JP3710288B2 - エアコンプレッサのピストン構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアサスペンション等に用いるエアコンプレッサのピストン構造に関し、特に、ピストン本体に対するピストンリングの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エアコンプレッサのピストン構造としては、例えば、特開平7−2597434号公報に記載の「ロッキングピストン」が知られている。
この従来の「ロッキングピストン」におけるピストンリングの取付構造は、ピストン本体の冠面に、該ピストン本体と同心円の芯出し用突出部が形成され、該突出部にピストンリングの軸心部に形成された芯出し穴を装着した状態で、その上面に円板状の固定プレートをビスで締結固定することにより、ピストン本体の冠面外周縁部と固定プレートとの間にピストンリングの内周縁部を挟持固定した取付構造となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例の「ロッキングピストン」は、前述のように、芯出し用突出部の外周面を垂直に立ち上げた構造であったため、以下に述べるような問題点があった。
即ち、ピストン本体における芯出し用突出部の外形寸法より、ピストンリングにおける芯出し穴の内径寸法が小さいと、ピストン本体に対するピストンリングの組み付け固定の際に、芯出し用突出部の上端縁部と固定プレートとの間にピストンリングの内周縁部を噛み込むことによって、ピストンリングの固定が不完全になるという問題があり、また、以上とは逆に、ピストン本体における芯出し用突出部の外形寸法より、ピストンリングにおける芯出し穴の内径寸法が大きいと、その隙間分だけ芯がずれた状態で組み付けられる可能性が大であり、このため、ピストンリングが偏摩耗して耐久性に悪影響を及ぼすという問題点がある。
なお、ピストン本体における芯出し用突出部の外形寸法とピストンリングにおける芯出し穴の内径寸法を完全に一致させれば以上のような問題は生じないが、両者の寸法を完全に一致させることは困難であることから、一般に、ピストン本体における芯出し用突出部の外形寸法より、ピストンリングにおける芯出し穴の内径寸法の方を少し大きめに形成することにより、少なくとも、ピストンリングの不完全な固定がなされないようにしているのが現状である。
【0004】
本発明は上述の問題点に着目してなされたもので、ピストン本体に対するピストンリングの組み付けの際に、ピストンリングの不完全な固定を生じさせることなしに、ピストン本体に対しピストンリングを同心状に組み付け固定することができるエアコンプレッサのピストン構造を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明請求項1記載のエアコンプレッサのピストン構造は、ピストン本体の冠面に、該ピストン本体と同心円の芯出し用突出部が形成され、該芯出し用突出部にピストンリングの軸心部に形成された芯出し穴を装着し、前記ピストンリングの内周縁部を固定手段によりピストン本体の冠面に対し押圧固定するようにしたエアコンプレッサのピストン構造において、前記芯出し用突出部の外周面に下端に向かうにつれて径を拡大するテーパ面が形成され、前記ピストンリングの芯出し穴の内径寸法が前記テーパ面の上端最小径部の外径寸法よりは大で、テーパ面の下端最大径部の外径寸法よりは僅かに小さめに形成されている手段とした。
請求項2記載のエアコンプレッサのピストン構造は、請求項1において、前記芯出し用突出部外周面でテーパ面の上部にほぼ垂直の嵌合部が設けられ、該嵌合部に前記固定手段を圧入することにより、前記ピストン本体の冠面に対する前記ピストンリングの内周縁部の押圧固定と芯出し用突出部に対する固定手段の固定がなされるように構成されている手段とした。
請求項3記載のエアコンプレッサのピストン構造は、請求項1または2において、前記固定手段における前記芯出し用突出部におけるテーパ面との対向部分に、少なくとも前記テーパ面の最大径部の外径寸法より大径の逃げ部が形成されている手段とした。
【0006】
【作用】
この発明請求項1記載のエアコンプレッサのピストン構造では、上述のように、ピストンリングの芯出し穴が芯出し用突出部におけるテーパ面の上端最小径部の外形寸法よりは大であり、かつ、下端最大径部の外径寸法よりは僅かに小さめに形成されているため、ピストン本体の芯出し用突出部に対するピストンリング芯出し穴の初期装着が容易に行われ、かつ、芯出し用突出部の外周面に形成されたテーパ面に案内されてスムーズにかつ芯出しが行われつつ下端最大径部まで装着され、この状態でピストンリングの内周縁部をピストン本体の冠面に対し固定手段により押圧固定することにより、ピストン本体に対するピストンリングの組み付け固定が行なわれる。
従って、ピストン本体に対するピストンリングの組み付けの際に、ピストンリングの不完全な固定を生じさせることなしに、ピストン本体に対しスムーズかつ確実にピストンリングを同心状に組み付け固定することができる。
請求項2記載のエアコンプレッサのピストン構造では、芯出し用突出部外周面でテーパ面の上部に設けられたほぼ垂直の嵌合部に固定手段を圧入することにより、ピストン本体の冠面に対するピストンリングの内周縁部の押圧固定と芯出し用突出部に対する固定手段の固定がなされるもので、これにより、ビスを用いる従来例に比べ、部品点数が削減されると共に、組み付け作業工程が簡略化される。
請求項3記載のエアコンプレッサのピストン構造では、上述のように、固定手段における芯出し用突出部におけるテーパ面との対向部分に、少なくともテーパ面の最大径部の外径寸法より大径の逃げ部が形成されているため、芯出し用突出部におけるテーパ面の下端最大径部より小径に形成されたピストンリングにおける芯出し穴内周縁部の余り部分は逃げ部に収容された状態となるため、固定部材によるピストンリング内周縁部の押圧固定の際に、ピストンリングの損傷や、固定部材の圧入不良によるピストンリングの固定不良の発生が防止される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態のエアコンプレッサのピストン構造を適用したエアコンプレッサユニットを示す一部切欠正面図であり、このエアコンプレッサユニットは、この図に示すように、電動モータ1により駆動されるエアコンプレッサ2と、エアコンプレッサ2の吐出側に接続されたエアドライヤ3とを備えている。
【0008】
前記エアコンプレッサ2は、シリンダ21と、電動モータ1の回転によりクランク機構22を介してシリンダ21内を往復摺動するピストン本体23と、シリンダ21の吸入側に設けられた吸入弁24と、吐出側に設けられた吐出弁25とを備えている。
【0009】
さらに詳述すると、前記ピストン本体22は、図2にその詳細拡大断面図(図1におけるA矢視方向拡大断面図)を示すように、その外周にシリンダ21内周面に当接してピストン本体22の摺動をガイドする摺動ガイド部材26が装着されると共に、ピストン本体22の上端冠面中央部には、該ピストン本体22と同心円の芯出し用突出部27が形成されている。この芯出し用突出部27は、ピストン本体22に対し同心円状にピストンリング28を装着すると共に、該ピストンリング28をピストン本体22の冠面に押圧固定する固定プレート29を圧入固定するためのもので、その外周上端部は円柱状の垂直面(嵌合部)27aに形成され、外周下端部は、下端に向かうにつれて径を拡大するテーパ面27bに形成されている。
【0010】
前記ピストンリング28は、図3にその断面図を示すように、軸心部に芯出し穴28aが形成された水平固定部28bと、該水平固定部28bの外周縁部から上方へ向けて延設されシリンダ21の内周面に摺接する円筒状摺動シール部28cとからなり、フッ素系樹脂等、例えば4フッ素化エチレン樹脂で一体に成形されている。そして、前記芯出し穴28aの内径寸法φdは、前記芯出し用突出部27におけるテーパ面27bの上端最小径部の外径寸法(=垂直面27aの外径寸法)φD1よりは大で、テーパ面27bの下端最大径部の外径寸法φD2よりは僅かに小さめに形成されている。
【0011】
前記固定プレート29は、円板状プレート29aの外周下面に、前記垂直面(嵌合部)27aに圧入固定可能な単円筒状の嵌合部29bが突出形成されている。この嵌合部29bの突出長さは、芯出し用突出部27の突出高さにピストンリング28における水平固定部28bの板圧をプラスした寸法より少しだけ長く形成されていると共に、前記芯出し用突出部27におけるテーパ面27bと対向する嵌合部29bの内周下端縁部には、面取りによりテーパ面27bの下端最大径部の外径寸法φD2より大径の逃げ部29cが形成されている。
【0012】
次に、本発明の実施の形態の作用について説明する。
この発明の実施の形態のエアコンプレッサのピストン構造は、以上のように構成されるため、ピストン本体22に対するピストンリング28の組み付け固定に際しては、まず、ピストンリング28の芯出し穴28aを芯出し用突出部27に装着するが、その際、ピストンリング28の芯出し穴28aが芯出し用突出部27におけるテーパ面27bの上端最小径部の外径寸法(=垂直面27aの外径寸法)φD1よりは大であり、かつ、テーパ面27bの下端最大径部の外径寸法φD2よりは僅かに小さめに形成されているため、その初期装着作業が容易に行なわれると共に、芯出し用突出部27の下端外周面に形成されたテーパ面27bに案内されてスムーズにかつ芯出しが行われつつ下端最大径部まで装着が行なわれることになる。
【0013】
次に、芯出し用突出部27における上端垂直面27aに対し固定プレート29の嵌合部29bを圧入することにより、ピストンリング28における水平固定部28bの内周縁部がピストン本体22の冠面と固定プレート29の単円筒状嵌合部29b下端面との間に所定の圧力で押圧固定されると同時に、芯出し用突出部27に対する固定プレート27の固定がなされた状態となる。そして、この状態においては、芯出し用突出部27におけるテーパ面27bの下端最大径部より小径に形成されたピストンリング28における芯出し穴28a内周縁部の余り部分が、テーパ面27bに沿って立ち上がった状態で残るが、この余り部分は、芯出し用突出部27のテーパ面27bと対向する固定プレート29における嵌合部29bの内周下端縁部に面取りにより形成された逃げ部29c内に収容された状態となる。
【0014】
以上詳細に説明したように、本発明の実施の形態のエアコンプレッサのピストン構造によれば、ピストン本体22に対するピストンリング28の組み付けの際に、ピストンリング28の不完全な固定を生じさせることなしに、ピストン本体に22対しスムーズかつ確実にピストンリング28を同心状に組み付け固定することができるようになるという効果が得られる。
【0015】
また、芯出し用突出部27における上端垂直面27aに対し固定プレート29の嵌合部29bを圧入することにより、ピストン本体22の冠面に対するピストンリング28の固定と芯出し用突出部27に対する固定プレート29の固定が行なわれるため、ビスを用いる従来例に比べ、部品点数が削減されると共に、組み付け作業工程を簡略化することができるようになる。
【0016】
また、芯出し用突出部27におけるテーパ面27bと対向する嵌合部29bの内周下端縁部には、面取りによりテーパ面27bの下端最大径部の外径寸法φD2より大径の逃げ部29cを形成したことで、固定プレート29によるピストンリング28内周縁部の押圧固定の際に、ピストンリング28の損傷や、固定プレート29の圧入不良によるピストンリング28の固定不良の発生を防止することができるようになる。
【0017】
以上、発明の実施の形態のエアコンプレッサのピストン構造を図面に基づいて説明してきたが、具体的な構成はこの発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、発明の実施の形態では、芯出し用突出部27における上端垂直面27aに対し固定プレート29の嵌合部29bを圧入することにより、芯出し用突出部27に対する固定プレート29の固定を行なうようにしたが、従来例と同様にビスで固定するようにしてもよい。
【0018】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明請求項1記載のエアコンプレッサのピストン構造にあっては、ピストン本体の冠面に、該ピストン本体と同心円の芯出し用突出部が形成され、該芯出し用突出部にピストンリングの軸心部に形成された芯出し穴を装着し、前記ピストンリングの内周縁部を固定手段によりピストン本体の冠面に対し押圧固定するようにしたエアコンプレッサのピストン構造において、前記芯出し用突出部の外周面に下端に向かうにつれて径を拡大するテーパ面が形成され、前記ピストンリングの芯出し穴の内径寸法が前記テーパ面の上端最小径部の外径寸法よりは大で、テーパ面の下端最大径部の外径寸法よりは僅かに小さめに形成されている手段としたことで、ピストン本体に対するピストンリングの組み付けの際に、ピストンリングの不完全な固定を生じさせることなしに、ピストン本体に対しスムーズかつ確実にピストンリングを同心状に組み付け固定することができるようになるという効果が得られる。
請求項2記載のエアコンプレッサのピストン構造にあっては、請求項1において、前記芯出し用突出部外周面でテーパ面の上部にほぼ垂直の嵌合部が設けられ、該嵌合部に前記固定手段を圧入することにより、前記ピストン本体の冠面に対する前記ピストンリングの内周縁部の押圧固定と芯出し用突出部に対する固定手段の固定がなされるように構成されている手段としたことで、ビスを用いる従来例に比べ、部品点数が削減されると共に、組み付け作業工程を簡略化できるようになる。
請求項3記載のエアコンプレッサのピストン構造にあっては、請求項1または2において、前記固定手段における前記芯出し用突出部におけるテーパ面との対向部分に、少なくとも前記テーパ面の最大径部の外径寸法より大径の逃げ部が形成されている手段としたことで、固定部材によるピストンリング内周縁部の押圧固定の際に、ピストンリングの損傷や、固定部材の圧入不良によるピストンリングの固定不良の発生を防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のエアコンプレッサのピストン構造を適用したエアコンプレッサユニットを示す一部切欠正面図である。
【図2】本発明の実施の形態のエアコンプレッサのピストン構造を示す図1におけるA矢視方向拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態のエアコンプレッサのピストン構造におけるピストンリングを示す断面図である。
【符号の説明】
2 エアコンプレッサ
23 ピストン本体
27 芯出し用突出部
27a 垂直面(嵌合部)
27b テーパ面
28 ピストンリング
28a 芯出し穴
29 固定プレート(固定手段)
29c 逃げ部

Claims (3)

  1. ピストン本体の冠面に、該ピストン本体と同心円の芯出し用突出部が形成され、該芯出し用突出部にピストンリングの軸心部に形成された芯出し穴を装着し、前記ピストンリングの内周縁部を固定手段によりピストン本体の冠面に対し押圧固定するようにしたエアコンプレッサのピストン構造において、
    前記芯出し用突出部の外周面に下端に向かうにつれて径を拡大するテーパ面が形成され、前記ピストンリングの芯出し穴の内径寸法が前記テーパ面の上端最小径部の外径寸法よりは大で、テーパ面の下端最大径部の外径寸法よりは僅かに小さめに形成されていることを特徴とするエアコンプレッサのピストン構造。
  2. 前記芯出し用突出部外周面でテーパ面の上部にほぼ垂直の嵌合部が設けられ、該嵌合部に前記固定手段を圧入することにより、前記ピストン本体の冠面に対する前記ピストンリングの内周縁部の押圧固定と芯出し用突出部に対する固定手段の固定がなされるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のエアコンプレッサのピストン構造。
  3. 前記固定手段における前記芯出し用突出部におけるテーパ面との対向部分に、少なくとも前記テーパ面の最大径部の外径寸法より大径の逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアコンプレッサのピストン構造。
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