JP3703812B2 - Fdtd法を用いた電磁界解析方法、電磁界解析における媒質表現方法、シミュレーション装置、及びプログラム - Google Patents

Fdtd法を用いた電磁界解析方法、電磁界解析における媒質表現方法、シミュレーション装置、及びプログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、解析空間を6面体のセルに分割し、FDTD(Finite Difference Time Domain )法を用いて電磁界解析を行うための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
電磁界解析は、アンテナ問題や電磁波散乱問題を始めとする各種分野で行われている。その解析手法として、有限要素法やモーメント法、或いは境界要素法などが用いられていたが、近年、K.S.Yeeにより提案された有限差分法であるFDTD(Finite Difference Time Domain )法が注目されている。これは、アルゴリズムが簡単であること、優れた精度を持つこと、適用範囲が広いこと、などの長所を有しているためである。
【0003】
そのFDTD法は、電磁界を時間領域と解析空間において差分化し、解析対象物体の幾何学的な配置や形状、導電率、透磁率等の電気的(物理的)特性から電磁界の挙動を数値解析により求める手法である。時間領域では微小時間(Δt)で離散化を行い、解析空間はセルと呼ばれる単位に分割して離散化を行う。
【0004】
図1は、解析空間を分割するセルを説明する図である。図1に示すように、セルは、x軸方向はΔx、y軸方向はΔy、z軸方向はΔzの長さを持つ6面体(通常は立方体)として設定される。磁界強度は、各面の中心に配置され、電界強度は、面を構成する各辺の中心に配置されている。そのようにして、磁界強度と電界強度を空間的に半セル分ずらして差分化することにより、電界の回転が磁界をつくり、磁界の回転が電界をつくる、というマクスウェルの方程式を直接的に解ける配置となっている。セルサイズは、一般的には問題とする最短波長の1/10以下に設定される。
【0005】
空間的にずらして差分化される電界と磁界は、図2に示すように、時空間では交互に配置される。電界強度と磁界強度を交互に計算するリープフロッグアルゴリズムが用いられている。それにより、電界強度から磁界強度を求め、磁界強度から電界強度を求めるというようにそれらは交互に計算される。図2中に表記された「n−1/2」や「n」などの上添字は、時間領域上で配置された位置を表している。時間領域の差分は、Courant 安定条件を満たすように行われる。
【0006】
FDTD法では、上述したように、時間領域と解析空間の差分化に中心差分法が使われている。解析を行う分野によって、電界と磁界の時間軸、空間座標中の配置が逆となる場合もある。
【0007】
FDTD法の基本となるマクスウェルの方程式は、アンペアの周回積分の法則とファラデーの電磁誘導の法則を基本とする。それぞれの法則は微分形と積分形とで表され、上記マクスウェルの方程式は、通常、電界、磁界に関するガウスの法則と組み合わせた計4つの方程式のことを言う。微分形のマクスウェルの方程式は、電界強度E[V/m]、磁界強度H[A/m]、電束密度D[C/m2 ]、磁束密度B[T]、電荷密度ρ[C/m3 ]、電流密度J[A/m2 ]を用いて次のように表される。
【0008】
【数1】
Figure 0003703812
【0009】
ここで(1)式(アンペアの法則)、(2)式(ファラデーの電磁誘導の法則)、(3)式(磁界中のガウスの法則)、(4)式(電界中のガウスの法則)は独立な式ではなく、FDTD法において(3)、(4)式は数値誤差の評価基準として用いられる程度で、定式化には(1)、(2)式が用いられる。(1)、(2)式にYeeのアルゴリズムを用いて、時空間と空間座標について中心差分法を適用し、定式化すると、3次元空間において次のようなFDTD基本方程式を得ることができる。
【0010】
【数2】
Figure 0003703812
【0011】
ただし、μ:透磁率、ε:誘電率、σ:抵抗率である。
(5)、(6)式中の「E」や「H」の各シンボルに下添字として付した「x」や「y」は、それぞれ、電界強度、磁界強度の方向を表している。ここでは、x方向に割り当てた電界強度、磁界強度のみを示したが、y、z方向についても同様に導出できる。
【0012】
【非特許文献1】
羽野、「FDTD(Finite Difference Time Domain )法」、平成14年電気学会全国大会論文集、第5冊、pp411−414、2002
【非特許文献2】
野田、横山、「FDTD法に基づく汎用サージ解析プログラムの開発」、電学論B、121巻5号、pp625−632、2001
【非特許文献3】
J.Fang and J.Ren、“A Locally Conformed Finite-Difference Time-Domain Algorithm of Modeling Arbitrary Shape Planar Metal Strips ”、IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES、VOL.41、NO.5、MAY 1993
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
FDTD法では、図1に示すようなセルで解析空間を分割するのを基本とする。このため、そのセルの格子(辺)上に存在しない導体などの解析対象物体を表現する場合には、その形状を階段状に近似する階段近似法が用いられていた。しかし、階段近似法で表現される形状と実際の形状との間には大きな違いがあるのが普通である。このため、階段近似法を用いて行う従来の解析方法では、解析対象物体の共振周波数やその伝搬時間などに大きな誤差が生じて、解析を高精度に行えないという問題点があった。
【0014】
セルサイズを小さくすることにより、階段近似法で表現される形状と実際の形状との間の違いを小さくすることができる。しかし、そのサイズを小さくすると、それに伴いセル数が増大することから、必要な計算機資源や計算時間が膨大となってしまう。このため、部分的であってもセルサイズを小さくすることは望ましくない。サージ解析の分野では、比較的に大きな解析空間を対象にすることが多いことから、言い換えればセル数が大きいのが普通であることから、特に望ましくないと言える。
【0015】
セルの形状を変形させて解析対象物体の形状を表現する場合には、その物体に応じたモデリングが必要になり、一般性に欠ける。その物体が格子上となるように座標系を設定する方法は、複数の物体が任意の状態で解析空間内に存在していれば用いることができないのが普通である。このようなことから、セルサイズを小さくする、セルの形状を変形させるといった操作を行うことなく、解析空間内に存在する解析対象物体をより正確に表現して解析を行えるようにすることが重要であると考えられる。
【0016】
本発明は、解析空間内に存在する解析対象物体(媒質)を常により正確に表現できるようにして、電磁界解析を確実に高精度に行えるようにするための汎用的な技術を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のFDTD法を用いた電磁界解析方法は、解析空間を6面体のセルに分割し、FDTD(Finite Difference Time Domain )法を用いて電磁界解析を行うための方法であって、セルに分割する解析空間に存在する媒質のなかから選択した媒質を線として設定し、セルを構成する面のなかで線が辺を横切る面を該線で複数に分割して電界強度、或いは磁界強度を求める。
【0018】
なお、上記線による面の分割は、該面を該線で分けて得られる複数の分割面のなかで磁界強度を計算する位置を含まない分割面は隣接する面に加え、該位置を含む分割面は隣接する面に加えない形で行う、ことが望ましい。線で複数に分割される面の電界強度には、該面の周辺で計算した方向が同じ電界強度を採用する、ことが望ましい。線で複数に分割される面の磁界強度は、該線を含む積分路で求めた電界強度を用いて計算する、ことが望ましい、線で複数に分割される面と交差する方向に隣接し、且つ該線が横切る辺を有する面の磁界強度は、複数の分割面と隣接していると想定して計算する、ことが望ましい。線で複数に分割される面の電界強度は、該線を考慮せずに電界強度を全て計算した後、計算した電界強度を補正する形で求める、ことが望ましい。
【0019】
また、分割面を隣接する面に加えることにより面積に仮想的な変化が生じる面では、該変化を電界強度、或いは磁界強度の計算に反映させる、ことが望ましい。その反映は、変化が生じる面の近傍に位置する面で求められる電界強度、或いは磁界強度を用いて行う、ことが望ましい。
【0020】
本発明の電磁界解析における媒質表現方法は、解析空間を6面体のセルに分割し、FDTD法により行う電磁界解析で媒質を表現するために用いられる方法であって、セルに分割する解析空間に存在する媒質を選択し、該選択した媒質を、セルを構成する面の辺を横切る線として設定し表現する。
【0021】
本発明のシミュレーション装置は、解析空間を6面体のセルに分割し、FDTD法を用いて電磁界解析を行うことを前提とし、解析空間に存在する媒質を線として設定する媒質設定手段と、媒質設定手段により設定した線が解析空間を分割するセルの面のなかで辺を横切る面を該線で分割して電界強度、或いは磁界強度を求める解析手段と、を具備する。
【0022】
なお、上記線による面の分割は、該面を該線で分けて得られる複数の分割面のなかで磁界強度を計算する位置を含まない分割面は隣接する面に加え、該位置を含む分割面は隣接する面に加えない形で行う、ことが望ましい。解析手段は、線で複数に分割される面の電界強度として、該面の周辺で計算した方向が同じ電界強度を採用する、ことが望ましい。
【0023】
また、解析手段は、分割面を隣接する面に加えることにより面積に仮想的な変化が生じる面では、該変化を電界強度、或いは磁界強度の計算に反映させる、ことが望ましい。その反映は、変化が生じる面の近傍に位置する面で求められる電界強度、或いは磁界強度を用いて行う、ことが望ましい。
【0024】
本発明のプログラムは、解析空間を6面体のセルに分割し、FDTD法により電磁界解析を行うシミュレーション装置として用いられるデータ処理装置に実行させることを前提とし、解析空間に存在する媒質を線として設定する機能と、設定する機能により設定した線が解析空間を分割するセルの面のなかで辺を横切る面をその線で分割して電界強度、或いは磁界強度を求める機能と、を実現させる。
【0025】
本発明では、解析空間に存在する媒質のなかから選択した媒質(導体や構造物など)を線として設定(表現)し、セルを構成する面のなかでその線が辺を横切る面を複数に分割して電界強度、及び磁界強度の少なくとも一方を求める。
【0026】
その線で面を複数に分割して電界強度、及び磁界強度の少なくとも一方を求めることにより、その線を、セルの面の辺上に配置した形で扱うことになる。その線はセルの面上に配置すれば良いから、高い自由度が得られ、汎用性は向上する。その線で表現する媒質は形状をより正確に模擬することが可能となる。これらのことから、高い汎用性を実現させつつ、電磁界解析は確実に高精度に行えるようになる。
【0027】
上記線による面の分割を、その面をその線で分けて得られる複数の分割面のなかで磁界強度を計算する位置を含まない分割面は隣接する面に加え、その位置を含む分割面は隣接する面に加えない形で行うようにした場合には、その分割に伴い面の数が増大することは回避される。その結果、最終的に求める強度の数、即ち解析結果として保存の対象となるデータの量の増大は回避され、必要な計算機資源の増大は抑えられる。
【0028】
分割面を隣接する面に加えることにより面積に仮想的な変化が生じる面において、その変化を電界強度、或いは磁界強度の計算に反映させるようにした場合には、その変化に伴って生じる誤差は回避、或いは低減させることが可能となって、その変化を計算に反映させる強度はより高精度に得られるようになる。強度の変化は、隣接する面間で伝搬していく。それにより、近傍の面で求められる強度には、媒質が同じであれば比較的に大きな違いがないのが普通である。このことから、その反映を面積の変化が生じる面の近傍に位置する面で求められる電界強度、或いは磁界強度を用いて行うようにしたときには、計算する強度は更に高精度に得られるようになる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図3は、セルを構成する面とその面の辺を横切る導体の位置関係を説明する図である。始めに、図3を参照して、本実施の形態で用いられる導体(他と区別すべき媒質)の表現方法、その導体周辺における磁界と電界の近似方法について詳細に説明する。
【0030】
本実施の形態では、解析空間は一般的な空間分割手法により6面体のセル(図1参照)に分割し、導体の形状や配置は別に設定する。それにより、セルを構成する面上の任意の位置に任意の角度で傾斜した導体の形状を線で模擬する。セルの格子上に配置できない導体を面上の線で模擬する。
【0031】
そのように線で模擬した場合、辺を横切る導体は、それと対向する辺を横切るか、或いはそれと隣接する辺を横切ることになる。図3(a)は前者、即ち対向する2辺を導体が横切る場合の位置関係を示し、同図(b)は後者、即ち隣接する2辺を導体が横切る場合の位置関係を示している。同図(b)では、面ACDE以外を通る導体は破線で示してある。面上の磁界強度を計算する位置は、黒丸を内部に持つ円で示してある。
【0032】
従来、FDTD法では、各辺で1つの電界だけを定義する。しかし、本実施の形態では、導体が横切る辺では、それらが交差する点を境に2つ定義する。導体に隣接する磁界の積分路は、その面の辺に沿った積分路から導体を含む積分路に変更する。そのようにして、電界強度や磁界強度を計算する面を導体により分割し、分割した面(分割面)別にそれらの強度を計算する形で格子上以外に存在する導体を考慮する。以下、図3(a)、図3(b)に示すケース別に、導体周辺の磁界と電界の近似方法について具体的に説明する。
【0033】
図3(a)に示すケースでは、導体が辺BH上の点A、及び辺EG上の点Fで交差している。このことから、このケースでは、辺BHは辺AB、AH、辺EGは辺EF、FGにそれぞれ2つに分けて、その中心にあるy方向の電界強度Eyを定義する。ここでは、それらの電界強度Ey を以下のように定義する。
【0034】
【数3】
Figure 0003703812
【0035】
(10)、(11)式中の括弧内は、電界強度Ey を定義した座標位置を表している。シンボル「Δy」はy方向上のセルサイズを表している。「AB」は、点Aと点Bの間の長さを表している。それらは他の式でも同様である。
【0036】
図3(b)に示すケースでは、導体が辺AC上の点B、及び辺AE上の点Gで交差している。このことから、このケースでは、辺ACは辺AB、BCの2つに分け、その中心にあるy方向の電界強度Ey を同様に以下のように定義する。
【0037】
【数4】
Figure 0003703812
【0038】
一方、導体の近傍に割り当てられたx方向の電界強度Ex は、以下のように計算する。
図3(a)に示すケースでは、積分路ABCDEFAと積分路BCDEBを用いて計算した磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)が同一でなければならないという関係から、電界強度Ex (i+1/2,j,k)は次式を用いて計算する。
【0039】
【数5】
Figure 0003703812
【0040】
同様に図3(b)に示すケースでは、積分路BCDEFGBと積分路BCDEGBを用いて計算した磁界強度Hz (i+1/2,j+1/2,k)が同一でなければならないという関係から、電界強度Ex (i+1−EG/2Δy,j+1,k)は次式を用いて計算する。
【0041】
【数6】
Figure 0003703812
【0042】
電界強度Ex (i+AG/2Δx,j+1,k)についても同様の式で計算できる。
(13)、(14)式を導出する際に考慮したように、導体の周辺にある磁界強度は、その積分路を導体に沿った形に変更し計算する。図3(a)に示すケースでは、磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)を計算する際の積分路は積分路ABCDEFAとする。導体の電界強度Eはゼロであるから、磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)は次式を用いて計算される。
【0043】
【数7】
Figure 0003703812
【0044】
導体が横切る面BEGHを構成する面(分割面)ABEFはその内部に磁界強度Hz を計算する位置を含まない。その分割面ABEFで磁界強度Hz を計算すると、計算して残すべき磁界強度Hの数が面の分割によって増大する。その管理には煩雑な処理が必要となる。分割面ABEFを面BCDEに加えて、磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)を計算する際の積分路を積分路ABCDEFAとしたのは、そのようなことを回避するためである。他方の分割面AFGHでは、そのようなことが生じないことから、一つの面として扱う。
【0045】
一方、磁界強度Hz (i+1/2,j+1/2,k)も同様に、積分路AFGHAに沿って計算される。図3(b)に示すケースでも同様に、磁界強度Hz (i+1/2,j+1/2,k)を計算する際の積分路は積分路BCDEFGBとなり、磁界強度Hz (i+1/2,j+3/2,k)を計算する際の積分路は積分路ABGFHIAとなる。
【0046】
導体を含む面に垂直で、その導体が交わる格子(辺)を含む面の磁界強度Hは、その後に計算する。その計算は、(10)〜(14)式により補正された電界強度Eを用いて行う。例えば図3(a)に示すケースでは、磁界強度Hx (i,j+1/2,k+1/2)は電界強度Ey (i,j+AB/2Δy,k)、Ey (i,j+1−AH/2Δy,k)を用いて次式により計算する。他の磁界強度Hx (i,j+1/2,k+1/2)、Hx (i+1,j+1/2,k−1/2)、及びHx (i+1,j+1/2,k−1/2)、図3(b)に示すケースでは、磁界強度Hx (i,j+1/2,k+1/2)、Hx (i+1,j+1/2,k−1/2)、Hy (i+1/2,j+1,k−1/2)、及びHy (i+1/2,j+1,k−1/2)についても同様の式で計算することができる。
【0047】
【数8】
Figure 0003703812
【0048】
格子を横切る導体と、格子上に近似された導体との接続は簡単に行うことができる。例えば図3(a)に示すケースで辺AHは導体の内部に存在するのであれば、その辺AH上で定義する電界強度Ey をゼロとするだけで良い。このようなことから、解析空間に存在する任意の解析対象物体(構造物)を線状の導体として表現できる。
【0049】
上述したように、例えば図3(a)に示すケースでは、磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)の計算には積分路ABCDEFAを用い、辺AB上の電界強度Ey は辺BC上の電界強度Ey と定義している。そのようにすると、導体で面を分割しても、計算する強度の数が増えるようなことは回避される。つまり、必要な計算機資源が増大するようなことを回避しつつ、解析対象物体を線として模擬できるようになる。プログラム開発の面では、計算した強度を代入するための配列変数を新たに用意する必要性が回避されることから、言い換えれば、計算した強度の管理は従来と同じ方法で行えることから、その開発が容易となる。既存の解析プログラムに本発明を適用する場合には、そのためのアップデートをより容易に行えることになる。
【0050】
辺BC上の電界強度Ey を辺AB上の電界強度Ey と定義すると、辺BC上の電界強度Ey は辺AC上で求めた電界強度Ey として扱われることになる。しかし、FDTD法では中間差分が採用されていることもあって、そのように扱っても誤差は小さな範囲内に収まりやすい。磁界強度Hを上述したように計算し、電界強度Eを上述したように定義するのはそのような理由からである。計算機資源に余裕があるような場合には、導体を境に面を分割し、分割した面毎に電界強度、及び磁界強度の少なくとも一方を求めるようにしても良い。
【0051】
導体を表現する線は、セルを構成する面上に配置しなければならない。しかし、格子上に配置する場合と比較すると、線を配置できる場所が直線上から平面上に変化したために、線を配置するうえでの制約は大幅に緩和して自由度は大きく向上することになる。直線でない線も扱えるようになる。このため、高い汎用性が得られる。たとえ階段近似を行う場合であっても、格子上に沿って線を配置する必要がないために、セルサイズを小さくすることなく、より小さな誤差で形状を表現することができる。
【0052】
図4は、本実施の形態によるシミュレーション装置の回路構成図である。その装置は、上述したように導体を模擬して、例えばサージ解析を行うためのものである。
【0053】
その装置は、例えばコンピュータ(データ処理装置)に本実施の形態による解析プログラムを実行させることで実現されるものである。図4に示すように、CPU301、ROM302、RAM303、通信インターフェース304、例えばハードディスク装置である記憶装置305、可搬の記録媒体330の読み取りを行う記録媒体読み取り装置306、キーボードやポインティングデバイスなどを含めて表記した入力装置307、及び例えば不図示の表示装置に画像を出力する出力装置308がバス309により互いに接続されて構成されている。
【0054】
上記解析プログラムは、記憶装置305、記録媒体330、或いは外部装置がアクセス可能な記録媒体320に格納されている。記録媒体320に解析プログラムが格納されている場合、CPU301は、外部装置、ネットワーク、通信インターフェース304、及びバス309を介してその解析プログラムを取得し実行する。
【0055】
図5は、上記解析プログラムの機能構成を示す図である。
図5中の形状ファイル521は、解析空間やその空間内に存在する解析対象物体などの形状や配置などの設定データを格納したファイルである。線状の導体として扱う構造物(媒質)は、例えば線の始点と終点の座標を示すデータで形状ファイル521中に設定されている。パラメータファイル522は、解析を行ううえで用いるべきパラメータの値などを格納したファイルである。電圧源や境界条件などに関する設定はそのファイル522を介して行われる。出力ファイル523は、解析結果を出力するファイルである。それらのファイル521〜523は、ユーザが指定する。
【0056】
解析プログラム500は、形状ファイル521、及びパラメータ522を入力ファイルとして、それに格納されているデータを用いて電磁界解析(サージ解析、など)を行い、その解析結果を出力ファイル523に出力するものとして実現されている。
【0057】
解析プログラム500の機能構成は、入力部501、解析部502,及び出力部502に大別される。入力部501は、形状ファイル521、及びパラメータファイル522に格納されたデータを取り込み、解析部502に提供することを主に行う。
【0058】
解析部502は、境界条件処理部504、電界解析部505、及び磁界解析部506を備えている。境界条件処理部504は、設定された境界条件を電界解析部505、及び磁界解析部506に提供する。電界解析部505は、それが直前の時間ステップで計算した電界強度Eや磁界解析部506が計算した磁界強度Hを用いて現時点の時間ステップでの電界強度Eを計算する。他方の磁界解析部506は、それが直前の時間ステップで計算した磁界強度Hや電界解析部505が計算した電界強度Eを用いて現時点の時間ステップでの磁界強度Hを計算する。出力部503は、各解析部505、506が計算によりそれぞれ求めた強度E,Hを時刻に対応付けして出力ファイル523に出力する。
【0059】
電界解析部505は、電界強度計算部507と電界強度補正部508を備える。電界強度計算部507は、セルの格子を導体が横切っていないことを想定して電界強度Eを計算する。電界強度補正部508は、電界強度計算部507が計算した電界強度Eを入力し、導体が格子を横切っている面の電界強度Eを上述したように補正する。電界強度Eを全て計算した後に補正を行うのは、導体が格子を横切る面では、その格子上の電界強度Eとして他の面の電界強度Eを定義していることから、他の面の更新を行う前の電界強度Eを定義してしまうことを確実に回避するためである。出力部503には、その補正を行った後の電界強度Eを出力する。
【0060】
他方の磁界解析部506は、電界解析部505と同様に、磁界強度計算部509と磁界強度補正部510を備える。磁界強度計算部509は、セルの格子を導体が横切っていないことを想定して磁界強度Hを計算する。磁界強度補正部510は、磁界強度計算部509が計算した磁界強度Hを入力し、導体が格子を横切っている面の磁界強度Hを上述したように補正する。ここでも同様に、磁界強度Hを全て計算した後にその補正を行う。出力部503には、その補正を行った後の磁界強度Hを出力する。
【0061】
次に、上記機能構成を有する解析プログラムをCPU301が実行することで実現される電磁界解析(例えばサージ解析)処理について、図6に示すそのフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0062】
先ず、ステップS1では、ユーザが指定した形状ファイル521、及びパラメータファイル522に格納されていうデータにアクセスすることにより、それらのファイル521、522で設定されている解析条件を読み込み、次の時間ステップでの計算を行ううえでの初期設定を行う。続くステップS2では、解析空間の持つ6つの面(それを囲む面)でそれぞれ定められた境界条件の処理を行う。その後はステップS3に移行する。
【0063】
ステップS3では、解析空間全体で電界強度Eの計算を行う。その計算は、セルの格子を横切る導体が存在していないことを想定して行う。その次に移行するステップS4では、導体の格子の横切り方に応じて、(10)〜(14)式を用いて説明したように導体周辺の電界強度Eを補正する。その後に移行するステップS5では、格子上の導体に関する電界強度Eの補正を行い、導体内に位置する格子上の電界強度Eはゼロにする。ステップS6にはその後に移行する。
【0064】
ステップS6では、解析空間内に存在する電圧源、電流源といった給電部の置かれた位置の電界強度Eを計算する。次のステップS7では、ステップS2〜S6を実行することで得られた電界強度Eや電圧値などの計算結果を出力ファイル523に出力する。その後はステップS8に移行する。
【0065】
ステップS8では、解析空間全体で磁界強度Hを計算する。続くステップS9では、導体の格子の横切り方に応じて、(15)、(16)式を用いて説明したように導体周辺の磁界強度Hを補正する。その次に移行するステップS10では、ステップS8、或いはS9を実行することで得た磁界強度Hや電流値などの計算結果を出力ファイル523に出力する。その後はステップS11に移行して、解析を行った時間の長さである時刻tが最大観測時間Tmax より大きいか否か判定する。定められた最大観測時間Tmax 分の解析が終了した場合、判定はYESとなり、ここで電磁界解析処理を終了する。そうでない場合には、判定はNOとなって上記ステップS1に戻り、時間ステップを1つ進めて、それ以降の処理を同様に実行する。
【0066】
次に、本実施の形態によるシミュレーション装置を用いて行った解析結果について説明する。
図7は、導体の位置関係を示す図である。解析空間内に存在する導体やそれらの間の位置関係などを示したものである。
【0067】
その解析空間では、大地に水平に設置された導体701が、その大地を覆う銅板702から0.6mの位置に置かれている。その導体701は、長さ4[m]、半径15×10-3[m]のアルミパイプである。その導体701には、特性インピーダンス50オームのケーブルに充電した電荷を水銀リレーで投入するタイプのパルスジェネレータ(PG)703が、断面積2[mm2 ]の銅線により接続されている。
【0068】
そのような解析対象物体を持つ解析空間において、図9に示すような電圧波形をPG703から導体701に印加した場合の印加端での電流・電圧波形を求める解析を検証解析として行った。その実測結果は非特許文献2から得た。また、比較・検討のために、導体701を格子上に配置する従来の手法(以降、「従来手法1」と記す)及び導体701を格子上に配置せずにそれを階段近似する従来の手法(以降、「従来手法2」と記す)による解析を行った。導体701は、従来手法1では図8(a)に示すように、y、zの各軸方向とは直交し、x軸方向とは平行な面の格子上に配置したのに対し、本実施の形態では図8(b)に示すように、z軸方向とは直交するxy平面にx、yの各軸方向とは交差させる形で配置した。従来手法2でも基本的には図8(b)に示すようにして階段状に配置した。
【0069】
非特許文献2に記載されたFDTD法による計算では、導体701の存在する位置に定義された導体701方向成分をゼロとし、その半径は考慮していない。解析空間を分割するセルの一辺の長さをΔsとすると、FDTD法による計算半径は0.2298Δs[m]として取り扱っている。
【0070】
印加端解放時の電圧波形は、図9に示すように模擬し、銅板702で模擬した大地の抵抗率は1.69×10-8オーム・メートルとしている。実験で用いられたカレントセンサは立ち上がり時間が2nsの製品である。それにより、単位ステップ電流が流れたとしても、その応答は次式で表される1次遅れとなる。
【0071】
【数9】
Figure 0003703812
【0072】
(17)式を微分すると、単位インパルス応答h(t)は次式で表される。
【0073】
【数10】
Figure 0003703812
【0074】
よって、観測される波形とFDTD法を用いた計算結果を比較する場合、実測結果に次のコンボリュージョン演算を行っている。
0 =h(t)*i(t) (19)
その演算を行って得た実測結果と比較する形で本実施の形態による解析結果を図10に示す。同様に、その実測結果と比較する形で従来手法1、2による解析結果を図11、図12にそれぞれ示す。また、本実施の形態の解析結果を従来手法1の解析結果と比較する形で図13に示す。
【0075】
図10〜図13から明らかなように、導体701を格子上に配置する、つまり解析空間内に存在する導体を最適な状態に配置する従来手法1は、導体701を階段近似する従来手法2と比較して解析結果に高い精度が得られることが分かる。本実施の形態の解析結果は、その従来手法2のそれと比較して、精度が大きく向上し、従来手法1に近い精度が得られることが分かる。その従来手法1に近い精度が得られることから、本発明を電磁界解析に適用すると、導体701を格子上に配置しなくとも、従来の手法では得られない高い精度を達成できることが確認できた。
<第2の実施の形態>
上記第1の実施の形態では、線で表現(模擬)する導体で分割された分割面のなかで磁界強度Hを計算する位置を含まないものは隣接する面に仮想的に加えて扱っている。そのようにして加える分割面では、隣接する面(ここでは元の面と同じ大きさである)に比べて小さいことから、理論上、それを貫く磁束はゼロと近似している。それにより、例えば図3(a)に示すケースでは、面ABEFを貫く磁束はゼロとし、図3(b)に示すケースでは、面GEFを貫く磁束をゼロとしている。しかし、そのように近似する場合、導体の配置によっては比較的に大きな誤差が生じてしまう可能性がある。第2の実施の形態は、その誤差をより抑えられるようにしたものである。以降、第1の実施の形態から異なる部分について詳細に説明する。
【0076】
導体を表現する線は、図3(a)、(b)に示すように、対向する2辺、或いは隣接する2辺を横切る。後者における説明は前者のそれと比較して容易である。このため、前者に注目して、第1の実施の形態から異なる部分を説明する。
【0077】
第2の実施の形態では、導体を表現する線が対向する2辺を横切る場合、その線の中点を考慮する。それにより、図3(a)に示すようなケースでは、図14(a)に示すように、導体を表現する線AFの中点Lを考慮する。点K、Jは、中点Lとy方向上の位置が同じである辺BH、EG上の点である。点Iは、点Fとy方向上の位置が同じである辺BH上の点である。
【0078】
線AF(以降、「導体AF」とも表記する)が導体である場合、三角形の形状をした面JAL、KFLでは、それを貫く磁束は方向は逆で大きさは等しい。この導体AFを解析空間内に表現するために、導体AFを含んだ積分路ABCDEFAにファラデーの法則を用いて計算した磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)と、積分路ABCDEKJAに,同様にファラデーの法則を用いて計算した磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)は等しくなるという条件を利用する。
【0079】
面ABCDEF、ABCDEKJは、面JAL、KFLの面積が等しいために、それらの面積も等しくなっている。中点Lをさらに考慮するのはこのためである。それにより、面ABCDEFと面積、磁界強度Hが共に等しい別の面を利用して、その面積、つまり面BCDEの面積に面ABEFの面積を加えた面積での磁界強度Hをより高精度に算出するようにしている。
【0080】
面BCDEの磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)はファラデーの法則を用いて次式で計算される。
【0081】
【数11】
Figure 0003703812
【0082】
ここで右辺の第2項目では、
−K3z×1/(面BCDEの面積)×(面BCDE上の電界強度Eの周回積分値)
という関係が成立している。次に、この関係を用いて、積分路ABCDEFA、ABCDEKJAの各各積分路についてファラデーの法則を用いて磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)を計算し、それぞれの積分路で計算された磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)は等しいという条件に従い、電界強度Ey、Ex をx、y方向で中央差分することで(20)式が導出できる。ただし、導体AFとの位置関係から、電界強度Ex の線KL上の積分値と線LJ上の積分値は大きさが等しく符号が逆となり、電界強度Ex の線KL上の積分値は零(ゼロ)となる。また、電界強度Ey の線JA上の積分値と線KF上の積分値は等しくなる。
【0083】
【数12】
Figure 0003703812
【0084】
さらに,以上の(19)(20)式により計算された磁界強度Hは等しいので、辺BE上の電界強度Ex (i+1/2,j,k)は次式から計算される。
【0085】
【数13】
Figure 0003703812
【0086】
上述したようにして導出する磁界強度Hでは、考慮すべき面積を全て考慮している。それにより、磁界強度Hの導出に、仮想的に加えた分割面の面積分の磁束が反映されることになる。このため、(15)式から導出されるものと比較して、より正確になる。(21)式は、そのように磁界強度Hをより正確に導出することを前提にして得られる式であることから、それにより導出される電界強度Eもより正確なものとなる。
【0087】
ところで、(20)式は時間領域についてのみ中央差分を適用したファラデーの法則から磁界強度Hz (i+1/2,j−1/2,k)を導出するものである。電界強度Ex にはy方向上に1次オーダーの打ち切り誤差を含む中央差分が用いられている。表記法を変えて(20)式の内容を示したものを(22)式に、その中央差分を(23)式にそれぞれ示す。
【0088】
【数14】
Figure 0003703812
【0089】
(23)式が1次オーダーの打ち切り誤差を含むことは以下のように証明できる。
まず、次のテイラー展開を考える。
【0090】
【数15】
Figure 0003703812
【0091】
ただし、u=1+2EK/Δyである。(25)式−(24)式より
【0092】
【数16】
Figure 0003703812
【0093】
となり、1次オーダーの打ち切り誤差を生じることがわかる。(26)式中の「δ」はクロネッカーのデルタであり、「ο(2)」は2次以上の項を表すシンボルである。
【0094】
第2の実施の形態では、1次オーダーの打ち切り誤差を以下のようにしてさらに2次オーダーに減少させている。まず、次の新たなテイラー展開を考える。
【0095】
【数17】
Figure 0003703812
【0096】
(27)、(28)式より、
【0097】
【数18】
Figure 0003703812
【0098】
また、(26)式+(29)式より、
【0099】
【数19】
Figure 0003703812
【0100】
となる。以上より、
【0101】
【数20】
Figure 0003703812
【0102】
が導出される。そのようにして陰的に導出される(31)式を用いることにより、(15)式では回避できない面積ABEFを貫く磁束を近似的に零としたことによる誤差、さらには(20)式に含まれる1次オーダーの打ち切り誤差が軽減される。それにより、第1の実施の形態と比較して、より正確な解析モデルを得ることができる。図14(b)に示すケースでは、磁界強度Hz n+1/2(i+1/2,j+1/2,k)も同様の手法により計算される。
【0103】
上述したような計算を図5に示すシミュレーション装置に行わせる場合、(31)式を用いた磁界強度Hの計算は、図7に示す電磁界解析処理では例えばステップS9で行わせれば良い。(21)式を用いた電界強度Eの補正は、例えばステップS4で行わせれば良い。このようなことから、図5に示すシミュレーション装置での第2の実施の形態の実現は、その動作の流れは基本的に第1の実施の形態におけるそれから変更させることなく行うことができる。
【0104】
次に、上述したようにして実現できる第2の実施の形態によるシミュレーション装置を用いて行った解析結果について説明する。その解析は、上記第1の実施の形態と同じもの、即ち図7に示すように導体が存在する解析空間解析空間において、図9に示すような電圧波形をPG703から導体701に印加した場合の印加端での電流・電圧波形を求める解析を検証解析として行った。計算モデルが異なる以外、各種条件等は第1の実施の形態と全て同じである。そのようにして得られた解析結果を従来手法1による解析結果と比較する形で図15に示す。また、従来手法1、第1の実施の形態の各モデル、更には実測結果を含め、導体701の始端から伝搬した電流が終端で反射され始端に戻るまでの伝搬時間(Propagation time)[ns]、電流ピーク値(Peak value of current )[A]を図16に示す。
【0105】
図15、図16、及び図13から明らかなように、解析結果は従来手法1のそれと非常に良く一致している。第1の実施の形態と比較して、大きく精度が向上していることが分かる。これらのことから、第2の実施の形態で採用したモデルは、精度を向上させるうえで非常に有効であることが確認できる。特には図示していないが、(31)式の代わりに(20)式を用いても、第1の実施の形態と比較して精度が向上することが確認された。
【0106】
なお、第2の実施の形態では、導体によって分割されて隣接する面に仮想的に加える分割面の面積を正確に扱うために、言い換えればより高い精度を得るために、導体の中点(図14(a)では「L」の他に「K」や「J」も対応)を考慮しているが、別の点を考慮しても良い。例えば図14(a)に示すケースでは、点Lの代わりに点A、Fを考慮するようにしても良い。
【0107】
本実施の形態(第1、及び第2の実施の形態)では、導体を表現(模擬)する線として直線を用いているが、曲線であっても良い。線で表現する対象は、導体や構造物などに限定されるわけではなく、解析空間のなかに存在する媒質のなかから必要に応じて選択すれば良い。導体が横切る辺での電界強度Eの近似方法などについても、本実施の形態に限定されるわけではなく、様々な変形を行うことができる。
【0108】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明は、解析空間に存在する媒質のなかから選択した媒質(例えば導体や構造物など)を線として設定(表現)し、セルを構成する面のなかでその線が辺を横切る面を複数に分割して電界強度、及び磁界強度の少なくとも一方を求める。
【0109】
その線で面を複数に分割して電界強度、及び磁界強度の少なくとも一方を求めることにより、その線はセルの面の辺上に配置した形で扱うことになる。その線はセルの面上に配置すれば良いから、高い自由度が得られ、汎用性は向上する。高い自由度を実現させたことで線で表現する媒質の形状はより正確に模擬できるようになる。これらのことから、高い汎用性を実現させつつ、電磁界解析は確実に高精度に行えるようになる。
【0110】
上記線による面の分割を、その面をその線で分けて得られる複数の分割面のなかで磁界強度を計算する位置を含まない分割面は隣接する面に加え、その位置を含む分割面は隣接する面に加えない形で行うようにした場合には、その分割に伴い面の数が増大することは回避される。その結果、最終的に求める強度の数、即ち解析結果として保存の対象となるデータの量の増大は回避でき、必要な計算機資源の増大は抑えることができる。
【0111】
分割面を隣接する面に加えることにより面積に仮想的な変化が生じる面において、その変化を電界強度、或いは磁界強度の計算に反映させるようにした場合には、その変化に伴って生じる誤差は回避、或いは低減させることができる。このため、その変化を計算に反映させる強度はより高精度に得ることができる。強度の変化は、隣接する面間で伝搬していく。それにより、近傍の面で求められる強度には、媒質が同じであれば比較的に大きな違いがないのが普通である。このことから、その反映を面積の変化が生じる面の近傍に位置する面で求められる電界強度、或いは磁界強度を用いて行うようにしたときには、その変化に伴って生じる誤差の回避、或いは低減はより確実に行うことができる。その結果、計算する強度は更に高精度に得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】解析空間を分割するセルを説明する図である。
【図2】電磁界の時間配置を説明する図である。
【図3】セルを構成する面とその面の辺を横切る導体の位置関係を説明する図である。
【図4】本実施の形態によるシミュレーション装置の回路構成図である。
【図5】解析プログラムの機能構成を示す図である。
【図6】電磁界解析処理のフローチャートである。
【図7】導体の位置関係を示す図である。
【図8】導体の配置を説明する図である。
【図9】パルスジェネレータの電圧波形の時間変化を示す図である。
【図10】第1の実施の形態による解析結果を示す図である。
【図11】従来手法1による解析結果を示す図である。
【図12】従来手法2による解析結果を示す図である。
【図13】第1の実施の形態による解析結果を従来手法1による解析結果と比較して示す図である。
【図14】第2の実施の形態における磁界強度、及び電界強度の計算方法を説明するための図である。
【図15】第2の実施の形態による解析結果を示す図である。
【図16】各モデルでの伝搬時間と電流ピーク値を示す図である。
【符号の説明】
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 通信インターフェース
305 記憶装置
306 記憶媒体読み取り装置
307 入力装置
308 出力装置
320、330 記録媒体
500 解析プログラム
501 入力部
502 解析部
503 出力部
504 境界条件処理部
505 電界解析部
506 磁界解析部
507 電界強度計算部
508 電界強度補正部
509 磁界強度計算部
510 磁界強度補正部
701 導体
702 銅板
703 パルスジェネレータ

Claims (15)

  1. 解析空間を6面体のセルに分割し、FDTD(Finite Difference Time Domain )法を用いて電磁界解析を行うための方法であって、
    前記セルに分割する前記解析空間に存在する媒質のなかから選択した媒質を線として設定し、
    前記セルを構成する面のなかで前記線が辺を横切る面を該線で複数に分割して電界強度、或いは磁界強度を求める、
    ことを特徴とするFDTD法を用いた電磁界解析方法。
  2. 前記線による面の分割は、該面を該線で分けて得られる複数の分割面のなかで前記磁界強度を計算する位置を含まない分割面は隣接する面に加え、該位置を含む分割面は隣接する面に加えない形で行う、
    ことを特徴とする請求項1記載のFDTD法を用いた電磁界解析方法。
  3. 前記線で複数に分割される面の電界強度には、該面の周辺で計算した方向が同じ電界強度を採用する、
    ことを特徴とする請求項1記載のFDTD法を用いた電磁界解析方法。
  4. 前記線で複数に分割される面の磁界強度は、該線を含む積分路で求めた電界強度を用いて計算する、
    ことを特徴とする請求項1、2、または3記載のFDTD法を用いた電磁界解析方法。
  5. 前記線で複数に分割される面と交差する方向に隣接し、且つ該線が横切る辺を有する面の磁界強度は、複数の分割面と隣接していると想定して計算する、
    ことを特徴とする請求項2、または4記載のFDTD法を用いた電磁界解析方法。
  6. 前記線で複数に分割される面の電界強度は、該線を考慮せずに電界強度を全て計算した後、計算した電界強度を補正する形で求める、
    ことを特徴とする請求項1、または3記載のFDTD法を用いた電磁界解析方法。
  7. 前記分割面を隣接する面に加えることにより面積に仮想的な変化が生じる面では、該変化を前記電界強度、或いは磁界強度の計算に反映させる、
    ことを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載のFDTD法を用いた電磁界解析方法。
  8. 前記反映は、前記変化が生じる面の近傍に位置する面で求められる電界強度、或いは磁界強度を用いて行う、
    ことを特徴とする請求項7記載のFDTD法を用いた電磁界解析方法。
  9. 解析空間を6面体のセルに分割し、FDTD(Finite Difference Time Domain )法により行う電磁界解析で媒質を表現するために用いられる方法であって、
    前記セルに分割する前記解析空間に存在する媒質を選択し、
    該選択した媒質を、前記セルを構成する面の辺を横切る線として設定し表現する、
    ことを特徴とする電磁界解析における媒質表現方法。
  10. 解析空間を6面体のセルに分割し、FDTD(Finite Difference Time Domain )法を用いて電磁界解析を行うシミュレーション装置において、
    前記解析空間に存在する媒質を線として設定する媒質設定手段と、
    前記媒質設定手段により設定した前記線が前記解析空間を分割する前記セルの面のなかで辺を横切る面を該線で分割して電界強度、或いは磁界強度を求める解析手段と、
    を具備することを特徴とするシミュレーション装置。
  11. 前記線による面の分割は、該面を該線で分けて得られる複数の分割面のなかで前記磁界強度を計算する位置を含まない分割面は隣接する面に加え、該位置を含む分割面は隣接する面に加えない形で行う、
    ことを特徴とする請求項10記載のシミュレーション装置。
  12. 前記解析手段は、前記線で複数に分割される面の電界強度として、該面の周辺で計算した方向が同じ電界強度を採用する、
    ことを特徴とする請求項10記載のシミュレーション装置。
  13. 前記解析手段は、前記分割面を隣接する面に加えることにより面積に仮想的な変化が生じる面では、該変化を前記電界強度、或いは磁界強度の計算に反映させる、
    ことを特徴とする請求項11記載のシミュレーション装置。
  14. 前記反映は、前記変化が生じる面の近傍に位置する面で求められる電界強度、或いは磁界強度を用いて行う、
    ことを特徴とする請求項13記載のシミュレーション装置。
  15. 解析空間を6面体のセルに分割し、FDTD(Finite Difference Time Domain )法により電磁界解析を行うシミュレーション装置として用いられるデータ処理装置に実行させるプログラムであって、
    前記解析空間に存在する媒質を線として設定する機能と、
    前記設定する機能により設定した前記線が前記解析空間を分割する前記セルの面のなかで辺を横切る面を該線で分割して電界強度、或いは磁界強度を求める機能と、
    を実現させるためのプログラム。
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