JP3699825B2 - 超音波手術装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波振動によって生体組織を処置する超音波手術装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、超音波振動の応用技術として従来から超音波凝固切開、超音波クリップ溶着、超音波トラカールなどの超音波を利用した各種の手術装置が考えられている。この種の超音波手術装置では生体組織を処置する処置部を備えたハンドピースの内部に、超音波振動を発生する超音波振動子と、この超音波振動子からの超音波振動を前記処置部に伝達するプローブとが内蔵されている。
【0003】
そして、超音波手術装置の使用時には処置部を生体組織の処置対象部位(被処置部)に当接させた状態で、超音波振動子からの超音波振動をプローブを介して処置部に伝達し、この超音波振動によって生体組織を処置するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、トラカールや、凝固手術装置では生体組織を処置する処置部を生体組織に当接させた際に、処置部によって生体組織を押圧する押圧力の力量が超音波振動子への負荷になる。そのため、超音波手術装置の使用時に力を入れすぎると、生体組織を押圧する押圧力の力量が大きくなるので、超音波振動子への負荷が上昇しすぎて振動できなくなり、かえって超音波手術装置の通常の超音波処置機能が働かないことになる。
【0005】
なお、超音波振動子への負荷の状態をモニタして超音波振動の出力をオン、オフ制御することなども考えられている。しかしながら、負荷への超音波エネルギーを与える間の制御は特に考えられていないのが実情である。
【0006】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、超音波振動による各処置機能を適切に利用できるとともに、生体組織への過剰なエネルギー供給を制限することができる超音波手術装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、被検体に挿入可能な挿入部と、前記挿入部の手元側に設けられ、超音波振動を発生可能な超音波振動子と、前記挿入部に設けられ、前記超音波振動子で発生した超音波振動を伝達する超音波プローブと、前記挿入部の先端側に設けられ、前記超音波振動により生体組織を処置可能となるように前記超音波プローブに接続された処置部と、前記超音波振動子に電力を供給可能な電力供給手段と、前記電力供給手段から前記超音波振動子に出力される出力電圧を検出する電圧検出手段と、前記電力供給手段から前記超音波振動子に出力される出力電流を検出する電流検出手段と、前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記出力電流を予め設定された所定の電流と一致させるように前記出力電圧を出力可変にして定電流制御が可能となるよう前記電力供給手段を制御する定電流制御手段と、前記定電流制御手段によって制御された出力電圧を検出した前記電圧検出手段の検出結果に基づいて、前記超音波振動子の負荷状態と、予め設定された負荷状態設定値とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記出力電流と出力電圧とから得られる前記超音波振動子で消費される電力を予め設定された所定の電力と一致させるように前記出力電流と出力電圧とを制御する定電力制御が可能となるよう前記電力供給手段の制御を切替える切替手段と、前記切替手段の切り替え状態を告知する告知手段と、
を具備したことを特徴とする超音波手術装置である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至図7(A),(B)を参照して説明する。図1は本実施の形態の超音波手術装置1全体の概略構成を示すものである。本実施の形態の超音波手術装置1には、装置本体2と、この装置本体2に接続されたフットスイッチ3と、超音波処置具のハンドピース4とがそれぞれ設けられている。
【0009】
また、超音波処置具のハンドピース4には接続ケーブル5の基端部が接続されている。この接続ケーブル5の先端部にはコネクタ6が接続されている。ここで、装置本体2のフロントパネル7には超音波処置具接続部8が設けられている。そして、この接続部8には超音波処置具のコネクタ6が着脱可能に連結されるようになっている。
【0010】
なお、本実施の形態の超音波手術装置1で使用される超音波処置具としては図1に示す第1の超音波処置具Aや、図2に示す第2の超音波処置具Bなどがある。ここで、第1の超音波処置具Aのハンドピース4には細長いシース9と、このシース9の基端部に連結された手元側の操作部10と、シース9の先端部に配設された処置部11とが設けられている。
【0011】
また、ハンドピース4の内部には超音波振動を発生する図示しない超音波振動子と、この超音波振動子からの超音波振動を処置部11に伝達するプローブ12とが内蔵されている。さらに、処置部11にはシース9の先端部に回動可能に支持された把持部13が設けられている。この把持部13はプローブ12の先端部に対して接離可能になっている。
【0012】
また、ハンドピース4の手元側の操作部10には固定ハンドル14aと、可動ハンドル14bとが設けられている。そして、固定ハンドル14aに対して可動ハンドル14bを開閉操作することにより、処置部11の把持部13をプローブ12の先端部に対して接離させることができるようになっている。この場合、可動ハンドル14bを閉操作する操作にともない把持部13をプローブ12の先端部側に向けて閉じる方向に回動させ、図6に示すようにこの把持部13とプローブ12の先端部との間で例えば人体内の血管等の生体組織Hを把持することができるようになっている。そして、この状態でハンドピース4内の超音波振動子を駆動することにより、プローブ12と把持部13との間の生体組織に超音波処置を施すことができるようになっている。
【0013】
また、第2の超音波処置具Bのハンドピース4には第1の超音波処置具Aの処置部11とは異なる構成の処置部15が設けられている。この処置部15にはシース9の先端部に固定された略L字状の受け部16と、シース9内に軸心方向にスライド可能に装着された突き当て部材17とが設けられている。ここで、受け部16または突き当て部材17のいずれか一方にはプローブ12の先端部が連結されている。そして、操作部10の固定ハンドル14aに対して可動ハンドル14bを開閉操作することにより、処置部15の突き当て部材17を受け部16に対して接離させることができるようになっている。この場合、可動ハンドル14bを閉操作する操作にともない処置部15の突き当て部材17を受け部16に向けて突き当てる方向にスライドさせ、この突き当て部材17と受け部16との間で例えば人体内の血管等の生体組織を把持することができるようになっている。そして、この状態でハンドピース4内の超音波振動子を駆動することにより、突き当て部材17と受け部16との間の生体組織に超音波処置を施すことができるようになっている。
【0014】
また、装置本体2のフロントパネル7には図3に示すように電源スイッチ18と、表示パネル19とが設けられている。さらに、表示パネル19の中には超音波振動子の大きさ(振幅の大きさ)を設定した値を示す設定表示部(表示手段)20と、設定部21と、超音波振動に対する負荷状態を告知するバーグラフ表示部(負荷状態告知手段)22とが設けられている。ここで、設定部21には設定用アップスイッチ21aと、ダウンスイッチ21bとが設けられている。
【0015】
また、装置本体2内には図4に示す構成の駆動回路23が装着されている。この駆動回路23には位相追尾回路(PLL)24と、定電流駆動するための乗算器である電圧制御アンプ(VCA)25と、超音波振動子にパワーを与えるための電流を生成する電力増幅器26と、電圧電流検出部27と、出力トランス28とが順次直列に接続された出力回路が設けられている。そして、この出力トランス28の出力ポートにはハンドピース4が接続され、出力トランス28で装置本体2内の駆動回路23とハンドピース4との間を直流的に分離している。
【0016】
また、位相追尾回路24は超音波振動子の共振周波数を追尾して共振点駆動するための回路である。この位相追尾回路24には電圧電流検出部27が接続されている。さらに、電圧電流検出部27にはPLLをかけるための電圧と電流の位相信号を検出し、あるいは超音波振動子に流れる電流の大きさを検出する回路が含まれている。
【0017】
さらに、駆動回路23には差動増幅器29と、電圧生成部30と、制御部31と、判断部32と、A/Dコンバータ33とが設けられている。ここで、制御部31にはフットスイッチ3と、表示パネル19上の設定部21と、電圧生成部30と、判断部32と、A/Dコンバータ33とが接続されている。
【0018】
また、差動増幅器29の一方の入力端には電圧電流検出部27、他方の入力端には電圧生成部30がそれぞれ接続されている。ここで、電圧生成部30では表示パネル19上の設定部21による設定振幅に比例した電圧を生成するようになっている。
【0019】
さらに、差動増幅器29の出力端は電圧制御アンプ25に接続されている。そして、差動増幅器29では電圧生成部30によって設定振幅から生成された設定電圧と、電圧電流検出部27から検出された電流値の大きさとを比較してこれらが同じになるように差動増幅器29からの増幅出力が電圧制御アンプ25に供給される。これにより、超音波振動子に加える電圧の大きさをコントロールして一定電流になるように制御をしている。これは定電流ループになっている。
【0020】
また、差動増幅器29の出力端は判断部32に接続されている。さらに、この判断部32は表示パネル19のバーグラフ表示部22に接続されている。このバーグラフ表示部22には図5に示すように複数のLED34が配設されている。さらに、判断部32にはバーグラフ表示部22の各LED34毎にそれぞれ個別に接続される複数のコンパレータ35および抵抗群36がそれぞれ配設されている。
【0021】
そして、差動増幅器29からの出力信号は判断部32に入力される。この判断部32ではバーグラフ表示部22に表示される負荷のデータを生成するようになっている。ここで、出力トランス28からの出力電圧の大きさは電圧制御アンプ25の乗算器の入力に比例するので、この電圧制御アンプ25の乗算器への入力信号が、即ち、インピーダンスの大きさを示している。したがって、判断部32では差動増幅器29の出力、即ち、この電圧制御アンプ25への入力信号を基にして、負荷変化の状態をバーグラフ表示部22でバーグラフなどによって表示するようになっている。このとき、判断部32では差動増幅器29からの出力信号を多段のコンパレータ35で受けてバーグラフ表示部22の複数のLED34のオンオフ状態を個別に制御し、バーグラフ表示部22の各LED34のオンオフ状態によって超音波振動に対する負荷変化の状態をバーグラフ状に表示させるようになっている。
【0022】
なお、判断部32では多段のコンパレータ35で受けた中で電圧値が最大になった時の信号を制御部31に伝え、超音波振動に対する負荷変化の状態を制御回路で告知する構成にしても良い。
【0023】
また、差動増幅器29の出力信号をA/Dコンバータ33で受けて、デジタルデータにしてそれを制御部31に入力し、その結果で制御部31からバーグラフ表示部22の各LED34を直接ドライブする構成にしても良い。
【0024】
次に、上記構成の作用について説明する。図7(A)は本実施の形態の超音波手術装置1全体の電気回路を簡単に図示したものである。なお、図7(A)中で、37はハンドピース4内の超音波振動子である。本実施の形態の超音波手術装置1の使用中、超音波振動子37の超音波振動の振幅は流れる電流|I|に比例するので、この電流値をフィードバックして装置本体2内の駆動回路23で定電流駆動をすると負荷の変動によらず安定した振動振幅が得られる。
【0025】
また、図7(B)は図7(A)の超音波手術装置1の駆動回路23で定電流駆動制御をしている時の電圧|V|および電流|I|の大きさの変化状態を示すものである。なお、図7(B)中で横軸はインピーダンス|Z|の大きさ、縦軸は電圧|V|と電流|I|の大きさをそれぞれ示すものである。
【0026】
ここでは、定電流駆動を行っているので、負荷インピーダンス|Z|つまり超音波振動子37に加わる機械的な負荷が変化しても、電流値は一定のまま保持される。このとき、電圧|V|の大きさはインピーダンス|Z|が上がるに従って、比例して電圧|V|の大きさが上昇する。
【0027】
また、超音波振動の振幅は超音波振動子37に流す電流に比例するので、超音波振動子37からの超音波振動の振幅を設定値の通り一定に保持するためには定電流制御を行う。このとき、凝固切開装置では図6に示すようにハンドピース4の把持部13とプローブ12の先端部との間で例えば人体内の血管等の生体組織Hを把持した状態で超音波振動子37を駆動し、超音波振動を与える。
【0028】
この作業中、ハンドピース4の把持部13とプローブ12の先端部との間で生体組織Hを把持する際の把持力を大きくしすぎると、インピーダンス|Z|が大きくなる。そのため、この場合には駆動回路23から一定の電流を超音波振動子37に供給しようとしても電圧|V|が飽和してしまって設定通りの振幅が維持できなくなる。そして、極端な場合には超音波振動が止まってしまうので、生体組織Hの凝固作業ができなくなる。したがって、ハンドピース4の把持部13とプローブ12の先端部との間で挟んだ例えば人体内の血管等の生体組織Hを把持する力量が生体組織Hの処置の程度や、スピードを左右するパラメータの一つとなる。例えば、ハンドピース4のアプリケーションとして超音波トラカールを考えた場合には、この超音波トラカールを体壁に穿刺する時に力を入れすぎると、超音波トラカールの押し込み力が極端に大きくなるので、インピーダンス|Z|が大きくなりすぎて超音波振動が止まってしまうおそれがある。
【0029】
そこで、本実施の形態の超音波手術装置1では装置本体2の表示パネル19の中にバーグラフ表示部22を設け、超音波振動に対する負荷(インピーダンス|Z|)の状態をこのバーグラフ表示部22の複数のLED34のオンオフ状態によってバーグラフ表示部22にバーグラフのような形で表示して告知するようにした。そのため、使用者は表示パネル19のバーグラフ表示部22のバーグラフを目視することにより、超音波振動に対する負荷(インピーダンス|Z|)の状態を簡単に確認することができる。
【0030】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態では装置本体2の表示パネル19側のバーグラフ表示部22に術者が操作するハンドピース4の操作力量をバーグラフで表示させ、告知することができるので、バーグラフ表示部22に表示されるバーグラフを目視することにより、術者が操作するハンドピース4の操作力量を簡単に確認することができる。そのため、そのハンドピース4の可動ハンドル14bを閉操作する際の操作力量のコントロールを術者によって容易に行うことができ、生体組織Hの凝固作業を安定に行うことができる。
【0031】
また、図8は第1の実施の形態(図1乃至図7(A),(B)参照)の変形例を示すものである。本変形例は超音波手術装置1の使用中、インピーダンス|Z|の変化をバーグラフではなく、音質の変化で告知する音質変化告知手段41を設ける構成にしたものである。すなわち、本変形例の音質変化告知手段41には差動増幅器29の出力端に接続されたVCF発振器42と、スピーカー用アンプ43と、スピーカー44とが設けられている。そして、差動増幅器29の出力をVCF発振器42で受けて電圧の変化を周波数の変化に変換したのち、VCF発振器42からの出力信号をスピーカー用アンプ43で受けてスピーカー44の出力の音質を変えるようになっている。
【0032】
なお、差動増幅器29の出力の変化によって音質を変えるのではなく、例えば、断続音の周期を変えたり、音量の大きさを変えたりする構成にしても良いし、第1の実施の形態のバーグラフと併用しても良い。
【0033】
また、図9および図10は本発明の第2の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図7(A),(B)参照)の超音波手術装置1の駆動回路23の構成を図9に示す駆動回路51に変更したものである。
【0034】
すなわち、本実施の形態の駆動回路51には第1の実施の形態と同様に位相追尾回路(PLL)24と、電圧制御アンプ(VCA)25と、電力増幅器26と、電圧電流検出部27と、出力トランス28とが順次直列に接続された出力回路が設けられている。さらに、この駆動回路51には第1の実施の形態と同様に差動増幅器29と、電圧生成部30とが設けられている。
【0035】
また、本実施の形態の駆動回路51ではエネルギーの制限値を設定するための信号発生手段52と、電流値|I|と電圧値|V|との掛け算をして電力|P|の大きさの電圧を生成するための掛け算器53と、信号発生手段52からの出力信号を基準として掛け算器53からの出力信号を比較して電流値設定手段である電圧生成部30の信号生成をコントロールしたり、あるいは信号発生手段52からのエネルギーの制限設定信号を基準として電圧の大きさを比較値に入力する差動増幅器54とが設けられている。そして、この差動増幅器54の出力によって定電流設定値の信号を生成する電圧生成部30を制御するようになっている。このように、信号発生手段52、掛け算器53、差動増幅器54を追加することで、定電力制御の駆動回路51が実現できる。
【0036】
次に、上記構成の作用について説明する。図10は本実施の形態の制御方法を示すものである。なお、図10中で、横軸にはインピーダンス|Z|の変化、縦軸には電流|I|の大きさ、電圧|V|の大きさに加えて電力|P|の大きさも示している。
【0037】
本実施の形態の駆動回路51では超音波振動子は位相追尾回路24によって共振点駆動されている。よって、電圧と電流の位相差が0なので、電圧の大きさと電流の大きさの掛け算をした値は超音波振動子で消費している電力と全く比例関係となり、容易に電力値が測定できる。
【0038】
また、本実施の形態の超音波手術装置1、例えば超音波凝固切開装置ではハンドピース4の処置部11が生体組織Hを把持する力量が超音波凝固切開機能の処置結果を左右する。同様に、別のアプリケーション、例えば、超音波クリップの場合にはクリップを生体組織Hに押しつけるような力量、あるいは超音波トラカールの場合には生体組織Hに穿刺する時の押し込む力量が各機能の処置結果を左右する。つまりきれいな、確実な生体組織Hの凝固処置、確実なクリップ処置、あるいは安全な剌入処置に影響する。
【0039】
これらの力量が大きくなると、超音波振動子に加わる機械的な負荷が増大する。つまり、電気的なインピーダンス|Z|の大きさが大きくなるので、超音波振動子への供給電力|P|がどんどん大きくなる。この場合、定電流制御では電流値|I|が一定に制御されているので、図10に示すように電圧|V|の上昇にともない結果的に供給電力|P|が大きくなる。
【0040】
しかし、超音波振動子の振動エネルギーは大きすぎない方が先の生体組織Hの凝固や、クリップや、安全な刺入などの機能は安定する。そこで、本実施の形態では駆動回路51からの出力電圧、つまり超音波振動子に印加される電圧の上限を制限するようにエネルギー量の上限値を制限する。すなわち、図10に示すようにインピーダンス|Z|の変化の範囲が低い方から予め設定されたある設定値Z1 までは定電流駆動で制御する。この範囲内ではインピーダンス|Z|が上昇しても電流値|I|が一定で保持され、電圧値|V|がインピーダンス|Z|の上昇に比例して上昇するので、結果的に電力|P|も比例して上昇する。そして、インピーダンス|Z|の変化の範囲が設定値Z1 を越えると、それ以上のインピーダンス|Z|が高い範囲では駆動電流値|I|を下げ、同じく電圧値|V|の上昇率も下げることで電力値|P|の上限値が一定になるように制御する。
【0041】
なお、本実施の形態の駆動回路51の掛け算器53を省略することにより、定電圧制御の駆動回路51となる。さらに、本実施の形態の駆動回路51をD/Aコンバータ、A/Dコンバータ及びCPUで構成し、本実施の形態と同様の作用をさせても良い。また、定電流制御から定電圧制御、あるいは定電力制御への切換え状態を表示する何らかの形の表示手段あるいは表音手段を装置本体2に設けても良い。
【0042】
また、図11は第2の実施の形態(図9および図10参照)の変形例を示すものである。本変形例は第2の実施の形態のように電力を一定にする技術を簡易的に達成する方法である。
【0043】
すなわち、本変形例ではインピーダンス|Z|の値が予め設定されたある設定値Z1 までは第2の実施の形態と同様に定電流駆動するが、その設定値Z1 を過ぎてからは電圧値|V|の大きさを一定に制御するようにしている。この場合には電流値|I|が下がって電力|P|の値は若干上がっていくことになるが、このような簡易的な制御をしても結果的に電力|P|にはほぼ上限の制限をかけることができる。
【0044】
また、図12(A),(B)は本発明の第3の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図7(A),(B)参照)の超音波手術装置1と、内視鏡システム61と、電気メス装置62とを組合わせた手術装置63に本発明を適用した制御状態の告知方法の例である。
【0045】
図12(A)は手術装置63全体の概略構成を示すもので、64は硬性内視鏡、65はこの硬性内視鏡64に接続される内視鏡用カメラヘッド、66はこのカメラヘッド65に接続されるTVカメラ用プロセッサ、67は電気メス装置、68は気腹器、69はモニタである。ここで、内視鏡64、カメラヘッド65、TVカメラ用プロセッサ66、電気メス装置67、気腹器68、モニタ69はシリアルにつながっている。さらに、電気メス装置67には電気メス用のハンドピース70と、そのためのフットスイッチ71とが接続されている。
【0046】
また、TVカメラ用プロセッサ66の中には図12(B)に示すようにCCU72が装着されている。そして、内視鏡64の映像がこのCCU72によって電気信号に変えられるようになっている。
【0047】
さらに、本実施の形態の超音波手術装置1の装置本体2内には超音波処置具の駆動回路23、制御部31、表示部22の他にキャラクタージェネレータ73が配設されている。このキャラクタージェネレータ73の入力側には制御部31および表示部22がそれぞれ接続されている。
【0048】
また、キャラクタージェネレータ73の出力側はスーパーインポーザ74の一方の入力端に接続されている。このスーパーインポーザ74の他方の入力端にはCCU72からの出力信号が入力されるようになっている。さらに、スーパーインポーザ74の出力端にはバッファ75の入力端が接続されている。このバッファ75の出力側はモニタ69に接続されている。このモニタ69には画像表示画面76の一部に告知情報表示領域77が設けられている。そして、この告知情報表示領域77には超音波振動に対する負荷状態や、その他の各種情報を表示するようになっている。
【0049】
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態では超音波手術装置1の内部で告知したい所望の項目、例えば、超音波出力のオンオフ状態を示す情報をキャラクタージェネレータ73で生成する。ここで生成したキャラクター信号は先のCCU72からの出力信号とスーパーインポーザ74で混合される。そして、このスーパーインポーザ74からの出力信号はバッファ75で増幅されたのち、TV用信号がモニタ用信号として出力される。
【0050】
このとき、モニタ69の画像表示画面76の一部の告知情報表示領域77上には図12(B)に示すように、例えば、このモニタ69の右上隅の方に超音波出力がオン状態であるという告知情報がスーパーインポーズ状態で表示される。
【0051】
なお、複数の手術装置の状態をモニタ69の画像表示画面76の内視鏡像のモニタ画像に重ねて表示する場合には従来は各手術装置の専用のキャラクタージェネレータ装置が必要となる。そのため、従来の装置では超音波手術装置1や、電気メス装置62や、あるいは気腹器68と接続して、それらの出力信号からその状態を示すためのキャラクターを生成させる必要があるので、従来の装置では仮に新しい手術装置が開発された場合にはそのキャラクタージェネレータ装置も新たにモディファイしないといけない不具合がある。
【0052】
これに対して、上記構成の本実施の形態ではスーパーインポーザ74を手術装置63の内部に組み込み、しかもシリアルでつなげていけるように構成したので、本実施の形態では新しい手術装置が加わってもその新装置にシリーズにつなげることでモニタ69の画像表示画面76の一部の告知情報表示領域77上に容易にスーパーインポーズの表示をすることが可能となる効果がある。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
【0054】
記
(付記項1) 超音波振動によって組織を処置する装置であって、超音波振動を発生する超音波振動子と、超音波振動を処置部に伝達するプローブと、を含むハンドピース、超音波振動子に、設定した一定電流が流れるように制御する定電流制御機構を含む駆動回路と、超音波振動子に印加される電圧の大きさを示す信号を取り出し、その変化を表示する表示手段、から成り、超音波振動に対する負荷状態を告知するようにしたことを特徴とする超音波手術装置。
【0055】
(付記項1の従来技術) 従来、超音波振動の応用技術として超音波凝固切開、超音波クリップ溶着、超音波トラカールなどの装置が考えられている。負荷の状態をモニタして出力をon、offするなども考えられている。
【0056】
(付記項1が解決しようとする課題) しかし、負荷への超音波エネルギーを与える間の制御はあまり考えられていない。超音波を利用した手術装置があるが、トラカールや凝固手術装置は組織への力量が振動子への負荷になる。力を入れすぎると、負荷が上昇しすぎて振動できなくなり、かえって機能が働かない事になる。
【0057】
(付記項1の目的) 超音波振動による各機能を適切に利用できるようにする。
(付記項1の作用) 電流の設定値を入力あるいは表示する手段があって、駆動電圧の実際値を表示する手段があって、定電流での駆動時の印加電圧を表示する手段を持つ。印加電圧を告知する手段は、例えば、ランプの光量による変化あるいは音の高低、または音の音量の大小によって可能である。これによって負荷の状態を術者に知らせることができる。
【0058】
(付記項1の効果) 術者が操作するハンドピースの操作力量を装置側が告知するので、その処置具への力量のコントロールが術者によって容易に行うことができる。引いては、安定な凝固につながる。超音波手術装置としてそれが有効に働くためのパラメータの一つである力量についてユーザーがコントローラブルになって、最終的には安定した処置につながっていくという効果につながっていく。
【0059】
(付記項2) 上記印加される電圧の大きさを示す信号を取り出す手段は複数のコンパレータを含み、表示手段は複数の発光ダイオードによるバーグラフとしたことを特徴とする付記項1の超音波手術装置。
【0060】
(付記項3) 上記印加される電圧の大きさを示す信号を取り出す手段は電圧−周波数変換器を含み、表示手段は音質が電圧の大きさに従って変化する表音としたことを特徴とする付記項1の超音波手術装置。
【0061】
(付記項4) 超音波振動によって組織を処置する装置であって、超音波振動を発生する超音波振動子と、超音波振動を処置部に伝達するプローブと、を含むハンドピース、超音波振動子に設定した一定電流が流れるよう制御する定電流制御機構を含む駆動回路と、超音波振動子に印加される電圧の大きさを示す信号を取り出す手段、超音波振動子に供給するエネルギー量の制限を設定する手段、を含み、前記エネルギーの制限量に達した場合、定電流制御から先のエネルギー制限制御の駆動方式に切り換えて駆動するようにしたことを特徴とする超音波手術装置。
【0062】
(付記項4の従来技術) 従来からこのような超音波手術装置の駆動回路としては処置部を生体組織の処置対象部位に当接させた際にプローブに加わる負荷の大きさが変化してもプローブの振動振幅が一定になるように定電流制御を行う場合が多い。
【0063】
(付記項4が解決しようとする課題) ただし、定電流制御の機能を維持できる範囲を設計上、大きくしておくことが、(つまりプローブの負荷変動に対し、定電流を維持できる能力、すなわち印加電圧の大きさの範囲を大きくしておく)、駆動装置としては良いが、手術において生体組織を処置する中で、必要以上に定電流の機能維持ができすぎると、生体組織に対して過剰なエネルギーを供給してしまうことになる。
【0064】
(付記項4の目的) 組織への過剰なエネルギー供給を制限する。
(付記項4の作用) 超音波振動子を定電流で駆動して振幅を一定にコントロールする中で、駆動電圧をモニタする手段、設定可能なエネルギーの上限値(電圧の上限値)を設定し、その設定値に達したとき、それ以上は振動子への電力を供給しないようにする。これによって即ち、定電圧駆動に切り換えて、エネルギー供給量を制限する。
【0065】
(付記項4の効果) 組織への過剰なエネルギー供給を制限することができるので、より安全な超音波凝固装置の提供が可能になる。
(付記項5) 前記電流値と前記電圧値の変化に基づいて、振動子に供給する電力を示す信号を生成する手段を含み、前記エネルギー制限制御駆動は、定電力駆動であることを特徴とする付記項4の超音波手術装置。
【0066】
(付記項6) 前記電圧値の変化に基づいて、振動子に供給する最大電圧を制限する手段を含み、前記エネルギー制限制御駆動は、定電圧駆動であることを特徴とする付記項4の超音波手術装置。
【0067】
(付記項7) 上記駆動回路は上記超音波振動子に、予め設定された一定電流が流れるように制御する定電流制御手段を有し、
上記負荷状態検出手段は、上記超音波振動子に印加される電圧の大きさを示す信号を取り出し、その変化状態に基いて上記処置部に作用する負荷状態を判断する手段とを具備する付記項1の超音波手術装置。
【0068】
(付記項8) 上記負荷状態告知手段は上記超音波振動子に印可される電圧の大きさに基いて上記処置部の負荷状態を表示する表示手段を有する付記項1の超音波手術装置。
【0069】
(付記項9) 上記負荷状態を判断する手段は、
上記超音波振動子に供給される電圧信号の大きさを検出する電圧検出手段と、
所定の基準電圧を設定する基準電圧設定手段と、
この基準電圧設定手段で設定された基準電圧と、検出された電圧信号とを比較して、上記基準電圧に対する割合を判別する、複数のコンパレータを具備する判別手段と、
から構成され、
上記負荷状態告知手段は、複数の発光ダイオードが並設されたバーグラフを有し、上記判別手段によって判別された結果に基づいて上記発光ダイオードの発光状態を選択的に制御して上記負荷状態をレベル表示するものである付記項8の超音波手術装置。
【0070】
(付記項10) 上記負荷状態を判断する手段は、上記超音波振動子に印可される電圧の変化を周波数の変化に変換する電圧−周波数変換器を含み、
上記負荷状態告知手段は、上記電圧の大きさに従って音質が変化する表音手段を有する付記項8の超音波手術装置。
(付記項11) 上記駆動回路ユニットは、上記負荷状態告知手段が別体に設けられている付記項7の超音波手術装置。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、術者が操作するハンドピースの操作力量を告知手段によって告知することができ、そのハンドピースの操作力量のコントロールを術者によって容易に行うことができるので、超音波振動による各処置機能を適切に利用できるとともに、生体組織への過剰なエネルギー供給を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を示す超音波手術装置全体の概略構成図。
【図2】 第1の実施の形態の超音波手術装置の交換用処置具を示す斜視図。
【図3】 第1の実施の形態の超音波手術装置の装置本体を示す斜視図。
【図4】 第1の実施の形態の超音波手術装置の装置本体内に配設された駆動回路を示す概略構成図。
【図5】 第1の実施の形態の駆動回路の要部構成を示す概略構成図。
【図6】 第1の実施の形態の超音波手術装置の使用状態を示す要部の斜視図。
【図7】 (A)は装置本体内の駆動回路の概略構成図、(B)は定電流駆動制御を行っている状態を示す特性図。
【図8】 第1の実施の形態の変形例を示す駆動回路の要部の概略構成図。
【図9】 本発明の第2の実施の形態の超音波手術装置の装置本体内に配設された駆動回路を示す概略構成図。
【図10】 第2の実施の形態の超音波手術装置の使用時の電流・電圧・電力の変化状態を示す要部の特性図。
【図11】 第2の実施の形態の超音波手術装置の変形例を示す要部の特性図。
【図12】 本発明の第3の実施の形態を示すもので、(A)は手術装置全体の概略構成図、(B)は装置本体内の駆動回路の概略構成図。
【符号の説明】
4 ハンドピース
11、15 処置部
12 プローブ
H 生体組織
20 設定表示部(表示手段)
22 バーグラフ表示部(負荷状態告知手段)
23、51 駆動回路
41 音質変化告知手段(負荷状態告知手段)
77 告知情報表示領域(負荷状態告知手段)
Claims (1)
- 被検体に挿入可能な挿入部と、
前記挿入部の手元側に設けられ、超音波振動を発生可能な超音波振動子と、
前記挿入部に設けられ、前記超音波振動子で発生した超音波振動を伝達する超音波プローブと、
前記挿入部の先端側に設けられ、前記超音波振動により生体組織を処置可能となるように前記超音波プローブに接続された処置部と、
前記超音波振動子に電力を供給可能な電力供給手段と、
前記電力供給手段から前記超音波振動子に出力される出力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電力供給手段から前記超音波振動子に出力される出力電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記出力電流を予め設定された所定の電流と一致させるように前記出力電圧を出力可変にして定電流制御が可能となるよう前記電力供給手段を制御する定電流制御手段と、
前記定電流制御手段によって制御された出力電圧を検出した前記電圧検出手段の検出結果に基づいて、前記超音波振動子の負荷状態と、予め設定された負荷状態設定値とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記出力電流と出力電圧とから得られる前記超音波振動子で消費される電力を予め設定された所定の電力と一致させるように前記出力電流と出力電圧とを制御する定電力制御が可能となるよう前記電力供給手段の制御を切替える切替手段と、
前記切替手段の切り替え状態を告知する告知手段と、
を具備したことを特徴とする超音波手術装置。
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