JP3701952B2 - セル電極およびこの電極を用いた電気化学セル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池や電気二重層キャパシタなどの電気化学セルに使用される電極およびこの電極を用いた電気化学セルに関し、特に出現容量を低下させることなく、サイクル特性を改善した電極およびこの電極を用いた電気化学セルに関する。
【0002】
【従来の技術】
プロトン伝導型化合物を電極活物質として用いた二次電池や電気二重層キャパシタなどの電気化学セル(以下「セル」という)が提案され、実用に供されている。このようなセルは、例えば図1の断面図に示される。
【0003】
すなわち、図1に示すセルは、正極集電体1上にプロトン伝導型化合物を活物質として含む正極電極2を、負極集電体4上に負極電極3をそれぞれ形成し、これらをセパレータ5を介して貼り合わせた構成を有し、電荷キャリアとしてプロトンのみが電極反応に関与するものである。また、セル内には、電解液としてプロトン源を含む水溶液または非水溶液が充填され、ガスケット6により封止されている。
【0004】
電極2,3は、次のようにして形成される。ドープ又は未ドープのプロトン伝導型化合物の粉末と導電補助剤と結着剤を混合してスラリーを調製し、所望のサイズの金型に入れ、熱プレス機によって所望の電極密度、膜厚を有する電極を形成する。あるいは、そのスラリーを導電性基材上にスクリーン印刷し、乾燥して、成膜電極を形成することができる。そして、このように形成した正極電極と負極電極をセパレータを介して対向配置し、セルを構成する。
【0005】
電極活物質として使用されるプロトン伝導型化合物としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリペリナフタレン、ポリフラン、ポリフルラン、ポリチエニレン、ポリピリジンジイル、ポリイソチアナフテン、ポリキノキサリン、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリインドール、ポリアミノアントラキノン、及びこれらの誘導体などのπ共役系高分子、インドール三量体等のインドール系化合物、ポリアントラキノン、ポリベンゾキノンなどのヒドロキシル基(キノン酸素が共役によりヒドロキシル基になったもの)含有高分子などが挙げられる。これらの化合物にドーピングを施すことによりレドックス対が形成され、導電性が発現する。これらの化合物は、その酸化還元電位の差を適宜調整することによって正極及び負極活物質として適宜選択される。
【0006】
また、電解液としては、酸水溶液からなる水溶液電解液と、有機溶媒をベースとする非水溶液電解液が知られており、プロトン伝導型化合物を用いた場合は、前者の水溶液電解液が、特に高容量のセルを提供できるという点でもっぱら使用されている。酸としては有機又は無機酸であり、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、テトラフルオロほう酸、六フッ化リン酸、六フッ化ケイ酸などの無機酸、飽和モノカルボン酸、脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸、p―トルエンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ラウリン酸などの有機酸が挙げられる。
【0007】
このようなプロトン伝導型化合物を電極活物質として用いたセルでは、内部抵抗の上昇によりサイクル寿命が短命であり、特に温度が高くなるにつれその傾向が著しくなり、また、高温雰囲気下において長期安定性に劣るという問題がある。
【0008】
この原因は、電極活物質の充放電機構であるプロトン吸脱着反応の進行が悪化し、劣化雰囲気が増加することによる。特に高温では材料の過酸化がより促進されて、劣化進行が早くなっている。
【0009】
電極活物質は、酸化状態において劣化しやすい。これは、下記に示すように、充放電機構において活物質のプロトン(H+ )吸脱着反応が経時的に劣化することに起因していると考えられる。その要因として、活物質と電解質とのプロトン吸脱着反応において最適なプロトン雰囲気(活物質種によって異なり、反応電子数に依存する)に対して、より過剰なプロトン雰囲気において活物質のドープ・脱ドープ機能が低下し、劣化が進行する。これによって、セルの充放電能力が低下する。これを「過酸化・過還元劣化」と称し、正極活物質は過酸化劣化、負極活物質は過還元劣化と呼ぶ。
【0010】
この現象を、ここでは、インドール系化合物(インドール三量体)を正極活物質とし、キノキサリン系ポリマーを負極活物質として説明する。この場合の正負電極材料の充放電機構は、それぞれ次の化学式(8)、(9)に示されるとおりである。なお、これら式中、Rは任意の置換基を示し、X-はアニオンを示す。
【0011】
【化3】
【0012】
高濃度酸雰囲気下(低pH)では、特にこの現象が起きやすいことからサイクル特性の劣化が早くなる。また、負極材料として用いることができるポリフェニルキノキサリンに関していえば、充放電機構において正常なドープ状態がジプロトン化であるのに対して、テトラプロトン化を引き起こす可能性がある。これによって活物質が溶出し、充放電能力が低下する。従って、過剰な電解質濃度(プロトン濃度)であると酸化劣化の進行がより大きくなる可能性がある。
【0013】
図6は、電解質濃度(硫酸濃度)に対するサイクル特性の変化を示すグラフである。同グラフから明らかなように、電解質濃度が高くなるに従い、サイクル数に応じて容量が低下し、サイクル特性が低くなっていることが分かる。また、低濃度雰囲気では、サイクル性は優れるが、出現容量が低下する傾向がある。図7は、電解質濃度(硫酸濃度)に対する出現容量の変化を示すグラフである。同グラフから分かるように、電解質濃度が低下すると出現容量が低下することが分かる。
【0014】
従来技術として、非水溶液電解質において、含窒素複素環式化合物を添加した電解液については、特許文献1(特開2000−156329号公報(従来例1))、特許文献2(特開2001−143748号公報(従来例2))に示されている。また、非プロトン性溶媒とポリイミダゾール等から成る高分子ゲル状電解質等を用いた固体電解質二次電池について、特許文献3(特開平7−320780号公報(従来例3))に示されている。また、特許文献4(特開平10−321232号公報(従来例4))には、電解液が本発明に適用されるものと相違するが、電極にベンズイミダゾール誘導体を添加したものが示されている。
【0015】
従来例1では、アルミニウム電解コンデンサ用の電解液であって、N,N,N'−置換アミジン基を有する化合物を4級化したカチオンと有機酸アニオンから構成される4級塩と有機溶剤からなる電解液が記載されている。従来のカルボン酸4級アンモニウム塩を用いたものは、ゴムパッキンの劣化を促し、封止性能を著しく低下させるという問題があるのに対して、アミジン基が4級化された陽イオン性基を有する添加剤により、電解液の熱安定性、比導電度が向上し、特にアミジン基の電子が非局在化し陽イオンが共鳴安定化する化合物では、イオン解離が促進されることによって高い比導電度が得られると記載されている。さらに電解液中の電気分解の結果、過剰の水酸化物イオンが生じた場合に、水酸化物イオンとアミジン基との反応によって速やかに水酸化物イオンが消失するため、従来のアミンの4級アンモニウム塩と異なり、電気分解反応の影響を軽減することができ、その結果、コンデンサのパッキンの劣化を抑制し、封口性能を高めることができると記載されている。
【0016】
従来例2では、非水電解質リチウム二次電池に供される電解液であって、有機溶媒中にパーフルオロアルキルスルホン酸誘導体のリチウム塩が溶解され、さらに、1以上のフッ素原子を持つ、窒素もしくは酸素を含有する複素環式化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とするものが記載されている。この従来例2は、電解液に添加した複素環式化合物が、正極集電体の酸化に対して抵抗性のある強い吸着層の被膜を正極集電体上に形成することで、正極集電体の酸化劣化を抑制してサイクル特性を向上できるというものである。
【0017】
従来例3では、正極と、リチウムを活物質とする負極と、電解質塩及び高分子の複合体からなる高分子固体電解質、又は、高分子に電解質塩と非プロトン性溶媒とからなる電解液を含浸させてなる高分子ゲル状電解質とを備える固体電解質二次電池であって、前記の高分子が、ポリアミド、ポリイミダゾール、ポリイミド、ポリオキサゾール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメラミンホルムアミド、ポリカーボネート又はポリプロピレンであることを特徴とするものが記載されている。前述の電解質が負極と反応しにくく、充放電サイクルを繰り返しても内部抵抗が上昇しにくいので、サイクル特性に優れるというものである。
【0018】
【特許文献1】
特開2000−156329号公報
【特許文献2】
特開2001−143748号公報
【特許文献3】
特開平7−320780号公報
【特許文献4】
特開平10−321232号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
上述した図6、図7のサイクル特性と出現容量の低下の問題を解決するためには、最適な電解質組成(H+、X-)を提供するか、もしくは電解質と活物質との反応における電極活物質の過酸化・過還元による劣化を防止するための、電極改善が必要である。
【0020】
上記2つの従来例1、2は、いずれも非水溶液電解液に対して含窒素複素環式化合物を添加する構成である。また、従来例3に関しては、非プロトン性溶媒とポリイミダゾール等から成る高分子ゲル状電解質等を用いることによって、電解質が負極のリチウムと反応しにくくなり、内部抵抗の上昇を抑え、サイクル性が向上するというものである。これら従来例1、2、3は、いずれも電解質へ含窒素複素環式化合物やその高分子を添加するものであり、電極に特定物質を添加・混合する本発明の構成とは異なるものである。
【0021】
従来例4では、電解液に有機溶媒を用いたリチウム電池に関するものであるため、プロトン濃度が考慮されておらず、活物質の特徴であるプロトン伝導性や劣化のメカニズムが大きく相違している。この従来例4は、電解液にプロトン源を含み活物質としてプロトン伝導型化合物を用いた本発明と相違する。
【0022】
本発明の目的は、電極活物質の過酸化および過還元による劣化を防止するために電極改善を施し、サイクル特性を改善させたセル電極およびこの電極を用いた電気化学セルを提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電極材料中の活物質がプロトン伝導型化合物からなる電気化学セルに用いられる電極であって、その電極材料中に、イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール、ベンズイミダゾール及びこれらの誘導体から選ばれる一種または二種以上の含窒素複素環式化合物、またはベンズイミダゾール、ベンズビスイミダゾール若しくはイミダゾールの骨格を持つ単位を有する高分子化合物を含むことを特徴とする電極に関する。
【0024】
このセル電極は、充放電に伴う両極の酸化還元反応において電荷キャリアとしてプロトンのみが作用するように動作し得る電気化学セルに好適に用いることができる。
【0025】
また本発明は、片極または両極に上記本発明のセル電極が用いられ、両極にプロトン伝導型化合物を活物質として含む電気化学セルに関するものである。
【0026】
さらに本発明は、充放電に伴う両極の酸化還元反応において電荷キャリアとしてプロトンのみが作用するように動作し得る上記の電気化学セル、より具体的には、プロトン源を含む電解質を含有し、充放電に伴う両極における酸化還元反応に伴う電子授受において、電極活物質のプロトンの吸脱着のみが関与するように動作し得る上記の電気化学セルに関するものである。
【0029】
なお、本発明における高分子化合物とは、繰り返し構造単位を2以上有する化合物を意味し、いわゆるオリゴマー化合物も含む。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0031】
本発明のセル電極は、電極材料中にプロトン伝導型化合物を活物質として含有し、さらに、含窒素複素環式化合物、または含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位を有する高分子化合物を含むものである。また本発明のセル電極は、活物質として、プロトン伝導型高分子化合物を構成する単位と、含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位とを有する高分子化合物(これら両単位で1つの単位を構成してもよい)を含むものである。
【0032】
本発明の電気化学セルは、上記本発明の電極を少なくとも一方の電極として有するものであり、その他の構成については従来と同様なものを採用することができる。本発明の電気化学セルは、充放電に伴う両極における酸化還元反応において電荷キャリアとしてプロトンのみが作用するように動作し得るもの、より具体的には、プロトン源を含む電解質を含有し、充放電に伴う両極における酸化還元反応に伴う電子授受において、電極活物質のプロトンの吸脱着のみが関与するように動作し得るものが好ましい。
【0033】
電気化学セルの基本構成としては、例えば、図1に示すように、正極集電体1上にプロトン伝導型化合物を活物質として含む正極電極2を、負極集電体4上に負極電極3をそれぞれ形成し、これらをセパレータ5を介して貼り合わせた構成をとることができる。また、セル内には、電解液としてプロトン源を含む水溶液または非水溶液が充填され、ガスケット6により封止されている。
【0034】
電極2、3は、例えば次のようにして形成することができる。ドープ又は未ドープのプロトン伝導型化合物の粉末、導電補助剤、結着剤、および含窒素複素環式化合物、または含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位を有する高分子化合物を混合してスラリーを調製し、これを所望のサイズの金型に入れ、熱プレス機によってプレスして、所望の電極密度、膜厚を有する電極を形成する。そして、このように形成した正極電極と負極電極をセパレータを介して対向配置し、セルを構成する。
【0035】
本発明における含窒素複素環式化合物としては、イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール、ベンズイミダゾール及びこれらの誘導体から選ばれる一種または二種以上の化合物を用いることが好ましく、次の化学式(1)〜(5)で表される含窒素複素環式化合物を用いることができる。
【0036】
【化4】
【0037】
(式中、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、フェニル基、ビニル基、ハロゲン原子、アシル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アルキルスルホニル基、トリフルオロメチルチオ基を表す。)
【0038】
ここで、ハロゲン原子としては、弗素、塩素、臭素、沃素が挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられる。また、アシル基としては、アシル基内のアルキル基が上記で例示した炭素数1〜4のアルキル基であるものを挙げることができる。アルキルスルホニル基としては、アルキルスルホニル基内のアルキル基が上記で例示した炭素数1〜4のアルキル基であるものを挙げることができる。
【0039】
また、含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位を有する高分子化合物としては、ベンズイミダゾール、ベンズビスイミダゾール又はイミダゾールの骨格を持つ単位を有する高分子化合物を用いることができる。例えば、下記化学式(6)又は(10)で表されるベンズイミダゾール系高分子化合物、下記化学式(7)で表されるポリビニルイミダゾール、ポリベンズビスイミダゾール、下記化学式(11)で表されるベンズビスイミダゾール系高分子化合物、下記化学式(12)で表されるポリイミダゾール等の含窒素塩基性ポリマーを用いることができる。
【0040】
【化5】
【0041】
(式中、nは正の整数を表し、Nに結合するHに代えてそれぞれ独立に前述のRと同様な置換基を有していてもよい。)
【0042】
【化6】
【0043】
(式中、nは正の整数を表し、Nに結合するHに代えてそれぞれ独立に前述のRと同様な置換基を有していてもよく、R1は例えば炭素数1〜4のアルキレン基、置換もしくは非置換のフェニレン基等の2価基を示す。)
【0044】
このような電極を用いることで、プロトン源を含む電解液中のイオンと以下のような相互作用が起こると考えられる。ここで含窒素複素環式化合物としてイミダゾールを例に挙げると、次の化学式(13)のようにプロトンをイミダゾールが吸着する。
【0045】
【化7】
【0046】
(式中、nは正の整数、mはnより大きい整数を表す。)
【0047】
このイミダゾールがプロトンを吸着した結果、電極の活物質の過酸化・過還元が防止され、セルのサイクル寿命が延命化する。このように、ドーパントとなるアニオン濃度を変化させることなく、含窒素複素環式化合物または含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位を有する高分子化合物の添加・混合量を制御することにより、活物質と反応するプロトンの濃度を任意に調整することが可能となる。これによって、セルの高出現容量を維持し、サイクル特性の向上を実現することができる。
【0048】
また、含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位を有する高分子化合物としては、従来のプロトン伝導型高分子化合物を構成する単位と、含窒素複素環式化合物の単位、あるいは含窒素複素環式化合物骨格を持つ単量体化合物の単位とを有する高分子化合物を用いることができる。この高分子化合物は、プロトン伝導型の活物質としての機能と、前述の含窒素複素環式化合物の過酸化・過還元劣化の抑制機能とを有する。したがって、この高分子化合物を電極活物質として用いた電極は、前述した含窒素複素環式化合物や窒素複素環式化合物骨格を持つ単位を有する高分子化合物を用いた電極と同等の改善効果を得ることができる。すなわち、高プロトン雰囲気においても、従来の電極(後述に記載)に対し、過酸化・過還元劣化がより抑制されたセルを提供することができる。
【0049】
本発明における含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位を有する高分子化合物の共重合組成としては、過酸化・過還元劣化の抑制機能の観点から、含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位が5モル%以上が好ましく、10モル%以上であることがより好ましい。一方、容量出現率等の活物質としての機能の観点から、この単位は90モル%以下が好ましく、80モル%以下であることがより好ましい。また、この高分子化合物としては、例えばGPC測定による重量平均分子量で1000〜50000程度のものを用いることができ、好ましくは3000〜15000程度のものを用いることができる。
【0050】
本発明の効果を確認するため、本発明の正極電極(正極活物質としてインドール三量体を用いた)について、サイクリックボルタンメトリー(CV測定)を実施した。この測定に際しては、正極活物質にイミダゾールを添加・混合したものをカーボンシート上に成膜したものを作用極とし、対極として白金電極を用い、参照極にAg/AgCl電極を用いた。測定温度25℃、走査電位600〜1100mV、走査速度を1mV/secとした。尚、電解液としては、20wt%硫酸水溶液を用い、作用極である正極材料の組成は、後述する実施例3の組成(イミダゾール20wt%を添加・混合したもの)を使用した。また、参照例としてイミダゾールを添加していない例(後述の比較例1)についても評価した。結果を図2のグラフに示す。
【0051】
その結果、比較例1に対して実施例3は放電容量の低下が少ないことがわかる。また、比較例1に対し実施例3の酸化還元電位が数十mV低電位側にシフトした。つまり、酸化劣化を緩和する安定な電位にシフトしているのを確認した。したがって、サイクル寿命が延命化したと考えられる。
【0052】
また、同様に負極活物質(ポリフェニルキノキサリン)についても、実施例3および比較例1に記載の負電極を用いてCV測定を実施した。その放電容量推移の結果を図3に示す。この結果から、負極活物質の過剰なプロトン化に起因する容量劣化が抑制できたことが確認できた。
【0053】
従って、本発明によれば、正極および負極の両極に対して劣化を防止できることが認められた。
【0054】
上記実施例では水溶液系電解液の場合について記載しているが、本発明では、プロトン源を含む電解質であれば特に制限されず、非水溶液系電解液やゲル電解質、固体電解質等の他の電解質の場合も同様に容量低下の抑制効果を得ることができる。また、前述の含窒素複素環式化合物や含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位を有する高分子化合物を添加・混合したセル電極を用いた場合、いずれにおいても容量低下の抑制効果(活物質劣化防止)を得ることができる。
【0055】
本発明のセル電極を構成する電極活物質は、ドーピングを施すことによりレドックス対が形成され、導電性が発現するものであり、従来公知のプロトン伝導型化合物を使用することができる。プロトン伝導型化合物とは、酸化還元反応に伴う電子授受においてプロトンの吸脱着のみが関与する電気化学的反応を起こし得る化合物であり、例えば、ポリアニリン等のアニリン系ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリペリナフタレン、ポリフラン、ポリフルラン、ポリチエニレン、ポリピリジンジイル、ポリイソチアナフテン、ポリキノキサリン、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリインドール、ポリアミノアントラキノン、及びこれらの誘導体などのπ共役系高分子、インドール三量体及びその誘導体等のインドール系化合物、ポリアントラキノン、ポリベンゾキノン等のヒドロキシル基(キノン酸素が共役によりヒドロキシル基になったもの)含有高分子などが挙げられる。これらの化合物は、その酸化還元電位の差を適宜調整することによって正極及び負極活物質として適宜選択される。
【0056】
これらの中でも、正極活物質として、ポリアニリン、ポリジアニリン、ポリジアミノアントラキノン、ポリビフェニルアニリン、ポリナフチルアニリン、ポリインドール、インドール系化合物からなる群から選択されるものが好ましい。負極活物質としては、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリキノキサリン及びこれらの誘導体からなる群から選択されるものが好ましい。特に、正極活物質としてインドール系化合物、負極活物質としてキノキサリン系高分子の組み合わせがより好ましく、このインドール系化合物としてはインドール三量体及びこれらの誘導体から選ばれる一種又は二種以上の化合物(インドール三量体化合物)が好ましく、このキノキサリン系高分子としてはポリフェニルキノキサリンが好ましい。
【0057】
インドール三量体化合物は、3つのインドール環の2位および3位の原子で構成される六員環をもつ縮合多環構造を有するものである。このインドール三量体化合物は、インドール及びインドール誘導体あるいはインドリン及びその誘導体から選ばれる1種もしくは2種以上化合物から、公知の電気化学的または化学的手法により調製することができる。
【0058】
このようなインドール三量体化合物としては、下記化学式で示されるものを挙げることができる。
【0059】
【化8】
【0060】
【化9】
【0061】
(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、硫酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を示す。)
【0062】
上記の式中、Rのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、式中、Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。また、式中、Rのアルコキシル基は、−OXで表される置換基であり、Xとしては上記アルキル基を挙げることができる。また式中、Rのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。また、式中、Rのアルキルチオ基のアルキル部分は上記のアルキル基を挙げることができる。また、式中、Rのアリールチオ基のアリール部分は上記のアリール基を挙げることができる。
【0063】
キノキサリン系高分子は、キノキサリン骨格を持つ単位を有する高分子であり、下記式(16)又は(17)で表されるものを用いることができる。このようなキノキサリン系高分子としては、2,2’−(p−フェニレン)ジキノキサリン骨格を有する下記式(17)で表される高分子化合物(ポリフェニルキノキサリン)が好ましい。なお、式中のnは正の整数を示す。
【0064】
【化10】
【0065】
【化11】
【0066】
本発明における電解質としては、プロトン源を含む電解質であればいずれも使用が可能であるが、中でもプロトン源を含む電解液が好ましく、特に硫酸水溶液が好ましい。プロトン源としては、無機酸または有機酸を用いることができ、例えば、無機酸として、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、テトラフルオロほう酸、六フッ化リン酸、六フッ化ケイ酸などが挙げられ、有機酸として、飽和モノカルボン酸、脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸、p−トルエンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
【0067】
プロトン源を含む電解液中のプロトン濃度は、電極材料の反応性の点から10-3mol/l以上が好ましく、10-1mol/l以上がより好ましく、一方、電極材料の活性低下や溶出の防止の点から18mol/l以下が好ましく、7mol/l以下がより好ましい。
【0068】
セル電極中の、含窒素複素環式化合物、含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位を有する高分子化合物の含有量は、これらの化合物の種類や、電解質の種類・濃度に応じて適宜選択できるが、少なすぎると、活物質の酸化劣化の防止効果が小さくなる。逆に、その含有量が多すぎると出現容量が低下し、他の特性が損なわれるおそれがある。したがって、この含有量は、活物質100質量部に対して1〜80質量部含むことが好ましい。
【0069】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。なお、以下の実施例においては二次電池に適用した場合について説明しているが、容量や充放電速度等を適宜設定することにより電気二重層キャパシタなどの他の電気化学セルとして好適な構成にすることもできる。
【0070】
(実施例1)
正電極は次のようにして作製したものを用いた。活物質としてインドール三量体化合物69wt%に、導電補助剤として気相成長カーボン(VGCF)を23wt%と電極成型剤としてポリフッ化ビニリデン(平均分子量:1100)を8wt%加え、この混合物100質量%に対して、5wt%のイミダゾールを添加した。これをブレンダーで攪拌・混合し、熱プレス機で所望のサイズに成型した固体電極を正極電極2として用いた。
【0071】
負電極は次のようにして作製したものを用いた。活物質としてポリフェニルキノキサリン75wt%に導電補助剤としてカーボンブラック(K.B.600)を25wt%加え、この混合物100質量%に対して、5wt%のイミダゾールを添加した。これをブレンダーで攪拌・混合し、熱プレス機で所望のサイズに成型した固体電極を負極電極3として用いた。
【0072】
電解液として、20wt%硫酸水溶液を用い、セパレータ5として、厚さ10〜50μmの陽イオン交換膜を用いた。
【0073】
このセパレータを介して上記正極電極及び負極電極の電極面を対向させて貼り合わせ、ガスケット6で外装し、図1に示す構成の電池を形成した。
【0074】
(実施例2)
正極電極として、イミダゾールを添加・混合していない以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、20wt%のイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0075】
(実施例3)
正極電極として、20wt%のイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、20wt%のイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0076】
(実施例4)
正極電極として、50wt%のイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、50wt%のイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0077】
(実施例5)
正極電極として、20wt%のイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて20wt%の1,2,4−トリアゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0078】
(実施例6)
正極電極として、イミダゾールに代えて20wt%の2−フェニルイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて20wt%の2−フェニルイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0079】
(実施例7)
正極電極として、イミダゾールに代えて20wt%の3−トリフルオロメチルベンズイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて20wt%の3−トリフルオロメチルベンズイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0080】
(実施例8)
正極電極として、20wt%のイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて20wt%の3−トリフルオロメチルベンズイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0081】
(実施例9)
正極電極として、10wt%のイミダゾールと10wt%の1,2,4―トリアゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて20wt%の1,2,4−トリアゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0082】
(実施例10)
正極電極として、10wt%のイミダゾールと10wt%の3−トリフルオロメチルベンズイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて10wt%の1,2,4−トリアゾールと10wt%の3−トリフルオロメチルピラゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0083】
(実施例11)
正極電極として、60wt%のイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、60wt%のイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。電解液として、30wt%硫酸水溶液を用いた。これらの電極および電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0084】
(実施例12)
正極電極として、イミダゾールを添加・混合していない以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて5wt%のポリベンズイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0085】
(実施例13)
正極電極として、イミダゾールに代えて5wt%のポリベンズイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて5wt%のポリベンズイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0086】
(実施例14)
正極電極として、イミダゾールに代えて20wt%のポリベンズイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて20wt%のポリベンズイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0087】
(実施例15)
正極電極として、イミダゾールに代えて20wt%のポリビニルイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて20wt%のポリビニルイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0088】
(実施例16)
正極電極として、イミダゾールに代えて10wt%のポリベンズイミダゾールと10wt%のポリビニルイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて20wt%のポリビニルイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0089】
(実施例17)
正極電極として、20wt%のイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて10wt%のポリベンズイミダゾールと10wt%のポリビニルイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0090】
(実施例18)
正極電極として、イミダゾールに代えて20wt%の3−トリフルオロメチルピラゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、イミダゾールに代えて10wt%のポリベンズイミダゾールと10wt%のポリビニルイミダゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0091】
(実施例19)
正極電極として、イミダゾールを添加・混合していない以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。負極活物質として、3,3−diaminobenzidine(DABZ)と1,4−bisbenzil(BBZ)を、テレフタルアルデヒドの存在下でDMF溶媒中、白金触媒を用いて縮重合して、式(18)で表される単位を有するプロトン伝導型高分子化合物(Mw:10000)を調製した。フェニルキノキサリン骨格とベンズイミダゾール骨格を持つこの高分子化合物75wt%と導電補助剤25wt%を含有する電極を負極電極として用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0092】
【化12】
【0093】
(実施例20)
正極電極として、イミダゾールに代えて1,2,4−トリアゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用い、負極電極として、実施例19と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0094】
(実施例21)
正極電極として、イミダゾールに代えて1,2,4−トリアゾールを添加・混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。負極電極としては、イミダゾールに代えて、実施例19と同様にして調製した含窒素複素環式化合物骨格をもつ単位を有するプロトン伝導型高分子化合物をポリフェニルキノキサリンに対して10wt%添加した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を構成した。
【0095】
(実施例22)
正極電極として、イミダゾールを添加・混合していない以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。負極電極としては、イミダゾールに代えて、実施例19にて調製した含窒素複素環式化合物骨格をもつ単位を有するプロトン伝導型高分子化合物をポリフェニルキノキサリンに対して10wt%混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を構成した。
【0096】
(実施例23)
正極電極として、イミダゾールを添加・混合していない以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。負極電極としては、イミダゾールに代えて、実施例19にて調製した含窒素複素環式化合物骨格をもつ単位を有するプロトン伝導型高分子化合物10wt%(ポリフェニルキノキサリンに対する含有比率)とポリベンズイミダゾール10wt%(ポリフェニルキノキサリンに対する含有比率)を混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を構成した。
【0097】
(実施例24)
正極電極として、イミダゾールを添加・混合していない以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。負極電極としては、イミダゾールに代えて、実施例19にて調製した含窒素複素環式化合物骨格をもつ単位を有する高プロトン伝導型分子化合物50wt%(ポリフェニルキノキサリンに対する含有比率)とポリベンズイミダゾール10wt%(ポリフェニルキノキサリンに対する含有比率)を混合した以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を構成した。
【0098】
(比較例1)
両極ともにイミダゾールを添加・混合していない以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。これらの電極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0099】
(比較例2)
両極ともにイミダゾールを添加・混合していない以外は実施例1と同様にして作製した電極を用いた。また、電解液として30wt%硫酸水溶液を用いた。これらの電極および電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0100】
以上の実施例1〜24及び比較例1、2で作製した電池の出現容量、サイクル特性を評価した。その結果を、次の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
この表1において、出現容量は、比較例1の出現容量を100%として算出した相対値(%)である。また、サイクル特性は、サイクル初期の放電容量に対する10,000サイクル後の放電容量の相対値(%)(測定温度25℃)を示す。セル内部抵抗変化率は、サイクル初期の直流抵抗に対する10,000サイクル後の直流抵抗の相対値(%)を示す。尚、サイクル条件は、充電を1A,1.2V、10分 CCCV充電し、放電を0.2A(1C相当)でCC放電し、終止電圧を0.8Vとして実施した。
【0103】
また、図4、5に、実施例1、3、5、7、14、19、比較例1、2のサイクル特性およびセル内部抵抗変化率の評価結果をそれぞれ示す。図4の放電容量変化から明らかなように、サイクル数が増加すると、比較例1、2はそれぞれ放電容量が80%、65%に減少するが、実施例の放電容量変化は83%〜96%と減少量が少なく、各実施例の方が、放電容量の変化が少ないことがわかる。
【0104】
また、図5のセル内部抵抗変化率から明かなように、実施例1、3、7、14、19のセル内部抵抗変化率は、105〜118%であるが、比較例1、2のセル内部抵抗変化率は、それぞれ121%、138%であり、各実施例の方が、比較例1、2に対してセル内部抵抗変化率の変化が少ないことがわかる。
【0105】
以上の結果から、本発明によって、出現容量を抑えながらサイクル特性が向上することがわかる。
【0106】
なお、上記の実施例では、活物質にインドール三量体化合物とポリフェニルキノキサリンを用いているが、これらに限定されるものではなく、プロトン伝導性を有する活物質であればこれに限定されるものではない。
【0107】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によって、出現容量の低下を抑えながら、サイクル特性を向上することが可能となった。
【0108】
これは、電極に添加・混合された含窒素複素環式化合物あるいは含窒素複素環式化合物骨格を持つ単位を有する高分子化合物が電解質中のプロトンと相互作用することで、活物質と電解質のプロトンの吸脱着反応において、ドーパントとして機能するアニオン濃度を低下させることなく、プロトン濃度のみを制御することが可能となるためである。また、反応に最適なプロトン濃度の雰囲気を創り出すことが可能となり、これによって、過酸化による劣化を抑制することが可能となるためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の電気化学セルの断面図である。
【図2】本発明の電極および従来の電極を用いた硫酸水溶液中での正極電極のCV測定結果を示すグラフである。
【図3】本発明の電極および従来の電極を用いた硫酸水溶液中での負極電極のCV測定結果を示すグラフである。
【図4】本発明(実施例1、3、5、7、14、19)および従来例(比較例1、2)の電池のサイクル特性の変化を示すグラフである。
【図5】本発明(実施例1、3、7、14、19)および従来例(比較例1、2)の電池のサイクル数に伴う、セル内部抵抗変化を示すグラフである。
【図6】硫酸濃度の違いによるサイクル特性の変化を示すグラフである。
【図7】硫酸濃度の違いによる出現容量の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 正極集電体
2 正極電極
3 負極電極
4 負極集電体
5 セパレータ
6 ガスケット
Claims (13)
- 電極材料中の活物質がプロトン伝導型化合物からなる電気化学セルに用いられる電極であって、その電極材料中に、イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール、ベンズイミダゾール及びこれらの誘導体から選ばれる一種または二種以上の含窒素複素環式化合物を含むことを特徴とするセル電極。
- 電極材料中の活物質がプロトン伝導型化合物からなる電気化学セルに用いられる電極であって、その電極材料中に、ベンズイミダゾール、ベンズビスイミダゾール又はイミダゾールの骨格を持つ単位を有する高分子化合物を含むことを特徴とするセル電極。
- 前記電極材料中にさらに、イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール、ベンズイミダゾール及びこれらの誘導体から選ばれる一種または二種以上の含窒素複素環式化合物を含む請求項2記載のセル電極。
- 充放電に伴う両極の酸化還元反応において電荷キャリアとしてプロトンのみが作用するように動作し得る電気化学セルに用いられる請求項1、2又は3記載のセル電極。
- 前記含窒素複素環式化合物を、活物質100質量部に対して1〜80質量部含む請求項1記載のセル電極。
- 前記高分子化合物を、活物質100質量部に対して1〜80質量部含む請求項2記載のセル電極。
- 前記含窒素複素環式化合物および高分子化合物を、活物質100質量部に対して1〜80質量部含む請求項3記載のセル電極。
- 片極または両極に請求項1〜9のいずれか1項に記載の電極が用いられ、両極にプロトン伝導型化合物を活物質として含む電気化学セル。
- プロトン源を含む電解質を含有し、充放電に伴う両極の酸化還元反応において電荷キャリアとしてプロトンのみが作用するように動作し得る請求項10記載の電気化学セル。
- 請求項10又は11記載の電気化学セルを用いた二次電池。
- 請求項10又は11記載の電気化学セルを用いたキャパシタ。
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