JP2004260896A - 発電機および電子機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】一方向から与えられる運動力を利用して効率よく発電できる小型の発電機を提供する。
【解決手段】一方向に長手方向を有するラックバー2と、ラックバー2に対する相対移動にて回動されるピニオン4と、ピニオン4の回転力を利用して発電する発電手段5とを備える。一方向の成分を有する運動力が与えられると、ラックバー2とピニオン4とが一方向に沿って相対移動を行う。この相対移動によりピニオン4が回転される。ピニオン4の回転により発電手段5で発電される。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発電機およびこの発電機を有する電子機器に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、小型の携帯電子機器に組み込まれて外部から与えられえる運動エネルギーを利用して発電を行う発電機が知られている。このような発電機としては、回転錘を備えた発電機と、揺動錘を備えた発電機とが知られている(特許文献1、2)。
回転錘を備えた発電機は、外部から与えられる振動によって回転される回転錘と、この回転錘の回転エネルギーを伝達する輪列と、輪列により伝達された回転エネルギーから発電する発電手段とを備えて構成されている。
【0003】
また、揺動錘を備えた発電機は、外部から与えられる振動によって揺動する揺動錘と、この揺動錘の揺動によって得られる回転エネルギーを伝達する輪列と、輪列により伝達された回転エネルギーから発電する発電手段とを備えて構成されている。
ここで、発電手段は、着磁されたロータと、ロータの回転により生じる磁束変動を伝達するヨークと、ヨークにて伝達された磁束変動から誘導電圧を起電する発電コイルとを備えて構成されている。
【0004】
このような構成において、外部から与えられえる運動エネルギーにより回転錘が回転する。あるいは、外部からの運動エネルギーにより揺動錘が揺動する。すると、この回転錘の回転や揺動錘の揺動により外部からの運動エネルギーが回転エネルギーに変換されて、この回転エネルギーが輪列によりロータに伝達される。ロータが回転されると、ロータの回転により生じる磁束変化がヨークにより発電コイルに伝達されて発電コイルに誘導電圧が起電される。そして、この電圧を利用して電子機器が動作を行う。
【0005】
回転錘は、様々な方向から運動エネルギーが与えられた場合であっても、これらあらゆる方向成分を有する運動エネルギーに対して回転することが可能である。よって、例えば腕時計の如く様々な方向に動かされる電子機器では、回転錘を利用した発電機が有用である。
揺動錘は、一方向からのみ(揺動錘の揺動方向からのみ)運動エネルギーが与えられる場合には、この運動エネルギーにより効率的に揺動することが可能であり、一方向からのみ与えられる運動エネルギーを電気エネルギーに変換する場合に有用である。
発電手段ではロータを回転させて発電を行うので、外部から与えられる運動エネルギーを回転錘や揺動錘の回転または揺動運動として受け取れば、受け取ったエネルギー(回転のエネルギー)をそのまま輪列等でロータまで伝達できるので、構造的にも簡便であるという利点を有する。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−174976
【特許文献2】
特開平9−322477
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、回転錘や揺動錘は、与えられる運動エネルギーを回転錘や揺動錘の「回転運動」により受け取るものである。よって、与えられる運動エネルギーの方向によっては必ずしも効率よくエネルギーを変換できるわけではない。特に、直線的に運動力が与えられる場合、回転錘ではこの運動エネルギーを受け取ることがほとんどできないという問題がある。
【0008】
揺動錘では、一方向から与えられた運動力により揺動することができるが、一方向の成分のみを有する直線運動の運動エネルギーであっても揺動運動として受け取っており、必ずしも効率よく運動エネルギーを回転エネルギーに変換できるわけではない。この変換効率の低さを補うため、回転運動をロータに伝達する輪列の増速比を大きくしたり、揺動錘のレバー比を大きくしたりするなどの対策が必要となる。すると、輪列や揺動錘に大きなスペースが必要になることから、発電機自体が大型化されるという問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、斯かる実情に鑑み、直線的な運動力を利用して効率よく発電できる小型の発電機およびこの発電機を有する電子機器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の発電機は、長手方向を有する長手部材およびこの前記長手部材に対して相対移動可能に設けられた回動部材を有しているとともに、前記長手方向に沿った成分を有する運動力を前記長手部材と前記回動部材との前記長手方向に沿った相対移動にて前記回動部材の回転運動力に変換する運動方向変換機構と、前記回動部材の回転運動によって発電する発電手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、長手部材の長手方向成分を有する運動力、例えば、長手方向成分のみを有する直線運動力が長手部材および回動部材のいずれか一方に与えられると、この運動力によって長手部材と回動部材とが長手方向に沿って直線的に相対移動する。すると、この長手部材と回動部材との相対移動により回動部材が回転する。回動部材の回転による回転運動を利用して発電手段にて発電される。
【0012】
長手部材と回動部材とが直線的に相対移動するので、与えられた運動力を長手部材と回動部材との直線的相対移動としてそのまま受け取ることができる。よって、特に、与えられる運動が直線運動である場合、この与えられる運動エネルギーの総てを受け取ることができる。その結果、直線的な運動が与えられる場合には、最も効率よく発電を行うことができる。
【0013】
また、運動方向変換機構により、長手部材と回動部材との直線的相対移動のエネルギーを回動部材の回転エネルギーに変換することができる。よって、この回転エネルギーを利用して発電手段で発電することができる。現在利用可能な発電手段としては、回転を利用した発電が最も効率が高く、構造的にも簡単である。例えば、着磁されたロータを回転させて得られる磁束変動から発電コイルで発電するものや、磁界のなかで発電コイルを回転させるものなどが知られているところである。
【0014】
したがって、直線的な運動が与えられる場合では、長手部材と回動部材との直線相対移動にてこの運動を受け取り、さらに、受け取った運動を回動部材の回転に変換する構成こそが発電効率を最も高くすることができる。すなわち、本発明によれば、与えられる直線的な運動に対する電力変換効率を最高レベルまで引き上げることができるという画期的な効果を奏する。
【0015】
長手部材と回動部材とが長手方向に沿って相対移動する長さがあれば直線運動のエネルギーを受け取ることができるので、長手方向に直交する方向の厚みは非常に薄くすることができる。この点、例えば、エネルギーを大きくするために振り幅のスペースを必要とする揺動錘に比べて、本発明の発電機は長手方向に直交する断面積を小さくして細長形状にできる。
また、磁石と発電コイルとを直線的に相対移動させて直線的な運動から発電を行う発電機もあるが、磁石と発電コイルとの移動時間が短く発電時間も短くなる。そして、磁石と発電コイルとの移動時間を長くするための減速を行うことも難しい。この点、長手部材と回動部材とが相対移動する際に、発電手段から発生する電磁ブレーキを回動部材に掛けるなどにより減速手段を構成できるので、発電時間を長くして、発電効率を向上させることができる。
【0016】
与えられる運動を効率よく回転運動に変換できるので、この回転を増速する増速手段などは別段なくてもよい。また、増速手段を設ける場合であっても、長手部材の長さを回動部材の円周長よりも何倍か長くすることで長手部材の運動を増速して回動部材に伝達することができる。よって、増速手段の増速比を小さくすることができ、増速手段の輪列を設けるスペースを小さくして小型の発電機とすることができる。
【0017】
本発明では、前記回動部材の回転運動を増速して前記発電手段に伝達する増速手段を備えていることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、回動部材の回転運動が増速して発電手段に伝達される。すると、例えば、ロータを回転させる発電手段において、ロータを高速回転させることができれば、ロータが小さくても十分な発電量を得ることができる。その結果、発電手段を小型化することができる。
また、増速手段により発電手段からの電磁ブレーキが増大されて回動部材に作用するため、回動部材に制動力を与えることができる。すると、長手部材と回動部材との相対移動時間を長くするなどにより、発電手段での発電時間を長くすることができる。
【0019】
本発明では、前記回動部材の回転運動のエネルギーを機械エネルギーとして蓄積する機械エネルギー蓄積手段を備えていることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、回動部材の回転によるエネルギーが一旦機械エネルギー蓄積手段にて蓄積される。機械エネルギー蓄積手段に蓄積されたエネルギーが順次発電手段に伝達されることにより、発電手段にて発電される。
機械エネルギー蓄積手段でエネルギーを蓄積することができるので、与えられるエネルギーが小さくて発電に不十分であっても、このエネルギーを蓄積しておいて発電に十分なエネルギーとして発電手段に与えることができる。よって、与えられる運動の総てを電力に変換することができる。
与えられる運動が不規則であった場合でも、機械エネルギー蓄積手段で一度蓄積してから一定量ずつ発電手段にエネルギーを伝達することができる。よって、安定した発電量および長い発電時間を得ることができる。
【0021】
本発明では、前記発電手段は複数設けられていることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、与えられるエネルギーが複数の発電手段に分散され、各発電手段においてこの分散されたエネルギーから発電が行われる。
エネルギーを分散して各発電手段に与えるので、一つの発電手段の発電量を減少させることができる。すると、一つの発電手段の大きさを小さくすることができる。例えば、ロータの回転による磁束変動がヨークを伝わって伝達される場合には、伝達する磁束が少なくてよいのでヨークの厚みを薄くすることができる。または、発電量が少なければロータの回転速度を低速にすることができるので、例えば、回動部材の回転を発電手段に伝達するのに増速手段を必要とせず、増速手段を用いる場合であっても輪列段数を少なくすることができる。よって、輪列効率を向上させて、回動部材から発電手段までのエネルギー伝達効率を向上させることができる。
【0023】
複数の発電手段を備えていれば、各発電手段で異なる電圧および位相で発電することもできる。また、電圧を高くしたい場合には発電手段を直列接続すればよく、電圧を一定にして電流値を上げたい場合には並列接続すればよい。よって、各回路ブロックごとの仕様に合わせた電力を得ることができる。
また、一つの発電手段の性能が劣化した場合であっても、他の発電手段で補うことができるので、信頼性を向上させることができる。
【0024】
本発明では、前記回動部材が複数設けられるとともに、それぞれの回動部材に対応した前記発電手段が設けられていることが好ましい。
【0025】
このような構成において、回動部材と発電手段とを合わせて一つの発電ユニットとして取り扱うことができるので、性能が異なる発電ユニットを組み合わせるなどにより仕様に合わせた設計を簡便に行うことができる。そして、発電ユニットが複数設けられているので、一つの発電ユニットが性能劣化しても他の発電ユニットで補うことができる。また、発電ユニットとして扱うことができるので、メンテナンスの際には発電ユニットごと交換すればよく、簡便である。
【0026】
本発明では、前記長手部材および前記回動部材の少なくともいずれか一方には、このいずれか一方の相対移動方向に対して反対方向の反力を付与する反力付与手段が設けられていることが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、長手部材と回動部材とが一方に相対移動した後、反力付与手段による反力によって逆方向に振り戻される。よって、運動が与えられたとき、長手部材と回動部材とが一度の相対移動で終わらず、相対移動の時間を長くすることができる。その結果、発電手段での発電時間を長くすることができる。
【0028】
本発明では、前記反力付与手段は、弾性体を備えて構成されていることが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、弾性体の弾性力によって反力を付与することにより長手部材と回動部材との相対移動を往復させることができる。さらに、与えられる運動の周期に弾性体の固有振動数を一致させるように弾性定数を決定すれば、与えられる運動の振幅が小さい場合でも、長手部材と回動部材との相対移動の幅を大きくすることができる。すると、小さな運動を、長手部材と回動部材との大きな相対移動として受け取ることができる。その結果、回動部材の回転エネルギーを大きくすることができるとともに、発電手段での発電量を大きくすることができる。
【0030】
ここで、弾性体としてはコイルバネであることが好ましい。
このような構成によれば、弾性定数の設定が容易である。また、金属性のコイルバネであれば耐久性があり、繰り返し大きな運動が与えられた場合でも性能を維持することができる。
【0031】
本発明では、前記長手部材は、剛性を有するとともに前記長手方向にラック歯を備え、前記回動部材は、前記ラック歯に噛合する歯を備えていることが好ましい。
【0032】
このような構成によれば、ラック歯と回動部材の歯との噛合により、長手部材と回動部材との相対移動のエネルギーが総て回動部材の回転エネルギーに変換される。歯が噛合することによりすべりが生じないので、与えられたエネルギーの総てを利用して発電手段で発電を行うことができる。
【0033】
ここで、前記長手部材は、柔軟で曲折可能であり、前記回動部材には、前記長手部材が少なくとも一回巻かれている構成であってもよい。例えば、プーリにベルトが巻きまわされていてもよい。
このような構成によれば、歯の噛合ではないので、歯が欠けたりすることがない。歯が噛み合う際の音がしないので静かである。歯が噛合する際に生じる粉塵等もないので、発電手段やその他の回路に影響を与える恐れもない。
【0034】
本発明では、前記長手部材および前記回動部材が収納されるケース体を備え、前記長手部材および前記回動部材のいずれか一方は前記ケース体に固定され、前記長手部材および前記回動部材のいずれか他方とともに移動する重錘を備えていることが好ましい。
【0035】
このような構成によれば、長手部材および回動部材に対して直線的な運動を与える場合には、重錘が重力によって下降するようにケース体を回動させる。すると、重錘とともに長手部材および回動部材のいずれか他方がケース体に固定されたいずれか一方に対して相対移動する。この相対移動により重錘の位置エネルギーが回動部材の回転エネルギーに変換される。そして、この回転エネルギーにより発電手段で発電される。
重錘の重さにより大きな位置エネルギーを得ることができるので、発電量を大きくすることができる。
【0036】
また、長手部材および回動部材に対して直線的な運動を与える場合には、ケース体に対して長手部材の長手方向に沿った直線的な運動を与える。すると、ケース体に固定された長手部材および回動部材のいずれか一方がケース体とともに移動する。このとき、ケース体の内部において、重錘には慣性力が作用するので、ケース体に対して重錘は相対移動する。したがって、重錘とともに移動する長手部材および回動部材のいずれか他方は、いずれか一方に対して相対移動する。この相対移動により回動部材が回転され、この回転により発電手段で発電される。
【0037】
ケース体を運動させる力で長手部材と回動部材とを相対移動させるためには、ケース体につられて長手部材も回動部材も一緒になって移動することを防ぐ必要がある。そこで、重錘を設けて十分に大きな慣性力を作用させることにより、長手部材と回動部材とを相対移動させることができる。そして、長手部材と回動部材との相対移動方向がケース体に与えられる運動方向と一致するとき、与えられる運動のエネルギーを最も効率良く受け取ることができる。
重錘を設けることで重さを与えることができるので、長手部材や発電手段は軽量な材料で形成することが可能であり、材料コストや加工コストを削減することができる。
【0038】
本発明では、前記長手部材の長手方向に略直交する対向方向で前記運動方向変換機構を間にして対向配置された上段プレートおよび中段プレートと、
前記発電手段を間にして前記中段プレートに対向配置された下段プレートとを備えていることが好ましい。
【0039】
このような構成によれば、運動方向変換機構と発電手段とを長手部材の長手方向に略直交する方向に重ねて配置することができる。すると、長手部材の長手方向に沿った方向では発電機を小型化してコンパクトにすることができる。
そして、この発電機をケース体に収納する場合、長手部材の長手方向に垂直な方向でケース体と発電機との隙間を生じにくい形状とすることもでき、この発電機をケース体に収納する際にデッドスペースを排して空間利用効率を向上させることができる。例えば、長筒状のケース体に収納する場合に、発電機の断面積をこのケース体の断面積と略同一にすることもできる。
【0040】
本発明では、前記下段プレートの前記発電手段に反対の面に接離可能に設けられた導通基板と、前記下段プレートを部分的に貫通して前記発電手段と前記導通基板とを導通する導通バネと、を備えていることが好ましい。
【0041】
このような構成によれば、発電機と導通基板とを簡単に分離あるいは接続できる。すると、例えば、発電手段を交換する際に、発電手段と導通基板とを簡便につなぐことができる。したがって、発電機を組み立てる際に、配線の手間を簡略化でき、組み立て性を向上させることができる。また、他の回路部分に配線を引き出す配線引出部を導通基板上の任意の位置に設けることができ、回路設計の自由度を向上させることができる。発電手段が複数設けられた場合であっても、この複数の発電手段と一枚の導通基板とを導通バネで接続すればよいので、回路配線の手間を簡略化することができる。
【0042】
本発明では、前記発電手段は、前記回動部材の回転にて回転される着磁されたロータ、前記ロータの磁束を伝達するヨークおよび前記ヨークにて伝達された磁束にて誘起電圧を生じる発電コイルを有し、前記発電コイルと前記長手部材とは互いの長手方向を揃えて略平行に配置され、前記運動方向変換機構と前記発電手段とは前記長手部材の長手方向に略直交する方向で重なって配置されていることが好ましい。
【0043】
このような構成によれば、運動方向変換機構と発電手段とが重ねて配置されることにより発電機全体をコンパクトにすることができる。さらに、発電コイルと長手部材とが互いの長手方向を揃えて配置されることから発電機全体の形状を長手部材の長手方向に沿って細長形状にすることができる。すると、発電機をケース体に収納する場合、ケース体の形状を細長い筒状とすることができる。
【0044】
本発明では、内部に前記運動方向変換機構および前記発電手段を収納する収納空間を有する長筒形状のケース体を備えることが好ましい。
【0045】
このような構成によれば、発電機は長手部材を備えるところ、長筒形状のケース体に収納可能であり、全体として長細形状に形成することができる。すると、デザイン的にもシンプルであり、また、持ち運びにも場所を取らず便利である。そして、ケース体の外観をペンシル形状に模してデザインするなどにより、美観性を向上させることができる。また、ケース体が長筒形状であればケース体を軸方向に往復運動させやすく、ケース体を軸方向に直線的に往復運動させることより運動方向変換機構に直線的な運動力を与えやすい。
【0046】
本発明では、前記回動部材および前記発電手段を搭載した状態で前記ケース体に取り付けられる接続板を備えていることが好ましい。
【0047】
このような構成において、例えば、回動部材とこの回動部材に対応する発電手段とを有して構成された発電ユニットを複数設ける場合に、この複数の発電ユニットを一つの接続板上に搭載することで全体として一つのユニットとして取り扱うことができる。複数の発電ユニットを設ける場合には、長手部材に沿った直線性を保って複数の回動部材を配設しなければならないが、接続板上での発電ユニットの位置を微調整することによって簡便に回動部材の位置を調整することができる。よって、回動部材の総てが長手部材との相対運動にて確実に回転され、総ての発電ユニットにおいて確実かつ均等に発電を行うことができる。
ケース体が取り替えられる場合でも、ケース体に取り付けられている接続板を取り替えるだけでよく、発電ユニット自体の構成を変更する必要がない。よって、組み立て性が向上するとともに、設計の自由度も向上する。
【0048】
ここで、前記回動部材および前記発電手段を搭載した状態で前記ケース体に固定される接続板を備え、前記長手部材の一端に重錘が設けられ、前記接続板は、前記回動部材および前記発電手段よりも前記重錘に近接するとともに前記重錘が前記回動部材および前記発電手段に到達する手前で前記重錘に接触する近接点を有することが好ましい。
【0049】
このような構成によれば、長手部材と回動部材とが相対移動するときに長手部材に設けられた重錘は、回動部材や発電手段に接近してくる。このとき、接続板の重錘への近接点が回動部材や発電手段よりも先に重錘に接触する。すると、重錘が回動部材および発電手段に衝突することを防止することができる。よって、回動部材や発電手段の損傷を防止することができ、発電性能を維持して信頼性を向上させることができる。
【0050】
本発明の電子機器は、上記のいずれかに記載の発電機を有することを特徴とする。
【0051】
このような構成によれば、発電機で発電した電力を用いて電子機器が動作を行うことができる。特に、一方向の成分を有する運動が与えられるような電子機器であれば、与えられる運動を発電手段により高効率で電力に変換することができる。よって、商用電源を引くことも必要なく、電池交換などのメンテナンスも必要ない。
【0052】
ここで、電子機器としては、例えば、携帯電話、腕時計、他の電子機器に対する遠隔操作手段(リモートコントローラ)、電子計算機など、小型の電子機器であって持ち運びできるものが挙げられる。これら電子機器の電池の代用として本発明の発電機を組み込むことが考えられる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
(第1実施形態)
本発明の発電機に係る第1実施形態について図1、図2、図3を参照して説明する。
この発電機100は、図1に示されるように、ケース体1と、このケース体1の内部で長手方向に沿って進退可能に設けられた長手部材としてのラックバー2と、ラックバー2が挿通されるとともにケース体1に固定して設けられ発電を行う発電ユニット3とを備えて構成されている。
【0054】
なお、ケース体1内には、発電ユニット3からの電力で動作する回路ブロック11が設けられ、この発電機100と回路ブロック11とを含んだ全体として電子機器が構成されている。
この回路ブロック11としては、発電ユニット3にて発電された電力を整流する整流器や、整流された電力を蓄電する蓄電手段としての2次電池や、2次電池からの電力を利用して動作を行う動作部を備えたものが挙げられる。また、動作部としては、各種信号の送受信を行う受信回路および発信回路や、計時を行う計時手段などが例として挙げられる。なお、整流回路等は、図示するように発電ユニット3とは別体として設けられてもよく、あるいは、発電ユニット3内に組み込まれていてもよい。
【0055】
ケース体1は、所定長さを有する空洞部(収納空間)12を有し、この空洞部12の長さはラックバー2が移動するのに十分である。
ラックバー2は、長手方向に進退可能であり、その一端には重錘21が取り付けられている。この重錘21の重量としては、重錘21に作用する力から発電ユニット3で発電するのに十分なエネルギーを得られる程度にすることが例として挙げられる。換言すると、発電ユニット3からラックバー2に加えられる制動力(ブレーキ)に打ち勝ってラックバー2を発電ユニット3に対して相対移動させるのに十分な重量である。
ラックバー2は、その一側面に長手方向に沿ったラック歯22を備えている。
【0056】
図2に、発電ユニット3の内部構造を示す平面図を示し、図3に、発電ユニット3の断面図を示す。
発電ユニット3は、ラック歯22に噛合して回転される回動部材としてのピニオン4と、ピニオン4の回転を利用して発電する発電手段5と、ピニオン4から発電手段5まで回転を増速して伝達する増速手段としての回転伝達手段6と、これらピニオン4、発電手段5および回転伝達手段6を上下から挟んで保持する上段プレート71および下段プレート72と、上段プレート71と下段プレート72との間に設けられピニオン4と発電手段5とを区画する区画部材としての中段プレート73と、ラックバー2の移動方向を長手方向に沿った方向に規制する規制手段8とを備えて構成されている。
【0057】
ピニオン4は、ラックバー2のラック歯22に噛合する歯41を備えている。ピニオン4は上段プレート71と中段プレート73とで軸受けされ、上段プレート71と中段プレート73とで区画形成される回動部材配置空間としてのピニオン配置空間74に配置されている。
なお、ラックバー2とピニオン4とを備えて運動方向変換手段が構成される。
【0058】
発電手段5は、磁性体としての永久磁石から形成されたロータ51と、ロータ51の回転により生じる磁束変動から誘導起電圧を発生する発電コイル52と、ロータ51を回転可能に保持するとともにロータ51からの磁束を発電コイル52の中心に導くヨーク53とを備えて構成されている。
発電手段5は、中段プレート73と下段プレート72とにて区画形成される発電手段配置空間75に配置されている。
【0059】
回転伝達手段6は、ピニオン4に同軸で一体回転する大歯車61と、大歯車61に噛合する伝え小歯車62と、伝え小歯車62に同軸に設けられた伝え大歯車63と、伝え大歯車63に噛合してロータ51と一体回転するロータかな64とを備えて構成されている。なお、伝え小歯車62の回転軸621と伝え大歯車63とは遊嵌されており、伝え小歯車62の回転軸621と一体回転するすべりクラッチ622が伝え大歯車63に所定圧力で押圧されている。
また、伝え小歯車62およびロータ51は中段プレート73と下段プレート72とで軸受けされている。
【0060】
規制手段8は、ラックバー2を間にしてピニオン4とは反対側で、ラックバー2の移動方向(長手方向)に沿って一定の距離を持って設けられた二本のピン81、82を備えて構成されている。それぞれのピン81、82は、ピニオン4とともにラックバー2を挟んでおり、ピニオン4と二本のピン81、82とによる三点支持によりラックバー2の進行方向を規制している。
【0061】
下段プレート72の下面には、導通基板721が設けられ、導通基板721は下段プレート72に止めねじによって固定されている。下段プレート72には、発電コイル52と導通基板721とを導通する金属性の導通バネ(不図示)が下段プレート72を部分的に貫通して設けられている。導通基板721には図示しない接続端子が設けられ、この接続端子から回路ブロック11に配線されて接続されている。なお、この導通基板721上に整流回路などの回路ブロックを実装してもよい。
【0062】
このような構成を備える第1実施形態の動作について説明する。
発電を行う際には、ラックバー2およびピニオン4を長手方向に沿って直線的に相対移動させる力を与える。例えば、重錘21が重力で下降するようにケース体1を回動させる。つまり、ラックバー2が鉛直方向を向くようにケース体1を回動させる。すると、重錘21に作用する重力はラックバー2に対して長手方向に沿って直線的な力として作用し、重錘21とともにラックバー2が下降する。ラックバー2の下降によって、ラックバー2と発電ユニット3とが相対移動を行う。
【0063】
また、ケース体1に対してラックバー2の長手方向に沿った成分を有する運動、例えば振動を与える。このとき、ケース体1内においては、発電ユニット3はケース体1に固定されているのでケース体1と一体的に移動する。これに対して、ラックバー2には、重錘21の十分な重さによって生じる慣性力がラックバー2の長手方向に沿って直線的に作用する。すると、ラックバー2はケース体1と一体的に移動することなく、ケース体1に対して相対移動する。すなわち、ラックバー2と発電ユニット3とが直線的に相対移動を行う。
【0064】
ラックバー2と発電ユニット3とが相対移動を行うことにより、ラック歯22に噛合したピニオン4が回転される。ピニオン4の回転は、回転伝達手段6により発電手段に伝達される。すなわち、ピニオン4の回転が、大歯車61から伝え小歯車62、伝え大歯車63を経てロータかな64に伝達され、ロータかな64とともにロータ51が回転される。
ロータ51の回転により生じた磁束変動はヨーク53を伝わって発電コイル52に導かれ、発電コイル52はこの磁束変動により誘起電圧を発電する。
なお、ピニオン4が過度に急速回転する場合には、すべりクラッチ622と伝え大歯車63との間で滑りが生じて、ピニオン4の急回転はロータ51に伝達されない。
発電手段5で発電された電流は、回路ブロック11内の整流器で整流されたのち、2次電池に蓄電され、その後、電波の送受信などに利用される。
【0065】
このような第1実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)ラックバー2が発電ユニット3に対して直線的に相対移動可能に設けられている。よって、ラックバー2に直線的に作用するエネルギーをそのままラックバー2の直線運動として受け取ることができる。その結果、直線運動により与えられるエネルギーを最も効率よく受け取ることができる。そして、エネルギーを効率よく受け取ることができることから、電力変換効率を向上させることができる。
【0066】
(2)ラック歯22とピニオン4の歯41とが噛合しているので、互いに滑ったりすることなく、ラックバー2とピニオン4との相対移動が総てピニオン4の回転に変換される。よって、ラックバー2の直線的移動にて受け取った外部からのエネルギーのすべてを効率よく回転エネルギーに変換することができる。さらに、ラックバー2の長さをピニオン4の円周長よりも長くすることにより、ラックバー2の運動を増速してピニオン4を回転させることができる。
【0067】
(3)ラックバー2の一端には重錘21が設けられている。よって、ケース体1を傾けていき、重錘21を下降させるようにラックバー2を鉛直に立てると、重錘21に作用する重力によりラックバー2に長手方向に沿った直線的な力を与えることができる。そして、このラックバー2と発電ユニット3とがこの直線的な力の方向に相対移動可能であるので、重錘21の重さにより得られる位置エネルギーをそのまま利用して発電を行うことができる。
また、重錘21が設けられているので、ケース体1にラックバー2の長手方向に沿って直線的な力を加えると、重錘21に慣性力が生じる。この慣性力は、ラックバー2に長手方向に沿った方向で作用する。よって、ケース体1に直線的に与えられた力をそのままラックバー2と発電ユニット3との相対移動として受け取り、発電に利用することができる。
【0068】
(4)上段プレート71、中段プレート73および下段プレート72が設けられているので、これらプレート71〜73によってピニオン4と発電手段5とを上下方向(ピニオン4の回転軸方向)で重ねて配置することができる。ピニオン4や回転伝達手段6などの歯車は、回転軸方向の薄さに比して径方向に大きさをもっているため、ピニオン4と発電手段5とを平面的に配置するには広いスペースを必要とする。しかし、歯車の薄い方である回転軸方向でピニオン4と発電手段5とを重ねることができるので、発電ユニット3の全体形状を小型化することができる。また、中段プレート73が設けられ、ピニオン4と発電手段5とが区画されている。したがって、ピニオン4がラック歯22により回転される際に粉塵が生じる場合であっても、発電手段5にはこの粉塵が入らない。したがって、ロータ51や発電コイル52に接続された配線等に粉塵が付着することがなく、故障するおそれがない。
【0069】
(5)回転伝達手段6が設けられ、ピニオン4の回転が増速されてロータ51に伝達される。したがって、ラックバー2の直線運動で得られたエネルギーでロータ51を高速に回転させることができる。すると、小型のロータであっても高速回転させることで発電量を確保することができることから、発電手段5を小型化することができる。
あるいは逆に、回転伝達手段6によって、発電コイル52からロータ51に与えられる電磁ブレーキをピニオン4に伝達することができる。例えば、重錘21を下降させるようにラックバー2を鉛直に立てた場合に、ピニオン4の回転を制動することによりラックバー2の移動に制動をかけてラックバー2の移動時間を長くすることができる。その結果、発電時間を長くすることができる。
そして、ラックバーの長さをピニオンの円周長に比べて何倍にもできるので、ラックバーの直線運動をピニオンの回転運動に変換するときに増速することができる。よって、回転伝達手段6における増速比は小さくてもよく、その結果として、輪列でエネルギーを伝達する際のエネルギー損失を減少させ、輪列効率を向上させることができる。また、輪列の段数も少なくてよいので、全体を小型化できる。
【0070】
(6)ラックバー2がケース体1に対して相対移動可能であるのに対し、発電ユニット3がケース体1に固定されている。発電ユニット3がケース体1に固定されているので、発電ユニット3から回路ブロック11に引かれた配線が動かされず、断線等のおそれが無い。
【0071】
(7)すべりクラッチ622が設けられているので、ケース体1に急激に大きな力が掛かってピニオン4が過度に急回転した場合でも、ピニオン4の急回転がロータ51に伝達されない。よって、発電手段5の故障を防止することができる。
【0072】
(8)規制手段8のピン81、82が設けられているので、ラックバー2の移動方向を規制することができるとともに、ラック歯22とピニオン4の歯41とを確実に噛合させることができる。
(9)導通基板721が下段プレート72に止めねじ722で固定され、この導通基板721と発電コイル52とが導通バネで接続されているので、発電ユニット3と導通基板721との分離および接合が簡便である。従って、部品の交換や組み立てを簡便に行うことができ、組み立て性を向上させることができる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、本発明の発電機に係る第2実施形態について図4、図5、図6を参照して説明する。第2実施形態の基本的構成は第1実施形態と同様であるが、第1実施形態と異なる点は、機械エネルギー蓄積手段を備えている点である。
図4に、第2実施形態における発電ユニット3の平面図を示し、図5には、発電ユニット3の断面図を示す。
【0074】
この第2実施形態において、図4、図5に示されるように、ピニオン4と、発電手段5と、上段プレート71と、下段プレート72と、中段プレート73とを備えている点は、第1実施形態と同様である。
ピニオン4の回転を発電手段5に伝達する回転伝達手段6は、ピニオン4の回転方向を所定の方向に変換して伝達するクラッチ機構65と、ピニオン4の回転エネルギーを蓄積する機械エネルギー蓄積手段67と、機械エネルギー蓄積手段67に連結された伝え小歯車68と、伝え小歯車68と一体回転して発電手段5に回転を伝達する伝え大歯車69とを備えて構成されている。
【0075】
クラッチ機構65は、ピニオン4の回転面の上側に設けられピニオン4の一方向回転にのみ連動して回転する第1クラッチ車651と、ピニオン4の回転面の下面に設けられピニオン4の他方向回転にのみ連動して回転する第2クラッチ車654と、第2クラッチ車654に連結された第1クラッチ伝え車657と、第1クラッチ車651および第1クラッチ伝え車657のそれぞれに連結された第2クラッチ伝え車658とを備えて構成されている。
【0076】
ピニオン4の回転面上面には、図6に示されるように、一端をピニオン4の回転面に揺動可能に軸着421され、他端の自由端422をピニオン4の回転中心側に付勢された第1ツメ部材42が設けられている。この第1ツメ部材42は、自由端422をピニオン4の一回転方向に向けて配設されており、ピニオン4が所定の一方向に回転したときのみ自由端422で相手を押すことができる。
ピニオン4の回転面下面には、一端がピニオン4の回転面に揺動可能に軸着431され、他端の自由端432がピニオン4の回転中心側に付勢された第2ツメ部材43が設けられている。この第2ツメ部材43は、自由端432をピニオン4の他回転方向に向けて配設されており、ピニオン4が他方向に回転したときのみ自由端432で相手を押すことができる。
すなわち、第1ツメ部材42と第2ツメ部材43とでは、相手を押せる方向が逆である。
【0077】
第1クラッチ車651の下面には、第1クラッチ車651と一体回転するとともに第1ツメ部42に対して係合あるいは滑動する第1ツメ車652が設けられている。第1ツメ車652は、外周に複数のツメ653を有している。これらのツメ653は、第1クラッチ車651の回転可能方向とは逆向きに傾斜して設けられ、傾斜内面にて第1ツメ部材42と係合し、傾斜外面にて第1ツメ部材42を滑動させる。第1ツメ車652がピニオン4と第1クラッチ車651との間に挟持された際には、第1ツメ部材42の自由端422が第1ツメ車652に当接される。
【0078】
第2クラッチ車654の上面には、第2クラッチ車654と一体回転するとともに第2ツメ部材43に対して係合あるいは滑動する第2ツメ車655が設けられている。第2ツメ車655は、外周にツメ656を有し、これらのツメ656は、第2クラッチ車654の回転可能方向とは逆向きに傾斜して設けられ、傾斜内面にて第2ツメ部材43と係合し、傾斜外面にて第2ツメ部材43を滑動させる。第2ツメ車655がピニオン4と第2クラッチ車654との間に挟持された際には、第2ツメ部材43の自由端が第2ツメ車655に当接される。
【0079】
第2クラッチ伝え車658は、第1クラッチ車651に噛合された第2クラッチ伝え上段車659と、この第2クラッチ伝え上段車659と同軸かつ一体回転可能であり第1クラッチ伝え車657に噛合された第2クラッチ伝え下段車660とを備えて構成されている。なお、第2クラッチ伝え上段車659が機械エネルギー蓄積手段67に連結されている。
【0080】
機械エネルギー蓄積手段67は、回転軸である香箱真671に同軸に設けられ第2クラッチ伝え上段車659に噛合された角穴車672と、香箱真671を回転軸とするとともに内部に空間を有する香箱車673と、香箱車673内に香箱真671を取り巻いて設けられ一端が香箱真671に取り付けられ他端が香箱車673に取り付けられたぜんまい674とを備えて構成されている。
香箱車673には、伝え小歯車68が噛合され、この伝え小歯車68と同軸で一体回転する伝え大歯車69にロータ51のロータかな64が噛合している。
【0081】
上段プレート71と中段プレート73とにより区画されるピニオン配置空間74にピニオン4、第1クラッチ伝え車657、第2クラッチ伝え車658および機械エネルギー蓄積手段67が配置され、上段プレート71と中段プレート73とにてピニオン4、第1クラッチ伝え車657、第2クラッチ伝え車658および香箱真671が軸受けされている。
中段プレート73と下段プレート72とにより区画される発電手段配置空間75には、伝え大歯車69および発電手段5が配置され、中段プレート73と下段プレート72とにて伝え大歯車69およびロータ51が軸受けされている。
【0082】
このような構成を備える第2実施形態の動作を説明する。
ピニオン4が一方向に回転すると、第1ツメ部材42が第1ツメ車652のツメ653に係合して第1ツメ車652を押す。すると、ピニオン4の一方向への回転が第1ツメ部材42を介して第1ツメ車652に伝わり、第1ツメ車652とともに第1クラッチ車651が回転される。このとき、第2ツメ部材43は第2ツメ車655上を滑動するのみであり、ピニオン4の回転は第2クラッチ車654に伝達されない。
第1クラッチ車651の回転は第2クラッチ伝え上段車659に伝達され、第2クラッチ伝え上段車659により角穴車672が回転される。
【0083】
一方、ピニオン4が他方向に回転すると、第2ツメ部材43が第2ツメ車655に係合して第2ツメ車655を押す。すると、ピニオン4の他方向の回転が第2ツメ部材43を介して第2ツメ車655に伝わり、第2ツメ車655とともに、第2クラッチ車654が回転される。このとき、第1ツメ部材42は第1ツメ車652上を滑動するのみであり、ピニオン4の回転は第1クラッチ車651に伝達されない。
第2クラッチ車654の回転は、第1クラッチ伝え車657に伝達され、第1クラッチ伝え車657の回転は第2クラッチ伝え下段車660に伝達される。第2クラッチ伝え下段車660とともに第2クラッチ伝え上段車659が一体回転し、第2クラッチ伝え上段車659により角穴車672が回転される。
【0084】
角穴車672の回転により香箱真671が回転され、香箱真671の回転によりぜんまい674が巻き締められる。ぜんまい674の巻き締め量が一定値を超えると、香箱車673がぜんまい674のほどける力(巻き戻す力)で回転される。香箱車673の回転は、伝え小歯車68から伝え大歯車69を介して発電手段5に伝達され、発電手段5にて発電される。
【0085】
このような第2実施形態によれば第1実施形態の効果(1)〜(4)(6)(8)に加えて、次の効果を奏することができる。
(10)機械エネルギー蓄積手段67が設けられているので、ピニオン4の回転エネルギーがぜんまい674の弾性エネルギーとして一旦蓄積される。よって、ピニオン4の回転エネルギーが小さい場合でも、このエネルギーを発電に十分な量にまで蓄積してから発電手段5に伝達することができる。よって、ケース体1に与えられるすべてのエネルギーを効率よく電力に変換することができる。
【0086】
(11)クラッチ機構65が設けられているので、ピニオン4の回転方向に関わらず、角穴車672が常に所定の方向に回転される。よって、ラックバー2と発電ユニット3との相対移動方向に関わらず、ケース体1に加えられた直線的な運動力のすべてを電力に変換することができる。
【0087】
(12)ピニオン4の回転が過度に急速である場合でも、このピニオン4の回転によるエネルギーを機械エネルギー蓄積手段67で一旦蓄積してから、ぜんまい674の巻き戻し力でロータ51を一定の回転速度で回転させることができる。よって、発電量が安定するとともに、発電時間を長くすることができる。
【0088】
(第3実施形態)
次に、本発明の発電機に係る第3実施形態を、図7、図8を参照して説明する。この第3実施形態の基本的構成は第1実施形態と同様であるが、第1実施形態と異なる点は、重錘の形状および配置にある。
【0089】
この第3実施形態において、ケース体1と、ラックバー2と、発電ユニット3とを備えている点は第1実施形態と同様である。
ケース体1は、内部に直線状の空洞部12を有し、この空洞部12は所定の長さを有している。この空洞部12内には、空洞部12内を進退する重錘21が設けられている。
重錘21は、進退方向に対して直交方向に穿設された貫通孔211を備えている。この貫通孔211は、重錘21の進退方向に沿って一定の幅を有し、この幅としてはラックバー2の長さに若干の余有をもつ程度である。
貫通孔211内には、ラックバー2およびこのラックバー2が挿通された発電ユニット3が配置される。ここで、発電ユニット3は、貫通孔211の長さ(深さ)より僅かに長く、発電ユニット3は貫通孔211を貫通して一面31および他面32がケース体1の内壁面に固定されている。
ラックバー2は、貫通孔211内において重錘21の進退方向と平行に配置され、両端面は貫通孔211の内面に対して固定されていない。
【0090】
このような構成を備える第3実施形態の動作を説明する。
重錘21が重力で下降するようにケース体1を回動させる。すると、重錘21の移動とともにラックバー2が移動し、ラックバー2が発電ユニット3に対して相対移動を行う。または、ケース体1を直線的に運動、例えば振動させる。すると、発電ユニット3はケース体1と一体的に移動するのに対して、重錘21は慣性力の作用によりケース体1に対して相対的に移動する。ラックバー2は貫通孔211の内面に押されて重錘21とともに移動し、結果としてラックバー2と発電ユニット3とが相対移動する。
以後、ラックバー2と発電ユニット3との相対移動によって発電手段5にて発電が行われる。
【0091】
このような第3実施形態によれば、上記実施形態の効果(1)(2)(4)〜(12)に加えて、次の効果を奏することができる。
(13)ラックバー2が重錘21の中に配置されているので、重錘21とラックバー2とが離れてしまう心配がない。例えば、ラックバー2の一端に重錘21を取り付ける場合、ラックバー2には重錘からの慣性力と発電ユニット3からケース体1とともに移動させる力とが作用するので、ケース体1が強く振られるときでも重錘21とラックバー2とが外れてしまわないように両者を強固に結合する必要がある。本実施形態では、ラックバー2を重錘21の中に納めているので、貫通孔211からラックバー2が飛び出す恐れがなく、さらには、重錘21とラックバー2とを固定する必要もない。
【0092】
(14)ケース体1の空洞部12内において重錘21が占める部分を大きくすることができる。例えば、第1実施形態ではラックバー2に直交する方向には利用されないデッドスペースが広がっているのに対し、本実施形態ではラックバー2に直交する方向も重錘21で占められるため、デッドスペースを排して重錘21を大きくし、重錘21の重量を増加させることができる。あるいは、重錘21を同じ重量とする場合には、空洞部12の大きさを小さくすることができ、全体を小型化することができる。
【0093】
(第4実施形態)
次に、本発明の発電機に係る第4実施形態について図9を参照して説明する。この第4実施形態の基本的構成は第1実施形態と同様であるが、第4実施形態の特徴とする点は、ラックバー2の運動方向に対して反力を付与する反力付与手段が設けられている点である。
【0094】
この第4実施形態において、ケース体1と、ラックバー2と、発電ユニット3と、重錘21とを備えている点は第1実施形態と同様である。
ケース体1は、内部に所定長さを有する空洞部12を備え、この空洞部12内には、発電ユニット3を固定して収納するための収納空間を形成する中仕切板14、15が設けられている。中仕切板14、15は2枚設けられ、発電ユニット3を挟持する位置で固定されている。ラックバー2は、発電ユニット3に挿通され、空洞部12内を進退可能である。
【0095】
重錘21は、ラックバー2の一端に取り付けられている。
重錘21とケース体1の内壁面との間、および、重錘21と重錘21側に位置する中仕切板14との間には、それぞれ反力付与手段13が設けられている。反力付与手段13は弾性体としてのバネ131、132を備えて構成されている。
【0096】
重錘21とケース体1の内壁面との間には第1バネ131が介装されている。第1バネ131の一端がケース体1の内壁面に固定され、他端が重錘21に固定されている。また、重錘21と重錘21側に位置する中仕切板14との間には、第2バネ132が介装されている。第2バネ132の一端が重錘21に固定され、他端が中仕切板14に固定されている。第1バネ131および第2バネ132はコイルバネであって、重錘21が所定の釣り合い位置にあるときに互いに自然長となる。第1バネ131および第2バネ132の弾性定数は、重錘21の重量やケース体1に加えられる振動の周期等を勘案して決定される。例えば、ケース体1に加えられる運動の振動周期に重錘21の振動を共振させる弾性定数に設定することが例示される。
なお、ラックバー2は、第2バネ132のコイル中を挿通して設けられている。
【0097】
このような構成を備える第4実施形態の動作を説明する。
重錘21が重力で下降するようにケース体1を回動させると、重錘21の移動によりラックバー2と発電ユニット3とが相対移動を行う。または、ケース体1に直線的な運動を与えると、重錘21には慣性力が作用し、重錘21とケース体1とは相対移動する。このとき、発電ユニット3はケース体1とともに移動し、ラックバー2は重錘21とともに移動するので、発電ユニット3とラックバー2とが相対移動する。以後、ラックバー2と発電ユニット3との相対移動によって発電手段5にて発電が行われる。
【0098】
重錘21がケース体1に対して相対移動すると、第1バネ131および第2バネ132のいずれか一方は伸長されいずれか他方は圧縮される。例えば、重錘21が発電ユニット3に対して遠ざかる方向に相対移動すると、第1バネ131が圧縮されて第2バネ132が伸長される。すると、第1バネ131および第2バネ132の弾性力により、重錘21には発電ユニット3側へ移動させる力(反力)が作用する。この第1バネ131および第2バネ132により、一旦発電ユニット3から遠ざかった重錘21が逆に発電ユニット3側へ押し返される。この重錘21の往復移動は第1バネ131および第2バネ132の弾性エネルギーが減衰して消失するまで継続する。
重錘21の往復移動とともにラックバー2が往復移動し、発電ユニット3にて発電が行われる。
【0099】
このような第4実施形態によれば、上記実施形態の効果(1)〜(12)に加えて、次の効果を奏することができる。
(15)第1バネ131および第2バネ132が設けられているので、重錘21が釣り合いの位置から移動すると、重錘21に釣り合いの位置へ引き戻す反力が付与される。よって、重錘21はケース体1に対して片方に相対移動した後さらに逆方向に揺り戻されて運動を続ける。すなわち、与えられたエネルギーを第1バネ131および第2バネ132に蓄積することによって、一度の運動で使い果たすことなく長く利用できるので、ケース体1に加えられた運動を利用して効率よく発電することができる。
【0100】
(16)ケース体1に与えられたエネルギーを一度の運動で使い果たさないで、第1バネ131および第2バネ132に蓄積することができるので、重錘21が下降する時間が短くても、あるいは、ケース体1が振られる時間が短くても、発電時間を長くすることができる。
【0101】
(17)第1バネ131および第2バネ132の弾性定数を適宜設定してケース体1に与えられる運動の周期と重錘の振動とを共振させれば、重錘21の振動幅を大きくすることができる。すると、この重錘21の大きな振幅により発電効率が向上される。
【0102】
(18)過大なエネルギーが勢い良く加えられて、重錘21がケース体1に対して過度に勢い良く相対移動する場合でも、第1バネ131および第2バネ132が間に入ることで重錘21とケース体1、もしくは、重錘21と中仕切板14との衝突の勢いが緩衝される。その結果、ケース体1の損壊などによる故障を防止する。
【0103】
(19)第1バネ131および第2バネ132がコイルバネであるので、例えばゴムなどに比べて弾性定数の設定が容易であり、また耐久性も高い。その結果、発電機100の信頼性を高めることができる。
【0104】
(第5実施形態)
次に、本発明の発電機に係る第5実施形態について図10、図11を参照して説明する。
第5実施形態の基本的構成は、第1実施形態と同様であるが、第5実施形態の特徴とする点は、固定されたラックバー2に対して発電ユニット3が相対移動可能に設けられている点である。
この第5実施形態において、ケース体1と、ラックバー2と、発電ユニット3と、重錘21とを備えている点は第1実施形態と同様である。
【0105】
ケース体1は、内部に空洞部12を有し、この空洞部12は所定長さを有する。ラックバー2は、空洞部12内において、両端がケース体1の内壁面に固定されている。発電ユニット3は、ラックバー2に沿って進退可能に設けられている。
発電ユニット3の下面には重錘21が取り付けられている。重錘21とケース体1との間には所定の間隙が設けられている。
なお、発電ユニット3の下面には、重錘21とともに回路ブロック(不図示)が設けられている。
【0106】
図11(A)に発電ユニット3の内部の平面図を示し、図11(B)に発電ユニット3の断面図を示す。発電ユニット3は、発電ユニット3の移動方向をラックバー2に沿う方向に規制するラック受け33と、ラックバー2に噛合して回転するピニオン4と、ピニオン4の回転により発電を行う発電手段5と、ラック受け33、ピニオン4および発電手段5を挟持して保持する受け板76および地板77と、を備えて構成されている。
【0107】
ラック受け33は、断面が略コ字状の溝331を有し、ラックバー2はこの溝331内に緩嵌されている。ピニオン4は、ラックバー2のラック歯22と噛合し、ラック受け33とともにラックバー2を挟持している。発電手段5は、ピニオン4と同軸に設けられピニオン4と一体回転するロータ51と、ロータ51の磁束を伝達するヨーク53と、ヨーク53にて伝達された磁束により誘起電圧を起電する発電コイル52とを備えている。なお、ピニオン4の軸は、受け板76および地板77にて軸承されている。
【0108】
このような構成を備える第5実施形態の動作について説明する。
重錘21が重力で下降するようにケース体1を回動させる。すると、重錘21とともに発電ユニット3が下降して、発電ユニット3とラックバー2とが相対移動を行う。
また、ケース体1に対して直線的な運動、例えば振動を与えると、ケース体1内において、ラックバー2はケース体1に固定されているのでケース体1と一体的に移動される。これに対して、発電ユニット3には、重錘21の十分な重さによりケース体1内において慣性力が作用する。すると、発電ユニット3は、ケース体1と一体的に移動することなく、ラックバー2に対して相対移動される。すなわち、ラックバー2と発電ユニット3とが直線的に相対移動する。
【0109】
ラックバー2と発電ユニット3とが相対移動を行うことにより、ラック歯22に噛合したピニオン4が回転する。ピニオン4の回転により同軸に設けられたロータ51が回転する。ロータ51の回転により生じた磁束変動はヨーク53を伝わって発電コイル52に導かれ、発電コイル52はこの磁束変動により誘起電圧を発電する。
発電手段で発電された電流は、回路ブロック内の整流器で整流されたのち、2次電池に蓄電され、その後、電波の送受信などに利用される。
【0110】
このような第5実施形態によれば、上記実施形態の効果(2)に加えて、次の効果を奏することができる。
(20)ラックバー2が空洞部12の端から端までの長さを有している。よって、発電ユニット3の一回の移動ストロークを長くとることができる。その結果、一回の運動による発電時間を長くすることができるとともに、発電効率を向上させることができる。
また、第1実施形態の如くラックバー2を移動させる場合に比べると、同じ移動ストロークで同じ発電時間、同じ発電効率であれば、空洞部12の長さを短くすることができ、全体の小型化を図ることができる。
【0111】
(21)ピニオン4とロータ51とが同軸に設けられているので、ピニオン4の回転が直接ロータ51に伝えられる。よって、エネルギーの損失がなく発電効率を向上させることができる。ピニオン4とロータ51との間に輪列等が介在しないので、輪列が回転する際の生じる音もせず、静かである。
【0112】
(第6実施形態)
本発明の発電機に係る第6実施形態について図12を参照して説明する。
第6実施形態の基本的構成は、第5実施形態と同様であるが、第5実施形態と異なる点は、ラックとピニオンに代えて、ベルトとプーリを用いている点である。
【0113】
第6実施形態において、ケース体1に発電ユニット3が移動可能に設けられている点は第5実施形態と同様である。
ケース体1は、内部に空洞部12を有し、この空洞部12は所定長さを有する。空洞部12内において、両端がケース体1の内壁面に固定された折曲可能で柔軟に撓む長手部材としてのベルト9が設けられている。
発電ユニット3は、ベルト9に沿って相対移動可能に設けられている。発電ユニット3は、ベルト9が巻きまわされているプーリ44と、プーリ44の回転により発電を行う発電手段5と、プーリ44および発電手段5を挟持して保持する受け板76および地板77と、を備えて構成されている。
【0114】
プーリ44は、短円柱状であり、外周に凹条溝441が凹設されている。この凹条溝441にはベルト9が一回巻きまわされている。
なお、ベルト9とプーリ44とを備えて運動方向変換機構が構成されている。発電手段5は、プーリ44と同軸に設けられプーリ44と一体回転するロータ51と、ロータ51の磁束を伝達するヨーク53と、ヨーク53にて伝達された磁束により誘起電圧を起電する発電コイル52とを備えている。
なお、プーリ44の軸は、受け板76および地板77にて軸承されている。
【0115】
このような構成を備える第6実施形態の動作について説明する。
発電ユニット3が重力で下降するようにケース体1を回動させる。すると、発電ユニットが自重により下降してベルト9と発電ユニット3とが相対移動を行う。
また、ケース体1に対して直線的な運動、例えば振動を与える。すると、ケース体1内において、ベルト9はケース体1に固定されているのでケース体1と一体的に移動する。これに対して、発電ユニット3には、ケース体内において慣性力が作用する。すると、発電ユニット3は、ケース体1と一体的に移動することなく、ベルト9に対して相対移動する。
【0116】
ベルト9と発電ユニット3とが相対移動を行うことにより、ベルト9が巻きまわされたピニオン4が回転する。すると、ピニオン4の回転により同軸に設けられたロータ51が回転する。ロータ51の回転により生じた磁束変動はヨーク53を伝わって発電コイル52に導かれ、発電コイル52はこの磁束変動により誘起電圧を発電する。
【0117】
このような第6実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(22)ベルト9とプーリ44であるので、ラック歯22やピニオン4の歯41を加工する場合に比べて製造が容易であり、製造効率の向上および製造コストの削減を図ることができる。
(23)ベルト9とプーリ44であるので、互いに相対移動するときに静かである。例えば、歯が噛合しているわけではないので、歯が噛み合う音がしない。
【0118】
(24)ベルト9とプーリ44であるので、互いに相対移動するときでも、塵埃を発生させることがない。例えば、ラック2とピニオン4である場合には、互いの歯があたるときに粉塵が生じる可能性があるので、ピニオン4と発電手段5とを区画して配置することが必要であった。しかし、ベルト9とプーリ44であれば粉塵を生じる可能性は無いので、プーリ44の直下に同軸でロータ51を配置する簡便な構成とすることができる。
【0119】
(第7実施形態)
本発明の発電機に係る第7実施形態について図13を参照して説明する。
第7実施形態の基本的構成は、第1実施形態と同様であるが、第7実施形態が特徴とするところは、発電手段が二つ設けられている点である。
図13に示すように、ラックバー2に噛合した一つのピニオン4に対して発電手段5が二つ設けられている。
ここで、ロータ51の発電コイル52に対する位相は、それぞれの発電手段5で異なっていてもよく、または同位相であってもよい。発電コイル52の巻き数はそれぞれの発電手段5で異なっていてもよく、または同じであってもよい。二つの発電手段5は、直列に接続されていてもよく、また、並列に接続されていてもよい。
【0120】
このような構成によれば、上記実施形態の効果(1)〜(12)に加えて次の効果を奏することができる。
(25)エネルギーを二つの発電手段5に分散させることができる。すると、個々の発電手段5を小型化することもできる。すなわち、個々のヨーク53や発電コイル52は分散された磁束を利用する大きさでよいことから、小型化、薄型化することができ、その結果、全体として発電手段5を小型化、薄型化することができる。
【0121】
(26)個々の発電手段5で位相、周期、電圧等が異なる電力を発電することができる。よって、この異なる特性の電力を別々に利用することができ、例えば、異なる電気ブロックに送電することができる。
(27)2つの発電手段5にエネルギーを分散させることにより、各発電手段5での発電量を少なくすることができる。よって、各発電手段5のロータ51の回転速度を下げることができる。その結果、ピニオン4からロータ51に伝達するために増速輪列などを特には必要とせず、増速輪列を用いる場合でも、増速輪列の輪列比を小さくして増速輪列によるエネルギー伝達効率を向上させることができる。
【0122】
(28)二つの発電手段5が設けられているので、高電圧にしたい場合は直列に接続したり、電圧を上げずに電流を多くしたい場合は並列に接続したりするなど、回路ブロックの仕様に合わせた設計の自由度が向上する。
(29)発電手段5が二つ設けられているので、仮に一方の発電性能が劣化した場合でも他方によって補うことができる。よって、発電機100としての信頼性を向上させることができる。
【0123】
(第8実施形態)
本発明の発電機に係る第8実施形態について図14、図15を参照して説明する。図14に第8実施形態の平面図を示し、図15(A)に図14中XV(A)方向から見た部分断面図を示し、図15(B)に図14中XV(B)方向から見た断面図を示す。
第8実施形態の基本的構成は、第1実施形態と同様であるが、第8実施形態の特徴とするところは、発電ユニット3が二つ設けられ、また、接合板が設けられている点である。
図14に示すように、一つのラックバー2に対して二つのピニオン4が噛合しており、そして、この二つのピニオン4のそれぞれに対して発電手段5が設けられている。
【0124】
図15(B)に示されるように、発電ユニット3の下面には、導通基板721が設けられている。導通基板721は第1実施形態で説明したのと同様の構成であるが、各発電ユニット3の発電コイルはそれぞれ導通バネ(不図示)により一枚の導通基板721に導通されている。
下段プレート72の下面には、接合板723が設けられている。接合板723は、略扁平矩形状の台座板724と、この台座板724の一辺縁から連続して立設した側板725とを有し、断面略L字状である。側板725の上端縁が二つの発電ユニット3に接合され、このとき、台座板724は、発電ユニット3の下面(下段プレート72の下面)に導通基板721を間にして対向する。二つの発電ユニット3は接合板723に接合されることにより一体化される。そして、台座板724がケース体1に固定されることにより、発電ユニット3がケース体1に固定される。
【0125】
図15(A)に示すように、台座板724は、ラックバー2の長手方向に沿った長さが発電ユニット3を二つ合わせた長さよりも長く、ラックバー2の長手方向に略直交する両端辺は発電ユニット3よりも長手方向に沿って外方に出ている。したがって、台座板724の重錘21側の辺(近接点)726は発電ユニット3よりも重錘21に近接する側に位置している。
また、重錘21とケース体1との距離は、台座板724の厚みよりも小さく、重錘21が発電ユニット3側へ移動した際には、重錘21は台座板724に当接する。
なお、台座板724の重錘21とは反対側の辺には回路ブロック11が隣接して設けられている(図14参照)。
【0126】
このような構成によれば、上記実施形態の効果(1)〜(12)(25)〜(29)に加えて次の効果を奏することができる。
(30)発電ユニット3が二つ設けられていることから、性能が異なる発電ユニットを二つ設けることもできる。例えば、ラックバー2が発電ユニット3に対して高速で相対移動した場合に最適な発電を行う発電ユニット3と、ラックバー2が低速で相対移動した場合に最適な発電を行う発電ユニット3とをそれぞれ分けて設けることもできる。すると、ケース体1に与えられる力の大きさが大きくても小さくても常に効率よく発電することができる。
【0127】
(31)接合板723により二つの発電ユニット3を一体化して1つのブロックとして取り扱うことができるので、発電ユニット3を交換したりメンテナンスする場合に作業の手間を少なくできる。例えば、ケース体1を取り替える際でも、接合板723とケース体1とを取り外してケース体を交換すればよいので、発電ユニット3を分離するなどの手間がなく簡便である。また、ケース体1の形状が変更される場合であっても接合板723の形状を変えるだけでよく、発電ユニット3自体の形状等を設計変更する必要がない。
【0128】
(32)二つの発電ユニット3を接合板723に接合するとき、各ピニオン4をラック歯22に噛合する位置に微調整することができる。従って、両ピニオン4をラック歯22に噛合させて、両発電ユニット3で確実にかつ均等に発電を行うことができる。
(33)台座板724の辺726により、重錘21が発電ユニット3に衝突するのを防止することができる。よって、発電ユニット3の故障を防止することができる。
【0129】
尚、本発明の発電機は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
発電手段5は、ピニオン4の回転を利用して発電を行う構成であればよく、例えば、磁界中でコイルを回転させて発電してもよい。
運動方向変換機構としては、ラックとピニオン、ベルトとプーリの他、ラックバーの側面に沿って円筒形状のゴム(弾性体)を押し付けて、ラックバーとこのゴム(弾性体)との相対移動でゴムを回転させる構成であってもよい。
【0130】
第4実施形態において、反力付与手段13は、コイルバネとして説明したが、弾性体として板バネ、ゴムであってもよく、あるいは、磁石の反発力を利用してもよい。コイルバネは一本だけであってもよく、または複数設けられていてもよい。コイルバネの取り付け位置は、重錘21と発電ユニット3とを連結してもよく、あるいは、ラックバー2と発電ユニット3とを連結してもよい。あるいは、ラックバー2の長手方向に平行でなくてもよく、例えば、長手方向に直交方向から取り付けてもいい。
【0131】
上記実施形態において、重錘21は必ずしも必要ではない。この場合、ラックバー2や発電ユニット3が十分な重量を持っていればよい。あるいは、ラックバー2とピニオン4との摩擦抵抗が十分に小さければよい。
第6実施形態において、ベルト9の材質や径の太さは特に限定されるものではなく、平ベルトやワイヤーロープなどであってもよい。
【0132】
第7実施形態および第8実施形態において、発電手段5が二つ以上設けられていてもよい。特に、発電手段5を三つとし、これらの発電手段5から発電される電圧の位相を120°ずつ異なるものとすれば、三相交流を得ることができる。三相交流とすることにより、整流回路の構成をΔ結線やY結線を用いる簡便な構成とすることができる。また、複数の発電手段5で発電される電圧の位相を等角度ずつずらすと、合成波形が平滑化されるので、コンデンサ等を必要とせず回路構成を簡略化することができる。
【0133】
第8実施形態において、接続板723がケース体1に固定されている場合について説明したが、ラックバー2をケース体に固定するとともにケース体1と接続板723とがスライド移動可能に設けられていてもよい。このような構成においても、接続板723を備えることで複数の発電ユニット3を一体化して取り扱うことができる。
【0134】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の発電機によれば、直線的に与えられる運動力を利用して効率よく発電でき、かつ小型化できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発電機に係る第1実施形態において、一部を破断した概観図である。
【図2】前記第1実施形態において、発電ユニットの平面図である。
【図3】前記第1実施形態において、図2中III−III線における発電ユニットの断面図である。
【図4】本発明の発電機に係る第2実施形態において、発電ユニットの平面図である。
【図5】前記第2実施形態において、図4中V−V線における発電ユニットの断面図である。
【図6】(A)前記第2実施形態において、クラッチ機構の要部を説明する分解斜視図である。(B)第1ツメ車と第1ツメ部材との関係を示す図である。(C)第2ツメ車と第2ツメ部材との関係を示す図である。
【図7】本発明の発電機に係る第3実施形態において、内部を透視した斜視図である。
【図8】前記第3実施形態において、図7中VIII−VIII線における断面図である。
【図9】本発明の発電機に係る第4実施形態における断面図である。
【図10】本発明の発電機に係る第5実施形態における断面図である。
【図11】(A)前記第5実施形態において、発電ユニットの平面図である。(B)発電ユニットの断面図である。
【図12】(A)本発明の発電機に係る第6実施形態における平面図である。(B)第6実施形態の断面図である。
【図13】本発明の発電機に係る第7実施形態における平面図である。
【図14】本発明の発電機に係る第8実施形態における平面図である。
【図15】(A)図14中XV(A)方向から見た部分断面図である。(B)図14中XV(B)方向から見た断面図である。
【符号の説明】
1…ケース体、2…ラックバー(長手部材)、3…発電ユニット、4…ピニオン(回動部材)、5…発電手段、6…回転伝達手段(増速手段)、8…規制手段、9…ベルト(長手部材)、11…回路ブロック、12…空洞部、13…反力付与手段、21…重錘、44…プーリ(回動部材)、67…機械エネルギー蓄積手段、73…中段プレート(区画部材)、74…ピニオン配置空間(回動部材配置空間)、75…発電手段配置空間、100…発電機、131…第1バネ(弾性体)、132…第2バネ(弾性体)

Claims (15)

  1. 長手方向を有する長手部材およびこの長手部材に対して相対移動可能に設けられた回動部材を有しているとともに、前記長手方向に沿った成分を有する運動力を前記長手部材と前記回動部材との前記長手方向に沿った相対移動にて前記回動部材の回転運動力に変換する運動方向変換機構と、
    前記回動部材の回転運動によって発電する発電手段と、を備える
    ことを特徴とする発電機。
  2. 請求項1に記載の発電機において、
    前記回動部材の回転運動を増速して前記発電手段に伝達する増速手段を備えている
    ことを特徴とする発電機。
  3. 請求項1または請求項2に記載の発電機において、
    前記回動部材の回転運動のエネルギーを機械エネルギーとして蓄積する機械エネルギー蓄積手段を備えている
    ことを特徴とする発電機。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発電機において、
    前記発電手段は複数設けられていることを特徴とする発電機。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の発電機において、
    前記回動部材が複数設けられるとともに、それぞれの回動部材に対応した前記発電手段が設けられていることを特徴とする発電機。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の発電機において、
    前記長手部材および前記回動部材の少なくともいずれか一方には、このいずれか一方の相対移動方向に対して反対方向の反力を付与する反力付与手段が設けられている
    ことを特徴とする発電機。
  7. 請求項6に記載の発電機において、
    前記反力付与手段は、弾性体を備えて構成されている
    ことを特徴とする発電機。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の発電機において、
    前記長手部材は、剛性を有するとともに前記長手方向にラック歯を備え、
    前記回動部材は、前記ラック歯に噛合する歯を備えている
    ことを特徴とする発電機。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の発電機において、
    前記長手部材および前記回動部材が収納されるケース体を備え、
    前記長手部材および前記回動部材のいずれか一方は前記ケース体に固定され、
    前記長手部材および前記回動部材のいずれか他方とともに移動する重錘を備えていることを特徴とする発電機。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の発電機において、
    前記長手部材の長手方向に略直交する対向方向で前記運動方向変換機構を間にして対向配置された上段プレートおよび中段プレートと、
    前記発電手段を間にして前記中段プレートに対向配置された下段プレートとを備えていることを特徴とする発電機。
  11. 請求項10に記載の発電機において、
    前記下段プレートの前記発電手段に反対の面に接離可能に設けられた導通基板と、前記下段プレートを部分的に貫通して前記発電手段と前記導通基板とを導通する導通バネとを備えていることを特徴とする発電機。
  12. 請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の発電機において、
    前記発電手段は、前記回動部材の回転にて回転される着磁されたロータ、前記ロータの磁束を伝達するヨークおよび前記ヨークにて伝達された磁束にて誘起電圧を生じる発電コイルを有し、
    前記発電コイルと前記長手部材とは互いの長手方向を揃えて略平行に配置され、
    前記運動方向変換機構と前記発電手段とは前記長手部材の長手方向に略直交方向で重なって配置されていることを特徴とする発電機。
  13. 請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の発電機において、
    内部に前記運動方向変換機構および前記発電手段を収納する収納空間を有する長筒形状のケース体を備えることを特徴とする発電機。
  14. 請求項13に記載の発電機において、
    前記回動部材および前記発電手段を搭載した状態で前記ケース体に取り付けられる接続板を備えていることを特徴とする発電機。
  15. 請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の発電機を有する電子機器。
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