JP3711562B2 - 発電装置および携帯型機器 - Google Patents
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Description
本発明は、圧電体を備えた振動片を加振して発電を行う発電装置およびこれを備えた携帯型機器に関するものである。
背景技術
圧電材料を用いて発電を行う小型の装置が幾つか提案されており、例えば、実開平6−76894号には錘の回転運動を用いてハンマーレバーを駆動し、圧電材料を叩いて発電する技術が記載されている。
また、実開昭63−72593号には、時計ケースの内部に圧電素子を収納し、重りが上下方向に慣性的に稼動されて振動され、この振動によって電気エネルギーを発生させる技術が記載されている。
これらの圧電体を用いた発電方式によって、腕の動きなどを捉えて圧電体に歪みを与えて発電を行い、時計装置などを動かす電力を得ることができる。このような携帯型で小型の発電装置は、腕の動きなどから運動エネルギーを得て電気エネルギーに効率良く変換するために、先ず第1に、腕の動きなどを効率良く回転錘の回転などの実際に発電に用いられる運動エネルギーに変換し、第2に、その運動エネルギーを効率良く圧電体に歪みとして印加し、さらに、第3に、圧電体に加えられた歪みを効率良く電気エネルギーに変換することが重要である。
圧電体に加えられた運動エネルギー(入力エネルギー)は、圧電体を支持する支持層などの歪みエネルギー、圧電体自体の歪みエネルギー、および圧電体の発電によりコンデンサなどの蓄電装置に蓄えられる電気エネルギーの3つに主に分けられる。これらの内、発電装置として最も重要な電気エネルギーは、圧電体の電気機械結合係数、圧電素子の充電しない時の出力電圧および静電容量、蓄電装置の電圧等により変動するが、圧電体の歪みエネルギの数%にしかならない。そこで、バネ性レバーとして自由振動するような圧電体を用いて発電することが検討されている。圧電体を振動させることによって繰り返し歪みを発生でき、入力エネルギーによって発生した歪みエネルギーを徐々に電気エネルギーに変換できるからである。このようにして、上記の第3の要因に当たる入力エネルギーに対し発生される電気エネルギーの効率向上が図られている。また、ユーザーの手首に装着する腕時計型の発電装置においては、ユーザーの腕の動きを解析して回転錘が効率良く回転するように上述した第1の要因に係る検討が進んでいる。
そこで、本発明においては、上述した第2の要因に当たる、回転錘の回転運動などとして得られた運動エネルギーを効率良く入力エネルギーとして圧電体に伝達できる装置を提供することを目的としている。そして、このような装置を実現することによって、ユーザーの腕の動きなどから実際に携帯用機器を駆動するのに十分な給電能力を備えた発電装置を提供することを目的としている。
特に、上述したように圧電体を備えた振動片を振動させることによって入力エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換できるので、本発明においては、回転錘などの運動エネルギーをできるだけ損失なく振動片に伝達可能な発電装置を提供することを目的としている。そして、効率良く圧電体に変位を印加することによって発電効率を向上し、発電能力が高く、腕などの動きによって十分な発電量を確保できる発電装置を提供することを本発明の目的としている。
発明の開示
本願の発明者らは、回転錘などの運動エネルギーによって振動片を加振する際に、振動片に与えられた入力エネルギーの損失の多くが、振動片を打撃する打撃部と加振された振動片との2次衝突に起因することを見いだした。
この2次衝突を防ぐには、打撃部が振動片に打撃を与えた後、振動片の初期の変位に対し反対方向の速度が与えられる必要がある。そこで、本発明は、圧電体層を備えた少なくとも1つの振動片と、この振動片に打撃を加えて振動を励起する加振装置とを有し、振動中の前記圧電体層で発生した電力を出力可能な発電装置において、前記加振装置は前記振動片に衝突する回転運動可能な打撃部と前記打撃部を駆動する駆動レバーを備えており、その打撃部の等価質量meが前記振動片の等価質量Meより小さく、
前記打撃部と前記振動片の衝突係数をeとしたときに、前記等価質量m e およびM e が次の式(C)を満たすことを特徴とする発電装置。
M e >((2・e+3・π+2)/3・π・e)×m e ・・・(C)。これにより、振動片に打撃を与えた後、打撃部には振動片の初期の変位に対し反対方向の速度が与えられる。
従って、打撃部と振動片の2次衝突によるエネルギーの再伝達や損失を防げるので、振動片により多くの入力エネルギーを印加でき、発電能力を向上できる。
一例として振動片が片持ち梁状に取り付けられている場合は、振動片の質量をMH、固定された固定端から他方の自由端までの距離をlH、固定端から打撃部によって打撃が加えられる加振点までの距離をxH、振動モードの規準関数をΞnとしたときに、加振点における等価質量Meは次の式(A)で表される。また、打撃部が加振点に打撃を与える旋回式の加振レバーであり、その慣性モーメントをIb、旋回中心から加振点に打撃を与える打撃点までの距離をxbとすると、打撃部の等価質量meは次の式(B)で表される。
Me=MH/(Ξn(xH/lH))2 ・・・(A)
me=Ib/xb 2 (B)
振動片の等価質量を大きくするには、片持ち梁状に取り付けられた振動片の自由端に重りを付加することが望ましく、その場合の等価質量Meは次の式(D)で表される。なお、振動片の片持ち梁部の質量をMHとし、重りの質量をMaとする。
Me=Ma+MH/(Ξn(xH/lH))2 ・・・(D)
また、圧電体層を備えた振動片を振動させて発電する場合は、発電に有効に活用される1次モードの振動を効率良く励起し、2次モード以上の高次モードの振動を低減することが望ましい。そこで、打撃部は片持ち梁状に取り付けられた振動片の自由端から固定端の側に若干戻った振動片の2次モードの節近傍に打撃を与えることが有効である。また振動片が片持ち梁形状でない場合においても、2次以上の発電に対する寄与が少ないモードの節近傍を加振する事が望ましいのはもちろんである。
片持ち梁状に取り付けられた振動片の自由端に重りを付加して等価質量を増加するときは、自由端の側、すなわち振動片の先端に向かって開いた凹部を備えた重りを採用することによって大きな重りを振動片の先端に装着できる。また、その凹部の内側と衝突するように加振レバーを設置することにより、加振レバーをコンパクトに設置できる。同時に加振レバーによって自由端の側から固定端の側に若干戻った2次モードの節付近に打撃を与えられるので、1次モードの振動を効率良く励起し、発電能力を向上できる。
このような発電装置は腕装着型などのケースに収納して携帯型機器として実現することが可能であり、携帯型機器にこの発電装置から出力される電力で動作可能な計時装置や通信装置などの処理装置を収納することにより、外部から電力供給がいらず、また、電池交換も不要な携帯型機器を提供できる。
さらに、このケース内部で旋回可能に取り付けられた回転錘と、この回転錘の動きを増速して打撃部に伝達する輪列とを設け、打撃部に輪列に連動して旋回駆動され振動片と衝突する加振レバーを採用することが望ましい。回転錘の運動を増速することによって回転錘が動く周期より早い周期で加振レバーを旋回駆動できるので、回転錘の運動エネルギーを加振レバーによって分割して振動片に印加することが可能となる。従って、振動片に与えられる入力エネルギーを分散できるので、振動片の破損を防止し、小型の振動片に振幅の小さな振動を繰り返し印加できる。このため、小型で損失の少ない発電機を実現でき、十分な発電量を確保できる。
また、輪列によって回転駆動される駆動レバーを設け、この駆動レバーの一端に加振レバーの一端が当接して旋回駆動される加振レバーを採用することにより、加振レバーを小型化できる。このため、加振レバーの慣性モーメントを低減できるので、加振レバーの等価質量を小さくでき、振動片との2次衝突を防止でき、増速された輪列の速度にも十分に追従させられる。さらに、このような加振レバーは、旋回中心と重心が一致するようにケースに取り付けることが望ましい。これにより腕などの動きに伴いケースの角度が変化しても加振レバーは安定して不要な動きがないので、振動片と加振レバーの2次衝突を防止でき、ユーザーの腕の動きなどを有効に活用可能な発電能力の高い発電装置を提供できる。
また、複数の振動片を設けこれらに交互に加振レバーによって振動を加えることで、個々の振動片においては1回の打撃による振動の継続する時間を長く取ることができる。したがって振動片の振動中に次の加振が加えられることに起因する損失を防ぎ、効率向上を図る事ができる。
また、加振レバーに代わり、振動片の周囲に形成された溝内を運動する少なくとも1つのボールを用いて振動片に打撃を与えることも可能である。
さらに、振動片を音叉型に組み合わせることや、矩形板等の片持ち梁以外の形状として支持位置を振動の節部とする事で振動損失を少なくし、効率のよい発電装置を構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例1に係る圧電体層を備えた振動片を有する発電装置の概略構成を示す図である。
第2図は第1図に示す発電装置の駆動系および加振装置の構成を示す断面図である。
第3図は第1図に示す加振装置を拡大して示す図である。
第4図は振動片の機械的なエネルギー損失率が振幅によって変化する様子を示すグラフである。
第5図は加振レバーから振動片に伝達されるエネルギーの伝達効率が振動片の等価質量と加振レバーの等価質量の比によって変化する様子を示すグラフである。
第6図は加振レバーと振動片が衝突する様子を説明する図であり、第6図(a)は衝突前の状態を示し、第6図(b)は衝突後の状態を示してある。
第7図は加振レバーと振動片の等価質量を算出する際の諸条件を示す図である。
第8図は加振レバーと振動片の衝突後の変位を示すグラフである。
第9図は加振レバーと振動片の再衝突限界等価質量を幾つかの衝突係数に基づき示したグラフである。
第10図は振動片に打撃が与えられる衝突位置によって振動片の振動の1次モードおよび2次モードの振幅が変化する様子を示すグラフである。
第11図は第10図に示す1次モードおよび2次モードの振幅を開放電圧から求める様子を示す図である。
第12図は本発明の実施例2に係る発電装置の概略構成を示す図である。
第13図は本発明の実施例3に係る発電装置の概略構成を示す図である。
第14図は本発明の実施例4に係る発電装置の概略構成を示す図である。
第15図は本発明の実施例5に係る発電装置の概略構成を示す図である。
第16図は第15図に示す発電装置の溝の部分の断面を示す図である。
第17図は本発明の実施例6に係る発電装置の概略構成を示す図である。
第18図は第17図に示す発電装置の振動片の形状と振動モードを示す図である。
発明を実施するための最良の形態
〔実施例1〕
以下に図面を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。第1図に本発明の実施例に係る発電装置を備えた腕装着型の携帯型機器の概要を示してある。本例の携帯型機器10は、圧電体層22aおよび22bを備えた振動片21からなる発電装置20と、振動片21が振動して得られた交流電流を整流する整流回路2と、整流された電流を蓄積する蓄積回路4と、さらに、発電された電流によって計時処理を行う処理装置6を備えている。処理装置6は、時計部7を駆動したりアラーム処理を行うなどの計時処理の他にラジオ、ページャあるいはパソコンなどの機能を備えているものであってももちろん良い。また、本例では、蓄電回路4にコンデンサ5を用いているが、2次電池などの電力蓄積能力を備えたものであれば良い。整流回路2は、本例のようにダイオード3を用いた全波整流に限定されず、半波整流回路であっても良く、インバータなどを用いた整流回路であってももちろん良い。第1図では本例の携帯型機器を概念図を用いて示してあるが、整流回路2、蓄電回路4および処理装置6などは、後述する駆動系11と平面的に重なる様に配置されており、装置全体の小型化が図られている。
本例の発電装置20は、圧電体層を備えた振動片21に振動を与える加振装置30を備えており、この加振装置30が駆動系40によって駆動されるようになっている。振動片21は、片持ち梁(カンチレバー)状に地板12に固定され、金属製の支持層26と、その両側に形成された圧電体層22aおよび22bを備えている。また、振動片21の自由振動を行う先端(自由端)23には重り25が取り付けられている。この重り25には自由端23の側に開いた凹み25cが中央に設けられている。そして、加振レバー35の能動端39が凹み25cの内部に衝突し、振動片21に打撃を与えられるように設置されている。従って、加振装置30の加振レバー35が旋回すると振動片21が加振され、振動片21の先端23が自由端となり、また、地板12にネジ27で固定された側24が固定端となって自由振動する。このため、これに伴って振動片21の圧電体層22aおよび22bに繰り返し変位が与えられ、起電力が発生する。
本例の駆動系40は、ケース1の内部で回転運動を行う回転錘13を備えており、腕時計として装着された際にこの回転錘13がユーザーの腕や体の動きなどに呼応して回転し、その力を利用して振動片21に振動を与えられるようにしている。また、本例の駆動系40には回転錘13の運動を増速して加振装置30に与えられるように第2図に示す構成の輪列41を設けてある。回転錘13の動きは、輪列41を構成する回転錘車14によって第1の中間車15aに伝達され増速される。この第1の中間車15aは、同径の第2の中間車15bと噛み合っており、回転錘13の動きによって第1および第2の中間車15aおよび15bが回転する。そして、中間車15aおよび15bのそれぞれの動きは、加振装置30の駆動レバー車31aおよび31bに伝達され、これら中間車15aおよび15bは同一の径で逆方向に回転するので、駆動レバー車31aおよび31bが逆方向に等しい速度で回転駆動される。このような輪列41を用いることによって、例えば、回転錘13がユーザーの手首などの動きを捉えて1Hz程度で動くと、この動きを50Hz程度まで増速して加振装置30に伝達できる。本例の加振装置では、2つの駆動レバー32aおよび32bによって加振レバー35が駆動されるので、振動片21には100Hz程度の単位で衝撃が印加され、これによって2kHz程度の振動が振動片21に励起されるようになっている。なお、上記の周波数は例示であって、これらの周波数に本発明が限定されるものでないことはもちろんである。このような輪列41を構成する中間車15aおよび15b、さらに、後述する歯車およびレバーは、ケース1内の地板12と、回転錘13を支持する回転錘受16に挟まれた狭い空間に配置できるように組み合わされている。
駆動系40によって駆動レバー車31aおよび31bが回転駆動されると、これらの駆動レバー車31aおよび31bと同一に動く駆動レバー32aおよび32bが逆方向に等しい速度で回転し、これによって加振レバー35の2つの受動端36aおよび36bがそれぞれ動かされる。加振レバー35は、駆動レバー32aおよび32bによって、加振レバーの中心37を中心に左右に旋回し、この動きに呼応して加振レバー35の受動端36の反対側に位置する能動端39が左右に動く。この能動端39によって振動片21の先端の重り25の内側に打撃が加えられ、振動片21に振動が励起される。なお、第2図には、一方の中間車15aおよび駆動レバー車31a、駆動レバー32a、さらに、受動端36aの組み合わせを示してあるが、他方の中間車15b、駆動レバー車31b、駆動レバー32b、さらに受動端36bの組み合わせも同様である。
発電装置20の振動片21に対して回転錘13の様に大きな運動エネルギーを持つもので直に加振すると破損を防ぐために振動片を大型化する必要がある。これに対し、本例のように輪列41を用いて回転錘13の動きを増速すると、回転錘13の持つ運動エネルギーを分割して振動片21に印加することができ、破損の防止と振動片21の小型化が可能となる。
さらに、第4図に示す様に、振動片が振動した時の機械的なエネルギーの損失率は同一の振動子であれば振幅が増加するに従って大きくなるため、入力エネルギーを分割して印加することにより、振幅を小さく抑え、振動片21における機械的なエネルギー損失を低減することも可能となる。
第3図に、加振装置30を構成する駆動レバー32aおよび32b、および加振レバー35の配置を拡大して示してある。本例の駆動レバー32aおよび32bはほぼ紡錘型をしたレバーであり、各々のレバー32aおよび32bがその中心33aおよび33bを回転中心として等しい速度で逆方向に回転駆動される。さらに、これらの紡錘型のレバー32aおよび32bは位相がずれて回転するように設定されており、それぞれのレバーの両端34が加振レバーの受動端36aおよび36bに交互に当接して受動レバー35を駆動するようになっている。
受動端36aおよび36bは中間車15aおよび15bの配置を考慮して適当な角度離れた位置に設けられており、これら受動端36aおよび36bに対し、駆動端39は加振レバーの中心37に対し反対側に位置する。さらに、本例の加振装置30においては、駆動レバー32aおよび32bの運動エネルギーを最も効率良く受動レバー35に伝達できるように、駆動レバー32aの中心33aと、その両端34が加振レバーの受動端36aと当接する位置38aと、加振レバー35の中心37がほぼ一直線となるように配置されており、さらに、駆動レバー32bの中心33bと、その両端34が受動レバーの受動端36bと当接する位置38bと、加振レバー35の中心37がほぼ一直線となるように配置されている。
本例の加振装置の加振レバー35は、上記のように配置することによって駆動系40から加振レバー35にエネルギー損失が非常に少ない状態で伝達でき、さらに、2つの駆動レバー32aおよび32bによって交互に駆動されるので、より細かな時間の単位で振動片21に入力エネルギーを与えて効率良く振動を励起できる。また、駆動レバー32aおよび32bによって加振レバー35を駆動するようにしているので、加振レバー35の慣性モーメントを低減でき、加振レバー35が比較的高い周波数で運動した場合であっても、その動きを増速した高周波数の動きに十分追従させることが可能となる。さらに、後述するように、加振レバーの慣性モーメントを低減することによって加振レバーの等価質量を低減できるので、振動片との2次衝突によるエネルギー損失を低減する効果も備えている。
また、本例の加振レバー35は、そのほぼ重心を旋回の中心37としてケース1に取り付けてあるので、ケース1の向きが変わっただけでは加振レバー35が勝手に旋回しないようになっている。このため、加振レバー35は駆動レバー32aおよび32bによってのみ駆動され、駆動レバーとの位置関係がつねに適正に保たれるようになっている。また、加振レバー35がケース1の向きによって不用意に動いて振動片21との間で2次衝突を引き起こし、エネルギー損失の原因となることも防止している。
第5図に、本例の発電装置20において振動片21の得た入力エネルギー(振動片21の振動エネルギー)Eiと加振レバー35の運動エネルギーEoの比(エネルギー伝達効率)ηt(=Ei/Eo)が、加振レバー35の等価質量meと振動片21の等価質量Meとの比(等価質量比)MR(=me/Me)によって変化する様子を示してある。本図から判るように、等価質量比MRが1未満の場合は、等価質量比MRが増加するに従ってエネルギー伝達効率ηtが増加する。これに対し、等価質量比MRがほぼ1になるとエネルギー伝達効率ηtは急激に低下し、等価質量比MRが1を超えるとエネルギー伝達効率ηtは再び上昇するが、等価質量比MRが1未満での最大値よりも低くなる。等価質量比MRが1未満の場合は、等価質量比MRが増加するに従って振動片21の振動の初期速度が増加するのでエネルギー伝達効率ηtが上昇する。これに対し、等価質量比MRがほぼ1に近づくと、加振レバー35の運動エネルギーEoがほぼ振動片21に伝達されるので、加振レバー35は振動片21に打撃を与えた位置に止まり、振動片21と加振レバー35の2次衝突が発生する。この2次衝突によって振動片21の得た入力エネルギーが加振レバー35の側に逆に与えられ、エネルギー損失となるのでエネルギー伝達効率ηtが急激に減少する。そして、等価質量比MRが1を越えると、振動片21の側に2次衝突によるエネルギー損失が多少減少し、また3次衝突などが発生するので、エネルギー伝達効率ηtが上昇する。
このように、等価質量比MRが1であると、エネルギー伝達効率ηtは非常に低くなる。エネルギー伝達効率ηtを向上させるためには、等価質量比MRを1未満として、2次衝突が起こらないようにするか、2次衝突が起こってもエネルギー伝達効率ηtがあまり低下しない条件を求める必要がある。そこで、本願発明者らは以下のように加振レバー35と振動片21との間に2次衝突が発生しないための条件を見いだした。第6図に、振動片21に加振レバー35が衝突する系をそれぞれの等価質量Meおよびme、さらに、振動片21の等価バネ定数Kを用いて示してある。以下に示すように等価質量Me、meおよび等価バネ定数Kを用いて評価することにより、打撃部と振動片は加振レバーと片持ち梁の組み合わせに限定されず、後で説明するような打撃部にボールなどの異なった機構を用いた場合や振動片に矩形板などの異なった形状の圧電体を使用した場合であっても同等に本発明を適用することができる。
振動片21の等価質量Meは、第7図(a)に示したような質量MH、固定された固定端から他方の自由端までの距離lH、固定端から打撃部によって打撃が加えられる加振点Xまでの距離xH、振動モードの規準関数Ξnの振動片に対し以下のように表される。
Me=MH/(Ξn(xH/lH))2 ・・・(1)
ただし、規準関数Ξnは、積分点での密度をρとすると、以下の関係を満足する関数である。
∫∫∫ρ・Ξn 2・dV=MH ・・・(2)
本例の振動片21においては1次モードの振動が励起されることが望ましく、このモードの規準関数は以下のようになる。
ただし、y=xH/lH
cosα1×coshα1=−1 (α1は1番目の解)である。
また、加振レバー35の等価質量meは、慣性モーメントをIb、旋回中心から振動片の加振点に打撃を与える打撃点までの距離xbの加振レバー35に対し以下のように表される。
me=Ib/xb 2 ・・・(4)
また、第7図(b)に示したような、振動片21の先端に凹みのある重り25を付加した場合や振動片が片持ち梁以外の場合は、規準関数Ξ1(y)が異なるが上記と同様に求めることができる。さらに、加振点が先端に非常に近く、固定端から自由端までの距離lHと固定端から打撃部によって打撃が加えられる加振点Xまでの距離xHがほぼ等しい場合は、式(1)で求めた梁状の振動片の等価質量Meと重りの質量Maを用いて第7図(b)のような振動片の等価質量を以下の式で近似できる。
Me=Ma+MH/(Ξn(xH/lH))2 ・・・(1’)
第6図に戻って、等価質量meの加振レバー35が速度Vbで等価質量Meの振動片21に衝突した後、振動を開始した振動片21と2次衝突を起こさないためには、衝突後に加振レバー35が振動片21の変位と逆方向の速度を得ることが必要となる。従って、加振レバー35の等価質量meと振動片21の等価質量Meのとの間に以下の関係が成りたつことが必要となる。
me < Me ・・・(5)
さらに詳しく解析すると、加振レバーと振動片の衝突係数をeとしたときに運動量保存の法則より以下の式が導かれる。
0×Me+Vb×me=VH’×Me+Vb’×me ・・・(6)
(Vb’−VH’)/Vb=−e ・・・(7)
ここで、VH’およびVb’は衝突直後の振動片21および加振レバー35のそれぞれの速度である。
次に、衝突後の振動片21の運動と加振レバー35の運動を検討すると、第8図に示すようになる。まず、振動片21は、打撃を受けた時点から振動を開始し、第8図に実線51で示したような変位を示す。その変位uHは以下の式で表される。なお、簡単のため振動片21についは1次モードの振動を考え、また、振動の減衰は考慮していない。
uH=A・sinωt ・・・(8)
ただし、ωは角速度、Aは振幅、tは時間を示し、初期条件より以下の関係を満足する。
(duH/dt)t=0=ω・A=VH’ ・・・(9)
一方、加振レバー35は一点鎖線52で示したように速度Vb’で打撃地点から遠くなるので、その変位ubは以下の式で表される。
ub=Vb’・t ・・・(10)
以上より、振動片21と加振レバー35が2次衝突を起こさないためには、変位uHおよびubが時刻tが0のとき以外に解を持たなければ良い。すなわち、以下の式(11)がt=0以外で解を持たなければ良い。
A・sinωt=Vb’・t ・・・(11)
式(11)を解くために式(8)を3次方程式で近似する。振動片21の変位uHは、第8図のO、QおよびSの各点を通るので、以下の3次方程式で近似できる。
uH3(t)=B・t(t−π/ω)(t−2・π/ω)・・・(12)
ここで、式(12)が第8図の点R(3π/2ω,−A)を通るので、式(9)より、定数Bは以下のようになる。
B=8・ω2/(3・π3)×VH’ ・・・(13)
従って、式(11)は、以下の式(14)で近似できる。
B・t((t−π/ω)(t−2・π/ω)−Vb’/B)=0 ・・・(14)
このため、以下の式(15)の判別式Dを求め、ω、eおよびmeが共に0より大きいことを基に判別式D<0となる条件を求め、式(13)および式(6)、(7)の関係を用いて整理する。
(t−π/ω)(t−2・π/ω)−Vb’/B=0 ・・・(15)
これにより、振動片の等価質量Meと加振レバーの等価質量meとの間に式(16)に示す関係が得られる。
Me>((2・e+3・π+2)/3・π・e)×me ・・・(16)
以上より、上記の式(16)を満足する等価質量を備えた振動片および加振レバーを採用することにより、これら振動片と加振レバーの2次衝突によるエネルギー損失のない発電装置を提供することができる。
以上の考察により振動片と加振レバーが2次衝突しない条件を、各々の等価質量の条件に置き換える事ができた。
第9図に、上記の式(16)に基づき、以下の再衝突限界等価質量の関係を満たす振動片の等価質量Meと加振レバーの等価質量meを異なる衝突係数eに対して示してある。
Me=((2・e+3・π+2)/3・π・e)×me ・・・(17)
第5図に示したように、等価質量比MRは2次衝突が発生しない範囲で1に近いほうがエネルギー伝達効率ηtが高いので、振動片の等価質量Meと加振レバーの等価質量meはこの再衝突限界等価質量の関係に近いものを採用することが望ましい。
さらに、本願発明者らは、第7図に示した加振点Xの変化によっても振動片21から発生される起電圧が変動することを見いだした。振動片21に振動を与えた場合、発電に寄与する振動は1次モードの振動であり、2次モード以上の高次の振動が発生するとその振動モードを励起するために発電に有効な1次モードへの入力エネルギーが減少する。この変化を測定するため、発明者らは、加振点Xによって1次モードの振幅と2次モードの振幅が変化する様子を計測し、その結果を第10図に示してある。測定には、圧電体であるPZT層を燐青銅製の支持材に積層した全長lHが21mmのユニモルフタイプの振動片を用い、第7図に示す加振点Xの振動片の先端(自由端)からの距離(衝突位置(lH−xH))を変えて打撃を与えた後に振動片で発生する開放電圧Vを測定している。この間放電圧Vは、振動片の振幅にほぼ比例した値が得られ、第11図に示すように振動の1次モードに2次モードが重なった波形が得られる。従って、この得られた波形から1次モードと2次モードの振幅VαとVβを得て、その結果を第10図に示してある。
第10図から判るように、振動片の自由端に打撃を与えた場合より、自由端から固定端に向かって若干戻った位置に打撃を与えた方が1次モードの振幅を大きくでき、2次モードの振幅を小さくできることが判る。そして、1次モードの振幅は衝突位置が先端から約3.5mmのときに最大になり、2次モードの振幅はほぼ同じ衝突位置で最小となる。この2次モードの振幅が最小となる位置の近傍に2次モードの振動の節の部分があると考えられる。従って、振動片の2次モードの振動の節の近傍に打撃を与えることにより、2次モードの発生を抑制し、発電に寄与する1次モードの振幅を大きくできることが判る。このため、振動片の自由端に打撃を与えるのではなく、自由端から若干戻った位置に打撃を与えることにより、発電により有効に活用されるように入力エネルギーを振動片に与えることができ、発電能力の高い圧電体を用いた発電装置を提供できることが判る。
以上のように、本願発明者らにより、圧電体層を備えた振動片を用いた発電装置において振動片に有効にエネルギーを伝達するには、振動片の等価質量と振動片に衝突する加振レバーなどの打撃部の等価質量との関係を2次衝突が発生しない範囲に設定することが望ましいことが見いだされた。さらに、振動片における2次モードの振動の発生を抑制し、入力エネルギーが発電にいっそう有効に活用されるためには、2次モードの振動が励起され難い2次モードの振動の節に当たる付近に打撃を加えることが望ましいことも見いだされた。
第1図に示した本例の発電装置20においては、振動片21の自由端23の側に凹型の重り25が付加されており、小型の振動片21であってもその等価質量を調整して加振レバー35より大きくし易い構成となっている。また、加振レバー35においては、カム部などを設けて直に輪列41から駆動されるのではなく、駆動レバー32を介して駆動されるようにしているので、加振レバー35を小型化して等価質量が小さくできるようになっている。従って、本例の発電装置20は、振動片21と加振レバー35の間の2次衝突を防止し、これによるエネルギー損失をなくすことができる構成であり、エネルギー伝達効率の高い発電装置である。また、凹型の重り25を採用しているので、振動片の自由端の両側に重りを拡張できるため、小さなスペースで十分な質量の重りを配置することができる。
さらに、本例の発電装置20においては、凹型の重り25の凹み25cの内部に加振レバー35の能動端39を設置してある。従って、能動端39は重り25を含めた振動片21全体の自由端23から若干固定端24の側に戻った位置を加振することになる。このため、振動片21には2次モードの振幅が小さく1次モードの振幅がより大きくなるように入力エネルギーが伝達され、発電能力の高い発電装置が得られる。
また、本例の発電装置20は、上述したように輪列41によって回転錘13の動きを増速して振動片21に打撃を与え、回転錘13の運動エネルギーを分割して振動片21に印加できるなど、圧電体層を備えた小型の振動片21に対して非常に効率良く回転錘13の運動エネルギーを伝達できるので、小型で発電能力の高い発電装置である。
そして、本例の発電装置によって供給される電力により、本例の計時装置に限らず、ページャー、電話機、無線機、補聴器、電卓、情報端末などの処理装置を作動させることが可能である。また、携帯型機器の形状も車両搭載型、ポケット型など腕装着型の携帯型機器に限定するものではない。これらの携帯型機器に本発明の発電装置を採用することにより、電池切れなどの心配をせずに何時でも何処でも携帯型機器に搭載された処理装置の機能を発揮させることができる。
〔実施例2〕
第12図に、本発明に係る発電装置20を備えた腕装着型の携帯型機器60を示してある。本例の発電装置20も圧電体層を備えた振動片21を備えており、この振動片21に対し携帯型機器60のケース1内を旋回する回転錘13の運動エネルギーによって打撃を与え振動を励起し、これによって発電された電流を供給できるようになっている。従って、上記の実施例と共通する部分には同じ符号を付して説明を省略する。また、以下に説明する他の実施例においても同様である。
本例の発電装置20は、1つの駆動レバー32によって加振レバー35を旋回駆動し、振動片21に運動エネルギーを供給するようになっている。従って、駆動系40の輪列41も1つの中間車15によって回転錘13の動きを増速して駆動レバー32に伝達するようになっている。このため、駆動系40の輪列41および駆動レバー32の構成を簡略化できるので、発電装置20および携帯型機器60をいっそう小型化できる。さらに、振動片21の自由端23には凹型の重り25を設けてあり、その凹部25cの内部に加振レバー35の能動端39が設置されているので、実施例1と同様に加振レバー35と振動片21の2次衝突を防止でき、1次モードの振動を励起し易い構造となっている。また、輪列41によって回転錘13の動きが増速して伝達されるので、回転錘13の運動エネルギーが分割して振動片に供給される。このように、本例の発電装置および腕装着型機器は、実施例1と同様にエネルギー伝達効率の向上が図られており、より小型で発電能力の高い発電装置および腕装着型機器である。
〔実施例3〕
第13図に、本発明の実施例に係る異なる発電装置20の例を示してある。本例の発電装置20は、2本の振動片21aおよび21bを備えており、加振レバー35の能動端39がこれら2本の振動片21aおよび21bの間に位置している。そして、2本の振動片21aおよび21bの自由端23aおよび23bに設置されている重り25aおよび25bの自由端23より若干固定端24に戻った場所に加振レバー35によって交互に衝撃を与え、それぞれの振動片21aおよび21bに振動を励起している。本例の発電装置20においては、2本の振動片21aおよび21bに交互に打撃が与えられるので、個々の振動片においては1回の打撃による振動の継続する時間を長くとることができる。従って、1回の打撃による入力エネルギーが電気エネルギーに変換される期間を長く設定できるので、加振レバーによって伝達されるエネルギーが大きくなり、振動片21の振動回数が多くなった場合でも次に加振されるまでに十分な余裕時間を確保できる。このため、振動中にさらに次の振動が加振される事態を防止でき、このような事態に起因する振動エネルギーの損失を回避できる。
なお、本例では2本の振動片21aおよび21bに対し加振レバーによって交互に打撃を与えるようにしているが、例えば、旋回する加振レバーの周囲に3本以上の振動片を配置したり、複数の加振レバーを用いることによって3本以上のn本の振動片に対し交互に打撃を与えることも可能である。
〔実施例4〕
第14図に、本発明の実施例に係る異なる発電装置の例を示してある。本例の発電装置20は、2つの振動片21aおよび21bの支持層26aおよび26bが音叉型に形成されており、これら2つの支持層26aおよび26bを連絡する基部26cが地板12に取り付けられている。また、それぞれの振動片21aおよび21bに設けられた圧電体層22aおよび22bのそれぞれからは不図示の異なった2つの整流回路に各々の振動片21aおよび21bから電流が供給されるようになっている。従って、音叉を外部より加振したときに起きる左右の腕が同相で振れるモードと、逆相で振れるモードの両方から電力を取り出すことができる。同相のモードの振動損失は肩持ち梁とほぼ同じと考えられるが、逆相のモードの振動損失は固定部に力が加わらないために非常に小さい。このため、逆相のモードに印加された入力エネルギーは効率よく電力に変換できるので、片持ち梁よりも効率の良い圧電体を用いた発電装置を提供できる。
また、加振レバー35は、上述した実施例と同様に振動片21aおよび21bより等価質量が小さく設定されており、さらに、振動片21aおよび21bの自由端から固定端の側に若干戻った部分に打撃を与えるようになっている。従って、本例の音叉型に組み合わされた振動子29を用いて発電を行うことにより、音叉の特性を活かした振動損失率の小さな振動を発生させることができるので、機械的なエネルギー損失を抑制して発電効率の高い発電装置を提供することができる。
〔実施例5〕
第15図および第16図に、本発明の実施例に係る異なった発電装置20の概略構成を示してある。本例の発電装置20においては、振動片21を加振する打撃部にボール62を用いている。本例の発電装置20は、振動片21を収納した上下のケース65aおよび65bの内部に、振動片21の自由端23から若干固定端24に戻った位置を通る円形の溝61が形成されており、この溝61の内部をボール62が自由に動けるようになっている。従って、ケース65に運動を与えてボール62を動かすと、ボール62は振動片21の自由端23から若干戻った位置で振動片21に衝突し振動片21に振動を与えるようになっている。この結果、振動片21の圧電体層22aおよび22bに起電力が発生し、発電が行われる。
本例の発電装置20は、振動片21に打撃を与えるボール62の等価質量を振動片21の等価質量に対し小さくできるので実施例1において詳述したように2次衝突を防止でき、ボール62から振動片21に対するエネルギー伝達効率を高くすることが可能である。また、振動片21に打撃を与えるボール62は、溝61の内部を自由に動けるようになっているので、回転錘や輪列を取り付けるためのベアリングなどの複雑な構造が不要となる。従って、簡易な構成で発電能力の高い発電装置を安価に提供することができる。さらに、溝61に複数のボール62を封入することによって振動片21に対する打撃回数を増加させることも可能であり、ケース65を動かすエネルギーをより効率よく振動片21に伝達することができる。
〔実施例6〕
第17図および第18図に、本発明の実施例に係る異なった発電装置20の概略構成を示してある。本例の発電装置20においては、振動片21を加振する打撃部にボール62を用いている。本例の発電装置20は、両端自由の矩形板型の振動片21を収納したケース65の内部に、円形の溝61が形成されており、この溝61の内部をボール62が自由に動けるようになっている。従って、ケース65に運動を与えてボール62を動かすと、ボール62は振動片21に衝突し振動片21に振動を与えるようになっている。この結果、振動片21の圧電体層22aおよび22bに起電力が発生し、発電が行われる。
また本実施例においては、振動片21の形状は第18図(a)に示すように両端自由の矩形板であるので、1次モードには節81aおよび81bができる。この節81aおよび81bを第18図(b)に図示した支持部材71aおよび71bで支持することで、振動片の固定による振動損失を防ぐ事ができる。
さらに片持ち梁の場合と同様に、振動片の高次モードの振動の節の近傍に打撃を与えることで高次モードの発生を抑制し、発電に寄与する1次モードの振幅を大きくできる。両端自由の矩形板の1次モードを第18図(c)に、2次モードを第18図(d)に、3次モードを第18図(e)に示す。図中の直線は矩形板の長手方向の位置を表し、曲線は変形時の形状を表す。図中の数値は矩形板の長手方向の長さをlとした時の振動の節の位置を示している。これらからすべてのモードにおいて振動の腹となる両端部でなく、2次、3次モードの節がある自由端から全長の10%〜13%中心側付近もしくは自由端から全長の36%〜50%の位置に打撃を与える事が望ましい。
本例の発電装置20は、振動片21に打撃を与えるボール62の等価質量を振動片21の等価質量に対し小さくできるので実施例1において詳述したように2次衝突を防止でき、ボール62から振動片21に対するエネルギー伝達効率を高くすることが可能である。また、振動片21に打撃を与えるボール62は、溝61の内部を自由に動けるようになっているので、回転錘や輪列を取り付けるためのベアリングなどの複雑な構造が不要となる。従って、簡易な構成で発電能力の高い発電装置を安価に提供することができる。さらに、溝61に複数のボール62を封入することによって振動片21に対する打撃回数を増加させることも可能であり、ケース65を動かすエネルギーをより効率よく振動片21に伝達することができる。
従って、本例の振動子21を用いて発電を行うことにより、両端自由の矩形板の特性を活かした振動損失率の小さな振動を発生させることができるので、機械的なエネルギー損失を抑制して発電効率の高い発電装置を提供することができる。
ここまで、実施例1〜5において本願の発明者らは2次衝突に伴う損失のない片持ち梁状の振動片と加振部(レバー、ボール等)の質量関係について確立し、また実施例6においては両端自由の矩形板状の振動片と加振部について同様な損失のない設定が可能である事を述べた。しかし、本発明はこれらの振動片・加振構造に限定されず、円板、台形板、矩形板、円筒、直方体等、任意の振動片と、レバー、ボール、板バネ等のいかなる加振部の組み合わせにおいても、第8図に示すように、加振部が振動片を打撃後、振動片に対し反対方向の速度が与えられるような設定を行う事で、2次衝突に伴う損失をなくすと言う同等の効果を得る事ができる。またこの設定は加振部の質量を徐々に減少させながら同じ振動片に衝突させ加振部を観察することで、容易に求める事ができる。すなわち加振部が移動片を打撃後、振動片に対し反対方向の速度が与えられるような発電装置は、全て本発明の範囲内である事は明白である。
なお、上記の実施例においては、金属片の支持層26の両側に2層の圧電体層22aおよび22bの形成されたバイモルフタイプの振動片、あるいは圧電体層22aおよび22bが積層された振動片を用いて発電を行う装置に基づき説明しているが、2層以上の複数層の圧電体が積層された振動片やユニモルフタイプの振動片などを用いても良いことはもちろんである。さらに、圧電体部を構成する素材はPZT(商標)、チタン酸バリウム系やチタン酸鉛系などのセラミック素材、水晶やニオブ酸リチウム等の単結晶、さらにPVDF等の高分子素材であってももちろん良い。
また、本発明は上記の実施例で説明した時計装置などの腕装着型の携帯型機器に限定するものではない。本発明は小型で発電能力の高い発電装置を提供できるので、他の小型で携帯型の電子機器に内蔵される発電装置として好適であり、例えばページャー、電話機、無線機、補聴器、万歩計、電卓、電子手帳などの情報端末、ICカード、ラジオ受信機などに本発明の発電装置を適用することが可能である。そして、これらの携帯型機器に本発明の発電装置を採用することにより、人間の動きなどを捉えて効率良く発電を行い、電池の消費を抑制したり、あるいは電池その物を不要にすることも可能である。従って、ユーザーは電池切れを心配せずに、これらの携帯型機器を使用することができ、電池切れによってメモリに記憶した内容が失われるなどのトラブルも未然に防止できる。さらに、電池や充電装置が容易に入手できない地域や場所、あるいは災害などによって電池の補充が困難な事態であっても携帯型電子機器の機能を発揮させることが可能となる。
産業上の利用の可能性
以上に説明したように、本発明は、圧電体層を備えた振動片を振動させて発電を行う発電装置において、振動片に打撃を与えて振動を励起する打撃部の等価質量を振動片の等価質量より小さくして振動片と打撃部との2次衝突が発生するのを防止している。このため、本発明により、2次衝突に起因するエネルギー損失を防止できるので、打撃部から振動片へのエネルギー伝達効率が非常に高い発電装置を提供できる。従って、本発明に係る発電装置は、回転錘などで発生した運動エネルギーを効率良く入力エネルギーとして振動片に与えることができるので、発電効率の高い圧電体層を備えた振動片を用いた発電装置において、振動片に対し大きな入力エネルギーを供給することが可能となり、発電能力の高い発電装置を実現できる。このため、圧電体を用いた小型で携帯可能な携帯型機器に電力を提供するのに適した発電装置を提供することができる。
さらに、本発明においては、振動片を加振する位置を2次モードの節の近傍にすることによって発電に寄与する1次モードの振幅を増大させ、入力されたエネルギーが有効に発電に用いられるようにしている。また、本発明においては、腕装着型機器に搭載された回転錘の回転運動を輪列を用いて増速し、運動エネルギーを分割して振動片に与えることにより振動時の機械的損失を低減して、変換効率を向上させることで、圧電体を用いた小型で発電能力の高い発電装置を実現している。また、複数の振動片を設けこれらに交互に加振レバーによって振動を加えることで、個々の振動片においては1回の打撃による振動の継続する時間を長く取ることができる。したがって振動片の振動中に次の加振が加えられることに起因する損失を防ぎ、効率向上を図る事ができる。その上、振動片を音叉や、両端自由の矩形板型とし1次モードの節上で支持することで固定損失を低減し、変換効率を向上でき、発電能力の高い圧電体を用いた発電装置を実現している。
このように、本発明の発電装置は、ユーザーの腕の動きなどを捉えて得た運動エネルギーを効率良く振動片に伝達することが可能となるので、小型・携帯型機器に十分な電力を供給できる発電装置を提供することが可能となる。
Claims (13)
- 圧電体層を備えた少なくとも1つの振動片と、この振動片に打撃を加えて振動を励起する加振装置とを有し、振動中の前記圧電体層で発生した電力を出力可能な発電装置において、前記加振装置は前記振動片に衝突する回転運動可能な打撃部と前記打撃部を駆動する駆動レバーを備えており、その打撃部の等価質量meが前記振動片の等価質量Meより小さく、
前記打撃部と前記振動片の衝突係数をeとしたときに、前記等価質量m e およびM e が次の式(C)を満たすことを特徴とする発電装置。
M e >((2・e+3・π+2)/3・π・e)×m e ・・・(C) - 請求項1において、前記振動片は片持ち梁状に取り付けられており、その質量をMH、固定された固定端から他方の自由端までの距離をlH、前記固定端から前記打撃部によって打撃が加えられる加振点までの距離をxH、振動モードの基準関数をΞnとしたときに、前記加振点における前記等価質量Meは次の式(A)で表され、前記打撃部は前記加振点に打撃を与える旋回式の加振レバーであり、その慣性モーメントをIb、旋回中心から前記加振点に打撃を与える打撃点までの距離をxbとしたときに、前記等価質量meは次の式(B)で表されることを特徴とする発電装置。
Me=MH/(Ξn(xH/lH))2・・・(A)
me=Ib/xb 2・・・(B) - 請求項1において、前記振動片は片持ち梁状に取り付けられており、前記打撃部は前記振動片の自由端から固定端の側に若干戻った前記振動片の2次モードの節近傍に打撃を与えることを特徴とする発電装置。
- 請求項1において、前記振動片は片持ち梁状に取り付けられており、前記振動片の自由端に重りが付加されていることを特徴とする発電装置。
- 請求項4において、前記振動片の片持ち梁部の質量をMH、固定された固定端から他方の自由端までの距離をlH、前記固定端から前記打撃部によって打撃が加えられる加振点までの距離をxH、振動モードの規準関数をΞn、前記重りの質量をMaとしたときに、前記加振点における前記等価質量Meは次の式(D)で表されることを特徴とする発電装置。
Me=Ma+MH/(Ξn(xH/lH))2・・・(D) - 請求項5において、前記重りは前記自由端の側に開いた凹部を備えており、前記打撃部は前記凹部の内側に打撃を与える加振レバーであることを特徴とする発電装置。
- 請求項1において、振動片が複数であることを特徴とする発電装置。
- 請求項1において、前記打撃部が前記振動片の周囲に形成された溝内部を運動する少なくとも1つのボールであることを特徴とする発電装置。
- 請求項1に記載の発電装置と、この発電装置から出力された前記電力によって作動可能な処理装置とを有することを特徴とする携帯型機器。
- 請求項1に記載の発電装置を収納するケースと、このケース内部で旋回可能に取り付けられた回転錘と、この回転錘の動きを増速して前記打撃部に伝達する輪列とを有し、前記打撃部は、前記輪列に連動して旋回駆動され前記振動片と衝突する加振レバーであることを特徴とする携帯型機器。
- 請求項10において、前記ケースは腕装着型であることを特徴とする携帯型機器。
- 請求項10において、前記加振レバーは前記輪列によって回転駆動されるレバーを備えており、この駆動レバーの一端と前記加振レバーの一端が当接し、当該加振レバーが旋回駆動されることを特徴とする携帯型機器。
- 請求項10において、前記加振レバーは、旋回中心と重心がほぼ一致することを特徴とする携帯型機器。
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