JP3707989B2 - プラズマ処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成膜、加工、表面処理などの処理を行うプラズマ処理方法に関し、更に詳しくは、プラズマ処理用ガスに基づくプラズマを発生させ、半導体膜や絶縁膜などの薄膜の成膜、加工、表面処理などの処理を行い、特にプラズマ処理用ガスの圧力範囲を高周波電力の周波数に関連して特定することによって、高速処理を可能にするプラズマ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
半導体膜や絶縁膜などの薄膜の成膜、加工、表面処理などの処理を行うプラズマ処理においては、処理速度の高速化が要求されている。処理速度を高速にするために、一般的には、反応ガスの圧力を高めるという手法が採られている。ところが、反応ガスの圧力を高めると、プラズマを安定に発生させることが困難になる。
【0003】
そこで、特公平6−60412号公報、特許公報第2700177号、特開平6−299358号公報などには、反応ガスに不活性ガスを加えることにより、高圧力下で安定にプラズマを発生させる手法が開示されている。これらの公報によれば、反応ガスに大量の不活性ガスを加えているので、反応ガス分圧を高めても、プラズマを安定に維持でき、処理速度を向上できる。
【0004】
上記の3つの公報は、反応ガスに不活性ガスを加え、高圧力下でプラズマ処理を行うという基本的な考え方において共通している。
そこで、一例として、特許公報第2700177号の開示内容について図4を参照して説明する。該公報は、薄膜形成方法に関するものであるが、その基本思想は、加工方法、表面処理方法に対しても共通するものである。
【0005】
図4において、1は反応容器である。2、3は対向する電極であり、いずれの電極にも高抵抗体4、5が取付けられている。電極3は接地されており、電極3の高抵抗体5の上には基板6が搭載される。電極2は高周波電源8と接続される。電極2、3の側方には、上の高抵抗体4と基板6との間のギャップg部にガスが供給されるように、ノズル7とガス排出口10とが設けられている。なお、薄膜を形成する場合には、基板6はヒータ9によって加熱される。
【0006】
上記の構成において、反応ガスとHeガスとの混合ガスからなるプラズマ処理用ガスを、ノズル7から反応容器1の内部に導入し、電極2に高周波電力を供給する。基板6上にアモルファスSi薄膜を形成する場合には、反応ガスとしてSiH4ガスを用いる。前記プラズマ処理用ガスの圧力は大気圧近傍の圧力であり、このうち、Heガスの割合は90%以上である。高周波電力の周波数は13.56MHzである。上記の手法によって、前記のギャップgでグロー放電が起こり、前記プラズマ処理用ガスに基づくプラズマが発生する。そして、反応ガスであるSiH4ガスのプラズマによって、基板6の上にアモルファスSi薄膜が形成される。上記の手法によれば、プラズマ処理用ガス中のHeガスの割合が大きいので、大気圧近傍の高圧力下であってもグロー放電が発生し、プラズマを安定に維持できる。Heガスの作用として、該公報には、下記の作用が記載されている。
【0007】
(a)Heは放電により励起されやすい。
(b)Heは多くの準安定状態を有し、励起状態の活性粒子(ラジカル)を多く作ることができる。
(c)Heの活性粒子(ラジカル)が高密度に存在すると、反応ガスの解離度を高めることができる。
(d)He中ではイオンが拡散しやすく、放電が広がりやすい。
このようなHeガスの性質によって、反応ガス分圧が高い状態であっても、プラズマを安定に維持できる。そして、反応ガス分圧が高いため、プラズマ処理の処理速度を高めることができる。
また、プラズマ処理用ガスの圧力が大気圧近傍の圧力であるので、反応容器内を真空に引かなくてもよい。したがって、真空チャンバや真空排気装置を必要とせず、設備に要するコストを大幅に低減できる。
【0008】
上記の従来技術では、反応ガスに不活性ガスを加えているので、反応ガス分圧を高めてもプラズマを安定に維持できる。そして、反応ガス分圧が高いため、プラズマ処理の処理速度を高めることができる。しかしながら、近年のプラズマ処理においては、アモルファスSi太陽電池の製造プロセスに代表されるように、処理速度の高速化に対する要求が非常に厳しい。すなわち、処理速度の更なる向上が望まれている。処理速度の高速化に関し、従来技術では以下のことが教示されている。
【0009】
▲1▼特許公報第2700177号
反応ガス(SiH4ガス)と不活性ガス(Heガス)との混合ガスからなるプラズマ処理用ガスの圧力が大気圧近傍である場合について、不活性ガスに対する反応ガスの比率を大きくすることによって、処理速度が向上することが示されている。なお、プラズマ処理用ガス(混合ガス)の圧力が一定の条件下で反応ガスの比率を大きくすることは、反応ガス分圧を高くすることに相当する。
【0010】
▲2▼特開平6−299358号公報
反応ガス分圧を高くし(10Torr以上)、それに応じて不活性ガスを加えることにより、処理速度が向上することが示されている。プラズマ処理用ガスの圧力は、10.2Torr〜100Torrに規定されているが、この圧力範囲は、反応ガスのみによるプラズマの発生限界と、低温プラズマの限界を示すものである。すなわち、処理速度向上の観点から決定された圧力範囲は示されていない。
【0011】
▲3▼特公平6−60412号公報
大気圧下の放電の安定性から、プラズマ処理用ガス(混合ガス)中の不活性ガスの割合を規定しているが、処理速度の高速化については教示していない。
【0012】
上記のように、従来技術は、反応ガス分圧を高めることによる処理速度の向上効果を示している。しかし、一定の反応ガス分圧に対する処理速度向上の指針は与えていない。すなわち、「反応ガス分圧が一定の条件下において、どれほどの不活性ガスを加え、どの程度のプラズマ処理用ガス(混合ガス)圧力に設定することが、処理速度の向上に対して効果的であるか」という点については教示されていない。
【0013】
一方、大幅な処理速度の向上を目指すには、一定の反応ガス分圧に対して反応ガスの利用効率を高めて処理速度を向上させることが非常に重要である。
【0014】
本発明の第1の目的は、プラズマ処理における、処理速度の大幅な向上を図ることにある。そして、その目指すところは、一定の投入電力および一定の反応ガス分圧の条件下における処理速度の向上である。
【0015】
特公平6−60412号公報や特許公報第2700177号によれば、反応ガスとHeガスとの混合ガスからなるプラズマ処理用ガスの圧力を大気圧近傍の圧力としているので、反応容器内を真空に引かなくてもよい。このため、真空チャンバや真空排気装置を必要とせず、設備に要するコストを大幅に低減できる。しかし、真空に引かなくても、反応容器の内部は、反応ガスとHeガスとの混合ガスが1気圧分充填されていなければならない。つまり、前記プラズマ処理用ガス(混合ガス)の圧力が高ければ、その分だけ多くのプラズマ処理用ガス(混合ガス)を反応容器内に導入する必要がある。特に、大量に用いるHeガスは高価であり、量産工場におけるデバイス1個当たりのコストを考えた場合には、Heガスに要するコストの割合が非常に大きくなる。すなわち、上記の従来技術によれば、設備に要するコストが削減できる一方で、Heガスのような消耗品に要するコストが高くなり、総合的に判断すると高コストになってしまう。
【0016】
本発明の第2の目的は、プラズマ処理の処理速度を高めながらも、低コスト化を図ることである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、電極と、ホルダーに保持された基板とが対向して配置され、前記電極と前記ホルダーとの間に高周波電力を供給することによって、前記電極と前記基板との間で、反応ガスと不活性ガスとの混合ガスからなるプラズマ処理用ガスに基づくプラズマを発生させ、前記基板に対して、成膜、加工および表面処理などの処理を行うプラズマ処理方法であって、
前記反応ガスの分圧をPr(Torr)、前記高周波電力の周波数をf(Hz)とするとき、
前記プラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)は、
2×10-7(Torr/Hz)×f(Hz)≦P(Torr)≦500(Torr)
なる関係を満足し、かつ
P(Torr)≦3.5×P L (Torr)
なる関係を満足するように設定され、
前記の圧力P L (Torr)は、
L (Torr)=5×Pr(Torr)
なる圧力、および
L (Torr)=2×10 -7 (Torr/Hz)×f(Hz)
なる圧力のうち、高い方の圧力であることを特徴とするプラズマ処理方法を提供する。
すなわち、本発明は、高周波電力の周波数に関連して使用するプラズマ処理用ガスの圧力範囲を特定することによって、一定の投入電力および一定の反応ガス分圧の条件下においても処理速度を高め、かつ低コスト化を可能にするものである。
【0019】
本発明において、不活性ガスとしては、Heガス、Arガス、Neガスなどが単体で、あるいは相互に混合して用いられる。ただし、放電の安定性と基板へのダメージの抑制とを考慮すると、Heガスを用いることが望ましい。一方、反応ガスには、プラズマ処理の目的に応じたガスが用いられる。例えばアモルファス、微結晶や多結晶のSi薄膜を形成する場合には、SiH4、Si26ガスなどのSi原子を含むガスが単体で、あるいはH2などの他のガスと混合して用いられる。Si系基板の加工(プラズマエッチング)を行う場合には、SF6、CF4、C26、C38、CCl4、PCl3などのハロゲン系ガスが単体で、あるいはO2などの他のガスと混合して用いられる。親水性の表面処理を施す場合には、アルコール類のような有機溶媒が用いられる。
本発明に係るプラズマ処理方法は、以上の構成により、成膜、加工、表面処理、特に基板に対して半導体膜や絶縁膜などの薄膜の成膜処理を行う方法として好適に採用できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
上記したように、本発明の第1の目的は、反応ガスと不活性ガスとの混合ガスからなるプラズマ処理用ガスを用いたプラズマ処理方法において、更なる処理速度の高速化を図ることである。ここで、投入電力を高めることおよび反応ガス分圧を高めることによって、処理速度が向上することは公知のとおりである。従って、従来に比べて大幅な処理速度の向上を図るには、更に、一定の投入電力および一定の反応ガス分圧の条件下において投入エネルギーおよび反応ガスの利用効率を高め、高密度の反応種を生成して処理速度を向上させることが重要である。この考え方をイメージ的に表現すると下式のようになる。
Rate=η×F(W,Pr) (a)
【0021】
ここで、 Rate:処理速度、η:効率、W:投入電力、Pr:反応ガス分圧、F(W,Pr):W,Prの関数
である。Wを大きくすること、及びPrを大きくすることによって、F(W、Pr)が大きくなり、その結果、Rateが向上することは公知である。特に、先に示した3件の従来技術は、反応ガスに不活性ガスを加えることによって、Prを大きくして、F(W,Pr)を大きくしている。この点については、特開平6−299358号公報の図2に明示されている。
【0022】
本発明はこれに加えて、効率ηを向上させることを目指しているのであって、従来技術とは、処理速度の高速化に対する基本指針が全く異なる。
すなわち、本発明の目指すところは、一定の投入電力(W)および一定の反応ガス分圧(Pr)の条件下における処理速度(Rate)の向上である。
一定の投入電力Wおよび一定の反応ガス分圧Prの条件下における処理速度の向上を図るため、本願発明者らは、プラズマ処理用ガス圧力P(プラズマ処理用ガス中の不活性ガス分圧Pi)に着目したものであり、特に不活性ガスが多すぎても、逆に処理速度が低下することを見出し、本発明に至ったものである。
【0023】
なお、以下の説明において、「反応ガス分圧Pr」、「不活性ガス分圧Pi」、「プラズマ処理用ガス圧力P」、「反応ガス濃度Cr」、「不活性ガス濃度Ci」、「反応ガス流量Qr」、「不活性ガス流量Qi」、「総流量Q」、「チャンバベース総流量Qc」なる用語を用いるが、これらの間の相関については、下式のように定義しておく。ここで、「チャンバベース総流量Qc」とは、反応容器内の「プラズマ処理用ガス圧力P」の条件下における流量であって、大気圧ベースの流量ではない。
【0024】
・[プラズマ処理用ガス圧力P(Torr)]
=[不活性ガス分圧Pi(Torr)]+[反応ガス分圧Pr(Torr)](b)
【0025】
・[反応ガス濃度Cr]
=[反応ガス分圧Pr(Torr)]/[プラズマ処理用ガス圧力P(Torr)]
=[反応ガス流量Qr(SCCM)]/[総流量Q(SCCM)] (c)
【0026】
・[不活性ガス濃度Ci]
=[不活性ガス分圧Pi(Torr)]/[プラズマ処理用ガス圧力P(Torr)]
=[不活性ガス流量Qi(SCCM)]/[総流量Q(SCCM)]……(d)
【0027】
・[総流量Q(SCCM)]
=[不活性ガス流量Qi(SCCM)]+[反応ガス流量Qr(SCCM)]……(e)
・[チャンバベース総流量Qc(cc/min)
=[総流量Q(SCCM)]×[760(Torr)]
/[プラズマ処理用ガス圧力P(Torr)]……(f)
なお、上記の(c)、(f)式より、反応ガス流量Qrは、下記のように表される。
【0028】
・[反応ガス流量Qr(SCCM)]
=[反応ガス濃度Cr]×[チャンバベース総流量Qc(cc/min)]
×[プラズマ処理用ガス圧力P(Torr)]/[760(Torr)]
=[反応ガス分圧Pr(Torr)]
×[チャンバベース総流量Qc(cc/min)]/[760(Torr)]……(g)
以下に、本発明の着眼点について説明する。
【0029】
従来技術の説明と重複するが、まず、反応ガスに不活性ガスを加えることの効果を説明する。最も好ましい不活性ガスはHeガスと考えられるが、Heガスの効果としては、放電開始電圧が低いことおよび高エネルギー(約20eV)の準安定状態をもつことが挙げられる。しかも、準安定状態のHeラジカルは、寿命が極めて長く拡散速度も速い。このような性質のHeガスを加えることによって、反応ガス分圧Prを高め、プラズマ処理用ガスの圧力Pを高圧としても、プラズマを安定に維持できる。
【0030】
上記のようにHeガスは、高圧力下で(反応ガス分圧を高めて)プラズマを安定に維持するために不可欠である。しかしながら、処理速度の観点においては、Heガスが大量にあることが望ましいとは限らない。この点が本発明の着眼点である。
今、投入電力および反応ガス分圧Prを一定としてHeガス分圧Piを低くする(プラズマ処理用ガスの圧力Pを低くする)場合について考える。この場合には、例えば、以下のようなことが考えられる。
【0031】
▲1▼Heガス分圧Piが低い分、準安定状態のHeラジカルの密度が減少し、Heラジカルと反応ガス分子との単位時間当たりの衝突回数が減少するために、反応ガス分子の解離が起こりにくくなる。その結果、プラズマ処理に係わる反応種の密度が減少し、処理速度が遅くなる。
【0032】
▲2▼プラズマ中の電子は、プラズマ処理用ガスの圧力Pが低い分、電界によるドリフト速度が大きくなる。反応ガス分圧Pr、すなわち反応ガス分子の密度は一定であるから、ドリフト速度の増大に伴い、電子と反応ガス分子との単位時間当たりの衝突回数が増加する。また、このときに、電子の持つ運動エネルギーは大きい。これにより反応ガス分子の解離が促進される。この結果、プラズマ処理に係わる反応種の密度が増加し、処理速度が向上する。
【0033】
実際には、上記の現象が複合的に作用するものと予測されるが、処理速度には何らかのHeガス分圧Pi(プラズマ処理用ガス圧力P)依存性があるものと考え、これを確認する実験を行った。
そして、実験結果を分析したところ、上記▲2▼の因子が支配的に寄与していることを見いだした。
【0034】
すなわち、Heガスは、反応ガス分圧Prを高めた場合のプラズマを安定に維持するために不可欠であるが、反応ガス分子の解離効果はあまり大きくない。このことから、反応ガス分圧Prが一定の条件下では、プラズマの安定維持が可能な程度にHeガスを加え、プラズマ処理用ガス圧力Pは電子のドリフト速度が増大する範囲内にあって、なるべく低い圧力に設定されることが望ましい。これによって、電子のドリフト速度が増加し、効率的に反応ガス分子が解離される。つまり、投入エネルギーおよび反応ガスの利用効率を高めて、処理速度を向上できる。
【0035】
本発明は、上記の進歩的な分析に基づいて完成され、以下のように規定される。すなわち、反応ガスと不活性ガスとの混合ガスからなるプラズマ処理用ガスを用いたプラズマ処理方法において、電極に供給する高周波電力の周波数f(Hz)に対して、
L1=2×10-7(Torr/Hz)×f(Hz)≦P(Torr)≦500(Torr)……(A)
なる関係を満足するように、プラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)を設定したものである。そして、前記の圧力範囲内にあって、かつプラズマの安定維持が可能な範囲内で、プラズマ処理用ガスの圧力Pを低い圧力に設定することによって(不活性ガス分圧Piを低く設定することによって)、プラズマ処理の高速化を図ったものである。
【0036】
好ましくは、プラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)は、上記(A)式で規定される範囲内にあって、かつ、反応ガスの分圧Pr(Torr)に対して、
P(Torr)≧5×Pr(Torr)=PL2……(B)
なる関係にて規定される。
【0037】
更に好ましくは、プラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)は、上記(A)式で規定される範囲内にあって、かつ、圧力PL(Torr)に対して、
P(Torr)≦3.5×PL(Torr)……(C)
なる関係にて規定される。(C)式において、圧力PL(Torr)は、高周波電力の周波数f(Hz)、反応ガスの分圧Pr(Torr)に対して、(D)式で表現される圧力PL1(Torr)、及び(E)式で表現される圧力PL2(Torr)のうち、高い方の圧力である。
L(Torr)=PL1(Torr)=2×10-7(Torr/Hz)×f(Hz)……(D)
L(Torr)=PL2(Torr)=5×Pr(Torr)……(E)
【0038】
なお、好ましくは、前記の周波数を10MHz以上で、かつ、500MHz以下とし、前記プラズマ処理用ガスの圧力Pを100Torr以上で、かつ、500Torr以下とする。更に好ましくは、不活性ガスとしてHeガスを用いる。
【0039】
上記の基本思想に基づく本発明の実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。プラズマ処理を行う装置は、電極と基板との間でプラズマを発生させる構成のものであれば良く、特に限定しない。ただし、プラズマ処理の処理速度を高速としているため、放電空間に効率的にガスを供給し、またプラズマ反応後のガスを効率的に排気する構成が望ましい。例えば、図4に示したプラズマ処理装置と同様の構成のものが用いられる。そこで、図4を参照して、本発明のプラズマ処理方法について説明する。
【0040】
なお、本発明においては、プラズマ処理装置20の反応容器1は、少なくとも数Torr以下程度の真空度は維持できるものとしている。また、図示しない真空排気装置が設けられている。ヒータ9は、目的とするプラズマ処理の形態に応じて必要があれば用いる。高抵抗体4、5はアーク放電を防止し、安定なグロー放電を得るために設けているが、これらがなくても、又はいずれか一方のみを設けていても安定なグロー放電が得られる場合には、適宜に取り外してもよい。その他の構成については、上記した従来技術の説明と同じであるので、説明を省略する。なお、図4における電極3は、特許請求の範囲におけるホルダーに相当するものである。
【0041】
反応容器1の内部は、図示しない真空排気装置によって一旦減圧される。その後、反応ガスと不活性ガスとの混合ガスからなるプラズマ処理用ガスを、ノズル7から反応容器1の内部に導入し、反応容器内部のプラズマ処理用ガス圧力Pを上記(A)式に基づく所定の圧力に保持する。そして、前記所定のプラズマ処理用ガス圧力Pを維持しながら、ノズル7とガス排出口10とによって、電極2の高抵抗体4と基板6との間のギャップgに一定流量のガス流を形成する。ギャップgの大きさは0.1〜10mm程度であり、プラズマ処理用ガスのチャンバベース総流量Qcは数100CC/min〜数100L/min程度である。この構成において、電極2に高周波電力を供給すると、前記のギャップg部でグロー放電が起こり、前記プラズマ処理用ガスに基づくプラズマが発生する。そして、前記プラズマ処理用ガス中の反応ガスのプラズマによって、基板6に対する所望のプラズマ処理が施される。
【0042】
本発明において、不活性ガスとしては、Heガス、Arガス、Neガスなどが単体で、あるいは相互に混合して用いられる。ただし、放電の安定性と基板へのダメージの抑制とを考慮すると、Heガスを用いることが望ましい。一方、反応ガスには、プラズマ処理の目的に応じたガスが用いられる。例えばアモルファス、微結晶や多結晶のSi薄膜を形成する場合には、SiH4やSi26ガスなどのSi原子を含むガスが単体で、あるいはH2などの他のガスと混合して用いられる。Si系基板の加工(プラズマエッチング)を行う場合には、SF6、CF4、C26、C38、CCl4、PCl3などのハロゲン系ガスが単体で、あるいはO2などの他のガスと混合して用いられる。親水性の表面処理を施す場合には、アルコール類のような有機溶媒が用いられる。
【0043】
反応容器内の、反応ガスと不活性ガスとの混合ガスからなるプラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)は、電極2に供給する高周波電力の周波数f(Hz)に対して、
L1=2×10-7(Torr/Hz)×f(Hz)≦P(Torr)≦500(Torr)……(A)
なる関係を満足するように設定される。
【0044】
好ましくは、プラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)は、上記(A)式で規定される範囲内にあって、かつ、プラズマの安定維持が可能な範囲で、低い圧力に設定される。
具体的には、プラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)は、上記(A)式で規定される範囲内にあって、かつ、反応ガスの分圧Pr(Torr)に対して、
P(Torr)≧5×Pr(Torr)=PL2……(B)
なる関係にて規定される。
【0045】
また、プラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)は、上記(A)式で規定される範囲内にあって、かつ、圧力PL(Torr)に対して、
P(Torr)≦3.5×PL(Torr)……(C)
なる関係にて規定される。(C)式において、圧力PL(Torr)は、高周波電力の周波数f(Hz)、反応ガスの分圧Pr(Torr)に対して、(D)式で表現される圧力PL1(Torr)、及び(E)式で表現される圧力PL2(Torr)のうち、高い方の圧力である。
L(Torr)=PL1(Torr)=2×10-7(Torr/Hz)×f(Hz)……(D)
L(Torr)=PL2(Torr)=5×Pr(Torr)……(E)
【0046】
反応ガスの分圧Pr(Torr)は、前記の(A)式で規定されるプラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)の範囲内にあって、最も処理速度が向上するように設定される。反応ガスの種類にもよるが、0.01〜20Torr程度の範囲が適切である。好ましくは、前記の(A)から(C)式の関係を満たすように、プラズマ処理用ガス圧力P(Torr)とともに反応ガス分圧Pr(Torr)が設定される。
【0047】
上記(A)〜(C)式に規定されるプラズマ処理用ガス圧力Pの意味について、図6を参照して説明する。なお、これと関連する実験結果、および前記規定される圧力範囲の限定理由については、後記の実施例にて詳述する。
【0048】
図6(a)は、プラズマ処理用ガス圧力Pと、プラズマ中の電子のドリフト速度との関係を示す模式図である。図示のように、(A)式に規定される範囲は、プラズマ処理用ガスの圧力Pを低くすることにより、電子のドリフト速度が増加する範囲を示している。すなわち、PL1以下では圧力Pを低くしてもドリフト速度が増加しない恐れがある。またPL1以上において、ドリフト速度はほぼ圧力Pの(―0.5)乗に比例するが、500Torr以上の圧力範囲では、圧力Pを低くしてもドリフト速度の増加率は非常に小さい。後記するように反応ガス分圧Prが一定の条件下では、電子のドリフト速度の増加に伴い、これに比例してプラズマ処理速度が向上するため、プラズマ処理用ガス圧力Pは(A)式で規定される範囲内にあって、なるべく低い圧力であることが望まれる。
【0049】
しかしながら、反応ガス分圧Prが高い場合には、その分圧Prに相当する分だけ多くの不活性ガスを加えなければ、プラズマを安定維持できない。すなわち、図6(a)に示す圧力PL1においては、プラズマを安定維持できなくなる場合がある。図6(b)は、プラズマ処理用ガス圧力Pとプラズマの安定度との関係をイメージ的に表現した図である。反応ガス分圧Prが低い場合には、図6(a)に示す下限圧力PL1よりも低い圧力PL2-1以上にて、安定したプラズマが得られる。しかし、反応ガス分圧Prが高い場合には、プラズマ処理用ガス圧力Pが、PL1よりも高い圧力PL2-2以上でないと、安定したプラズマが得られない。プラズマの安定維持が可能な圧力範囲(PL2-1以上、またはPL2-2以上)が、上記の(B)式で規定される。
【0050】
図6(a)に示した電子のドリフト速度と、図6(b)に示したプラズマ安定度との相関により、プラズマ処理用ガス圧力Pとプラズマ処理速度との関係は、模式的に図6(c)のように表される。すなわち、反応ガス分圧Prが低い場合には、PL1以上であって、その付近のプラズマ処理用ガス圧力Pにおいて、プラズマ処理速度がピークとなる。また、反応ガス分圧Prが高い場合には、PL2-2以上であって、その付近のプラズマ処理用ガス圧力Pにおいて,プラズマ処理速度がピークとなる。プラズマ処理速度がピークとなるときのプラズマ処理用ガスの圧力Pが、上記の(A)〜(C)式で規定される範囲内に存在する。
【0051】
なお、更に好ましくは、前記高周波電力の周波数f(Hz)が10MHz以上で、かつ、500MHz以下であって、前記プラズマ処理用ガスの圧力が、(A)式に基づき、100Torr以上で、かつ、500Torr以下に設定される。なお、前記の100Torrという下限圧力は、f(Hz)≦500MHzの条件下において、必ず(A)式を満たす圧力であるが、真空排気装置などの設備の規模を考慮しても、圧力は100Torr以上であることが望ましい。
【0052】
ここで、10MHzは、一般的な低圧のプラズマ処理装置に用いられる程度の周波数である。しかし、本発明では、反応ガス分圧Prを高めて比較的高いプラズマ処理用ガス圧力下でプラズマを発生させるため、電極2(高抵抗体4)と基板6との間のギャップgは0.1〜10mm程度と狭い。したがって、10MHzより周波数を高め、イオンおよび電子の振動振幅を小さくして、基板6へのダメージを抑制する必要がある。この点については、後記の(22)式に示している。一方、周波数を高めすぎると、電磁波の波長が短くなってくる。特に、500MHz以上になると電磁波の波長は0.6m以下となり、反応容器内部の任意の空間に定在波が発生し、その腹の部分で不要な放電が発生してしまう恐れがある。したがって、500MHz以下の周波数が選ばれる。
【0053】
本発明は、従来技術と同様に、反応ガスに不活性ガスを加えることにより、反応ガス分圧Prを高めてもプラズマを安定に維持できる。そして、反応ガス分圧Prが高いので、プラズマ処理の処理速度を向上できる。このように、不活性ガスは、高圧力下でプラズマを安定に維持するために不可欠である。しかしながら、不活性ガスの量が多すぎると、処理速度がかえって低下することを、本願発明者らは見いだした。
【0054】
本発明では、一定の反応ガス分圧Prに対して、反応ガスと不活性ガスとの混合ガスからなるプラズマ処理用ガスの圧力Pを、上記(A)式を満たすように設定した。そして、この圧力範囲内にあって、かつプラズマの安定維持が可能な範囲内で、プラズマ処理用ガスの圧力Pを低い圧力に設定することによって(不活性ガス分圧Piを低く設定することによって)、処理速度を大幅に向上させた。
【0055】
具体的には、投入電力および反応ガス分圧Pr(Torr)が一定の条件下において、プラズマの安定維持が可能な程度のHeガスを加え、プラズマ処理用ガスの圧力を上記(A)式、または(A)〜(C)式を満たす範囲に設定した。なお、チャンバベース総流量Qc(cc/min)は一定にして、(g)式に基づき反応ガス流量Qr(SCCM)も一定とした。その結果、同一の反応ガス分圧Prでありながら、プラズマ処理用ガス圧力Pが大気圧付近の場合に比べて、大幅に処理速度が向上した。すなわち、エネルギーおよび反応ガスの利用効率を大幅に向上でき、本発明の第1の目的を達成できた。
【0056】
更に、本発明は、プラズマ処理の処理速度を高めながらも、プラズマ処理用ガスの圧力を500Torr以下としているため、これを1気圧とした場合に比べて反応容器内に導入する不活性ガスが少なくて済む。すなわち、不活性ガスに要するコストを削減でき、本発明の第2の目的を達成できた。
【0057】
〔実施例1〕
次に、実施例に基づき、上記(A)式で示したプラズマ処理用ガス圧力Pの限定理由について説明する。なお、上記(B)、(C)式で規定される圧力の限定理由については後記の[実施例2]の中で説明する。[発明の実施の形態]の冒頭で説明したが、処理速度には何らかのHeガス分圧Pi(プラズマ処理用ガス圧力P)依存性があるものと考え、これを確認する実験を行なった。
【0058】
不活性ガスにHeガスを用い、図4に示した装置によってプラズマ処理実験を実施した。ここで、準安定状態のHeラジカルは約20eVという高エネルギーを有している。一方、一般のプラズマ処理に用いる反応ガスの大半は、それらの分子の原子間の結合エネルギーが20eVよりもかなり小さい。例えば、SiH4分子におけるSi−H結合、SF6分子におけるS−F結合およびH2分子におけるH−H結合は、いずれも3〜4eV程度である。したがって、反応ガス解離作用のHeガス分圧Pi依存性は、いかなる反応ガスに対しても同様であると考えられる。但し、プラズマ処理の処理速度は、反応ガスの解離過程だけでなく、解離後の反応種の輸送過程や化学反応過程などにも依存し、反応ガスが効率的に解離されることによって必ずしも処理速度が向上する訳ではない。しかしながら、処理速度を高速化するための基本過程はあくまで反応ガスの解離過程であり、この過程で効率的に反応ガスを解離し、高密度の反応種を生成することが重要なのである。本発明は、この点に主眼をおいているため、プラズマ処理の形態や反応ガスの種類には関わらない。
【0059】
プラズマ処理の形態が異なれば、生成された反応種に応じてこの反応種を有効に活用するためのガス流速や基板温度などの条件を適切に設定すればよい。すなわち、いかなる反応ガス、いかなる形態のプラズマ処理に対しても、望まれるプラズマ処理用ガス圧力Pは、本発明で規定される圧力範囲なのである。そこで、本実験では、反応ガスの一例としてSF6ガスを用い、Heガス分圧Piの変化に対する反応ガス解離効果の変化を調べた。なお、第1にSF6ガスを選定した理由は、このガスが代表的な絶縁性ガスであり、高圧力下でのプラズマ維持のためにHeガスを用いる必要性が特に高いからである。SF6ガスは、プラズマ維持の困難を伴うものであるが、Heガスによる解離作用を調べる上では、他の反応ガスを用いた場合と異なるものではない。この点については、反応ガスとしてSiH4とH2との混合ガスを用いた実験結果[実施例2]からも実証される。
【0060】
具体的な実験方法について説明する。SF6ガス分圧Pr(7Torr)および投入電力(1kW)を一定とし、プラズマ処理用ガス圧力P(Heガス分圧Pi)を変化させて、シリコン基板のエッチング速度の変化を調べた。なお、本実験において、Heガス分圧Pi以外の条件は同一であり、チャンバベース総流量Qcも一定としているため、(g)式に基づき、反応ガス流量Qrも一定である。また、実験に用いた高周波電力の周波数は50MHzである。
【0061】
実験結果は図1に示す如くで、プラズマ処理用ガス圧力P:500Torrを臨界点とし、500Torr以下においては、圧力が低くなる程、エッチング速度が増加することが分かった。すなわち、プラズマ処理用ガスの圧力Pを500Torr以下とすることにより、SF6ガスの解離が効率的に促進され、エッチング速度が向上する。例えば、160Torrの条件においては、投入電力および反応ガス分圧Pr及び反応ガス流量Qrが同じであるにもかかわらず、760Torrの条件に比べて、約3倍ものエッチング速度の向上が図れる。すなわち、投入電力および反応ガスの利用効率が大幅に向上する。
【0062】
上記の結果より、本発明の圧力の上限を、500Torrに規定した。
なお、反応ガス分圧Prを一定とし、プラズマ処理用ガス圧力Pを低くしているため、上記の結果は(c)式に基づく反応ガス濃度Crの増加の効果によるものと誤解されるかもしれない。しかし、以下の分析から理解されるように、あくまでプラズマ処理用ガス圧力Pを低くすることによって、処理速度が向上しているのである。このことと関連し、本願発明者らは、図5に示すような実験事実を得ている。
【0063】
図5は、投入電力(1kW)および反応ガス濃度Cr(2.7%)を一定として、エッチング速度のプラズマ処理用ガス圧力P依存性を調べた結果を表すグラフである。反応ガス濃度Crが一定である(又は、反応ガス分圧Prが低い)にもかかわらず、プラズマ処理用ガス圧力Pを低くすることによってエッチング速度が向上している。
【0064】
更に、上記の実験結果を分析したところ、プラズマ処理の処理速度は電子のドリフト速度と強い相関があることが分かった。
図2は、プラズマ処理用ガス圧力Pの(−0.5)乗を横軸として、図1のグラフを書き直したものである。この図より、エッチング速度はプラズマ処理用ガス圧力Pの(−0.5)乗にほぼ比例している。これに対応して、電子のドリフト速度は、後記の(20)式に示すように、理論的にプラズマ処理用ガス圧力Pの(−0.5)乗に比例する。
【0065】
上記の分析から、エッチング速度は、ほぼ電子のドリフト速度の増大に伴って向上することが分かる。つまり、反応ガスの解離にはHeラジカルと反応ガス分子との衝突よりも、むしろ電子と反応ガス分子との衝突の方が、支配的に作用しているものと考えられる。したがって、一定の反応ガス分圧Prの条件下でHeガス分圧Pi(プラズマ処理用ガス圧力P)を低くすると、電子のドリフト速度が増加し、電子と反応ガス分子との単位時間当たりの衝突回数が増加することによって、反応ガスの解離が促進される。これによって、処理速度が向上する。一方、Heラジカルは、高エネルギーを有しているものの、質量が重く、また電界に加速されない。このため、電子に比べて反応ガス分子との衝突回数が少ない。
【0066】
つまり、Heガスは、プラズマの安定維持のために不可欠なものであるが、反応ガス分子の解離効果は、あまり大きくない。以上のことから、反応ガス分圧Prが一定の条件下では、プラズマの安定維持が可能な程度にHeガスを加え、プラズマ処理用ガス圧力Pは500Torr以下であって、なるべく低く設定されることが望ましい。
これによって、電子のドリフト速度が増加し、効率的に反応ガス分子が解離される。つまり、投入エネルギーおよび反応ガスの利用効率を高めて、処理速度を向上できる。
【0067】
次に、プラズマ処理用ガス圧力Pの下限の理由について説明する。
図3(a)は、電極に供給する高周波電力の周波数fと、電子のドリフト速度Vdとの関係を、模式的に示したものである。横軸、縦軸とも対数で表現している。この図の意味は、後記の項目〔電子のドリフト速度〕において詳述するが、fcは、ドリフト速度が高周波電界に追従する臨界の周波数を示している。また、図3(b)は、プラズマ処理用ガス圧力Pの変化に伴うドリフト速度Vdの変化を示している。この図において、fc1、fc2,fc3は、それぞれ、プラズマ処理用ガス圧力がP1、P2、P3のときの臨界周波数である。圧力はP1>P2>P3であり、これに対応して臨界周波数は、fc1>fc2>fc3なる関係にある。
【0068】
図3(b)を参照して、高周波電力の周波数fが、f=fc2なる場合について考える。
この場合には、圧力をP1→P2に低くすると、ドリフト速度がVd1→Vd2に増加する。
【0069】
しかし、圧力をP2→P3に低くしてもドリフト速度は変化しない。一方、本発明は、上記で分析したように、プラズマ処理用ガス圧力Pを低くすることによるドリフト速度の増加を利用している。したがって、f=fc2なる周波数に対してはプラズマ処理用ガス圧力がP2以上であることが要求される。これを一般化して定式化すると、高周波電力の周波数f(Hz)に対して要求されるプラズマ処理用ガス圧力P(Torr)は下式(F)のように表される。この点については、後記の(16)式の導出過程で詳細に説明する。
【0070】
P≧PL1={2×10-7(Torr/Hz)}・f(Hz)……(F)
一例として、周波数f(Hz)が500MHzの場合には、プラズマ処理用ガス圧力を100Torr以上とすれば、(F)式が満たされる。
【0071】
上記のように、(F)式を満たすプラズマ処理用ガス圧力の範囲であれば、本発明の思想に基づきプラズマ処理用ガス圧力Pを低くすることによってドリフト速度が増加する。これによって、処理速度が向上する。一方、(F)式を満たさないような低い圧力に設定しても、ドリフト速度は増加せず、処理速度が向上しない恐れがある。つまり、不必要にプラズマ処理用ガスの圧力を下げることになり、真空排気装置などの設備の規模を考慮しても好ましくない。上記の理由にて、本発明では、プラズマ処理用ガス圧力の下限を(F)のように規定している。
【0072】
本実施例より、プラズマ処理速度が主に電子のドリフト速度と強い相関があることを確認できた。そして、プラズマ処理用ガスの圧力Pを低くすることによって電子のドリフト速度を増加させるための条件が(A)式で規定され、この結果は、先に示した図6(a)と対応するものである。
【0073】
〔実施例2〕
上記の実施例1では、代表的な反応ガスとして、SF6ガスを用いた実験結果を示した。しかし前記したように、プラズマ処理速度には電子のドリフト速度が支配的に寄与していると考えられるから、前記規定したプラズマ処理用ガスの圧力範囲((A)式)は、反応ガスの種類に依存せずいかなる反応ガスに対しても適用可能であると予測できる。
そこで、このことを確認するために、本実施例では、反応ガスとしてSiH4とH2との混合ガスを用い、ガラス基板に対するSi薄膜の成膜実験を行った。
【0074】
また、本実施例では、(A)式に規定される下限圧力PL1付近のプラズマ処理用ガス圧力Pにて詳細な実験を行い、(A)式で規定される条件に、さらに(B)、(C)式で示される限定を加えることが、プラズマ処理速度向上のために効果的であることを見出した。
また、本実施例では、本発明によるプラズマ処理方法が、成膜方法である場合に、特に効果的であり、高品質の薄膜が得られることを見出した。
【0075】
具体的な実験方法について説明する。反応ガス(SIH4ガスとH2ガスとの混合ガス)の分圧Pr及び投入電力を一定とし、プラズマ処理用ガス圧力P(Heガス分圧Pi)を変化させて、成膜速度の変化を調べた。なお、今回の実験においても、Heガス分圧Pi以外の条件は同一であり、チャンバベース総流量Qc(cc/min)も一定としているため、(g)式に基づき、反応ガス流量Qr(SCCM)も一定である。また、実験に用いた高周波電力の周波数は、13.56MHzである。
【0076】
実験結果は図7に示すごとくで、エッチングの場合(図1)と同様、プラズマ処理用ガス圧力P:500Torrを臨界点として、500Torr以下においては、圧力が低くなるほど、成膜速度が増加することを確認できた。
【0077】
図8は、図7と同様の実験を、4つの異なる条件で実施した結果である。図8は、低圧力側の結果を示しているが、反応ガス分圧Pr、反応ガス流量Qr、投入電力や、反応ガス中のSiH4/H2比が異なっても、500Torr以下の圧力下で、プラズマ処理用ガス圧力Pが低くなるにつれて成膜速度が増加することを確認できた。なお、反応ガス分圧が異なっても、プラズマ処理用ガスの低圧力化によって成膜速度が向上することは、図9の反応ガス分圧Prと成膜速度との関係を示すグラフからも確認できる。
【0078】
ここで、図7、図8に示した結果は、プラズマ処理用ガスの圧力Pを低くすることによって、成膜速度が向上することを示しているのであって、反応ガス濃度Crの増加による成膜速度の増加を示しているのではない。この点については、図10より明らかである。図10は、電力、反応ガス濃度Cr、及び反応ガス流量Qrを一定として、成膜速度のプラズマ処理用ガス圧力P依存性を調べた結果である。図には3つの異なる条件の結果を示しているが、反応ガス濃度Crが一定である(又は反応ガス分圧Prが低い)にも拘わらず、プラズマ処理用ガスの圧力Pを低くすることによって、成膜速度が向上しているのを確認できる。
【0079】
次に、再び図8を参照して、(A)式で規定されるプラズマ処理用ガス圧力Pの下限値は圧力PL1で示されているが、成膜速度は、この下限圧力PL1よりも高い圧力でピークをとっている。この結果は、先に示した図6(c)のイメージと符合しており、下限圧力PL1においては、プラズマの安定性が十分でない場合があることを示している。すなわち、反応ガス分圧Prが一定の条件下においてプラズマ処理用ガスの圧力Pを低くすることは、Heガスの分圧Piを低くすることに相当するが、Heガス分圧Piが低くなりすぎると、プラズマを安定に維持することが困難になるのである。
【0080】
この観点より、上記(A)式に、さらに上記(B)式で規定される圧力条件を付加することが好ましいのであり、図11はこれを説明するための実験結果を示している。図11は、横軸にHeガス濃度Ciをとり、主に図8のグラフを書き直したものである。図11には、図8の条件に加え、反応ガス分圧が比較的高い場合(16Torr)の結果も示している。図11より、Heガス濃度Ci:0.8以上の条件においては、いかなる反応ガス分圧Prにおいても、プラズマの安定維持が可能であることが確認できる。この結果より、上記(A)式の規定に加え、さらに(B)式の条件が付加されることが好ましいのである。
P(Torr)≧5×Pr(Torr)=PL2……(B)
なお、図8中には、○プロット及び□プロットのデータに対して、(B)式で規定される圧力範囲を示しているが、プラズマの安定性を一層高めるには、(B)式で規定される範囲内にあって、Heガス濃度Ciを高めに設定しておくことが好ましい。現実的には、上記(A)、(B)式を満たす範囲内で、最もプラズマ処理速度が向上するプラズマ処理用ガス圧力Pを選定すればよい。
【0081】
上記(A)式及び(B)式にて規定されるプラズマ処理用ガス圧力Pの意味については、図12を参照することによって、より明確に確認できる。図12は、プラズマ処理用ガス圧力Pの(−0.5)乗を横軸として、図8のグラフを書き直したものである。この図より、P(-0.5)が0.3(Torr-0.5)以下程度の比較的小さい値の場合には、エッチング(図2)の場合と同様に、成膜速度がプラズマ処理用ガス圧力Pの(−0.5)乗にほぼ比例して増加している。この結果は、実施例1と同様に、プラズマ処理用ガス圧力Pの低圧力化による電子のドリフト速度の増加によって、成膜速度が向上することを示している。
【0082】
この実験事実からも、(A)式で規定される圧力範囲の妥当性を確認できる。また、P(-0.5)が0.3(Torr-0.5)以上程度の比較的高い値の場合には、P(-0.5)に対する成膜速度の線形性が崩れるが、これは、前記したようにプラズマの安定性が低くなることに対応している。そして、プラズマの安定維持可能な圧力が、上記の(B)式によって与えられる。なお、図12中には、○プロット、□プロットに対して、(B)式で規定される圧力範囲を示している。
【0083】
上記したように、本実施例においても、(A)式で規定される範囲内にあって、かつプラズマの安定維持が可能な範囲でプラズマ処理用ガス圧力Pを低い圧力に設定することによって、プラズマ処理速度を大幅に向上させることができた。そして前記の、プラズマの安定維持が可能な圧力が(B)式によって規定された。
【0084】
次に、前記(A)式及び(B)式に規定されるプラズマ処理用ガス圧力Pの範囲内にあって、更に好ましい圧力範囲を説明する。
図13は、図8と同じグラフであるが、夫々のプロットに対して、(A)、(B)式と(C)式とによって規定される圧力範囲を示している。なお(C)式は、前記したように下式で与えられる。
P(Torr)≦3.5×PL(Torr)……(C)
【0085】
(C)式において、圧力PL(Torr)は、高周波電力の周波数f(Hz)、反応ガスの分圧Pr(Torr)に対して、(D)式で表現される圧力PL1(Torr)、及び(E)式で表現される圧力PL2(Torr)のうち、高い方の圧力である。
L(Torr)=PL1(Torr)=2×10-7(Torr/Hz)×f(Hz)……(D)
L(Torr)=PL2(Torr)=5×Pr(Torr)……(E)
【0086】
図13より明らかなように、前記(A)〜(C)式で規定されるプラズマ処理用ガス圧力Pの範囲内に、プラズマ処理速度の最大値が存在していることがわかる。この結果が、先述の図6(c)に示したイメージ図に対応する。なお、(A)〜(C)式によって規定されたプラズマ処理用ガスの圧力範囲とは、「(A)式で規定される範囲内にあって、かつプラズマの安定維持が可能な範囲(B)で、低い圧力に設定すること(C)」を定量的に表現したものである。
【0087】
次に、本発明によって作製されたアモルファスSi薄膜の特性を調べた。図14は、図13に示した条件で作製したSi薄膜の光感度を、プラズマ処理用ガス圧力Pに対してプロットしたものである。図14と図13とを比較して、成膜速度が最大となるプラズマ処理用ガス圧力Pの付近で、光感度も最大値をとっていることがわかる。この理由は定かではないが、プラズマの安定性を維持しつつ、反応ガスを効率的に分解する圧力条件((A)〜(C)式)において、薄膜形成のための望ましい反応種が生成できたものと思われる。なお、上記現象の理解としては、例えば、反応ガスが効率的に分解されることによって(親分子が減少することによって)、解離された反応種の反応ガス分子(親分子)との重合が抑制されたり、Heガスが適量に含まれることによって、ガス温度が適切に調整されていることなどが予測されるが、明確な知見は得られていない。
【0088】
上記したように本実施例では、具体的に以下のことが確認できた。
1)(A)式に規定されるプラズマ処理用ガス圧力Pの限定は、反応ガスの種類に依存せず、いかなる反応ガスに対しても適用可能である。
2)(A)式に規定されるプラズマ処理用ガス圧力Pの条件に、さらに(B)又は(C)式で示される限定を加えることが、プラズマ処理速度向上のために効果的である。
3)(A)〜(C)式で規定される範囲にプラズマ処理用ガス圧力を設定することにより、成膜速度の向上と、薄膜の高品質化との双方を満足することができる。すなわち、本発明は、プラズマ処理方法が成膜方法である場合に特に効果的である。
【0089】
〔変形例1〕
上記の実施例では、不活性ガスとしてHeを用いた場合の実験結果を示した。しかしながら、本発明の不活性ガスは、これに限定されない。一例として、不活性ガスとしてArを用いて実験を行った。実験条件は、図8中の○プロットで示した条件と同じであり、プラズマ処理用ガス圧力Pは8Torrとした。その結果、成膜速度は25A/sであり、Heを用いた場合の結果と大差はなかった。また、5×105以上の光感度を有するアモルファスSi薄膜が得られた。
【0090】
〔変形例2〕
上記の実施例及び変形例では、プラズマ処理用ガスが、反応ガスと不活性ガスとの混合ガスである場合について説明してきた。しかしながら、上記(A)式で規定されるプラズマ処理用ガスの圧力範囲は、圧力を低くすることにより、電子のドリフト速度が増加する範囲を示している。したがって、プラズマ処理用ガスが反応ガスのみであっても、この観点においては異ならない。しかしこの場合には、プラズマ処理用ガス圧力Pを低圧力化して電子のドリフト速度を増加させることは、同時に反応ガス圧力Prを減少させることになるから、相反する効果のトレードオフを考慮する必要がある。また、反応ガスのみでプラズマを維持するためには、大電力を投入する必要がある。
【0091】
〔変形例3〕
上記の実施例及び変形例では、プラズマ処理装置として、図4に示す装置を用いた結果を示した。しかしながら、本発明に使用するプラズマ処理装置はいかなるものであってもよい。一例として、公知のシャワー電極タイプのプラズマ処理装置を用いて、図8と同様の実験を行った。図8のデータに比べ、成膜速度は数%程度高い値であったが、図8と同様の傾向が得られた。
【0092】
〔電子のドリフト速度〕
上記した内容を補足するために、電子のドリフト速度について説明する。
プラズマ中の個々の電子は、熱運動による無秩序速度を持って他の粒子と衝突しつつ、全体としては電界方向に移動している。この全体的な運動の速度がドリフト速度Vdであり、電子の無秩序速度とは区別して考えるものである。なお、電子の無秩序速度は分布関数で表現されるが、平均化して扱い、これを、熱速度Vtと呼ぶことにする。
【0093】
電界中の電子のドリフト運動の方程式は、下式で与えられる。
m・dVd/dt+ν・m・Vd=e・E……(1)
ここで、
m:電子の質量、Vd:電子のドリフト速度、t:時間、
ν:衝突頻度(1個の電子が、単位時間内に、プラズマ処理用ガス中のその他の粒子と衝突する回数)、e:電子の電荷、E:高周波電源によって電極/基板間に与えられる電界であり、更に電界Eは(2)式のように、衝突頻度νは(3)式のように表せる。
E=E0・exp(j・2π・f・t)……(2)
ν=Vt/λ……(3)
(E0:高周波電界の振幅、f:高周波電力の周波数、j:虚数
λ:電子の平均自由行程、Vt:電子の熱速度)
(3)式中の電子の平均自由行程λは、
λ=(k・Tg/P)/(πr2)……(5)
(k:ボルツマン定数、P:プラズマ処理用ガスの圧力、r:プラズマ処理用ガス中に存在する粒子の平均半径、Tg:気体温度)
で表される。
上記の(1)〜(5)式を用いて、前記(A)式で規定したプラズマ処理用ガス圧力Pの下限値PL1の根拠と電子ドリフト速度のプラズマ処理用ガス圧力Pの依存性について、以下に説明する。
【0094】
〔1〕プラズマ処理用ガス圧力Pの下限値PL1の根拠について
(1)式を解くと、
d=(e・E/m)/(j・2π・f+ν)……(6)
が得られる。なお、(6)式は、衝突頻度νがドリフト速度Vdに依存しないものとして得た解であるが、〔1〕の議論においては問題のない前提である。なぜなら、一般的なプラズマ処理においては、Vt>Vdなる関係があり、さらに、〔1〕では、Vtを下記(13)式のように置くことによって下限圧力PL1を議論しているからである。(6)式より高周波電力の周波数fと、電子のドリフト速度Vdとの関係は、先に示した図3のようになる。図3において、fcは、電子が電界に追従する臨界の周波数であり、本発明では臨界周波数と呼んでいる。臨界周波数fcは下式のように表される。
c=ν/(2π)……(7)
(3)、(5)および(7)式から、fcは、
c=ν/(2π)=Vt/λ/(2π)
=Vt/{(k・Tg/P)/(πr2)}/(2π)
=Vt・P・r2/(2k・Tg)……(8)
となる。(8)式から、臨界周波数fcは、プラズマ処理用ガスの圧力Pの増加とともに高くなることが分かる。
【0095】
ここで、高周波電力の周波数fと臨界周波数fcとの大小関係によって、(6)式は下式のように近似できる。
・周波数fが、f≪fcとなるとき
d=(e・E)/(m・ν)……(9)
・周波数fが、f≫fcとなるとき
d=(e・E/m)/(j・2π・f)……(10)
(9)式から、f≪fcなる周波数を用いる場合には、衝突頻度νが減少すれば、ドリフト速度Vdが増加する。
【0096】
したがって、プラズマ処理用ガスの圧力Pを低くすることによって、電子とプラズマ処理用ガス中の粒子との衝突頻度νが減少し、ドリスト速度Vdが増加する。なお、プラズマ処理用ガスが、不活性ガスと反応ガスとの混合ガスからなり、反応ガス分圧が一定なる場合において、プラズマ処理用ガス圧力を低くすることにより、衝突頻度νが減少するのは、電子と不活性ガス分子との衝突頻度が減少していることを意味しているのである。そして、電子と不活性ガスとの衝突頻度が減少することによってドリフト速度が増加するのである。本発明は、前記のドリフト速度の増加を利用したものであるから、少なくとも、f≦fcを満たす必要がある。
【0097】
依って、(8)式から、下式の関係を満たすプラズマ処理用ガス圧力Pにおいて、本発明は効果的に作用する。
c=Vt・P・r2/(2k・Tg)≧f……(11)
(11)式を変形して、
P≧{(2k・Tg)/(Vt・r2)}・f……(12)
が得られる。ここで、電子の熱速度Vtは、電界が強くドリフト速度が大きくなると増加する傾向にあるが、少なくとも以下の関係を満たしている。
t≧{(8・k・Te)/(π・m)}1/2……(13)(Te:電子温度)
なお、(13)式の右辺は、電子の無秩序速度がMaxwellの速度分布に従うとしたときの平均速度を示している。
【0098】
したがって、(12)、(13)式より、少なくとも下式の関係を満たしていればよい。
P≧[(2k・Tg)・{(8・k・Te)/(π・m)}-1/2・r-2]・f
=[{1.25・(k・m)1/2・r-2}・{Tg・Te -1/2}]・f……(14)
ここで、気体温度Tg及び電子温度Teは、圧力によって変化するものであるが、少なくとも下式のような関係にある。
【0099】
g≦5000K、Te≧5000K……(15)
そこで、(14)式に、k=1.38×10-23(J/K)、
m=9.11×10-31(kg)を代入し、(15)式の関係を考慮すると、f≦fcを満たす十分条件として下式が得られる。
P≧[3.13×10-25(N/Hz)/r2(m2)]・f(Hz)……(15′)
【0100】
いま、プラズマ処理用ガス中の大部分がHeガスであるとしてr=1.1×10-10(m)を(15′)式に代入すると、
P≧{2.6×10-5(Pa/Hz)}・f(Hz)
={2×10-7(Torr/Hz)}・f(Hz)=PL1……(16)
が得られる。
【0101】
したがって、周波数f(Hz)に対して(16)式を満たすようなプラズマ処理用ガス圧力の範囲であれば、ドリフト速度が(9)式で近似でき、プラズマ処理用ガス圧力の減少に伴いドリフト速度が増加する。これが、上記の(F)式で示したプラズマ処理用ガス圧力の下限の限定理由である。なお、(16)式はHeガスの原子半径を用いて求めたものであるが、これより原子半径の大きい粒子、例えばArの原子半径を用いた場合には、(15′)式の右辺の値が小さくなるのであって、(16)式の条件はHeより半径の大きい粒子に対しても十分条件となるのである。
【0102】
〔2〕電子ドリフト速度のプラズマ処理用ガス圧力Pの依存性について
次に、ドリフト速度のプラズマ処理用ガス圧力依存性について説明する。上記したように、本発明では、使用する周波数fに対して(16)式の関係を満足するようにプラズマ処理用ガス圧力Pを設定しているので、f≦fcを満たしている。したがって、このような周波数f(Hz)においては、電子の慣性の効果((1)式中のm・dVd/dtの項)が無視でき、電子のドリフト速度は、概略(9)式に示したように
d=(e・E)/(m・ν)……(17)
で表される。ここで、電子は質量が小さく電界によって加速されやすい。このため、電界が強い場合には、電子が運動エネルギーの一定割合αを他の粒子との衝突によって失い、これと等しいエネルギーを電界から得るものと考えられる。すなわち、下式が成り立つ。
e・E・Vd=α・{(1/2)・m・Vt 2 }・ν……(18)
(3)式の関係を用い、(17)式と(18)式との連立方程式を解くと、
d=(α/2)1/4・(e・E・λ/m)1/2 ……(19)
が得られる。(5)式から、平均自由行程λは、λ∝P-1であるから、
d∝P-1/2……(20)
が成り立つ。なお、(19)式は、(2)式を用いて以下のようにも表現できる。
d=±(α/2)1/4・(e・E0・λ/m)1/2
×|sin(2π・f・t)|1/2 ……(21)
(符号の+はsin(2π・f・t)≧0のとき
符号の−はsin(2π・f・t)<0のとき)
(21)式より、ドリフト運動に基づく電子の振動振幅A(peak−to−peak)は、
【0103】
【数1】
Figure 0003707989
=0.4・(α/2)1/4・(e・E0・λ/m)1/2/f……(22)
となる。(22)式より周波数fが高くなると、電子の振動振幅は小さくなり、基板へのダメージが小さくなることが分かる。なお、イオンが高周波電界に追従している場合にはイオンの振動振幅も(22)式と同形の式で表され、周波数が高くなると、イオンによるダメージも小さくなる。また、イオンが高周波電界に追従できない範囲の周波数領域においては、周波数を高めると周波数の2乗に反比例してイオンの振動技術が小さくなる。
【0104】
上記のように、プラズマ処理用ガスの圧力が(16)式を満たす場合には、(20)式からプラズマ処理用ガス圧力を低くすることにより電子のドリフト速度が増加する。そして、このドリフト速度は、プラズマ処理用ガス圧力の(−1/2)乗に比例する。本発明は、電子のドリフト速度を増加させ、電子と反応ガス分子との単位時間当たりの衝突回数を増加させて反応ガス分子を効率的に解離している。
【0105】
【発明の効果】
本発明は、プラズマ処理方法において、電極に供給する高周波電力の周波数f(Hz)に対して、
2×10-7(Torr/Hz)×f(Hz)≦P(Torr)≦500(Torr)
なる関係を満たすように、プラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)を設定しているので、エネルギー及びプラズマ処理用ガス中の反応ガスの利用効率が向上し、一定の投入電力および一定の反応ガス分圧の条件下においても処理速度が大幅に向上する。
さらに、本発明では、プラズマ処理の処理速度を高めながらも、プラズマ処理用ガスの圧力を500Torr以下としているため、これを1気圧とした場合に比べて反応容器内に導入するガスが少なくて済む。すなわち、ガスに要するコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラズマ処理方法の、プラズマ処理用ガス圧力の上限の限定理由を説明する図(エッチング速度のプラズマ処理用ガス圧力依存性を説明する図)。
【図2】本発明の作用が、電子のドリフト速度と相関があることを説明する図(エッチング速度と、プラズマ処理用ガス圧力の(−1/2)乗との関係を示す図)。
【図3】本発明のプラズマ処理用ガス圧力の下限の限定理由を説明する図(ドリフト速度と、高周波電力の周波数との関係を示す図)である。
【図4】本発明及び従来技術で用いるプラズマ処理装置の概略説明図である。
【図5】投入電力及び反応ガス濃度を一定としてエッチング速度のプラズマ処理用ガス圧力依存性を調べた結果を表すグラフである。
【図6】プラズマ処理用ガス圧力Pの意味を説明する模式図であり、(a)は前記ガス圧力Pと、プラズマ中の電子のドリフト速度との関係を示し、(b)は前記ガス圧力Pとプラズマの安定度の関係をイメージ的に表現し、(c)は前記ガス圧力Pとプラズマ処理速度との関係を示す。
【図7】実施例2での実験結果を示すグラフである。
【図8】図7と同様の実験を、異なる条件で実施した結果を示すグラフである。
【図9】反応ガス分圧Prと成膜速度との関係を示すグラフである。
【図10】反応ガス濃度を一定として成膜速度のプラズマ処理用ガス圧力P依存性を調べた結果を示すグラフである。
【図11】主に図8を、横軸をHeガス濃度Ciとして書き直したグラフである。
【図12】図8を、横軸をプラズマ処理用ガス圧力Pの(−0.5)乗として書き直したグラフである。
【図13】図8のグラフに(A)、(B)式と(C)式とによって規定される圧力範囲を加えたグラフである。
【図14】図13の条件で作製したSi薄膜の光感度を、プラズマ処理用ガス圧力Pに対してプロットしたグラフである。
【符号の説明】
1 反応容器
2 電極
3 電極
4 高抵抗体
5 高抵抗体
6 基板
7 ノズル
8 高周波電源
10 ガス排出口
20 プラズマ処理装置

Claims (1)

  1. 電極と、ホルダーに保持された基板とが対向して配置され、前記電極と前記ホルダーとの間に高周波電力を供給することによって、前記電極と前記基板との間で、反応ガスと不活性ガスとの混合ガスからなるプラズマ処理用ガスに基づくプラズマを発生させ、前記基板に対して、成膜、加工および表面処理などの処理を行うプラズマ処理方法であって、
    前記反応ガスの分圧をPr(Torr)、前記高周波電力の周波数をf(Hz)とするとき、
    前記プラズマ処理用ガスの圧力P(Torr)は、
    2×10-7(Torr/Hz)×f(Hz)≦P(Torr)≦500(Torr)
    なる関係を満足し、かつ
    P(Torr)≦3.5×P L (Torr)
    なる関係を満足するように設定され、
    前記の圧力P L (Torr)は、
    L (Torr)=5×Pr(Torr)
    なる圧力、および
    L (Torr)=2×10 -7 (Torr/Hz)×f(Hz)
    なる圧力のうち、高い方の圧力であることを特徴とするプラズマ処理方法。
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