JP3709375B2 - ブリケットの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄系金属の研削切粉を有効利用することができるブリケットの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
軸受鋼や浸炭鋼等の鉄系金属を研削(以下、研磨、超仕上げ研磨及びラッピング等も含む概念として使用する)した際に生じる切粉は、水分及び油分を含有する研削液や砥粒等を含む綿状(繊維状)凝集体として回収されている。この綿状凝集体は、多量の純鉄を含むことからこれを製鋼原料として再利用することが試みられている。しかし、この綿状凝集体は多量の水分を含有していることから、これを溶鉱炉にそのまま投入すると、当該水分によって突沸(水蒸気爆発)が生じるという問題を引き起こす。そこで、綿状凝集体中の水分を遠心分離等によって除去することが考えられるが、この場合には、綿状凝集体に含まれる油分も水分とともに除去されて、綿状凝集体の自然発熱により研削切粉の成分である純鉄が酸化鉄に変質する。このため、これを製鋼原料として再利用するには還元する必要があり、還元剤の使用等によりコスト高になる。
【0003】
また、前記油分の付着した研削切粉は相互に密着し難いことから、綿状凝集体をそのまま圧縮成形しても所望の強度に固形化するのが困難である。さらに、炭素の含有量が0.2重量%以上の鉄系金属の研削切粉を多量に含む綿状凝集体については、圧縮時のスプリングバックが大きいので、これを圧縮成形しても所望の強度に固形化するのが困難である。したがって、圧縮成形した綿状凝集体を溶鉱炉に投入しても、飛散しながら舞い上がって、集塵機によって大半が回収されてしまうという問題を生じる。
さらに、前記綿状凝集体に含まれる繊維状の研削切粉は、ハンマーミル等で粉砕することが困難であるので、綿状凝集体を細かくせん断することができない。このため、綿状凝集体をブリケット等に加工することも困難である。
したがって、前記綿状凝集体は再利用することなく廃棄物処理業者に委託して埋め立て処分されているのが実状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような綿状凝集体の埋め立て処分は、資源の有効利用という観点から好ましくない。また、環境悪化を引き起こすとともに、廃棄コストが高くつくという問題もある。 この発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、研削切粉を有効に再利用することができるブリケットの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するためのこの発明のブリケットの製造方法は、鉄系金属の研削切粉と油分及び水分を含有する研削液とを含む綿状凝集体を所定形状に圧縮成形し、これにより前記研削切粉をせん断して嵩比重が1.5以上で表面側に強化層がある多孔質の脆性成形体を形成し、得られた脆性成形体に固形化補助剤を含浸させて当該固形化補助剤を脆性成形体の内部深くまで浸透させ、ついでこの脆性成形体を乾燥させ、内部に浸透した固形化補助剤を表面に移動させて前記強化層をさらに強化することを特徴としている(請求項1)。
このようにして得られたブリケットは、脆性成形体を固形化補助剤でさらに強化しており、しかも素材である前記脆性成形体の嵩比重が1.5以上であるとともに、その表面側に強化層を形成しているので、より一層破損し難い強固なものとなる。また、前記脆性成形体の内部深くまで固形化補助剤を浸透させることができるので、当該内部の強度についても効果的に高めることができる。さらに、油分を含有しているので、粉状の純鉄が酸化するのを防止することができる。
圧縮成形により含油率が1〜12重量%の脆性成形体を形成することができる(請求項2)。また、前記強化層のデュロメータ硬さが90以上であり、且つ、中心部付近のデュロメータ硬さより10〜30以上硬くされているのが好ましい(請求項3)。さらに、未焼入の鉄系金属の綿状凝集体を30〜50重量%含み、嵩比重が3.0〜4.5の脆性成形体を得るのが好ましい(請求項4)。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳述する。 図1はこの発明の一実施形態に係る脆性成形体Zを示す斜視図である。この脆性成形体Zは、焼入した鉄系金属を研削加工する際に発生する研削切粉と油分及び水分を含有する研削液とを含む綿状凝集体C(図4参照)を、円柱形に圧縮成形して固形化したものである。 前記脆性成形体Zは、嵩比重が1.5以上になるように圧縮成形されており、これにより、繊維状の研削切粉がせん断され、適度の油分と空隙とを有する多孔質の脆性体として構成されている。また、その含油率は1〜12重量%に調整されている。 さらに、脆性成形体Zの表面側には、その内部側よりも高密度且つ高硬度の強化層Kが形成されている(図2参照)。この強化層Kは、例えば円柱形にて直径60〜70mm、高さ30〜40mmの脆性成形体Zの場合、表面から0.3〜7.0mmの深さに至る範囲に形成されており、そのデュロメータ硬さAは、90以上であって中心部付近のデュロメータ硬さAに対して10〜30以上硬くなっており、嵩比重は中心部付近の嵩比重に対して0.5〜1以上高くなっている。
【0011】
前記脆性成形体Zは、残留する油分によって研削切粉の成分である純鉄が酸化するのが防止されている。また、嵩比重が1.5以上であるとともに表面側に強化層Kを形成しているので、所望の強度及び形状維持性を確保できる。このため、搬送等の取り扱い時に崩壊し難いものとなる。さらに、前記脆性成形体Zの含油率が1〜12重量%であるので、適度の硬さに固形化されているとともに、当該少量の残留油分によって研削切粉の成分である純鉄が酸化するのを効果的に防止している。
【0012】
前記鉄系金属としては、炭素を0.2重量%以上含むものも用いることができる。このような鉄系金属の研削切粉は、スプリングバックが大きく、固形化が困難であるが、圧縮成形を適用することにより、スプリングバックの影響を排除して当該研削切粉を効果的にせん断することができる結果、その固形化が可能となる。なお、炭素を0.2重量%以上含む研削切粉の代表例としては、軸受鋼の研削切粉を挙げることができる。
【0013】
前記脆性成形体Zは、固形化補助剤Dを含浸させて強化することにより、例えば鉄鋼原料用のブリケットB(図4(g)参照)として好適に用いられる。前記固形化補助剤Dとしては、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、燐酸アルミニウム、アスファルト乳剤から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましく、これにより、油分を含有しているにもかかわらずブリケットBをより強固にすることができる。また、前記固形化補助剤Dの含有割合は、2〜30重量%であるのが好ましく、これにより、ブリケットBをより一層強固にすることができる。なお、前記固形化補助剤Dとしては、酢酸ビニル等も用いることができる。
【0014】
前記ブリケットBは、前記脆性成形体Zを固形化補助剤Dでさらに強化しているので、搬送、貯蔵等の取り扱い時においてより破損し難い強固なものとなる。特に、前記脆性成形体Zの嵩比重が1.5以上であるとともに、その表面側の強化層K部分が固形化補助剤Dによって効果的に固められるので、より一層破損し難い強固なものとなる。しかも、嵩比重が1.5以上の多孔質体であり、その内部深くまで固形化補助剤Dを支障なく浸透させることができるので、当該内部の強度についても効果的に高めることができる。このため、万一破損した場合でも、内部が粉状に飛散するおそれがない。また、乾燥した固形物であるので、例えば溶鉱炉に投入しても、突沸を生じたり舞い上がったりするおそれがない。さらに、油分を含有しているので、粉状の純鉄が酸化するのが防止される。したがって、製鋼原料用のブリケットBとして特に好適なものとなる。
【0015】
図3は比重がそれぞれ異なる脆性成形体及びブリケットについて、圧縮破壊試験を行った結果を示すグラフ図である。この圧縮破壊試験に用いた脆性成形体及びブリケットは、外径6.6cm、幅3.5cmの円柱形のものであり、脆性成形体の嵩比重は1.3〜2.5、ブリケットの嵩比重は2.2から2.8の範囲である。また、前記脆性成形体は焼入した鉄系金属を研削して得られる綿状凝集体を用いて作製したものである。圧縮破壊試験は、外周の相対向する2箇所を径方向に加圧して、破壊したときの荷重を測定した。なお、負荷速度は1mm/分に設定した。
図3から明らかなように、嵩比重1.5未満の脆性成形体の圧縮破壊加重は150N以下であり非常に脆いのに対して、嵩比重1.5以上の脆性成形体の圧縮破壊加重は240N〜1600Nの範囲であり、容易に破壊し難いことが確認された。また、ブリケットの破壊強度については、3100〜4200Nであり、良好な強度を確保できることが確認された。
【0016】
なお、焼入した鉄系金属を研削した際に生じる綿状凝集体Cについては、その材質によって圧縮成形し難い場合があるが、この場合には、当該綿状凝集体Cに未焼入の鉄系金属を研削した際に生じる綿状凝集体Cを混合することにより、容易且つ強固に圧縮成形することができる。この未焼入の鉄系金属の綿状凝集体Cは、30〜50重量%混合するのが好ましく、これにより嵩比重が3.0〜4.5、破壊強度が2000〜3000Nのきわめて高密度且つ高強度の脆性成形体Zを得ることができる。また、この脆性成形体Zに固形化補助剤Dを含浸させることにより、破壊強度が3100N以上のブリケットBを得ることができる。
【0017】
図4は前記脆性成形体Z及びブリケットBの製造方法の一例を示す工程図である。この脆性成形体Zの製造においては、まず研削切粉の綿状凝集体C(図4(a)参照)を加圧圧縮して、当該綿状凝集体Cに含まれる研削液の成分である水分及び油分の含有量を予備的に調整する。この綿状凝集体Cの加圧圧縮は、例えばベルトコンベア1にて搬送しながら一対のロール2間に挟み込むことにより行う(図4(b)参照)。但しこの水分及び油分の調整は、単なるエアー吹き付けやエアー圧縮により行う方法、或いはマグネット式のセパレータを用いる方法もある。この際、綿状凝集体Cは、含水率が50重量%を超えない範囲に、含油率が50重量%を超えない範囲にそれぞれ調整するのが好ましく、これにより、綿状凝集体Cの搬送、貯蔵等の取り扱いが容易となる。
【0018】
次に、水分及び油分の含有量が調整された前記綿状凝集体Cを、成形型3を用いて例えば油圧プレスにより圧縮成形することにより脆性成形体Zを得る(図4(c)参照)。この際、脆性成形体Zの嵩比重が1.5以上になるように綿状凝集体Cを圧縮する。この圧縮成形によって、綿状凝集体Cに含まれるスパイラル繊維状の研削切粉がせん断されるとともに、表面側に強化層Kが形成される。また、含水率が2〜12重量%に、含油率が1〜12重量%にそれぞれなるように、綿状凝集体Cの圧縮速度、圧縮時の排水量及び廃油量等を制御する。この際、前工程において綿状凝集体Cの含水率が50重量%、含油率が50重量%をそれぞれ超えない範囲に予め調整されているので、前記脆性成形体Zの水分及び油分の含有割合を容易かつ適正に調整することができる。
【0019】
次いで、前記脆性成形体Zに、液状の固形化補助剤Dを含浸させる。この固形化補助剤Dの含浸は、例えば脆性成形体Zをベルトコンベア7にて搬送しながら、タンク8に注入した前記固形化補助剤Dに浸漬させることにより行う(図4(d)参照)。
その後、前記固形化補助剤Dを含浸させた脆性成形体Zを(図4(e)参照)養生(乾燥)することにより(図4(f)参照)、ブリケットBを得ることができる(図4(g)参照)。この養生により、脆性成形体Zの内部に浸透した余剰の固形化補助剤Dが表面側に移動して一部が蒸発するとともに、残りが密度の高い強化層K部分に残留して、当該強化層K部分が効果的に強化される。
【0020】
以上により得られた脆性成形体Zは、研削液の油分の一部を加工中を含めて常に保持しているので、研削切粉の成分である純鉄の酸化が効果的に防止されている。また、研削液の油分の一部を常に保持した状態でブリケットBを製造しているので、純鉄の酸化が効果的に防止されている。例えば軸受鋼(SUJ−2)の研削切粉を含む綿状凝集体Cを用いて製造されたブリケットBについては、70重量%以上の純鉄を含むことが確認されている。したがって、溶解歩留まりが70%以上と非常に高く、高品質の製鋼原料として製鋼メーカに有償で提供することができる。
また、前記ブリケットBの製造方法は、綿状凝集体Cを粉砕して微細化する工程を要することなく当該綿状凝集体Cを固形化することができるので、ブリケットBを能率よく製造することができる。
【0021】
なお、前記脆性成形体Zに固形化補助剤Dを含浸させる際に、固形化補助剤Dを水や溶剤等によって希釈してもよく、この場合には、固形化補助剤Dを脆性成形体Zの内部深くまでさらに容易且つ迅速に浸透させることができるとともに、珪酸ソーダのように珪素を含む固形化補助剤Dについては、その希釈化により珪素の量を少なくすることができるので、より一層不純物の少ないものとなり、製鋼原料としてより好適となる。
【0022】
また、前記脆性成形体Zは、前記した円柱形の他、球形、角柱形等の取り扱いの容易な形状に形成される。
さらに、この発明の脆性成形体Zは、細かく粉砕することにより、前記製鋼原料用のブリケットB以外に、焼結金属用の粉末原料や、磁性材料用途としての樹脂等の添加材としても再利用することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載のブリケットの製造方法によれば、脆性成形体を固形化補助剤でさらに強化しているので、破損し難い強固なブリケットが得られ、運搬、貯蔵等の取り扱いが容易である。特に、前記脆性成形体の嵩比重が1.5以上であり、しかもその表面側に強化層を形成しているので、より一層破損し難い強固なものとなる。また、脆性成形体の内部深くまで固形化補助剤を浸透させることができるので、当該内部の強度についても効果的に高めることができる。さらに、乾燥した固形物であるので、例えば溶鉱炉に投入しても、突沸を生じたり舞い上がったりするおそれがない。しかも、油分を含有しているので、粉状の純鉄が酸化するのが防止される。したがって、特に鉄鋼原料用のブリケットとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る脆性成形体を示す斜視図である。
【図2】前記脆性成形体の断面図である。
【図3】脆性成形体の圧縮破壊強度を示すグラフ図である。
【図4】脆性成形体及びブリケットの製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
B ブリケット
D 固形化補助剤
K 強化層
Z 脆性成形体

Claims (4)

  1. 鉄系金属の研削切粉と油分及び水分を含有する研削液とを含む綿状凝集体を所定形状に圧縮成形し、これにより前記研削切粉をせん断して嵩比重が1.5以上で表面側に強化層がある多孔質の脆性成形体を形成し、
    得られた脆性成形体に固形化補助剤を含浸させて当該固形化補助剤を脆性成形体の内部深くまで浸透させ、ついで
    この脆性成形体を乾燥させ、内部に浸透した固形化補助剤を表面に移動させて前記強化層をさらに強化することを特徴とするブリケットの製造方法。
  2. 圧縮成形により含油率が1〜12重量%の脆性成形体を形成する請求項1記載のブリケットの製造方法。
  3. 前記強化層のデュロメータ硬さが90以上であり、且つ、中心部付近のデュロメータ硬さより10〜30以上硬くされている請求項1〜2のいずれかに記載のブリケットの製造方法。
  4. 未焼入の鉄系金属の綿状凝集体を30〜50重量%含み、嵩比重が3.0〜4.5の脆性成形体を得る請求項1記載のブリケットの製造方法。
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