加することが高頻度にされており、当該先行技術を用いて高含水浚渫癈泥7を処理して、該浚渫癈泥7を固化するに、固化するプロセスで、当該添加されるセメントの固化剤等10による窒素系物質の増加によりpH値やCODの増加が生じるデメリットがあった。
【0011】
而して、図8に示す様な、処理ヤード5内に於ける天日8を介しての乾燥と自重圧密を介しての癈泥土の沈降ではますます該癈泥の疎水性が悪化し、乾燥促進が経時的に低下し、固結の悪化が良好な建設用土の良質土17の形成が損なわれるという不具合があった。
【0012】
【発明の目的】
この出願の発明の目的は上述従来技術に基づく、浚渫船1からの長距離の排砂管3を介しての沈殿池機能を有する処理ヤード5への送泥を介し天日8による乾燥と沈殿による自重圧密による上層部のみの乾燥であって、中層部、深層部の乾燥が充分に行われず、又、セメント等の固化剤の添加による力学的特性が改善されても、pHやCOD値の増加による環境特性の悪化が逆に促進されるという在来態様の高含水浚渫泥土の建設用土への改良処理の問題点を解決すべき技術的課題とし、浚渫船からの長い排砂管3を介しての処理ヤード5への泥土への送泥の条件を前提としながらも、該排砂管を介しての送泥中に於いて排水性を良好にして、脱水促進を迅速に行い、経時的にも速やかに経済的にもローコスト的に行えるようにし、浚渫泥土を建設用土として有効に利用させることが出来るようにして建設産業における土木技術利用分野に益する優れた浚渫泥土の処理方法を提供せんとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述目的に沿い先述特許請求の範囲を要旨とするこの出願の発明の構成は、前述課題を解決するために、含水比650%以上の浚渫泥土2を排砂管3で処理ヤード5に送泥する途中に、初めに液状のアニオン系高分子凝集剤Aを添加して浚渫泥土を一次凝集させ、次に2価または3価の無機金属塩水溶液Cを添加して凝集反応を完結させ、これを、底部に排水機構12を設けた処理ヤード5に排出して自然脱水させる浚渫泥土の処理を行う技術的手段を講じたものである。
【0014】
【作用】
而して、上述構成において、河川、湖沼、港岸に堆積しているヘドロ等の泥土2を浚渫し、浚渫船1からの長い排砂管3を介しウォーターフロント等に設置した処理ヤード5に送泥するに際し、当該送泥プロセスにおいて、まず、アニオン系分子凝集剤Aを添加して、送泥中に存在する微細な土粒子や汚濁物質等の各物質を架橋(粗結合)状態でブロック化し、次いで2価又は3価の無機金属塩水溶液Cを添加して凝集反応を完了させて架橋(粗結合)状態の粗粒子群が締り、強固な密の状態のフロックになるようにし、該フロック相互の間にある自由水は分離し易く、フロックは疎水性に優れた性状にし、送泥する処理ヤードの下層部に敷設した透水性の高いサンドマット上に送泥した浚渫泥土は上記フロックの間の自由水がセメント等の固化剤が添加されていないために、スムーズに清澄水として排水ポンドの釜場等から排水され、しかも、pH値やCODがコントロールされ、無公害裡に自然放流等の放水がされ、又、しかも、上記自由水の排水の進行に伴い、送泥された処理ヤード5内の癈泥は自然圧密による排水の進行が進まなくなると、該自由水の脱水により泥土7の表層部に生じたクラック16,16´を介し該表層部の太陽8に対する暴露面積が増大し、天日乾燥を行うに、自然乾燥が促進されて迅速に脱水が促進され、土粒子分が多い改良土62が速やかに、固結されて該改良土16´ としての強度が増加し、建設用土63として田畑の嵩上げや築堤に有効に利用出来るようにするものである。
【0015】
【発明の背景】
而して、従来、一般的に行われている浚渫泥土2の凝集処理では、始めに、浚渫泥土に2価または3価の無機金属塩水溶液Cを添加して泥土中のコロイド物質のもつ負電荷を中和し、つぎにノニオン、又は、アニオン性の高分子物質Aを加えて凝集を起こさせるような手段を用いているが、該種手段は、ノニオンまたはアニオン性の高分子物質Aの添加物が浚渫泥土2中の固形分当たり0.01%以下で済み、非常に経済的ではあるが、得られるフロックが小さく、自然脱水には適さないものである。
【0016】
これを解決する方法として発明者らが見出だしたのは分子量が800万〜1200万の高分子凝集剤Aを用い、且つ、浚渫泥土2中の固形分当りの純分換算添加量を0.1%以上、好ましくは0.2%以上と非常に多くすることであり、この出願の発明のように、まず始めに、非常に高い分子量の高分子凝集剤を大量に浚渫泥土に添加する(第1工程)と、イオンの反発力を越えて該高分子凝集剤が懸濁コロイドを包み込む。
【0017】
この場合、コロイド物質は、高分子の網に絡み取られたような状態となり、大きなフロックを形成する。次に2価または3価の無機塩を加える(第2工程)と、高分子の網が、内にコロイド物質を含んだまま一気に収縮し、丈夫なフロックになると考えられる。
【0018】
ここで用いるアニオン系高分子凝集剤としては、鎖状で、コロイド物質との吸着点を沢山持っている物質、例えば、アクリルアミドとアクリル酸ソーダの共重合物(アクリル酸ソーダの割合20〜5%)が、また、この出願の発明で用いる2価または3価の無機金属塩としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、塩化第2鉄等の水溶液を用いるのが望ましいが、これに代えて、4価以上の無機金属塩やカチオン系高分子凝集剤の水溶液を用いることも可能である。
【0019】
始めにアニオン性の高分子凝集剤を添加し、次に無機金属多価塩を添加することは、例えば、特開平3−161099などに記載されてはいるが、かかるアニオン系高分子凝集剤の分子量が800万以下の場合、そして/または、浚渫泥土中の固形分当たりの添加量が0.1%以下の場合、始めに浚渫泥土類に高分子凝集剤を添加(第1工程)しても、イオンの反発力が障害になって高分子凝集剤が懸濁コロイドを包み込むことが出来ないから凝集は起きず、フロックは生成しない。
【0020】
無機金属多価塩を添加(第2工程)し、初めて、凝集フロックが出来るが、発明者らの研究によれば、このようにして形成されたフロックは強度が弱く、ある厚みに堆積すると、該フロックがつぶれて自由水の水抜けが非常に悪くなる。
【0021】
これに対しこの出願の発明のように、分子量が800万〜1200万の高分子物質を用い、浚渫泥土2中の固形分当たりの添加量を0.1%以上、好ましくは0.2%以上と思い切って多くすると、添加後、一旦急激な粘性上昇がおき、その後、粘性が下がるにつれて懸濁物質は凝集し、大きなフロックをつくるようになる。
【0022】
このように、第1工程でフロックが形成されるか否かが、強いフロックを得られるか否かの決め手であり、いままで技術ではだれもが見出し得なかったことである。
【0023】
而して、アニオン系高分子凝集剤Aは、その逆相エマルジョン型のものを有姿の状態のまま添加するのが良い。そこで、一般の凝集プロセスで広く行われているように、アニオン系高分子凝集剤Aの粉末、或いは、逆相エマルジョン型のものを水に溶かすことを考えてみると、一般に高分子凝集剤Aの溶解は、ままこ (粒状の未溶解物)が出来易い等難しい作業であるが、この出願の発明で用いるアニオン系高分子凝集剤Aの分子量は800万〜1200万と高いことから、溶解が特に難しく、水溶液の粘性が障害となって、溶解濃度は0.1%が限界である。
【0024】
仮に、対象とする浚渫泥土2の含水比が1200%、固形分当りの添加量を0.2%とすると、高分子凝集剤水溶液の添加量は0.167m3 /送泥1m3 に達し、特に大規模浚渫の場合には、その溶解作業に多大の費用、労力、作業敷地を要することになる。
【0025】
よって、アニオン系高分子凝集剤Aの逆相エマルジョン品を有姿のまま添加するメリットは非常に大きい。
【0026】
この出願の発明の特徴は、機械攪拌装置、機械脱水装置11等を一切使わず、浚渫泥土2の処理を行うところにある。
【0027】
【発明が解決しようとする手段】
前述目的に沿い先述特許請求の範囲を要旨とするこの出願の発明の構成は、前述課題を解決するために、高含水比の浚渫泥土2に凝集剤を添加して処理ヤード5に貯留脱水する浚渫泥土2の処理方法において、含水比650%以上の上記浚渫泥土2を排砂管3で上記処理ヤード5へ送泥する中途にて、初めにアニオン系高分子凝集剤Aを該浚渫泥土2に添加し、次に2価または3価の無機金属塩水溶液Cを該浚渫泥土2に添加して凝集反応を完結させ、この凝集反応を完結させた泥土を底部に排水機構を設けた処理ヤードに上記排砂管を介して排出して自然脱水させることを基幹とし、而して、上記アニオン系高分子凝集剤Aが、分子量800万〜1200万のポリアクリルアミド系高分子凝集剤であるようにし、上記アニオン系高分子凝集剤Aの逆相エマルジョン型のものを有姿状態のまま上記泥土中に添加するようにし、又、上記逆相エマルジョン型のアニオン系高分子凝集剤Aが、0.5Pa・S以下の粘性を有してあるようにもし、上記逆相エマルジョン型アニオン系高分子凝集剤の純分換算の添加量が、上記浚渫泥土中の固型分当り、0.1%以上、好ましくは0.2%以上であるようにもし、液状の上記アニオン系高分子凝集剤Aを添加した後に、2価または3価の無機金属塩水溶液Cを添加するまでの排砂管の長さ(m)が流速(m/秒)×60〜600秒、2価または3価の無機金属塩水溶液Cを添加してから上記処理ヤード5に排出するまでの排砂管3の長さ(m)が、流速(m/秒)×18〜300秒であるようにし、上記排砂管3内にて、粘性ピーク時のレイノルズ数が500以上であり、且つ、平均のレイノルズ数が2100以上であるように該排砂管3の管径を決定するようにし、上記排砂管3を流れる浚渫泥土2の流量と比重を連続的に測定し、予め室内実験で決定しておいた比重と凝集剤の添加率の関係から該凝集剤の添加率を計算し、流量×凝集剤添加率の結果で該凝集剤の添加量を自動的に制御するようにもした技術的手段を講じたものである。
【0028】
【作用】
上述構成において、浚渫船1から、ヘドロ等の浚渫泥土2を浚渫し、排砂管3により築堤4内に設けた処理ヤード5に排出して天日8により乾燥等と共に自然脱水させるようにし、該排砂管3に於いて送泥する中途にて前段の高分子凝集剤Aを分子量800万乃至1200万のポリアクリルアミド系高分子凝集剤であるようにし、又、アニオン系高分子凝集剤Aの逆相エマルジョン型のものを有姿状態のまま該排砂管3の泥土2中に添加するようにし、更に、上記逆相エマルジョン型のアニオン系高分子凝集剤Aが0.5Pa・S以下の粘性を有しているようにもし、更に、当該逆相エマルジョン型のアニオン系高分子凝集剤Aの純分換算の添加量が上記泥土中の固形部あたり0.1%以上好ましくは0.2%以上であるようにし、而して、液状の上記アニオン系高分子凝集剤Aを添加した後に2価又は3価の無機金属塩水溶液Cを添加するまでの排砂管3についてはその長さが流速(m/秒)×60〜600秒であり、該2価又は3価の無機金属塩水溶液Cを添加してから上記処理ヤード5に排出するまでの排砂管3についてはその長さ(m)が流速(m/秒)×18〜300秒であるようにし、その上、上記排砂管3の管路内においてそのレイノルズか数が500以上であり、且つ、平均のレイノルズ数が平均の2100以上であるように管径を決定するようにし、更に、該排砂管3を流れる浚渫泥土2の質量と比重を連続的に測定し、予め、室内実験で決定しておいた比重と凝集剤添加率の関係から凝集剤の添加率を計算し、流量×凝集剤A,Cの添加率の結果でその添加量を自動的に制御するようにしたものである。
【0029】
【発明が実施しようとする形態】
次ぎに、この出願の発明の実施しようとする形態を実施例の態様として図1乃至図6の図面を参照して説明すれば以下の通りである。
【0030】
そして、図7以下の図面と同一態様部分については同一符号を用いて説明するものとする。
【0031】
浚渫泥土2を排砂管3で凝集剤A,Cと均一に反応させるにあたっては、反応を促進するため、該凝集剤A,Cを添加する時点から処理ヤード5に排出するまでのどの部分でも乱流状態に維持することが最も望ましいものである。
【0032】
しかしながら、浚渫泥土2と凝集剤A,Cの反応では、粘性のハンプ現象、即ち、一時的に粘性が急上昇し、やがて下降する現象がみられるから、このピーク時においても、必ず乱流状態が維持されるように排砂管3管径と送泥量の関係を決めようとすると全体的に圧力損失が高くなったり、排砂管3が長くなりすぎたり、不都合さが生じることが多い。
【0033】
高分子凝集剤Aの添加前までと、該高分子凝集剤Aの添加後から無機凝集剤Cの添加前まで、該無機凝集剤Cの添加後から処理ヤード5への排出までの3区間の排砂管3の径を変えて、常に乱流状態を維持しようとしても、やはり、圧力損失が高くなりすぎる問題は解決し難い。
【0034】
この点について、発明者らは多くの実験を重ね、仮にピーク時は層流になっても、ピーク時のレイノルズが500以上であり、且つ、平均のレイノルズ2100以上であれば、該排砂管3での凝集反応は完結することを見出した。
【0035】
そして、この出願の発明では、凝集剤添加A,Cの前の浚渫泥土2自体の粘性があまり高いと、そして/または、逆相エマルジョン型の高分子凝集剤自体の粘性があまり高いと、該凝集剤Aが均一に広がるのを妨げるから、浚渫泥土2の含水比は650%以上(含水比が低いと、浚渫泥土2自体の粘性が高い上、凝集剤A,Cと接触したときの粘性度の上昇が大きくなる)とし、逆相エマルジョン型高分子凝集剤Aの粘性は0.5Pa・S以下のものを用いるのが望ましい。
【0036】
次に排砂管3の管径とRe数(レイノルズ数)の関係について説明する。
【0037】
排砂管3の管径D[m]、浚渫泥土2の密度ρ[kg/m3 ]、該浚渫泥土2の粘性μ[Pa・S]、送泥量Q[m3 /S]とすると、
Re数=Q×ρ/(0.785×Dμ)
で示される。
【0038】
ここで、浚渫泥土2の密度ρは、予想される該浚渫泥土2の密度の最低値を用いる。
【0039】
又、該浚渫泥土2の粘性μは、予め実験を行って、その値を用いる。
【0040】
密度ρと粘性μ、送泥量Qが決まれば、管径とRe数の関係が求められる。
【0041】
次ぎに高分子凝集剤Aを排砂管3の添加ポイント19から添加してから無機金属多価塩水液Cの添加ポイント20までの該排砂管3の長さ(m)の決定法について説明する。
【0042】
排砂管3の長さ(m)は、流速(m/秒)×必要反応時間t分で求める。
【0043】
高分子凝集剤Aを添加してから無機金属多価塩水液Cを添加するまで60〜600秒で、また無機金属多価塩水液Cを添加してから処理ヤード5に排出するまでt(時間)は、18〜300秒が適当である。
【0044】
これより短いと、凝集反応が不完全で処理ヤード5での自由水の自然脱水に支障が起きるし、これ以上長いと、不経済である外、一度出来た凝集フロックが壊れてしまい、同じく、処理ヤード5での自由水の自然脱水に支障が起きる恐れがある。
【0045】
而して、使用する凝集剤Aの添加量は、排砂管3を流れる浚渫泥土2の流量と濃度に概ね比例する。
【0046】
このうち、その濃度は連続計測が困難であるから、濃度と相関関係になる泥土2の比重で代用する。
【0047】
排砂管3に於いて、流量は流量計で計測し、又、比重は比重計で測定する。
【0048】
予め室内実験で求めておいた比重と凝集剤必要量の関係から添加する凝集剤の添加率を求め、流量×添加率=添加量に基づき図15に示す様に凝集剤供給ポンプ16´ の繰出し量を自動制御する。
【0049】
管路流量計としては、電磁流量計、ドップラー流量計などが適当であり、管路比重計としては、ガンマー線透過型密度計又は固有振動式連続密度比重計が適当である。
【0050】
高分子凝集剤Aの最適添加量は、用いる凝集剤Aの種類によってさまざまであるが、逆相エマルジョン型ポリアクリルアミド系凝集剤Aを用いる場合に限れば、浚渫泥土2中の固形分あたり、純分換算0.1%以上、好ましくは0.2%以上が適当である。
【0051】
この範囲以下では、凝集剤反応が不完全で処理ヤード5での自由水の自然脱水に支障が起きる。
【0052】
次にこの出願の発明の実施しようとする形態を実施例の態様として図1〜図9の図面(図11以下を援用する)に従って説明すれば、以下の通りである。
【0053】
凝集反応物を放出し、自由水を自然脱水するための処理ヤード5は、例えば図1,2に示す様に、堤体4で仕切った囲繞された処理ヤード5の底に図3に示す様に多孔管12´ を敷設し、その上に約0.3m厚でサンド12を敷き詰める。
【0054】
そして該多孔管12´ には、不織布を巻き付け、サンド12が管内に入らないようにする。
【0055】
該多孔管12´ 同士を連結し、該サンド12の層を通って該多孔管12´ に入ったろ水がポンド13´ に集まって、自然に処理ヤード5外に排水ポンプ14によりオーバーフロー水15として流れ出るようにする。
【0056】
この他、図2に示す様に、同じく堤体1に仕切った処理ヤード5の底に図8に示す様に川砂12´´を敷き、処理ヤード5の一部分を仕切り壁4´ で区切って排水釜場13(排水ポンド13´ )とし、該仕切り壁4´ の下部及び仕切壁を透水して該釜場13(排水ポンド13´ )に溜まった分離水が排水ポンプ14で排出15されるような構造にしても良いし、或いは、図1,図13の構造を組み合わせた構造にしてもよい。
【0057】
凝集反応物をこのような構造の処理ヤード5に送泥ポンプ14により投入すると、1〜4日で水が抜け、図3に示す様に、表面に多数のひび割れ16、16´を持った凝集堆積物62が残る。
【0058】
この時、該凝集堆積物62の表面の垂直位置(レベル)は、浚渫泥土2の濃度で異なるものの、処理ヤード5の堰堤4´ 上端より0.5〜1m程度下がっているのが普通であり、従来はもう一度乃至二度、処理ヤード5に凝集反応物10を投入してさせ、該処理ヤード5の堰堤4´ の上端に近いところまで該凝集堆積物表面62のレベルを上げるのが、処理ヤード5の有効利用上、好ましい。
【0059】
処理泥土2の処理ヤード5への排砂管3を介しての投入を終えたら、そのまま放置し、下部からの自由水の排出と表面からの天日8による乾燥を促す。
【0060】
日数が経つにつれ凝集堆積物62の強度は高くなり、3カ月後には図4に示す様に、表面18にドーザ等の建設重機16を載せて凝集堆積物62の建設用材17としてダンプトラック18ヘベルトコンベア16´ を介して移動作業が出来るに充分な強度の改良土17にする。
【0061】
而して、全長500mの上記浚渫泥土2を排砂管3の終点(吐出点)に、縦50m,横10m、深さ2m(容積1000m3 )の処理ヤード5を形成して、該処理ヤード5の底には、不織布を巻いた多孔管12´ を10mの間隔をあけて縦1列に4本設置し、その上に0.3mの厚さで川砂12を敷き詰めた。該多孔管12´ の片端は塞ぎ、反対側は、連結した上で処理ヤード5の堰堤4´ 近くに導き、該多孔管12´ 内に侵入したが自由水が処理ヤード5の外の堰堤4´ に重力で自然排水されるような構造とした。
【0062】
而して、該排砂管3の終点から300m上流側に高分子凝集剤Aの添加ポイント19を、同じく終点(処理ヤード5への吐出点)から50m上流側に無金属多価塩Cの添加ポイント20を設けた。
【0063】
該排砂管3の径は、始点から終点まで0.15m一定の管径とした。
該排砂管3に1秒間当り0.0283m3 の某湖の浚渫泥土2(含水比1200%一定)を送り、高分子凝集剤Aとして、アクリルアミドとアクリル酸ソーダの共重合物の逆相エマルジョン品(テルナイト社製試作品、粘度0.15Pa・S)を1秒間当り0.0000142m3 (純分換算0.0075kg)、無機金属多価塩Cとして、ポリ塩化アルミニウム水溶液(濃度・Al2 O3 10%)を1秒間当り0.0000425m3 添加した。
【0064】
浚渫船1により浚渫泥土2が排砂管を介して送泥され、高分子凝集剤Aの添加ポイント19までと、高分子凝集剤Aの添加後〜無機金属多価塩Cの添加ポイント20からの添加まで、該無機金属多価塩Cの添加後〜処理ヤード5は排出までの3区間の排砂管3の径を一定にした場合の浚渫から処理ヤード5に排出されるまでの該管の圧力損失を計算した。
【0065】
また、比較事例として3区間の排砂管3の管径を変え、当該実施例と同条件での圧力損失を計算した。
【0066】
そして、9時間送泥(送泥量918m3 )したところで処理ヤード5が一杯になったので、送泥を中止した。
【0067】
該送泥介した直後から上記多孔管12´ に配設した排水管3により釜場13に清澄な分離水としての自由水の排出が始まった。
【0068】
4日後、処理ヤード5内には、表面に多数のひび割れ16,16´ を持った凝集堆積物62が露出し、6日後の該凝集堆積物62のレベルは処理ヤード5の堰堤4´ の上端から−0.85mに下がった。
【0069】
そのまま放置して50日後の凝集堆積物62のレベルは処理ヤード5の堰堤4´ の上端から−1.06mに下がった。
【0070】
現在地でコーン指数を測定した結果qc=63.7kN/m2 を示した。
【0071】
そして、90日後のコーン指数はqc=254kN/m2 を示した。
【0072】
当該実施例における反応時間tを各区間のRe数、平均粘性で計算した各区間の圧力損失は、次ぎの表1の通りであった。
【表1】
送泥量は0.0283m3 /秒 圧力損失の単位 kg/m2 、粘性はビーカー内での凝集模擬実験の結果である。
粘性は、B型粘度計、ローターNo.3、60回転の測定値である。
圧力損失ΔP(乱流)は、ΔP=2fρV2L/104・g・Dで計算した。ここで、fは管内フリクションファクター、ρは泥土比重(kg/m3 )、Vは流速(m/秒)、Lは管長(m)、gは重力加速度(m/秒2 )、Dは管径(m)である。ここでは、f=0.0059を用いた。
【0073】
送泥量は0.0283m3 /秒、圧力損失の単位 kg/m2 、粘性はビーカー内での凝集模擬実験の結果である。
【0074】
また、2日後に排出管3から採取した分離水の性状は次の表2の通りであった。
【表2】
【0075】
【比較例1】
高分子凝集剤Aの添加前までと、該高分子凝集剤Aの添加後から無機金属多価塩Cの添加前まで、該無機金属多価塩Cの添加後から処理ヤード5への排出までの3区間の排砂管3の管径を変えること以外、実施例と同条件で浚渫泥土2を排砂管3に送ることにし、各区間の圧力損失を計算した。
それぞれの排砂管3の管径は最大粘性でも乱流が維持されるようにした。
【0076】
結果を表3に示す。
【表3】
【0077】
当該実施例の表1に示す如く、排砂管3の管径0.15m,0.0283m3 /秒の浚渫泥土2(含水比1200%)2を送ると、高分子凝集剤Aの注入点ポイント19から無機金属多価塩Cの注入点ポイント20までの区間に於ける粘性ピーク時のレイノルズ数は667で、平均のレイノルズ数は、2106、無機多価塩Cの注入点ポイント20から終点までの吐出口の区間に於ける粘性ピーク時のレイノルズ数は1014、平均のレイノルズ数は、3167となり、いずれも設定条件を満足した。
【0078】
通過時間(反応時間)は高分子凝集剤Aとの反応時間が、156秒、無機多価塩Cとの反応時間が30秒で、これも設定条件を満足した。
【0079】
全体の圧力損失は、10000kg/m2 と実用の範囲内にあった。
【0080】
排砂管3の出口で凝集フロックを肉眼により視察したところ、実験室における図6に示すビーカー実験の装置63の態様と同じフロック21が出来ており、4日後には沈殿堆積物62の表面(泥面)が露出するなど、自然脱水がきわめて順調に進行していることが確認出来た。
【0081】
一方表3に示した事例としてどの地点でも乱流(レイノルズ数2100以上)が維持されるよう、高分子凝集剤Aのポイント19からの添加前までと該高分子凝集剤Aの添加ポイント19後から無機金属多価塩Cの添加ポイント20まで、該無機金属多価塩Cのポイント20からの添加後から処理ヤード5への排出までの3区間の排砂管3の管径を変えた比較例の場合、全体の圧力損失は1850000kg/m2 と高く、溜留時間も高分子凝集剤Aのポイント19からの添加後から無機金属多価塩の凝集剤Cのポイント20からの添加前までが18秒、該無機金属多価塩Cのポイント20からの添加後から処理ヤード5までへの排出までが6秒しかなく、実用にならないことが明らかになった。
【0082】
以上この出願の発明によれば、一定の長さの排砂管3と、処理ヤード5さえ準備すれば,特別な攪拌装置や機械脱水装置11を用意しなくても浚渫泥土2を処理出来る。
【0083】
而して、該処理ヤード5で脱水後、ダンプ8で建設用地まで搬出するまでの日数は従来の無薬注天日8による乾燥工法が約1年かかるのに対し、わずか90日で終了するから、それだけ該処理ヤード5の繰返し運用が可能になり獲られる経済的メリットは非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の一実施例の第一ステップの部分側面図である。
【図2】同第2ステップの概略断面図である。
【図3】同第3ステップの概略断面図である。
【図4】同第4ステップの概略断面図である。
【図5】同最終ステップの模式断面図である。
【図6】フロックと自由水の取り合い実験図である。
【図7】従来技術に基づく浚渫と処理ヤードに於ける廃泥の取り合い断面図である。
【図8】処理ヤードに於ける乾燥脱水の断面図である。
【図9】処理ヤードに於ける廃泥の密度アップの断面図であり、(イ)は凝集剤による密度アップの断面図であり、(ロ)は機械装置による密度アップの断面図である。
【図10】密度アップされた構造土の搬出側面図である。
【図11】構造土の敷設の構造断面図である。
【図12】同一般技術に基づく処理ヤードの構造断面図である。
【図13】処理ヤードの機能断面図である。
【図14】処理ヤードの平断面図である。
【図15】排砂管の断面図である。
【符号の説明】
2 浚渫泥土
5 処理ヤード
15 脱水
3 排砂管
A アニオン系高分子凝集剤
C 2価又は3価の無機金属塩水溶液
12,12´ 排水機構
Claims (8)
- 高含水比の浚渫泥土に凝集剤を添加した泥土を処理ヤードに貯留し脱水する浚渫泥土の処理方法において、含水比650%以上の上記浚渫泥土を排砂管を介して上記処理ヤードへ送泥する中途にて、初めにアニオン系高分子凝集剤を該浚渫泥土に添加し、次に2価または3価の無機金属塩水溶液を該浚渫泥土に添加して凝集反応を完結させ、この凝集反応を完結させた泥土を底部に排水機構を設けた処理ヤードに上記排砂管を介して送泥排出して自然乾燥させ脱水させるようにすることを特徴とする浚渫泥土の処理方法。
- 上記アニオン系高分子凝集剤が、分子量800万〜1200万のポリアクリルアミド系高分子凝集剤であることを特徴とする請求項1の浚渫泥土の処理方法。
- 上記アニオン系高分子凝集剤の逆相エマルジョン型のものを有姿状態のまま上記泥土中に添加することを特徴とする請求項1,2いずれか記載の浚渫泥土の処理方法。
- 上記逆相エマルジョン型アニオン系高分子凝集剤が、0.5Pa・S以下の粘性を有していることを特徴とする請求項3記載の浚渫泥土の処理方法。
- 上記逆相エマルジョン型アニオン系高分子凝集剤の純分換算の添加量が、上記浚渫泥土中の固形分当り、0.1%以上、好ましくは0.2%以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の浚渫泥土の処理方法。
- 液状の上記アニオン系高分子凝集剤を添加した後に、2価または3価の無機金属塩水溶液を添加するまでの排砂管の長さが流速×60〜600秒であって、2価または3価の無機金属塩水溶液を添加してから上記処理ヤードに排出するまでの排砂管の長さが、流速×18〜300秒であることを特徴とする請求項1の浚渫泥土の処理方法。
- 上記排砂管内にて、粘性がピーク時のレイノルズ数が500以上であり、且つ、平均のレイノルズ数が2100以上であるように排砂管の管径を決定するようにすることを特徴とする請求項1の浚渫泥土の処理方法。
- 上記排砂管内を流れる浚渫泥土の流量と比重を連続的に測定し、予め室内実験で決定しておいた比重と凝集剤の添加率の関係から該凝集剤の添加率を計算し、流量×凝集剤添加率の結果で該凝集剤の添加量を自動的に制御するようにすることを特徴とする請求項1の浚渫泥土の処理方法。
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