JP3714281B2 - 塗装前処理廃棄物の処理方法および車両パネルの制振材 - Google Patents

塗装前処理廃棄物の処理方法および車両パネルの制振材 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、車両に対して脱脂処理〜リン酸亜鉛化成処理を施す塗装前処理工程において排出された廃棄物の処理方法および車両のフロアパネル等に貼り付けられて使用される制振材に関する。
【0002】
【背景技術】
現在、鉄または亜鉛系めっきが施された金属表面に対して、防錆性や塗装性を付与するためにリン酸亜鉛化成処理が広く行われている。
【0003】
この種のリン酸亜鉛処理の一般的な処理工程は、脱脂→水洗→表面調整→化成処理(リン酸亜鉛処理)→水洗→乾燥の順でそれぞれの処理が行われる。なお、脱脂処理、脱脂水洗、表面調整は、必要に応じて多段工程で行われる。
【0004】
ところで、この化成処理工程では、化成処理槽内で生成された化成スラッジ(主としてリン酸鉄)をフィルタなどを用いて濾過し、これを廃棄処理しているが、廃棄処理には費用がかかることから、資源の有効活用が希求されていた。
【0005】
【発明の開示】
本発明は、塗装ラインの前処理工程で生成した化成スラッジおよび油分を有効活用することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点によれば、脱脂兼化成処理液が満たされた処理槽から化成スラッジおよび油分を含む廃棄物を集約し、これを脱水したのち、車両パネルの制振材の配合物として再利用する塗装前処理廃棄物の処理方法が提供される。
【0007】
また、本発明の第2の観点によれば、石油アスファルト、無機物、有機物および繊維材を含む車両パネルの制振材において、塗装ラインの脱脂兼化成処理液が満たされた処理槽から排出された化成スラッジおよび油分が配合された車両パネルの制振材が提供される。
【0008】
本発明では、一つの工程で脱脂処理と化成処理を同時に行うことができる脱脂兼化成処理液を用いて塗装前処理を行う場合において、処理槽内で生成された廃棄物を有効活用するものである。すなわち、脱脂処理と化成処理とを一つの工程にて同時に行うと、処理槽内に油分と化成スラッジとが混在した状態となる。したがって、分離装置などを用いて油分や化成スラッジを除去してもこれらが混在した廃棄物となり、特に油分が混入しているので、再利用対象が著しく制約される。
【0009】
しかしながら、車両パネルの制振材は石油アスファルトを主成分としているため、油分が混入した廃棄物を所定の配合量に限定すれば、性能上問題はない。これにより、脱脂兼化成処理液を用いた塗装前処理工程で生成される廃棄物を有効活用することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の処理方法に係る塗装前処理装置の実施形態を示す図、図2は本発明に係る塵埃除去手段の実施形態を示す斜視図および断面図、図3は本発明に係る塵埃除去手段の他の実施形態を示す斜視図、図4は本発明に係る塵埃除去手段のさらに他の実施形態を示す断面図、図5は本発明に係る水−極性有機溶剤分離手段の実施形態を示す概念図、図6は本発明に係るイオン除去手段の実施形態を示す概念図である。
【0011】
図1は、たとえば自動車ボディなどの被塗装物に対し、脱脂処理、表面調整及び化成処理を行う塗装前処理工程を示している。同図に示すように、自動車ボディ9は、ハンガに搭載された状態で塗装搬送ライン10によって搬送される。本実施形態では、塗装搬送ライン10に沿って2つのディッピング槽1,8が設けられ、図に矢印で示す搬送方向の上流側が脱脂処理及び化成処理処理を行うための処理槽1(以下、脱脂化成処理槽1ともいう。)であり、下流側が処理後のボディ9を洗浄するためのリンス槽8である。処理槽1には脱脂兼化成処理液が満たされ、リンス槽8には純水が満たされている。
【0012】
本例で用いられる脱脂兼化成処理液は、脱脂処理、表面調整および化成処理といった3種類の処理を同一工程で行うことができる処理液である。こうした脱脂兼化成処理液としては、例えば、アルコール、グリコールエーテルまたはジエチレングリコールエーテル系の極性有機溶剤と、水と、亜鉛イオンと、リン酸イオンと、マンガンイオンと、ニッケルイオンと、ナトリウムイオンとを少なくとも含む処理液を用いることができる。この処理液を用いることにより、脱脂工程、表面調整工程及び化成工程がまとめて1つの工程で同時に行うことができ、大幅な処理工程の短縮、処理設備の簡略化、省スペース化、生産性の向上、薬剤コストの低減、薬剤管理の簡略化を図ることができる。
【0013】
図1に示すように、脱脂化成処理槽1には、当該脱脂化成処理槽1内の処理液をポンプ14により吸引して、再び脱脂化成処理槽1へ戻すように循環させる循環系11が設けられ、この循環系11に、上流側から順に、塵埃除去装置2、化成スラッジ除去装置3、油分除去装置4が設けられている。
【0014】
塵埃除去装置2は、脱脂化成処理槽1内の処理液およびリンス槽8内の洗浄液に含まれた鉄粉等のゴミブツを除去するもので、除去されたゴミブツは廃棄され、ゴミブツが除去された処理液は次の化成スラッジ除去装置3に送られる。本例の塵埃除去装置2として用いることのできる具体的装置として、セットリングタンク、遠心式セパレータ、マグネット式セパレータを挙げることができる。以下、各々について説明する。
【0015】
塵埃除去装置2の一例としてのセットリングタンク21は、図2に示すように、タンク211内に流路212を蛇行させる仕切り板213が設けられたものであり、入口214から入った処理液は、仕切板213によりタンク内部を蛇行し、出口215に至ることになる。このとき、処理液の上昇流速を鉄粉等のゴミブツの沈降速度よりも抑えることで、タンク211の底面に鉄粉等のゴミブツを堆積させ、処理液のクリーン化を図ることができる。なお、セットリングタンク21は簡易な装置として廉価であり、処理液中に浮遊する軽いゴミ以外の比較的重いゴミに対して効果的である。
【0016】
塵埃除去装置2の他例としての遠心式セパレータ22は、図3に示すように、入口221から入った処理液と鉄粉等のゴミブツを、接線方向に設けられたスリット状の特殊回転機構222を通過させることにより加速させ、液体より重い固形物(ゴミブツ)を遠心力により内壁に沿って下部のコレクションチャンバー223に分離し、固形分出口224から排出する一方で、処理液を内側管225から上昇せしめて処理液出口226から排出する。これにより、処理液のクリーン化を図る装置である。
【0017】
塵埃除去装置2の他例としてのマグネット式セパレータ23は、図4に示すように、磁石が内蔵されたドラム231を図の矢印方向に回転させながら、入口232から処理液を導入し、この処理液がドラム231に接する流路233を通過する際に、鉄分のような磁性のあるゴミブツを除去する装置である。ドラム231に磁力によって付着したゴミブツはスクレーパ234により掻き取られる一方で、ゴミブツが除去された処理液は出口235から排出される。
【0018】
なお、上述した塵埃除去装置21,22,23は、単独でも複合でも用いることができ、特に、セットリングタンク21とマグネット式セパレータ23の組み合わせたものは、ゴミブツの除去率が高く、最も好ましい。
【0019】
ただし、本発明に係る塵埃除去手段は、上述した3形態にのみ限定される趣旨ではなく、その他の形態のものも含まれる。また、本例の塵埃除去装置2は循環系11に設けたが、本発明に係る塵埃除去手段は循環系11に設けるほか、脱脂化成処理槽1そのものの内部又は外部に設けることも含む趣旨である。
【0020】
図1に戻り、化成スラッジ除去装置3は、上述した塵埃除去装置2を通過した処理液に含まれる化成スラッジを除去するもので、除去された化成スラッジは廃棄され、化成スラッジが除去された処理液は、次の油分除去装置4へ送られる。この化成スラッジ除去装置3としては、図1に示す脱脂化成処理槽1中の処理液のスラッジ濃度が、150ppm以内に抑制され、処理液を汚染することのないようなフィルターであれば、特に限定されず用いることができる。
【0021】
特に本実施形態では、化成スラッジ除去装置3にて除去された化成スラッジを車両パネルの制振材(ヒュージブルインシュレータ)の配合物として再利用する。ここで、化成スラッジ除去装置3は、主として化成スラッジを除去するものであるが、処理槽1にはボディから洗い落とされた油分も多く含まれ、下流の油分除去装置4にて分離される前に、その一部が当該化成スラッジ除去装置3によっても除去される。したがって、化成スラッジ除去装置3にて除去される廃棄物には化成スラッジと油分とが含まれる。本例ではこれをヒュージブルインシュレータに再利用する。詳細は後述する。
【0022】
油分除去装置4は、上述した化成スラッジ除去装置3を通過した処理液に含まれる油分を除去するもので、除去された油分は廃棄され、油分が除去された処理液は、処理液補給槽6および水−極性有機溶剤分離装置5へ送られる。
【0023】
本発明にて用いることができる油分除去装置4としては、加温式油分除去装置、コアレッサー式油分除去装置、限外濾過式油分除去装置を挙げることができる。このうちの加温式油分除去装置は、ノニオン系界面活性剤が脱脂成分として含有されている水溶液に適用して好ましいもので、これを特定温度以上に加熱すると、それ自身が水に不溶化し、非イオン性界面活性剤からなる油相と水相との2相に油水分離するといった、ノニオン系界面活性剤の特徴を利用した油分除去装置である。
【0024】
また、コアレッサー式油分除去装置は、水溶液中に数μmの大きさで分散している油滴をフィルターを通過させることにより水−油のエマルションを破壊することで、油滴を拡大成長させ、浮上回収することが可能な油分除去装置である。
【0025】
限外濾過式油分除去装置は、限外濾過、即ち、0.01〜0.001μm程度のメッシュからなるフィルターを用い、0.5〜5×10−5Pa程度の低圧力にて加圧もしくは吸引濾過することで、コロイド粒子を溶媒から分離する濾過方法を用いた油分除去装置である。
【0026】
これらの油分除去装置4は、要求される油水分離度合いにより選択し、単独でも複合でも用いることができる。
【0027】
図1に示すように、循環系11の油分除去装置4の下流側には、処理液補給槽6、水−極性有機溶剤分離装置5およびイオン除去装置7が設けられている。
【0028】
処理液補給槽6は、塵埃除去装置2、化成スラッジ除去装置3および油分除去装置4を通過してゴミブツ、化成スラッジおよび油分が除去された脱脂化成処理液が一時的に貯留されるもので、これ以外にも、後述する水−極性有機溶剤分離装置5によって水分が除去された極性有機溶剤と、イオン除去装置7によってイオン成分が除去された水が供給される。そして、新規な脱脂兼化成処理液が収容された処理液タンク15からポンプ16によって新規な脱脂兼化成処理液が補給及び調整されて、脱脂化成処理槽1に戻される。
【0029】
水−極性有機溶剤分離装置5は、油分除去装置4を通過した処理液から水成分と極性有機溶剤成分とを分離するもので、分離された水成分はイオン除去装置7へ供給され、分離された極性有機溶剤成分は処理液補給槽6へ供給される。
【0030】
本例にて使用される脱脂兼化成処理液に含まれる極性有機溶媒としては、上述したようにアルコール、グリコールエーテル、ジエチレングリコールエーテル系であり、本例の水−極性有機溶剤分離装置5としては、これらの極性有機溶媒と水とを効率よく、且つ安価で分離できる方法を用いることが望ましい。こうした分離方法としては、パーベーパレーションと呼ばれる分離方法を挙げることができる。これは、図5に示すように選択透過性を有する分離膜51(非多孔膜:1nm以下の孔を有する膜)の一方側(供給側)52に、分離すべき極性有機溶媒と水との混合液をそのまま供給し、分離膜51の他方側(透過側)53を真空又は減圧状態にする。そして、供給側52と透過側53の圧力差を駆動力として、高圧側(供給側)52から低圧側(透過側)53に混合液を移動させる際、物質種類毎に拡散速度が著しく異なる選択透過性を有する分離膜51を介在させることで、極性有機溶媒と水を分離させる。
【0031】
上述した分離膜51としては、「支持膜上にマイレン酸で架橋したPVA膜をのせた複合膜(特開昭59−109204号公報)」、「K塩で処理した、カルボキシメチルセルロース80%とポリアクリレート20%の混合膜(J.Memb.Sci.,32,207(1987)」、「PNA支持膜上に架橋したPVA膜上載せた複合膜(J.Memb.Sci.,36,463(1988)」、「キトサン誘導体の中空糸膜(日化年会(1989))」、「アルギン酸コバルト膜(特開昭61−404号公報)」、「キトサン硫酸塩膜(国際膜学会(1987))」、「PNA基膜表面を加水分解したポリアクリル酸とアイオネン型ポリカチオンとのポリイオンコンプレックス複合膜(特開平1−224003号公報)」などが挙げられる。
【0032】
イオン除去装置7は、水−極性有機溶剤分離装置5から供給された水成分からイオン成分を除去するもので、除去されたイオン成分は廃棄され、残りの水は処理液補給槽6およびリンス槽8へ供給される。本例で用いられるイオン除去装置7は、特殊なものではなく、図6に示すように、脱脂兼化成処理液中に含まれるカチオン成分、例えば亜鉛イオン、ニッケルイオン、マンガンイオンを除去できるキレート樹脂型陽イオン交換樹脂を充填したイオン交換塔71と、脱脂兼化成処理液中に含まれるアニオン成分、例えばリン酸根、硝酸根等を除去できるスチレン系強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したイオン交換塔72を備え、更に水の純水度を高めるために通常使用されている純水製造装置であるH型の強酸性陽イオン交換樹脂を充填したイオン交換塔73と、脱炭酸塔74と、OH型のスチレン系強塩基性陰イオン交換樹脂を充填した陰イオン交換塔75とからなるイオン除去装置を備えた純水製造装置である。
【0033】
本例の塗装前処理装置は以上の構成を有し、以下の5つの循環系を備えている。図1に示すように、まず第1の循環系11は、脱脂化成処理槽1内の処理液が、脱脂化成処理槽1→塵埃除去装置2→化成スラッジ除去装置3→油分除去装置4→処理液補給槽6→脱脂化成処理槽1と循環する循環系である。
【0034】
この第1の循環系11により、処理槽1内の脱脂兼化成処理液は、吸引されて処理槽1へ戻されるので、処理液のクローズド化が達成でき、材料費の低減によるコストダウンを図ることができる。
【0035】
また、本例の処理槽1には脱脂兼化成処理液が満たされているので、最小の一工程で自動車ボディ9の脱脂処理と化成処理を行うことができる。これにより、装置設置スペースを省スペース化することができると同時に、設備費を低減することができる。また、工程通過時間が短くなるので生産性が向上する。
【0036】
さらに、脱脂兼化成処理液を用いることで前処理条件の管理工数を削減することができる。また、この脱脂兼化成処理液を用いることで水洗工程を大幅に削減することができ、洗浄液の使用量が激減すると同時に、廃水処理工程の負担も軽減される。
【0037】
第2の循環系12は、脱脂化成処理槽1内の処理液が、脱脂化成処理槽1→塵埃除去装置2→化成スラッジ除去装置3→油分除去装置4→水−極性有機溶剤分離装置5→イオン除去装置7→リンス槽8と循環する循環系である。
【0038】
この第2の循環系12によって、処理槽1内の脱脂兼化成処理液は、吸引され、水−極性有機溶剤分離装置5によって水成分が抽出され、さらにこの水成分からイオン除去装置7によってイオン成分が除去されるので、純水をリンス槽8へ供給することができる。これにより、処理液のクローズド化が達成でき、再生率が向上して、材料費の低減によるコストダウンと廃水処理工程の負担軽減とを図ることができる。
【0039】
また、本例の処理槽1には脱脂兼化成処理液が満たされているので、最小の一工程で被処理物の脱脂処理と化成処理を行うことができる。これにより、装置設置スペースを省スペース化することができると同時に、設備費を低減することができる。また、工程通過時間が短くなるので生産性が向上する。
【0040】
さらに、脱脂兼化成処理液を用いることで前処理条件の管理工数を削減することができる。また、この脱脂兼化成処理液を用いることで水洗工程を大幅に削減することができ、洗浄液の使用量が激減すると同時に、廃水処理工程の負担も軽減される。
【0041】
第3の循環系13は、リンス槽8内の液を配管17及びポンプ18によって塵埃除去装置2に導き、以後、当該塵埃除去装置2→化成スラッジ除去装置3→油分除去装置4と循環する循環系である。
【0042】
この第3の循環系13によって、上述した第1の循環系11による作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。すなわち、処理槽1内の脱脂兼化成処理液は、第1の循環系11によって吸引され処理槽1へ戻される一方で、リンス槽8内の液は、第3の循環系13によって吸引され、塵埃除去装置2、化成スラッジ除去装置3及び油分除去装置4のうちの最上流の装置、本例では塵埃除去装置2へ導かれる。
【0043】
これにより、リンス槽8内の液から塵埃、スラッジおよび油分を除去できるとともに、当該液に含まれる極性有機溶剤成分を処理液補給槽6を介して処理槽1へ戻すことができる。すなわち、処理液に加えてリンス槽8内の液のクローズド化も達成でき、材料費の低減によるコストダウンと廃水処理工程の負担軽減とを図ることができる。
【0044】
また、これに加えて以下の循環系が構成されている。
第4の循環系111としては、上述した第1の循環系11、すなわち脱脂化成処理槽1→塵埃除去装置2→化成スラッジ除去装置3→油分除去装置4→処理液補給槽6→脱脂化成処理槽1の閉回路に、水−極性有機溶剤分離装置5を付加し、この水−極性有機溶剤分離装置5によって分離された極性有機溶剤を処理液補給槽6へ供給する循環系である。
【0045】
第5の循環系121としては、上述した第2の循環系12、すなわち脱脂化成処理槽1→塵埃除去装置2→化成スラッジ除去装置3→油分除去装置4→水−極性有機溶剤分離装置5→イオン除去装置7→リンス槽8の閉回路に、処理液補給槽6を付加し、イオン除去装置7によってイオンが除去された純水の一部を処理液補給槽6へ供給する循環系である。
【0046】
第6の循環系131としては、上述した第3の循環系13、すなわちリンス槽8及び脱脂化成処理槽1→塵埃除去装置2→化成スラッジ除去装置3→油分除去装置4→処理液補給槽6→脱脂化成処理槽1の閉回路に、水−極性有機溶剤分離装置5を付加し、この水−極性有機溶剤分離装置5によって分離された極性有機溶剤を処理液補給槽6へ供給する循環系である。
【0047】
第7の循環系132としては、上述した第6の循環系131、すなわちリンス槽8及び脱脂化成処理槽1→塵埃除去装置2→化成スラッジ除去装置3→油分除去装置4→水−極性有機溶剤分離装置5→処理液補給槽6→脱脂化成処理槽1の閉回路に、イオン除去装置7を付加し、水−極性有機溶剤分離装置5によって分離された水分からイオンを除去し、イオンが除去された水をリンス槽8へ供給する循環系である。
【0048】
また、第8の循環系133としては、上述した第6の循環系131、すなわちリンス槽8及び脱脂化成処理槽1→塵埃除去装置2→化成スラッジ除去装置3→油分除去装置4→水−極性有機溶剤分離装置5→処理液補給槽6→脱脂化成処理槽1の閉回路に、イオン除去装置7を付加し、水−極性有機溶剤分離装置5によって分離された水分からイオンを除去し、イオンが除去された水を処理液補給槽6へ供給する循環系である。
【0049】
このように、本実施形態の前処理装置は、大きく分類すると第1乃至第3の3つの循環系、さらに細かく分類すると8つの循環系を有するので、脱脂化成処理槽1の処理液組成を安定させ、連続処理においても品質ばらつきがなく良好な化成処理皮膜の生成を可能にする。
【0050】
また、第3の循環系を有することで、リンス槽8の洗浄水の電気伝導度を20μS/cm以下の範囲に保ち、油分、処理液、鉄等のゴミブツが処理物の表面に付着することが防止でき、しかも次工程への持ち出しを極力減らすことができる。
【0051】
次に、図7の工程図を参照しながら、上述した塗装前処理装置の化成スラッジ除去装置3で除去された化成スラッジおよび油分を含む廃棄物を処理する方法について説明する。
【0052】
図1に示す化成スラッジ除去装置3にて除去された化成スラッジおよび油分の混合廃棄物は、水分を含んでいるのでまず最初に水分を除去すべくこれを乾燥させる。この乾燥工程は化成スラッジおよび油分の混合廃棄物を加熱して強制乾燥させる他、日干しなどによる自然乾燥であってもよい。
【0053】
次いで、こうして乾燥された化成スラッジおよび油分の乾燥硬化物を粉砕機等を用いて平均粒径100μm前後に粉砕する。この粒径の具体的数値は本発明を限定するものではないが、粒径が大きすぎるとヒュージブルインシュレータに加工する際の混練工程における混合が不均一となったり、シート化したときにシートの表面に凹凸が生じたりするので、細かく粉砕することが望ましい。
【0054】
以上の工程により塗装前処理装置の廃棄物である化成スラッジ(主としてリン酸鉄)と油分との混合粉砕粉が得られるが、次にこれを用いてヒュージブルインシュレータを製造する。
【0055】
具体的には、まず無機物(たとえば、タルク、炭酸カルシウム、二酸化珪素など)、繊維材(たとえば、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維など)および有機物(たとえば、樹脂、ゴム、オイルなど)を混練機を用いて混合し、これに溶融した石油アスファルトを混合して、約120℃の温度下で15分間程度混練する。ここで、本発明に係る化成スラッジと油分との混合粉砕粉は、無機物および石油アスファルトに相当することから、従来配合されていた無機物および石油アスファルトの代替え物質として配合することができる。たとえば、石油アスファルト60重量%、無機物7重量%、有機物および繊維材33重量%のヒュージブルインシュレータの場合、無機物7重量%の全てと、石油アスファルト60重量%のうちの1重量%を、本発明に係る化成スラッジと油分との混合粉砕粉に置き換える。すなわち、混練機を用いて、化成スラッジと油分との混合粉砕粉8重量%と、繊維材および有機物33重量%と、溶融した石油アスファルト59重量%とを混練してアスファルト混合物を得る。
【0056】
次いで、この混練したアスファルト混合物をカレンダーロール機などを用いて圧延し、最終製品の厚さのシート状物に成形する。最後に、プレス機等を用いてこのシート状物を打ち抜き加工し、最終製品であるヒュージブルインシュレータを得る。
【0057】
図8は、こうして得られたヒュージブルインシュレータ50の車両フロアパネル51への適用例を示す図である。ヒュージブルインシュレータ50は、車両の防振や遮音を目的とするもので、車両に応じた適宜箇所に貼り付けるが、一般的には、塗装ラインのうちの電着乾燥炉を終えたシーリングラインなどで目的とする箇所に載置する。そして、中塗り乾燥炉や上塗り乾燥炉を通過することにより軟化して車両パネルの表面に馴染み、乾燥炉をでると冷却硬化する。これにより、車両パネルに強固に張り付くことになる。
【0058】
特に本例のヒュージブルインシュレータ50は、炭酸カルシウムなどの無機物や石油アスファルトの一部を、塗装前処理装置で廃棄された化成スラッジと油分との混合物に置き換えているので、資源の有効活用を図ることができると同時に、廃棄処理コストを低減することができる。
【0059】
なお、本例のヒュージブルインシュレータと従来のヒュージブルインシュレータとの代表特性を確認すべく、下記表1の配合比にて、融着外観性、熱流動性、落ち込み性および制振性を調べたところ、同表に示すとおり従来のものと同等の性能を示した。
【0060】
【表1】
Figure 0003714281
【0061】
また、本例の化成スラッジと油分との混合物の配合量については、1重量%〜8重量%が好ましい。配合量が少ないと本発明のリサイクル効果が充分に発揮できない一方で、配合量が8重量%を超えると、膨れや悪臭といった性能低下が懸念される。
【0062】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0063】
上述した図8の例では、ヒュージブルインシュレータとして車両のフロアパネルに適用したものを示したが、本発明の制振材はフロアパネルに限定されず、ドア、バックドアなどの適宜箇所に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理方法に係る塗装前処理装置の実施形態を示す図である。
【図2】図1の塵埃除去装置の実施形態を示す斜視図および断面図である。
【図3】図1の塵埃除去装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図1の塵埃除去装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図5】図1の水−極性有機溶剤分離装置の実施形態を示す概念図である。
【図6】図1のイオン除去装置の実施形態を示す概念図である。
【図7】本発明の処理方法の実施形態を示す工程図である。
【図8】本発明に係る車両パネルの制振材を示す図である。
【符号の説明】
1…脱脂化成処理槽(処理槽)
2…塵埃除去装置(塵埃除去手段)
3…化成スラッジ除去装置(化成スラッジ除去手段)
4…油分除去装置(油分除去手段)
5…水−極性有機溶剤分離装置(水−極性有機溶剤分離手段)
6…処理液補給槽(処理液補給手段)
7…イオン除去装置(イオン除去手段)
8…リンス槽
50…ヒュージブルインシュレータ(車両パネルの制振材)

Claims (5)

  1. 脱脂兼化成処理液が満たされた処理槽から化成スラッジおよび油分を含む廃棄物を集約し、これを脱水したのち、車両パネルの制振材の配合物として再利用する塗装前処理廃棄物の処理方法。
  2. 前記廃棄物は、
    脱脂兼化成処理液が満たされる処理槽と、
    前記処理槽内の脱脂兼化成処理液を吸引して前記処理槽に戻す第1の循環系と、
    前記脱脂兼化成処理液に含まれる塵埃を除去する塵埃除去手段と、
    前記第1の循環系に設けられ、前記脱脂兼化成処理液に含まれる化成スラッジを除去する化成スラッジ除去手段と、
    前記脱脂兼化成処理液に含まれる油分を除去する油分除去手段と、
    前記第1の循環系に設けられ、前記塵埃除去手段、化成スラッジ除去手段及び油分除去手段を通過した液を調整して、前記処理槽に補給する処理液補給槽と、を備えた塗装前処理装置の、前記化成スラッジ除去手段および前記油分除去手段により除去された廃棄物である請求項1記載の塗装前処理廃棄物の処理方法。
  3. 前記脱脂兼化成処理液は、アルコール、グリコールエーテルまたはジエチレングリコールエーテル系の極性有機溶剤と、水と、亜鉛イオンと、リン酸イオンと、マンガンイオンと、ニッケルイオンと、ナトリウムイオンとを少なくとも含む請求項1又は2に記載の塗装前処理廃棄物の処理方法。
  4. 石油アスファルト、無機物、有機物および繊維材を含む車両パネルの制振材において、塗装ラインの脱脂兼化成処理液が満たされた処理槽から排出された化成スラッジおよび油分が配合された車両パネルの制振材。
  5. 前記化成スラッジおよび油分が1重量%〜8重量%配合されている請求項4記載の車両パネルの制振材。
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