JP3703278B2 - 加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば液晶表示装置のガラス基板などの加工を行う加工装置に関し、特に静電気によるワークの破壊を防止する搬送機構を備えた加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置のガラス基板などに代表されるワークに、工作機械などの装置を用いて例えば孔あけ加工、はんだ付けなど種々の作業を行う場合、一般的には装置内のステージ上に搬入されたワークが支持されて作業が行われ、作業終了後にワークがステージ上から搬出されるとともに、また次のワークがステージ上に搬入されるという方法を採ることが多い。
【0003】
このステージ上へのワークの搬送方法としては、ワークをステージ上面に対して水平方向から搬入、搬出する方法、ワークをステージ上方から搬入、搬出する方法の2つに大別することができる。ワークをステージ上面に対して水平方向から搬入、搬出する方法としては、ころ搬送、ビーム搬送などを例示することができる。また、ワークをステージ上方から搬入、搬出する方法としては、ワークを吸着部材に吸着させた状態で吸着部材とともに搬送するなどの例を挙げることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図4は、ステージ上からワークが水平方向に搬出される途中の状態を示す拡大断面図である。図4においては、ステージ1上での作業を終了したワーク2が図中右方向に搬出されようとしており、ステージ1の外側にワーク2の一部が突出した状態を示している。
ワークは各工程を流れる間に静電気を帯びることがあるが、上記のようにワーク2の一部がステージ1から突出した状態になると、突出部分の静電容量が突出していない部分に比べて小さくなり、表面電位は大きくなる。そのため、ワーク2内で表面電位が偏り、その結果絶縁層や電子部品などが静電気により破壊される恐れがある。これは、ワーク2がステージ1上に搬入される場合についても同様である。
【0005】
図5は、ステージ上からワークがステージ上方に搬出される途中の状態を示す拡大断面図である。図5においては、ステージ6上での作業を終了したワーク7が図中上方向に搬出されようとしている。
ステージ6からワーク7がステージ6上方に搬出される過程において、ステージ6の上面に対してワーク7が完全に平行状態を保ったまま搬出される場合には問題ないが、図5のように、ステージ6の上面に対してワーク7が傾いた状態となる場合には、上述と同様にワーク7の表面電位が偏り、その結果絶縁層や電子部品などが静電気により破壊される恐れがある。これは、ワーク7がステージ6上に搬入される場合についても同様である。
上記の点に鑑み、本発明は、静電気によるワークの破壊を防止する搬送機構を備えた加工装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
一般に、ワークの帯電電荷量をQ0、静電容量をC、ワークの表面電位をVとすると、これらの間には以下の式のような関係が成り立つ。
V=Q0/C ・・・(1)
すなわち、ワークの帯電電荷量Q0が一定ならば、ワークの表面電位Vは静電容量Cに反比例することになる。また、静電容量Cは極板(ここではワーク下面およびステージ上面のワーク対向部分)の面積Sに比例し、極板間(ここではワーク下面とステージ上面の間)の距離dに反比例する。
【0007】
図4に示すように、ステージ1とワーク2との距離d1は、ステージ基部3とワーク2との距離d2より短いので、上記の静電容量と極板間の距離の関係によれば、ワーク2の左側部分、すなわちステージ1上にあるワーク2左側の静電容量C1は、ワーク2の右側部分、すなわちステージ1上から突出しているワーク2右側の静電容量C2より大きくなる。ワーク2の帯電電荷量Q0は一定であるから、上記(1)式によりワーク2の左側部分の表面電位V1は、右側部分の表面電位V2より小さくなる。このため、ワーク2の表面電位が偏り、ワーク2のステージ1上にある部分とステージ1上から突出している部分の境界付近に電位差が生じ、この付近の絶縁層や電子部品などが静電気により破壊される恐れがある。
【0008】
そこで、本発明者らは、ワークがステージ上から突出した状態になっても、突出した部分の静電容量がステージ上に残った部分の静電容量と等しくなるようにすれば静電気によるワークの破壊を防ぐことが可能になると考え、鋭意研究の結果本発明に想到したものである。
すなわち、本発明に係る加工装置は、静電気によるワークの破壊を防止する搬送機構を備えた加工装置であって、ワークの加工時にワークを支持するとともに、少なくともワークの搬送時にワークと非接触な状態にされるステージに隣接して設けられ、該ステージと高さが等しく、かつ該ステージと電位が等しく、前記ワークと非接触なワーク搬入路およびワーク搬出路と、ワークをワーク搬入路およびワーク搬出路上で水平方向に移送する移送手段とを備え、前記ステージと前記ワークとの距離および前記ワーク搬入路と前記ワークとの距離を互いに等しく保ち、および/または前記ステージと前記ワークとの距離および前記ワーク搬出路と前記ワークとの距離を互いに等しく保ちつつ、前記ワークを水平方向に移送することを特徴とする。
また、前記ステージ、前記ワーク搬入路、および前記ワーク搬出路はいずれも、接地されるか、または同電圧の電流を印加するか、あるいは互いに電気的に接続され、前記ステージと前記ワーク搬入路と前記ワーク搬出路との互いの電位を同一に保つことを特徴とする。さらに、前記ワーク搬入路および/または前記ワーク搬出路は、前記ステージに隣接していない側の末端部を5度以下の角度で下方向へ傾斜させたことを特徴とする。そして、前記ワークに接触して前記ワーク表面に付着した塵埃を除去する粘着層を有するローラーをさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
上記のような加工装置において、ステージ上とワーク搬入路上にワークがまたがった状態にある場合、ステージとワーク間の距離およびワーク搬入路とワーク間の距離は等しくなっているので、ステージ上の部分のワークの静電容量と、ワーク搬入路上の部分のワークの静電容量はほぼ等しい。従って、ステージ上の部分のワークの表面電位と、ワーク搬入路上の部分のワークの表面電位もほぼ等しくなる。これにより、ワークの搬入時にワーク上で電位差が生じることはなく、静電気によるワークの破壊を防止することができる。
【0010】
同様に、上記のような加工装置において、ステージ上とワーク搬出路上にワークがまたがった状態にある場合も、ステージ上の部分のワークの表面電位と、ワーク搬出路上の部分のワークの表面電位はほぼ等しくなるので、ワークの搬出時にワーク上で電位差が生じることはなく、静電気によるワークの破壊を防止することができる。
ここで、ステージと、ワーク搬入路およびワーク搬出路の電位を等しくするためには、ステージ、ワーク搬入路、ワーク搬出路とも接地する、ステージ、ワーク搬入路、ワーク搬出路に同じ電圧を印加する、ステージ、ワーク搬入路、ワーク搬出路を電気的に接続するなどの方法を例示することができる。
【0011】
また、図5に示すように、ステージ6の上面に対してワーク7が傾いた状態となる場合、ステージ6とワーク7の図中左側部分との距離は、ステージ6とワーク7の図中右側部分との距離より長いので、上記の静電容量と極板間の距離の関係によれば、ワーク7の左側部分の静電容量C3は、ワーク7の右側部分の静電容量C4より小さくなる。ワーク7の帯電電荷量Q0は一定であるから、上記(1)式によりワーク7の左側部分の表面電位V3は、右側部分の表面電位V4より大きくなる。このため、ワーク7の表面電位が偏り、ワーク7の中央部付近の絶縁層や電子部品などが静電気により破壊される恐れがある。
【0012】
そこで、本発明者らは、ワークがステージ上で傾いた状態になっても、ワーク上の静電容量が偏らないようにすれば静電気によるワークの破壊を防ぐことが可能になると考え、鋭意研究の結果本発明に想到したものである。
すなわち、本発明に係る加工装置は、ワークが吸着固定される接地された吸着部材と、ワークの加工時にワークを支持するステージに対して前記吸着部材を移動させる移動手段とを有するワーク搬送機構を備えたことを特徴とする。
【0013】
上記のような加工装置において、ステージ上にワークが搬入される時も搬出される時も、ワークは接地されている吸着部材に吸着されているので、ワークの吸着部材に吸着されている面の電位は零となる。従って、ワークの吸着部材に吸着されていない面の電位は上記(1)式により一定となるので、ワークの搬入時および搬出時にステージとワークの平行関係がくずれたとしても、ワーク上で電位差が生じることはなく、静電気によるワークの破壊を防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態例のみに限定されるものではない。
図1は本発明の加工装置の第一の実施形態例を示す拡大断面図であり、図中符号11はステージ、符号12はワーク、符号13は搬入用アースプレート(ワーク搬入路)、符号14は搬出用アースプレート(ワーク搬出路)である。図1においては、ステージ11上での作業を終了したワーク12が図中右方向に搬出されようとしており、ステージ11の外側にワーク12の一部が突出した状態を示している。
【0015】
図1において、搬入用アースプレート13はステージ11の左側に隣接して、搬出用アースプレート14はステージ11の右側に隣接して設けられており、ステージ11、搬入用アースプレート13、搬出用アースプレート14の上面の高さは等しくなっている。また、ステージ11、搬入用アースプレート13、搬出用アースプレート14はともに接地されているので、その電位は等しくなっている。また、ワーク12を水平方向に移動させる図示しない移送手段が設けられている。この移送手段としては、ころ搬送、ビーム搬送、シャトル搬送、ロボット搬送などを例示することができる。
【0016】
この図示しない移送手段によりワーク12が搬入用アースプレート13上を通ってステージ11上に、搬入用アースプレート13およびステージ11との水平関係を保って搬入される時は、ワーク12と搬入用アースプレート13およびワーク12とステージ11の距離は等しくなるので、ワーク12の静電容量Cは一定となる。また、搬入用アースプレート13とステージ11との電位は等しいので、ワーク12がステージ11と搬入用アースプレート13上にまたがっていてもワーク12上で電位差が生じることはなく、静電気によるワーク12の破壊は防止される。
【0017】
同様に、図示しない移送手段によりワーク12が搬出用アースプレート14上を通ってステージ11上から、ステージ11および搬出用アースプレート14との水平関係を保って搬出される時は、ワーク12とステージ11およびワーク12と搬出用アースプレート14の距離は等しくなっており、ステージ11と搬出用アースプレート14との電位は等しくなるので、ワーク12の静電容量は一定となる。このため、ワーク12がステージ11と搬出用アースプレート14上にまたがっていてもワーク12上で電位差が生じることはなく、静電気によるワーク12の破壊は防止される。
【0018】
尚、搬入用アースプレート13および搬出用アースプレート14の、ステージ11に隣接していない側の末端部は、5度以下の角度で下方向へ曲げておくことが好ましい。この構造とした場合、搬入用アースプレート13にワーク12が導入される際に、ワーク12と搬入用アースプレート13の距離が少しずつ変化するのに伴って静電容量が微小変化し、ワーク12の表面電位を静電破壊を起こさない程度にわずかづつ変化させることができる。搬出用アースプレート14からワーク12が導出される際も同様の効果が得られる。
【0019】
図2は、図1の加工装置を応用したクリーニング装置の一例を示す概略構成図であり、図中符号15はワーク、符号16は上ローラー、符号17は下ローラー、符号18は搬入用アースプレート、符号19は搬出用アースプレートである。この装置は、上ローラー16および下ローラー17の表面に粘着層を備えており、ワーク15に接触することでワーク15の表面のほこり、よごれなどを除去することができる。このクリーニング装置を使用する際、搬入用アースプレート18および搬出用アースプレート19をともに接地して、電位を等しくしておく。これにより、ワーク15の表面を上ローラー16および下ローラー17によりクリーニングする工程において、ワーク15の表面電位は偏りにくくなるので、ワーク15が静電気により破壊されることはない。
【0020】
図3は本発明の加工装置の第二の実施形態例を示す側面図であり、図中符号21はステージ、符号22はワーク、符号23は吸着プレート(吸着部材)、符号24は吸着プレート支柱である。図3においては、ステージ21上での作業を終了したワーク22が図中上方向に搬出されようとしており、ワーク22が例えば真空吸着などの手段によって吸着プレート23に吸着され、ステージ21上から浮き上がった状態を示している。
【0021】
図3において、吸着プレート23は接地されており、その上面中央部には吸着プレート支柱24が取り付けられている。また、吸着プレート23は吸着プレート支柱24に取り付けられた図示しない移動手段により図中上下方向および左右方向に動くことができるようになっている。また、吸着プレート23の下面の寸法はワーク22の上面の寸法より大きくなっており、ワーク22を吸着した際にワーク22が吸着プレート23から突出することのないようになっている。
【0022】
このため、図示しない移動手段によりワーク22が吸着プレート23に吸着された状態でステージ21上に搬入される時も、ステージ21上から搬出される時も、ワーク22を吸着している吸着プレート23が接地されているため、ワーク22の上面の電位は零となる。ワーク22の厚みは一定であるから、ワーク22内の静電容量も一定となり、ワーク22の下面の電位は上記(1)式により一定となるので、ワーク22の搬入時および搬出時にステージ21とワーク22の平行関係がくずれたとしても、ワーク22の面上の電位は均一になっており、静電気によるワーク22の破壊は防止される。
【0023】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば本実施の形態ではステージ11、搬入用アースプレート13、搬出用アースプレート14とも接地することで電位を等しくしているが、ステージ11、搬入用アースプレート13、搬出用アースプレート14に同じ電圧をかける、あるいはステージ11、搬入用アースプレート13、搬出用アースプレート14をそれぞれ導線で接続するなどの方法をとっても差し支えない。
【0024】
【発明の効果】
上述のごとく、本発明の加工装置は、ワークの加工時にワークを支持するステージに隣接して設けられ、このステージと高さが等しく、かつこのステージと電位が等しいワーク搬入路およびワーク搬出路と、ワークをワーク搬入路およびワーク搬出路上で水平方向に移送する移送手段とを有するワーク搬送機構を備えたことを特徴とするものであって、ステージにワークが搬入される時も搬出される時も、ステージと高さが等しく、かつこのステージと電位が等しいワーク搬入路およびワーク搬出路がステージに隣接して設けられているので、ワークの搬入時および搬出時にワーク上で電位差が生じることはなく、静電気によるワークの破壊を防止することができる。
【0025】
また、本発明の加工装置は、ワークが吸着固定される接地された吸着部材と、ワークの加工時にワークを支持するステージに対してこの吸着部材を移動させる移動手段とを有するワーク搬送機構を備えたことを特徴とするものであって、ステージ上にワークが搬入される時も搬出される時も、接地されている吸着部材にワークが吸着されているので、ワークの搬入時および搬出時にステージとワークの平行関係がくずれたとしても、ワーク上で電位差が生じることはなく、静電気によるワークの破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の加工装置の第一の実施形態例を示す拡大断面図である。
【図2】 図1の加工装置の応用例を示す概略構成図である。
【図3】 本発明の加工装置の第二の実施形態例を示す側面図である。
【図4】 ステージ上からワークが水平方向に搬出される途中の状態を示す拡大断面図である。
【図5】 ステージ上からワークがステージ上方に搬出される途中の状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
11 ステージ
12 ワーク
13 搬入用アースプレート(ワーク搬入路)
14 搬出用アースプレート(ワーク搬出路)
21 ステージ
22 ワーク
23 吸着プレート(吸着部材)
24 吸着プレート支柱
Claims (4)
- 静電気によるワークの破壊を防止する搬送機構を備えた加工装置であって、
ワークの加工時にワークを支持するとともに、少なくともワークの搬送時にワークと非接触な状態にされるステージに隣接して設けられ、該ステージと高さが等しく、かつ該ステージと電位が等しく、前記ワークと非接触なワーク搬入路およびワーク搬出路と、ワークをワーク搬入路およびワーク搬出路上で水平方向に移送する移送手段とを備え、
前記ステージと前記ワークとの距離および前記ワーク搬入路と前記ワークとの距離を互いに等しく保ち、および/または前記ステージと前記ワークとの距離および前記ワーク搬出路と前記ワークとの距離を互いに等しく保ちつつ、前記ワークを水平方向に移送することを特徴とする加工装置。 - 前記ステージ、前記ワーク搬入路、および前記ワーク搬出路はいずれも、接地されるか、または同電圧の電流を印加するか、あるいは互いに電気的に接続され、前記ステージと前記ワーク搬入路と前記ワーク搬出路との互いの電位を同一に保つことを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
- 前記ワーク搬入路および/または前記ワーク搬出路は、前記ステージに隣接していない側の末端部を5度以下の角度で下方向へ傾斜させたことを特徴とする請求項1または2に記載の加工装置。
- 前記ワークに接触して前記ワーク表面に付着した塵埃を除去する粘着層を有するローラーをさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の加工装置。
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Family Applications (1)
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1997
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