JP3706246B2 - カーボンブラック - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は充填材料、補強材料、導電材料及び着色顔料などの種々の用途に用いられるカーボンブラックに関するものである。
【0002】
【従来技術】
カーボンブラックは顔料、充填剤、及び補強用顔料、耐候性改善剤として広く使用されており、その製法は、一般に円筒状のカーボンブラック製造炉の第1反応帯域に、炉軸方向又は接線方向に酸素含有ガスと燃料を導入して、これらの燃焼によって得られた高温燃焼ガス流を、引き続いて炉軸方向に設置された第2反応帯域に移動させながら、該ガス流中に原料炭化水素を導入してカーボンブラックを生成させ、第3反応帯域で反応ガスを急冷して反応を停止させるファーネス式製造法が広く知られている。
【0003】
樹脂着色剤、印刷インキ、塗料において着色剤として使用されるカーボンブラックは黒度、分散性、光沢、着色力に優れたものが求められ、また主に自動車用タイヤの補強剤として使用されるカーボンブラックは耐摩耗性に優れたものが求められる。
最高級塗料用や最高級樹脂着色用など分野では最も高黒度を発揮するカーボンブラックが市場を独占する傾向にあるが、小粒子径、特に粒子径が14nmより小さい範囲の超微粒子カーボンブラックが非常に高黒度でありこの分野に用いられている。このクラスのカーボンブラックは、チャンネル法で製造したものをHCC(High Color Channel)、ファーネス法で製造したものをHCF(High Color Furnace)と呼ぶが、上記の分野ではチャンネル法によって製造されたものが市販品の全てを占めている。チャンネル法においては、粒子径を13〜14nmの超微粒子径とし、粒子径分布がシャープなカーボンブラックを製造する事ができ、それが非常に高黒度を発揮するからである。
【0004】
ファーネス法において小粒子径化を図るには、高流速の燃焼ガス流の有するエネルギーを液状供給原料の霧化させることに利用すること、燃焼ガス量に対して注入する原料油の量を少なくすること、原料油注入域のガス温度を高温度化する事が小粒子径のカーボンブラックを効率的に生産するために効果的であることが知られているが、歩留まりが極端に悪くなる上、安定的な製造が難しく又粒子径分布は広くなるためチャンネルブンラック並の黒度を発揮する事はできなかった。さらに従来のファーネス法の技術で高黒度を得ようとすると、粒子径を小さくするとともに、DBPを低下させる必要があり、このためアルカリ金属塩またはその溶液を原料油に添加したり、燃焼域或いは反応域に導入する事が知られるが、これは特に塗料のビヒクル並びに樹脂に配合した場合、分散性や流動性の劣化をひきおこすという問題がある。
【0005】
一方、チャンネル法は超微粒子で高黒度のカーボンブラックを製造する事ができる反面、酸素雰囲気で作るため、その製造プロセス自体が製品収率が悪く、生産性が低い欠点を持っている。チャンネル法で製造された小粒子径のチャンネルブラックとして、例えば「FW200」(商品名、デグッサ(株)製)が販売されているが、これらチャンネル法により得られるチャンネルブラックは酸素雰囲気で製造されるためにカーボンブラック自体が酸性を示す。このことにより、以下の重要な欠点を有する。すなわち、
(1)樹脂に配合した場合、得られた樹脂組成物は劣化しやすいものとなる。
(2)ゴムに配合した場合、得られたゴム組成物は耐磨耗性に劣るものとなる。
(3)水性塗料組成物を調製した場合、塗料組成物中でカーボンブラックが凝集しやすい。
といった欠点を本質的に有するものなのである。
【0006】
そこで、生産効率の良いファーネス法でチャンネルブラック並以上の黒度を有し、しかも塗料や樹脂に配合した場合に分散性が良く、望ましくはチャンネルブラックの有する上述のような欠点のないカーボンブラックを直接製造することが求められている。
【0007】
カーボンブラックが使用された時の製品物性に影響を及ぼす重要な要素として、粒子径とともに凝集体がある。凝集体の大きさは、ゴムに配合した場合の引張応力や押し出し特性、インキや塗料のビヒクル並びに樹脂に配合した場合の分散性や黒色度、粘度などに多大な影響を与える。カーボンブラックは最終的にはカーボンブラック粒子が何個も連なった凝集体の集合体で構成されており、この凝集体の大きさや形を制御する事はカーボンブラックの特性そのものを制御する事につながり、カーボンブラックの応用特性にとっては重要である。
【0008】
凝集体はカーボンブラックの特性に大きな影響を与え、これまで粒子径に起因すると考えられていたカーボンブラックの特性の多くが、むしろ凝集体径によってより良く説明できる場合のあることが明らかになってきた。例えば、着色力などの光学的性質や配合ゴム組成物の動的粘弾性特性や補強性に対しては、凝集体径が大きな役割を果たしていると考えられる。樹脂着色用途でみた場合は、凝集体径は小さいほど高黒度になる事が知られている。
【0009】
凝集体の効果については、凝集体を単なる粒子とみなしてその大きさや分布の定量化が行われている。凝集体を粒子として扱うことにより、種々の粒子径測定技術が応用できるようになり、こうして測定される凝集体の大きさは凝集体径として表現されている。
凝集体径の評価指標としては、カーボンブラックの水分散系における遠心沈降法、電子顕微鏡解析が知られており、凝集体径の大きさ、分布の評価には最近よく遠心沈降法が用いられている。この凝集体径の大きさは、最大頻度ストークス相当径Dmod として表され、分布の評価には最大頻度ストークス相当径の半値幅D1/2 と最大頻度ストークス相当径Dmod との比が用いられる。一般に凝集体径が小さくなるほど黒度が増す事が知られているが、凝集体径を小さくすると分散性の劣化を引き起こすことが知られている。
また、凝集体はカーボンブラックの粒子同士が融合する事で構成されるが、一般に凝集体1個あたりの基本粒子の個数の多いことを「凝集体が発達している」という表現をする。この凝集体の発達度合いの指標としてDBP吸油量などが用いられる。一般に、ストラクチャーが発達するほど分散が良好である。すなわちDBPが大きいほど分散が良好であるが、その一方で黒度が低下し、分散性と黒度とは二律背反の関係にあるとされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、カーボンブラックの特性と、樹脂組成物等のカーボンブラック含有組成物の物性との関係に関しては、一般に相反関係にある黒度、分散性、および安全性をいかに満足させるかが重要な課題となっている。さらに、ゴム成分に配合してゴム組成物とした際の耐磨耗性に優れること、樹脂組成物とした際の劣化が抑えられることも要求される。その上、一旦分散したカーボンブラックが再凝集することがあってはならない。
本発明は、種々のカーボンブラック含有組成物を調製した際に、高黒度、良分散性を保ち凝集を防止することができるカーボンブラックを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる問題を解決すべく、従来より高黒度で良分散性を有するカーボンブラックを得るため種々検討した。その結果、単に凝集体径と凝集体分布をコントロールするだけでなく、これと凝集体の形態、すなわちストラクチャーの発達の程度を同時にコントロールすることにより、黒度と分散性とを兼ね備えたカーボンブラックを得ることができることを見出した。
【0012】
そこで、本発明者らは凝集体の発達度合いを表すDBPと、凝集体の大きさを表すDmod の比であるDBP/Dmod の値に注目し、この比の値をある値以上に制御することで、高黒度を維持しつつ良分散性を得る事ができる事を見いだし本発明に至った。
本発明者らは、小凝集体径でDBP/Dmod の比の値がある程度以上であれば、従来に比して、より高黒度で良分散性を有するカーボンブラックである事を発見した。
DBP/Dmod の比の値がある程度以上であるということは、凝集体の径に比較して凝集体の空隙部分の容積が大きいことを示しており、これは凝集体の形態がより直鎖状に近いことを示していると推測される。このことが黒度と分散の相反する性質を両立させているものであると考えられる。
【0013】
また、同時に微細凝集体が分散に悪影響を与えること、大凝集体が黒度に悪影響を与えること、従って微細凝集体や大凝集体のない均一な凝集体を有するカーボンブラックが、従来の二律背反の関係であると考えられてきた高黒度と良分散性の両方の特性を兼ね備えることを発見した。
【0015】
そして、Dmod を40nm以下に保ちつつ、DBP/Dmodの比が3.4以上である新規なカーボンブラックを見いだした。好ましくは、このカーボンブラックは、最大頻度ストークス相当径Dmodと最大頻度ストークス相当径の半値幅の比すなわちD1/2/Dmodの比が0.6以下、より好ましくは0.55以下が望ましい。また、高黒度を得るため、平均粒子径は13nm以下である事が好ましく、そのようなカーボンブラックの作成にも成功した。
【0016】
上述した特公昭54−7632号公報では、EM平均粒子径14nmおよび9nmの小粒子径のカーボンブラックについての記載はあるものの、粒子径とともに黒度を左右する重要な特性である凝集体の大きさなどについての記載はなく、本発明は新規なものである。
【0017】
さらに、カーボンブラックの分散性は、粒子径と凝集体径以外にも、例えばpH値にも影響されることを本発明者らは見いだした。すなわち、pH値が低いと、樹脂に混ぜたときに樹脂の分解が多い、水性塗料として用いた場合凝集が起こりやすい、といった欠点があり、カーボンブラックのpHを特定の範囲とすることも又、分散性に寄与することが判明した。すなわち、本発明はDBP/Dmodが3.4以上、Dmodが0nm以下のカーボンブラック、さらにはこのようなカーボンブラックを含有することを特徴とする樹脂組成物、ゴム組成物、塗料組成物及びインク組成物に存する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のカーボンブラックにおいては、まずDBP/Dmodが3.4以上で、Dmod が40nm以下のものである。DBP/Dmodが3.4未満では、黒色顔料として使用した場合の分散が充分でなく、Dmodがこの範囲を越えると、黒度が充分でない。
【0019】
さらに、遠心沈降法による凝集体ストークス相当径分布における最大頻度ストークス相当径の半値幅D1/2 と最大頻度ストークス相当径Dmod との比、D1/2 /Dmod が0.6以下、好ましくは0.55以下が良い。
また、体積75%径とDmod の比D75/Dmod が1.6以下、好ましくは1.3以下であるカーボンブラックをも得ることができる。このものは、分散に悪影響を及ぼす体積75%径を越える大凝集体径の含有率が極めて低く抑えられたものである。すなわち小粒子径、小凝集体径で凝集体径分布がシャープで大凝集体径のものが少ないカーボンブラックを効率的に得ることができる。
【0020】
このように凝集体径及び凝集体分布と粒子径を特定の範囲内に調整することにより、黒度と分散性とを同時に満足するという優れた特性を発揮することができるのである。すなわち、本発明のカーボンブラックは極めて黒度に優れたものとなり、しかも各種ビヒクルへの分散性が向上したものである。
さらに本発明のカーボンブラックはpHが5以上である。pHが5未満の場合、そのようなカーボンブラックを用いて樹脂組成物とした場合に劣化しやすく、またこのようなカーボンブラックを用いてゴム組成物とした場合に耐磨耗性に劣り、さらにこのようなカーボンブラックを用いて水性塗料を調製した場合、カーボンブラックが凝集しやすいという問題がある。特に好ましくは、pHが6以上である。pHの測定方法は、JISK6221−1982に記載の方法による。従来黒度の優れた小粒径のカーボンブラックとして市場に出ているチャンネルブラックは、その製法から、pHが5未満、通常3未満と低くなっていることは上述のとおりである。
【0021】
以上説明した本発明のカーボンブラックは、新規且つ極めて有用なものであり、後述するように比較的簡易な方法で生産性良く得られるものであり、DBP/Dmod 、及びDmod を特定の範囲とすることにより、従来二律背反と考えられていた黒度と分散性とを共に満足している。
【0022】
これら本発明のカーボンブラックを効率的に得るには、以下の方法をとることができる。
図1に、本発明で用いることのできるカーボンブラック製造炉の一例の要部縦断面概略図を示す。
【0023】
炉は長さ方向に、高温燃焼ガス流を形成させる第1反応帯域1と、得られた高温燃焼ガス流に原料炭化水素を混合してカーボンブラックを生成させる、チョーク部を有する第2反応帯域2と、第2反応帯域に引き続いた下流にあり、反応を停止させる第3反応帯域3とに区分される。各反応帯域のプロセス自体は、基本的には従来技術と同様の方法を採ることができる。
第1反応帯域では一般に燃焼ノズル5から燃料炭化水素と酸素含有ガスを導入し、高温ガス流を発生させる。酸素含有ガスとしては一般に空気、酸素またはそれらの混合物が用いられ、燃料炭化水素としては一般に水素、一酸化炭素、天然ガス、石油ガス並びに重油等の石油系液体燃料、クレオソート油等の石炭系液体燃料が使用される。
【0024】
第2反応帯域では第1反応帯域で得られた高温ガス流に並流又は横方向に設けた原料炭化水素導入ノズル6から原料炭化水素を噴霧導入し、原料炭化水素を熱分解させてカーボンブラックに転化させる。
原料炭化水素としては一般にベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素、クレオソート油、カルボン酸油等の石炭系炭化水素、エチレンヘビーエンドオイル、FCCオイル等の石油系重質油、アセチレン系不飽和炭化水素、エチレン系炭化水素、ペンタンやヘキサン等の脂肪族飽和炭化水素などが好適に使用される。
【0025】
第3反応帯域は高温反応ガスを1000〜800℃以下に冷却するため、反応停止流体導入用ノズル7から水等の液体あるいは気体の冷却媒体を噴霧する。冷却されたカーボンブラックは、捕集バッグフィルター等でガスと分離し回収する等公知の一般的プロセスをとることができる。尚、図中、8はコントロールバルブである。
【0026】
本発明のカーボンブラックを得るには上記の炉を用いてカーボンブラックを製造するに際し、原料炭化水素を導入する位置の条件をはじめとする炉内のカーボンブラック生成領域における諸条件を適宜調整することにより好適に行われる。
具体的には、原料炭化水素を導入する部位における燃焼ガス中の酸素濃度は3vol%以下、好ましくは0.05〜1vol%とするべきである。
意外なことに、原料炭化水素導入位置の酸素濃度を極力少なくすることにより、このような小粒子径であり凝集体径が小さく均一で、且つ大粒径の凝集体が抑えられたカーボンブラックを歩留まり良く得ることができることを見いだしたのである。
【0027】
従来はファーネス法で得られるファーネスブラックは原料炭化水素の一部部分燃焼によって生成すると考えられていたため、原料炭化水素導入部位における燃焼ガス中の残存酸素濃度を5〜10vol%程度とし、原料油を一部部分燃焼させていた。発明者らは、極めて意外なことに、酸素濃度を極少量に抑えることによって凝集体分布がシャープで大粒径の凝集体がなく、さらに小凝集体径であり小粒子径のカーボンブラックを高い歩留まりで得ることができることを見いだしたのである。
原料炭化水素導入部位における酸素濃度の測定は、原料炭化水素導入部位における気体を採取し、例えばガスクロマトグラフィー測定装置で窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、メタン、アセチレンを測定することにより求めることができる。なお燃焼で発生する水は計算には入れない。
【0028】
原料炭化水素を導入する部位の温度は1800℃以上が好ましく、より好ましくは1900℃以上、さらに好ましくは2000〜2400℃が好適である。これにより、小粒子径、小凝集体径及びシャープな凝集体分布を有するカーボンブラックを容易に得ることができる。
カーボンブラック凝集体は、原料炭化水素が熱分解後、縮合し、液滴へ融着後、核となる前駆体が形成しカーボンブラック粒子が生成、その後粒子の相互の衝突を経て、融着炭化し生成すると考えられる。この反応は高温である程速く進み、生成する粒子も小さくなる。また、炭化速度も速くなるので、粒子同士が衝突し凝集体となって固まるまでの時間も短くなるので凝集体も小さくなると考えられる。従って、原料炭化水素を導入する部位における温度は原料炭化水素が均一に気化、熱分解するためにさらには小粒子径カーボンブラックを得るために充分高温であることが望ましく、本発明のカーボンブラックを得るには上記の温度範囲とすることが好適であるものと考えられる。
【0029】
原料炭化水素を導入する部位の温度を上記の範囲とするには、例えば第1反応帯域において高温燃焼ガス流を形成させる際に空気に酸素を添加することができる。もちろん、燃焼ガス温度を高める方法は酸素の添加に限定されず、空気を予熱する等の方法をとることによっても可能である。
なお、炉内の温度は例えば放射温度計等の手段により確認することができる。
第2反応帯域はチョーク部を有するものである。チョーク部は断面積が急激に狭くなっている部分である。チョーク部は500mm以上、好ましくは800〜3000mmとするのが特に望ましい。この範囲で特に、得られるカーボンブラックの凝集体径を特に小さくできることを本発明者らは見いだした。
【0030】
なお、ここでチョーク部開始部位であるチョーク部の入口は、流路の最も狭い部分を含み、流路の縮小する軸方向に対する角度が5°を超える値から5°以下に変化する部位をいう。一方、チョーク部の終端であるチョーク部の出口は、流路の縮小する軸方向に対する角度が5°を超える値となる部位をいう。
チョークの直径は170mm以下が好適である。特に好ましくは30〜170mm、更に好ましくは50〜150mmである。この範囲で特に凝集体分布がシャープなものを容易に得ることができる。
チョーク内のガス流速は速いほど良い。原料炭化水素は導入後、燃焼ガスの運動及び熱エネルギーにより微粒化されるが、その時の燃焼ガスの速度は速い程良く、250m/s以上が好ましく、300〜500m/sが好適である。この範囲で特に小粒径で凝集体が小さく粒子径分布の狭いカーボンブラックを容易に得ることができる。
【0031】
また、原料炭化水素を炉内に均一に分散させるために、原料炭化水素は2個以上のノズルから炉内に導入する事が好ましい。
原料炭化水素の供給位置は、チョーク部内であってしかもチョーク入り口から燃焼ガスの断面平均流速基準で1ms以内の範囲とすることが好適である。より好ましくは、0.6ms以内の範囲とする。この部位で導入することにより、特に小粒子径で凝集体径の均一なカーボンブラックを得ることができる。
これら諸条件の組み合わせにより、小凝集体径で凝集体分布が極めてシャープであり、また大粒径の凝集体の発生が抑えられ、しかも小粒子径であるカーボンブラックをファーネス法により歩留まり良く得ることができることを本発明者らは見いだしたのである。
【0032】
以上説明した本発明のカーボンブラックを含有する塗料組成物、樹脂組成物、ゴム組成物を調製することにより、これら各種の用途で好適な特性を発揮させることができる。以上説明したように本発明のカーボンブラックは各種のビヒクル中での分散性が極めて優れていると同時に非常に高黒度であるため、これら各種の組成物も極めて優れた特性を有するものとなるのである。
さらに、本発明のカーボンブラックではpHを特定範囲としていることにより、耐磨耗性が優れたゴム組成物を得ることができ、劣化しにくい樹脂組成物を得ることができ、また水性塗料組成物における凝集を防止することができるのである。このように種々のビヒクルと配合して優れたカーボンブラック含有組成物を得ることのできる本発明のカーボンブラックは、今までに存在しなかった新規なものであり、例えば上述したような製造方法により容易に得ることができるのである。
【0033】
なお、本発明の塗料組成物、本発明の樹脂組成物、本発明のゴム組成物及び本発明のインク組成物を得るには、本発明のカーボンブラックを含有する以外は、公知の各種の方法を採用して所望の組成物を調製することができる。
本発明のカーボンブラックを含有する樹脂組成物を調製する場合、適用可能な樹脂も特に限定されず、例えば、各種の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂、それらの樹脂の混合物あるいはフィラー等の各種添加物を加えたものであってもよい。通常、樹脂組成物の調製に用いられるものを、目的に応じて適宜選択して用いればよい。
【0034】
これらの樹脂成分に本発明のカーボンブラックを添加し、必要に応じて混練する。この際、ゴム混練機として通常使用されているもの、例えばバッチ式開放型としてロールミキサー、バッチ式密閉型としてバンバリータイプミキサー、連続スクリュー式として単軸混練押出機、二軸混練押出機、連続ローター式として単軸混練機、二軸混練機等を使用することもできる。カーボンブラックの含有量もまた公知の技術を採用して決定すればよく、一般には1〜60重量%が好適である。
【0035】
本発明のカーボンブラックを含有する塗料組成物を調製する場合、使用するワニスとしては塗料に用いることのできるものであれば特に限定されず、例えば各種の油性塗料、酒精塗料、合成樹脂塗料、水性塗料に用いられるものを用いればよく、目的とする塗料も特に限定されず、油ペイント、油エナメル、フェノール樹脂又はマレイン酸樹脂、アルキド樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、尿素樹脂塗料、酒精塗料、ラッカー、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、エマルジョン樹脂塗料、水溶性樹脂塗料が挙げられる。
しかしながら本発明のカーボンブラックは上述のように、特に水性塗料組成物を調製した際に凝集を防止する効果に優れているため、エマルジョン塗料、水溶性樹脂塗料といった水性塗料組成物の調製に用いた場合に、特に顕著な高特性を発揮しうるため好適である。
【0036】
カーボンブラックの含有量もまた公知の技術を採用して決定すればよく、一般には0.1〜10重量%が好適である。
また、本発明のカーボンブラックを含有するゴム組成物の調製には、本発明のカーボンブラックを天然ゴム及び合成ゴムの一種以上と配合すればよい。この際の配合量は一般に、ゴム100重量部に対してカーボンブラック30〜150重量部が適当である。これにより、損失係数や発熱量の少ないゴムとすることが可能である。
この際使用されるゴム成分も特に限定されず、例えば、合成ゴムとしてスチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、多硫化ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、プロピレンオキシドゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、液状ゴム、ポリアルキレンスルフィド、ニトロソゴム等が挙げられ、もちろん天然ゴム、あるいはこれら各種の混合物も用いることができる。さらに必要に応じて各種の添加剤を配合することもできる。
【0037】
上記ゴム成分に本発明のカーボンブラックを添加し混練してゴム組成物とする。混練機としては通常ゴムの混練機として使用されているものでよく、ロールミキサー、バンバリータイプミキサー、連続スクリュー式あるいは連続ローター式の単軸混練押出機、二軸混練押出機が挙げられる。
本発明のインク組成物を得るにはカーボンブラックとして本発明のものを用いる以外は特に限定されない。すなわち、従来より知られる各種のワニス、溶剤と配合し、充分に分散を行う。本発明のカーボンブラックは、特に水性インキ組成物として用いると優れている。例えばワニスとしてアルカリ可溶型樹脂、ヒドロゾル型樹脂等各種の水溶性ワニスとともに水性媒体に分散する等、公知の手段を採用すればよい。
分散方法は特に限定されない。また分散方法も各種公知の方法を用い、各種の添加剤を添加してもよい。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。
(実施例1〜2)
図1に示す、空気導入ダクトと燃焼バーナーを備える第1反応帯域、該第1反応帯域に連接され、周辺から複数の原料ノズルを貫設した内径60mm、長さ1000mmのチョーク部を有する第2反応帯域、クエンチ装置を備えた内径100mm長さ6000mmの第3反応帯域を順次結合した構造のカーボンブラック製造炉を設置した。
【0039】
原料ノズルの位置は、チョーク部の入口から100mmである。
上記の炉を用い、原料炭化水素導入位置における燃焼ガス温度、燃焼ガス酸素濃度、原料供給量を調整することにより表−1に示す物性を有するカーボンブラックを製造した。燃料及び、原料炭化水素としてクレオソート油を使用した。第1反応帯域における空気導入ダクトから導入される空気には酸素が添加され、原料炭化水素導入位置における1900℃以上の高温雰囲気を保持した。
表−1におけるカーボンブラックの物性の決定には以下の試験方法を用いた。
【0040】
(平均粒子径)
電子顕微鏡法による。電子顕微鏡法とは、以下に示す方法である。
カーボンブラックをクロロホルムに投入し200KHzの超音波を20分間照射し分散させた後、分散試料を支持膜に固定する。これを透過型電子顕微鏡で写真撮影し、写真上の直径と写真の拡大倍率により粒子径を計算する。この操作を約1500回にわたって実施し、それらの値の算術平均により求める。
【0041】
(N2 SA比表面積)
2 SA比表面積は、ASTM D3037−88に従って決定した。
【0042】
(cDBP)
破砕DBP吸収数(cDBP)はASTM D−3493−88に従って決定した。
【0043】
(Dmod 、D1/2
最大頻度ストークス相当径(Dmod )及びストークス相当径半値幅(D1/2 )は次のようにして決定した。
スピン液として20%エタノール溶液を用い、遠心沈降式の流度分布測定装置(JLオートメーション社製 DCF3型)により、ストークス相当径を測定し、ストークス相当径対与えられた試料中の相対的発生頻度のヒストグラム(図2)を作る。ヒストグラムのピーク(A)から線(B)を、Y軸に平行にX軸まで引き、ヒストグラムのX軸の点(C)で終わらせる。点(C)でのストークス直径が最大頻度ストークス相当径Dmod である。また、得られた線(B)の中点(F)を決定し、その中点(F)を通りX軸に平行に線(G)を引く。線(G)はヒストグラムの分布曲線と2点D及びEで交わる.カーボンブラック粒子の2点D及びEの二つのストークス直径の差の絶対値がストークス相当径半値幅D1/2 値である。
【0044】
(D75
体積75%径(D75)は次のようにして決定した。
上記最大頻度ストークス径を決定する方法において、ストークス相当径対試料の相対的発生頻度のヒストグラム図2からそれぞれのストークス直径と頻度から体積を求め、ストークス直径対その直径までの得られた試料の体積総和を表すグラフを作る。(図3)よって図3中点(A)は、全試料の体積の総和を表す。ここで、この体積総和の75%の値の点(B)を決定し、点(B)よりX軸に平衡に曲線と交わるまで線を引く。点(C)からY軸に平衡に線を引き、X軸と交わった点(D)の値が体積75%径(D75)である。
【0045】
(PVC黒度)
PVC黒度は、本発明のカーボンブラックをPVC樹脂に添加、2本ロールにより分散、シート化し、三菱化学(株)カーボンブラック「#40」、「#45」の黒度を各々1点、10点と基準値を定め、試料の黒度を視感判定により評価した。
【0046】
(分散指数)
分散指数は次の方法により評価した。LDPE樹脂中の分散状態を観察し、未分散凝集塊の数をカウントし、この数が多い、すなわち、分散指数が大きいほど、分散性が悪いと評価した。
250ccバンバリーミキサーにてLDPE樹脂に試料カーボンブラックを40重量%配合し115℃、4分混練りする。
Figure 0003706246
【0047】
次に120℃で、2本ロールミルにてカーボンブラック濃度が1重量%に成るように希釈する。
希釈コンパウンド作成条件
LDPE樹脂 58.3g
ステアリン酸カルシウム 0.2g
カーボンブラック40%配合樹脂 1.5g
スリット幅0.3mmでシート化し、このシートをチップに切断、240℃のホットプレート上で65±3μmのフィルムに成形する。倍率20倍の光学顕微鏡にて3.6mm×4.7mmの視野中の0.2mm以上の直径の未分散凝集塊の直径分布を測定し、その総面積を計算する。この面積を0.35mm径の未分散凝集塊の面積を基準に、総面積を基準面積で割り、基準粒子の個数とし計算する。これを16視野以上観察し、平均値を分散指数とする。
【0048】
(耐熱老化時間)
耐熱老化時間は次の方法により評価した。
分散剤(ステアリン酸マグネシウム)にカーボンブラックを40%の配合で混合し、家庭用ミキサーにて10分間粉砕混合し、ドライカラーを調製する。次にポリプロピレンコンパウンド中にドライカラーを1.25%(カーボンブラック0.5%)の配合でバンパリーミキサーで140℃で20分間混練した後、2本ロールミルで170℃でシート化する。金型温度220℃、成形圧100kgf/cm2 で2mmの厚平板にプレス成形する。このようにして作成した、テストピース5枚ずつを150℃設定のギアー式オーブン中で285時間経時まで耐熱老化試験を実施する。目視にて表面が白くなりはじめた時の時間を耐熱老化時間とした。
【0049】
(比較例1〜4)
実施例で用いたカーボンブラック製造炉を用い、原料炭化水素導入位置における燃焼ガス温度、反応停止位置、カリウム添加量、チョーク内ガス流速の調整により表−1に示す比較例1の物性を有するカーボンブラックを得た。また、比較例2〜4は、市販のカーボンブラックの物性を示した。
各実施例と比較例とを比べると、比較例では実施例に比べて分散指数が大きく分散が大幅に悪い。これは、DBP/Dmod の比が本発明で規定する範囲を外れているためであると考えられる。
【0050】
【表1】
Figure 0003706246
【0051】
【発明の効果】
本発明のカーボンブラックは、樹脂着色剤、印刷インキ、塗料において黒色顔料として使用したときに、従来二律背反の関係にあり困難とされていた黒色度と分散性を満足しながら、生産性を向上することができる。しかも、樹脂組成物とした際の劣化防止、ゴム組成物とした際の耐磨耗性、さらには塗料組成物とした際の凝集防止効果にも優れ、安全性も高いものである。従って、樹脂着色剤、塗料、ゴム組成物の調製において非常に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカーボンブラックの製造に用いることのできる製造炉の一例を示す要部縦断面概略図
【図2】最大頻度ストークス相当径(Dmod )及びストークス相当径半値幅(D1/2 )の求め方を示す図
【図3】体積75%径(D75)の求め方を示す図
【符号の説明】
1 第1反応帯域
2 第2反応帯域
3 第3反応帯域
4 耐火物炉
5 燃料及び酸化ガス導入用ノズル
6 原料油導入ノズル
7 反応停止流体導入ノズル
8 コントロールバルブ

Claims (9)

  1. DBP/Dmodが3.4以上で、Dmod0nm以下であるカーボンブラック。
  2. DBP/mod6.04以上である、請求項1に記載のカーボンブラック。
  3. 1/2 /Dmod が0.6以下の、請求項1または2に記載のカーボンブラック。
  4. 平均粒子径が13nm以下である、請求項1から3のいずれかに記載のカーボンブラック。
  5. pHが5以上である、請求項1から4のいずれかに記載のカーボンブラック。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のカーボンブラックを含有することを特徴とするインク組成物。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のカーボンブラックを含有することを特徴とする塗料組成物。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載のカーボンブラックを含有することを特徴とする樹脂組成物。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載のカーボンブラックを含有することを特徴とするゴム組成物。
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