JP3711130B2 - 可変容量形ベーンポンプ - Google Patents

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Description

本発明は、たとえば自動車のハンドル操作力を軽減する動力舵取装置を始め、各種の圧力流体利用機器に用いられる可変容量形ベーンポンプに関する。
動力舵取装置用ポンプとして一般には、自動車用エンジンで直接回転駆動される容量形のベーンポンプが用いられている。このような容量形ポンプは、エンジン回転数に対して吐出流量が増減するため、自動車の停車中や低速走行時に操舵補助力を大きくし、高速走行時に操舵補助力を小さくするという動力舵取装置に要求される操舵補助力とは相反する特性をもっている。したがって、容量形ポンプには、回転数が低い低速走行時にも必要な操舵補助力が得られる程度の吐出流量を確保できる大容量のものを用いる必要がある。しかも、回転数が高い高速走行時のためには、吐出流量を一定量以下に制御する流量制御弁が必須となる。このため、容量形ポンプでは、構成部品点数が増え、構造や通路構成が複雑で、全体の大型化やコスト高となることが避けられない。
このような容量形ポンプの不具合を解決するために、一回転当たりの吐出流量(cc/rev)を回転数の増加に比例して減少させ得る可変容量形ベーンポンプが、たとえば特許文献1〜特許文献4等によって種々提案されている。これらの可変容量形ポンプによれば、容量形のような流量制御弁が不要で、また駆動馬力の無駄を防ぎ、エネルギ効率の面でも優れ、さらにタンク側への戻り流量もないことから油温上昇という問題も低減でき、しかもポンプ内部での漏れ、容積効率低下という問題も防止できる。
たとえば特許文献2等に示される可変容量形ポンプは、カムリングをポンプケーシング内に移動可能に設け、このカムリングとポンプケーシングとの間の間隙部分にコントロール室となる一対の流体圧室を形成し、それぞれの室に吐出通路途中に設けたオリフィス前後の圧力を導きその差圧をカムリングに直接作用させ、スプリングの付勢力に抗して移動させることで、ポンプ室容積を変化させ吐出流量制御の適正化を図っている。
このような可変容量形ベーンポンプの一例を、図6を用いて簡単に説明すると、図中1はポンプボディ、1aはアダプタリング、2はこのボディ1のアダプタリング1a内に形成される楕円形空間部1b内で支軸部2aを介して揺動変位可能に設けられかつ図中白抜き矢印Fで示す方向に押圧手段により付勢力が与えられているカムリングである。3はこのカムリング2内でポンプ室4を一側に形成するように他側寄りに偏心して収容され外部駆動源によって回転駆動されることで放射方向に進退自在に保持したベーン3aを出入りさせるロータである。
なお、図中3bはロータ3の駆動軸で、ロータ3は図中矢印で示す方向に回転駆動される。
5,6はボディ1のアダプタリング1aの楕円形空間部1b内でカムリング2の外周部両側に形成された高圧側、低圧側となる一対の流体圧室で、これらの室5,6には、カムリング2を揺動変位させるための制御圧、たとえばポンプ吐出側通路に設けた可変オリフィス前後の流体圧を導く通路5a,6aが開口して設けられている。そして、これらの通路5a,6aによりポンプ吐出側通路の可変オリフィス前後の流体圧を導入することにより、カムリング2を所要の方向に揺動変位させてポンプ室4内の容積を可変し、ポンプ吐出側での流量に対応して吐出流量を可変制御する。すなわち、ポンプ回転数の増加に伴い吐出側の流量を減少させるような吐出側の流量制御を行なう。
7は前記ポンプ室4のポンプ吸込側領域4Aに臨んで開口されるポンプ吸込側開口、8はポンプ室4のポンプ吐出側領域4Bに臨んで開口されるポンプ吐出側開口で、これらの開口7,8はロータ3およびカムリング2からなるポンプ構成要素を両側から挾み込んで保持するための固定壁部であるプレッシャプレートおよびサイドプレート(図示せず)のいずれかに形成されている。
ここで、カムリング2は図中Fで示すように流体圧室6側から付勢力が与えられ、常時はポンプ室4内の容積を最大に維持する。また、図中2bはカムリング2の外周部に設けられ軸支部2aと共に左、右両側に流体圧室5,6を画成するためのシール材である。
なお、8aは前記ポンプ吐出側開口8のポンプ回転方向の終端部に連続して形成されたひげ状のノッチで、このノッチ8aは、ロータ3の回転に伴って各ベーン3aの先端をカムリング2の内周部に摺接させてポンプ作用を行わせる場合に、各開口7,8の端部に接近するベーン間で挾まれた空間とこれに隣接するベーン間の空間との間で流体圧を高圧側から低圧側へと徐々に逃がし、サージ圧やこれによる脈動問題を防止する役割を果たすものである。
また、上述した構成による可変容量形ポンプにおいて、ポンプ吐出側の一部には、その過大流体圧をリリーフするためのリリーフ弁が付設されている。
なお、本出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに見付け出すことはできなかった。
特開昭53−130505号公報 特開昭56−143383号公報 特開昭58−93978号公報 実公昭63−14078号公報
前述した従来の可変容量形ベーンポンプによれば、ロータ3、カムリング2等のポンプ構成要素によるポンプカートリッジ(ポンプ作用部)において、ポンプ室4における吸込側開口4Aの終了点から吐出側開口4Bの開始点までの領域、および吐出側開口4Bの終了点から吸込側開口4Aの開始点までの領域に相当する中間領域(図6において符号9A,9Bで示す部分)に位置するポンプチャンバ(ベーン3aとベーン3aによって仕切られる室)は、ポンプ吐出圧とポンプ吸込圧とに交互に変化する。
これは、ロータ3の回転方向において先行するベーン3aが、回転方向の先端側の開口4Bまたは4Aに到達すると、その開口4Bまたは4Aでのポンプ吐出側または吸込側のポート圧となり、また後続するベーン3aが、回転方向の後端側の開口4Aまたは4Bにあるときには、後続する開口によるポート圧の状態となるためである。
特に、この種の可変容量形のベーンポンプにおいて、奇数枚のベーン3aが採用された場合には、ベーン3aがロータ3の回転方向において不均一に配置されることから、ロータ3の回転軸3bを中心とした対向する中間領域9A,9Bを通過するベーン3a,3a間に挟まれた空間が非対称となり、圧力バランスがくずれ易い。
そして、このような圧力変動や圧力不平衡を原因として対向する中間領域9A,9Bのポンプチャンバの相互差による推力がカムリング2内面に作用することによってカムリング2が振動し、結果としてポンプ吐出側において流量変動や油圧脈動現象が発生し、騒音問題をも招くという不具合があった。このような脈動現象は、たとえば図5の(b)の特性図のように現われる。
このため、上述した可変容量形ポンプにおいて、ポンプ吐出側通路途中に可変メータリングオリフィスを設け、このオリフィス上、下流側の流体圧でスプール式の制御バルブを切換え作動させ、オリフィス上、下流側の流体圧やポンプ吸込側をカムリング2の外周部両側の室5,6に選択的に供給することにより、カムリング2の発振現象を抑制しようとしたものも提案されているが、未だ不十分であり、何らかの対策を講じることが望まれている。
特に、可変容量形ポンプからの流体圧が供給される被利用機器側での作動によって、主供給経路中の流体圧が上昇し、これによりこの経路またはポンプ吐出側通路途中に設けた可変メータリングオリフィス上、下流側の差圧が増大したりすることにより、ポンプ吐出側圧力の変動が大きく生じた場合に著しく現われ、このような問題点を解決することが必要とされている。
たとえば被利用機器がパワーステアリングであるとき、大流量または小流量がパワーシリンダ側に流れるため、舵取ハンドルが急に重くなったり、軽くなったりするもので、このような不安定さは解消することが望まれる。
さらに、上述した従来の可変容量形ポンプにおいて、カムリングを移動変位させるための高圧側、低圧側の流体圧室への供給流体圧を制御する制御バルブにも、スプールの発振現象を生じるという問題がある。
すなわち、この制御バルブにおいて、スプールの一方室には、可変メータリングオリフィス上流側のポンプ吐出側流体が導かれ、かつばねを有する他方室には、可変メータリングオリフィス下流側のポンプ吐出側流体が導かれている。そして、吐出側流体の流量が増大するに伴って可変メータリングオリフィス上、下流側の圧力差が増大し、バルブのスプールが他方室側に移動して、高圧側の流体圧室に所要の流体圧を導入し、カムリングを移動変位させて吐出側流体の流量を減少させるようになっている。
しかし、このような制御バルブでは、ポンプ吐出側の流体圧が前述した被利用機器側での負荷等の原因によって変動すると、このバルブ内でのスプールも振動し、いわゆる発振現象を生じるおそれがあり、このような点をも考慮することが望まれている。
このような従来の可変容量形ポンプでは、制御バルブのばねを有する他方室にメータリングオリフィス下流側の流体圧を導くための流体通路に、ダンパオリフィスを形成し、バルブ内のスプールの動きを安定化させるようにしている。しかし、このようなダンパオリフィスを設けただけでは、流体の通過流量が少ないことから、絞り効果が少なく、バルブ内でのスプールが発振し易く、またその結果としてこのバルブで制御している各流体圧室の流体圧も不安定となり、カムリングも発振し、これらを抑制することはできないもので、これらの問題点を一掃することが望まれる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、制御バルブやカムリングにおける発振現象を抑制し、これによりポンプ吐出側での大きな流量変動、脈動等を低減し、騒音問題も解消することができる可変容量形ポンプを得ることを目的としている。
本発明に係る可変容量形ベーンポンプは、ポンプボディと、前記ポンプボディに回転自在に支持される回転軸と、前記回転軸に接続されたロータと、前記ロータに設けられたスリットに、進退自在に設けられたベーンと、前記ポンプボディに形成された収納空間内部に設けられた環状のアダプタリングと、前記ロータ外周部との間にポンプ室を形成するように、ロータとアダプタリングとの間であって、前記回転軸に対して偏心可能に設けられたカムリングと、前記ポンプ室容積が最大となるように、前記カムリングに付勢力を与える付勢手段と、前記ポンプ室から吐出される圧力流体の吐出側通路途中に設けられるメータリングオリフィスと、前記カムリングとアダプタリングとの間に分割形成され前記カムリングを偏心移動させる第1および第2の流体圧室と、前記メータリングオリフィス上、下流側の流体圧によって作動されるスプール式の制御バルブと、前記制御バルブと前記第1の流体圧室とを連通する流体通路とを備え、前記制御バルブは、スプールの動きによって前記メータリングオリフィス上流側の流体圧と前記ポンプ吸入側の流体圧とを選択的に前記第1の流体圧室に導くと共に、前記流体通路は、前記アダプタリングに設けられた絞り部を介して前記制御バルブと第1の流体圧室とを連通するものである。
本発明によれば、ポンプ始動時にはカムリングはポンプボディ内の一側にロータとの間のポンプ室容積が最大となるように付勢され、このとき制御バルブは、第1の流体圧室がポンプ吸込側に、第2の流体圧室がポンプ吐出側でメータリングオリフィス下流側に接続した状態にある。
また、ポンプ回転数が徐々に増大すると、制御バルブが、ポンプ吐出側でオリフィス上流側の流体圧と下流側の流体圧との差圧によって切換え作動され、これによりカムリング両側の第1の流体圧室と第2の流体圧室に、ポンプ吐出側で可変メータリングオリフィス上、下流側の流体圧が導入され、カムリングはポンプ室容積が減少する方向に移動変位する。このとき、制御バルブから第1の流体圧室に至る流体通路に絞り部が設けられていることにより、ポンプ吐出側での流体圧力変動が緩和した状態で送られ、制御バルブのスプールやカムリングの発振は抑制される。
すなわち、本発明によれば、制御バルブからカムリング外周の第1の流体圧室に至る流体通路に絞り部を設けることにより、圧力変動を絞り機能で抑制し、その結果として従来問題であったバルブのスプールでの発振、さらにカムリングの発振を抑制または防止でき、結果としてポンプ吐出側で生じていた大きな流量変動、脈動を低減し、静粛な可変容量形ベーンポンプを得ることができる。
そして、このような可変容量形ベーンポンプでは、油圧脈動の減少から、車輌上での騒音発生、舵取ハンドルの微振動発生等の不具合を抑制することができるという利点がある。
また、本発明によれば、制御バルブのスプール内にリリーフ弁を内蔵しても、絞り部によって制御バルブの動きを抑え、発振を抑制できるもので、リリーフ弁の組込みに配慮する必要がなくなり、またポンプ全体のコンパクト化も図れるという利点もある。
図1ないし図3は本発明に係る可変容量形ベーンポンプの一実施例を示し、これらの図において、本実施例では動力舵取装置の油圧発生源となるベーンタイプのオイルポンプである場合を説明する。
全体を符号10で示す可変容量形ベーンポンプは、図1および図2から明らかなように、ポンプボディを構成するフロントボディ11およびリアボディ12を備えている。このフロントボディ11は、図2から明らかなように全体が略カップ状を呈し、その内部にポンプカートリッジとしてのポンプ構成要素13を収納配置する収納空間14が形成されるとともに、この収納空間14の開口端を閉塞するようにリアボディ12が組合わせられて一体化されている。なお、このフロントボディ11には、ポンプ構成要素13の回転子であるロータ15を外部から回転駆動するためのドライブシャフト16が貫通した状態で、軸受16a,16b,16c(16bはリアボディ12側、16cは後述するプレッシャプレート20側に配設される)により回転自在に支持されている。
17はベーン15aを有するロータ15の外周部に嵌装して配置される内側カム面17aを有し、かつこの内側カム面17aとロータ15との間にポンプ室18を形成するカムリングで、このカムリング17は、後述するように、ポンプ室18の容積を可変するように収納空間14内で空間内壁部分に嵌合状態で設けられたアダプタリング19内で移動変位可能に配置されている。
なお、このアダプタリング19は、ボディ11の収納空間14内でカムリング17を移動変位可能に保持するためのものである。
20は上述したロータ15、カムリング17およびアダプタリング19によって構成されているポンプカートリッジ(ポンプ構成要素13)のフロントボディ11側に圧接して積層配置されるプレッシャプレートで、またポンプカートリッジの反対側面には前記リアボディ12の端面がサイドプレートとして圧接され、フロントボディ11とリアボディ12との一体的な組立てによって所要の組立状態とされる。そして、これらの部材によって、前記ポンプ構成要素13が構成されている。
ここで、これらのプレッシャプレート20と、これにカムリング17を介して積層されるサイドプレートとなるリアボディ12とは、カムリング17の揺動変位用の軸支部および位置決めピンとしても機能する後述するシールピン21や適宜の回り止め手段(図示せず)によって、回転方向で位置決めされた状態で一体的に組付け固定されている。
23は前記フロントボディ11の収納空間14内でその底部側に形成されるポンプ吐出側圧力室で、この圧力室23によってポンプ吐出側圧力がプレッシャプレート20に作用する。24はこのポンプ吐出側圧力室23にポンプ室18からの圧油を導くようにプレッシャプレート20に穿設されているポンプ吐出側開口である。
25は図2に示されるようにフロントボディ11の一部に設けられたポンプ吸込ポートで、このポート25から流入する吸込側流体は、後述する制御バルブ30のバルブ孔30aを貫通してフロントボディ11内に形成されたポンプ吸込側通路25a、これに連続してリアボディ12内に形成された通路25b,25cを通り、リアボディ12の端面に開口するポンプ吸込側開口26からポンプ室18内に供給される。
ここで、この実施例では、吸込ポート25からの吸込側流体をポンプ室18に導くために、制御バルブ30を跨って、すなわちそのバルブ孔30aを貫通する吸込側通路25aを用いている。これは、この実施例のように操舵力制御用として用いるポンプでは、給送する流量が7l/minというように少なく、これによりタンクTから吸込ポート25に吸い込まれる吸込側流体を制御バルブ30を通しても、実用上問題がないためである。
このような構成を採用すると、吸込ポート25を、フロントボディ11の制御バルブ30とリアボディ12の吸込側通路25bとの間に設けていた従来構造に比べ、ポンプ10の軸線方向での長さを短くでき、ポンプ10の小型化が図れる。これは、通路構成上から特にリアボディ12のコンパクト化が図れるとともに、このポンプ10のタンクTへの取付け位置を、フロントボディ11側で行なえ、安定した取付け状態が得られるためである。
28は上述したポンプ室18からポンプ吐出側通路24、ポンプ吐出側圧力室23、さらにプレッシャプレート20の異なる位置に穿設した流体通路孔29、後述する第2の流体圧室37、カムリング17を付勢するばね41を収納するプラグ42によるばね室42a、フロントボディ11に形成した切欠き溝43、ボディ11内に形成した通路孔44,45,28bを介して給送されるポンプ吐出側流体圧を図示しないパワーステアリング装置(図中PSで示す)等の油圧機器に給送するための吐出ポートで、この吐出ポート28は、前記フロントボディ11の側方に設けたプラグ28aにより開口して設けられている。
ここで、上述したポンプ吐出側通路(24,23,29,42a,43,44,45,28b)において、第2の流体圧室37に開口する前記流体通路孔29とカムリング17の側面部とによって開口面積を増減させ得る可変メータリングオリフィス40が形成されている。ここで、この可変メータリングオリフィス40は、カムリング17の移動変位に伴って側壁部で通路孔29が開閉されることにより構成されている。なお、このオリフィス40を、その開閉量がポンプ吐出側の流体圧の大きさに応じて制御される適宜の形状で形成すると、カムリング17の移動変位を所望の状態に制御でき、流量特性の多様化が図れる。
30はフロントボディ11における収納空間14の上方に略直交して配置され上述したカムリング17をポンプボディ11(アダプタリング19)内でロータ15に対し移動変位させるための流体圧力制御を後述する可変メータリングオリフィス40によって行なう制御バルブで、この制御バルブ30は、ボディ11に穿設されているバルブ孔30a内で前記ポンプ吐出側通路(24,23,29,42a,43,44,45,28b)途中に設けた可変メータリングオリフィス40上、下流側の圧力差およびばね31の付勢力で摺動動作するスプール32を備えている。
この制御バルブ30において、スプール32の一方室(図1中左方室)32aには、前記ポンプ吐出側の圧力室23から延設された流体通路46,47を介して、前記可変メータリングオリフィス40の上流側の流体圧が導かれている。なお、図中33はバルブ孔30a内でスプール32の左方への移動位置を流体通路47の開口端を閉塞しない位置で係止するロッド33aを有するバルブ孔30aの閉塞用プラグである。
また、スプール32の他方室(図1の右方室)32bには、ばね31が配設されるとともに前述した可変メータリングオリフィス40の下流側の流体圧が前記吐出ポート28に至る通路途中、すなわち第2の流体圧室37から前記ボディ11、アダプタリング19間に形成される流体通路19a、ボディ11に穿設した流体通路34を介して導かれている。
さらに、バルブ孔30aの略中央部には、前述したように吸込ポート25に連続するポンプ吸込側通路25aが貫通して形成されており、スプール32の環状溝32cによる環状空間を通って吸込側の流体が給送される。
また、この吸込側通路25aの開口部と前記吐出側の流体通路47の開口部との間には、前記アダプタリング19とカムリング17との間に形成される後述する第1の流体圧室36に接続されるアダプタリング19の流体通路19bおよびボディ11に穿設した流体通路35が開口し、常時は図1に示すように、ランド部32dによってポンプ吸込側通路25aと連通し、吸込側の流体圧を第1の流体圧室36に導入する。さらに、スプール32が所定量以上右方向に移動すると、図4から明らかなようにポンプ吸込側から切り離され、ポンプ吐出側の流体圧が第1の流体圧室36に供給される。
なお、図中34aはダンパオリフィス部である。
36,37は上述したカムリング17の外周部でボディ11(アダプタリング19)の内周部との間でシールピン21とその略軸対称位置に設けられたシール材38とで左、右に分割形成された第1、第2の流体圧室で、上述した制御バルブ30の作動に伴って、第1の流体圧室36にはポンプ吸込側または可変メータリングオリフィス40上流側のポンプ吐出側流体圧が、第2の流体圧室37には可変メータリングオリフィス40下流側のポンプ吐出側流体圧が導入される。
ここで、カムリング17の外周部には、第1の流体圧室36をアダプタリング19への接触時にも確保できるような略半周程度の凹溝等を周方向に沿って形成しておくとよい。
また、図3中符号39はポンプ吐出側通路の一部に臨んで設けられたリリーフ弁であり、この実施例ではボディ11に穿設されている流体通路44の一部を利用して設けている。さらに、このリリーフ弁39に連続する通路孔39aはリリーフした流体をポンプ吸込側に還流させる通路である。
さらに、前記可変メータリングオリフィス40を構成する流体通路孔29が、カムリング17により塞がれることにより変化する開口面積によって、回転数が低いときには所定の流量が得られるように立ち上げ、一定よりも高くなったときに、流量を減少させ、さらに所定回転数以上では、初期流量の約半分程度の流量が得られるような構成となっている。ここで、このような吐出量制御は、流体通路孔29とその開口量を制御するカムリング17の側面部とによる可変メータリングオリフィス40で得られるもので、たとえば孔部29の形状を任意に変更したり、カムリング17による開閉制御量を調整することにより特性を変えることが可能である。
なお、以上のような可変容量形ベーンポンプ10において、上述した以外の構成は従来から周知の通りであり、その具体的な説明は省略する。
以上の構成による可変容量形ベーンポンプ10においては、ポンプ吐出側圧力室23での流体圧を、カムリング17の移動変位を行うために、制御バルブ30、さらにこのバルブ30を介して第1の流体圧室36に導くにあたって、ポンプ吐出側圧力室23とバルブ孔30aとの間の流体通路46,47、さらにバルブ孔30aと第1の流体圧室36との間の流体通路35,19bに、第1、第2および第3の絞り50,51,52を設けている。
すなわち、可変容量形ベーンポンプ10において従来は、制御バルブ30の他方室32bに可変メータリングオリフィス40下流側の流体圧を導くための流体通路19a,34に、スプール32の動きを安定させるためのダンパオリフィス34aを設けているが、この種の可変容量形ベーンポンプ10では流体の通過流量が少ないことから、絞り効果が少なく、スプール32が発振し、またこれにより第1、第2の流体圧室36,37の流体圧も不安定となり、カムリング17も発振し、これらを抑制することはできない。
このため、この可変容量形ベーンポンプ10によれば、制御バルブ30(スプール32)およびカムリング17の発振現象を抑制するために、ポンプ吐出側の流体通路46,47,35(19b)に、絞り50,51,52を設けることにより、制御バルブ30のスプール32やカムリング17を作動させるための左方室32a、第1の流体圧室36への吐出側の流体圧の導入にあたって、その導入をスムーズにしかも所定量の流れを適切に得られるようにして行ない、結果としてダンパ効果を発揮させるようにしたものである。
ここで、この実施の形態によれば、上述した三個所の絞り50,51,52のうち、少なくとも一個所または二個所、あるいは三個所の全てに設けるようにすればよい。
たとえば第1の絞り50と第2の絞り51とは制御バルブ30のスプール32の発振抑制とカムリング17の発振抑制とを同時に行なえるものであり、そのいずれか一方でも効果は得られるが、両方に設けると絞り効果をより一層大きくすることが可能である。また、第3の絞り52は、その配設位置から明らかなように、カムリング17での発振のみを抑制できるものである。
そして、これら第1、第2および第3の絞り50,51,52を三個所共、設けると、最大限の絞り効果を期待できるものである。
特に、この可変容量形ベーンポンプ10によれば、ポンプ吐出側圧力室23から制御バルブ30、第1の流体圧室36に至る流体通路46,47,45(19b)という従来から必要であった通路に絞り部を設けるだけで、これらの通路を通って導かれる流体圧が、外部影響による過大な流体圧変動の影響を受け難くなり、その結果としてバルブスプール32とカムリング17の発振を抑制できるもので、その利点は大きい。
換言すれば、この実施の形態では、制御バルブ30の両側室32a,32b、カムリング17外周の第1の流体圧室36への流体圧の給送量を安定して確保し、しかもその流体圧の流れに変動を生じないようなダンパ効果を発揮させることにより、バルブスプール32、カムリング17の発振を抑制している。
このような第1、第2、第3の絞り50,51,52を設けて、この可変容量形ベーンポンプ10でのバルブスプール32、カムリング17の発振を抑制すると、その結果としてこのポンプ10からのポンプ吐出側流体圧での脈動を減少させることができ、車輌上での騒音問題、舵取りハンドルの微振動の発生、さらにリリーフ弁3作動時での発振等を抑制することが可能である。
すなわち、このような構成によれば、図5の(a)に示すように、脈動等の不具合のないポンプ回転数に対しての吐出流量特性を得ることが可能である。なお、図中aはポンプ回転数が増大したときに、吐出流量をピーク値よりも少なくし、高速走行時の操舵制御を所要の状態で行なえるようにしたもので、このような制御は可変メータリングオリフィス40での開口量制御で簡単に行なえる。勿論、図中bに示すような制御を行なうことも自由である。
ここで、上述した絞り50,51,52において、第3の絞り52のみを設けた場合には、これを設けない場合に比べて発振現象によるポンプ吐出側流量の変動が約1/15になり、また第1、第3の絞り50,52のみを設けた場合は約1/20に、さらに第1、第2、第3の絞り50,51,52を設けた場合は約1/22になることが実験により確認されている。
また、上述した実施例構成によるポンプ10によれば、ポンプ吐出側流体圧の過大な上昇を防ぐリリーフ弁39を、制御バルブ30とは別のポンプ吐出側流体通路44に臨ませてボディ11,12内に配置したリリーフ弁別体設置型を採用しているが、本発明はこれに限定されず、制御バルブ30のスプール32内にリリーフ弁を組込んだリリーフ弁内蔵型のバルブであってもよい。このようなリリーフ弁内蔵型を採用すれば、バルブ30を含めたポンプ全体のコンパクト化が図れるという利点を奏する。
なお、本発明は上述した実施例構造に限定されず、各部の形状、構造等を、適宜変形、変更することは自由であり、種々の変形例が考えられる。
たとえば上述した実施例では、ポンプ吐出側圧力室23から制御バルブ30の一方室32aへの流体通路46,47に第1、第2の絞り50,51を設けているが、本発明はこれに限定されず、上述した流体通路46,47に三個以上の絞りを設けたり、制御バルブ30から第1の流体圧室36への流体通路35,19bに二個以上の絞りを設ける等、合計して四個所以上にわたる複数段の絞りを設けてもよい。
また、上述した実施例では、カムリング17を移動変位可能に保持する環状隙間空間を、アダプタリング19との間に形成した場合を示したが、本発明はこれに限定されず、ポンプボディ11内にカムリング17を移動変位可能に保持させるように構成してもよい。
さらに、上述した構成によるベーンタイプの可変容量形ベーンポンプ10としては、上述した実施例構造に限定されないことは勿論、上述した実施例で説明したパワーステアリング装置以外にも、各種の機器、装置に適用してもよいことも言うまでもない。
本発明に係る可変容量形ベーンポンプの一実施例を示し、ポンプの要部構造を示す概略横断面図である。 図1におけるII−II線断面図である。 図1におけるIII−III線で断面した上側半分を示す図である。 図1の可変容量形ベーンポンプを作動した状態を説明するための概略図である。 (a)は本発明に係る可変容量形ベーンポンプにおけるポンプ回転数と吐出流量との関係を示す特性図、(b)は従来例でのポンプ回転数と吐出流量との関係を示す特性図である。 従来の可変容量形ポンプの要部構造を説明するための概略図である。
符号の説明
10…可変容量形ベーンポンプ、11…フロントボディ(ポンプボディ)、12…リアボディ、13…ポンプ構成要素、14…収納空間、15…ロータ、15a…ベーン、16…ドライブシャフト(回転軸)、17…カムリング、17a…カム面、18…ポンプ室、19…アダプタリング、20…プレッシャプレート、21…シールピン(カムリング軸支部)、23…ポンプ吐出側圧力室、24…ポンプ吐出側開口となる通路、25…吸込ポート、25a,25b…ポンプ吸込側通路、26…ポンプ吸込側開口、28…ポンプ吐出ポート、28a,28b…ポンプ吐出側通路、29…可変メータリングオリフィスを構成する孔部、30…スプール式制御バルブ、31…ばね、32…スプール、32a…一方室、32b…他方室、34…流体通路、34a…ダンパオリフィス、35…流体通路、36,37…第1、第2の流体圧室、40…可変メータリングオリフィス、44,45…ポンプ吐出側通路(可変メータリングオリフィスの下流側)、46,47…ポンプ吐出側通路(可変メータリングオリフィスの上流側)、50,51,52…第1、第2、第3の絞り。

Claims (1)

  1. ポンプボディと、
    前記ポンプボディに回転自在に支持される回転軸と、
    前記回転軸に接続されたロータと、
    前記ロータに設けられたスリットに、進退自在に設けられたベーンと、
    前記ポンプボディに形成された収納空間内部に設けられた環状のアダプタリングと、
    前記ロータ外周部との間にポンプ室を形成するように、ロータとアダプタリングとの間であって、前記回転軸に対して偏心可能に設けられたカムリングと、
    前記ポンプ室容積が最大となるように、前記カムリングに付勢力を与える付勢手段と、
    前記ポンプ室から吐出される圧力流体の吐出側通路途中に設けられるメータリングオリフィスと、
    前記カムリングとアダプタリングとの間に分割形成され前記カムリングを偏心移動させる第1および第2の流体圧室と、
    前記メータリングオリフィス上、下流側の流体圧によって作動されるスプール式の制御バルブと、
    前記制御バルブと前記第1の流体圧室とを連通する流体通路と、を備え、
    前記制御バルブは、スプールの動きによって前記メータリングオリフィス上流側の流体圧と前記ポンプ吸入側の流体圧とを選択的に前記第1の流体圧室に導くと共に、前記流体通路は、前記アダプタリングに設けられた絞り部を介して前記制御バルブと第1の流体圧室とを連通することを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
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