JP3709357B2 - アクティブ・フェーズド・アレー・アンテナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、指向方向を任意に変更することができるアレーアンテナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナとしては、例えば、図3や図4に示した構成のものが知られている。これらの構成は、特開平02−288602の従来技術の欄に例示されている。
図3に示したアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナは、複数のアンテナ81、81、81と合成手段82との間に可変移相器83、83を挿入して合成位相を調整することによって、指向方向を変更できるように構成されたものである。
また、図4に示したアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナは、複数のアンテナ91、91、91と合成手段92の間に混合手段93、93、93を挿入したものであって、この混合手段93、93、93に入力される局部発振器94からの局部発振信号の位相を可変移相器95、95によって変化させて合成位相を調整することによって、指向方向を変更出来るように構成されたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図3に示したアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナは、受信信号ラインに可変移相器が挿入されているが、ここで用いられている可変移相器は現在の技術ではまだ非常に高価であるため、アンテナ数が多い場合には、アクティブ・フェーズド・アレー・アンテナ全体が非常に高価になってしまうという問題がある。
また、図4に示したアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナでは、混合手段へ供給される局部発振信号ラインに可変移相器が挿入されているが、図3のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナの場合と同様に、アンテナ数が多い場合には、アクティブ・フェーズド・アレー・アンテナ全体が非常に高価になってしまうという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために特開平07−202548に記載された技術がある。この技術においては、図5に示したように、局部発振器71で発生させた局部発振信号、又は搬送波の伝搬経路の途中にフィルタ72、72、・・・を挿入し、このフィルタで搬送波に位相差を付ける。そして、各ミクサ73、73、・・・では、アンテナ74、74、・・・の各々によって受信された電波、又は送信信号と前記局部発振信号、又は搬送波とを乗算し、合成器75では合成して出力するように構成されており、局部発振器71の周波数を変化させることによって、アンテナの指向方向を変更することができるように構成されている。
この場合には、各混合手段に入力される局部発振器からの局部発振信号、又は搬送波に対する遅延量は、各フィルタ72、72、・・・によってそれぞれ固定されているため、指向方向を変更するためには、前述したように局部発振器71の周波数、即ち局部発振信号、又は搬送波の周波数を変化させる必要がある。
しかし、このような構成のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナを採用する送受信機が、局部発振器の周波数によって送受信周波数を決定するような構成を採用している場合には、局部発振器の周波数を任意に変更することができないため、指向方向を任意に変更することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、高価な可変移相器を使用しない安価な構成により、送受信周波数と無関係に指向方向を任意に変更することができるアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナを提供することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる請求項1のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナにおいては、
任意に配置された複数のアンテナと、局部発振信号を生成して出力する局部発振器と、局部発振器から出力される局部発振信号を、複数の異なる遅延時間だけ遅延させて、それぞれ異なる遅延時間の複数の局部発振信号を出力する遅延手段と、前記複数のアンテナのそれぞれに対して設けられ、前記遅延手段から出力される複数の局部発振信号から何れかの局部発振信号を選択して取り出す複数の選択手段と、前記複数のアンテナのそれぞれに対して設けられ、各アンテナの励振信号と前記各選択手段にて取り出された局部発振信号とを混合する混合手段と、前記各混合手段からの出力を合成する合成手段とを備えるという手段を講じた。
【0007】
請求項2の発明では、遅延手段は、局部発振器から出力される局部発振信号を、段数に応じた分だけ遅延させる複数段数の遅延手段とし、選択手段は、複数のアンテナのそれぞれに対して設けられ、前記遅延手段における選択された段数位置から前記局部発振信号を取り出す選択手段とした。
請求項3の発明では、遅延手段は、入力される局部発振信号を、複数のロジック回路によってそれぞれ遅延させて、各ロジック回路の出力位置から局部発振信号を取り出し得る構成のロジックICとし、選択手段は、前記ロジックICの複数のロジック回路の出力位置から取り出された局部発振信号がそれぞれ入力され、何れか1つの局部発振信号を取り出すように構成されたマルチプレクサとするとともに、該マルチプレクサの出力から高調波を除去するように構成されたローパスフィルタを付加した。
【0008】
請求項4の発明では、遅延手段は、局部発振器から出力される局部発振信号を、長さに応じた分だけ遅延させる遅延線路とし、選択手段は、複数のアンテナのそれぞれに対して設けられ、前記遅延線路における選択された長さ位置から前記局部発振信号を取り出す選択手段とした。
【0009】
【作用】
本発明によれば、遅延手段では、局部発振器から出力される局部発振信号を、複数の異なる遅延時間だけ遅延させて、それぞれ異なる遅延時間の複数の局部発振信号を出力させ、複数のアンテナのそれぞれに対して設けられた選択手段では、前記遅延手段から出力される複数の局部発振信号から何れかの局部発振信号を選択して取り出すように構成したので、取り出した局部発振信号は、それぞれが互いに異なる位相を持つことになる。従って、このような局部発振信号を混合手段によって各アンテナの励振信号と混合し、混合されたこれらの励振信号を合成手段で合成することによって、局部発振信号が持つ位相差で複数のアンテナによる指向方向を決定できる。
従って、選択手段によって選択する局部発振信号を変更することによって遅延時間を変更すれば、局部発振信号の位相差が変更され、結果的に複数のアンテナによる指向方向が変更することになる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかるアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナを、その実施の形態を示した図1に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1において、
複数のアンテナ111、112、113にて得られる励振信号は、増幅器121、122、123にてそれぞれ増幅されて、それぞれ混合手段131、132、133に入力される。
各混合手段131、132、133においては後述する局部発振信号と前記励振信号とが混合されて、合成手段14にて合成されて、図示しない中間周波増幅器、復調器、低周波増幅器へ順次供給されて、図示しないスピーカ等の出力手段から音響信号として出力される。
【0012】
次に、局部発振信号の説明をする。
2は複数の局部発振信号の元となる局部発振信号を出力する局部発振器であり、3は前記元となる局部発振信号が初段に入力される複数段の遅延回路である。なお、この遅延回路3は汎用のロジックICの持つ遅延特性を利用したものであり、1例としては、1段のゲート素子で4nSの遅延特性を持っている。従って、例えば、4段のゲート素子31、32、33、34を通過させることによって16nSの遅延時間を与えることができる。元となる局部発振信号の周波数が30MHzの場合には、1周期が33.3nSであるので、1段のゲート素子による4nSの遅延時間は、位相差に換算すると43.2°(=360°×4/33.3)となる。
【0013】
41、42、43は前記遅延回路3の各段からの出力が入力され、コントロール信号によって指定される入力信号のみが選択されて出力されるように構成されたマルチプレクサである。
51、52、53は前記複数のマルチプレクサ41、42、43から出力される選択された信号から高調波を除去するローパスフィルタである。なお、前記マルチプレクサ41、42、43とローパスフィルタ51、52、53が特許請求の範囲に記載された選択手段に相当する構成である。
これらの複数のローパスフィルタ51、52、53から出力される信号が、前記混合手段131、132、133へそれぞれ入力される局部発振信号であり、それぞれ異なる位相差が与えられている。
【0014】
従って、例えば、局部発振信号が30MHzで、3本のアンテナ111、112、113を2.4m間隔で一列に並べた場合の例で、コントロール信号C1によってマルチプレクサ41においては1段目の遅延信号(遅延時間=4nS×1)が選択され、コントロール信号C2によってマルチプレクサ42においては2段目の遅延信号(遅延時間=4nS×2)が選択され、コントロール信号C3によってマルチプレクサ43においては3段目の遅延信号(遅延時間=4nS×3)が選択されるように制御することによって、各混合手段131、132、133へ入力される各局部発振信号の位相差は43.2°(時間換算で4nS、距離換算で1.2m)となり、同じ遅延時間とした場合に比べて、その指向方向を30°だけ変更することができるのである。
このようにして、選択する遅延信号を適宜変更することによって、同様にして各局部発振信号の位相差を変更し、複数のアンテナ111、112、113による指向方向を適宜変更することができるのである。
このような指向方向の制御を行うために、所望の指向方向と、コントロール信号C1、C2、C3とを対応させたデータテーブルを持った制御回路を備えるとよい。
なお、前記複数のアンテナは、一列に並べても、平面状に並べても等間隔でなくてもよく、任意に配置することが可能であり、その配置に応じて遅延時間の差を制御すればよいのである。
【0015】
図2は、遅延手段として、遅延線路を用いた場合のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナの構成例である。
図2において、6は遅延線路であり、この遅延線路6は局部発振器2から出力される局部発振信号を、長さに応じた分だけ遅延させる遅延線路であり、マルチプレクサ41、42、43は、図1と同様に、前記複数のアンテナ111、112、113のそれぞれに対して設けられ、前記遅延線路6における選択された長さ位置から前記局部発振信号を取り出す選択手段を構成している。
【0016】
本発明のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナによれば、上述したように、アンテナを回転させることなく、複数のアンテナによる指向方法を変更することができるようになった。
また、従来の高価な可変移相器を用いたアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナに比較して、汎用のロジックICを用いた可変遅延手段を用いるので、低コストで上記効果の得られるアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナを実現することが可能になったのである。
【0017】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、高価な可変移相器を使用しないので安価なアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナを提供できるとともに、局部発振信号の周波数とは無関係にアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナの指向方向を任意に変更することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナの実施の形態の構成図である。
【図2】別の実施携帯のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナの構成図である。
【図3】従来例のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナの構成例である。
【図4】別の従来例のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナの構成例である。
【図5】さらに別の従来例のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナの構成例である。
【符号の説明】
111、112、113 複数のアンテナ
121、122、123 増幅器
131、132、133 混合手段
14 合成手段
2 局部発振器
3 遅延回路、遅延手段
41、42、43 マルチプレクサ、選択手段
51、52、53 ローパスフィルタ
6 遅延線路、遅延手段
Claims (4)
- 任意に配置された複数のアンテナと、
局部発振信号を生成して出力する局部発振器と、
局部発振器から出力される局部発振信号を、複数の異なる遅延時間だけ遅延させて、それぞれ異なる遅延時間の複数の局部発振信号を出力する遅延手段と、
前記複数のアンテナのそれぞれに対して設けられ、前記遅延手段から出力される複数の局部発振信号から何れかの局部発振信号を選択して取り出す複数の選択手段と、
前記複数のアンテナのそれぞれに対して設けられ、各アンテナの励振信号と前記各選択手段にて取り出された局部発振信号とを混合する混合手段と、
前記各混合手段からの出力を合成する合成手段と
を備えたことを特徴とするアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナ。 - 遅延手段は、
局部発振器から出力される局部発振信号を、段数に応じた分だけ遅延させる複数段数の遅延手段とし、
選択手段は、
複数のアンテナのそれぞれに対して設けられ、前記遅延手段における選択された段数位置から前記局部発振信号を取り出す選択手段とし、
たことを特徴とする請求項1に記載のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナ。 - 遅延手段は、
入力される局部発振信号を、複数のロジック回路によってそれぞれ遅延させて、各ロジック回路の出力位置から局部発振信号を取り出し得る構成のロジックICとし、
選択手段は、
前記ロジックICの複数のロジック回路の出力位置から取り出された局部発振信号がそれぞれ入力され、何れか1つの局部発振信号を取り出すように構成されたマルチプレクサとするとともに、
該マルチプレクサの出力から高調波を除去するように構成されたローパスフィルタを付加した
ことを特徴とする請求項2に記載のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナ。 - 遅延手段は、
局部発振器から出力される局部発振信号を、長さに応じた分だけ遅延させる遅延線路とし、
選択手段は、
複数のアンテナのそれぞれに対して設けられ、前記遅延線路における選択された長さ位置から前記局部発振信号を取り出す選択手段とし、
たことを特徴とする請求項1に記載のアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナ。
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