JP3712663B2 - 印刷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、版胴に対し当接して湿し水を供給する水着けローラやインキを供給するインキ着けローラを備える印刷装置に関し、特に前記水着けローラやインキ着けローラの版胴に対するニップ圧を調整する機構を備える印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的なオフセット印刷機では、版胴上の印刷版面に対し湿し水を供給する湿し水供給手段を備える。この湿し水供給手段としては、版胴面(印刷版面)に対し当接して湿し水を供給する水着けローラを用いるものが周知である。この水着けローラを用いる場合には、供給する湿し水量を一定にするために水着けローラを版胴に対して当接させる当接圧力(以下、ニップ圧という)を調整する必要がある。
【0003】
上記ニップ圧を調整するために、一般的な手法として以下のようなニップ圧確認方法が行われている。この方法では、まず版胴上の印刷版面に対しインキ膜を形成し、次いで水着けローラを版面上に当接させる。これにより印刷版面上に水着けローラの当接跡(以後、水着けローラ跡という)が付く。この水着けローラ跡の巾寸法を確認し、当該巾寸法が所定の値になるように前記水着けローラの版胴に対するニップ圧を調整する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記水着けローラのニップ圧の確認・調整方法ではオペレータが印刷装置の各手段を手動により動作させる必要があった。すなわち、版胴の回転位置や水着けローラの昇降動作などを手動により順次行なわなければならないが、このような作業は調整と確認とを交互に行いながら複数回繰り返す必要があり、オペレータにとっては面倒な作業であった。
【0005】
一方、一般的な印刷装置では版胴周囲に多数のローラや胴が配置されているため、装置内部における水着けローラの版胴に対する当接位置が目視できない位置にある。この場合、オペレータのおおよその見当で版胴を位置決めして前記水着けローラ跡を形成する必要があり、形成した水着けローラ跡を目視できる位置まで版胴を回転させなければならない。このような場合は前記作業を複数回繰り返したとすれば、どの水着けローラ跡がどの時点のものか判らなくなるという問題もあった。従って版胴上に新たなインキ膜を形成して先の水着けローラ跡を消去することが必要になり、作業効率が悪かった。
【0006】
なお上記課題は水着けローラだけに限らず、印刷版面に対し当接してインキを供給するインキ着けローラのニップ圧調整に関しても同様である。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、水着けローラおよびインキ着けローラのニップ圧調整を行う際のニップ圧の形成作業を自動化できる印刷装置、さらにニップ圧の調整自体を自動化できる印刷装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、版胴を回転駆動する版胴回転駆動手段と、前記版胴に対し当接して湿し水を供給する水着けローラと、前記水着けローラを選択的に版胴面に対し当接または離間させる水着けローラ昇降手段と、を備えた印刷装置において、前記版胴面上に予めインキ膜を形成するためのインキ供給手段と、予め設定された複数の水着けローラ跡形成位置と、水着けローラ跡を確認するための確認位置とを記憶する記憶手段と、前記版胴回転駆動手段を制御して、インキ供給された版胴を前記複数の水着けローラ跡形成位置へ位置決めして停止させる版胴位置制御手段と、前記水着けローラ昇降手段を制御して、前記水着けローラ跡形成位置に停止した版胴に対し一定時間前記水着けローラを当接させてから離間させる水着けローラ当接制御手段とからなり、前記版胴を予め設定した複数の水着けローラ跡形成位置に位置決めして水着けローラ跡の形成を繰り返すとともに、水着けローラ跡の形成後に、前記複数の水着けローラ跡形成位置が前記確認位置となるように前記版胴を回転移動させる水着けローラ跡形成装置を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記版胴上を撮像して水着けローラ跡の画像データを得る撮像手段と、前記画像データから水着けローラ跡のサイズを測定する測定手段と、前記測定結果に基づいて前記水着けローラのニップ圧を調整するニップ圧調整手段と、をさらに備える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記水着けローラ位置として予め設定した数を使用して次に使用しうる水着けローラ跡形成位置が残っていない場合には、前記版胴面上に再度インキ膜を形成するとともに、前記水着けローラ跡形成位置をリセットする請求項1に記載の印刷装置。
【0011】
請求項4に記載の発明は、版胴を回転駆動する版胴回転駆動手段と、前記版胴に対し当接してインキを供給するインキ着けローラと、前記インキ着けローラを選択的に版胴面に対し当接または離間させるインキ着けローラ昇降手段と、を備えた印刷装置において、予め設定された複数のインキ着けローラ跡形成位置と、インキ着けローラ跡を確認するための確認位置とを記憶する記憶手段と、前記版胴回転駆動手段を制御して、前記版胴を前記複数のインキ着けローラ跡形成位置へ位置決めして停止させる版胴位置制御手段と、前記インキ着けローラ昇降手段を制御して、前記複数のインキ着けローラ跡形成位置に停止した版胴に対し一定時間前記インキ着けローラを当接させてから離間させるインキ着けローラ当接制御手段とからなり、前記版胴を予め設定したインキ着けローラ跡形成位置に位置決めしてインキ着けローラ跡の形成を繰り返すとともに、インキ着けローラ跡の形成後に、前記複数のインキ着けローラ跡形成位置が前記確認位置となるように前記版胴を回転させるインキ着けローラ跡形成装置を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の印刷装置であって、前記版胴上を撮像してインキ着けローラ跡の画像データを得る撮像手段と、前記画像データからインキ着けローラ跡のサイズを測定する測定手段と、前記測定結果に基づいて前記インキ着けローラのニップ圧を調整するニップ圧調整手段と、をさらに備える。
【0013】
【発明の実施の形態】
[印刷装置の説明]
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。まず図1は本発明に係る印刷装置の一例を示す概要図である。
【0015】
図1に示すように、この印刷装置は、印刷機構として、印刷版を保持する第1および第2の版胴1、2と、それぞれの版胴からインキ画像を転写するための第1および第2のブランケット胴3、4と、印刷用紙を保持して両ブランケット胴3、4からインキ画像が転写される圧胴5と、圧胴5に対し印刷用紙を供給または排出する給紙胴6および排紙胴7と、前記第1および第2の版胴1、2上の印刷版に対し湿し水またはインキを供給する湿し水供給手段8およびインキ供給手段9と、積載された未印刷の印刷用紙を順次供給する給紙部10と印刷された印刷用紙を順次積載する排紙部11とを備える。
【0016】
一方、この印刷装置は、製版機構として、前記第1および第2の版胴1、2に対し未露光の印刷版を供給する印刷版供給部12と、版胴上の印刷版に対し画像を記録する画像記録部13と、画像が記録された印刷版を現像処理する現像部14と、使用済みの印刷版を排出する印刷版排出部15とを備える。
【0017】
また、この印刷装置は印刷された印刷用紙上の画像を撮像して画像濃度を測定するための画像読取装置16と、ブランケット胴を洗浄するための洗浄装置17と、この印刷装置全体を制御する制御装置18とを備える。
【0018】
以下、前記各部の詳細について説明する。第1の版胴1は、図示しない版胴駆動機構によって図1の実線で示す第1の印刷位置と二点鎖線で示す画像記録位置との間を移動可能なように構成されており、第2の版胴2についても同様に図示しない版胴駆動機構によって図1の実線で示す第2の印刷位置と二点鎖線で示す画像記録位置との間を移動可能なように構成されている。すなわち第1および第2の版胴1、2は、印刷作業を実行する時にはそれぞれ第1または第2の印刷位置に配置され、製版作業を実行する時には、順次交代して画像記録位置に配置されて各版胴上での印刷版の製版処理が行われる。この第1の版胴1と第2の版胴2とは、それぞれ2色分の印刷版を保持可能な周面を有し、各印刷版をその周面上で180度対向した位置に固定するための咥え手段(図示しない)を備える。
【0019】
第1のブランケット胴3は、前記第1の印刷位置において第1の版胴1と当接して回転するように構成されており、第2のブランケット胴4についても同様に前記第2の印刷位置において第2の版胴2と当接して回転するように構成されている。この第1および第2のブランケット胴3、4は、前記第1および第2の版胴1、2と同じ直径を有し、各版胴から2色分のインキ画像を転写可能なブランケットをその周面に装着している。
【0020】
圧胴5は、前記第1および第2の版胴1、2の1/2の直径を有し、第1および第2のブランケット胴3、4の両方と当接して回転するように構成されている。この圧胴5は、前記印刷版に対応する大きさの印刷用紙を1枚保持可能な咥え手段(図示しない)を備えている。
【0021】
給紙胴6および排紙胴7は、圧胴5と同じ直径を有し、前記圧胴5に備えられた咥え手段と同様の図示しない咥え手段を備える。この給紙胴6の咥え手段は前記圧胴5の咥え手段に対し同期して印刷用紙を受け渡すように配置されており、排紙胴7の咥え手段は前記圧胴5の咥え手段から同期して印刷用紙を受け取るように配置されている。
【0022】
上記第1および第2の印刷位置に配置された第1および第2の版胴1、2と、第1および第2のブランケット胴3、4と、圧胴5と、給紙胴6および排紙胴7とは、図示しない印刷駆動用モータにより同期して回転駆動される。なお、本実施の形態の印刷装置では、圧胴5に対し版胴1、2およびブランケット胴3、4が2倍の周長を有するため、版胴1、2およびブランケット胴3、4が1回転する毎に圧胴が2回転する。従って、圧胴5が印刷用紙を保持したまま2回転すると、第1および第2の版胴1、2から、2色+2色の合計4色の多色印刷が行える。
【0023】
湿し水供給手段8は、一般的な連続給水機構からなり、第1および第2の印刷位置における各版胴1、2に対しそれぞれ2組づつ配置されている。各湿し水供給手段8はカム機構によって各版胴1、2上の2つの印刷版に対し選択的に湿し水を供給することができる。この湿し水供給手段8の詳細については後述する。
【0024】
インキ供給手段9は、一般的なインキ壷手段と複数のインキローラ群とからなり、第1および第2の印刷位置における各版胴1、2に対しそれぞれ2組づつ配置されている。各インキ供給手段は9は、それぞれのカム機構によって各版胴1、2上の2つの印刷版に対し選択的に異なる色のインキを供給することができる。なお各インキ供給手段9のインキは、例えば第1の版胴1に対しては、K色(ブラック)とM色(マゼンタ)のインキ供給手段9が配置され、第2の版胴2に対しては、C色(シアン)とY色(イエロー)のインキ供給手段9が配置される。このインキ供給手段9の詳細についても後述する。
【0025】
上記湿し水供給手段8とインキ供給手段9のいくつかは、前記第1および第2の版胴1、2の移動にともない、その移動経路から待避できるように構成されている。
【0026】
給紙部10は、未使用の印刷用紙を積載したパイルから印刷用紙を一枚ずつ取りだして給紙胴6に渡すものであって、この実施の形態では、給紙胴の2回転毎に1回印刷用紙を供給するよう動作する。一方、排紙部11は、印刷された印刷用紙を排紙胴7から受け取って積載するものである。排紙部11は公知なチェーン搬送機構からなり、チェーンにより巡回される咥え爪により印刷用紙の先端部を挟持して排出搬送するものである。この排紙部11により印刷物が排出される移動経路途中に印刷物の画像を読み取る画像読取装置16が備えられている。
【0027】
次に、この印刷装置の製版機構について説明する。この印刷装置では、製版作業を実行する時には、第1および第2の版胴1、2を交互に画像記録位置に移動させる。この画像記録位置では、図示しない摩擦ローラが版胴に当接されて回転駆動するように構成されている。
【0028】
印刷版供給部12は、ロール状の未露光印刷版を遮光して保管したカセットロールと、引き出した印刷版を版胴1、2まで搬送する搬送ローラおよび搬送ガイドと、前記印刷版をシート状に切断する切断手段と、を有する。
【0029】
この実施の形態では、印刷版としては銀塩感材を用いており、レーザ光によって画像を記録するものである。印刷版の供給動作手順は、まず前記カセットロールから引き出した印刷版の先端を前記版胴1、2の図示しない咥え手段に挟持させ、この状態で版胴1、2を回転させて印刷版を版胴1、2上に巻回し、この後、所定長で印刷版を切断して印刷版の後端を他方の咥え手段により挟持するものである。なお、版胴上にシート上の印刷版を供給するのではなくて、版胴面に直接印刷版に相当する印刷層を例えば塗布や固着する形式であってもよい。
【0030】
画像記録部13は、レーザ光のon/offによって印刷版上に露光を施して印刷版上に画像を記録するものである。この実施の形態では、前記制御装置18により印刷版上の画像の位置が決定され、該当する画像データが画像記録部13へ送出される。そして画像記録部13では、レーザ発信源から発射されたレーザ光をポリゴンミラーなどの偏光器によって版胴の軸線方向に沿って主走査するとともに、版胴を回転させることで印刷版面を副走査する構成になっている。
【0031】
なお、走査方式としては、複数のレーザビームを版胴軸線方向に併設しておいて版胴の回転にともない主走査する形式であってもよい。また、露光により画像を記録するものだけでなく、熱やその他の加工方式によって画像を記録するものであってもよい。
【0032】
現像部14は、前記画像記録部13により露光された印刷版を現像処理するものである。この実施の形態では、現像部14は、処理槽に貯留された処理液を塗布ローラにより汲み上げて印刷版に対し塗布して現像処理を行う構成になっており、版胴から待避する位置と版胴へ近接する位置とに移動する昇降手段が備えられている。なお現像処理が要らない画像記録方法を採用すれば、現像部14自体はなくてもよい。
【0033】
この印刷装置では、第1および第2の版胴1、2を画像記録位置へ移動させ、印刷版の供給と画像の記録および現像とを行って製版作業を実行する。製版作業が完了すれば、第1および第2の版胴1、2を第1および第2の印刷位置に配置して印刷作業を行うことができる。
【0034】
一方、この印刷装置は印刷作業の終了後に印刷版を自動で排出することができる。この実施の形態では、印刷版排出部15は、画像記録位置にある版胴から印刷版を剥離する剥離手段と、剥離された印刷版を搬送する搬送手段と、搬送された使用済みの印刷版を排出する排出カセットとを備える。
【0035】
画像読取装置16は、排紙部11によって搬送される印刷用紙上の画像を読み取るものであり、印刷用紙を照明する照明光源と、印刷用紙からの反射光を受光してRGB画像信号に変換するCCDラインセンサーとを備える。この画像読取装置16では、搬送される印刷用紙を印刷方向に線順次に読み取り、得られたRGB画像信号を処理して印刷用紙上の印刷濃度値や測色値などの測定データを得ることができる。この画像読み取り装置16で得られた測定データに基づいてインキ供給量や湿し水供給量を調整することができる。
【0036】
洗浄装置17は、第1および第2のブランケット胴3、4に当接してブランケット表面を洗浄する装置であり、ブランケット表面に対し洗浄液を供給するとともにブランケット方面に洗浄部材を当接させてインキ汚れを拭き取るものである。
【0037】
制御装置18は、各種入出力手段や記憶手段などを備えるマイクロコンピュータシステムであって印刷装置内の電装部などに格納されている。この制御装置18は所定のプログラムに基づいて前記画像読取装置16で得た画像信号の処理を行なったり、また印刷装置全体を制御するものである。従って、本発明における水着けローラ跡形成装置やインキ着けローラ跡形成装置における制御手段としても作用する。この制御装置18の詳細についても後述する。
【0038】
[湿し水供給手段8の説明]
【0039】
次に前記湿し水供給手段8の詳細について図2および図3を用いて説明する。図2および図3は、印刷装置内に4つ配置されている湿し水供給手段8のうちの一つを代表的に示した側面図であり、理解しやすいように説明不要な部分は図示を省略している。なお、図2は後述するロック手段40によって水着けローラが印刷版面から離間するように固定された状態を示し、図3は前記ロック手段40が解除されて水着けローラが印刷版面に対し当接している状態を示す図である。
【0040】
図において、湿し水供給手段8は、湿し水を貯留する水舟20と、水舟20内に浸漬して配置された水元ローラ21と、この水元ローラ21に当接する中間ローラ22と、中間ローラ22に当接する水着けローラ23と、を備え、前記各ローラ21ないし23は、一対の側板24の間に回転可能に軸支されている。なお側板24は軸25を中心にして微小回動するように構成されており、これにより湿し水供給手段8は版胴1、2に対し当接または離間する方向に移動する。
【0041】
水舟20は、湿し水を貯留する上面開口した容器であり、図示しない水循環供給手段に接続されていて常に一定量の湿し水を蓄えている。水元ローラ21は、前記水舟20内に一部浸漬した状態で配置され、図示しない駆動モータにより回転制御される。そして水元ローラ21の回転数により湿し水の供給量が制御される。中間ローラ22は、前記水元ローラ21と水着けローラ23との間に配置されて従動回転するローラであって、水元ローラ21から水着けローラ23に対し湿し水を伝達する。
【0042】
水着けローラ23は、版胴面に当接または離間して湿し水を供給するためのローラであって、以下のカム機構により前記印刷版面に対し当接または離間するように構成されている。まず前記版胴1、2の側端には、版胴1、2上の2つの画像領域に対応して、それぞれ180度対向する位置にカム板30が設けられており、このカム板30は版胴1、2とともに回転する。なお図2および図3では1つの湿し水供給手段8に対応して一方のカム板30のみを記載している。
【0043】
一方、湿し水供給手段8には、前記カム板30によって作動するカムフォロアー31が配置されている。前記カムフォロアー31は図示しないフレームに対して軸芯32を中心に回動するアーム33と、このアーム33に軸支されたベアリング部材34とから構成されており、このベアリング部材34は前記カム板30に対向するように配置されている。
【0044】
この構成では、前記ベアリング部材34が前記カム板30に対し乗り上げている場合は、アーム33が軸芯32を中心に反時計方向に回転して側板24を押し上げ、湿し水供給手段8全体が軸25を中心に反時計方向に回動する。これにより水着けローラ23は印刷版面から離間する。一方、前記ベアリング部材34が前記カム板30に対し乗り上げていない場合は側板24の押し上げはない。この場合は前記水着けローラ23の軸芯35がフレームに固定されたバネ36によって版胴方向に付勢されているため、前記水着けローラ23が印刷版面に当接する。この構成により、前記湿し水供給手段8は前記カム板30が配置されていない側の画像領域に対して選択的に湿し水を供給することができる。
【0045】
一方、この湿し水供給手段8では、前記カムフォロアー31がカム板30により昇降動作することを禁止するロック機構40を備える。このロック機構40は、ソレノイド41と、ソレノイド41により回動する止め部材42と、前記アーム33に対し固定された係合部材43と、からなる。
【0046】
ソレノイド41は図示しないフレームに固定されており、伸縮動作するロッド44の先端に前記止め部材42が接続されている。止め部材42は前記フレームに対し軸芯45を中心に回動可能なように軸支されており、その先端側に前記係合部材38と係合するような切欠部46が形成されている。係合部材43は前記アーム33に対し固定されており、前記軸芯32を中心にしてアーム33と一体的に回動する。この係合部材43の先端側には前記止め部材42と係合する切欠部47が形成されている。
【0047】
図2に示すように、このロック機構40は、前記ソレノイド41を稼動させて前記ロッド44を伸ばすと、前記止め部材42が軸芯45を中心にして反時計方向に回転し、前記止め部材42と係合部材43とが係合される。この状態では、カムフォロアー31がカム板30から降りた位置に復帰することが禁止され、湿し水供給手段8が常に軸芯25を中心に反時計方向に回動した状態になっているため、版胴の回転位置に関わらず常に水着けローラ23は印刷版表面から離間した位置にある。
【0048】
一方、図3に示すように、前記ソレノイド41を稼動させて前記ロッド44を縮めると、前記止め部材42が軸芯45を中心にして時計方向に回転し、前記止め部材42と係合部材43との係合が解除される。この状態では前記カムフォロアー31がカム板30に従って動作するために、湿し水供給手段8が印刷版面に対し昇降動作する。
【0049】
一方、前記水着けローラ23が印刷版面に当接する場合、前記側板24が軸芯25を中心にして時計方向に回動する。この時、1対の側板24のそれぞれが、各側板24上に近接配置された規制部材50によって、その回動位置が規制されるように構成されている。
【0050】
規制部材50は、前記フレームに固定されたナット部51と、このナット部51に螺合されたネジ部52とからなる。ネジ部52は、オペレータが操作可能なつまみ部53を有し、このつまみ部53の回転操作に従って、ネジ部52の先端54がナット部51から適宜の量だけ突出するように構成されている。そして前記先端54が側板24に固定された位置決め部55と当接することによって側板24の回動を規制する。すなわちネジ部52の先端54が突出する量によって水着けローラ23の印刷版に対するニップ圧を調整することができる。
【0051】
前記規制部材50は、左右一対の側板24に対応するように2つ設けられており、各規制部材50を個別に操作することで水着けローラ23の左右におけるニップ圧を独立して調整することができる。なお前記つまみ部53には、単位回転量毎にスナップロックする機構が備えられており、回転量を目視するための目盛りが付されている。
【0052】
[インキ供給手段9の説明]
【0053】
次に、図4および図5を用いてインキ供給手段9の詳細について説明する。図4および図5は、印刷装置内に4つ配置されているインキ供給手段9のうちの一つを代表的に示した側面図であり、理解しやすいように説明不要な部分は省略している。なお、図4は後述するエアーシリンダー91によってインキ供給手段9がインキ着け位置にある状態を示し、図5は前記エアーシリンダー91によってインキ供給手段9がインキ着け位置から退避した位置にある状態を示す図である。
【0054】
図のように、インキ供給手段9は、インキ壷手段60と、複数のインキローラ61a〜61eと、インキローラ61aとインキ壷手段60との間でインキを渡す渡しローラ62と、版胴面に対しインキを供給するインキ着けローラ63a〜63cとを備え、一対の側板64によって支持されている。
【0055】
インキ壷手段60は、図示しないモータにより回転駆動するインキ元ローラ65に対し複数のインキキーブレード66を当接させて構成した公知の装置であり、各ブレード66のインキ元ローラ65に対する隙間を調整することで版胴1、2の軸線方向に沿って所望のインキ膜を供給することができる。
【0056】
渡しローラ62は、図示しないアーム部材によってインキ元ローラ65とインキローラ61aとの間を往復動するように構成されており、一定間隔で各ローラに交互に接触してインキ壷手段60からインキローラ61aへインキを渡すように動作する。
【0057】
インキローラ61a〜61eは、前記インキ壷手段60から渡ったインキを練って、後段のインキ着けローラ63a〜63cへ伝達するためのローラ群である。このインキローラ61a〜61eは、それぞれサイズなどが異なるが、総称した場合インキローラ61とする。なおインキローラ61のいくつかは軸線方向に揺動するように構成されている。
【0058】
インキ着けローラ63aは、前記インキローラ61cの回転軸芯67を中心に回動する一対のアーム68によって軸支されており、インキローラ61cとの当接状態を維持しながらアーム68により回動される。同様にインキ着けローラ63bは回転軸芯67を中心に回動するアーム69によって、またインキ着けローラ63cはインキローラ61eの回転軸芯70を中心に回動するアーム71によって軸支されている。
【0059】
前記アーム68はバネ部材72によって時計方向に付勢されており、これによって前記インキ着けローラ63aは版胴面に当接する方向へ付勢されている。同様に前記アーム69はバネ部材73により、また前記アーム部材71はバネ部材74により付勢されており、これによって各々の支持するインキ着けローラ63b、63cは版胴面に当接する方向に付勢されている。
【0060】
一方、前記アーム68、69の交差する間には、カムフォロア−80が配置されている。なおカムフォロア−80の具体的構成については、図面を見やすくするために図4の右上に分離した略図で記載している。
【0061】
図に示すとおり、前記カムフォロアー80は、軸81を中心に回動可能な状態で前記側板64に軸支された矢じり状部材82と、この矢じり上部材82と一体的に結合され、前記軸81を中心に回動するアーム83と、このアーム83に回転可能に軸支されたベアリング部材84とからなる。前記矢じり状部材80は、前記アーム68、69のそれぞれに固設された当接部材85、86と対向する位置に配置されている。一方、前記湿し水供給手段8と同様に版胴1、2の側面には、版胴上の2つの画像領域に対応して前記ベアリング部材84と当接するようにカム板87が設けられている。
【0062】
前記ベアリング部材84が前記カム板87に対し乗り上げた場合、矢じり状部材82は軸81を中心に時計方向に回転する。この矢じり状部材82の回転により、前記当接部材85、86がぞれぞれ押圧されアーム68、69がそれぞれ押し上げられる。これによりインキ着けローラ63a、63bが印刷版面から離間するように動作する。
【0063】
なお同様に、もう1つのインキ着けローラ63cを昇降するようにカムフォロアー88が設けられている。このカムフォロアー88も前記カムフォロアー80と同様な構成であるため詳細な説明は省略する。このようにカムフォロアー80、88の動作に従って、インキ着けローラ61a〜61cは選択的に対応する画像領域の印刷版面に対してインキを供給することができる。
【0064】
一方、前記側板64は軸90を中心にして回動可能に支持されており、エアーシリンダー91の駆動により回動するように構成されている。すなわちインキ供給手段9の全体をエアーシリンダー91によって軸90を中心に回動させることができる。
【0065】
ここで図4は前記エアーシリンダー91によりインキ供給手段9を軸90を中心に時計方向に回動させて版胴1、2側に付勢した状態である。この状態では、インキ着けローラ63a〜63cが印刷版面に当接可能なインキ供給位置にある。一方、図5は前記エアーシリンダー91によりインキ供給手段9を軸90を中心に反時計方向に回動させて印刷版面からインキ供給手段9を離間させた状態である。この状態ではインキ着けローラ63a〜63cは印刷版面から常に離間した位置にある。
【0066】
なお、湿し水供給手段と同様に、前記側板64の回動を規制するための一対の規制部材92が設けられている。これにより、前記エアーシリンダー91によりインキ供給手段9をインキ供給位置へ降下させた時のインキ着けローラ63a〜63cの印刷版面に対するニップ圧を調整することができる。なお、規制部材92の構成は前記規制部材50と同じであるため、詳細な説明は略する。
【0067】
[制御装置18の説明]
【0068】
次に制御装置18の構成について説明する。図6は本発明に係る制御ブロックを示すブロック図である。なお本発明に直接関係しない構成は省略している。
【0069】
図において、制御装置18は、入力スイッチやキーボードなどの入力手段100と、液晶パネルなどの表示手段101と、ハードディスクやメモリなどの記憶手段102と、上記各手段に接続された演算手段103と、から構成されたマイクロコンピュータシステムであり、予め定められたプログラムに従って印刷装置の各部を制御するように動作する。
【0070】
前記記憶手段102には、予め設定された版胴1、2上の水着けローラ跡形成位置ならびにインキ着けローラ跡形成位置と、形成された水着けローラ跡やインキ着けローラ跡をオペレータが確認するための確認位置との位置情報をデータとして記憶している。
【0071】
図7は、前記水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)と確認位置との関係を説明するための模式図である。図において、版胴1、2に保持された印刷版上には、p1〜pnまでのn個(n>1)の水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)が設定されている。この水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ形成位置)p1〜pnは、例えば各印刷版毎に周方向に略等間隔に設定され、各位置は版胴1、2の回転角度に応じたエンコーダパルス数に基づいて位置情報として記憶される。
【0072】
一方、各水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)p1〜pnはそれぞれローラ跡を形成した後、オペレータが視認しやすい確認位置pcに位置決めされる。この確認位置pcの位置情報としては、前記水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)p1〜pnに対応して前記水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)p1〜pnから確認位置pcまでの回転量y1〜ynが記憶される。もちろん前記確認位置pcとしては、各水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)に対応させた絶対位置で記憶しておいてもよい。
【0073】
なお各水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)が等間隔で設定されている場合は、各水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)は最初の位置p1と次位置以降の等間隔量xを記憶しておいても代用できる。また回転量y1〜ynも同様に前記回転量y1と前記等間隔量xとで代用できる。
【0074】
上記のような位置情報は、各版胴1、2毎および各湿し水供給手段8および各インキ供給手段9毎に予め設定して記憶されている。
【0075】
一方、前記制御装置18には、図示しないインターフェイスを介して、前記版胴1、2を回転駆動するモータ200と、前記ソレノイド41と、前記エアーシリンダー91に対し図示しないエアー供給源からエアーを供給制御するための電磁弁201と、が接続されている。
【0076】
前記制御装置18は、前記モータ200を制御することにより版胴1、2を回転制御する版胴位置制御手段として動作する。また前記制御装置18は、前記ソレノイド41を制御することにより前記水着けローラ23の印刷版面に対する昇降を制御する水着けローラ当接制御手段として、また前記電磁弁201を制御することによってインキ着けローラ63a〜63cの印刷版面に対する昇降を制御するインキ着けローラ当接制御手段として動作する。
【0077】
[水着けローラのニップ圧確認・調整手順の説明]
【0078】
次に上記湿し水供給手段8による水着けローラのニップ圧確認・調整手順について、図8に示すフローチャートを用いて説明する。なお、このフローによる水着けローラのニップ圧確認・調整作業は、例えば印刷作業前や定期メンテナンス時などに行われるものである。
【0079】
オペレータが入力手段100から水着けローラ跡の自動形成を指示すると、ステップ1へ進む。このステップS1では制御装置18が既に形成した水着けローラ跡の個数が所定値n(n>1)に達したかどうかにより新たなインキ着けが必要かどうかを判断する。ただし最初の時点では水着けローラ跡は形成していないので、上記判断に関わらずステップS1ではインキ着けが必要と判断されてステップS2へ進む。
【0080】
ステップS2では、印刷装置は版胴面(印刷版面)に対し予め設定した一定量のインキ膜を形成するように動作する。具体的にはインキ壷手段60のインキキーブレード66を一定開度とした状態で、インキ着けローラ63a〜63cを印刷版面に当接して均一なインキ膜を印刷版面上に形成する。このとき、湿し水供給手段8の水着けローラ23は前記ロック機構40により印刷版面から離間させておく。
【0081】
ステップS3では、前記制御装置18が記憶手段102に記憶された位置情報に従って版胴1、2を回転制御して最初の水着けローラ跡形成位置p1(図7)へ位置決めする。そして版胴の回転を停止させる。
【0082】
次のステップS4では、前記制御装置18が前記ロック機構40を解除して、水着けローラを印刷版面に当接させる。そして所定時間後、例えば数秒程度経過後、前記ロック機構40によるロックを戻して水着けローラ23を印刷版面から離間させる。これにより印刷版面上に視認可能な水着けローラ跡が形成される。
【0083】
ステップS5では、前記制御装置18が記憶手段102に記憶された位置情報に従って版胴1、2を確認位置pc(図7)へ回転させて停止させる。そして表示手段101などによってオペレータに水着けローラ跡の形成完了を知らせる。
【0084】
次のステップS6〜S7はオペレータの作業になる。まずステップS6では、印刷版面上に形成された水着けローラ跡を確認し、必要によりニップ跡の幅をスケールなどで測定する。
【0085】
この水着けローラ跡が予め設定した幅でなければ、次のステップS7においてオペレータは規制部材50を用いて水着けローラのニップ圧を調整する。例えば前記水着けローラ跡の幅が設定した値よりも大きい場合、ニップ圧が大きいので前記つまみ53を回してネジ部52の先端54の突出量を大きくする。これにより水着けローラ23が印刷版面側へ押圧される量が少なくなるのでニップ圧が小さくなる。逆に水着けローラ跡の幅が小さい場合は、前記突出量を小さくする。
【0086】
この調整については、水着けローラ23の左右両側で行なうため、ニップ圧の左右に相違がある場合についても調整することができる。そしてオペレータが調整を完了すれば、前記入力手段100から作業の続行をするかどうかを入力して指示する。
【0087】
ステップS8では、制御装置18が作業の続行が指示されたかどうかを判断する。例えば、前記ステップS6で確認した水着けローラ跡が設定範囲であって、ステップS7でのニップ圧調整が必要なかった場合、作業を続行せず本フローを終了する。何らかのニップ圧調整を行って再度水着けローラ跡を確認する必要がある場合には、作業の続行が指示されてステップS1へ戻る。
【0088】
ステップS1では再度インキ着けが必要かどうかを判断する。ここで前記水着けローラ跡の形成が1回だけであれば、まだ印刷版面上に水着けローラ跡を形成する位置がp2〜pnまで残っているので、新たなインキ着けは発生しない。この場合、ステップS3以降で使用される水着けローラ跡形成位置としては、次の水着けローラ跡形成位置p2に係る位置情報を読み出して使用する。以後、順次水着けローラ跡形成位置はp3、p4・・・pnが順番に使用される。
【0089】
水着けローラ跡の形成が繰り返し行われて、ステップS1で水着けローラ跡形成数が予め設定したnに達すれば、次に使用できる水着けローラ跡形成位置が残っていないため、ステップS2に進んで新たなインキ着け作業が行われる.この場合が、使用する水着けローラ跡形成位置は最初の位置p1にリセットされる。
【0090】
上記印刷装置では、水着けローラ跡の形成を容易に行え、特に複数設定された水着けローラ跡形成位置p1〜pnに対し順次繰り返し行えるため、調整を繰り返す場合に効果が大きい。また各水着けローラ跡形成位置が正確に確認位置へ位置決めされるため複数の水着けローラ跡を形成した場合でも混同してしまうという問題がない。
【0091】
[インキ着けローラのニップ圧調整]
【0092】
次にインキ着けローラのニップ圧確認・調整手順について図9のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートのステップS11〜S16は、図8のフローチャートのステップS3〜S8と実質的に同一であり、水着けローラ23に替えてインキ着けローラ63a〜63cをエアーシリンダー91の動作に従って印刷版面に当接させるものである。
【0093】
なお前記水着けローラ23の場合は、水着けローラ跡を視認できるように前記ステップS1、S2で予めインキ着け作業を行っているが、インキ着けローラの場合はそのまま視認することができる。従ってこのフローではステップS1〜S2に相当する工程を設けていないが、インキ着けローラ跡を形成する回数が予め設定した位置数よりも多くなる場合は、前記ステップS2と同様に印刷版面に対し均一なインキ着けを行って、印刷版面上のインキ着けローラ跡を消すようにしても良い。
【0094】
このインキ着けローラのニップ圧調整においても、インキ着けローラ跡の形成を容易に行え、特に複数設定されたインキ着けローラ跡形成位置に対し順次繰り返し行えるため、調整を繰り返す場合に効果が大きい。特に形成した複数のインキ着けローラ跡を混同してしまうという問題が発生しない。
【0095】
[第2の実施の形態]
【0096】
前記ニップ圧調整手順では、ステップS6、S7およびステップS14、S15においてオペレータの作業が介在している。これらをさらに自動化するために以下の構成を採用してもよい。
(1)前記水着けローラ跡(またはインキ着けローラ跡)を撮像手段で撮像し、得られた画像データを画像処理することで前記水着けローラ跡(またはインキ着けローラ跡)の幅サイズを計測するようにしてもよい。例えば図10は前記印刷装置に印刷版表面に形成された水着けローラ跡(またはインキ着けローラ跡)を撮像するためのCCD撮像手段300を2組設けた図である。このCCD撮像手段300としては、版胴1、2の近傍において印刷版の幅方向に沿って配置したラインセンサーであって、版胴1、2の回転に従って順次印刷版面上の所望の範囲を走査して撮像可能としている。この撮像した画像データはそのまま表示手段101に表示してもよいが、制御装置18により画像処理して前記水着けローラ跡(またはインキ着けローラ跡)の幅サイズを計測するのが好ましい。
【0097】
この構成であればオペレータが水着けローラ跡(またはインキ着けローラ跡)を目視で確認しにくい場合、例えば外部から十分観察できない位置に版胴1、2がある場合などにも対応することができる。
(2)前記規制部材50、92の調整はオペレータが手動により行っているが、モータなどを介して自動調整するようにしてもよい。例えば図11に示すように前記規制部材50(92)のネジ部52にギア301を設け、このギア301に螺合するギア302をモータ303により回転駆動させるように構成する。そして前記モータ303を制御装置18により駆動制御する。これによれば前記規制部材50、92がオペレータの手が届きにくい装置の奥側にある場合でも遠隔的に操作することができる。なお、ニップ厚調整方法としては、各ローラを押圧するバネ圧などを調整するようにしてもよい。
(3)上述した第2の実施の形態(1)および(2)を同時に採用してもよい。すなわちCCD撮像手段300により撮像した撮像データから前記制御装置18が水着けローラ跡(またはインキ着けローラ跡)の幅サイズを計測する。この計測した幅サイズに基づいて、制御装置18が前記モータ303を駆動させてニップ圧の調整を行うようにしてもよい。これによればオペレータが全く介在せずにニップ圧の調整作業を完了することができる。
【0098】
[その他の実施の形態]
(4)上述した実施の形態では、水着けローラ跡を形成するために水着けローラ23を印刷版面に対して昇降させるカムフォロアー31の動作を禁止または禁止解除するロック機構40を備えているが、水着けローラ23を選択的に印刷版面に接離させることができれば、これに限定されない。例えば図4、5に示すインキ供給手段9のエアーシリンダー91と同様な構成を採用して、湿し水供給手段8そのものをエアーシリンダーなどの駆動手段によって印刷版面に対して昇降させるようにしてもよい。
【0099】
上記とは逆に、上述した実施の形態ではインキ着けローラ跡を形成するためにインキ供給手段9をエアーシリンダー91によって印刷版面に対して昇降させるようにしているが、インキ着けローラ63a〜63cを選択的に印刷版面に接離させることができれば、これに限定されない。例えば前記湿し水供給手段8におけるロック機構40と同様な構成を採用して、インキ着けローラ63a〜63cを昇降動作させるカムフォロアー80、88の動作を禁止または禁止解除するためのロック機構を備えるようにしてもよい。
(5)上述した実施の形態では、水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)に版胴を回転させて停止した後、水着けローラ(またはインキ着けローラ)を昇降させるようにしているが、次の手順でも代替できる。まず水着けローラ(またはインキ着けローラ)を当接させた状態で版胴を回転させて、前記水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)に版胴を停止させる。若干の停止時間、例えば数秒の停止後、水着けローラ(またはインキ着けローラ)を離間させる。この手順でもニップ圧を確認するための水着けローラ跡(またはインキ着けローラ跡)を形成することができる。
【0100】
【発明の効果】
請求項1、請求項3および請求項4に係る発明では、水着けローラ跡(もしくはインキ着けローラ跡)を順次自動的に形成することができ、水着けローラ(もしくはインキ着けローラ)のニップ圧を確認することが容易に行える。
【0101】
また、水着けローラ跡(もしくはインキ着けローラ跡)を順次繰り返して異なる位置に形成することが可能であり、複数の水着けローラ跡(もしくはインキ着けローラ跡)を混同することがない。
【0102】
さらに請求項2および請求項5に係る発明では、水着けローラ(もしくはインキ着けローラ)のニップ圧の確認および調整をオペレータを介さずに自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る印刷装置の一例を示す概要図である。
【図2】 湿し水供給手段の一例を示す概要図であり、水着けローラが印刷版面から離間した状態を表す。
【図3】 湿し水供給手段の一例を示す概要図であり、水着けローラが印刷版面に当接した状態を示す。
【図4】 インキ供給手段の一例を示す概要図であり、インキ着けローラが印刷版面に当接した状態を表す。
【図5】 インキ供給手段の一例を示す概要図であり、インキ着けローラが印刷版面から離間した状態を表す。
【図6】 印刷装置の制御ブロック図である。
【図7】 水着けローラ跡形成位置(またはインキ着けローラ跡形成位置)と確認位置とを説明するための模式図である。
【図8】 水着けローラのニップ圧確認・調整手順を示すフローチャートである。
【図9】 インキ着けローラのニップ圧確認・調整手順を示すフローチャートである。
【図10】 水着けローラ跡(またはインキ着けローラ跡)を撮像するCCD撮像手段を備えた印刷装置の例を示す概要図である。
【図11】 ニップ圧を調整するための規制部材をモータ駆動する例を示す概要図である。
【符号の説明】
1 第1の版胴
2 第2の版胴
8 湿し水供給手段
9 インキ供給手段
18 制御装置
23 水着けローラ
31 カムフォロアー
40 ロック機構
41 ソレノイド
50 規制部材
63a〜63c インキ着けローラ
80、88 カムフォロアー
91 エアーシリンダー
92 規制部材
102 記憶手段
200 モータ
201 電磁弁
Claims (5)
- 版胴を回転駆動する版胴回転駆動手段と、前記版胴に対し当接して湿し水を供給する水着けローラと、前記水着けローラを選択的に版胴面に対し当接または離間させる水着けローラ昇降手段と、を備えた印刷装置において、
前記版胴面上に予めインキ膜を形成するためのインキ供給手段と、
予め設定された複数の水着けローラ跡形成位置と、水着けローラ跡を確認するための確認位置とを記憶する記憶手段と、
前記版胴回転駆動手段を制御して、インキ供給された版胴を前記複数の水着けローラ跡形成位置へ位置決めして停止させる版胴位置制御手段と、
前記水着けローラ昇降手段を制御して、前記水着けローラ跡形成位置に停止した版胴に対し一定時間前記水着けローラを当接させてから離間させる水着けローラ当接制御手段とからなり、
前記版胴を予め設定した複数の水着けローラ跡形成位置に位置決めして水着けローラ跡の形成を繰り返すとともに、水着けローラ跡の形成後に、前記複数の水着けローラ跡形成位置が前記確認位置となるように前記版胴を回転移動させる水着けローラ跡形成装置を備えることを特徴とする印刷装置。 - 前記版胴上を撮像して水着けローラ跡の画像データを得る撮像手段と、
前記画像データから水着けローラ跡のサイズを測定する測定手段と、
前記測定結果に基づいて前記水着けローラのニップ圧を調整するニップ圧調整手段と、をさらに備える請求項1に記載の印刷装置。 - 前記水着けローラ位置として予め設定した数を使用して次に使用しうる水着けローラ跡形成位置が残っていない場合には、前記版胴面上に再度インキ膜を形成するとともに、前記水着けローラ跡形成位置をリセットする請求項1に記載の印刷装置。
- 版胴を回転駆動する版胴回転駆動手段と、前記版胴に対し当接してインキを供給するインキ着けローラと、前記インキ着けローラを選択的に版胴面に対し当接または離間させるインキ着けローラ昇降手段と、を備えた印刷装置において、
予め設定された複数のインキ着けローラ跡形成位置と、インキ着けローラ跡を確認するための確認位置とを記憶する記憶手段と、
前記版胴回転駆動手段を制御して、前記版胴を前記複数のインキ着けローラ跡形成位置へ位置決めして停止させる版胴位置制御手段と、
前記インキ着けローラ昇降手段を制御して、前記複数のインキ着けローラ跡形成位置に停止した版胴に対し一定時間前記インキ着けローラを当接させてから離間させるインキ着けローラ当接制御手段とからなり、
前記版胴を予め設定したインキ着けローラ跡形成位置に位置決めしてインキ着けローラ跡の形成を繰り返すとともに、インキ着けローラ跡の形成後に、前記複数のインキ着けローラ跡形成位置が前記確認位置となるように前記版胴を回転させるインキ着けローラ跡形成装置を備えることを特徴とする印刷装置。 - 前記版胴上を撮像してインキ着けローラ跡の画像データを得る撮像手段と、
前記画像データからインキ着けローラ跡のサイズを測定する測定手段と、
前記測定結果に基づいて前記インキ着けローラのニップ圧を調整するニップ圧調整手段と、をさらに備える請求項4に記載の印刷装置。
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