JP3696672B2 - 動圧軸受およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、フランジ部に動圧発生用の溝が形成されている動圧軸受およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の動圧軸受としては、図4に示すように、軸41と、この軸41から径方向外方へ延びると共にスラスト軸受面J42A,J42Bに対向する対向面43A,43Bを有するフランジ部43とを備え、上記フランジ部43の対向面43A,43Bに動圧発生用の溝45A,45Bがプレス加工や転造加工等の塑性加工によって形成されているものがある。
【0003】
この動圧軸受の軸41は、大径部41Aと小径部41Bを有している。そして、この大径部41Aの端面41A‐1と端面41A‐1に隣接する小径部41Bの周面41B‐1とが段部46を構成している。そして、この段部46に、フランジ部43の中央に形成された孔43Cを嵌合させて、圧入や接着でもってフランジ部43を段部46に固定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の動圧軸受は、上記フランジ部43の対向面43A,43Bに動圧発生用の溝45A,45Bを塑性加工で形成したときに、上記溝45A,45Bよりも径方向内方の部分47A,47Bが上記対向面43A,43Bよりも軸方向に盛り上がる。フランジ部43の対向面43A,43Bと対向するスラスト軸受面J42A,J42Bとの間の動圧隙間は、μm単位の寸法であるから、上記フランジ部43の盛り上がった部分47A,47Bが上記動圧隙間を減少させて動圧発生流体の流れが悪くなったり、上記盛り上がった部分47A,47Bが上記スラスト軸受面J42A,J42Bに衝突したりして、動圧で軸41を支持できなくなるという問題がある。
【0005】
また、上記従来の動圧軸受は、軸41とフランジ部43とが別体であるから、部品点数が増加する。その上、別々の部品である軸41とフランジ部43とを組付けなければならないから、軸41とフランジ部43との直角度を確保することが難しいという問題がある。上記軸41とフランジ部43とが別体である理由は、フランジ部43を軸41に固定した状態では、フランジ部43に動圧発生用の溝45を形成することが難しいからである。軸41に組み付ける前のフランジ部43単体であれば、フランジ部43の対向面43Aにプレス加工でもって溝45を簡単に形成することができる。
【0006】
また、上記従来の動圧軸受は、軸41にフランジ部43を組み付けるために、軸41に大径部41Aと小径部41Bとが構成する段部46を形成しておく必要があるから、フランジ部43の軸方向の両側で軸41を同径にすることができない。つまり、フランジ部43の軸方向の一方では軸径が小さくなってしまうから、この小さな軸径の部分にはねじ加工等を施すことが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、フランジ部へ動圧発生用の溝を塑性加工で作製するときに、フランジ部の径方向内方の部分が盛り上がることを防止できる動圧軸受を提供することにある。
【0008】
また、この発明の今一つの目的は、上記フランジ部の盛り上がりを防止できる上に、部品点数が少なくて簡単,安価に製作でき、軸とフランジ部との直角度を確保できる動圧軸受およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の動圧軸受は、軸と、この軸から径方向外方へ延びると共にスラスト軸受面に対向する対向面を有するフランジ部とを備え、
上記軸は、上記フランジ部の一方の面からこの一方の面が向いている方向に延在する一方の軸部と、上記フランジ部の他方の面からこの他方の面が向いている方向に延在する他方の軸部を有し、
上記フランジ部における両方の面に動圧発生用の溝が塑性加工によって形成されている動圧軸受であって、
上記両方の面は上記動圧発生用の溝が形成された外径部分と上記動圧発生用の溝が形成されていない内径部分を有し、上記外径部分は径方向最外端まで延びており、上記内径部分は上記外径部分よりも軸方向に窪んでいるとともに上記軸の外周部に接する位置まで形成されていて、
上記軸とフランジ部とが一体に形成されていることを特徴としている。
【0010】
この請求項1の発明の構成の動圧軸受は、上記フランジ部の動圧発生用の溝と上記軸との間の部分に、上記軸を囲む環状の窪みが形成されているから、上記フランジ部に上記動圧発生用の溝を塑性加工で形成したときに、上記溝と軸との間の部分は軸方向に上記対向面よりも上に盛り上がらない。従って、上記溝と軸との間の部分が、フランジ部に対向するスラスト軸受面に接近し過ぎることを防止できる。したがって、フランジ部とスラスト軸受面との間の流体が流れ難くなることを防止でき、かつ、フランジ部がフランジ部に対向するスラスト軸受面に衝突することを防止できる。したがって、この発明によれば、上記フランジ部を、動圧で常に安定に軸方向に支持することができる。
【0011】
また、上記軸を囲む環状の窪みは、動圧発生流体の溜め部を構成することができるから、動圧発生用の溝に動圧発生流体を安定に供給することができる。
【0012】
しかも、請求項1の発明によれば、軸とフランジ部が一体であるから、軸とフランジ部とが別体である従来例に比べて、部品点数を削減できる上に、軸にフランジ部を組み付ける作業も不要である。しかも、軸とフランジ部との直角度を容易に得ることができる。この軸とフランジ部との直角度を得ることは、軸受部の微小クリアランスを要する動圧軸受においては重要である。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の動圧軸受において、上記塑性加工はプレス加工であることを特徴としている。
【0014】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の動圧軸受において、上記プレス加工によって上記動圧発生用の溝が上記フランジ部の上記両方の面に同時形成されたことを特徴としている。
【0015】
また、請求項4の発明の動圧軸受の製造方法は、請求項1に記載の動圧軸受を製造する方法であって、
軸と、この軸から径方向外方へ延在しているフランジ部とを一体に形成して、上記軸とフランジ部とが一体のフランジ付き軸を形成するステップと、
上記フランジ部の動圧発生用の溝が形成されるべき領域よりも径方向内方の領域に窪みを形成するステップと、
2つのスリーブ形状の型部材のうちの一方を上記軸の一方の軸部に嵌め、上記2つのスリーブ形状の型部材のうちの一方を他方の軸部に嵌めて、
上記2つのスリーブ形状の型部材を、上記フランジ部に向かって軸方向に同時にスライドさせて、上記2つのスリーブ形状の型部材の軸方向の端面に形成されている動圧溝形成用の型を上記フランジ部の両方の軸受面に押し付けて、上記両方の軸受面に動圧発生用の溝を形成するステップとを備えていることを特徴としている。
【0016】
したがって、請求項4の発明によれば、上記スリーブ形状の型部材を上記フランジ部の軸受面に押し付けて溝を形成したときに、この溝よりも径方向内方の領域に窪みが形成されているから、上記径方向内方の領域が軸受面よりも盛り上がらない。したがって、上記フランジ部は動圧発生のためのクリアランスを確保できる。
【0017】
また、この請求項4の発明によれば、上記スリーブ形状の型部材でもって、軸と一体になっているフランジ部の軸受面に、動圧発生用の溝を形成することができる。したがって、軸とフランジ部を組み立てる必要がなく、かつ、軸とフランジ部との直角度を容易に確保することができる動圧軸受を実現できる。その上、フランジ部の軸方向の両側に同径の軸部分を設けることができるから、軸部分への加工を容易にできる。
【0018】
また、一実施形態の動圧軸受は、軸と、この軸から径方向外方へ延びると共にスラスト軸受面に対向する対向面を有するフランジ部とを備え、上記フランジ部における対向面に動圧発生用の溝が塑性加工によって形成されている動圧軸受であって、上記軸とフランジ部とが一体に形成されている。
【0019】
したがって、この実施形態の動圧軸受によれば、軸とフランジ部が一体であるから、軸とフランジ部とが別体である従来例に比べて、部品点数を削減できる上に、軸にフランジ部を組み付ける作業も不要である。しかも、軸とフランジ部との直角度を容易に得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0021】
〔第1形態〕
図1に、この発明の動圧軸受の実施の第1形態を示す。図1(B)に示すように、この第1形態は、軸1と、この軸1から径方向外方に延びているフランジ部2とを有している。また、この軸1とフランジ部2とは一体に形成されている。軸1とフランジ部2とはプレス成形性と耐食性とを考慮して、例えばSUS303などのステンレス鋼で作製されている。ステンレス鋼としては、その他SUS304などのオーステナイト系や、SUS440やSUS420などのマルテンサイト系が使用可能である。
【0022】
また、上記軸1は、フランジ部2の一方の面2Aからこの面2Aが向いている方向に延在している一方の軸部1Aと、フランジ部2の他方の面2Bからこの面2Bが向いている方向に延在している他方の軸部1Bとを有している。そして、この軸部1Aと軸部1Bとは同径である。
【0023】
上記フランジ部2は、外径部分3と内径部分5とを有している。この外径部分3は、フランジ部2の径方向の略真ん中の位置から径方向の最外端まで延びている。そして、上記外径部分3の両方の面3a,3bには、図1(A),(C)に示すように、動圧発生用の溝6,7が形成されている。上記動圧発生用の溝6と7は、外径部分3の両面3aと3bを軸方向の両側から挟んでプレス加工することによって形成されている。尚、プレス加工により溝を形成する代わりに、転造加工やのコイニング加工などの塑性加工としてもよい。上記外径部分3の面3aと面3bは、スラスト軸受面J1とJ2に対向する対向面を構成している。
【0024】
一方、上記フランジ部2の内径部分5は、上記外径部分3に比べて、軸方向に窪んでいる。つまり、この内径部分5は、上記動圧発生用の溝6,7と上記軸1との間の部分に形成された環状の窪みC1,C2を構成している。この窪みC1,C2の深さは、上記溝6,7よりも深ければよい。
【0025】
上記構成の動圧軸受は、軸1が回転すると、フランジ部2の外径部分3に形成された溝6と7が、スラスト軸受面J1とJ2との間に動圧を発生させる。この動圧は、上記フランジ部2をスラスト軸受面J1,J2に対して軸方向に支持する。したがって、上記動圧によって、軸1が軸方向に支持される。
【0026】
ところで、上記動圧軸受は、フランジ部2の内径部分5が外径部分3に比べて軸方向に窪んでいるから、フランジ部2の外径部分3の両面3a,3bを軸方向の両側から挟んでプレス加工して上記溝6と7と形成したときに、上記内径部分5が軸方向に盛り上がっても、この内径部分5が上記外径部分3よりも軸方向に突出することを防止できる。したがって、この実施例によれば、上記溝6,7と軸1との間の部分である内径部分5が、フランジ部2に対向するスラスト軸受面J1,J2に接近し過ぎることを防止できる。したがって、フランジ部2とスラスト軸受面J1,J2との間の動圧発生流体が流れ難くなることを防止でき、動圧発生流体の流れを円滑にすることができる。さらに、フランジ部2がフランジ部2に対向するスラスト軸受面J1,J2に衝突することを防止できる。したがって、この第1形態によれば、上記フランジ部2を、常に動圧で安定に軸方向に支持することができる。
【0027】
また、この第1形態によれば、上記フランジ部2の内径部分5が外径部分3よりも軸方向に窪んでいるから、上記内径部分5は動圧発生流体の溜め部の役割を果たすことができる。したがって、この第1形態によれば、上記内径部分5に動圧発生流体を溜めることができるから、動圧発生用の溝6,7へ動圧発生流体を安定に供給することができる。
【0028】
また、この第1形態の動圧軸受は、上記軸1とフランジ部2とが一体に形成されているから、軸とフランジ部とが別体である従来例に比べて、部品点数を削減できる上に、軸にフランジ部を組み付ける作業も不要である。しかも、軸1とフランジ部2が一体形成されているので、軸1とフランジ部2との直角度を容易に得ることができる。この軸1とフランジ部2との直角度を得ることは、軸受部の微小クリアランスを要する動圧軸受においては重要である。
【0029】
また、この第1形態の動圧軸受は、上記一方の軸部1Aと他方の軸部1Bとが同径であるから、軸部の一方の部分を小径にしなけらばならない従来例とは異なり、軸部1A,1Bにねじ加工等の加工を容易に施すことができる。
【0030】
尚、この第1形態では、上記フランジ部2の内径部分を旋削して内径部分5を形成したが、上記フランジ部2の外径部分3の両面にプレス加工で動圧発生用の溝を形成するときに同時にプレス加工で上記内径部分5を形成してもよい。
【0031】
また、上記第1形態では、外径部分3と内径部分5とがフランジ部2の径方向の略中央で境を接しているが、上記外径部分3と内径部分5とがフランジ部2の径方向のどのような位置で境を接していてもよい。
【0032】
さらにまた、上記第1形態では、内径部分5の環状の窪みC1,C2が径方向内側に軸1の外周部に接する位置まで形成されている。
【0033】
〔第2形態〕
次に、この発明の第2形態としての動圧軸受の製造方法の実施の形態を説明する。この実施の形態は、上記第1形態の動圧軸受を製造する方法である。この製造方法は、まず、SUS303を材料として使用して、図1(B)に示すように軸1とフランジ部2とを一体に形成する。
【0034】
次に、図1(B)に示すように、フランジ部2に窪みC1とC2を旋削加工によって形成する。次に、図3に示すスリーブ形状の型部材31を、溝型32が形成されている型面33が上記フランジ部2の一方の面2Aに向くように軸1Aに嵌めて、型部材31をフランジ部2に向かって軸方向にスライドさせる。そして、上記型部材31の溝型32を面2Aに押し付ける。これにより、フランジ部2の面2Aが含んでいる面3aに動圧発生用の溝6が形成される。
【0035】
次に、上記型部材31を、溝型35が形成されている型面36がフランジ部2の他方の面2Bに向くように軸1Bに嵌めて、型部材31の溝型35を面2Bに押し付ける。これにより、フランジ部2の面2Bが含んでいる面3bに動圧発生用の溝7が形成される。
【0036】
上記型部材31をフランジ部2に押し付けて、上記溝6と7を形成したときに、上記軸1を囲む環状の窪みC1とC2が僅かに盛り上がるが、面3a,3bを越えないから、動圧発生のためのクリアランス不足が起こらない。
【0037】
なお、上記溝6と7とを、上記型部材31をフランジ部2の両側から押し付けて同時に形成すれば加工精度が増すと共に作業効率も向上する。
【0038】
この第2形態の製造方法によれば、スリーブ形状の型部材31によって、軸1と一体に形成されているフランジ部2の軸受面をなす面3aに動圧発生用の溝6を形成することができる。つまり、従来とは異なり、軸とフランジ部とを別体にしなくてもフランジ部に動圧発生用の溝6を形成することができるから、軸1とフランジ部2との直角度を容易に確保することができる。
【0039】
しかも、軸1とフランジ部2とを別体にしなくてもよいから、軸部1Aもしくは1Bの一方を小径にする必要がなくなり、したがって、フランジ部2の軸方向の両側に同径の軸部1Aと1Bを設けることができる。したがって、軸部1Aや軸部1Bへのネジ加工等を容易に行える。
【0040】
〔第1参考例〕
次に、この発明の動圧軸受の第1参考例を、図2(A)に示す。この第1参考例の動圧軸受は、軸21とフランジ部22とを有している。この軸21とフランジ部22とは一体に形成されている。図2(A)に示すように、この第1参考例の動圧軸受の軸21は、フランジ部22の軸方向の一方の面22Aの側には存在しておらず、他方の面22Bの側だけに存在している。そして、上記一方の面22Aには周方向に配列されている複数のV字型の動圧発生用の溝23,23…が形成されている。上記溝23が形成されている面22Aは、スラスト軸受面J21に対向する対向面を構成している。
【0041】
また、上記フランジ部22の面22Aの溝23よりも径方向内方に略円形の窪みC21が形成されている。この窪みC21の深さは、溝23の深さよりも深い。
【0042】
この構成の動圧軸受は、軸21が回転すると、フランジ部22の面22Aに形成された溝23が、面22Aとスラスト軸受面J21との間の流体(図示せず)に動圧を発生させる。この動圧は、上記フランジ部22をスラスト軸受面J21に対して軸方向に支持する。したがって、動圧によって、軸21が支持される。
【0043】
この第1参考例によれば、フランジ部22の径方向内方に窪みC21が形成されているから、上記径方向内方の領域が面22Aよりも盛り上がることを防止できる。したがって、上記窪みC21が形成されている径方向内方の部分がスラスト軸受面J21に接近し過ぎることを防止できる。したがって、フランジ部22とスラスト軸受面J21との間で動圧発生流体の流れが悪くなることを防止でき、かつ、フランジ部22がスラスト軸受面J21に衝突することを防止できる。したがって、この第3形態によれば、フランジ部22を動圧で常に安定に軸方向に支持することができる。また、上記窪みC21は、動圧発生流体の溜め部を構成するから、動圧発生用の溝23に動圧発生流体を安定に供給できる。
【0044】
さらに、この第1参考例の動圧軸受によれば、軸21とフランジ部22とが一体に形成されているから、軸とフランジ部とが別体である従来例に比べて、部品点数を削減できる上に、軸21にフランジ部22を組み付ける作業も不要である。しかも、軸21とフランジ部22とが一体に形成されているから、軸21とフランジ部22との直角度を容易に得ることができる。軸21とフランジ部22との直角度を得ることは、軸受部のμm単位の微小なクリアランスを要する動圧軸受にとっては非常に重要なことである。
【0045】
〔第2参考例〕
次に、図2(C)に、この発明の動圧軸受の第2参考例を示す。この第2参考例の動圧軸受は、軸26とフランジ部27とを有している。この軸26とフランジ部27とは一体に形成されている。図2(C)に示すように、この第2参考例の動圧軸受の軸26は、一方の軸部26Aと他方の軸部26Bを有している。一方の軸部26Aは、フランジ部27の軸方向の一方の面27Aから面27Aが向いている軸方向に延在している。また、他方の軸部26Bは、他方の面27Bから面27Bが向いている軸方向に延在している。
【0046】
そして、上記フランジ部27の一方の面27Aには周方向に配列されている複数のV字型の動圧発生用の溝28,28…が形成されている。上記溝28が形成されている面27Aは、スラスト軸受面J26に対向する対向面を構成している。
【0047】
また、上記フランジ部27の面27Aの溝28よりも径方向内方に環状の窪みC26が形成されている。この窪みC26は軸部26Aを囲んでいる。そして、窪みC26の深さは溝28の深さよりも深い。
【0048】
この構成の動圧軸受は、軸26が回転すると、フランジ部27の面27Aに形成された溝28が、面27Aとスラスト軸受面J26との間の流体(図示せず)に動圧を発生させる。この動圧は、上記フランジ部27をスラスト軸受面J26に対して軸方向に支持する。したがって、動圧によって、スラスト軸受面J26に対して軸26が支持される。
【0049】
この第2参考例によれば、フランジ部27の径方向内方に窪みC26が形成されているから、上記径方向内方の領域が面27Aよりも盛り上がることを防止できる。したがって、上記窪みC26が形成されている径方向内方の部分がスラスト軸受面J26に接近し過ぎることを防止できる。したがって、フランジ部27とスラスト軸受面J26との間で動圧発生流体の流れが悪くなることを防止でき、かつ、フランジ部27がスラスト軸受面J26に衝突することを防止できる。したがって、この第4形態によれば、フランジ部27を動圧で常に安定に軸方向に支持することができる。また、上記窪みC26は、動圧発生流体の溜め部を構成するから、動圧発生用の溝28に動圧発生流体を安定に供給できる。
【0050】
また、この第2参考例の動圧軸受によれば、軸とフランジ部とが別体である従来例に比べて、部品点数を削減できる上に、軸26にフランジ部27を組み付ける作業も不要である。しかも、軸26とフランジ部27とが一体に形成されているから、軸26とフランジ部27との直角度を容易に得ることができる。軸26とフランジ部27との直角度を得ることは、軸受部のμm単位の微小なクリアランスを要する動圧軸受にとっては非常に重要なことである。
【0051】
尚、上記第1 , 第2参考例では、フランジ部22,27の一方の面22A,27Aだけに動圧発生用の溝23,28を形成したが、他方の面22B,27Bにも動圧発生用の溝を形成してもよい。この場合には、フランジ部22,27を軸方向の両方向に支持することができる。
【0052】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1の発明の動圧軸受は、軸と、この軸から径方向外方へ延びると共にスラスト軸受面に対向する対向面を有するフランジ部とを備え、上記フランジ部における対向面に動圧発生用の溝が塑性加工によって形成されている動圧軸受であって、上記フランジ部は、上記動圧発生用の溝と上記軸との間の部分に、上記軸を囲む環状の窪みが形成されているものである。
【0053】
従って、請求項1の発明の動圧軸受は、上記フランジ部の動圧発生用の溝と上記軸との間の部分に、上記軸を囲む環状の窪みが形成されているから、上記フランジ部に上記動圧発生用の溝を塑性加工で形成したときに、上記溝と軸との間の部分は上記対向面よりも上に軸方向に盛り上がらない。したがって、上記溝と軸との間の部分が、フランジ部に対向するスラスト軸受面に接近し過ぎることを防止できる。従って、フランジ部とスラスト軸受面との間の流体が流れ難くなることを防止でき、かつ、フランジ部がフランジ部に対向するスラスト軸受面に衝突することを防止できる。したがって、この発明によれば、上記フランジ部を、動圧で常に安定に軸方向に支持することができる。
【0054】
また、上記軸を囲む環状の窪みは、動圧発生流体の溜め部を構成することができるから、動圧発生用の溝に動圧発生流体を安定に供給することができる。
【0055】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の動圧軸受において、上記塑性加工はプレス加工であることを特徴としている。
【0056】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の動圧軸受において、上記プレス加工によって上記動圧発生用の溝が上記フランジ部の上記両方の面に同時形成されたことを特徴としている。
【0057】
また、請求項4の発明の動圧軸受の製造方法は、請求項1に記載の動圧軸受を製造する方法であって、軸と、この軸から径方向外方へ延在しているフランジ部とを一体に形成して、上記軸とフランジ部とが一体のフランジ付き軸を形成するステップと、上記フランジ部の動圧発生用の溝が形成されるべき領域よりも径方向内方の領域に窪みを形成するステップと、2つのスリーブ形状の型部材のうちの一方を上記軸の一方の軸部に嵌め、上記2つのスリーブ形状の型部材のうちの一方を他方の軸部に嵌めて、上記2つのスリーブ形状の型部材を、上記フランジ部に向かって軸方向に同時にスライドさせて、上記2つのスリーブ形状の型部材の軸方向の端面に形成されている動圧溝形成用の型を上記フランジ部の両方の軸受面に押し付けて、上記両方の軸受面に動圧発生用の溝を形成するステップとを備えていることを特徴としている。
【0058】
したがって、請求項4の発明によれば、上記スリーブ形状の型部材を上記フランジ部の軸受面に押し付けて溝を形成したときに、この溝よりも径方向内方の領域に窪みが形成されているから、上記径方向内方の領域が軸受面よりも盛り上がらない。したがって、上記フランジ部は動圧発生のためのクリアランスを確保できる。
【0059】
また、この請求項4の発明によれば、上記スリーブ形状の型部材でもって、軸と一体になっているフランジ部の軸受面に、動圧発生用の溝を形成することができる。したがって、軸とフランジ部を組み立てる必要がなく、かつ、軸とフランジ部との直角度を容易に確保することができる動圧軸受を実現できる。その上、フランジ部の軸方向の両側に同径の軸部分を設けることができるから、軸部分への加工を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(A)はこの発明の動圧軸受の実施の第1形態のフランジ部の一方の面に形成された動圧発生用の溝を示す平面図であり、図1(B)は上記第1形態の要部断面を示す部分断面図であり、図1(C)は上記フランジ部の他方の面に形成された動圧発生用の溝を示す平面図である。
【図2】 図2(A)はこの発明の第1参考例としての動圧軸受のフランジ部の一方の面に形成された動圧発生用の溝を示す平面図であり、図2(B)は上記第1参考例の要部断面を示す部分断面図であり、図2(C)はこの発明の第2参考例としての動圧軸受のフランジ部の一方の面に形成された動圧発生用の溝を示す平面図であり、図2(D)は上記第2参考例の要部断面を示す部分断面図である。
【図3】 この発明の第2形態としての動圧軸受の製造方法で使用するスリーブ形状の型部材の構造を説明する斜視図である。
【図4】 従来の動圧軸受の構造を説明する一部断面図である。
【符号の説明】
1,21,26…軸、2,22,27…フランジ部、3…外径部分、
3a,3b…面、5…内径部分、6,7,23,28…動圧発生用の溝、
C1,C2,C26…環状の窪み、C21…窪み、
J1,J2,J21,J26…スラスト軸受面、
31…スリーブ形状の型部材、32,35…溝型、33,36…型面。
Claims (4)
- 軸と、この軸から径方向外方へ延びると共にスラスト軸受面に対向する対向面を有するフランジ部とを備え、
上記軸は、上記フランジ部の一方の面からこの一方の面が向いている方向に延在する一方の軸部と、上記フランジ部の他方の面からこの他方の面が向いている方向に延在する他方の軸部を有し、
上記フランジ部における両方の面に動圧発生用の溝が塑性加工によって形成されている動圧軸受であって、
上記両方の面は上記動圧発生用の溝が形成された外径部分と上記動圧発生用の溝が形成されていない内径部分を有し、上記外径部分は径方向最外端まで延びており、上記内径部分は上記外径部分よりも軸方向に窪んでいるとともに上記軸の外周部に接する位置まで形成されていて、
上記軸とフランジ部とが一体に形成されていることを特徴とする動圧軸受。 - 請求項1に記載の動圧軸受において、
上記塑性加工はプレス加工であることを特徴とする動圧軸受。 - 請求項2に記載の動圧軸受において、
上記プレス加工によって上記動圧発生用の溝が上記フランジ部の上記両方の面に同時形成されたことを特徴とする動圧軸受。 - 請求項1に記載の動圧軸受を製造する方法であって、
軸と、この軸から径方向外方へ延在しているフランジ部とを一体に形成して、上記軸とフランジ部とが一体のフランジ付き軸を形成するステップと、
上記フランジ部の動圧発生用の溝が形成されるべき領域よりも径方向内方の領域に窪みを形成するステップと、
2つのスリーブ形状の型部材のうちの一方を上記軸の一方の軸部に嵌め、上記2つのスリーブ形状の型部材のうちの一方を他方の軸部に嵌めて、
上記2つのスリーブ形状の型部材を、上記フランジ部に向かって軸方向に同時にスライドさせて、上記2つのスリーブ形状の型部材の軸方向の端面に形成されている動圧溝形成用の型を上記フランジ部の両方の軸受面に押し付けて、上記両方の軸受面に動圧発生用の溝を形成するステップとを備えていることを特徴とする動圧軸受の製造方法。
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