JP2004055240A - インドール系化合物を用いた二次電池およびキャパシタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】二次電池またはキャパシタの 電極2用活物質として、インドールまたはインドール誘導体の2位および3位間で結合してなる三量体化合物が、少なくともひとつのインドール骨格内の複素環の窒素原子上のプロトンが脱離した三量体化合物構造である酸化体構造のインドールまたはインドール誘導体の三量体を含有し、その電荷キャリアとしてプロトンを用いることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池またはキャパシタに関し、より詳しくは、電極活物質にインドール系化合物の酸化物を用い、かつその電荷キャリアにプロトンを用いた二次電池またはキャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】
インドール系高分子は、電極の活物質として、起電力および容量の点で優れた材料として知られている。しかしながら、インドール系高分子を電極活物質として用いた電池は、急速な充放電またはサイクル特性の点で十分満足できるものではなかった。
【0003】
本発明者らは、先に特開2002―093419号公報に示されるインドール又はインドール誘導体の三量体化合物を電極活物質として用いた電気化学セルについて提案しており、また、先に特願2002−049706号により、下記一般式(3)および(4)で示されるインドールまたはインドール誘導体の三量体が、電極活物質として起電力および容量の点で優れた材料であるとして提案している。
【0004】
【化5】
【0005】
【化6】
【0006】
(各式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、硫酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等を示す)。
【0007】
これら一般式(3)および(4)で示されるインドールまたはインドール誘導体の三量体は、たとえば、下記一般式(5)で示されるインドールまたはインドール誘導体(以下「インドール系単量体」という)や、一般式(6)で示されるインドリンまたはインドリン誘導体(以下「インドリン系単量体」という)から、公知の電気化学的または化学的手法により調整される。例えば、電気化学的酸化、化学的酸化、縮合反応、置換反応等の公知の反応を利用した方法により、調整される。
【0008】
以下、適宜、上記第1の化合物(一般式(3)で示される化合物を含む)を「対称型三量体」と表記し、上記第2の化合物(一般式(4)で示される化合物を含む)を「非対称型三量体」と表記し、また、これら対称型三量体および非対称型三量体を総称して「インドール系三量体」と表記する。
【0009】
なお、電極活物質として用いられるインドール系対称型三量体および非対称型三量体は、一種類のインドール系単量体またはインドリン系単量体から調整されるとは限らない。また、通常、次の一般式(5)および(6)における2位および3位のRが水素原子であるインドール系単量体およびインドリン単量体がインドール系三量体の調製に用いられる。
【0010】
【化7】
【0011】
【化8】
【0012】
(各式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、硫酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等を示す)。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述した本発明者らの提案した特願2002−049706号によるインドールまたはインドール誘導体の三量体が、電極活物質として起電力および容量の点で優れた材料であるが、このインドール系の三量体を電極活物質として用いた電池はサイクル特性の点で十分な特性が得られず、さらに性能向上の検討を行った。
【0014】
本発明の目的は、十分な起電力と容量を有しながら、サイクル特性の優れた二次電池またはキャパシタを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の二次電池またはキャパシタの構成は、電極活物質として、インドール及びインドール誘導体から選ばれる1種もしくは2種以上のインドール系化合物の構造単位をもつ三量体構造を有し、3つの前記構造単位の2位および3位の原子で構成される六員環をもつ縮合多環構造を有する化合物の酸化物を含有し、
前記化合物は、いずれの構造単位同士の結合においても一方の構造単位の2位と他方の構造単位の3位との間で結合してなる三量体構造を有する第1の化合物、および、一方の構造単位の2位と他方の構造単位の2位との間の結合を持つ三量体構造を有する第2の化合物の、少なくともひとつからなり、前記第1及び第2の化合物に対する電荷キャリアとしてプロトンを用いることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の他の二次電池またはキャパシタの構成は、電極活物質にインドールまたはインドール誘導体の2位および3位間で結合してなる三量体化合物を含有し、その電荷キャリアとしてプロトンを用いる電池において、該三量体化合物が、下記一般式(1)または(2)で示される、少なくともひとつのインドール骨格内の複素環の窒素原子上のプロトンが脱離した三量体化合物構造である酸化体構造のインドールまたはインドール誘導体の三量体を用いることを特徴とする。
【0017】
【化9】
【0018】
【化10】
【0019】
(各式中のRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、硫酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等を示し、各式中のX− は、インドールまたはインドール誘導体の三量体にドープし電気化学的活性を付与するドーパントイオンを示す、例えば硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等である)。
【0020】
本発明において、前記インドールまたはインドール誘導体の三量体の酸化体が、化学的手法または電気的手法により調整された酸化体構造であることができ、また、化学的および電気的手法の2段階により調整された酸化体構造であることができ、さらに、前記三量体化合物の酸化還元反応に伴う電子授受において、該三量体化合物のプロトンの吸脱着のみが関与するものであり、また、電解液としてプロトンを10−3mol/l〜18mol/l含有する水溶液または非水溶液を用いることができる。
【0021】
本発明の構成のように、電極活物質として、インドールまたはインドール誘導体の三量体の酸化体を用い、その電荷キャリアとしてプロトンを用いる電池またはキャパシタにおいて、インドールまたはインドール誘導体の三量体の、少なくともひとつのインドール骨格内の複素環の窒素原子上のプロトンが脱離したインドール三量体構造である酸化体構造のインドールまたはインドール誘導体の三量体を用いることにより、十分な起電力と容量を有しながら、サイクル特性に優れた電池及びキャパシタを得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面により詳細に説明する。本発明者らは、先にインドールまたはインドール誘導体の三量体を電極活物質として用いた電気化学セルについて提案しているが、さらに検討を加えた結果、インドールまたはインドール誘導体の三量体に酸化処理を施すことにより、下記一般式(1)および(2)に示した、インドール骨格内の複素環の窒素原子上の水素原子が脱離した酸化体構造を有する三量体の存在を見出した。以下、インドールまたはインドール誘導体の三量体を「インドール系三量体」、その酸化体構造を有する三量体を「インドール系三量体の酸化体」と称する。
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、硫酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等を示し、各式中のX− は、インドールまたはインドール誘導体の三量体にドープし電気化学的活性を付与するドーパントイオンを示す、例えば硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等である)。
【0026】
一般式(1)および(2)で示されるインドール系三量体の酸化体は、たとえば、次の一般式(3)および(4)で示されるインドール系三量体を、公知の電気化学的または化学的手法により酸化処理することにより得られる。この一般式(1)および(2)で示されるインドール系三量体の酸化体の電気化学的調整方法として、たとえば、定電圧印加法または定電位印加法、交流印加法、電位掃引法、電流印加法等の公知の電気化学的手法が挙げられる。
【0027】
【化13】
【0028】
【化14】
【0029】
(式中のRは、一般式(1)(2)と同様のものを示す)。
【0030】
一般式(1)および(2)で示されるインドール系三量体の酸化体の化学的調整方法として、たとえば、酸化剤による化学的酸化等の公知の反応を利用した化学的手法により調整することができる。本発明におけるインドール系三量体またはその酸化体は、上記一般式(1)〜(4)で表され、一般式(1)〜(4)中に示される置換基は材料に用いたインドール系単量体またはインドリン系単量体に由来する。なお、一種類のインドール系単量体またはインドリン系単量体からインドール系三量体が調整されるとは限らない。
【0031】
また、一般式(1)〜(4)中のRのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、式中、Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n −ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等を、また、Rのアルコキシル基は、−OXで表される置換基であり、Xとしては上記アルキル基を挙げることができる。また、式中のRのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等を、また、Rのアルキルチオ基のアルキル部分は上記のアルキル基を、また、Rのアリールチオ基のアルキル部分は上記のアルキル基を挙げることができる。
【0032】
本発明の二次電池またはキャパシタの一実施形態の断面構造を、図1の断面図に示す。本実施形態は、集電体1上にそれぞれ形成された正極材料層2(正極)および負極材料層4(負極)がセパレータ3を挟んで対向配置され、セパレータ3を介して正極材料層2及び負極材料層4が積層された積層体の両側面に、絶縁ゴム等からなるガスケット5が設けられている。正極材料層2及び負極材料層4には、プロトンを含有した電解液またはゲル電解質または固体電解質が含浸されている。なお、負極材料は、プロトン存在下で電気化学的に活性であれば得に限定されない。
【0033】
本実施形態の電極には、導電性を確保するための導電補助剤を必要に応じて添加する。導電補助剤としては、結晶性カーボン、非結晶性カーボン、カーボンブラック、グラファイト等の導電材料が挙げられる。また、電極の成形性を維持するため、または集電体1上に電極を固定するために必要に応じてバインダーを添加してもよい。
【0034】
以上の電極の構成材料の混合比は、所望の特性が得られる限り任意であるが、単位重量あたりまたは単位体積あたりの効率を考慮すると、インドール系三量体が30〜95重量%、導電補助剤が5〜50重量%で、バインダーが0〜20重量%の範囲にあることが望ましい。より好ましくは、インドール系三量体が60〜90重量%である。インドール系三量体が30重量%未満では、体積当たりの反応効率が低下しやすく、95重量%を超えると電極としての導電性を確保するのが難しくなる。
【0035】
また、インドール系三量体として対称型三量体と非対称型三量体とを併用する場合、その混合比率(質量基準)は、サイクル特性の点から、インドール系三量体全量を100%に対して対称型三量体が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが特に好ましい。容量の点からは、インドール系三量体全量100%に対して非対称型三量体が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが特に好ましい。このように、サイクル特性と容量との兼ね合いにより混合比率は適宜設定することができ、例えば、混合比率(対称型/非対称型)を10/90〜90/10の範囲に設定することができ、さらには20/80〜90/10若しくは20/80〜80/20の範囲に設定することができる。
【0036】
本実施形態の電解液としては、プロトンを含有する水溶液または非水溶液である。プロトンの含有量は、10−3mol/l〜18mol/lが好ましく、より好ましくは10−1mol/l〜7mol/lである。プロトンの含有量が10−3mol/l未満では、プロトン濃度が低いため、電極材料の反応性が低下し、また18mol/lを超えると酸性が強いため材料の活性が低下、または溶解するため好ましくない。これらプロトンを含有した電解液には、必要に応じて、アルカリ金属塩や、アルカリ土類金属塩、有機スルホン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩およびホウ酸塩等や、界面活性剤等を添加してもよい。これら水溶液または非水溶液に添加される塩等は種類、濃度ともに限定されない。
【0037】
セパレータ3としては、電気的絶縁性を持ち、イオン導電性を有する或いは付与しえるものであれば、テフロン(登録商標)やポリエチレン等の多孔質フィルムが挙げられる。また、プロトン伝導性のフィルムを使用することもできる。また、セパレータに代えて、ゲル電解質や固体電解質などの電解質を電極間に介してもよい。
【0038】
インドール系非対称型三量体は、電気化学的又は化学的手法により、下記反
応式1で表されるように、ドーピングされる。下記式中のX− はドーパントイオンを示し、例えば硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等であるが、インドール系三量体にドープし電気化学的活性を付与するものであれば、これらに限定されない。さらに、ドーピングされたインドール系三量体は、下記反応式2で表されるように、インドール骨格内の複素環の窒素原子上のプロトンの吸脱着を伴う電気化学反応を起こし、インドール系非対称型三量体の酸化体構造となる。
【0039】
【化15】
【0040】
(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、硫酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等を示す)。
【0041】
また、インドール系対称型三量体は、上記の非対称型三量体と同様に、電気化学的又は化学的手法により、下記反応式3で表されるように、ドーピングされる。下記式中のX− はドーパントイオンを示し、例えば硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等であるが、対称型三量体にドープし電気化学的活性を付与するものであれば、これらに限定されない。さらに、ドーピングされた対称型三量体は、下記反応式4で表されるように、プロトンの吸脱着を伴う電気化学反応を起こし、インドール系対称型三量体の酸化体構造となる。
【0042】
【化16】
【0043】
インドール系三量体は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、図2のグラフに示すような、充電(酸化反応)時の電位の挙動をする。すなわち、図2に示した反応領域1は、上記反応式1または反応式3に相当し、ドーパントX− のドーピング(ここでは、ほうフッ化イオンがドーパントである)に由来するものである。図2の反応領域2は上記反応式2または反応式4に相当し、少なくともひとつのインドール骨格の複素環の窒素原子上のプロトンの脱離によるインドール系三量体の酸化体の増加による電位の上昇を示している。
【0044】
インドール系三量体の還元体は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、その電位は約300mVvs.Ag/AgClと低いが、その酸化が進むと、まず、電解液中のドーパントX− が、インドール系三量体にドーピングする。このドーピングが進むに従い、図2の反応領域1に示したように、インドール系三量体の電位も上昇し、電位は約800mVvs.Ag/AgClと上昇する。
【0045】
続いて、ドーピングしたインドール系三量体の、少なくともひとつのインドール骨格の複素環の窒素原子上のプロトンが脱離し、インドール系三量体の酸化体となる。インドール系三量体の酸化体の増加に伴い、電位も上昇し、電位は約1100mVvs.Ag/AgClとなり、充電は終了する。
【0046】
上記反応式1または反応式3に相当する図2の反応領域1の部分と、上記反応式2または反応式4に相当する図2の反応領域2の部分は、充電速度の挙動が異なり、反応領域1の部分に対して、反応領域2の部分は充電曲線の傾きが小さい。つまり、上記反応式1または反応式3は反応の進行は比較的速く、上記反応式2または反応式4は反応の進行が比較的遅いことを示している。
【0047】
インドール系三量体の酸化体への酸化反応、つまり図2の反応領域2における充電が遅く長時間の充電になることから、電池またはキャパシタの充電において、負極にかかる充電電荷量が大きくなり、その結果、負極の過還元が起こりやすくなる。負極の過還元により負極材料自体の劣化を引き起こし、そのため、サイクル特性の悪化を招く要因となる。また、負極の過還元により、例えば、水溶液を用いた電池またはキャパシタの場合には、電解液の電位窓以上の電位が印加され、ガス発生による不具合の発生原因となることもある。
【0048】
これに対して本実施形態のインドール系三量体の酸化体を含有した電極は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、図3のグラフに示すような充電挙動をする。すなわち、初期の電位は、インドール系三量体の特性線B(実線)のように、約500mVvs.Ag/AgClであるが、インドール系三量体の酸化体を含有することにより、初期の電位は、インドール系三量体の酸化体の特性線A(点線)のように、約850mVvs.Ag/AgClとなり、その充電にかかる時間を短縮することができることから、負極にかかる充電電荷量が減少し、その結果、負極の過還元の抑制ができるようになる。負極の過還元の抑制により、負極材料自体の劣化が防止でき、そのため、サイクル特性の改善ができるようになる。
【0049】
また、負極の過還元の抑制により、たとえば、水溶液を用いた電池またはキャパシタの場合には、電解液の電位窓以上の電位が印加されることを防止できるため、ガス発生による不具合の発生も防止できるようになる。従って、電極活物質として本発明のインドール系三量体の酸化体を含有した電極を用いた電池およびキャパシタは、充電時の負極の過還元による負極活物質の劣化を抑制できるため、サイクル特性に優れるという効果を有する。
【0050】
以下、本発明の電池としての実施例を挙げてより詳細に説明するが、対称型三量体と非対称型三量体の混合の割合や充放電速度等を適宜設定することによりキャパシタとして好適な構成にすることかできる。
【0051】
(実施例1)
前述の図1に示した構造を持つ電池を常法により作製した。外装材としては、絶縁ゴムからなるガスケット5を設け、集電体1としては導電ゴムからなるものを用いた。セパレータ3としては、電解液を含浸させた多孔質フィルムからなるセパレータを用い、電解液には2mol/lのほうフッ化水素酸水溶液を用いた。
【0052】
正極材料層2には、活物質として化学的酸化処理により作製した6−ニトロインドール三量体の対称型三量体の酸化体(一般式(1)において三つのインドール単位のそれぞれの6位のRがニトロ基であり他のRが水素原子)15wt%と非対称型三量体(一般式(2)において三つのインドール単位のそれぞれの6位のRがニトロ基であり他のRが水素原子)60wt%(対称型三量体:非対称型三量体=2:8の質量比)とを用いた。
【0053】
6−ニトロインドール系三量体の酸化体の調整方法は、表1に示した2段階の酸化を用いた。まず、25℃で、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中で1時間攪拌し、ドーピングによる酸化処理(反応式1および反応式3)を行い、続いて、活物質に対して3倍等量の塩化鉄を加え、さらに1時間攪拌させ、脱プロトン化反応による酸化処理(反応式2および反応式4)を行った。これを、桐山ロートを用いて吸引ろ過法によりろ過し、さらに水で洗浄し、120℃−10torrにおいて12時間乾燥を行った。これに、導電補助材として気相成長カーボン繊維20wt%、有機バインダーを5wt%の割合で混合し、熱プレス法により電極を作成した。
【0054】
【表1】
【0055】
負極材料層4には、活物質として下記式で表されるキノキサリン系高分子を用い、導電補助材としてカーボンブラックを用いた。なお、正極にインドール系三量体を用いた場合、負極に用いる活物質としては、電気化学的に活性で可逆的な酸化還元反応を示すものであれば、これに限定されない。電極を構成する活物質と導電補助材の混合比は、正電極及び負電極のいずれにおいても、重量比で75:25(活物質:導電補助材)とした。
【0056】
【化17】
【0057】
本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約810mVvs.Ag/AgClであった。
【0058】
本実施例の電池の評価を行った。まず、電池作製後の初期電圧は、約560mVであった。電解液の浸透等により安定化させるため、電池を一晩放置し、その後電池の電圧を測定したところ、約550mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0059】
本実施例の電池のサイクル評価を行った。1.2Vまで定電流充電、0.9Vまで放電(充放電電流は10mA/cm2の定電流)を繰り返すサイクル試験を行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は52000であり、比較例1の電池の1.7倍のサイクル特性の向上が図られた。従って、化学的酸化処理によりドーピング・脱プロトン化した本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0060】
インドール系三量体のドーピングの進行速度に対して、インドール骨格内の複素環の窒素原子上のプロトンが脱離する脱プロトン化の進行速度は比較的遅い。そのため、酸化処理を施していないインドール系三量体を用いると、充電に要する時間が長くなり、負極にかかる充電電荷量が大きくなり、その結果、負極の過還元が起こりやすくなる。この負極の過還元により負極材料自体の劣化を引き起こし、そのためサイクル特性の悪化を招く要因となる。また、負極の過還元により、水溶液を用いた電池またはキャパシタの場合には、電解液の電位窓以上の電位が印加され、ガス発生による不具合の発生原因となることもある。
【0061】
本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体を含有した電極の2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中における初期の電位は、約810mVvs.Ag/AgClとなり、その充電にかかる時間を短縮することができたことから、負極にかかる充電電荷量が減少し、その結果、負極の過還元の抑制ができるようになった。従って、6−ニトロインドール三量体に化学的酸化処理を施すことにより、ドーピング・脱プロトン化した酸化体構造の6−ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、負極の過還元の抑制により、負極材料自体の劣化が防止でき、サイクル特性の優れた電池であった。
【0062】
(実施例2)
正極材料層2は、活物質として、6−ニトロインドール三量体を2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において60℃で一時間ドーピングによる酸化処理を施した他は、実施例1と同様の処理方法により調整を行い、作製した。この正極材料層2には、実施例1と同様に、対称型三量体を15wt%、非対称型三量体60wt%(対称型三量体:非対称型三量体=2:8の質量比)混合したものである。
【0063】
本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約840mVvs.Ag/AgClであった。
【0064】
本実施例の電池を実施例1の電池と同様に作製し、その評価を行った。本電池の作製後の初期電圧は、約580mVであった。一晩放置後の電圧は、約580mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0065】
本実施例の電池を実施例1と同様にサイクル試験を行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は54000であり、比較例1の電池の1.7倍のサイクル特性の向上が図れた。従って、加温条件下で化学的酸化処理によりドーピング・脱プロトン化した酸化体構造の6−ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0066】
(実施例3)
正極材料層2は、活物質として、6−ニトロインドール三量体を2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において60℃で3時間ドーピングによる酸化処理を施した他は、実施例4と同様の処理方法により調整を行い、作製した。本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約870mVvs.Ag/AgClであった。
【0067】
本実施例の電池を実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池の作製後の初期電圧は、約610mVであった。一晩放置後の電圧は、約600mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0068】
本実施例の電池を実施例1と同様にサイクル試験を行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は61000であり、比較例1の電池の2倍のサイクル特性の向上が図れた。従って、加温条件下で長時間化学的酸化処理によりドーピング・脱プロトン化した酸化体構造の6−ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0069】
(実施例4)
本実施例の正極材料層2は、活物質として、6−ニトロインドール三量体を4mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において60℃で3時間ドーピングによる酸化処理を施した他は、実施例1と同様の処理方法により調整を行い、作製した。本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約880mVvs.Ag/AgClであった。
【0070】
本実施例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約630mVであった。一晩放置後の電圧は、約620mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0071】
本実施例の電池を実施例1と同様にサイクル試験を行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は61000であり、比較例1の電池の2倍のサイクル特性の向上が図られた。従って、加温条件下・高濃度の酸性水溶液中での化学的酸化処理によりドーピング・脱プロトン化した酸化体構造の6―ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0072】
(実施例5)
本実施例の正極材料層2は、次の手法により作製した。6−ニトロインドール三量体75wt%(対称型三量体を15wt%、非対称型三量体を60wt%)に、導電補助材として気相成長カーボン繊維20wt%、有機バインダーを5wt%の割合で混合し、熱プレス法により電極を作成し、セパレータを挟んで負極と対向させ、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中で、電気化学的に酸化処理を行った。
【0073】
この酸化処理方法は、定電流(10mA/cm2)で1.0Vまで定電流充電を行い、さらに1時間1.0Vの定電圧充電処理を施した後、電極を取り出し、十分な量の水に浸漬させた後、120℃−10torrで12時間乾燥させたものを、正極材料層2として用いた。
【0074】
本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約800mVvs.Ag/AgClであった。
【0075】
本実施例の電池を実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約550mVであった。一晩放置後の電圧は、約540mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0076】
本実施例の電池を実施例1と同様にサイクル試験を行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は55000であり、比較例1の電池の1.8倍のサイクル特性の向上が図れた。従って、電気化学的酸化処理によりドーピング・脱プロトン化した酸化体構造の6−ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0077】
(実施例6)
本実施例の正極材料層2は、活物質として6−ニトロインドール三量体に1.2Vの定電圧を印加したほかは、実施例5と同様の処理方法により調整を行い、作製した。本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約860mVvs.Ag/AgClであった。
【0078】
本実施例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約600mVであった。一晩放置後の電圧は、約600mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0079】
実施例1と同様にサイクル試験を行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は57000であり、比較例1の電池の1.8倍のサイクル特性の向上が図れた。従って、電気化学的酸化処理によりドーピング・脱プロトン化した酸化体構造の6−ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0080】
(実施例7)
正極材料層2は、実施例6と同様の処理方法により調整を行い、作製した。本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、1mol/lテトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムと0.1mol/lトリフルオロ酢酸を溶解したプロピレンカーボネート溶液(以下「PC溶液」と称する)中において、約1100mVvs.Ag/AgClであった。
【0081】
本実施例の電池は、電解液としてPC溶液を使用したほかは、実施例1の電池と同様に作製した。電池作製後の初期電圧は、約920mVであった。一晩放置後の電圧は、約900mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。2.2Vまで充電、0.5Vまで放電(充放電電流は10mA /cm2 の定電流)を繰り返すサイクル試験を行った。
【0082】
その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は26000であり、比較例2の電池の1.4倍のサイクル特性の向上が図れた。したがって、電気化学的酸化処理によりドーピング・脱プロトン化した酸化体構造の6−ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、非水系の電解液を用いた場合にも、サイクル特性に優れた電池であった。
【0083】
(実施例8)
正極材料層2は、次の手法により作製した。6−ニトロインドール三量体75wt%に、導電補助材として気相成長カーボン繊維20wt%、有機バインダーを5wt%の割合で混合し、熱プレス法により電極を作成した。セパレータを挟んで負極と対向させ、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中で、電気化学的に酸化処理を行った。酸化処理方法は、定電流(10mA/cm2)で活物質あたり100mAhの定電荷量充電処理を施し、電極を取り出し、十分な量の水に浸漬させた後、120℃−10torrで12時間乾燥させた。水素酸水溶液中において、約760mVvs.Ag/AgClであった。
【0084】
本実施例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約500mVであった。一晩放置後の電圧は、約500mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0085】
本実施例のサイクル試験を、実施例1と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は48000であり、比較例1の電池の1.5倍のサイクル特性の向上が図れた。従がって、電気化学的酸化処理によりドーピング・脱プロトン化した酸化体構造の6−ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0086】
(実施例9)
正極材料層2は、次の手法により作製した。6−ニトロインドール三量体75wt%に、導電補助材として気相成長カーボン繊維20wt%、有機バインダーを5wt%の割合で混合し、熱プレス法により電極を作成した。セパレータを挟んで負極と対向させ、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中で、電気化学的に酸化処理を行った。酸化処理方法は、1.2Vから0Vまでの充放電サイクルを10回繰り返した後、充電状態で電極を取り出し、十分な量の水に浸漬させた後、120℃−10torrで12時間乾燥させた。
【0087】
本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約860mVvs.Ag /AgClであった。
【0088】
本実施例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約610mVであった。一晩放置後の電圧は、約600mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0089】
本実施例のサイクル試験を、実施例1と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は56000であり、比較例1の電池の1.8倍のサイクル特性の向上が図れた。したがって、電気化学的酸化還元処理を繰り返した本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0090】
(実施例10)
正極材料層2は、次の手法により作製した。6−ニトロインドール三量体75wt%に、導電補助材として気相成長カーボン繊維20wt%、有機バインダーを5wt%の割合で混合し、熱プレス法により電極を作成した。セパレータを挟んで負極と対向させ、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中で、電気化学的に酸化処理を行った。酸化処理方法は、定電流(10mA/cm2)で1.2Vまで定電流充電を行い、さらに1時間、振幅100mV周波数0.1Hzの交流電圧を印加した後、電極を取り出し、十分な量の水に浸漬させた後、120℃−10torrで12時間乾燥させた。
【0091】
本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約840mVvs.Ag/AgClであった。
【0092】
本実施例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約570mVであった。一晩放置後の電圧は、約580mVであり、6―ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0093】
本実施例のサイクル試験を、実施例1と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は52000であり、比較例1の電池の1.7倍のサイクル特性の向上が図れた。したがって、電気化学的酸化還元処理を施した本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0094】
(実施例11)
正極材料層2には、活物質として化学的酸化処理と電気化学的酸化処理の2段階酸化処理により作製した6−ニトロインドール三量体の酸化体を用いた。6−ニトロインドール系三量体の酸化体の調整方法は、表1に示した酸化方法による。まず、60℃で、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中で1時間攪拌し、ドーピングによる酸化処理を行い、これを桐山ロートを用いて吸引ろ過法によりろ過し、さらに水で洗浄し、120℃−10torrにおいて12時間乾燥を行った。これに、導電補助材として気相成長カーボン繊維20%、有機バインダーを5%の割合で混合し、熱プレス法により電極を作成した。これを、セパレータを挟んで負極と対向させ、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中で、電気化学的に酸化処理を行った。定電流(10mA/cm2)で1.0Vまで定電流充電を行い、さらに1時間1.0Vの定電圧充電処理を施した後、電極を取り出し、十分な量の水に浸漬させた後、120℃−10torrで12時間乾燥させた。
【0095】
本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約820mVvs.Ag/AgClであった。
【0096】
本実施例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約570mVであった。一晩放置後の電圧は、約560mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0097】
本実施例のサイクル試験を実施例1と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は56000であり、比較例1の電池の1.8倍のサイクル特性の向上が図れた。したがって、化学的酸化処理と電気化学的酸化処理を施した、酸化体構造の6−ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0098】
(実施例12)
正極材料層2は、活物質として6−ニトロインドール三量体に1.2Vを印加した以外は、実施例11と同様に調整した。本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約860mVvs.Ag/AgClであった。
【0099】
本実施例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約600mVであった。一晩放置後の電圧は、約600mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0100】
本実施例のサイクル試験を実施例1と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は57000であり、比較例1の電池の1.8倍のサイクル特性の向上が図れた。したがって、化学的酸化処理と電気化学的酸化処理を施した、酸化体構造の6−ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、サイクル特性に優れた電池であった。
【0101】
(実施例13)
正極材料層2は、実施例12と同様に調整した。本実施例の6−ニトロインドール三量体の酸化体の自然電位は、PC溶液中において、約1200mVvs.Ag/AgClであった。
【0102】
本実施例の電池を、実施例7の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約1150mVであった。一晩放置後の電圧は、約1090mVであり、6−ニトロインドール三量体の酸化体はほとんど変化せず安定であった。
【0103】
本実施例のサイクル試験を実施例7と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は25000であり、比較例2の電池の1.3倍のサイクル特性の向上が図れた。したがって、化学的酸化処理と電気化学的酸化処理を施した、酸化体構造の6−ニトロインドール三量体を正極活物質として用いた本実施例の電池は、PC溶液中においてもサイクル特性に優れた電池であった。
【0104】
(比較例1)
正極材料層2は、活物質として酸化処理を施していない6−ニトロインドール三量体を用い、導電補助材として気相成長カーボン繊維20%、有機バインダーを5%の割合で混合し、熱プレス法により電極を作成した。本比較例の6ニトロインドール三量体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約340mVvs.Ag/AgClであった。
【0105】
本比較例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約100mVであった。一晩放置後の電圧は、約100mVであった。本比較例のサイクル試験を実施例1と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は31000であった。
【0106】
(比較例2)
正極材料層2は、比較例1と同様に調整した。本比較例の6− ニトロインドール三量体の自然電位は、PC溶液中において、約540mVvs.Ag/AgClであった。
【0107】
本比較例の電池を、実施例7の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約300mVであった。一晩放置後の電圧は、約320mVであった。本比較例のサイクル試験を実施例7と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は19000であった。
【0108】
(比較例3)
正極材料層2には、活物質として化学的酸化処理を施した6−ニトロインドール三量体を用いた。この6−ニトロインドール系三量体の調整方法は、表1に示した1段階の酸化による。常温で、2mol/l ほうフッ化水素酸水溶液中で1時間攪拌し、ドーピングによる酸化処理(反応式1)を行い、これを桐山ロートを用いて吸引ろ過法によりろ過し、さらに水で洗浄し、120℃−10torrにおいて12時間乾燥を行った。これに、導電補助材として気相成長カーボン繊維20%、有機バインダーを5%の割合で混合し、熱プレス法により電極を作成した。この比較例の6−ニトロインドール三量体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約440mVvs.Ag/AgClであった。
【0109】
本比較例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約180mVであった。一晩放置後の電圧は、約160mVであった。本比較例のサイクル試験を実施例1と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は31000であった。
【0110】
(比較例4)
正極材料層2は、6−ニトロインドール三量体を60℃で酸化処理を施した以外は比較例3と同様に作成した。本比較例の6ニトロインドール三量体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約450mVvs.Ag/AgClであった。
【0111】
本比較例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約180mVであった。一晩放置後の電圧は、約170mVであった。本比較例のサイクル試験を実施例1と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は31500であった。
【0112】
(比較例5)
正極材料層2は、0.6Vを印加した以外は、実施例5と同様に作成した。本比較例の6ニトロインドール三量体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約560mVvs.Ag/AgClであった。
【0113】
本比較例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約300mVであった。一晩放置後の電圧は、約280mVであった。本比較例のサイクル試験を実施例1と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は33000であった。
【0114】
(比較例6)
正極材料層2は、0.8Vを印加した以外は、実施例5と同様に作成した。本比較例の6−ニトロインドール三量体の自然電位は、2mol/lほうフッ化水素酸水溶液中において、約600mVvs.Ag/AgClあであった。
【0115】
本比較例の電池を、実施例1の電池と同様に作製し、評価を行った。電池作製後の初期電圧は、約320mVであった。一晩放置後の電圧は、約290mVであった。本比較例のサイクル試験を実施例1と同様に行った。その結果、初期容量の80%の容量まで減少するサイクル数は33000であった。
【0116】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の構成によれば、十分な起電力と容量を有しながら、サイクル特性に優れた電池及びキャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池およびキャパシタの一実施形態の概略断面図である。
【図2】一般の6―ニトロインドール三量体の2Mほうフッ化水素酸水溶液中における充電挙動を示す特性図である。
【図3】本実施形態で用いた6―ニトロインドール三量体の酸化体の2Mほうフッ化水素酸水溶液中における充電挙動を示す特性図である。
【符号の説明】
1 集電体
2 正極材料層(正電極)
3 セパレータ
4 負極材料層(負電極)
5 ガスケット
Claims (12)
- 電極活物質として、インドール及びインドール誘導体から選ばれる1種もしくは2種以上のインドール系化合物の構造単位をもつ三量体構造を有し、3つの前記構造単位の2位および3位の原子で構成される六員環をもつ縮合多環構造を有する化合物の酸化物を含有し、
前記化合物は、いずれの構造単位同士の結合においても一方の構造単位の2位と他方の構造単位の3位との間で結合してなる三量体構造を有する第1の化合物、および、一方の構造単位の2位と他方の構造単位の2位との間の結合を持つ三量体構造を有する第2の化合物の、少なくともひとつからなり、
前記第1及び第2の化合物に対する電荷キャリアとしてプロトンを用いることを特徴とする二次電池。 - 電極活物質にインドールまたはインドール誘導体の2位および3位間で結合してなる三量体化合物を含有し、その電荷キャリアとしてプロトンを用いる二次電池において、該三量体化合物が、下記一般式(1)または(2)で示される、少なくともひとつのインドール骨格内の複素環の窒素原子上のプロトンが脱離した三量体化合物構造である酸化体構造のインドールまたはインドール誘導体の三量体を用いることを特徴とする二次電池。
- 前記インドールまたはインドール誘導体の三量体の酸化体が、化学的手法または電気的手法により調整された酸化体構造を有するインドールまたはインドール誘導体の三量体である請求項2記載の二次電池。
- 前記インドールまたはインドール誘導体の三量体の酸化体が、化学的および電気的手法の2段階により調整された酸化体構造を有するインドールまたはインドール誘導体の三量体である請求項2記載の二次電池。
- 前記三量体化合物の酸化還元反応に伴う電子授受において、該三量体化合物のプロトンの吸脱着のみが関与する請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の二次電池。
- 電解液としてプロトンを10−3mol/l〜18mol/l含有する水溶液または非水溶液を用いた請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の二次電池。
- 電極活物質として、インドール及びインドール誘導体から選ばれる1種もしくは2種以上のインドール系化合物の構造単位をもつ三量体構造を有し、3つの前記構造単位の2位および3位の原子で構成される六員環をもつ縮合多環構造を有する化合物の酸化物を含有し、
前記化合物は、いずれの構造単位同士の結合においても一方の構造単位の2位と他方の構造単位の3位との間で結合してなる三量体構造を有する第1の化合物、および、一方の構造単位の2位と他方の構造単位の2位との間の結合を持つ三量体構造を有する第2の化合物の、少なくともひとつからなり、
前記第1及び第2の化合物に対する電荷キャリアとしてプロトンを用いることを特徴とするキャパシタ。 - 電極活物質にインドールまたはインドール誘導体の2位および3位間で結合してなる三量体化合物を含有し、その電荷キャリアとしてプロトンを用いる電池において、該三量体化合物が、下記一般式(1)または(2)で示される、少なくともひとつのインドール骨格内の複素環の窒素原子上のプロトンが脱離した三量体化合物構造である、酸化体構造のインドールまたはインドール誘導体の三量体を用いることを特徴とするキャパシタ。
- 前記インドールまたはインドール誘導体の三量体の酸化体が、化学的手法または電気的手法により調整された酸化体構造を有するインドールまたはインドール誘導体の三量体である請求項8記載のキャパシタ。
- 前記インドールまたはインドール誘導体の三量体の酸化体が、化学的および電気的手法の2段階により調整された酸化体構造を有するインドールまたはインドール誘導体の三量体である請求項8記載のキャパシタ。
- 前記の三量体化合物の酸化還元反応に伴う電子授受において、該三量体化合物のプロトンの吸脱着のみが関与する請求項7乃至10のうちのいずれか1項に記載のキャパシタ。
- 電解液としてプロトンを10−3mol/l〜18mol/l含有する水溶液または非水溶液を用いた請求項7乃至10のうちのいずれか1項に記載のキャパシタ。
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