JP3712320B2 - 可変文書作成システム、可変文書出力装置及び可変原稿作成装置 - Google Patents

可変文書作成システム、可変文書出力装置及び可変原稿作成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、出版物等の文書を作成するためのシステムに関し、特に様々な制約条件に応じた文書を作成・組版するためのシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
出版の現場においては、異なる出版物に似た内容の記事が掲載される場合がある。旅行ガイド誌を例にとれば、東北地方のガイド誌と宮城県のガイド誌を並行して出版する場合があり、著名な観光名所、例えば松島などは、案内記事が両方に掲載されることも多い。このような場合、各出版物に全く同じ記事を使えればよいが、実際には文章量(文字数)の制約や文章のスタイル(です調、である調などの表現形式)は各出版物ごとに異なるのが一般的であり、全く同じ記事を使える場合はほとんどない。したがって、従来は、似た内容の記事でも、各出版物ごとに別々に原稿を作成することが一般的であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、消費者の嗜好の多様化等に伴い、出版物の多様化、細分化が進んでいる。このような状況下で、似た内容の記事をその都度作成することの非効率が指摘され、記事・文書の再利用の必要性が叫ばれている。文書の再利用については文書データベースの構築例が多数あるが、出版物への再利用という観点から見た場合、データベースから適切な内容の文書が検索できたとしても、適用する出版物の制約条件に合わせてその文書を手直ししなければならないことが多い。このような手直しは労力を要する作業であり、出版物の編集過程でも無視できない時間を要していた。また、そもそも検索した文書を出版側(編集者側)で勝手に手直しできない場合もあり、このような場合には似た内容の文書を別に新たに作成する必要があった。
【0004】
以上では、文書の再利用の観点から従来の問題点を指摘したが、これに限らず、1つの出版物を作成する場面の中でも同様の問題は生じうる。例えば、1つの出版物を作成する際に、編集・レイアウトの段階で原稿の文章量が多すぎたり少なすぎたりすることが判明することがある。この場合、原稿を書いたのが外部のライターである場合、編集・組版側で勝手に原稿内容を追加又は削除して文章量を調整することは一般に不可能である。文章量を調整するには、ライターに了解を得るなどの作業が必要となり、時間や労力がかかるという問題があった。
【0005】
近年、各種デスクトップ・パブリッシングシステムの普及により、編集・組版処理についての一定の業務効率の改善がなされつつあるが、このようなシステムはスタイルの設定・変更を支援することを主目的としており、前述のような文書(テキスト)自体の変更を伴う編集・組版作業を効率化するという観点から開発されたシステムは未だかつてない。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、その目的は、編集・組版の制約条件に応じてテキスト自体を変更可能とするための仕組みを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、操作者から文書中の可変箇所の指定を受け付けてその可変箇所を特定する可変箇所情報を生成する可変箇所指定手段と、前記可変箇所指定手段で指定された可変箇所に対し当てはめ可能な候補文字列を設定する候補設定手段と、前記可変箇所情報と可変箇所に対応する候補文字列の情報とを前記文書のデータに反映させることにより可変原稿データを作成する原稿データ作成手段と、を有し、前記候補設定手段は、異なる可変箇所における候補文字列同士の選択を連動して行わしめる連動識別子を前記候補文字列に対して指定する手段を有し、前記データ原稿作成手段は、前記候補文字列に対して指定された前記連動識別子を当該候補文字列と対応づけて前記可変原稿データ中に記述する手段を有すること、を特徴とする可変原稿作成装置と、前記可変原稿作成装置で作成された可変原稿データを入力する入力手段と、入力された前記可変原稿データに含まれる前記可変箇所情報に基づき文書中の可変箇所を特定する可変箇所特定手段と、前記可変箇所特定手段で特定された可変箇所に、対応する候補文字列の中から1つを選択して当てはめることにより出力文書を作成する出力文書作成手段と、を有し、前記可変原稿データは複数の可変箇所についての前記候補文字列に対して前記連動識別子の指定を含むことことができ、前記出力文書作成手段は、文書中の各可変箇所において前記連動識別子の等しい候補文字列を同時に選択して当該可変箇所に当てはめること、を特徴とする可変文書出力装置と、を有するシステムを提供する。
【0008】
可変原稿作成装置は、操作者(原稿作成者)の入力に基づき可変原稿データを作成する。可変原稿データは、文書の文書データ(典型的にはテキストデータ。組版スタイルの情報を含む場合もある。)に加え、その文書中の可変箇所を特定する可変箇所情報と、可変箇所に当てはめ可能な候補文字列との情報を含む。候補文字列は、可変箇所が複数有る場合、各可変箇所ごとに個別に設定可能であり、可変原稿データには、各可変箇所情報と候補文字列の情報とが対応づけ可能な状態で記述されている。可変文書出力装置は、この可変原稿データを元に、様々なバリエーションの出力文書を作成する。すなわち、各可変箇所において各々どの候補文字列を選択するかにより、様々な出力文書を作成することができる。可変原稿作成装置にて異なる可変箇所における候補文字列に対して連動識別子を設定可能とし、前記候補文字列に対して指定された前記連動識別子を当該候補文字列と対応づけて前記可変原稿データ中に記述する。可変文書出力装置は、各可変箇所における候補文字列の選択の際に、連動識別子が等しい候補文字列を連動して同時に選択する。
【0009】
この構成によれば、原稿作成者自身が予めその原稿が利用される様々な場合を想定して可変箇所及び候補文字列を設定しておけば、その想定範囲内で文書の内容や文体などを様々に変化させることができ、文書の再利用可能性が増す。また、可変箇所に対して長さの異なる候補文字列群を設定しておけば、候補文字列の選択の仕方により、様々な長さの出力文書を作成することができ、文書の長さを編集・組版時に容易に変更することができる。そして、連動識別子を導入したことにより、異なる可変箇所における候補文字列の選択を連動させることができ、例えば「である」調と「です」調の切り替えなどを一括して行うことができる。
【0010】
本発明の好適な態様では、可変文書出力装置は、可変原稿データに基づき出力文書を作成する際に、可変箇所に対応する各候補文字列をそれぞれ当てはめて生成した複数の候補文書のうち、ユーザから指定された組版領域に収まる最長のものを出力文書として選択する。
【0011】
組版領域とは、出力文書の文字列を組版する領域である。候補文書群の中からその組版領域に収まる最長のものを出力文書として選ぶことにより、ユーザの組版領域の指定意図に適合した出力文書を得ることができる。
【0012】
別の態様では、複数の候補文書うち、ユーザから指定された組版領域に組版した場合の余白の量が最小になるものを出力文書として選択する。
【0013】
余白の量は紙面の見やすさを左右する重要な要素である。可変原稿データを元に作成可能な候補文書群の中から、組版領域に組版したときの余白の量が最小となるものを選択することにより、ユーザの組版領域の指定意図に適合した充実感のある組版結果を得ることができる。
【0014】
また、別の態様では、可変文書出力装置は、複数の候補文書の中から、ユーザから指定された長さに適合するものを出力文書として選択する。この態様によれば、可変原稿データを元に、操作者の所望する長さの出力文書を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る可変文書作成システムの全体構成を説明するための図である。本システムは、図示の如く、原稿を作成するためのワードプロセッサ10と、ワードプロセッサ10で作成された原稿を組版編集して文書を作成する組版編集装置20から構成される。ワードプロセッサ10も組版編集装置20も、汎用のコンピュータに適切なプログラムを実行させることによりソフトウエア的に実現できることは言うまでもない。
【0018】
まず、ワードプロセッサ10の構成及び動作について説明する。ワードプロセッサ10は、通常の文書編集機能を有しているだけでなく、様々なバリエーションを有する文書の元となる可変原稿データを作成するための可変原稿作成ツール12を備えている。可変原稿データは、一般の文書データ(すなわち、テキストデータや、テキスト情報に組版スタイル情報を付加したワードプロセッサ独自のデータ形式のデータ)に、当該文書中で内容の変更が可能な箇所(可変箇所と呼ぶ)を特定するための情報と、可変箇所に当てはめ可能な文字列(候補文字列と呼ぶ)の情報が含まれる。可変箇所を特定するための情報には、例えば、可変箇所の文書中での位置(例えば先頭から何文字目などの形で表現可能)や可変箇所にしたい文字列そのもの、などを用いることができる。1つの文書に複数の可変箇所を設定することが可能であり、それら各可変箇所ごとに、それぞれ個別に複数の候補文字列が設定可能である。
【0019】
可変原稿作成ツール12は、可変箇所指定部14、置換候補設定部16及び原稿データ作成部18を含む。可変箇所指定部14は、操作者(原稿作成者)から、文書中の可変箇所の指定を受け付けるものである。本実施形態では、可変箇所の指定は、予め作成した文書の中で可変箇所としたい文字列を指定することにより行う。置換候補設定部16は、操作者から、可変箇所の文字列に対して置換可能な文字列(「置換候補」と呼ぶ)の設定を受け付けるものである。
【0020】
ここで、候補文字列と置換候補との関係について説明しておく。既述のように候補文字列とは、可変箇所に対して当てはめることが可能な文字列のことである。可変箇所指定部14にて可変箇所に指定された文字列は、後述する組版編集時には、置換候補と置き換えられる可能性がある。すなわち、可変箇所に指定された文字列も置換候補も、可変箇所に当てはめ可能な文字列という点では変わりはない。したがって、可変箇所に指定された文字列も候補文字列であり、これに対して設定された置換候補も候補文字列である。なお、この意味からすれば、可変箇所指定部14は、可変箇所の指定を受けてその指定情報を獲得すると同時に、最初の候補文字列の情報を取り込む処理を行っていると捉えることができる。
【0021】
図2は、可変原稿作成ツール12によって生成されるユーザインタフェース画面表示の一例を示す図であり、この図を用いて可変箇所指定部14及び置換候補設定部16の動作を説明する。図2は、ワードプロセッサ10に付属する表示装置の画面100上に、周知のウインドウシステムを利用して形成されたユーザインタフェース表示を示している。文書編集ウインドウ110は、ワードプロセッサ10における文書編集用の基本的なユーザインタフェース表示であり、作成・編集中の文書の内容が表示される。文書編集ウインドウ110のツールバー112には、可変原稿作成ツール12を起動するためのボタン114が表示されている。なお、ツールバー112には、この他にも文書編集のための様々な機能に対応づけられたボタンが設けられるが、本実施形態には直接関係しないので省略する。
【0022】
可変箇所の指定は、この文書編集ウインドウ110上で行う。すなわち、まず操作者は、マウス等のポインティングデバイスで可変箇所にしたい文字列を選択(例えばマウスボタンを押下したままドラッグするなどの操作で選択可能)する。選択された文字列は、例えば文字列116(『への対応』)のごとく反転表示される。この状態で、ボタン114をマウス等でクリックすると、可変原稿作成ツール12が起動される。可変原稿作成ツール12において、可変箇所指定部14は、反転表示された文字列116を可変箇所の文字列と認識し、その可変箇所を記憶する。その後、置換候補設定部16が置換候補設定ウインドウ120をオープンする。操作者は、このウインドウ120をアクティブ状態とし、キーボード等を利用して置換候補となる文字列を入力する。入力された置換候補(この例では『に伴う文章量の調整』)は、置換候補入力枠122に表示される。所望の置換候補の入力後、操作者がマウス等でOKボタン124をクリックすると、置換候補設定部16は、置換候補入力枠122に表示された文字列を置換候補として取り込む。なお、キャンセルボタン126がクリックされると、置換候補を取り込むことなく可変原稿作成ツール12が終了する。
【0023】
このようにして可変箇所及び置換候補が指定されると、原稿データ作成部18は、現在編集中の文書の文書データに、それら可変箇所と置換候補の情報を反映させることにより、可変原稿データを作成する。
【0024】
図3は、文書データへの可変箇所および置換候補の情報の反映の仕方の一例を示している。この例は、図2の画面表示例に対応したものであり、繁雑さを避けるため、文書データがテキストデータ形式である場合の例を示している。この例では、可変箇所に関する情報を、タグとして文書データに挿入している。タグは、予め規定した形式で記述される。ここでは、SGML(Standard Generalized Markup Language)やHTML(HyperText Markup Language)と同様の、不等号<>で囲んだ部分をタグとする。図3の例では、可変箇所開始タグ130(<T alt=・・・>)と可変箇所終了タグ132(</T>)とで挟まれた文字列『への対応』が、可変箇所の文字列を表す。すなわち、開始タグ130と終了タグ132との1組で可変箇所を特定することができる。この可変箇所に対して設定された置換候補『に伴う文章量の調整』は、可変箇所開始タグ130内に、置換候補を表す書式『alt=“・・・”』(・・・は置換候補の文字列)で記述される。
【0025】
図4は、文書データへの可変箇所および置換候補の情報の反映の仕方の別の例を示した図である。この例では、1つの可変箇所に関する情報が1つの可変箇所タグ140により示されている。詳しくは、文書中での可変箇所タグ140の位置が可変箇所の位置を示しており、その可変箇所に当てはめ可能な各候補文字列が可変箇所タグ140内に『cnd=“・・・”』(・・・は候補文字列)の形式で記述されている。すなわち、可変箇所の文字列『への対応』と置換候補『に伴う文章量の調整』とが、共に候補文字列としてタグ140内に列挙される。
【0026】
このようにして、文書データに対して可変箇所の情報を反映させたものが、本実施形態で言う可変原稿データである。可変箇所が複数設定された場合は、各可変箇所ごとに図3あるいは図4のような記述が行われる。
【0027】
本実施形態では、1つの可変箇所に2以上の置換候補を設定することも可能である。この場合、可変原稿データでは、タグ内に複数の置換候補を列挙して記述する。図5は、可変箇所の文字列『aaaa』に対し、2つの置換候補『bb』及び『dddddd』が設定された場合の2つの記述例を示している。(a)は図3の記述形式を採用した場合の記述例であり、(b)は図4の記述形式を採用した場合の記述例である。
【0028】
なお、可変箇所の情報の記述形式は、上述のようなタグ形式に限られるものではない。例えば、可変箇所の位置と候補文字列群とをテーブル形式で記述し、文書データに付加してもよい。この場合、文書データとテーブルのペアが可変原稿データとなる。
【0029】
以上、可変原稿作成ツール12を用いた可変原稿データ作成作業の手順について説明した。この作成作業において、候補文字列として様々な長さの文字列を設定しておくと、1つの可変原稿データから長さ(文章量)が様々に異なる文書群を作成することができる。
【0030】
次に、再び図1を参照し、本実施形態の組版編集装置20の構成及び動作について説明する。
【0031】
組版編集装置20は、通常の組版編集機能に加え、可変箇所の情報を含んだ可変原稿データを処理して様々なバリエーションの出力文書を組版する機能を有する。可変原稿データは、フロッピーディスクなどの可搬型の記録媒体に記録された形で、あるいはネットワーク通信により組版編集装置20に入力される。このような可変原稿データを組版編集装置20内に取り込むのが原稿入力部22である。原稿入力部22の具体例としては、例えばフロッピーディスクドライブなどのディスク読取り装置や、ネットワーク通信装置が挙げられる。
【0032】
なお、組版編集装置20に入力される可変原稿データには、前述のワードプロセッサ10の可変原稿作成ツール12により作成されたものの場合もあれば、その他の方法により作成されたものの場合もある。後者の方法の例としては、原稿作成者が紙の原稿の上に可変箇所や置換候補を書き込み、それを専門のデータ入力作業者が人手で図3又は図4のようなデータで入力するという方法がある。
【0033】
可変箇所検出部24は、入力された可変原稿データから、可変箇所の情報を検出する。すなわち、可変箇所検出部24は、可変原稿データを字句解析することにより、可変箇所の情報を記述したタグ(可変箇所開始タグ及び可変箇所終了タグ、又は可変箇所タグ)を検出して文書中の可変箇所を特定し、さらにタグ内の記述を解析して候補文字列の情報を取得する。
【0034】
可変文書組版部26は、可変箇所検出部24で検出されたこれら可変箇所の情報に基づき、操作者(組版編集作業者)の希望する文書を組版する。可変文書組版部26の基本動作は、文書中の各可変箇所ごとにそれぞれ1つずつ候補文字列を選択して当てはめることにより1つの出力文書を作成し、この出力文書に組版スタイルを割り当てて組版することである。組版スタイルは、可変原稿データに組み込まれている場合もあれば、組版編集装置20が備えるスタイル設定機能(不図示)を利用して操作者から入力される場合もある。
【0035】
可変原稿データから生成可能な出力文書は、その可変原稿データに設定された各可変箇所での候補文字列の選び方の組合せの数だけある。各可変箇所でそれぞれ1つずつ候補文字列を選択し当てはめて作成した文書を、出力文書の候補となる文書という意味で、候補文書と呼ぶ。これら候補文書のうち指定条件に合うものが1つ選択され出力文書となる。可変文書組版部26は、候補文書のなかから操作者の要望に最も合うものを出力文書として選択する。
【0036】
操作者は、候補文書の選択基準を、2種類の方法で指定することができる。一つは文書の長さを指定するという方法であり、もう一つは文書の文字列を組版する組版領域を指定するという方法である。
【0037】
前者(長さを指定)の方法では、文書の絶対的あるいは相対的な長さを指定する。絶対的な長さとしては、文字数の他に、文書を折り返し(改行)のない1行の状態に組版したときの行長などが考えられる。操作者が絶対的な長さを指定した場合、可変文書組版部26は、その長さに最も近い候補文書を出力文書として選択する。一方、相対的な長さとは、候補文書の中での長さの順位であり、例えば仮に選択された候補文書を基準にして「もっと長く(短く)」というような指定の仕方が可能である。
【0038】
後者の組版領域を指定する方法では、組版領域の大きさや形状、ページ数などの情報を指定する。この場合、可変文書組版部26は、指定された組版領域に組版した場合に最も適切なものを出力文書として選択する。
【0039】
何をもって適切な組版結果というかについては様々な基準が考えられるが、その一つとして、組版領域に収まる最長のものを最も適切なものとするという基準がある。例えばパンフレットなどのデザイン性の強い文書では、ページ全体のデザインの観点から文字を組版する領域が決められる。したがって、この組版領域からはみ出すような候補文書が不適格なのはもちろんのこと、組版領域に広い空きができるような候補文書もデザインの観点から見て適切ではない。組版領域にぴったり当てはまるような文書がデザイナーの意図に最も適合するものといえる。組版領域に収まる最長の候補文書は、この観点からみて適切なものと言える。
【0040】
組版結果の適切さの別の基準としては、組版した場合の余白の量が最も少ない候補文書を最も適切なものとするという基準がある。この基準は、組版領域が複数のセクションに分かれる場合(複数のページにわたる組版領域がその典型である)に有用な基準である。このような組版領域に文字を組版すると、組版条件によっては各セクション(例えばページ)の末尾に余白ができる場合がある。例えば章や節が改まるごとに改ページを行う場合などである。可変原稿データからできる各候補文書を例えば複数ページにわたる組版領域に対して組版した場合、候補文書ごとに改ページの位置が異なってくるため、各ページの余白の量も候補文書ごとに異なってくる。例えば図6(a)、(b)に示すような2段組の文書でも、各ページにおける余白の量は候補文書ごとに異なる。このような各ページの余白の総和が最も小さくなるような候補文書を最適とするのがこの基準である。ページ末尾の余白が少ないほど紙面に充実感が感じられ、好印象の組版を行うことができる。もちろん、ページ単位以外でも、組版領域が不連続な複数のセクションに分かれている場合は、ページの場合と同様各セクションごとに余白ができる可能性があるので、同じ基準を用いることができる。
【0041】
図7は可変文書組版部26の詳細構成を示す機能ブロック図である。図7において、候補文書作成・記憶部30は、可変箇所検出部24から受け取った可変原稿データ及び可変箇所の情報に基づき、その可変原稿データから作成可能なすべての候補文書を作成し、記憶する。候補文書は、可変原稿データにおける可変箇所以外の部分はそのまま利用し、可変箇所については、その可変箇所に設定された候補文字列の中から一つを選択して当てはめることにより構成できる。この作業を、各可変箇所での候補文字列の選択の仕方の全組合せについて行うことにより、可変原稿データから作成可能なすべての候補文書ができる。候補文書は、可変箇所を示すタグを含まない。可変原稿データが文字サイズや字間の大きさなどの組版スタイルの情報を含んでいる場合、あるいは組版編集装置20の組版スタイル指定機能により文書に組版スタイルが付加された場合には、候補文書は組版スタイルの情報を含んでもよい。候補文書作成・記憶部30は、それら作成された候補文書群を長さの順にソートした上で記憶する。ここでいう長さは、候補文書の文字数でも良いし、候補文書を折り返しのない1行に組版したときの長さ(例えばmm単位)でもよい。
【0042】
図8は、可変原稿データとこの可変原稿データから作成される候補文書群の一例を示している。図8において、(a)及び(b)は可変原稿データであり、同じ内容をそれぞれ異なる形式で表している。可変原稿データ(a)及び(b)では、可変箇所が2つあり、それぞれ2つの候補文字列が設定されている。(c)は、可変原稿データ(a)又は(b)から作成可能なすべて(4つ)の候補文書(1)〜(4)を長さの順(降順)に列挙したものである。この例は、候補文書が組版スタイルを含まない場合を示している。
【0043】
出力文書選択部36は、候補文書作成・記憶部30で作成された各候補文書の中から、操作者(編集者等)の意図に適合したものを選択し、出力文書として出力する。候補文書の選択基準の指定方式として、本実施形態では前述のように文書長さ指定と組版領域指定の2つの方式を提供している。
【0044】
長さ指定の方式では、操作者からの指定は長さ指定部34から受け付けられる。この長さの指定には、絶対的な指定と相対的な指定の2種類が可能である。絶対的な指定の場合、操作者は欲しい文書の文字数など、文書の絶対的な長さの値を指定する。長さ指定部34は、その指定値を取得し、出力文書選択部36に知らせる。出力文書選択部36は、候補文書作成・記憶部30に記憶された各候補文書のうちから、指定された長さに適合するもの(例えばその長さの中に収まる最長のものやその長さに最も近いものなど)を選択し、出力文書として出力する。候補文書作成・記憶部30内の候補文書群は長さ順にソートされているので、指定された長さに適合するものを容易にサーチすることができる。
【0045】
一方、相対的な長さ指定の方式では、例えばウインドウシステムを利用した構成では、図9に示すような組版編集画面200に相対長さ指定用のボタン202及び204を設け、これらボタン202及び204により、候補文書の選択を可能とする。ボタン202は、現在表示されている候補文書より1段階短い候補文書を指定するためのボタンであり、ボタン204はその逆に現在の候補文書より1段階長い候補文書を指定するためのボタンである。例えば、文書表示部206にある候補文書が表示されているときに、マウス等でボタン202(「もっと短く」)をクリックすれば、その候補文書より1段階短い候補文書が候補文書作成・記憶部30から読み出され、文書表示部206に表示される。候補文書作成・記憶部30に記憶された候補文書群は、前述したように長さ順にソートされているので、1段階短い文書、1段階長い文書を見つけることは極めて容易である。操作者は、ボタン202及び204を用いて候補文書を順次入れ替え、所望の長さの候補文書を探す。このようにして操作者が最終的に選択した候補文書が出力文書となる。また、この他に、選択すべき候補文書の長さをスライダーバー208により指定することも可能である。この場合も、候補文書群は長さ順にソートされているので、指定された長さの候補文書を容易に取り出すことができる。
【0046】
組版領域指定による候補文書の選択では、領域指定部32によって取得された操作者からの組版領域についての指定に基づき処理が行われる。領域指定部32は、組版領域の形状やサイズなどの定義情報を指定するためのユーザインタフェース画面を生成し、そのユーザインタフェース画面を介して操作者から指定された組版領域の定義情報を取り込む。なお、組版編集装置は一般にこのような組版領域定義のための機構を持っていることが多いので、その機構から組版領域の定義情報を取り込むようにしても良い。出力文書選択部36は、このようにして取り込まれた組版領域の定義情報を受け取る。そして、出力文書選択部36は、候補文書作成・記憶部30に記憶されている各候補文書を、その定義情報により定められる組版領域に流し込んでそれぞれ組版し、組版結果が組版領域に対して最も適合する候補文書(すなわち組版領域に収まる最長のもの、あるいは余白の総量が最小のもの、など)を出力文書として選択する。なお、ここでは、組版といっても最終的な組版出力を作成する際と同等の処理を行う必要はなく、行分割(改行)処理や禁則処理など、組版領域に流し込んだ場合の候補文書の長さや余白が特定できるところまでの処理でよい。また、候補文書作成・記憶部30内の候補文書群は長さ順にソートされているので、すべての候補文書について上記のような組版を行う必要はなく、組版領域のサイズとの関係で対象とする候補文書を予め絞り込むことも可能である。
【0047】
このように出力文書選択部36で選択された出力文書に対し、組版編集装置20の有する一般的な組版支援機能を利用して、操作者が組版スタイルその他の組版条件を設定あるいは変更することは、もちろん可能である。この結果、操作者(組版編集者)の意図に適合した出力文書を組版することができる。
【0048】
なお、以上の例では、候補文書作成・記憶部30で各候補文書そのものを作成・記憶したが、この代わりに各可変箇所における候補文字列の選択結果の配列情報を作成・記憶するような変形例も可能である。ここでいう配列情報は、例えば、各可変箇所で選択された候補文字列を、文書の先頭の可変箇所のものから順に並べたものである。配列情報と候補文書とは1対1に対応する。1つの配列情報を可変原稿データの可変箇所以外の文書データと組み合わせれば、1つの候補文書の文書データができる。候補文書作成・記憶部30は、この配列情報を、各可変箇所における候補文字列の選択の仕方のすべての組合せについて作成する。候補文書を長さ順にソートする点に関しては、この変形例では、配列情報を長さ順にソートすればよい。ここでいう配列情報の「長さ」は、その配列情報の各候補文字列の文字数の和でもよいし、それら各候補文字列を組版したときの長さの和でもよい。各候補文書は、可変箇所以外の部分は共通しているので、配列情報の長さの順序は、対応する候補文書の長さの順序を表している。出力文書選択部36は、候補文書作成・記憶部30の各配列情報を可変原稿データと組み合わせることにより候補文書を作成した上で、操作者の指定に最も適合する候補文書を出力文書に選択する。この変形例によれば、候補文書作成・記憶部30の処理を簡易にすることができると共に、記憶容量を節約することができる。
【0049】
以上に示した例では、可変箇所に設定される候補文字列は各々対等であり、各可変箇所における候補文字列の選択は、他の可変箇所での選択結果とは独立に行っていた。ところが、実際の文書では、複数の可変箇所における候補文字列の選択を連動させたい場合がある。例えば「である」調、「です」調、体言止めなどの文末表現を統一させる場合がその一例である。各種文末表現に対応可能な可変原稿データは、各文の末尾を可変箇所に指定し、それぞれに「である」調、「です」調、体言止めなどの文末表現を候補文字列として設定すれば作成できる。この可変原稿データから出力文書を作成する場合、例えばある可変箇所で「である」調の候補文字列を選択したら他の可変箇所でも「である」調を選択するなどのように、各可変箇所における候補文字列の選択を連動させることにより、文末表現を統一することができる。以下では、本実施形態のシステムにおいて、このような候補文字列の連動選択を実現するための仕組みについて説明する。
【0050】
本実施形態では、候補文字列に対して連動識別子を付与可能とする。そして、組版編集時に、各可変箇所において、同一の連動識別子を有する候補文字列は連動して同時に選択するようにする。
【0051】
図10は、連動識別子を含んだ可変原稿データ(a)と、その可変原稿データから作成可能な文書群(b)の具体例を示す。可変原稿データにおいて、連動識別子の情報は、可変箇所を示すタグの中に記述される。より詳しくは、タグ内の『class=“・・・”』(・・・が連動識別子の値)の形式の記述により、その直後に記述された候補文字列(置換候補『alt=“・・・”』)に対して付与された連動識別子が示される。(a)に示す可変原稿データでは、2カ所の文末の文字列『です』が可変箇所に指定され、それら可変箇所にそれぞれ2つの候補文字列『である』及び『NULL』が設定されている。『NULL』は、空文字列(すなわち文字無し)を表す予約語である。そして、各可変箇所において、候補文字列『である』には連動識別子1が付与され、候補文字列『NULL』には連動識別子2が付与されている。この可変原稿データから出力文書を作成する場合、例えば一方の可変箇所で候補文字列『である』を選択した場合、もう一方の可変箇所では、これと連動して同じ連動識別子を有する候補文字列『である』が選択される。したがって、(a)の可変原稿データからは、(b)に示す3種類の出力文書(繁雑さを避けるため、組版スタイルを除いた形で示す)が作成可能である。
【0052】
このように、連動識別子の記述を導入することにより、複数の可変箇所での候補文字列の選択を連動させることができる。
【0053】
仮にこの連動識別子を用いないで図10(b)に示す3種類の出力文書を導出可能な可変原稿データを記述しようとすると、図10(a)の『容易です』から『可能です』までのすべての部分を可変箇所にする必要があり、その結果候補文字列が長くなって原稿作成の手間が増え、データ量も増大する。これに対し、連動識別子を導入すれば、そのような手間は軽減され、データ量の増大も防止できる。
【0054】
なお、図10(a)の記述形式例では、置換候補に対する連動識別子を記述することはできるが、可変箇所に指定された文字列(この例では文字列『です』のこと。これも候補文字列である。)についての連動識別子を明示的に記述することができない。もし可変箇所に指定された候補文字列に対しても連動識別子を記述したい場合は、図4に示した記述形式を利用すればよい。すなわち、図4の記述形式において、各候補文字列『cnd=“・・・”』に対応づけて連動識別子の指定『class=“・・・”』を記述すればよい。
【0055】
連動識別子の設定は、原稿作成者が行う。連動識別子の設定作業を支援する機能を前述の可変原稿作成ツール12(図1参照)に組み込むことにより、この設定作業を容易にすることができる。この場合、可変原稿作成ツール12は、ワードプロセッサ10付属の表示装置に連動選択設定用のユーザインタフェース画面を表示する機能と、そのユーザインタフェース画面に対する操作者(原稿作成者)の入力内容に基づき候補文字列に対して連動識別子を設定する機能を有する。連動選択設定用のユーザインタフェース画面の一例を図11に示す。この例は、ユーザインタフェース画面を、ウインドウシステムを利用した連動設定ウインドウ300として構成したものである。
【0056】
この連動設定用ウインドウ300は、例えば図2に示した置換候補設定ウインドウ120に対する置換候補の入力後に自動的にオープンされるようにする。また、置換候補設定ウインドウ120に連動設定ウインドウ300を開くボタンを設けてもよい。これらの場合、開かれた連動設定用ウインドウ300は、置換候補設定ウインドウ120に入力された置換候補に対する連動識別子の設定のために利用される。
【0057】
また、図2に示した文書編集ウインドウ110に連動設定ウインドウ300を開くためのボタンを設けることもできる。この場合、例えば文書編集ウインドウ110内でマウスのドラッグ操作などにより可変箇所の文字列を選択し、そのボタンをクリックすることにより、連動設定ウインドウ300が開かれる。開かれた連動設定ウインドウ300は、文書編集ウインドウ110内で選択された文字列に対する連動識別子の設定のために用いられる。
【0058】
連動設定ウインドウ300には、図11(a)に示すように、候補文字列に対応する連動識別子を入力するためのコンボボックス302が設けられる。キーボード等を利用して、コンボボックス302の記入欄304に連動識別子を入力し、OKボタン308をマウスでクリックすると、可変原稿作成ツール12は、可変原稿データ中に、当該候補文字列に対応づけてその連動識別子を記述する。
【0059】
なお、図10の可変原稿データ記述例では、連動識別子は番号で与えていたが、連動識別子の形式はこれに限らない。操作者に理解しやすいようにするならば、例えば連動選択させる候補文字列(置換候補)の共通概念を表す言葉などのように、操作者にとって意味のある言葉や文などを連動識別子として設定可能とすることが好適である。連動識別子は、当該可変原稿データの中で一意なものであればよい。なお、連動選択させる候補文字列の共通概念としては、前述の『である調』などの表現形式を表す概念や、『若者向』などの内容を表す概念、『長い』『短い』など文章量を表す概念など様々なものが考えられ、特に限定はない。
【0060】
また、操作者は自分の分かり易い言葉で連動識別子を指定し、それを可変原稿作成ツール12がもっとデータ量の小さい内部表現(例えば所定桁数の識別番号)に変換して可変原稿データ中に記述する方法も可能である。この場合、可変原稿作成ツール12は、操作者の入力した連動識別子と、これに対応する内部表現との対応を管理し、同じ連動識別子が指定された場合には同じ内部表現に変換すればよい。
【0061】
このような構成によれば、操作者は、異なる可変箇所における候補文字列同士を出力文書作成時に連動して選択させたいときは、それら候補文字列に対して同一の連動識別子を入力すればよい。異なる可変箇所における候補文字列に対して同一の連動識別子を入力する作業を容易にするために、連動設定ウインドウ300は、既出の連動識別子のリストを表示する機能を有する。すなわち、コンボボックス302のボタン306をクリックすると、図11(b)に示すように、当該可変原稿データの作成においてそれまでに入力された連動識別子(『である調』、『です調』など)の一覧を示すリスト314が表示される。操作者がリスト314の中の所望の連動識別子をマウス等で選択すると、それが記入欄304に表示される。そして、操作者がOKボタン308をクリックすると、可変原稿作成ツール12は、その連動識別子(あるいはその連動識別子に対応する内部表現)をその時の候補文字列に対して割り当てる。
【0062】
したがって、操作者は、全く新規の連動識別子を入力する場合には記入欄304に入力し、既出の連動識別子を入力したい場合にはボタン306によりリスト314を開いて所望のものを選択すればよい。
【0063】
なお、キャンセルボタン310は、連動識別子の設定を取り止める場合に用いる。
【0064】
また、確認ボタン312は、操作者が、記入欄304に表示された連動識別子が付与された候補文字列を確認するために用いる。確認ボタン312は、連動識別子が記入欄304に表示された時点でアクティブ状態になる(すなわち、このときはじめて確認ボタン312がクリック可能な状態となる)。ここで操作者が確認ボタン312をクリックすると、可変原稿作成ツール12は、現在作成中の可変原稿データの各可変箇所の候補文字列の中から、記入欄304に示された連動識別子と同じ連動識別子が設定されているものを求め、該当する候補文字列を表示装置に表示する。この場合、該当する候補文字列を、図2に示した文書編集ウインドウ110に表示された文書中で、点滅表示や色違い表示など、他の部分と識別できる形態で表示すると、操作者にとって分かり易い。この機能により、操作者は、候補文字列にある連動識別子を設定しようとする場合に、その設定の結果その候補文字列が、どの可変箇所のどの候補文字列と連動して選択されることになるかを知ることができる。
【0065】
組版編集装置20の可変文書組版部26は、連動識別子を含む可変原稿データを元に組版を行う場合には、各候補文書を作成する際に、各可変箇所の候補文字列のうちで同一の連動識別子を含む候補文字列は連動して同時に選択する。逆に言えば、連動識別子が設定された候補文字列は、連動識別子が設定されていない候補文字列や、異なる連動識別子が設定された候補文字列と同時に選択されることはない。
【0066】
図12は、連動識別子付きの候補文字列を含んだ可変箇所と連動識別子付きの候補文字列を含まない可変箇所とが共存する可変原稿データと、その可変原稿データから作成可能な候補文書の一覧を示した図である。(a)に示す可変原稿データには、可変箇所が3カ所含まれ、最初及び最後の可変箇所の候補文字列“bb”及び“fff”には同じ連動識別子が設定されている。そして、中央の可変箇所の候補文字列には連動識別子は設定されていない。この場合、可変文書組版部26は、最初及び最後の可変箇所については、同一の連動識別子を含む候補文字列を同時に選択するという制約に従って選択を行い、そのような連動識別子を含まない中央の可変箇所については、最初及び最後の可変箇所での選択とは独立してすべての可能性について候補文字列の選択を行う。したがって、この可変原稿データから作成される候補文書は、図12の(b)に示す4種類になる。
【0067】
このように連動識別子を導入することにより、出力文書又は候補文書を作成する際に、異なる可変箇所での候補文字列の選択を連動させることができる。連動選択させる候補文字列群を表す意味のある連動識別子を入力できるユーザインタフェースを利用すれば、原稿作成者は、各可変箇所にどのようなバリエーションで候補文字列を設定したらよいか方針を決めやすくなり、候補文字列のバリエーションを整理して再利用性の高い原稿(可変原稿データ)を作成することができる。
【0068】
以上、本実施形態の可変文書作成システムの構成及び動作について説明した。以上説明したように1つの可変原稿データからは、様々な利用の場面に応じた様々なバリエーションの文書を作成することができる。
【0069】
組版編集側から見れば、このような可変原稿データを用いることにより、予め想定された範囲内であれば、組版編集段階で編集意図・条件に応じて文書・記事の内容を容易に調整することができる。特に、文書・記事の文章量が変更できるので、組版編集作業の労力を軽減でき、レイアウト変更などによる各文書・記事の長さの増減にも容易に対応することができる。
【0070】
また、原稿作成側から見れば、可変原稿データからは様々な長さの文書を作成することができるので、原稿を可変原稿データとして作成することにより、予め原稿の文字数が指定される場合でなくても、比較的容易に原稿を作成することができるようになる。
【0071】
さらに別の角度からみれば、可変原稿データは、様々な局面に利用可能な文書・記事を1つのデータとして記述できるので、可変原稿データを用いることにより利用可能性の高い文書素材のデータベースを構築することができる。
【0072】
また、本実施形態では、文書に対する可変箇所の指定や候補文字列の設定作業を支援する可変原稿作成ツール12を設けたことにより、原稿作成者の可変原稿データ作成作業を容易にすることができる。
【0073】
本実施形態のシステムは、印刷物のみならず、電子出版物やインターネットのwww(world wide web)のホームページなどの電子的な文書の作成にも適用可能なことは明らかであろう。
【0074】
本実施形態の可変原稿作成ツールや組版編集装置は、その機能を記述したプログラムをコンピュータに実行させることにより実現可能である。この場合、プログラムは、例えばフロッピーディスクやCD−ROMなどコンピュータ読み取り可能な記録媒体の形態で、あるいは通信回線を介して供給され、これを例えばコンピュータに付属する固定ディスク装置にインストールすることにより、実行可能となる。インストールされたプログラムは、コンピュータのメインメモリ上にロードされ、CPU(中央処理装置)にて実行されることにより、所期の機能を達成する。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、原稿作成側は、予めその原稿が利用される様々な場合を想定して可変箇所及び候補文字列を設定して可変原稿データを作成することができる。一度作成された可変原稿データは、再利用性の高い文書素材となる。一方、この可変原稿データに基づき出力文書を作成する組版編集側では、その想定範囲内で文書の内容や文体などを調整することができるので、組版編集の制約条件に適合した文書を作成するのが容易になる。特に、可変箇所に対して長さの異なる候補文字列群を設定しておけば、候補文字列の選択の仕方により、様々な長さの出力文書を作成することができ、文書の長さを編集・組版時に容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るシステムの全体構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】 可変原稿作成ツール12によって生成されるユーザインタフェース画面表示の一例を示す図である。
【図3】 可変原稿データの記述方式の一例を示す図である。
【図4】 可変原稿データの記述方式の別の一例を示す図である。
【図5】 置換候補が2つ設定された場合の可変原稿データの記述例を示す図である。
【図6】 候補文書ごとの余白の量の相違を説明するための図である。
【図7】 可変文書組版部26の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【図8】 可変原稿データと、その可変原稿データから作成可能な候補文書の一覧を示した図である。
【図9】 出力文書に対する長さ指定のための手段を有する組版編集のユーザインタフェース画面の一例を示す図である。
【図10】 連動識別子を含んだ可変原稿データと、その可変原稿データから作成可能な候補文書の一覧を示した図である。
【図11】 連動識別子の設定のためのユーザインタフェース画面の一例を示す図である。
【図12】 連動識別子付きの候補文字列を含んだ可変箇所と連動識別子付きの候補文字列を含まない可変箇所とが共存する可変原稿データと、その可変原稿データから作成可能な候補文書の一覧を示した図である。
【符号の説明】
10 ワードプロセッサ、12 可変原稿作成ツール、14 可変箇所指定部、16 置換候補設定部、18 原稿データ作成部、20 組版編集装置、22原稿入力部、24 可変箇所検出部、26 可変文書組版部、30 候補文書作成・記憶部、32 領域指定部、34 長さ指定部、36 出力文書選択部。

Claims (10)

  1. 操作者から文書中の可変箇所の指定を受け付けてその可変箇所を特定する可変箇所情報を生成する可変箇所指定手段と、前記可変箇所指定手段で指定された可変箇所に対し当てはめ可能な候補文字列を設定する候補設定手段と、前記可変箇所情報と可変箇所に対応する候補文字列の情報とを前記文書のデータに反映させることにより可変原稿データを作成する原稿データ作成手段と、を有し、前記候補設定手段は、異なる可変箇所における候補文字列同士の選択を連動して行わしめる連動識別子を前記候補文字列に対して指定する手段を有し、前記原稿データ作成手段は、前記候補文字列に対して指定された前記連動識別子を当該候補文字列と対応づけて前記可変原稿データ中に記述する手段を有すること、を特徴とする可変原稿作成装置と、
    前記可変原稿作成装置で作成された可変原稿データを入力する入力手段と、入力された前記可変原稿データに含まれる前記可変箇所情報に基づき文書中の可変箇所を特定する可変箇所特定手段と、前記可変箇所特定手段で特定された可変箇所に、対応する候補文字列の中から1つを選択して当てはめることにより出力文書を作成する出力文書作成手段と、を有し、前記可変原稿データは複数の可変箇所についての前記候補文字列に対して前記連動識別子の指定を含むことことができ、前記出力文書作成手段は、文書中の各可変箇所において前記連動識別子の等しい候補文字列を同時に選択して当該可変箇所に当てはめること、を特徴とする可変文書出力装置と、
    からなる可変文書作成システム。
  2. 請求項1記載の可変文書作成システムであって、前記可変文書出力装置の前記出力文書作成手段は、連動識別子が指定された候補文字列を含まない可変箇所については、連動識別子が指定された候補文字列を含む可変箇所群における候補文字列の選択とは独立に、候補文字列を選択することで出力文書を作成することを特徴とする可変文書作成システム。
  3. 文書中の可変箇所を特定する可変箇所情報と前記可変箇所に当てはめ可能な複数の候補文字列の情報とを含む可変原稿データを入力する原稿入力手段と、
    入力された可変原稿データに含まれる前記可変箇所情報に基づき前記文書中の可変箇所を特定する可変箇所特定手段と、
    前記可変箇所特定手段で特定された前記文書の可変箇所に、対応する複数の候補文字列の中から1つを選択して当てはめることにより出力文書を作成する出力文書作成手段と、
    有し、前記可変原稿データは異なる可変箇所における候補文字列同士の選択を連動して行わしめる連動識別子の指定を前記候補文字列に対応づけて含んでおり、前記出力文書作成手段は、文書中の前記連動識別子が指定された候補識別子を含む各可変箇所においては前記連動識別子の等しい候補文字列を同時に選択して当該可変箇所に当てはめること、を特徴とする可変文書出力装置。
  4. 請求項3記載の可変文書出力装置であって、前記出力文書作成手段は、連動識別子が指定された候補文字列を含まない可変箇所については、連動識別子が指定された候補文字列を含む可変箇所群における候補文字列の選択とは独立に、候補文字列を選択することで出力文書を作成することを特徴とする可変文書出力装置。
  5. 請求項3記載の可変文書出力装置において、
    前記出力文書作成手段は、
    前記文書が組版される組版領域の定義情報を入力する手段と、
    前記文書中の可変箇所に対応する各候補文字列をそれぞれ当てはめて作成した複数の候補文書のうち、前記組版領域に組版したときに前記組版領域に収まる最長のものを出力文書として選択する手段と、
    を有することを特徴とする可変文書出力装置。
  6. 請求項3記載の可変文書出力装置において、
    前記出力文書作成手段は、
    前記文書が組版される組版領域の定義情報を入力する手段と、
    前記文書中の可変箇所に対応する各候補文字列をそれぞれ当てはめて作成した複数の候補文書のうち、前記組版領域に組版した場合の前記組版領域の余白の量が最小となるものを出力文書として選択する手段と、
    を有することを特徴とする可変文書出力装置。
  7. 請求項3記載の可変文書出力装置であって、
    前記出力文書作成手段は、
    出力文書の長さを指定するための手段と、
    前記文書中の可変箇所に対応する各候補文字列をそれぞれ当てはめて作成した複数の候補文書のうち、指定された長さに適合するものを前記出力文書として選択する手段と、
    を有する可変文書出力装置。
  8. 操作者から文書中の可変箇所の指定を受け付けてその可変箇所を特定する可変箇所情報を生成する可変箇所指定手段と、
    前記可変箇所指定手段で指定された可変箇所に対し当てはめ可能な候補文字列を設定する候補設定手段と、
    前記可変箇所情報と可変箇所に対応する候補文字列の情報とを前記文書のデータに反映させることにより可変原稿データを作成する原稿データ作成手段と、を有し、前記候補設定手段は、異なる可変箇所における候補文字列同士の選択を連動して行わしめる連動識別子を前記候補文字列に対して指定する手段を有し、前記原稿作成手段は、前記候補文字列に対して指定された前記連動識別子を当該候補文字列と対応づけて前記可変原稿データ中に記述する手段を有すること、を特徴とする可変原稿作成装置。
  9. コンピュータを、
    文書中の可変箇所を特定する可変箇所情報と前記可変箇所に当てはめ可能な複数の候補文字列の情報とを含む可変原稿データを入力する原稿入力手段、
    入力された可変原稿データに含まれる前記可変箇所情報に基づき前記文書中の可変箇所を特定する可変箇所特定手段、
    前記可変箇所特定手段で特定された前記文書の可変箇所に、対応する複数の候補文字列の中から1つを選択して当てはめることにより出力文書を作成する出力文書作成手段、
    を有し、前記可変原稿データは異なる可変箇所における候補文字列同士の選択を連動して行わしめる連動識別子の指定を前記候補文字列に対応づけて含んでおり、前記出力文書作成手段は、文書中の前記連動識別子が指定された候補識別子を含む各可変箇所においては前記連動識別子の等しい候補文字列を同時に選択して当該可変箇所に当てはめること、を特徴とする可変文書出力装置、として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  10. コンピュータを、
    操作者から文書中の可変箇所の指定を受け付けてその可変箇所を特定する可変箇所情報を生成する可変箇所指定手段、
    前記可変箇所指定手段で指定された可変箇所に対し当てはめ可能な候補文字列を設定する候補設定手段、
    前記可変箇所情報と可変箇所に対応する候補文字列の情報とを前記文書のデータに反映させることにより可変原稿データを作成する原稿データ作成手段、
    を有し、前記候補設定手段は、異なる可変箇所における候補文字列同士の選択を連動して行わしめる連動識別子を前記候補文字列に対して指定する手段を有し、前記原稿作成手段は、前記候補文字列に対して指定された前記連動識別子を当該候補文字列と対応づけて前記可変原稿データ中に記述する手段を有すること、を特徴とする可変原稿作成装置、として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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