JP3706884B2 - オオサカスジコガネの性誘引剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、鞘翅目コガネムシ科に属するオオサカスジコガネ(学名Anomala osakana)の誘引剤に関するものであり、詳細には、オオサカスジコガネの防除に有効な性誘引剤に関する。
【0003】
【従来の技術】
【0004】
鞘翅目コガネムシ科に属するオオサカスジコガネの成虫は、主に本州や九州において多く発生して芝草に大害を与えている。
【0005】
このオオサカスジコガネによる被害を予防ないし防除することは、従来の殺虫剤によっては、非常に困難であり、このような現状から、この害虫を効果的に防除するために、その発生を的確に知るための予察手段や、従来の殺虫剤とは異なる新しいタイプの防除手段が強く望まれている。
【0006】
一方、これまで、多くの害虫については、性フェロモンや集合フェロモンの化学構造が明らかにされた。
【0007】
また害虫の種類によっては、これらフェロモン剤を用いてその発生消長調査が効果的に行えるようになり、さらに、これらの誘引物質を用いて、大量の成虫を捕獲したり、雌雄の配偶行動を錯乱したりすることによって害虫を防除する方法も開発されつつある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、オオサカスジコガネの防除に有効な性誘引剤は、知られていない。
【0010】
したがってオオサカスジコガネの防除効果に優れた性誘引剤が望まれていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、このような背景のもとに、オオサカスジコガネの性フェロモンの研究を行い、オオサカスジコガネの雌成虫から、その雄成虫に対して誘引性を有する成分を取り出し、その活性成分物質の化学構造を解明し、その化学構造により合成した化合物がオオサカスジコガネ雄成虫に対して有効な誘引作用を示すことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0014】
第1に、(S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕を、活性成分として含有する、オオサカスジコガネの性誘引剤。
【0015】
第2に、(S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕を活性成分として含有する化合物を、デバイスで担持した、オオサカスジコガネの性誘引剤。
【0016】
本発明にかかる誘引剤の活性成分である(S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕は、オオサカスジコガネの雄成虫に対して誘引作用と行動刺激作用を示す。
【0017】
本発明にかかる誘引剤を調製するには、(S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕を用いて、通常性誘引剤の調製に際して適用されている製剤化技術を利用して行うことが出来る。
【0018】
例えば、(S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕をそのまま、またはジクロルメタン等の有機溶媒を用いて溶液とし、この溶液を適当なデバイス、例えばポリエチレン等のプラスチックやゴム等に吸着させるか、プラスチック製のカプセルや毛細態様に応じた適切な材料あるいは器具を用いて実用的な形態の誘引剤とすることが出来る。
【0019】
【実施例1】
【0020】
以下に、本発明にかかる誘引剤の一実施例について説明する。
【0021】
まず、誘引成分物質の同定を行うため、成分物質を、ガスクロマトグラフに直結した生物電気検出器を用い、触覚が活性物質を受容した時に発生する神経電位の変化を検出する方法によって追跡した。
【0022】
オオサカスジコガネの雌成虫を野外採集後、ガラス製容器に収容し、清浄な空気を供給しつつ雄成虫の周囲の空気を、多孔性ポリマービーズ(Alltech社のSuper Q:商品名)を充填したカラムに、一夜通じた。
【0023】
その直後、テナックスカラムにヘキサンを通じることによって抽出物を得た。
【0024】
この抽出物をガスクロマト分析したところ、多数の成分が認められた。
【0025】
そこで、ガスクロマトグラフィー・直結触角電位検出器法(GC−EAD)を用いて、活性のある成分を調べたところ、図1に示すように、1つのEAD活性なピークが認められた。
【0026】
この1つの成分は、HP−5MSカラムを用いて、ガスクロマトグラフ直結質量分析計(GC−MS分析)に注入して分析したところ、5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オンと同定された。さらにChiraldexGTAカラムに注入すると、18.2minに1本のピークが現れた。
【0027】
別途合成された(S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕をChiraldex GTAカラムで比較したところ、18.2minにピークが認められ活性天然物と一致した。また別途合成された〔(R)−エナンチオマー〕のR.Tは15.1minであった。
【0028】
以上の結果から、鞘翅目コガネムシ科に属するオオサカスジコガネに対してきわめて高い誘引作用を示す物質(天然物)は、(S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕であることが決定された。
【0029】
なお、化学合成により得られた(S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕をガスクロマトグラフィー・直結触角電位検出器(GC−EAD)に付したところ、明確にEADの応答が記録できた。
【0030】
次に、(S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕を用いて、本発明に係る性誘引剤を調製した。
【0031】
そして、該性誘引剤(1mg)を、エチレン酢酸ビニールの共重合体からなるペレットに含浸させて性誘引剤Aとした。
【0032】
【比較例1】
【0033】
(S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕と(R,Z)(−)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(R)−エナンチオマー〕とを、95:5となるように混合することで、性誘引剤を調製した。
【0034】
そして、該性誘引剤(1mg)を、エチレン酢酸ビニールの共重合体からなるペレットに含浸させて性誘引剤Bとした。
【0035】
【比較例2】
【0036】
(R,Z)(−)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(R)−エナンチオマー〕のみを用いて、性誘引剤を調製した。
【0037】
そして、該性誘引剤(1mg)を、エチレン−酢酸ビニールの共重合体からなるペレットに含浸させて性誘引剤Cとした。
【0038】
【試験例1】
【0039】
本発明区1として、上記実施例1で得た誘引剤Aを入れたプラスチック容器を10個用意した。
【0040】
対照区1として、上記比較例1で得た性誘引剤Bを納めたプラスチック容器を10個用意した。
【0041】
対照区2として、上記比較例2で得た性誘引剤Cを納めたプラスチック容器を10個用意した。
【0042】
対照区3として、中に何も入れない空のプラスチック容器を、10個用意した。
【0043】
上記で用意した各区10個ずつのプラスチック容器を、それぞれ粘着捕虫器にセットして、各区について10個ずつのトラップを用意した。
【0044】
これらのトラップを用い、静岡県の浜松シーサイドカントリークラブに於いて6月29日から6月30日にかけて、同一環境条件下でオオサカスジコガネの捕虫試験を行い、各区について、雄成虫の1時間あたりの平均捕虫数を求めた。
【0045】
試験の結果は下記のとおりであった。
【0046】
本発明区の1トラップあたりの平均捕虫数は44匹/1時間であった。
対照区1の1トラップあたりの平均捕虫数は2匹/1時間であった。
対照区2の1トラップあたりの平均捕虫数は0.75匹/1時間であった。
対照区3の1トラップあたりの平均捕虫数は0.25匹/1時間であった。
【0047】
上記結果に示すように、本発明区は、オオサカスジコガネに対して、強い誘引力を示し、(R)エナンチオマーは阻害することが明らかになった。
【0048】
以上の試験例の結果を考察すると、本発明に係る誘引剤は鞘翅目コガネムシ科に属するオオサカスジコガネの雄成虫に対して極めて高い誘引効果を有することが確認された。
【0049】
【発明の効果】
【0050】
本発明の誘引剤は、オオサカスジコガネの雄成虫に対して高い誘引効果を有し、その防除効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】GC−EADによる分析結果を示すグラフ

Claims (2)

  1. (S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕を、活性成分として含有する、オオサカスジコガネの性誘引剤。
  2. (S,Z)(+)−5−(デセ−1−ニル)−オキサシクロペンタン−2−オン〔(S)−エナンチオマー〕を活性成分として含有する化合物を、デバイスで担持した、オオサカスジコガネの性誘引剤。
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