JP3697970B2 - 車速演算方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車速センサの出力信号がノイズなどによる影響を受けた場合においても、精度よく車速を検出することができる車速演算方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の車速演算方法として、例えば、車速センサから入力される連続した例えば4周期分のパルスのデータを記憶しておき、同データの平均値に基づき車速を演算するものがある。この従来技術では、入力されるパルスの状態(HiまたはLo)を所定時間(例えば1ミリ秒)毎に検出し、状態に変化がなければ状態カウンタ値を加算し、状態に変化があれば状態カウンタ値をパルスのデータとして記憶した後クリアしている。そして、4周期分の状態カウンタの平均値に基づき車速を演算している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の車速演算方法では、図4のタイミングチャートに示すように、所定時間毎の検出時に車速信号にノイズ(点b)が乗った場合(図4(A))、実際にはパルスの状態に変化がないにも関わらず、状態に変化があったと誤認識して状態カウンタをクリアしてしまうことがある(図4(C))。同図では、ノイズの影響により、点bにて状態に変化があったと誤認識して状態カウンタをクリアし、点cにてさらに状態に変化があったと誤認識して状態カウンタをクリアしている。このため、エンジンやシャシなどの車速応答制御が不安定となり、乗員に違和感を与えることがある。
【0004】
そこで、本発明は、車速信号にノイズが乗った場合においても、精度よく車速を演算することができる車速演算方法を実現することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段、作用および発明の効果】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
所定時間毎に車速信号を検出し、この車速信号の状態が変化していなければ状態カウンタ値を加算し、変化していれば前記状態カウンタ値に基づき車速を演算する車速演算方法において、
前記車速信号の状態が変化したかを判定する第1ステップと、
この第1ステップにより前記車速信号の状態に変化があると判定されたとき、前記所定時間よりも短い周期で再度車速信号の状態を検出し、前記第1ステップによる判定が正しいかを判定する第2ステップと、
この第2ステップにより前記第1ステップによる判定が正しいと判定されたとき、前記状態カウンタ値に基づき車速を演算するようにした。
【0006】
請求項1に記載の発明は、上記の方法により、第1ステップで車速信号の状態に変化があると判定されたとき、その状態の変化が正しいものか、ノイズの影響により誤ったものかを、第2ステップで判定する。このため、精度よく車速を演算することができ、車速応答制御を安定させることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車速演算方法において、
前記第2ステップにより前記第1ステップによる判定が誤りであると判定されたとき、前記状態カウンタ値を加算するようにした。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記の方法により、第1ステップでノイズにより車速信号の状態に変化があると判定されても、第2ステップで第1ステップの判定が誤りであると判定される。このため、ノイズによる影響を除去して精度よく車速を演算することができ、車速応答制御を安定させることができる。請求項2に記載の発明は、所定時間毎の状態読み出し周期よりも短い周期、すなわち高周波のノイズに有効である。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車速演算方法において、
前記状態カウンタ値に基づき演算された車速が設定された所定の最高速よりも大きいとき、フェイルセーフ処理を行うようにした。
【0010】
請求項3に記載の発明は、上記の方法により、所定時間毎の状態検出周期よりも長い周期のノイズが車速信号に乗ることにより、演算された車速が設定された所定の最高速よりも大きくなった場合、フェイルセーフ処理を行う。このため、第2ステップで判別されない比較的周期の長い、すなわち低周波のノイズを除去することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の車速演算方法において、
前記フェイルセーフ処理は、前記演算された車速を前記最高速に置換することである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、上記の方法により、所定時間毎の状態検出周期よりも長い周期のノイズが車速信号に乗ることにより、演算された車速が設定された所定の最高速よりも大きくなった場合、フェイルセーフ処理として、前記最高速を車速として出力する。このため、最高速にて作動力が最小となる機器の車速演算方法として好適である。
【0013】
そして、請求項3または4に記載の車速演算方法により演算された車速に応じて制御されるアクチュエータであって、このアクチュエータが適用される機器は車速が増加するに従い作動力が小さくなるようにすると、下記の効果を得る。
【0014】
すなわち、上記の構成により、所定時間毎の状態検出周期よりも長い周期のノイズが車速信号に乗ることにより、演算された車速が設定された所定の最高速よりも大きくなった場合、フェイルセーフ処理を行う。このため、車速の増加に従い作動力が小さくなるように制御する機器に適用されるアクチュエータでは、ノイズの影響により演算された車速が前記最高速よりも大きくなった場合、前記機器の作動力を最小にすることができる。
【0015】
このようなアクチュエータが適用される機器はパワーステアリング装置であると、さらに下記の効果を得る。
【0016】
すなわち、上記の構成により、車速の増加に従い操舵アシストが小さくなるように制御するパワーステアリング装置では、ノイズの影響により演算された車速が設定された所定の最高速よりも大きくなった場合、フェイルセーフ処理として、操舵アシストを最小にすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車速演算方法の実施形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態が適用されたパワーステアリング装置の概略を示す説明図である。車速センサ1から出力された信号は、A/Dコンバータ2にてデジタル変換されECU3に入力される。ECU3は、前記入力信号に基づき車速を演算し、この演算された車速に基づきパワーステアリング装置4に適用されるアクチュエータを制御する制御信号を出力している。パワーステアリング装置4は、低速では軽快な操舵ができるように操舵アシストが大きく、車速が高くなるに従い操舵にしっかり感がでるように操舵アシストが小さく制御される。この制御は、ある車速以上では操舵アシストがゼロになるようにしてもよい。
【0018】
ここで、図2乃至図4にて、ECU3に入力された車速信号から車速を演算する方法を説明する。
【0019】
図2は、横軸に時間、縦軸にそれぞれ(A)がECU3に入力される車速信号、(B)が状態カウンタ値を示すタイミングチャートである。車速信号は、状態カウンタによりパルスデータとされECU3内のRAMに記憶される。パルスデータは最新の連続した4周期分のデータD1〜D8が記憶されており、車速は同データD1〜D8の平均値に基づき演算される。状態カウンタは、車速信号の状態(HiまたはLo)を所定時間(例えば1ミリ秒)毎に検出し、状態に変化がなければ状態カウンタ値Tを加算し、状態に変化があれば状態カウンタ値Tを最新のパルスデータD8として記憶した後クリアしている。こうして得られたパルスデータD1〜D8は、車速信号のパルスの幅P1〜P8にほぼ一致している。なお、図2(B)に示す状態カウンタ値Tは直線状に増加しているが、実際にはステップ状に増加する。
【0020】
ここで、車速信号の状態に変化があった場合について、図4(A)および(B)に示すタイミングチャートを参照して説明する。図4において、点a,b,c,dは状態カウンタの状態検出の周期を示す。点aにてHi状態である車速信号は、点cから点dの間でHiからLoに状態が変化している。また車速信号は、点b付近で高周波のノイズを含んでおり、ごく短い時間に状態がHi、Lo、Hiと変化している。
【0021】
本発明においては、車速信号の状態に変化があった場合、その直後(例えば2マイクロ秒後)に再度状態検出を行い、状態変化がノイズによるものか否かを判定している。このため、点bの状態検出において車速の状態がHiからLoに変化し、点b’の再検出において車速状態が再びHiとなった場合、状態カウンタ値Tは、点bにて一時維持され、点b’にて加算される。また、点dの状態検出において車速の状態がHiからLoに変化すると、その直後の点d’において車速状態を再度検出する。点dから点d’では状態に変化がないので、状態カウンタ値Tは、点dにて一時維持され、点d’にてパルスデータD8としてECU3内のRAMに記憶された後クリアされる。そして、記憶された4周期分のパルスデータD1〜D8を読み出し、その平均値に基づき車速を演算する。ここで、車速VはECU3内のROMに記憶された下式数1を読み出し、ECU3内のCPUにて演算される。
【数1】
k:定数
【0022】
次に、ECU3にて車速を演算するために実行する処理の流れについて、それを示す図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、車速信号の状態(HiまたはLo)を検出し(ステップ(以下、Sと略す)10)、ECU3内のRAMに記憶された前の状態と比較する(S11)。ここで、車速信号の状態に変化がなければ(S11:No)、状態カウンタ値Tを加算し(S14)、本制御フローのスタートに戻る。これは、図4における点aおよび点cでの判定に相当する。また、S11は請求項に記載の第1ステップに相当する。
【0023】
続いて、S11にて車速信号の状態に変化があると判定された場合(S11:Yes)、再度車速信号の状態を検出し(S12)、記憶された前の状態と比較する(S13)。ここで、車速信号の状態に変化がなければ(S13:No)、S11における判定はノイズによるものと判断し、S14へ進んで状態カウンタ値Tを加算し、本制御フローのスタートに戻る。これは、図4における点bおよび点b’での判定に相当する。また、S13は請求項に記載の第2ステップに相当する。
【0024】
また、S13にて車速信号の状態に変化があれば、S11における判定は正しいと判断し、ECU3内のRAMに記憶された前の状態をクリアして現在の状態を記憶する(S15)。そして、状態カウンタ値Tは、パルスデータD8としてECU3内のRAMに記憶され(S16)、その後クリアされる(S17)。これは、図4における点dおよび点d’での判定に相当する。
【0025】
続いて、記憶された4周期分のパルスデータD1〜D8を読み出し(S18)、同データD1〜D8に基づき車速Vを演算する(S19)。ここで、演算された車速Vとあらかじめ設定された当該車両における仕様上の最高速Vmax(ECU3内のROMに記憶されている)とを比較し(S20)、車速V≦最高速Vmaxであれば(S20:No)、演算された車速Vを出力する(S22)。また、S20にて車速V>最高速Vmaxであれば(S20:Yes)、車速Vを最高速Vmaxに置換し(S21)、車速Vを出力する(S22)。その後、記憶された最古のパルスデータD1をクリアし(S23)、パルスデータDnをDn-1(つまり、D2をD1、D3をD2、…、D8をD7)に置換して(S24)、本制御フローのスタートに戻る。
【0026】
S20における判定は、S13における判定が高周波のノイズを除去するものであるのに対し、比較的低周波のノイズを除去するものである。これは、パワーステアリング装置4の制御において、車速の増加に従い操舵アシストが小さくなるようにアクチュエータを制御しているため、S13の判定で除去されなかったノイズの影響があるときは、設定された所定の最高速を出力するようにし、操舵アシストを最小(ゼロでもよい)に抑える、すなわち、フェイルセーフ処理を行うようにしているのである。
【0027】
なお、本実施形態では、車速信号の状態に変化があったかを1回の再検出にて判定している(S13)が、2回以上の再検出により状態の変化を判定するようにしてもよい。また、本実施形態では、最新の4周期分のデータD1〜D8の平均値に基づいて車速を演算しているが、同データは4周期分でなくともよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の構成の概略を示す説明図である。
【図2】車速信号と状態カウンタ値とを示すタイミングチャートである。
【図3】車速を検出するために実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態および従来技術における、車速信号にノイズが乗った場合の車速信号と状態カウンタ値とを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 車速センサ
2 A/Dコンバータ
3 ECU
4 パワーステアリング装置
Claims (4)
- 所定時間毎に車速信号を検出し、この車速信号の状態が変化していなければ状態カウンタ値を加算し、変化していれば前記状態カウンタ値に基づき車速を演算する車速演算方法において、
前記車速信号の状態が変化したかを判定する第1ステップと、
この第1ステップにより前記車速信号の状態に変化があると判定されたとき、前記所定時間よりも短い周期で再度車速信号の状態を検出し、前記第1ステップによる判定が正しいかを判定する第2ステップと、
この第2ステップにより前記第1ステップによる判定が正しいと判定されたとき、前記状態カウンタ値に基づき車速を演算することを特徴とする車速演算方法。 - 前記第2ステップにより前記第1ステップによる判定が誤りであると判定されたとき、前記状態カウンタ値を加算することを特徴とする請求項1に記載の車速演算方法。
- 前記状態カウンタ値に基づき演算された車速が設定された所定の最高速よりも大きいとき、フェイルセーフ処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の車速演算方法。
- 前記フェイルセーフ処理は、前記演算された車速を前記最高速に置換することであることを特徴とする請求項3に記載の車速演算方法。
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