JP3700478B2 - スローアウェイ式リーマ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工具本体の先端外周部に少なくとも1つの切刃ブレードが交換可能に装着されたリーマであって、径方向の位置を微調整する調整手段が備えられたスローアウェイ式リーマに関する。
【0002】
【従来の技術】
切刃ブレードが交換可能なリーマにあって、切刃ブレードのクランプ機構としては、クランプ爪を工具本体にネジ止めし、その締結力を利用してクランプ爪と工具本体に設ける切刃ブレードの装着溝の間に、切刃ブレードを固定するのが衆知の技術である。リーマ径が大きくなると、幅広の切刃ブレードに取付けボルトを貫通させ、直接工具本体にネジ止めする方法も知られている。
【0003】
切刃ブレードが摩耗した場合には、再研磨して使用すればよいが工具本体の元の位置に取付けても、仕上げ径が小さくなるので調整手段が必要となる。該調整手段には、工具本体に設ける調整穴に、先端に斜面を有するピンを挿入して切刃ブレードの側面に当接させ、これを調整ネジにて追い込む方法や、工具本体に設ける調整穴に、鋼球を挿入して切刃ブレードの側面に当接させ、これを調整ネジにて追い込む方法等が知られている。
【0004】
特開昭52−122986号公報には、比較的小径のリーマに適したクランプ爪を用いて切刃ブレードを固定し、先端に斜面を有するピンにて仕上げ径を調整する技術が提案されている。図5に、切刃ブレードのクランプ機構の断面図を、図6に、調整機構の断面図を示す。
【0005】
図5において、101は工具本体であり、外周の複数個所にガイド部材102が圧入されている。切刃ブレード103は、装着溝104内に切刃ブレード103の底面を着座させ、すくい面103aに設ける切欠き103bにクランプ爪105を当接させている。クランプ爪105は、逆ネジ107の一方に螺合され、逆ネジ107の他方と工具本体101のネジ穴106に螺合して、その締結力によって固定される。
【0006】
図6において、切刃ブレード103の固定位置の調整は、クランプ爪105の位置から多少ずれた位置で、切刃ブレード103の工具本体の軸芯側の側面103cに、工具本体に設ける複数の調整穴108に挿入する調整ピン109の斜面109aを当接し、調整ピン109の後端から調整ネジ110にて追い込んで仕上げ径の調整をする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来技術では、リーマの仕上げ径が小さくなるに従いクランプ爪105も細くなり、爪の剛性が低下する。これを補うために数を増やすと部品コストの上昇と調整工数の増加を招く。又、クランプ爪と調整ネジは別体であるから、クランプ爪は調整ネジの軸芯の廻りで自由に回動し、クランプ爪の固定位置が切刃ブレードの切欠きに対し自動的に最適位置に収まる保証はない。本発明は、仕上げ径が小さく、直径8mm以下であっても切刃ブレードを確実に固定する部品点数の少ないスローアウェイ式リーマを提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、切刃ブレードが交換可能なリーマにおいて、切刃ブレードの装着溝に挿入されている前記切刃ブレードのすくい面側に、少なくとも1個の左ネジを有する皿小ネジの頭部下面の斜面を当接させ、切刃ブレードがクランプ時に工具本体のシャンク側に送られ、アンクランプ時に工具本体の先端側に繰出されるように前記皿小ネジによってクランプされている。
【0009】
さらに好ましくは、皿小ネジの頭部下面の斜面が当接する切刃ブレードのすくい面に、底面との成す角度αが10°以下の切刃に沿った連続したV字状の斜面若しくは、少なくとも1個の球状又は円錐状のディンプルを形成した、仕上げ径が比較的小さいリーマにも有効なクランプ機構を提供する。
【0010】
又、切刃ブレードの底面と前記皿小ネジの軸芯との交わる角度θは、リーマの外周方向に広がり、θ=15°〜40°の範囲に設定するのが好ましい。
【0011】
そして、前記皿小ネジの硬度、分けても頭部下面の斜面硬度は、HRC47〜60に熱処理されていることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を具体化した好適な実施例を、図面に基づき詳細に説明する。図1に、リーマの工具本体の先端に切刃ブレードが固定されている側面図を示す。また、図1中のX−X断面における切刃ブレードのクランプ機構図を図2(イ)に、Y−Y断面における切刃ブレードの調整機構図を図2(ロ)に示す。
【0013】
図1において、1は工具本体であり、切刃ブレード2は、工具本体1の先端よりフライス又はエンドミルにて形成された装着溝3に挿入されている。4は、切刃ブレード2の位置決めピンである。クランプネジである左ネジの皿小ネジ5は、略工具本体1の軸芯に向かって螺着され、そのネジ頭部下面の斜面を切刃ブレード2のすくい面に当接させ、切刃ブレード2を固定する。6は、先端の切屑ポケットであり、軸上切屑ポケット7には皿小ネジ5の締付け方向を示す矢印8が刻印されている。超硬合金又はcBN焼結体若しくはダイヤモンド焼結体等から成る複数のガイド部材9は、挿入溝10に圧入され係止されている。このガイド部材9は、リーマの偏心、振動等を防止する働きがある。
【0014】
クランプ機構は、図2(イ)に示すように従来技術の常套手段であったクランブ爪を省いて、皿小ネジ5の頭部下面の斜面5aを直接切刃ブレード2のすくい面2aに当接させる。言い換えれば、底面2cとの成す角度αが10゜以下の切刃に沿った連続したV字状の斜面2bに当接させ皿小ネジ5を増し締めすることで、装着溝3内の切刃ブレード2を工具本体1の軸芯方向にスライドさせる。角度αを10゜以上に設定すると、皿小ネジ5の頭部下面の斜面5aと装着溝3とで挟まれる楔効果が薄れ好ましくない。
【0015】
切刃ブレード2の底面2cと皿小ネジ5の軸芯との交わる角度θは、リーマの外周方向に広がる角度であって、θ=15°〜40°の範囲に設定するのが好ましい。図2(イ)から判るように、皿小ネジ5の頭部よりの斜面5aをV字状斜面2bの底近傍に当接させると、楔効果を発揮させ易い。角度θが15°以下になると、切屑ポケット7が小さくなりスムースな切屑の排出を妨げる。又、切刃ブレード2の底面2cと皿小ネジ5の軸芯とが平行の方向に近づくにつれ、切刃ブレード2のV字状の斜面2bの角度αは一定であるから、皿小ネジ5の頭部下面の斜面5aの角度もJIS B 1111「十字穴付き小ねじ」に規定される皿角度90°よりも小さく設定するのが望ましい。角度θが40°以上になると、切屑ポケット7は大きくなるが、同様の理由で皿小ネジ5の皿角度は90°に近かづき、皿小ネジ5の頭部径も大きくなり頭部の強度が不足する。
【0016】
そして皿小ネジ5は、熱処理によって所定の硬度に設定されるのが好ましい。試みに、ニッケルクロムモリブデン鋼(SNCM630)なら成る皿小ネジ5に焼入焼戻しの熱処理を施し、硬度をHRC40〜45に設定したものに対し、図2(a)のクランプ操作を繰返したところ、20回前後で皿小ネジ5の頭部下面の斜面5aが摩滅した。そこで、炭素の含有量の大きい合金工具鋼(SKD11)に熱処理を施して硬度をHRC48〜58に設定した皿小ネジ5で、上記のクランプ操作を50回繰返したが、軽度の摩滅しか認められなかった。従って、皿小ネジ5の頭部下面の斜面5aの摩滅、変形を防ぐには、硬度HRC47〜60の範囲に設定すれば、皿小ネジ5の交換頻度を減少させることができる。
【0017】
本発明のクランプ機構は、単にクランプネジである少なくとも1個の皿小ネジ5を切刃ブレード2に接触させながら、工具本体1の軸芯に向かって着脱するだけであるから、ガイド部材9との干渉も余裕を持って避けることができ、比較的小径のリーマに適した構造である。さらに、皿小ネジ5を左ネジにしたことにより、クランプ時には図1に示すように切刃ブレード2は工具本体1の後方のシャンク側に送られ、アンクランプ時には先端側に繰出され、切刃ブレード2の着脱が簡便となる。
【0018】
切刃ブレードの調整機構は、図2(ロ)に示すようにクランプ機構と干渉しない位置に、装着溝3と交わる調整穴11内に鋼球12を納め、切刃ブレード2の側面に当接させ、調整ネジ13を増し締めして切刃ブレード2を外周方向にスライドさせる。上記は、切刃ブレードの調整機構の1例であるが、通常、複数個所設けるのが好ましい。
【0019】
図3に、切刃に沿う連続したV字状の斜面を有する切刃ブレード2の平面図を、図4に複数の球状又は円錐状のディンプルが形成されている切刃ブレード2の平面図を示す。図3において、2bは切刃に沿う連続したV字状の斜面である。A−A断面に示すように、底面2cと斜面2bの成す角度αは10°以下に形成するのが好ましい。V字状の斜面2bが造る窪みに皿小ネジ5の頭部下面の斜面5aが係合して、皿小ネジ5を増し締めすることで、装着溝3内の切刃ブレード2を工具本体1の軸芯方向にスライドさせる。
【0020】
図4において、2dは、球状又は円錐状のディンプルである。B−B断面から判るようにディンプル2dの作用効果は、V字状の斜面2bと全く同様である。ディンプル2dの設置位置は、図1に示す位置決めピン4の端面を基準に、L1及びL2よりも若干大きく形成するのが好ましい。小さくなると、当初、切刃ブレード2を位置決めピン4に突当てゝクランプしてあっても、位置決めピン4から遊離したところに位置決めされ、切削中の工具本体1の推力を受ける切刃ブレード2が位置決めピン4側に移動する恐れがある。
【0021】
【発明の効果】
切刃ブレードのクランプ機構を、従来技術の常套手段であったクランブ爪を省いて、皿小ネジの斜面を直接切刃ブレードのすくい面に形成するV字状の斜面に当接させ、皿小ネジを増し締めすることで、切刃ブレードを工具本体の軸芯方向にスライドさせるようにしたから、ガイド部材との干渉も余裕を持って避けることができ、比較的小径のリーマに好適である。さらに、皿小ネジを左ネジにしたことにより、クランプ時に切刃ブレードは、工具本体の後方のシャンク側に送られ、アンクランプ時には先端側に繰出され、切刃ブレードの着脱が簡便となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリーマの工具本体の先端部の側面図である。
【図2】(イ)は本発明のクランプ機構を示す図であり、(ロ)はクランプ機構を示す図である。
【図3】本発明の連続したV字状の窪みを有する切刃ブレードの平面図である。
【図4】本発明の球状又は円錐状のディンプルを有する切刃ブレードの平面図である。
【図5】従来技術のクランプ機構図である。
【図6】従来技術のクランプ機構図である。
【符号の説明】
1 工具本体
2 切刃ブレード
2b 連続したV字状の斜面
2d 球状又は円錐状のディンプル
3 装着溝
4 位置決めピン
5 皿小ネジ
5 a皿小ネジの斜面
6 先端の切屑ポケット
7 軸上切屑ポケット
8 矢印
9 ガイド部材
10 挿入溝
11 調整穴
12 鋼球
13 調整ネジ

Claims (5)

  1. 切刃ブレードが交換可能なリーマにおいて、切刃ブレードの装着溝に挿入されている前記切刃ブレードのすくい面側に、少なくとも1個の左ネジを有する皿小ネジの頭部下面の斜面を当接させ、切刃ブレードがクランプ時に工具本体のシャンク側に送られ、アンクランプ時に工具本体の先端側に繰出されるように前記皿小ネジによってクランプされていることを特徴とするスローアウェイ式リーマ。
  2. 前記皿小ネジの頭部下面の斜面が当接する前記切刃ブレードのすくい面に、底面との成す角度αが10°以下の切刃に沿った連続したV字状の斜面若しくは、少なくとも1個の球状又は円錐状のディンプルが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスローアウェイ式リーマ。
  3. 前記皿小ネジの頭部下面の斜面が、工具本体と前記切刃ブレードのすくい面に形成された斜面またはディンプルとに当接していることを特徴とする請求項2に記載のスローアウェイ式リーマ。
  4. 前記切刃ブレードの底面と前記皿小ネジの軸芯との交わる角度θが、リーマの外周方向に広がり、θ=15°〜40°の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載のスローアウェイ式リーマ。
  5. 前記皿小ネジの硬度がHRC47〜60であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスローアウェイ式リーマ。
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