JP3709603B2 - 全面マルチ式土壌消毒機の薬液注入装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、移動農機の機体後部に連結される全面マルチ式土壌消毒機の薬液注入装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の土壌中に薬液を注入して土壌中の有害生物を殺虫する土壌消毒機は、特開昭59−71635号公報で示すような手持ちの物から、特開昭52−65082号公報で示すような走行の全自動式の物や実公昭51−51887号公報で示す牽引型へと変化していった。さらに、散布時の薬液の空中拡散による作業者や歩行者等の、廻りにいる人の吸引等による身体への健康悪影響を防ぐため、薬液注入後の土壌表面をマルチフィルムで覆うものが、実開昭57−203782号公報で示すように公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、手動の物は手に持って歩行で作業するため能率が上がらず、単に牽引式や走行全自動式の物では時間経過とともに注入薬液が蒸発してしまうと土中の細菌の殺菌や害虫駆除の薬効を保てないばかりか、強力な薬剤では拡散中に作業者や廻りに近づいた人間に対し中毒を起こさせる危険があり、蒸発しにくい効きめの弱い薬液の使用に限定されていた。
また、実開昭57−203782号公報で示す薬液注入後の土壌表面をマルチフィルムで覆うものでは、ロータリ耕耘具で土壌表面を掘削し畝立てを行ないその畝内の土中に薬液を注入しフィルムで覆う工程を一つの作業装置としている後向き移動式の歩行型の耕耘機であるから、作業装置が、車輪からのオーバーハング量が大きく、後向きの直進時に蛇行が生じると、薬液散布部が畝から突出しやすくなり、空中への薬液飛散となって畝内部への散布作業がやりにくく、作業装置全体を持ち上げる旋回時には運転者に大労力が必要となる等の運転操作が難しいものと成っている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、従来装置の欠点を解消しようとするものであって、次のような技術的手段を講じた。即ち、移動農機1の機体後部に、薬液を充填したタンク13と、下方に向かって複数本突設され且つ前記薬液を土壌中へ噴射するノズル12を備えた注入刀2,2..とを昇降自在に連結すると共に、前記薬液を注入した土壌の左右幅に亘ってマルチフィルム5を敷設する全面マルチ式土壌消毒機7において、
前記機体後部に、上下及び前後方向のリンクアーム30,31,32,33を有する側面視四辺リンク機構を併設し、このリンク機構の後リンクアーム31に前記複数本の注入刀 2,2を左右に分けた状態で支持すると共に、前記リンク機構の前後対向するコーナ部支点34,35間を、ネジ部にて伸縮させる棒部材36にて連結し、前記棒部材36をハンドル操作で伸縮操作させることにより前記支点35位置を上下変更し、前記注入刀2,2を左右夫れ夫れ独立して上下調整自在とすることを特徴とした全面マルチ式土壌消毒機の薬液注入装置とする。
【0005】
【実施例】
以下、この発明の実施の形態を図面に従って詳述する。図1及び図2は移動農機1の機体後部に連結される全面マルチ式土壌消毒機7を示し、昇降自在に設けられた薬液注入部3の後方に、マルチフィルム敷設部6が設けられている。
移動農機1の主フレームの一部である伝動ケース50後部には上下方向昇降自在に設けたリフトアーム51により、昇降されるトップリンク52と左右ロワーリンク53,53から成る三点リンク装置の各前端部が取付けられており、この三点リンク装置の後端部に三角ヒッチ54が取り付けられている。この三角ヒッチ54下端部に次に述べるツールバー8が一体的に取り付けられ、後述するが後方に主枠体55や支枠56等の取付フレームが突設している。
【0006】
前記薬液注入部3は次に述べるように移動農機1の機体幅である後車輪22,22より全幅が大に形成され、左右方向に固設したツールバー8の左右両側に取り付けた筒体9,9に、左右の支持扞10,10を夫々上下方向調節自在に取り付けており、この支持扞10下方に複数の注入刀2,2..を配設している。略等間隔で左右方向に配設された複数本の注入刀2,2..は、支持扞10下端の取付棒11に夫々単独で上下調節(図示せず。)自在に取り付けており、注入刀2は一本又は支持扞10毎に数本まとめて同時にも上下調節可能とした薬液注入部3としている。
夫れ夫れの注入刀2後部にはノズル12を装着し、タンク13に充填した薬液をプランジャー式の電動ポンプ14で汲み上げ、送液パイプ29,29を経て前記ノズル12から土壌中に噴射するように形成している。
【0007】
一方、前記マルチフィルム敷設部6前方には薬液注入部3の全幅にわたる幅広の鎮圧ローラ4が主枠体55から下方に吊持配設され、その後部にマルチフィルム5用のフィルムロール15を装着するとともに、繰出センサ兼用の押えローラ16を前記マルチフィルム5のフィルムロール15へ軽く圧接させる。この押えローラ16により、マルチフィルム5は車速に関係なく一定のピッチで繰り出されるのを検出する。これらのマルチフィルム敷設部6関連部材は支枠56に夫々取り付けられており、この支枠56は主枠体55の後端角バー57部で連結されている。
【0008】
尚、前記注入刀2の地表以下への突入により土壌表面が一時的に左右へ切り開かれるが、注入刀2の前進と時間の経過とに伴い該土壌表面の切溝は狭くなる方に落ち着くので、その後に鎮圧ローラ4にて該土壌表面を鎮圧する。即ち、注入刀2と鎮圧ローラ4とは所定間隔だけ離しておく必要がある。この土壌中に注入散布された土壌消毒薬液は、小さく砕土された土壌の間隙から上方に蒸散して空中に飛び出そうとするが、注入散布後ただちに鎮圧ローラ3でその略全幅にわたって土壌をしっかりと押し固められるから、薬液の空中への蒸散を防止し、運転者が吸引する不具合を少なくする。
【0009】
フィルムロール15は支枠56の前端部にロール軸の向きを左右方向として取り付けられており、フィルムロール15の左右端近傍夫々の後方に、フィルム貼り用のスポンジ輪17,17と鎮圧輪18,18を配設し、前記フィルムロール15から繰り出されたマルチフィルム5の左右両端近傍内側をこのスポンジ輪17と鎮圧輪18とで押えるようにしている。また、フィルムロール15の左右端部は覆土ディスク19または押圧スポンジ輪20の何れかを選択して上下反転セットすることにより、さらに別の次に説明する作業を行なうことになる。
【0010】
移動農機1の進行方向中心線に対し、薬液注入部3,3は左右方向略対象位置に取り付けられているのに対し、この上面を覆うマルチフィルム5は前回敷設した前回フィルム(図では左側。)端に新規フィルム端を重ね合わせて(作用は後述する。)貼り付ける方式としているため、フィルムロール15が前回敷設したフィルム側に偏位したオフセット位置に取り付けられている。
このフィルム重合側である左側には、フィルム重合保持のための粘着テープロール23とテープガイド26とフィルムガイド棒24とテープ押圧用の押圧スポンジ輪20が備えられ、前回フィルムの敷設されていない圃場泥土側(図では右側。)は、新規フィルム端を粘着テープで地表面に貼り付けることが不可能なので、泥土表面の泥土を新規フィルムに載せてフィルムの剥がれを防止するために、右側に溝開け具25とフィルムガイド棒24と覆土ディスク19を備えている。
40はガイドロールであって、左右のスポンジ輪17,17の前方低位に設けられ、マルチフィルム敷設時にフィルムガイド棒24,24間中央部を移動するマルチフィルム5を案内する。ここで、注入刀2と鎮圧ローラ3とは、前述したように所定間隔だけ離してあるが、その間に左右一組のカルチ爪21,21を上下および左右方向調節自在に配設している。図例では、夫々のカルチ爪21は移動農機1の後車輪22の後方位置で上下方向調節自在に設けられているが、考えられるカルチ爪21の構成としては後車輪22より幅広の位置から後車輪22後方にわたって上下と幅方向に調節自在としていても同効であり、土壌表面の車輪跡をこのカルチ爪21により膨軟化して凹みを消すようにしている。
【0011】
ここで一般に、圃場を消毒しながらマルチフィルム5を連続的に敷設していく場合の作業手順を順を追って説明すると、圃場の地面上に最初に先ずマルチフィルム5を敷設する。次に、これに隣接して新たなマルチフィルム5を敷設し、次々に隣接して圃場前面をフィルムで覆ってしまう。最初のマルチフィルム5のフィルム端部は圃場の泥土で押さえ、次のマルチフィルム5からは、片側一端を粘着テープで接着し他端を圃場の泥土で押さえ、この作業を往復作業で行なうか、廻り作業で行なうかによって機械構成が異なる。
【0012】
先ず、一本目のマルチフィルム5を敷設するには、移動農機1にて当該全面マルチ式土壌消毒機7を牽引しながら圃場を走行すれば、先ず、薬液注入部3の注入刀2に装着したノズル12から薬液が土壌中に噴射される。これと、略同時にカルチ爪21で車輪跡を膨軟化する。
続いて、前記鎮圧ローラ4の前方に設けた左右の溝開け具25,25により、薬液を注入した土壌表面の左右両端部に溝を作溝するとともに泥土を外側に盛り上げておく。薬液を注入した土壌表面の中央部を鎮圧ローラ4にて鎮圧しながら、フィルム後下部左右を作溝近傍部でスポンジ輪17,17により押さえて移動農機1が前進するから、マルチフィルム5は左右のフィルムガイド棒24,24で案内されつつフィルムロール15から繰り出されて土壌表面へ敷設されていき、スポンジ輪17,17後方外側の覆土ディスク19,19により盛り上がった泥土は戻されてフィルム両端部を押さえる。
【0013】
しかるとき、前記カルチ爪21,21により車輪跡が消されるので、鎮圧ローラ4の鎮圧作用とも相俟って土壌表面の凹凸がなくなり、マルチフィルム5が土壌表面に密着してマルチフィルム5の下面に空気が溜ることがない。依って、風によるマルチフィルム5のばたつきを無くし、マルチフィルム5の破れや剥離を防止できる。
【0014】
次に、二本目のマルチフィルム5の敷設について説明する。
この作業は、図2で示しているので図に沿って説明すると、一定深さに耕耘細土後の圃場を、移動農機1にて当該全面マルチ式土壌消毒機7を牽引しながら圃場を走行すれば、先ず、薬液注入部3の注入刀2に装着したノズル12から薬液が土壌中に噴射される。これと、略同時にカルチ爪21で車輪跡を膨軟化する。
【0015】
続いて、前記鎮圧ローラ4の前方に設けた右方の溝開け具25により、薬液を注入した土壌表面の右端部に溝を作溝するとともに泥土を矢印「イ」方向である外側に盛り上げて走行する。薬液を注入した土壌表面の中央部を鎮圧ローラ4にて鎮圧しながら、フィルム後下部左右をスポンジ輪17,17により押さえて移動農機1が前進するから、マルチフィルム5は左右のフィルムガイド棒24,24で案内されつつフィルムロール15から繰り出されて土壌表面へ敷設されていく。
【0016】
この時、マルチフィルム5の左方には、前回敷設したフィルム5aの側端部があるからこの側端部に重合状に、新規のオフセットしたマルチフィルム5の左端部を載せ、重合端部を粘着テープロール23からテープガイド26を介して引き出した粘着テープ28で貼り付ける。右側のマルチフィルム5端部は一本目と同様に覆土ディスク19により盛り上がった泥土を、矢印「ロ」で示すように作溝した溝側に戻しながら、図3で示すようにスポンジ輪17で押圧する作溝底部に位置するフィルム端を押さえて固定する。スポンジ輪17後方には防止板27と鎮圧輪18が設けられ、溝上の泥土の上面を一度均している。次に重合側のみは、鎮圧ロール4により鎮圧均平後粘着テープ28で接着されるから、マルチフィルム5の下面内部に空気が残留することが無い。このように、二本目の作業ではマルチフィルム5側縁部の右側一端部は、前記作溝部分へ凹状に敷設され、前記覆土ディスク19にて土をかけられて固定され、マルチフィルム5他端の側縁部は、覆土されている既設のマルチフィルム5aの側縁部に重ね合わせ、この重合部を粘着テープ28で接着して敷設される。しかるときも、前工程と同様に薬液注入機2にて土壌を消毒するとともにカルチ爪21により車輪跡を膨軟化する。
【0017】
三本目以後のマルチフィルム5の敷設は、往復作業を行なう場合、移動農機1の右側に既設のマルチフィルム5aの側縁部が位置するから、図示しない機体左側の溝開け具25を降下して右側の溝開け具25を上動収納し、フィルムロール15のオフセットを反転して右側に移動突設し、図示しない右側の粘着テープロール23を使用してマルチフィルム5の右側を重合接着していくし、廻り作業とするならば、図2の状態で前回敷設のマルチフィルム5aの重合部を常に左方に見て作業を行なえば良い。
【0018】
往復作業では、圃場の一端端部から他端端部に向かって作業し、廻り作業では圃場の左右中間部から作業開始するのは自明であり説明しない。
粘着テープロール23は支枠56の左右両端部に夫々取り付けられており必要時にスポンジ輪20で粘着テープ28の下端部を踏み付けて、図3で示すようにマルチフィルム5他端の側縁部と覆土されている既設のマルチフィルム5aの側縁部とを重ね合わせて接着し移動農機1を前進するに伴い、粘着テープ28は図1で示すように、回転可能なローラー状のテープガイド26に接してゆっくり引き出されながらフィルムガイド棒24部でマルチフィルム5の端部に仮りに接着され、スポンジ輪20の重量により次に強く押しつけられ接着される。
【0019】
図4は左右の薬液注入部3,3の斜視図であり、図例では電動ポンプ14から送液パイプ29を経て吐出圧送される薬液が、送液パイプ29終端部のノズル12から土壌中に吐出しており、これらの左右薬液注入部3,3がツールバー8に取り付けた筒体9,9に対し支持扞10,10を各別に上下調節ピン係止することで、取付棒11を上下し、薬液注入部3の土壌中への注入深さを左右各別に調節している。
【0020】
図5乃至図7はこの発明の高さ調節機構を備えた注入部を示し、この注入部は、ツールバー8の後面に取り付けた前リンク30,30と取付棒11の前面に取り付けた後リンク31,31の上下端を夫々上下リンク32,33で連結して、四辺リンク式の高さ調整機 構を構成している。またこの四辺リンクの前後の対向隅部の上下支点34,35間を、図6で示すようにネジ棒36で連結しハンドル37で伸縮調節する構成となっている。これにより、図7で示すようにツールバー8に対し薬液注入部3aを上方に調節でき、またロック具38で上下支点34,35間の距離を固定すると、薬液注入部3aを土壌表面より上に位置調節したまま保持できる。
【0021】
【発明の作用効果】
この発明は、移動農機1の機体後部に、薬液を充填したタンク13と、下方に向かって複数本突設され且つ前記薬液を土壌中へ噴射するノズル12を備えた注入刀2,2..とを昇降自在に連結すると共に、前記薬液を注入した土壌の左右幅に亘ってマルチフィルム5を敷設する全面マルチ式土壌消毒機7において、
前記機体後部に、上下及び前後方向のリンクアーム30,31,32,33を有する側面視四辺リンク機構を併設し、このリンク機構の後リンクアーム31に前記複数本の注入刀2,2を左右に分けた状態で支持すると共に、前記リンク機構の前後対向するコーナ部支点34,35間を、ネジ部にて伸縮させる棒部材36にて連結し、前記棒部材36をハンドル操作で伸縮操作させることにより前記支点35位置を上下変更し、前記注入刀2,2を左右夫れ夫れ独立して上下調整自在とすることを特徴とした全面マルチ式土壌消毒機の薬液注入装置としたので、圃場全面をマルチフィルム5で覆って作業を続け、最終端部で既設のマルチフィルム5aの側縁部と畦畔との間隙間隔が一作業工程幅以下であっても、片側の注入刀2,2.を独立して上動することで、既設のマルチフィルム5aを傷めること無く新規のマルチフィルム5を重合できる。また前記左右夫れ夫れの注入刀2,2は、側面視四辺リンク機構にて支持され、このリンク機構の前後対向するコーナ部支点34,35間はネジ部を有する棒部材36で連結する構成としてるので、薬液の注入深さを無段階で調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一部断面した、全体側面図である。
【図2】図1の全体平面図である。
【図3】図1作業中の、土壌表土の背面断面図である。
【図4】図1要部構成の、部分拡大斜視図である。
【図5】本発明を示す、斜視図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】図6の部材操作後の側面図である。
【符号の説明】
1 移動農機
2 注入刀
3 薬液注入部
4 鎮圧ローラ
5 マルチフィルム
6 マルチフィルム敷設機
7 全面マルチ式土壌消毒機
8 ツールバー
12 ノズル
13 タンク
30 前リンク(アーム)
31 後リンク(アーム)
32 上リンク(アーム)
33 下リンク(アーム)
34 支点
35 支点
36 ネジ棒
Claims (1)
- 移動農機1の機体後部に、薬液を充填したタンク13と、下方に向かって複数本突設され且つ前記薬液を土壌中へ噴射するノズル12を備えた注入刀2,2..とを昇降自在に連結すると共に、前記薬液を注入した土壌の左右幅に亘ってマルチフィルム5を敷設する全面マルチ式土壌消毒機7において、
前記機体後部に、上下及び前後方向のリンクアーム30,31,32,33を有する側面視四辺リンク機構を併設し、このリンク機構の後リンクアーム31に前記複数本の注入刀2,2を左右に分けた状態で支持すると共に、前記リンク機構の前後対向するコーナ部支点34,35間を、ネジ部にて伸縮させる棒部材36にて連結し、前記棒部材36をハンドル操作で伸縮操作させることにより前記支点35位置を上下変更し、前記注入刀2,2を左右夫れ夫れ独立して上下調整自在とすることを特徴とした全面マルチ式土壌消毒機の薬液注入装置。
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