JP3705380B2 - 物体検知装置 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明はドップラ信号を用いて物体の存在を検知するための物体検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平2−223884号に開示された移動物体検知装置は、監視空間へ放射した電波と、監視空間内の物体から受信した反射波とをミクスして、物体の移動によって生じるドップラ信号を検波し、このドップラ信号のレベルと一定の閾値とを比較して、ドップラ信号レベルが閾値を越えている時間に基づいて移動物体を検知する。この従来装置は、ドップラ信号の振幅が移動物体からの受信信号レベルに比例し、ドップラ信号の周波数が移動物体の移動速度に比例することを利用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
物体検知装置の用途の一つに、自動洗浄型小便器における利用者の検出がある。この用途では、小便器の正面直前のエリアに人が居るか居ないかを正確に検知することが重要である。しかし、上記従来装置をこの用途に用いた場合、小便器の前方を人が通過しただけで、これを利用者と誤認して無駄な洗浄を行ってしまうことがある。
【0004】
この誤検知の原因は、トイレットルーム内の広さや設置物などの状況によって、ドップラ信号の振幅ゼロのレベルつまり直流成分(以下、DCオフセットレベルという)が変わるため、閾値に対応する物体までの距離がトイレットルームの状況に応じて変わってくることにある。例えば特開平2−223884号の図面を参照すると、DCオフセットレベルをゼロとみなしていることがわかるが、実際にはDCオフセットレベルはゼロでなくプラスの値であって、しかも室内状況によって変化する。結果として、検出装置の感度が高くなり過ぎて小便器から離れた場所の人間までも誤検知してしまうことがあり、かつ、その誤検知の程度は室内状況によって異なる。
【0005】
このように、従来の装置は一定距離以内に物体が存在するか否かを安定して正確に検出することが難しい。
【0006】
従って、本発明の目的は、所定距離以内に物体が存在するか否かを安定して精度良く検出できる物体検知装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の物体検知装置は、対象物までの距離に応じた振幅と対象物の移動速度に応じた周波数とをもつドップラ信号を生成する手段と、ドップラ信号のレベルから基準値を差し引いて差分信号を生成する手段と、差分信号のレベルと所定の閾値とを比較することにより、所定距離内における対象物の有無を検知する手段と、検知手段が対象物の無いことを示しているときにおけるドップラ信号又は差分信号のレベルに基づいて、前記基準値を更新する手段とを備える。
【0008】
この物体検知装置は、対象物の無い状態において基準値を更新し、この基準値をドップラ信号から差し引いてその差分信号に基づいて対象物の有無を判定する。よって、室内状況に応じてドップラ信号のDCオフセットレベルが変わっても、そのDCオフセットレベルに基準値を更新できるので、ドップラ信号からDCオフセットレベルの影響を除去した差分信号が得られる。そして、この差分信号に基づいて対象物の有無を判断するから、対象物が近くで静止しているときと、対象物が無い時とを明確に区別できる。これらの結果、対象物の有無を精度良く判定できる。
【0009】
好適な一実施形態では、所定時間にわたって前記差分信号のレベルが所定の閾値を越えていないときに、対象物が無いと判断この状態のときに、ドップラ信号のDCオフセットレベルを学習し、学習したDCオフセットレベルに基準値を更新している。
【0010】
上記検知手段は、比較的に遠い第1の距離内での対象物の有無を判定するための第1の閾値と、比較的に近い第2の距離内での対象物の有無を判定するための第2の閾値と、前記差分信号のレベルとを用いて、第1の距離内への対象物の進入と、第2の距離内への対象物の進入と、第1の距離外への対種物の退去とを判定するように構成することができる。このような検知手段を備えた物体検知装置は、小便器の自動洗浄のための利用者検出の用途に好適である。すなわち、小便器の直前の利用者が立つ場所に上記第2の距離を設定し、それより若干遠いところに上記第1の距離を設定しておくと、利用者が小便器へ接近してきたことと、小用中であることと、小便器から退去したこととが判定できるので、その判定結果に基づいて、小用の前後に洗浄水を自動的に流す制御を行うことができる。
【0011】
第1の距離内への対象物の進入は、例えば差分信号のレベルと第1の閾値とを比較することにより判定することができる。また、第2の距離内への対象物の進入は、例えば第1の距離内への対象物の進入を判定したことに引続いて、差分信号のレベルと第2の閾値とを比較することにより判定することができる。また、第1の距離外への物体の退去は、例えば、第1又は第2の距離内への物体の進入を判定したことに引続いて、差分信号のレベルと第1の閾値とを比較することにより判定することができる。
【0012】
本発明の装置は更に、ドップラ信号の交流成分を取り出す手段を備えて、上記検知手段が、差分信号と交流成分とを併用して所定距離内における対象物の有無を検知するように構成することができる。この場合には、例えば、所定時間にわたって差分信号のレベルが閾値を越えていないとき、又は、対象物の存在が検知されてから交流成分のピーク周波数の移動が観測された後に、対象物が無いと判定して、上記基準値の更新を行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態にかかる小便器用の物体検知装置の全体構成を示す。
【0014】
この物体検知装置1は、小便器の内部又はトイレットルームの小便器直上の壁内などに設置されており、その出力は、小便器に洗浄水を流したり止めたりするための弁13を駆動及び制御するための弁コントローラ11に接続されている。
【0015】
この物体検知装置1は、センサ3、DCアンプ5、ACアンプ7及びマイクロコンピュータ9を有する。センサ3は、小便器の正面の空間へマイクロ波を放射し、その空間内の物体で反射されて返ってくるマイクロ波を受信し、この2つのマイクロ波をミクスしてドップラ信号VDPLを取り出す。センサ3から出力されたドップラ信号VDPLは、DCアンプ5とACアンプ7に同時に入力され、DCアンプ5とACアンプ7の出力VDC、VACはマイクロコンピュータ9に入力される。マイクロコンピュータ9は、両アンプ5、7の出力VDC、VACを処理することにより、小便器の利用者を検出し、その検出信号を弁コントローラ11に知らせる。弁コントローラ11は、マイクロコンピュータ9からの検出信号に基づいて利用者の小用開始時と終了時とに洗浄水を流すように弁13を制御する。
【0016】
図2は、DCアンプ5とACアンプ7の具体的な回路を示す。
【0017】
DCアンプ5は、マイクロコンピュータ9からDCオフセットレベルVD/Aを受け、センサ3からのドップラ信号VDPLからDCオフセットレベルVD/Aを差し引き、その差分信号ΔVを増幅してマイクロコンピュータ9へ出力する。一方、ACアンプ7は、低域除去フィルタの特性を有し、センサ3からのドップラ信号VDPLから低周波成分(実質的な直流成分)を除去して、残った中高周波成分(実質的な交流成分)だけを増幅してマイクロコンピュータ9へ出力する。以下、DCアンプ5の出力VDCを「DC増幅信号」、ACアンプ7の出力VACを「AC増幅信号」と呼ぶ。
【0018】
図3は、DC増幅信号VDCとAC増幅信号VACの波形例を示し、上段がAC増幅信号VAC、下段がDC増幅信号VDCである。この波形例は、小便器へ正面から人が接近し、小用後に小便器前から真横方向へ退去した場合に観測されたものである。
【0019】
この波形からわかるように、無人の時には、DC増幅信号VDCもAC増幅信号VACも共にほぼ0Vに静定している。(尚、実際には、マイクロコンピュータ9での処理のために、AC増幅信号VACの場合、ACアンプ7のダイナミックレンジの中点に0レベルを設定しており、そのため例えば1.75Vのオフセット電圧を意図的に加えている。また、DC増幅信号VDCの場合は、後述するように、DCオフセットレベルを測定するための技術上の理由から、厳密には0Vでなく、0レベルより僅かに高いレベル、例えば1.3Vに静定するようになっている)。
【0020】
人の接近時には、大きい移動速度で近づいて来るため、DC増幅信号VDCもAC増幅信号VACも共に高周波成分が顕著に現れ、振幅は増大していく。
【0021】
小用中は、小便器の直前で人がゆっくり動く(例えば、体の揺れや腕の動きなど)か又は殆ど静止しているため、AC増幅信号VACには振幅の小さい中程度の周波数成分が現れ、一方、DC増幅信号VDCには中程度の周波数成分も現れるが、加えて振幅の大きい低周波成分又はレベルの大きい直流成分が顕著に現れる。このように小用中は、DC増幅信号VDCとAC増幅信号VACとは明確に異なる波形を示す。
【0022】
退去時には、この例では人が横方向へ退去したため、小用時の波形と比較して若干周波数が高まってはいるが、あまり大差ない波形のまま、一気に無人状態へ移行している。もし、人が横方向でなく後方へ退去したならば、ちょうど接近時の波形を時間的に逆にしたように、高周波成分が顕著に現れ、かつ振幅が減少していく波形が観測される。
【0023】
以上のことから分るように、小便器の利用者検出には、第1に、DC増幅信号VDCのレベルを利用することができる。すなわち、DC増幅信号VDCのレベル(又は振幅)の程度によって、無人か否か、又は小便器の直前に人が居るか居ないかを判断することができる。この場合には、DCオフセットレベルを正確に測定してDC増幅信号VDCを校正することが重要となる。また、第2に、AC増幅信号VACの振幅や周波数の変化を、人の移動つまり接近や退去の検出に利用することができる。
【0024】
本実施形態では、DC増幅信号VDCのみを用いて利用者検出を行う。後から説明する第2の実施形態では、DC増幅信号VDCとAC増幅信号VACとを併用して利用者検出を行う。
【0025】
図4は、本実施形態において小便器15の正面に設定された監視エリアを示す平面図である。小便器15の正面に大小2つのエリア17、19が設定されている。小さい方のエリア(以下、第2エリアという)19は、小便器15の直前のエリアであって、これは利用者が小用中に立つ場所である。大きい方のエリア(以下、第1エリアという)17は、このエリアに人が居れば、その人が小便器15を利用する可能性が相当にあると認められ、逆に、このエリアが人が居なけれ、小便器15を利用する人は居ない(つまり無人状態)と実質的に認められるようなエリアである。
【0026】
図5は、第1及び第2のエリア17、19に人が居るか否かをDC増幅信号VDCのレベルに基づいて判別するために用いる閾値VTH1、VTH2を示す。尚、図5では、DC増幅信号VDCはDCオフセットレベルVD/Aを差し引かれているため、0V(厳密には1.3V程度であるが)を中心に振動する波形として示してある。
【0027】
第1閾値VTH1は、第1エリア17内の人の有無を判別するための閾値である。つまり、DC増幅信号VDCの振幅が第1閾値VTH1より小さいときは無人状態と推測され、第1閾値VTH1より大きいときは第1エリア17内に人が居ると推測される。第2閾値VTH2は、第2エリア19内の人の有無を判別するための閾値である。つまり、DC増幅信号VDCの振幅が第2閾値VTH2より小さいときは第2エリア19に人が居ないと推測され、第2閾値VTH2より大きいときは第2エリア19内に人が居る(つまり小用中である)と推測される。
【0028】
本実施形態では、上記の2つの閾値VTH1、VTH2を用いて、マイクロコンピュータ9が、進入判定、小用判定及び退去判定という3種類の判定処理を行う。図6、図7、図8は進入判定、小用判定及び退去判定の処理流れをそれぞれ示す。
【0029】
図6に示す進入判定は、第1エリア17へ人が進入したことを検出するためのものである。進入判定では、まず、DC増幅信号VDCのレベルが第1閾値VTH1を越えたか否かをチェックする(S1)。その結果、越えていないときは無人と推測されるので、その間は定期的に(例えば、5ms間隔で)にステップS1のチェックを繰り返す。DC増幅信号VDCのレベルが第1閾値VTH1を越えると、第1エリア17へ人が進入したと認識し(S2)、図7に示す小用判定へ進む。
【0030】
図7に示す小用判定は、第2エリア19に人が居ることを検出するためのものである。この小用判定では、まず、DC増幅信号VDCのレベルが第2閾値VTH2を越えたか否かをチェックする(S11)。その結果、越えていないときは、前の進入判定で検出された人がまだ第2エリア19に入っておらず、単なる人の通過の可能性もあるので、直ちに退去判定へ進む(S14)。DC増幅信号VDCのレベルが第2閾値VTH2を越えたときは、人が第2エリア19へ人が入っていると認識し(S12)、マイクロコンピュータ9の出力信号である人体感知信号をオンにする(S13)。人体感知信号のターンオンに応答して、弁コントローラ11が弁13を一定時間開いて洗浄水を流す。人体感知信号をオンにした後、処理は図8に示す退去判定に入る。
【0031】
図8に示す退去判定は、第1エリア17から人が退去して無人状態になったことを検出するものである。この退去判定では、まず、所定のX秒間(例えば40ms間)連続してDC増幅信号VDCのレベルが第1閾値VTH1以下であるか否かをチェックする(S1)。このチェックは、例えば、5ms間隔でDC増幅信号VDCと第1閾値VTH1とを比較し、8回連続してDC増幅信号VDCが第1閾値VTH1以下であるか否かをチェックする、といった方法で行われる。そのチェックの結果が否定的であるときは、次に人体感知信号がオンであるか否かをチェックする(S22)。その結果、人体感知信号がオンであれば、人が第2エリア19内に居ると推測されるので、ステップ21を再び繰り返す。一方、人体感知信号がオフであれば、人が第2エリア外ではあるが第1エリア内には居ると推測されるので、再び小用判定へ進む(S23)。
【0032】
ステップS21のチェック結果が肯定的であるときは、次に人体感知信号がオンであるか否かをチェックする(S24)。その結果、人体感知信号がオンであれば、今まで第2エリア19内に居た人が第1エリア17外へ退去した(つまり、無人になった)と認識して(S25)、人体感知信号をオフにする(S26)。人体感知信号のターンオフに応答して、弁コントローラ11が弁13を一定時間開いて洗浄水を流す。人体感知信号をオフにした後、処理は図6に示す進入判定に戻る。
【0033】
ステップS24で人体感知信号がオフであるときは、進入判定で検知された人は単なる通過者であった(つまり、無人になった)と推測され、処理は図6に示す進入判定に戻る。
【0034】
さて、以上の進入、小用、退去の判定処理では、DC増幅信号VDCのレベルを閾値と比較することにより第1及び第2エリア内での人の有無を判断した。この判断を正確に行うためには、DCオフセットレベルを測定して、DC増幅信号VDCからDCオフセットレベルの影響を除去する必要がある。この目的のため、本実施形態では、マイクロコンピュータ9が無人状態の時のDC増幅信号からDCオフセットレベルを学習して基準値として記憶し、この基準値を図2に示したDCオフセットレベルVD/AとしてDCアンプ5にフィードバックしてドップラ信号VDPLから差し引くようにしている。
【0035】
図9及び図10は、マイクロコンピュータ9がDCオフセットレベルを学習するための処理の流れを示す。図9は、学習のための準備を行う処理を示し、図10は実際に学習する処理を示す。図9、図10のいずれの処理も、前述した進入、小用、退去の判定処理とは別に定期的(例えば5ms間隔)で実行される。
【0036】
図9に示す準備処理では、まず、学習開始フラグがオフか否かをチェックし(S31)、オンであれば既に学習の準備が完了していることを意味するので、この学習処理を終了する。学習開始フラグがオフのときは、まだ学習の準備が出来てないことを意味するので、次に、3回連続して進入判定を繰り返しているか(つまり、図6のステップS1を3回繰り返しているか)をチェックする(S32)。その結果が肯定的であれば、現在無人状態であると推定されるので、次に、現時点までにAC増幅信号VACのレベルの変動がないかをチェックし(S33)、その結果も肯定的であれば、確実に無人状態であると判断できる。一方、ステップS32又はS33の結果が否定的であるとき、無人状態でない可能性があるので、この準備処理を終了する。
【0037】
ステップS33の結果が肯定的で確実に無人状態であると判断されると、次に、図2に示したDCオフセットレベルVD/Aを0Vに初期化する(S34)。これにより、DC増幅信号VDCには、ドップラ信号VDPLの実際にDCオフセットレベルをそのまま増幅した電圧(プラスの値)が現れることになる。
【0038】
次に、AC増幅信号VACに変動がないか再確認する(S35)。この段階でAC増幅信号VACに変動が現れた場合は、新たな基準値の学習は行わず、前回学習した基準値(VD/Aの基準値VD/AREFと、VDCの基準値VDCREF)をそのまま維持して(S36)、この処理を終了する。
【0039】
ステップS35でAC増幅信号VACに変動がないことが確認できると、次に、DCオフセットレベルVD/Aを所定の1単位だけ増加させる(S37)。これにより、その増加した1単位分だけ、DC増幅信号VDCのレベルが下がることになる。続いて、DC増幅信号VDCが実質的に0Vと看做せる所定値、例えば0.1V、以下になったかどうかをチェックする(S38)。そして、ステップS38の結果が肯定的になるまで、ステップS35〜S38を繰り返す。ステップS38の結果が肯定的になると、つまり、DC増幅信号VDCが実質的に0Vになると、学習準備が完了したとして、学習開始フラグをオンにして(S39)、この処理を終了する。
【0040】
以上の学習処理によって学習開始フラグをオンになった段階では、DC増幅信号VDCが実質的に0Vになっているため、その時のDCオフセットレベルVD/Aは適正値(つまり、ドップラ信号VDPLがもつDCオフセットレベル)になっていると思われる。ところが、実際上は、DCオフセットレベルVD/Aが適正値より大きくなりすぎている可能性もあるため、図10に示す学習処理では、そのような可能性を考慮して、適正なDCオフセットレベルVD/Aを設定できるように処理が行われる。
【0041】
図10に示す学習処理では、まず、図2に示したACアンプ7及びDCアンプ5からそれぞれAC増幅信号VAC及びDC増幅信号VDCを取り込む(S41、S42)。次に、学習開始フラグがオンかどうかをチェックし(S43)、オフであればこの学習処理を終了し、オンであれば次にAC増幅信号VACに変動がないかチェックする(S44)。AC増幅信号VACに変動があれば、新たな基準値の学習は行わず、前回学習した基準値(VD/AREF、VDCREF)をそのまま維持し(S45)、学習開始フラグをオフに戻して(S46)、この処理を終了する。
【0042】
ステップS44でAC増幅信号VACに変動がなければ、次に、DC増幅信号VDCが0Vより僅かに高い所定値、例えば1.3Vを越えたかどうかをチェックし(S47)、越えてなければDCオフセットレベルVD/Aを所定の1単位だけ減少させて(S48)DC増幅信号VDCのレベルを上げる。そして、ステップS47の結果が肯定的になるまで、ステップS43〜48を繰り返す。
【0043】
ステップS47の結果が肯定的になると、つまり、DC増幅信号VDCがちょうど1.3Vに達すると、その時のDC増幅信号VDCとDCオフセットレベルVD/Aを基準値背ベルVDCREF、VD/AREFとしてメモリに記憶する(S49)。そして、学習開始フラグをオフに戻して(S46)、この処理を終了する。
【0044】
以上の学習処理で学習されたDCオフセットレベル基準値VD/AREFは、次の新たな学習が行われるまで、DCオフセットレベルVD/AとしてDCアンプ5にフィードバックされることになる。その結果として、常にDC増幅信号VDCは1.3Vを中心に振動し、無人状態では必ず1.3Vに静定することになるため、トイレットルームの状態に左右されずにDC増幅信号VDCに基づいて精度の良い利用者検出が行える。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。この実施形態では、図11、図12及び図13に示すように、進入、小用及び退去判定においてDC増幅信号VDCに加えてAC増幅信号VACも用いる。
【0046】
図11に示す進入判定では、まず、DC増幅信号VDCが第1閾値VTH1を越えたかチェックし(S61)、越えてなければ次に、AC増幅信号VACのピークレベルが所定のトリガレベルを越えているかをチェックする(S62)。ここで、トリガレベルとは、第1エリアにマイクロ波を反射する物体が存在するときに得られるAC増幅信号VAの最低値であり、このトリガレベルよりAC増幅信号VACのピークレベルが高ければ、第1エリア17に人が存在すると推定される。ステップS61、62の双方のチェック結果が否定的であれば、無人状態と看做されるので定期的(例えば640ms間隔で)にこのチェックを繰り返す。一方、ステップS61、62のいずれかのチェック結果が肯定的であれば、人が第1エリア17に進入したと看做されるので、小用判定へ移行する(S63)。
【0047】
図12に示す小用判定では、図7に示したDC増幅信号VDCに基づく判定処理(S74〜S77)に加えて、AC増幅信号VACのピークレベルが、第2エリア19に人が居ることを判断するための所定の閾値VTHACを2周期(1周期は例えば640ms)連続して越えているかをチェックし(S71)、越えていれば第2エリア19に人が居ると認識して(S75)、人体感知信号をオンにする(S76)。ステップS71のチェック結果が否定的なときは、その2周期のうち1周期においてAC増幅信号VACのピークレベルが閾値VTHACを越えていたかチェックし(S72)、1周期で越えていれば第2エリア19に人が居る可能性があるのでDC増幅信号VDCに基づく判定処理(S74〜S77)に入り、2周期とも越えてなければ、第2エリア19には人が居ないと看做せるので、進入判定に戻る(S73)。
【0048】
図13に示した退去判定では、まず、AC増幅信号VACに基づく判定を行い(S81〜S84)、次にDC増幅信号VDCに基づく判定を行う(S85以降)。前半のAC判定では、まず、AC増幅信号VACのピークレベルが閾値VTHAC以下か否かをチェックし(S81)、閾値VTHAC以下でなければ第2エリアにまだ人が居ると推定されるので、この退去判定を終了する(その640ms後に再び退去判定を繰り返す)。一方、AC増幅信号VACのピークレベルが閾値VTHAC以下であれば、次に、ステップS85以降のDC判定を既に1回以上行っているかをチェックする(S82)。DC判定を既に1回以上行っていれば、もう人が退去している可能性が相当にあるので、AC判定をパスして直ちにDC判定に移行する。
【0049】
DC判定をまだ1回も行ってなければ、次に、直前の周期におけるAC増幅信号VACのピークレベルが閾値より大きいか否かをチェックし(S83)、大きくなければ退去判定を終了する(その640ms後に再び退去判定を繰り返す)。一方、直前のAC増幅信号VACのピークレベルが閾値より大きければ、次に、過去の3周期にわたるAC増幅信号VACの周波数スペクトルを参照し、ピークパワーをもつ周波数帯域(ピーク周波数)の移動がその3周期の間にあったか否かをチェックする(S84)。このチェックの結果、ピーク周波数が移動があった場合は、その移動は人の退去動作に起因したものと推定できるので、人が退去したと認識して(S89)、人体感知信号をオフにする(S90)。一方、ピーク周波数の移動がなかった場合は、DC増幅信号VDCによって退去を確認するためにDC判定へ移行する。
【0050】
DC判定に入ると、まず、退去判定に移行してから既に所定のZ秒が経過しているか否かをチェックする(S85)。ここで、Z秒とは例えば数秒程度の時間であり、退去判定に移行してから(つまり、小用判定で第2エリア19内への人の進入を検出してから)Z秒が経過する前は、小用判定で検出された人が小用をせずに単に通過してしまう可能性が十分あると考えられ、一方、Z秒を経過した後は、通過の可能性は低く人が小用を行っている可能性が高いと考えられる。そこで、ステップS85の結果、Z秒以内のときは、通過した人に続いて別の人がすぐに進入してくる可能性を考慮して、短時間で退去判定を終了させるべく、所定の比較的短い時間Y秒の間だけ無人状態(つまり、DC増幅信号VDCのレベルが第1閾値VTH1以下の状態)であるか否かをチェックし(S86)、その結果が肯定的であれば退去と認識して(S89)、人体感知信号をオフにする(S90)。一方、Z秒が経過した後は、確実に退去判定を行うべく、所定の比較的長い時間W秒の間だけ無人状態であるか否かをチェックし(S87)、その結果が肯定的であれば退去と認識して(S89)、人体感知信号をオフにする(S90)。
【0051】
この第2の実施形態においても、図9及び図10に示したDCオフセットレベルの学習処理が上記の進入、小用及び退去判定とは別のプロセスで実行され、それにより、上記の進入、小用及び退去判定がトイレットルームの状況に左右されずに精度良く行われる。
【0052】
以上説明した実施形態は小便器の利用者検出に本発明を適用したものであるが、本発明は他の様々な用途の物体検知にも適用することができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明の物体検知装置は、所定距離以内に物体が存在するか否かを、周囲の状況に左右されずに安定して精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態にかかる小便器用の物体検知装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】 DCアンプ5とACアンプ7の回路図。
【図3】 DC増幅信号VDCとAC増幅信号VACの波形図。
【図4】 小便器15の正面に設定された2つの監視エリアを示す平面図。
【図5】 第1及び第2のエリア17、19に人が居るか否かをDC増幅信号VDCのレベルに基づいて認識するために用いる閾値VTH1、VTH2を示す図。
【図6】 第1実施形態の進入判定のフローチャート。
【図7】 第1実施形態の小用判定のフローチャート。
【図8】 第1実施形態の退去判定のフローチャート。
【図9】 DCオフセットレベルを学習するための準備処理のフローチャート。
【図10】 DCオフセットレベルを学習する処理のフローチャート。
【図11】 第2実施形態の進入判定のフローチャート。
【図12】 第2実施形態の小用判定のフローチャート。
【図13】 第2実施形態の退去判定のフローチャート。
【符号の説明】
1 物体検知装置
3 センサ
5 DCアンプ
7 ACアンプ
8 マイクロコンピュータ
Claims (5)
- 対象物までの距離に応じた振幅と対象物の移動速度に応じた周波数とをもつ信号を出力するドップラーセンサーと、
前記ドップラーセンサーの出力信号を増幅するDCアンプと、
前記DCアンプの出力であるDC増幅信号と所定の閾値とを比較することにより、所定距離内における対象物の有無を検知する手段を有するマイクロコンピュータとを備える物体検知装置において、
前記マイクロコンピュータは、対象物を非検知時の前記ドップラーセンサーの出力信号であるDCオフセットレベルを学習してDCオフセットレベル基準値として記憶し、前記DCオフセットレベル基準値を前記DCアンプにフィードバックする手段を備え、
前記DCアンプは、前記ドップラーセンサーの出力信号から、前記マイコロコンピュータからフィードバックされる前記DCオフセットレベル基準値を差し引いて差分信号を生成する差分信号生成手段を備えることを特徴とする物体検知装置。 - 請求項1記載の物体検知装置において、
前記マイクロコンピュータは、所定時間に亘って前記差分信号のレベルが所定の閾値を超えていないときに、前記DCオフセットレベル基準値を更新する手段を有することを特徴とする物体検知装置。 - 請求項1又は請求項2記載の物体検知装置において、
前記マイクロコンピュータは、比較的に遠い第1の距離内での物体の有無を判定するための第1の閾値と、
比較的に近い第2の距離内での物体の有無を判定するための第2の閾値と、
を有すると共に、
前記差分信号のレベルと第1の閾値と第2の閾値とを用いて、第1の距離内への物体の進入と、第2の距離内への物体の進入と、第1の距離外への物体の退去とを判定する手段と、
を有することを特徴とする物体検知装置。 - 請求項3記載の物体検知装置において、
前記マイクロコンピュータは、前記差分信号のレベルと第1の閾値とを比較することにより、第1の距離内へ対象物が進入したか否かを判定する第1の判定手段と、
前記第1の判定手段が物体の進入を判定したことに応答して、前記差分信号のレベルと第2の閾値とを比較することにより、第2の距離内に対象物が進入したか否か判定する第2の判定手段と、
前記第1又は第2の判定手段が対象物の進入を判定したことに応答して、前記差分信号のレベルと第1の閾値とを比較することにより、第1の距離外へ対象物が退去したか否かを判定する第3の判定手段と、
を有することを特徴とする物体検知装置。 - 請求項1乃至請求項4記載の何れか1項記載の物体検知装置において、
前記ドップラーセンサーの交流成分を増幅してAC増幅信号を出力するACアンプを更に備え、
前記マイクロコンピュータが、前記差分信号と前記AC増幅信号とを併用して、所定距離内における対象物の有無を検知する手段を有することを特徴とする物体検知装置。
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