JP3707954B2 - ネットワーク間接続装置及び通信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は通信システムに関し、たとえば、インターネットなどの有線系のネットワークと、移動電話などの無線系ネットワークをゲートウェイ装置で接続することで構成される通信システムなどに適用し得るものである。
【0003】
さらに、本発明は、かかる通信システムの構成要素としてのネットワーク間接続装置(例えばゲートウェイ装置)に関するものである。
【0004】
【従来の技術】
文献1:Evolution of Wireless Data Services: IS-95 to cdma2000, IEEE Communication Magazine,October 1998, pp.140-149
従来、この種のゲートウェイ装置及び通信装置からなるシステムとしては、上記文献1のp.144のFigure1に示されるものがあった。
【0005】
Figure1に示されたシステム構成では、システム構成の中央部に、ゲートウェイ装置の機能を持つMSC(Mobile Switching Center)が配置されている。
【0006】
そしてMSCの一方には、IWF(Inter Working Function)が接続され、当該IWFにはさらにPDN(Public Data Network)が接続されている。
【0007】
当該MSCの他方には、移動電話の基地局BS(Base Station)が接続され、この基地局BSには、無線回線を介して移動局MS(Mobile Station)が接続されている。
【0008】
MSCにはRLP(Radio Link protocol)が実装されており、上記文献1のp.144 1.25(左欄、25行)〜1.28(左欄、28行)に記載されているように、MSCとMSの間で再送プロトコル(ARQ:Automatic Repeat reQuest)を動作させることにより、信頼性のあるデータ伝送サービスを提供している。
【0009】
再送プロトコルとは、伝送したデータが正しく相手先に届いたことを確認する受信確認が受信側から送信側に到着するまで、送信側は同じデータを繰り返し送る方式である。このようにすることにより、無線回線のような誤りの多い通信回線においても、やがては正確なデータ伝送が行われることが期待でき、品質の高いデータ伝送が可能となる。
【0010】
また、上記文献1のp.145 Figure3には、無線回線に接続される通信装置の階層化プロトコル構成が示されている。インターネットで用いられるアプリケーションは、TCP(Transmission Control Protocol)あるいはUDP(User Datagram Protocol)をトランスポート層のプロトコルとして利用する。
【0011】
IP(Internet Protocol)パケットはトランスポートプロトコルとしてTCPを用いているかUDPを用いているかにかかわらず、PPPパケットとして0SI layer2の機能を利用して転送される。
【0012】
0SI layer2は、上記文献1のp.146 1.17〜1.21に記述されているように、伝送路の品質が悪ければARQを動作させ、伝送路品質が十分高ければARQの動作をさせない。このようにして、従来の技術ではTCPパケットの中継にもUDPパケットの中継にも、同等の信頼性のあるデータ伝送プロトコルを適用していた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記システム構成では伝送路の状態が悪い場合には、TCPパケットもUDPパケットも等しくRLPにおける再送を受け、再送による遅延が発生する。
【0014】
再送プロトコルによれば、やり取りされる情報系列の各部分は正確に伝送されるが、たとえば電話のように、エンドエンドのユーザが、受信した情報に応じて送信する情報を変更する手順を繰り返すことで成り立つ形式の通信では、各部分の正確さよりもリアルタイム性のほうが重要なことも少なくない。正確な情報を伝送するために頻繁に再送し、たびたび通信が途絶えて手順の進行が停止するような状況は、ユーザに耐え難い苦痛を与え、かえって通信の信頼性を低下させることも考えられる。求められる信頼性の中身はアプリケーションの種類に応じて変わってくるのが普通だからである。
【0015】
トランスポートプロトコルに前記UDPを用いるアプリケーションは一般に、リアルタイム性を要求する。音声信号をインターネットで伝送するインターネット電話は、その代表例である。
【0016】
特に、インターネット電話の少なくとも一方の通信端末が、前記通信装置MSのように無線回線に接続されている場合、UDPパケットに対してもRLPによる再送が頻発し、再送による遅延のため、たびたび通信が途絶える可能性が高い。
【0017】
しかもUDPでは、端末間の再送は行われないのであるから、通信経路上の前記無線回線以外の部分で伝送誤りが生じた場合、RLPによる再送をいくら繰り返しても端末に誤りのないパケットを届けることはできない。
【0018】
したがって、トランスポートプロトコルが例えばTCPであるか、UDPであるかによって、データリンクプロトコルを変更した方が矛盾や無駄のない通信を行うことができる。
【0019】
この問題点をもっと広くとらえるなら、通信端末間のプロトコルであるトランスポートプロトコルに対応して、各通信端末とゲートウェイとのあいだのプロトコルであるデータリンクプロトコルを変更することができず、トランスポートプロトコルとデータリンクプロトコルとの関係が硬直的である点に問題の根元が存するものと考えられる。
【0020】
当該硬直性のために、トランスポートプロトコルの意図した機能に反するような動作(例えば前記再送)を、データリンクプロトコルが実行してしまうことがある点が問題である。
【0021】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明は、複数の通信装置間の通信経路が、第1の回線の区間とこの第1の回線の区間より伝送誤りが生じる蓋然性の高い第2の回線の区間によって構成されている場合、当該第1の回線と第2の回線のあいだに介在し、両回線間で通信の中継を行うネットワーク間接続装置において、前記複数の通信装置の内、前記第1の回線に接続された第1の通信装置から受信した通信パケットのトランスポート層通信プロトコルに応じて、データリンク層の中継プロトコルを選択する第1の中継プロトコル選択手段を備え、当該第1の中継プロトコル選択手段は、前記第1の通信装置から受信した通信パケットのトランスポート層通信プロトコルが再送機能を持つ第1の通信プロトコルである場合には、前記中継プロトコルとして再送機能を持つ第1の中継プロトコルを選択し、前記第1の通信装置から受信した通信パケットのトランスポート層通信プロトコルが再送機能を持たない第2の通信プロトコルである場合には、前記中継プロトコルとして再送機能を持たない又は再送回数が制限された第2の中継プロトコルを選択して、いずれか選択した中継プロトコルを用いて第2の回線に接続された第2の通信装置へ前記通信パケットを中継することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の通信システムは、第1の回線に接続された第1の通信装置と、伝送誤りの生じる蓋然性が前記第1の回線より高い第2の回線に接続された第2の通信装置と、本発明のネットワーク間接続装置とを備えたことを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
(A)実施形態
本発明にかかるネットワーク間接続装置及び通信システムを、トランスポート層のプロトコル(通信プロトコル)としてTCPおよびUDPを使用する通信システムに適用した場合を例に、実施形態について説明する。
【0027】
(A−1)実施形態の構成
本実施形態の通信システム40の全体構成を図4に示す。図4は、通信装置41には有線回線44が接続され、当該有線回線44に接続されているゲートウェイ装置42には無線回線45を介して通信装置43が接続されている。具体的には、たとえば、有線回線44はインターネット、通信装置41はパソコン(パーソナルコンピュータ)、無線回線45は携帯電話回線、通信装置43は携帯電話機などであってよい。
【0028】
ただし、当該パソコン41はファイル転送機能に加えてインターネット電話などの機能を装備し、携帯電話機43はインターネット電話機能に加えてファイル転送機能などを装備しているものとする。
【0029】
前記ゲートウェイ装置42の詳細構成例を図1に示す。
【0030】
図1において、ゲートウェイ装置42は、有線回線44側の入出力端子11と、有線回線側送受信インタフェース12と、プロトコル判定部13と、スイッチ14と、下り回線側RLP処理部15と、無線回線側送受信インタフェース16と、無線回線45側の入出力端子17と、上り回線側RLP処理部18とを備えている。
【0031】
下り回線側RLP処理部15、上り回線側RLP処理部18などに関し、有線回線44側から無線回線45側に流れる情報パケットの方向を下り方向DD、逆を上り方向UDと呼ぶ。以下においても同様である。
【0032】
また、前記携帯電話機43の詳細構成例は図2に示す。
【0033】
図2において、携帯電話機43は、無線回線45に接続される入出力端子21と、送受信インタフェース22と、下り回線RPL処理部23と、TCP処理部24と、UDP処理部25と、アプリケーション処理部26と、上り回線RPL処理部27とを備えている。
【0034】
前記パソコン41は、図3に示すような詳細構成を有する。
【0035】
図3において、パソコン41は、有線回線44に接続される入出力端子31と、送受信インタフェース32と、TCP処理部33と、UDP処理部34と、アプリケーション処理部35とを備えている。
【0036】
前記携帯電話機43と当該パソコン41との構成上の対応関係は、アプリケーションに関しては、携帯電話機43内のアプリケーション処理部26とパソコン41内のアプリケーション処理部35とが対応し、TCP通信はTCP処理部24と33とが対応し、UDP通信はUDP処理部25と34とが対応し、下りRLPは下り回線RLP処理部15と23とが対応し、上りRLPは上り回線RLP処理部18と27とが対応して、各部で各プロトコル処理が終端される。
【0037】
ここでRLPは、トランスポートプロトコルの下位層にあたるデータリンク層のプロトコル(中継プロトコル)である。
【0038】
なお、上記下り回線RLP処理部15、および上り回線RLP処理部27の内部、ないしその周辺には、ゲートウェイ装置42と通信装置43のあいだでRLPによる再送を行うためにデータを一時的に蓄積しておく再送バッファメモリ(図示せず)を備える必要がある。
【0039】
また、TCP処理部33,24の内部、ないしその周辺には、通信装置41と通信装置43のあいだでTCPによる再送を行うためにデータを一時的に蓄積しておく再送バッファメモリ(図示せず)を備える必要がある。
【0040】
以下、上記のような構成を有する本実施形態の動作について説明する。
【0041】
(A−2)実施形態の動作
まず、UDPパケットPC2(図6参照)を用いた情報伝送について説明する。これは、たとえば、携帯電話機43を用いて行うインターネット電話などに該当し得る。
【0042】
下り方向DDの場合、パソコン41のアプリケーション処理部35から、ゲートウェイ装置42を通って携帯電話機43のアプリケーション処理部26までUDPパケットPC2中のアプリケーションデータAD2を伝送する。
【0043】
パソコン41のアプリケーション処理部35は、アプリケーションの種類によりパケット(アプリケーションデータ)をTCP処理部33あるいはUDP処理部34へ出力する。
【0044】
すなわちパケット送出にあたって、このアプリケーション処理部35は、当該アプリケーションの種類が、リアルタイム性は必要ないが、誤りのないデータ転送が必要なファイル転送などのアプリケーションである場合は、アプリケーションデータ(AD2)をTCP処理部33に出力し、リアルタイム性が重要な前記インターネット電話などのアプリケーションである場合は、アプリケーションデータ(AD1)をUDP処理部34に出力する。
【0045】
このような、アプリケーションの種類と出力先の対応関係、すなわちアプリケーションの種類とトランスポート層のプロトコルの対応関係は、あらかじめ設定しておくようにするとよい。
【0046】
いま、当該アプリケーションは、たとえばインターネット電話のようにリアルタイム性が重視されるリアルタイムアプリケーションであるので、トランスポートプロトコルはUDPであり、アプリケーションデータAD2はUDP処理部34に出力される。
【0047】
したがって、当該アプリケーションに対応するリアルタイムパケットはUDP処理部34で組み立てられる。UDP処理部34で組み立てられたUDPパケットPC2は送受信インタフェース32へ出力され、入出力端子31から有線回線44へ送出される。
【0048】
当該UDPパケットPC2の構成は、図6に示すように、IP(インターネットプロトコル)が付加するIPヘッダ、UDP(ユーザデータグラムプロトコル)が付加するUDPヘッダ、上位層のアプリケーション(アプリケーション処理部35)が生成したアプリケーションデータAD2を備えている。
【0049】
一方、もしも当該アプリケーションが、たとえばファイル転送アプリケーションのように、リアルタイム性よりも情報系列の各部の正確さを重視するアプリケーションである場合は、出力パケットは、TCP処理部33で組み立てられ、図5に示すTCPパケットPC1のような構造を持つことになる。TCPパケットPC1の構成は、図6のUDPパケットPC1に比べて前記UDPヘッダの部分が、TCP(トランスミッションコトロールプロトコル)の付加するTCPヘッダで置換された点が相違する。
【0050】
パソコン41の入出力端子31から送出された後、インターネット44を介してゲートウェイ装置42に到着した前記UDPパケットPC2はゲートウェイ装置42の入出力端子11、送受信インタフェース12を介して、プロトコル判定部13とスイッチ14に供給される。
【0051】
プロトコル判定部13では、入力された当該パケットがTCPパケットかUDPパケットかを判定するが、この判定は、当該パケットのIPヘッダ中のプロトコルタイプPTを調べることによって行われる。
【0052】
IPヘッダの構造を示した図7において、L1〜L6の6行からなるIPヘッダの1行は4バイト(32ビット)より構成されている。IPヘッダの最初(L1の左端)から数えて10バイト目(L3の2バイト目)にプロトコルタイプPTを表示する1バイトからなるフィールドがある。このフィールドには、上位プロトコル(トランスポート層のプロトコル)がTCPであるかUDPであるかがコードにより表示されている。
【0053】
ここでは当該パケットは、UDPパケットPC2であるので、プロトコルタイプPTはUDPを表示している。
【0054】
したがって、判定の結果としてプロトコル判定部13から出力される判定信号JSは、当該パケットがUDPパケットであることに対応して送受信インタフェース16側の接点14Aに、スイッチ14を切替える。
【0055】
もし、当該入力パケットがTCPパケットPC1で、IPヘッダのプロトコルタイプPTがTCPを表示する場合には、後述するように、判定信号JSは、スイッチ14を下り回線RLP処理部15側の接点14Bに切り替えることになる。
【0056】
前記スイッチ14(接点14A)から、送受信インタフェース16、入出力端子17を介してUDP処理部25に供給されたUDPパケットPC2は、UDP処理部25においてアプリケーションデータAD2が抽出され、当該アプリケーションデータAD2がアプリケーション処理部26に供給される。これにより携帯電話機43のユーザは、当該アプリケーションデータAD2に応じた情報を受け取ることができ、下り方向DDの情報伝送が完了する。
【0057】
反対に、UDPパケットPC2の上り方向UDでは、携帯電話機43のユーザから入力された情報に応じてアプリケーション処理部26が生成するアプリケーションデータAD2がUDP処理部25に供給される。
【0058】
アプリケーションデータAD2を受け取ると、UDP処理部25は、当該アプリケーションデータAD2にUDPヘッダを付加する。このあと、順次に、送受信インタフェース22、入出力端子21を経て無線回線45に送出される。
【0059】
そして、当該無線回線45から、ゲートウェイ装置42の入出力端子17、送受信インタフェース16、送受信インタフェース12、入出力端子11を経て、インターネット44に供給される。このUDPパケットPC2は、当該インターネット44から、パソコン41に供給される。
【0060】
パソコン41のなかでは、当該UDPパケットPC2は順次に、入出力端子31、送受信インタフェース32を伝送され処理されて、UDP処理部34に到達する。
【0061】
UDP処理部34は、UDPパケットPC2からアプリケーションデータAD2を抽出してアプリケーション処理部35に供給する。アプリケーション処理部35が当該アプリケーションデータAD2を処理し、当該アプリケーションデータAD2に応じた情報をパソコン41のユーザに提供することで、上り方向UDの情報伝送が完了する。
【0062】
このように、下り方向DD、上り方向UDとも、また、ゲートウェイ装置42と通信装置43(または41)のあいだでも、通信装置43と通信装置41のあいだでも、UDPの伝送、処理過程では、パケットの再送を行わないので各方向の情報伝送は、送信元のユーザが情報を送り続ける限り、途切れること無く伝送されることとなり、電話などに適した通信環境をユーザに提供する。
【0063】
次に、TCPパケットPC1の情報伝送について説明する。これは、たとえば、携帯電話43を用いて電子メールを送受信する場合などに該当し得る。
【0064】
下り方向DDでは、送信元となるパソコン41で、前記UDP処理部34の代わりにTCP処理部33が動作して、アプリケーションデータAD1にTCPヘッダを付加してTCPによる通信が行われる点が上述したUDPの伝送、処理過程と相違する。
【0065】
このTCPパケットPC1をインターネット44から受け取るゲートウェイ装置42において、当該パケットPC1のIPヘッダのプロトコルタイプPTが、TCPを表示していることを検出したプロトコル判定部13の判定信号JSは、スイッチ14を下り回線RLP処理部15側の接点14Bに切り替える。
【0066】
接点14Bを介し、TCPパケットPC1を受け取った下り回線RLP処理部15は、図8に示すように、当該TCPパケットPC1を、最大セグメント長をたとえば80バイトに制限したセグメントSGに分割し、分割したセグメントSGにシーケンス番号SNと再構成のための制御ビットCBと誤り検出のためのパリティビットPBを付与して、無線伝送用のパケットPC12を構成する。
【0067】
図8(A)および(B)では、1つのTCPパケットPC1を3つのセグメントSG1〜SG3に分割している。
【0068】
そして、図8(B)および(C)に示すように、任意の1つのセグメント(SG3)の先頭には、シーケンス番号SNと制御ビットCBが付加され、後尾にはパリティビットPBが付加される。
【0069】
シーケンス番号SNは、セグメントSG毎に異なる連続番号で、携帯電話機43の下り回線RLP処理部23からの受信確認信号(ACK)と送信セグメントとの対応づけに用いられる。
【0070】
この場合、ゲートウェイ装置42と通信装置43のあいだの、RLPによる再送は、実質的にセグメントSG単位で行われることになるが、下り回線RLP処理部15まで伝送されてくる1つのTCPパケットPC1は、3セグメントSGに相当するので、前記再送バッファメモリは、少なくとも3セグメントSGを蓄積するだけの容量を持つ必要がある。
【0071】
そして、当該再送を行っている期間は、送信先の携帯電話機43側のユーザが受け取る情報が途切れるだけでなく、再送バッファメモリの容量にもよるが、何らかの方法で、送信元のパソコン41のユーザによる情報の送出も停止する必要がある。そうしなければ、当該再送バッファメモリに、オーバーフローが生じる可能性がある。
【0072】
また、前記制御ビットCBは、1つのセグメントSGがTCPパケットの最後のセグメントであるかどうかを示すビットで、たとえば、最後の場合は“1”、最後でない場合は“0”である。パリティビットPBは携帯電話機43内の下り回線RLP処理部23での誤り検出に用いられる。
【0073】
無線伝送用パケットPC12は送受信インタフェース16、入出力端子17、伝送誤りの発生しやすい無線回線45を経て、携帯電話機43に到達し、携帯電話機43は後述するように当該無線伝送が正確に行われていれば受信確認ACKを送り返してくる。
【0074】
ゲートウェイ装置42内の下り回線RLP処理部15は、設定したタイマがきれるまでに、携帯電話機43からの当該受信確認ACKを受け取らなかった場合にはそのセグメント(パケットPC12)を再送するという通常のARQ手法により、受信確認ACKを受け取るまでセグメントを再送し続ける。
【0075】
ゲートウェイ装置42の送受信インタフェース16では、スイッチ14から直接入力されたUDPパケットPC2と下り回線RLP処理部15において処理されたセグメントSG(パケットPC12)が多重化される。
【0076】
この多重化は、携帯電話機43と、携帯電話機以外の他の種類の再送を必要とする携帯型情報端末(図示せず)などが無線回線45などでゲートウェイ装置42に同時に接続される場合に対応した操作である。
【0077】
図9は、多重化された送受信インタフェース16の出力信号の説明図である。下り回線RLP処理部15からの出力(セグメントSG)とスイッチ14からの直接出力(UDPパケットPC2)には別々の論理チャネル番号LNが割り当てられ、各出力に論理チャネル番号LNが付加される。
【0078】
この論理チャネル番号LNを用い、携帯電話機43内の送受信インタフェース22において多重分離が行われる。論理チャネル番号LNとして8ビットを使用する図示の例では、携帯電話機43など、最大256個の無線通信端末を多重することができる。
【0079】
送受信インタフェース16でこのように多重化されたパケットは、入出力端子17を介して無線回線45に出力される。
【0080】
無線回線45に入出力端子21を介して接続されている携帯電話機43の送受信インタフェース22は、送受信インタフェース16の多重化動作に対応した多重分離の動作を行う。
【0081】
送受信インタフェース22の多重分離後の出力のうち、UDPパケットPC2に対応するスイッチ14からの直接の出力は、上述したようにUDP処理部25に供給されるが、TCPパケットPC1に対応する下り回線RLP処理部15からの出力(セグメントSG)は、下り回線RLP処理部23に供給される。
【0082】
セグメントSGを受け取った下り回線RLP部23は、受信したセグメントSGのパリティビット部PBをチェックすることで、上述したように、無線伝送が正確に行われているかどうか、すなわちセグメントSGに誤りが含まれているかどうかを調べる。
【0083】
セグメントSGに誤りが含まれていなければ、当該下り回線RLP処理部23は、前記受信確認ACKを送出する。この受信確認ACKは、送受信インタフェース22、入出力端子21、無線回線45、ゲートウェイ装置42の入出力端子17、送受信インタフェース16を介して下り回線RLP処理部15に到達する。
【0084】
また、下り回線RLP処理部23は、正しく受け取ったセグメントSGの制御ビットCBを利用し、図8(A)→(B)→(C)と逆の手順で、TCPパケットPC1を再構成し、そのTCPパケットPC1をTCP処理部24に出力する。
【0085】
TCP処理部24はTCPパケットPC1からアプリケーションデータ部AD1を取り出してアプリケーション処理部26に出力すると同時に、TCPプロトコルで定められているACK信号を含む上り方向UDのTCPパケットPC1を上り回線RLP処理部27に出力する。
【0086】
上り方向UDにおいて送信元となる携帯電話機43内の上り回線RLP処理部27は、ゲートウェイ装置42の上り回線RLP処理部18との間で、上述した下り回線RLP処理部15と下り回線RLP処理部23の間で行われた動作と同様のARQによる再送動作を行う。
【0087】
上り回線RLP処理部18の出力は、送受信インタフェース12、入出力端子11、有線回線44、パソコン41の入出力端子31、送受信インタフェース32を介して、TCP処理部33に届けられ、携帯電話機43のアプリケーション処理部26で生成されたアプリケーションデータAD1が送信先であるパソコン41のアプリケーション処理部35に到達する。
【0088】
結局、本実施形態では、ゲートウェイ装置42にプロトコル判定部13を設け、TCPパケットPC1についてだけRLPによる再送が行われ、UDPパケットPC2関しては通信品質にかかわらず、再送が行われない。
【0089】
なお、TCPの場合、通信装置43と41のあいだでは、通常のTCPによる再送も前記RLPによる再送とともに行われる。たとえば、下り方向DDでは、インターネット44の伝送誤りのためにゲートウェイ装置42の再送バッファ内に正常なパケットが存在しないこともあり得、このような場合、RLPによる再送だけでは通信装置43は正常なパケットを受信することができないので、TCPによるエンドエンドの再送が必要である。
【0090】
(A−3)実施形態の効果
以上のように、本実施形態の通信システムによれば、トランスポートプロトコルにUDPを用いるインターネット電話などのリアルタイムアプリケーションに関しては、無線回線に誤りが多い場合でもパケットの再送を行わないことで遅延を低減してユーザに快適な使用環境を提供し、情報系列の各部が正確なデータ伝送を必要とするTCP使用のアプリケーションに関しては、誤り検出、パケット再送を実行して信頼性を高めるので、全体として通信システムの融通性の高い運用が可能となる。
【0091】
(B)他の実施形態
上記実施形態では、ゲートウェイ装置と無線回線側通信装置との間のTCPパケット用の中継プロトコルとして、データが正しく伝送されるまで再送を繰り返すARQプロトコルを用い、UDPパケット用の中継プロトコルとして再送をまったく行わないプロトコルを用いたが、たとえばUDPアプリケーションがあまり厳しいリアルタイム性を要求しない場合には、UDPパケット用の中継プロトコルとして再送回数を制限するARQプロトコルを用いるようにしてもよい。
【0092】
これにより、パケット再送をまったく行わない上記実施形態よりも、パケットの誤り率を向上し、伝送する情報系列の各部の正確さを高めることができる。
【0093】
なお、上記実施形態では、有線回線44側の通信装置41をパソコンとし、無線回線45側の通信装置43を携帯電話機としたが、本発明はこれらに限定しない。
【0094】
たとえば、通信装置41は、多機能な固定電話などで置換してもよく、通信装置43は携帯電話機以外の無線通信端末などで置換してもよい。
【0095】
また、上記実施形態の有線回線44はインターネットで、ゲートウェイ装置42と通信装置43を接続するのは無線回線45であったが、本発明はこれらに限定しない。すなわち、有線回線44の部分はインターネット以外の有線回線であっても、無線回線であってもよいし、無線回線45の部分は有線回線であってもよい。
【0096】
なお、上記実施形態では、無線回線45を挟んでその両端だけで再送を行うようにしたが、再送を行う回線は、伝送誤りが生じる可能性が低くない回線であれば、無線回線に限らず、有線回線(44など)の両端においても行うようにしてよい。
【0097】
また、前記TCP、UDP、IPなどのプロトコルは、これらに限定しない。
【0098】
すなわち一般的に、前記TCPは、トランスポート層のプロトコルであってパケットの再送を行うプロトコルと置換でき、前記UDPは、トランスポート層のプロトコルであってパケットの再送を行わないプロトコルと置換でき、前記IPは、ネットワーク層のプロトコルと置換できる。
【0099】
たとえば、前記TCPをSPX(Sequenced Packet Exchange)などに置換してもよく、前記IPをIPX(Internetwork Packet Exchange)などに置換してもよい。
【0100】
したがって、通信装置41,43が装備するトランスポート層のプロトコルはTCPとUDPの2種類に限らず、3種類以上であってもよい。
【0101】
また、上記において、ゲートウェイ装置42のプロトコル判定部13およびスイッチ14は、下り方向DDについてだけ設けられていたが、これらを上り方向UDについても設けるようにしてよい。
【0102】
さらに、上記実施形態では、通信装置41および通信装置43はともに、情報(アプリケーションデータAD1またはAD2)の送受信を行う双方向通信装置であったが、どちらか一方または双方が受信または送信専用の通信装置であってもよい。
【0103】
さらに、上記実施形態では、ハードウエアを用いたが、本発明はソフトウエアを用いて実現することも可能である。たとえば通信装置43内のアプリケーション処理部26、TCP処理部24、UDP処理部25、下り回線RLP処理部23、上り回線RLP処理部27のあいだの接続関係などは、ソフトウエアで行われる方がむしろ普通である。
【0104】
すなわち、本発明は、複数の通信装置間の通信経路上に設置され、当該複数の通信装置間の通信の中継を行うネットワーク間接続装置などに、広く適用することができる。
【0105】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、通信プロトコルに応じて中継プロトコルを柔軟に変更することができ、通信の信頼性を高め、無駄や矛盾のない通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態にかかるゲートウェイ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態にかかる無線回線側通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態にかかる有線回線側通信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態にかかる通信システムの全体構成を示す概略図である。
【図5】実施形態にかかるTCPパケットの構成を示す概略図である。
【図6】実施形態にかかるUDPパケットの構成を示す概略図である。
【図7】実施形態にかかるIPヘッダの構成を示す概略図である。
【図8】実施形態にかかるTCPパケットの分割または再構成の手順を示す概略図である。
【図9】実施形態にかかる多重化パケットの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
13…プロトコル判定部、14…スイッチ、14A、14B…接点、15、23…下り回線RLP処理部、18、27…上り回線RLP処理部、24、33…TCP処理部、25、34…UDP処理部、26,35…アプリケーション処理部、PC1…TCPパケット、PC2…UDPパケット、PT…プロトコルタイプ、40…通信システム、41、43…通信装置、42…ゲートウェイ装置、44…有線回線、45…無線回線、DD…下り方向、UD…上り方向。
Claims (5)
- 複数の通信装置間の通信経路が、第1の回線の区間とこの第1の回線の区間より伝送誤りが生じる蓋然性の高い第2の回線の区間によって構成されている場合、当該第1の回線と第2の回線の間に介在し、両回線間で通信の中継を行うネットワーク間接続装置において、
前記複数の通信装置の内、前記第1の回線に接続された第1の通信装置から受信した通信パケットのトランスポート層通信プロトコルに応じて、データリンク層の中継プロトコルを選択する第1の中継プロトコル選択手段を備え、
当該第1の中継プロトコル選択手段は、前記第1の通信装置から受信した通信パケットのトランスポート層通信プロトコルが再送機能を持つ第1の通信プロトコルである場合には、前記中継プロトコルとして再送機能を持つ第1の中継プロトコルを選択し、前記第1の通信装置から受信した通信パケットのトランスポート層通信プロトコルが再送機能を持たない第2の通信プロトコルである場合には、前記中継プロトコルとして再送機能を持たない又は再送回数が制限された第2の中継プロトコルを選択して、いずれか選択した中継プロトコルを用いて第2の回線に接続された第2の通信装置へ前記通信パケットを中継することを特徴とするネットワーク間接続装置。 - 請求項1に記載のネットワーク間接続装置において、
前記第1の中継プロトコルの最大パケットサイズは、前記第1の通信プロトコルの最大パケットサイズより短いことを特徴とするネットワーク間接続装置。 - 請求項1又は2に記載のネットワーク間接続装置において、
前記第1の回線と第2の回線の内、少なくとも第2の回線は、無線回線であることを特徴とするネットワーク間接続装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載のネットワーク間接続装置において、
前記第1の通信プロトコルは、トランスミッションコントロールプロトコルであり、前記第2の通信プロトコルは、ユーザデータグラムプロトコルであることを特徴とするネットワーク間接続装置。 - 第1の回線に接続された第1の通信装置と、
伝送誤りの生じる蓋然性が前記第1の回線より高い第2の回線に接続された第2の通信装置と、
請求項1〜4のいずれかに記載のネットワーク間接続装置とを備えたことを特徴とする通信システム。
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