JP3707499B1 - 摺動部分を備える機器のダストの除去方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 油空圧機器又は水圧機器の往復運動部分の摺動面に形成される液体状潤滑剤の潤滑皮膜の表面及びその近傍に存在して、この摺動面に付着する付着性ダストを、樹脂繊維束集合体及び複数の樹脂繊維により絡め取り、これにより、この付着性ダストが往復運動部分の内部へ侵入することを、長期間にわたって確実に防止又は抑制する。
【解決手段】付着性ダスト4を、複数の超極細の樹脂繊維6を束ねた多数の束7を網目状に連続形成される樹脂繊維束集合体と、これら多数の束7をそれぞれ部分的に結合する加硫ゴム弾性体による加硫結合強化部分8とを備え、内部に液体状潤滑材を保持及び通過させることができるとともに保持した液体状潤滑剤を毛細管現象によって摺動面2aへ供給することができる空間9を形成された不織布構造を有するワイパリング部材1における樹脂繊維束集合体及び複数の樹脂繊維により絡め取る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、摺動部分を備える機器のダストの除去方法に関する。具体的に例示すると、本発明は、油空圧機器又は水圧機器の往復運動部分の摺動面に存在するダストが、この往復運動部分の内部へ侵入することを、長期間にわたって防止又は抑制できるダストの除去方法に関する。
摺動部分を備える機器のこの摺動部分、例えば、油空圧機器や水圧機器等におけるピストンやシリンダ等の往復運動部分では、外部から内部へ異物やダストが侵入することをワイパリング部材により阻止すること(以下、本明細書ではこのようなダスト侵入阻止対策を「ワイパリング」という)により、内部機器の保護を図っている。油空圧機器や水圧機器では、一般的に、往復運動部分の潤滑剤として作動油やグリースが使用されており、往復運動部分の摺動面にはこれらによる潤滑皮膜が形成されている。このため、通常、形成された潤滑皮膜をワイパリングにより必要以上に掻き取らないようにするため、ワイパリング部材の先端に微小な曲率の面取り部を形成するとともにこの先端を摺動面から潤滑皮膜の厚み程度離間させて配置している。
このようなワイパリング部材に要求される機能を大別すると、(a)ワイパリング部材を潤滑皮膜上を滑らせてその表面に存在するダストを拭うことによって、摺動面に付着したダストを拭い取ること、(b)ワイパリング部材を摺動面上を滑らせて摺動面に固着・粘着したダストを掻き取ること、(c)摺動面の表面における潤滑皮膜をコントロールすることによって、潤滑剤の外部への掻き出し漏れを防止すること、及び(d)油空圧機器や水圧機器のパッキンや軸受部へ潤滑剤を供給及び保持することにより、内部潤滑を維持すること等である。
要求されるこれらの機能を具備するために、ワイパリング部材の材質として、繊維質、合成ゴム、金属さらには樹脂が知られている。
繊維質として、例えば皮革、フェルトさらには各種の繊維類が知られている。繊維質からなるワイパリング部材は、ダストを拭い取る機能を有するため、微細粉塵や繊維等といった摺動面に絡み付くようにして密着するダストに適している。
合成ゴムとして、例えばNBR、AU/EU、FKM等が知られている。合成ゴムからなるワイパリング部材はダストを拭い取る機能を有し、ゴムが有する弾性、柔軟性さらには密着性が気体や液体の侵入防止にも適しているため、現在のワイパリングの主流となっている。
金属として、例えば銅合金、アルミニウム合金さらにはステンレス鋼等が知られている。金属からなるワイパリング部材は、氷結、霜、溶接のスパッタ、タール、泥さらには貝殻等の、強固に固着及び粘着したダストを掻き落とすスクレーパ機能を専ら有する。このため、金属からなるワイパリング部材は、他の機能を有するワイパリング部材と併用される。
さらに、樹脂としてはPTFE、PAさらにはPOM等が知られている。樹脂からなるワイパリング部材は、金属と合成ゴムの中間的な特性を有し、ダストを拭い取る機能と、固着及び粘着したダストを掻き落とす機能とを併せ持っている。
そして、実際に使用されるワイパリング部材は、使用環境等を勘案して要求される機能を把握し、この機能を満足することができる材質、形状さらには接触面圧等が適宜決定されて、選定される。
ところで、理髪店における理容椅子作動用シリンダに付着する散髪屑、紡織機械等の摺動部分に付着する繊維屑、さらには、製本機械等における摺動部分に付着する紙粉等のダスト(本明細書では、これらの機械の摺動部分の摺動面に形成される液体状潤滑剤の潤滑皮膜の表面及びその近傍に存在してこの摺動面に絡み付くようにして付着するダストを「付着性ダスト」という)や、製鉄設備機械又は精錬設備機械の摺動部分に付着する鉄粉、さらには、屋外環境設備やセラミックス加工機械設備等の摺動部分に付着する粉体等のダスト(本明細書では、これらの機械の摺動部分の摺動面に形成される液体状潤滑剤の潤滑皮膜の内部に存在する微細なダストを「粒子状異物」という)に対するワイパリングを行うには、上述したこれまでの技術常識にしたがえば、繊維質のワイパリング部材を用いればよいと一見考えられる。
しかしながら、本発明者が検討した結果によると、付着性ダスト又は粒子状異物のいずれに対して従来の繊維質のワイパリング部材を用いてワイパリングを行っても、繊維の脱落や収縮に起因してシール部への異物噛み込みや機能低下を生じてしまい、十分なワイパリング効果を長期間にわたって維持できないことが判明した。
本発明は、摺動部分を備える機器のこの摺動部分の摺動面に形成される液体状潤滑剤の潤滑皮膜の表面及びその近傍に存在してこの摺動面に付着する付着性ダストの、摺動部分の内部への侵入を、この摺動面に、複数の樹脂繊維を束ねた束を多数絡ませた樹脂繊維束集合体と、これら多数の束をそれぞれ部分的に結合する加硫ゴム弾性体による加硫結合強化部分とを備え、かつ、内部に液体状潤滑材を保持及び通過させることができるとともに保持した液体状潤滑剤を毛細管現象によって摺動面へ供給することができる立体的な連通空間を備える不織布構造を有するワイパリング部材を当接して、付着性ダストを樹脂繊維束集合体及び複数の樹脂繊維により絡め取り、付着性ダストを除去された液体状潤滑剤を摺動部分の内部へ導くことによって、阻止することを特徴とする摺動部分を備える機器のダストの除去方法である。
この本発明に係る摺動部分を備える機器のダストの除去方法では、付着性ダストが、理髪店における理容椅子作動用シリンダに付着する散髪屑、紡織機械の摺動部分に付着する繊維屑、又は、製本機械の摺動部分に付着する紙粉であることが例示される。
ここで、上記散髪屑は、長さが0.1〜10mm程度であるとともに太さが0.03〜0.15mm程度のものである。また、上記繊維屑は、長さが0.03〜30mm程度であるとともに太さが0.01〜0.2mm程度のものである。さらに、紙粉は、0.1〜5mm程度の長さと0.01〜5mm程度の厚さを有するものである。上述した本発明に係る摺動部分を備える機器のダストの除去方法によれば、これらの寸法及び性状を有する付着性ダストを、ワイパリング部材を構成する樹脂繊維束集合体及び複数の樹脂繊維によって絡め取ることができ、これにより、この付着性ダストが摺動部分を備える機器の摺動部分の内部へ侵入することを長期間にわたって阻止又は軽減することが可能となり、油空圧機器又は水圧機器の保護を確実に図ることができる。
別の観点からは、本発明は、摺動部分を備える機器のこの摺動部分の摺動面に形成される液体状潤滑剤の潤滑皮膜の内部に存在する粒子状異物の、摺動部分の内部への侵入を、この摺動面に、複数の樹脂繊維を束ねた束を多数絡ませた樹脂繊維束集合体と、これら多数の束をそれぞれ部分的に結合する加硫ゴム弾性体による加硫結合強化部分とを備え、かつ、内部に液体状潤滑材を保持及び通過させることができるとともに保持した液体状潤滑剤を毛細管現象によって摺動面へ供給することができる立体的な連通空間を備える不織布構造を有するワイパリング部材を当接して、粒子状異物を、ワイパリング部材から供給される液体状潤滑剤の流動効果によって摺動面の近傍に浸透分散させて粒子状異物が潤滑皮膜の表面に堆積することを緩和しながら、樹脂繊維束集合体及び複数の樹脂繊維により漉し取り、粒子状異物を除去された液体状潤滑剤を摺動部分の内部へ導くことによって、阻止することを特徴とする摺動部分を備える機器のダストの除去方法である。
この本発明に係る摺動部分を備える機器のダストの除去方法では、粒子状異物が、製鉄設備機械又は精錬設備機械等の摺動部分に付着する金属、又は、屋外環境設備又はセラミックス加工機械加工設備の摺動部分に付着する砂粒であることが例示される。
ここで、上記金属は、径が0.005〜0.1mm程度のものである。また、砂粒は、0.005〜0.1mm程度の径を有するものである。上述した本発明に係る摺動部分を備える機器のダストの除去方法によれば、これらの寸法及び性状を有する粒子状異物を、樹脂繊維束集合体及び複数の樹脂繊維により漉し取ることができ、これにより、この粒子状異物が油空圧機器又は水圧機器の摺動部分の内部へ侵入することを長期間にわたって阻止又は軽減することが可能となり、摺動部分を備える機器の保護を確実に図ることができる。
本発明に係る摺動部分を備える機器のダストの除去方法により、付着性ダストを、樹脂繊維束集合体及び複数の樹脂繊維により絡め取ることができ、これにより、この付着性ダストが摺動部分の内部へ侵入することを、長期間にわたって防止又は抑制することができる。
また、本発明に係る摺動部分を備える機器のダストの除去方法により、粒子状異物を、ワイパリング部材から供給される液体状潤滑剤の流動効果によって摺動面の近傍に浸透分散させて粒子状異物が潤滑皮膜の表面に堆積することを緩和しながら、樹脂繊維束集合体及び複数の樹脂繊維により漉し取ることができ、これにより、この粒子状異物が摺動部分の内部へ侵入することを、長期間にわたって防止又は抑制することができる。
以下、本発明に係る摺動部分を備える機器のダストの除去方法を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の説明では、摺動部分を備える機器が油空圧機器又は水圧機器である場合を例にとる。
図1は、この実施の形態における油空圧機器又は水圧機器の摺動部分である往復運動部分2の構成を模式的に示す説明図である。油空圧機器又は水圧機器の往復運動部分2の摺動面2aには、水や油、又は液体状グリス等からなる液体状潤滑剤の潤滑皮膜3が形成されている。
この潤滑皮膜3の表面及びその近傍には、付着性ダスト4が存在する。本実施の形態における付着性ダスト4は、上述したように、(a)理髪店における理容椅子作動用シリンダに付着する髪の毛を意味し、長さが0.1〜10mm程度,太さが0.03〜0.15mm程度のものである散髪屑、(b)紡織機械等の摺動部分に付着する繊維を意味し、長さが0.03〜30mm程度,太さが0.01〜0.2mm程度のものである繊維屑、又は、(c)例えば製本機械等の摺動部分に付着する紙を意味し、0.1〜5mm程度の長さと、0.01〜5mm程度の厚さを有する紙粉である。
これら散髪屑、繊維屑又は紙粉等の各種の付着性ダスト4は、いずれも、摺動面2aに絡み付くように付着する。
また、この潤滑皮膜3の内部には、粒子状異物5が存在する。本実施の形態における粒子状異物5は、上述したように、(d)製鉄設備機械又は精錬設備機械等における摺動部分に付着する金属を意味し、径が0.005〜0.1mm程度度のものである微細な金属、又は、(e)屋外環境設備又はセラミックス加工機械加工設備の摺動部分に付着する砂粒を意味し、0.005〜0.1mm程度の径を有するものである砂粒である。
これらの粒子状異物5は、通常の繊維質からなるワイパリング部材として周知慣用されるフェルトリングでは、径が小さ過ぎるために除去されずに、往復運動部分2の内部に侵入する。また、繊維の脱落や収縮に起因してシール部への異物噛み込みや機能低下を生じてしまい、十分なワイパリング効果を長期間にわたって維持することができない。
本実施の形態では、付着性ダスト4又は粒子状異物5の往復運動部分2の内部への侵入を、この摺動面2aにワイパリング部材1を当接することにより阻止する。そこで、次に、このワイパリング部材1を説明する。
このワイパリング部材1は、複数の樹脂繊維6を束ねた束7を多数、立体的な連通空間を形成するように絡ませた樹脂繊維束集合体と、これら多数の束7をそれぞれ部分的に結合する加硫ゴム弾性体による加硫結合強化部分とを備えるものである。
本実施の形態では、樹脂繊維6として、外径が例えば0.04デニール以上0.19デニール以下の超極細樹脂繊維を用いた。また、樹脂繊維として、例えばポリエステル繊維やナイロン繊維を用いることが好適である。しかし、本発明はこれらの樹脂繊維や上述した超極細の外径に限定されるものではない。樹脂繊維6は、上述したように、付着性ダスト4を絡め取るとともに粒子状異物5を絡め取ることができる樹脂繊維束集合体及び複数の樹脂繊維を構成できる樹脂繊維であれば、等しく適用される。
本実施の形態のワイパリング部材1は、この樹脂繊維6を複数本ずつ適宜手段により束ねて束7とし、これら束7を立体的な連通空間を形成するように絡ませた樹脂繊維束集合体により、基本となる骨格を構成している。
そして、これら束7は、加硫ゴム弾性体による加硫結合強化部分8を形成されており、これにより一体的に構築される。
このように、本実施の形態のワイパリング部材1は、複数の樹脂繊維6を束ねた多数の束7を絡ませた樹脂繊維束集合体を基本骨格とし、これら多数の束7をそれぞれ部分的に結合する加硫ゴム弾性体による加硫結合強化部分8とを備える不織布構造を有することから、その内部には、立体的な連通空間9が網目状に連続形成される。
この空間9は、潤滑皮膜3を構成する液体状潤滑材を保持及び通過させることができるとともに、保持したこの液体状潤滑剤を毛細管現象によって摺動面2aへ供給することができる。
このワイパリング部材1は、適当な手段により形成されればよく、特定の手段には限定されない。例えば、多数の超極細ポリエステル繊維2からなる樹脂繊維束集合体3を不織布構造としたものの表面に、未加硫の液状ポリウレタンゴムをコーティングし、余剰の液状ポリウレタンゴムを吸引除去した後に加硫結合することにより加硫結合強化部分4を形成して構造体とし、この構造体から、所定の形状のワイパリング部材として切り出すことにより、製造することが、例示される。
本実施の形態のワイパリング部材1は、以下に列記する機能(i)〜(iv)を有する。
(i)液体状潤滑剤からなる潤滑皮膜3が形成された摺動面2aに当接させると、空間9と、束ねられた複数の樹脂繊維6の間の空隙との相乗的効果により、潤滑皮膜3をなす液体状潤滑剤を通過させるが、付着性ダスト4を絡め取るとともに粒子状異物5を通過させずに漉し取るフィルタ機能を有する。
(ii)空間9と、束ねられた複数の樹脂繊維6の間の空隙とにより、内部に液体状潤滑材を高い割合で含浸及び保持する液体保持機能と、このようにして内部に保持した液体状潤滑剤を、毛細管現象により摺動面2aへ供給する液体供給機能とを併せ持つ。
これら液体保持機能及び液体供給機能をともに有することにより、含浸及び保持した液体状潤滑剤を、摺動面2aに安定して供給及び塗布することができ、これにより、往復運動部分2の運動時に摺動面2aにおいて余剰となった液体状潤滑剤を、空間9と、束ねられた複数の樹脂繊維6の間の空隙とに吸収し、これを再度摺動面2aに供給することができる。したがって、液体状潤滑剤からなる潤滑皮膜3を摺動面2aにむらなく安定的に形成することができ、この摺動面2aに設けられたパッキン等の摩耗を可及的に抑制できるため、摩耗粉等が発生することによる往復運動部分3の表面に生じる黒ズミや汚れを低減できる。
(iii)上述した液体保持機能及び液体供給機能を有することにより、潤滑皮膜3を構成する液体状潤滑剤を、積極的に流動させることができ、これにより、微細金属や砂粒等の微細な粒子状異物5がこの液体状潤滑剤の流動効果によって摺動面2aの近傍、すなわち潤滑皮膜3の内部へ浸透して分散するようになり、粒子状異物5が潤滑皮膜3の表面に偏って堆積することが緩和される。これにより、コンタミシール/ダストワイパ機能が高まり、いわゆる濡れ雑巾効果が奏せられる。
(iv)ワイパリングに供しても、束ねられた複数の樹脂繊維6が脱落することなく、長期間にわたって安定して、上述した各機能が奏せられる。
すなわち、上述した各機能(i)〜(iii)は、繊維質からなるワイパリング部材として周知慣用されるフェルトリングでもある程度得られる。しかしながら、本発明者らの知見によれば、このフェルトリングにより構成されたワイパリング部材を摺動面2aに当接することにより、上述した付着性ダスト4、粒子状異物5のワイパリングを行うと、ワイパリング時にフェルトリングから繊維が早期に脱落し、脱落した繊維が往復運動部分2の内部に入り込み、シール部10や軸受部11に噛み込むことによる密封機能障害や、繊維が縮んで固くなること等による収縮、変形問題等を早期に生じてしまい、長期間にわたって安定してワイパリング効果を維持することができなくなる。
フェルトリングからの繊維の脱落を抑制するために、エストラマーや、樹脂に繊維状の充填材を混入した部材(布入りゴムや繊維強化プラスチック類)により構成されたワイパリング部材を用いると、上述したフィルタ機能が消失してしまう。また、シール部材との間に蓄圧による異常な摩擦や破損等も引き起こされる。
これに対し、本実施の形態のワイパリング部材1は、上述した機能(i)〜(iv)を全て備えるため、付着性ダスト4や粒子状異物5が往復運動部分2の内部へ侵入することを、長期間にわたって確実に防ぐことができる。
なお、本実施の形態のワイパリング部材1は、上述したように、複数の樹脂繊維6を束ねた多数の束7を絡ませた樹脂繊維束集合体と、これら多数の束7をそれぞれ部分的に結合する加硫ゴム弾性体による加硫結合強化部分8とを備え、内部に液体状潤滑材を保持及び通過させることができるとともに保持した液体状潤滑剤を毛細管現象によって摺動面2aへ供給することができる立体的な連通空間9を備える不織布構造を有するという構造であるために、摺動面2aの表面に存在する凹凸の内部にまで密着して追随することができるために、確実に付着性ダスト4及び粒子状異物5をいずれも除去することができる。
このため、この本実施の形態におけるワイパリング部材1を摺動面2aに当接することにより、付着性ダスト4を樹脂繊維束集合体及び複数の樹脂繊維6により絡め取ることができ、これにより、付着性ダスト4が往復運動部分2の内部へ侵入することを長期間にわたって確実に防止又は抑制できるとともに、粒子状異物5を、ワイパリング部材1から供給される液体状潤滑剤の流動効果によって摺動面2の近傍に浸透分散させて粒子状異物5が潤滑皮膜3の表面に偏って堆積することを緩和しながら、樹脂繊維束集合体により漉し取ることができ、これにより、この粒子状異物5が往復運動部分2の内部へ侵入することを長期間にわたって確実に防ぐことができる。
本実施の形態では、このようにして、油空圧機器又は水圧機器のダストを除去することが可能となる
本発明を実施例を参照しながら、さらに具体的に説明する。
理髪椅子昇降用油圧シリンダのロッド径は通常25mmであり、長さが0.5〜30mm、太さが0.03〜0.13mmの散髪屑(付着性ダスト)が存在する環境下(油温25〜35℃)で使用され、0.1〜3.5MPaの油圧が作用し、作動速度:50〜100mm/sec、ストローク:110mmである。そして、散髪屑がシリンダ内に侵入し、内部に装着された油切り用シール材のリップ部に噛み込むことにより、油漏れを発生する。
また、紡織機械の糸巻取り用空気圧ダンパのピストン径は通常20mmであり、長さが0.05〜2mm、太さが0.01〜0.03mmの浮遊繊維屑(付着性ダスト)及び粘着性油脂分が存在する環境下(室温)で使用され、0.05〜0.2MPaの空気圧が作用し、作動速度:1〜200mm/sec,ストローク:50〜60mmである。そして、エアリザーバ側から工場内に浮遊する浮遊繊維屑及び油脂分が侵入し、摺動面に付着・堆積するために作動不良が発生する。
また、製鉄設備機械、精錬設備機械さらには溶接設備機械に使用するエアシリンダのピストン径は通常20〜63mmに相当し、最大径が5μm以下の鉄錆等の浮遊金属粉(粒子状異物)が存在する環境下(室温)で使用され、最大1MPaの空気圧が作用し、作動速度:10〜500mm/sec,ストローク:30〜1000mmである。そして、内部に金属粉が侵入し、エア漏れが発生する。
また、工作機械用油圧ロックシリンダのピストン径は通常50mmであり、長さが0.1〜5mm、厚みが0.01〜1mmの金属加工に伴う金属粉(粒子状異物)が存在する環境下(室温〜80℃の温度域)で使用され、5MPaの油圧が作用し、作動速度:20〜25mm/sec,ストローク:8〜15mmである。そして、堆積した金属粉等によりピストンシールや軸受け部及びシリンダチューブの内面にかじり傷が進行し、油漏れが発生する。
また、農作業用特殊車両の油圧単動リフトシリンダのピストン径は通常40〜80mmであり、粒径が0.1mm以下の砂塵(粒子状異物)や湿気がエアリザーバ側から内部に侵入する環境下(外気温)で使用され、14MPaの油圧が作用し、作動速度:10〜200mm/sec,ストローク:200〜400mmである。そして、季節稼働のため侵入した湿気に伴う錆や農作業特有の屋外環境ダストがシリンダ内部に堆積する等によりピストンシールや軸受け部摺動面の早期摩耗や異物の噛込による油漏れが発生する。
さらに、磁性ダンパのロッド部シール保護用コンタミシールは、粒径が5μm以下の磁性流体中の鉄粉(粒子状異物)が存在する環境下(−35〜+135℃(常用:−5〜+80℃))で使用され、1MPa以下の圧力が作用し、作動速度:0〜1000mm/sec,ストローク:0〜6mm(最大20mm)である。そして、使用に伴ってシール部に侵入〜堆積し、油漏れが発生する。
本実施例では、このような様々な使用環境及び使用条件、さらには付着性ダストや粒子状異物の性状を考慮して、以下に説明する条件で確認実験を行った。
すなわち、本確認実験では、ロッド径が25mmのピストンを備える油圧シリンダ又はエアシリンダのシリンダロッドの外周面に、図1を参照しながら説明した本発明に係るワイパリング部材1と、図2に示す従来の標準的なリップ型のワイパリング部材20と、図3に示す従来の潤滑皮膜掻き取り性能が高いワイパリング部材21と、繊維質からなるワイパリング部材として周知慣用されるフェルトリングからなるワイパリング部材(図示しない)とを装着し、付着性ダストである散髪屑(長さ約5mm、太さ約70μm)、繊維屑(長さ約3mm、厚み約30μm)及び鉄粉(粒径5μm前後)と、粒子状異物である砂塵(関東ローム層、粒径30μm前後)及び砂塵(珪砂、粒径5μm前後)とに対するワイパリング性を、それぞれ試験No.1〜5として、評価した。
なお、図2に示すワイパリング部材20は、ダストリップとして油圧シリンダや空気圧シリンダにおいて既に使用されているものであり、図2の拡大図に示すように、外部への潤滑皮膜3の掻き出し量を低減するために、ワイパリング部材20の先端部に微小な曲率の面取り部を形成することにより、ダストシール性と外部漏れ防止性とを微妙に調整している。
また、図3に示すワイパリング部材21は、SDBスクレーパ(強力スクレーパ)として油圧シリンダや空気圧シリンダにおいて既に使用されているものであり、図3の拡大図に示すように、ワイパリング部材21の先端部をシャープエッジとすることにより摺動面2aの凹凸面の近くまで接近して潤滑皮膜3の内部に存在するダストの多くを除去しようとするものである。
なお、この確認実験では、シリンダロッドの外周面に付着性ダスト又は粒子状異物を付着せずに10万回作動させ(作動条件A)、作動油の外部漏れの有無を確認した後に、シリンダロッドの外周面に付着性ダスト又は粒子状異物を付着してさらに5万回作動させた(作動条件B)。作動時のシリンダの油圧は一次側:2.4MPa、二次側:3.5MPaであり、シリンダストロークは110mmであり、サイクルは15cpmとした。
そして、作動条件A、Bにおける外部漏れ(滴下+周辺に付着した油の秤量)の状況を確認するとともに、シリンダを分解して付着性ダスト又は粒子状異物の侵入状況を調査した。結果を表1にまとめて示す。
Figure 0003707499
表1に示す結果から明らかなように、試験No.1〜5のいずれにおいても、ワイパリング部材20を用いて付着性ダスト及び粒子状異物に対して行ったワイパリングを行っても、粒子状異物の侵入を防止することはできないとともに付着性ダストに対しては一時的には掻き溜められる(シールリップ先端部に付着する)が、摺動運動の繰り返しにより、やがて内部に引き込まれてしまい、付着性ダスト及び粒子状異物のいずれもが油圧シリンダの内部に侵入することを長期間にわたって確実に防止することはできなかった。
また、ワイパリング部材21を用いて付着性ダスト及び粒子状異物に対して行ったワイパリングを行うと、潤滑皮膜3をも不可避的に掻き出してしまうために外部油漏れを起こしやすく、また摺動面2aの凹凸面に入り込んだ細かな粒子や、摺動面2aの表面に密着した繊維状の異物を除去することは難しいため、付着性ダスト及び粒子状異物のいずれもが油圧シリンダの内部に侵入することを長期間にわたって確実に防止し、又は低減することはできなかった。
さらに、表1には示していないが、繊維質からなるワイパリング部材として周知慣用されるフェルトリングからなるワイパリング部材を用いて付着性ダスト又は粒子状異物に対して行ったワイパリングを行ったケースでは、ワイパリング時にフェルトリングから繊維が早期に脱落し、脱落した繊維が往復運動部分2の内部に入り込み、シール部10や軸受部11に噛み込むことによる密封機能障害や、繊維が縮んで固くなること等による収縮、変形問題等を早期に生じてしまい、長期間にわたって安定してワイパリング効果を維持することができなかった。
これに対し、ワイパリング部材1を用いてワイパリングを行うと、付着性ダスト及び粒子状異物のいずれもが油圧シリンダの内部に侵入することを長期間にわたって確実に防止できた。
そこで、このワイパリング部材1を、上述した理髪椅子昇降用油圧シリンダのロッド、紡織機械の糸巻取り用空気圧ダンパのピストン、製鉄設備機械、精錬設備機械さらには溶接設備機械に使用するエアシリンダのピストン、さらには、工作機械用油圧ロックシリンダのピストン、農作業用特殊車両の油圧単動リフトシリンダのピストンに装着するとともに、磁性ダンパのロッド部シール保護用コンタミシールとして用いて、長期間試験を行った。
その結果、いずれの場合にも、図2に示すワイパリング部材20を用いた従来のシステムに比べて2倍以上という実用上十分な耐久性が得られており、本発明に係る油空圧機器又は水圧機器のダストの除去方法の優秀性を確認できた。
(変形例)
上述した実施の形態及び実施例では、摺動部分を備える機器の代表例として、例えば油圧シリンダや空気圧シリンダ等の油空圧機器、又は水圧シリンダ等の水圧機器を例にとって、ダストワイパとして外部ダストの侵入防止を図る場合を説明したが、軸受け部やシール部への油中コンタミの侵入や噛込みを防止する場合や、摺動部分の潤滑を保持及び供給する場合にも、同様に適用することができる。
また、本発明を適用可能な「摺動部分を備える機器」としては、上述した油圧シリンダや空気圧シリンダ等の油空圧機器や水圧シリンダ等の水圧機器以外に、以下に列記する機器(a)〜(m)に対して[]内に記載した目的を達成する場合にも、同様に適用可能である。
(a)軸受けやガイド等といった、往復、回転、揺動又は螺旋動する摺動部分を備える各種機器[外部ダストの侵入防止、摺動部分の潤滑の保持及び供給]
(b)スライドテーブル類といった平面摺動部を備える工作機械[外部ダストの侵入防止、摺動部分の潤滑の保持及び供給]
(c)スライド部を備えるリニアガイドアクチュエータ[外部ダストの侵入防止、摺動部分の潤滑の保持及び供給]
(d)リニアガイド等といった、螺旋動しながら摺動するボールねじ摺動部を備える機器[外部ダストの侵入防止、摺動部分の潤滑の保持及び供給]
(e)スプール弁等の、往復又は回転するバルブ駆動部を備える油圧電磁弁[軸受け部及びシール部への油中コンタミの侵入・噛込み防止、摺動部分の潤滑の保持及び供給]
(f)スプール弁等の、往復又は回転するバルブ駆動部を備える空気圧電磁弁[軸受け部及びシール部への油中コンタミの侵入・噛込み防止、摺動部分の潤滑の保持及び供給]
(g)油圧又は水圧の軸受けやガイド部等の、往復、回転、揺動又は螺旋動する、潤滑剤を封入された摺動部を備える機器[潤滑剤の液ダレ防止]
(h)水圧シリンダ等の水圧機械[外部漏れ遅延(滞留〜乾燥促進)]
(i)往復、回転、揺動又は螺旋動する摺動部を備える真空機器[潤滑の保持及び供給]
(j)往復、回転、揺動又は螺旋動する摺動部を備える溶接機械[外部ダストの侵入防止]
(k)ダンパや精密機器等の磁性流体を使用する機器[シール部への油中コンタミの侵入・噛込み防止]
(l)各種産業機器用ショックアブソーバ[シール部への油中コンタミの侵入・噛込み防止]
(m)粉体押し出しシリンダを備える粉体搬送機[シール部への油中コンタミの侵入・噛込み防止]
実施の形態における油空圧機器又は水圧機器の往復運動部分の構成を模式的に示す説明図である。 従来例の油空圧機器又は水圧機器の往復運動部分の構成を模式的に示す説明図である。 従来例の油空圧機器又は水圧機器の往復運動部分の構成を模式的に示す説明図である。
符号の説明
1 本発明に係るワイパリング部材
2 往復運動部分
2a 摺動面
3 潤滑皮膜
4 付着性ダスト
5 粒子状異物
6 樹脂繊維
7 束
8 加硫結合強化部分
9 空間
10 シール部
11 軸受部

Claims (4)

  1. 摺動部分を備える機器の当該摺動部分の摺動面に形成される液体状潤滑剤の潤滑皮膜の表面及びその近傍に存在して該摺動面に付着する付着性ダストの、前記摺動部分の内部への侵入を、
    該摺動面に、複数の樹脂繊維を束ねた束を多数絡ませた樹脂繊維束集合体と、該多数の束をそれぞれ部分的に結合する加硫ゴム弾性体による加硫結合強化部分とを備え、かつ、内部に前記液体状潤滑材を保持及び通過させることができるとともに保持した液体状潤滑剤を毛細管現象によって前記摺動面へ供給することができる立体的な連通空間を備える不織布構造を有するワイパリング部材を当接して、前記付着性ダストを前記樹脂繊維束集合体及び前記複数の樹脂繊維により絡め取り、該付着性ダストを除去された液体状潤滑剤を前記摺動部分の内部へ導くこと
    によって、阻止することを特徴とする摺動部分を備える機器のダストの除去方法。
  2. 前記付着性ダストは、理髪店における理容椅子作動用シリンダに付着する散髪屑、紡織機械の摺動部分に付着する繊維屑、又は、製本機械の摺動部分に付着する紙粉である請求項1に記載された摺動部分を備える機器のダストの除去方法。
  3. 摺動部分を備える機器の当該摺動部分の摺動面に形成される液体状潤滑剤の潤滑皮膜の内部に存在する粒子状異物の、前記摺動部分の内部への侵入を、
    該摺動面に、複数の樹脂繊維を束ねた束を多数絡ませた樹脂繊維束集合体と、該多数の束をそれぞれ部分的に結合する加硫ゴム弾性体による加硫結合強化部分とを備え、かつ、内部に前記液体状潤滑材を保持及び通過させることができるとともに保持した液体状潤滑剤を毛細管現象によって前記摺動面へ供給することができる立体的な連通空間を備える不織布構造を有するワイパリング部材を当接して、前記粒子状異物を、前記ワイパリング部材から供給される液体状潤滑剤の流動効果によって前記摺動面の近傍に浸透分散させて該粒子状異物が前記潤滑皮膜の表面に堆積することを緩和しながら、前記樹脂繊維束集合体及び前記複数の樹脂繊維により漉し取り、前記粒子状異物を除去された液体状潤滑剤を前記摺動部分の内部へ導くこと
    によって、阻止することを特徴とする摺動部分を備える機器のダストの除去方法。
  4. 前記粒子状異物は、製鉄設備機械又は精錬設備機械等の摺動部分に付着する金属、又は、屋外環境設備又はセラミックス加工機械加工設備の摺動部分に付着する砂粒である請求項3に記載された摺動部分を備える機器のダストの除去方法。
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