JP3696011B2 - ボルト用鋼およびボルトの製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば橋梁などの如く維持管理の煩雑な構造物において、めっき処理や塗装処理等を施さず裸のままで使用するのに適したボルト用鋼に関し、締付け時の潤滑特性に優れると共に裸のままで使用した場合でも優れた耐候性(耐食性)を示すボルト用鋼、および該ボルト用鋼を用いた高耐食性ボルトの製法に関するものである。尚本発明でいうボルト用鋼とは、ボルトの他、ナットや座金などの締結に関わる部品を包含する。
【0002】
【従来の技術】
例えば海岸地帯や寒冷地域の如く、塩水や融雪塩の飛来等によって塩分腐食環境に曝される橋梁などの構造物として用いられる厚板、型鋼などの鋼材は、耐食性向上のため錆止め塗装等を施して使用される。そしてこれらの構造物に使用されるボルトは、耐食性確保のため表面にめっきを施した上で締結され、更に締結後に構造物全体を塗装するのが一般的である。
【0003】
一方近年、塗装の塗り直しなどのメンテナンスの簡略化に主眼を置いて、無塗装で長期間の使用に耐える鋼材を用いた構造物が開発されている。こうした構造物の締結にめっき処理されたボルトを使用すると、めっき層の金属と構造物(鋼材)との間に大きな腐食電位差が生じ、ボルトもしくは構造物の早期腐食を招く。従って、この様な無塗装構造物に適用されるボルトについては、めっきを施すことなくむしろ裸のままで使用することが好まれる。
【0004】
ボルトを裸のまま(めっきも塗装も施さない)で使用する場合、二つの問題が生じてくる。一つは、熱処理などを終えた後の調質肌そのままで使用されるため、座面と被締結体(あるいは座金、ワッシャーなど)間の摩擦係数が高く且つそのバラツキが大きいこと、もう一つは、ボルトが短期間に腐食損傷することである。
【0005】
ボルトの摩擦係数が高くなると、構造物を締結する際に同じトルクで締め付けても締付け軸力が小さくなり、ボルトが緩みを生じる原因になる。そして、高い摩擦係数にも拘らず十分な締付けを実現するには大きなトルクが必要になるので、締付けに余分なエネルギーが消費されることになる。また摩擦係数のバラツキが大きいと、締結個所によって軸力が高過ぎる部分や低過ぎる部分が生じ、ボルト締結構造物全体の信頼性に問題が生じてくる。
【0006】
ボルトの摩擦係数を低く且つ安定化させる方法として、潤滑油などを予め塗布しておく方法も採用されているが、工程が煩雑になるばかりでなく、ボルト自身の摩擦係数に大きなバラツキがある場合には十分な効果が期待できない。
【0007】
一方、ボルトの耐候性(耐錆性)を改善する手段としては、ASTMのA325に「type3」として記載されている様に、ボルト用鋼中にCr,Cu,Niなどを添加(各々0.27〜1.05%、0.17〜0.63%、0.17〜0.83%)した鋼種が用いられているが、近年鋼板や型鋼の耐候性改善技術が向上してくるにつれて、ボルトの耐久寿命は相対的に劣る傾向が見られる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、裸のままの状態でも締付け時の摩擦係数が低く且つ安定しており(バラツキが小さく)、しかも十分な耐候性を備えたボルト用鋼を提供すると共に、該ボルト用鋼を用いて優れた耐食性のボルトを製造することのできる方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明にかかるボルト用鋼とは、Ni:0.5〜2.7%(質量%を意味する、以下同じ)とCu:0.2〜1.6%を含み、且つCr:0.06%以下(0%を含む)、Mo:0.06%以下(0%を含む)に制限された鋼材からなり、裸状態のままでも優れた耐候性を有すると共に摩擦係数が小さく且つバラツキの小さいボルト用鋼である。
【0010】
本発明の上記ボルト用鋼においては、NiとCuの総含有量を1.5%以上とすることによって、その性能を一層高めることができ、また、上記以外の元素として0.1%以下のTiを含有せしめたものは、耐食性の一層優れたものとなる。
【0011】
また上記ボルト用鋼における好ましい基本成分は、C含有量が0.16〜0.45%、Si含有量が0.1〜0.6%、Mn含有量が0.5〜1.5%の範囲であり、残部成分は実質的にFeであるが、その中には、更に他の元素として0.004%以下のBを含有させることによって、本発明の上記特性を更に高めることができる。
【0012】
本発明のボルト用鋼は、基本的には裸のままで十分に実用化できる優れた耐候性と低い摩擦係数を兼ね備えたものであり、めっき処理や塗装処理、防錆安定化処理等は必須とされないが、その実用化に当たってはそれらの処理が禁止されるわけではなく、めっき処理や塗装処理、防錆安定化処理等を施して使用することも勿論可能である。
【0013】
また本発明に係るボルトの製法は、上記成分組成の要件を満たすボルト用鋼を使用してボルトを製造する際に、調質処理を下記の条件で行なうところに要旨を有している。
焼入れ前のオーステナイト化温度の最大値[℃]≧845℃
焼戻し温度の最大値[℃]<(410+120×Cu[%])
【0014】
【発明の実施の形態】
ボルト座面の摩擦係数は、鋼素材自身の摩擦性能に加えて、熱処理により生成する酸化皮膜の性質に大きな影響を受ける。本発明者らはこうした観点から鋭意研究を進めた結果、鋼製ボルト座面部の摩擦係数を低く且つ安定化するうえでボルト用鋼中に含まれるCrおよびMoは有害であり、一方NiとCuは有益であることが確認された。
【0015】
即ち、その理由はまだ明らかにされていないが、ボルト用鋼中にCrやMoが多量含まれていると、熱処理後のスケールの表面粗さが大きくなって鋼材表面の摩擦係数が高まる傾向が認められ、これらの元素をできるだけ少なく抑えてやれば、熱処理後の表面の摩擦係数を低く保てることが明らかとなった。
【0016】
これに対しNiやCuは、ボルト鋼素材および熱処理によって生成する酸化皮膜の摩擦係数を低下させる機能を発揮するので、これらの元素については積極的に含有させることを必須とする。
【0017】
他方、裸で用いる際の耐食性を改善するには、現実に使用される屋外環境下でボルトの表面に安定で且つ緻密な錆の形成を促す成分組成に調整することが有効であり、前述した様な塩分腐食環境下で生成する錆の制御法について種々検討した結果、Crは有害であるのに対しNi,Cu,Tiは有効であることが分かった。
【0018】
即ち、Crは錆にミクロな表面欠陥を生じさせる原因となり、延いては該表面欠陥部での優先腐食を促すことで錆の安定性を阻害する。これは、Crが腐食先端のpHを著しく低下させるためと思われる。こうしたCrの作用はごく微量でも顕著に現れるので、ボルト用鋼中のCr量は極力少なく抑えるべきである。
【0019】
これに対しNi,Cu,Tiは、ボルト鋼の表面に生じる錆を緻密化する作用があり、その作用によって鋼地表面での腐食反応を抑制する。それらの作用はそれぞれ単独でも有効に発揮されるが、2種以上を複合添加すると相乗的作用が発揮されることが確認された。
【0020】
以下、本発明におけるボルト用鋼の化学成分を定めた理由を詳細に説明する。
【0021】
Cu:0.2〜1.6%
Cuは、ボルト締結時の摩擦係数を低く安定化させるのに有効な元素であり、しかも塩分腐食環境下において錆を緻密化して耐候性を高める作用も有している。こうした作用を有効に発揮させるには、0.2%以上、より好ましくは0.3%以上、更に好ましくは0.4%以上含有させるべきであり、Cu量が多くなるほどそれらの作用は高まるが、多過ぎると連続鋳造時に熱間割れを起こす原因になるので1.6%以下、より好ましくは1.4%以下に抑えるべきである。
【0022】
Ni:0.5〜2.7%
Niは、上記Cuと同様にボルト締結時の摩擦係数を低くかつ安定にする作用を有すると共に、塩分腐食環境下において錆を緻密化し安定化させる作用がある。こうした作用を有効に発揮させるには0.5%以上、より好ましくは0.8%以上含有させるべきであるが、それらの作用は約2.7%で飽和するので、それ以上の添加は経済的に無駄である。
【0023】
これらCuおよびNiの有する摩擦係数低減効果と耐食性向上効果をより有効に発揮させるには、Cu+Niを総和で1.5%以上、より好ましくは1.8%以上含有させることが望ましく、また該総和の上限は、連続鋳造時の熱間割れを回避し或いは経済性を考慮して3.5%以下、より好ましくは3.0%以下に抑えることが望ましい。
【0024】
Cr:0.06%以下(0%を含む)
Crは、前述の如く熱処理によって生成するスケールの表面粗さを大きくして摩擦係数を高める他、塩分腐食環境下において錆層に生じるミクロ欠陥部に作用して優先腐食を促し、錆の安定化を阻害する。従って、錆を安定化して耐候性(耐食性)を高めると共に、締結時の摩擦係数を低く且つバラツキを小さくして安定化するには、0.06%以下、より好ましくは0.04%以下に抑えなければならない。特に、通常の転炉や電気炉を用いた製鋼においてCr量を0.06%以下にするには意図的な低減が必要であり、例えば、イ)Crを含まない合金鉄やスクラップを選択使用する、ロ)前チャージでCr含有量の少ない鋼種を溶製した取鍋を使用する、等の方法を採用し、溶製工程で混入するするCr量を極力抑えることが望まれる。
【0025】
Mo:0.06%以下(0%を含む)
上記Crと同様に、熱処理後のボルト表面に形成されるスケールの表面粗さを大きくして摩擦係数を高める好ましくない元素であり、スケールの粗大化を抑えて摩擦係数を低く且つ安定にするには、Mo量を0.06%以下、より好ましくは0.03%以下に抑えるべきである。尚、Mo量の低いボルト用鋼を得るには、1)Moを含有しない合金鉄やスクラップを選択使用する、2)前チャージでMo含有量の少ない鋼種を溶製した取鍋を使用する、等によって、製鋼工程で混入するMo量を極力少なくする方法を採用すればよい。
【0026】
Ti:0.1%以下
Tiは本発明において必須の成分ではないが、前記NiやCuと同様に塩分腐食環境下において錆組織を緻密化し安定化させる作用があり、NiやCuと共に微量含有させることによって耐候性を更に高める作用を発揮する。こうした作用は、ごく微量のTi添加で有効に発揮されるが、その作用をより有意に発揮させるには0.015%以上、より好ましくは0.030%以上含有させることが望ましい。しかしその効果は約0.1%で飽和するので、それ以上の添加は経済的に無駄である。
【0027】
本発明のボルト用鋼で規定される各元素は以上の通りであるが、該ボルト用鋼の基本成分となるC,Si,Mn等の好ましい含有比率は次の通りである。
【0028】
C:0.16〜0.45%
ボルト用鋼の焼入れ性を高め、高強度を得るのに有効な元素であり、0.16%未満ではボルトとしての強度が不足気味となる。しかし、C量が0.45%を超えると靭性が劣化し、特に塩分腐食環境下で遅れ破壊等の問題を生じ易くなる。これらの作用効果を総合的に考慮してより好ましいC量の下限は0.18%、より好ましい上限は0.38%である。
【0029】
Si:0.1〜0.6%
Siは腐食速度を抑える作用を有しており、その作用は0.1%以上含有させることによって有効に発揮される。しかしSi量が多過ぎると冷間鍛造性に悪影響を及ぼして鍛造割れなどの問題を起こし易くなるので、0.6%以下に抑えるのがよい。Siのより好ましい下限は0.2%、より好ましい上限は0.5%である。
【0030】
Mn:0.5〜1.5%
Cr量の低減を必須とする本発明において、Mnは焼入れ性低下を補うのに有効な元素であり、Mnを0.5%以上、より好ましくは0.7%以上含有させることが好ましい。但し、Mn量が多くなり過ぎると粒界への偏析が顕著となり、粒界強度を低くして遅れ破壊寿命を劣化させるので、1.5%以下、より好ましくは1.3%以下に抑えるべきである。
【0031】
B:0.004%以下
Bは、本発明ボルト用鋼において必須の元素ではないが、前述の如く本発明ではCr量の低減を必須の要件としており、その結果として焼入れ性が不足しがちになるので、焼入れ性不足を補うためBの少量添加が望まれる。即ち、Bは比較的低コストで焼入れ性を補う作用を有しており、その効果はごく微量の添加で発揮されるが、実用規模でその効果を有効に発揮させるには、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上含有させるのがよい。しかしこうしたBの効果は約0.004%で飽和するので、それ以上の添加は無駄である。
【0032】
この他、本発明では特に規定していないが、裸使用を前提とするボルト用鋼においては、経年の腐食反応により発生する水素によって遅れ破壊が助長される傾向が高いので、粒界に偏析して靭性に悪影響を及ぼす不純物元素であるP、Sは極力少なく抑えるべきであり、Pは0.02%以下、より好ましくは0.001%以下に、またSは0.002%以下、より好ましくは0.001%以下に抑えることが望ましい。尚、残部成分は実質的にFeおよび不可避不純物であるが、本発明の目的を阻害しない範囲で、少量の許容元素を含むものであっても構わない。
【0033】
上記本発明のボルト用鋼を用いたボルトの製法は特に制限されず、常法に従って圧延、軟化焼鈍、酸洗、引抜き加工、冷間鍛造、焼入れ・焼戻しの調質処理などを経て製造されるが、本発明者らが調質処理条件についても更に深く研究を行なった結果、下記a),b)を満たす条件で調質処理を行なえば、得られるボルトの耐食性が一段と優れたものになることをつき止めた。
a)焼入れ前のオーステナイト化温度の最大値[℃]≧845℃
b)焼戻し温度の最大値[℃]<(410+120×Cu[%])
【0034】
上記a),b)の要件を定めることによって耐食性が著しく高められる根拠は後記実施例で明らかにするが、その理論的理由は明確にされていない。しかしその理由としては次の様なことが考えられる。即ち、上記適正な調質処理条件下において、本発明で使用する前記ボルト用鋼中に含まれる元素の中でも耐食性に顕著な影響を及ぼすと思われるCuの固溶・析出・化合の状態が適正となって、腐食界面での水錆(水酸化鉄)の凝集挙動に好影響を及ぼして錆を緻密化し、腐食環境から母材を効率よく遮断して耐食性を一段と高めるものと推定される。特にCuは、焼入れ後の焼戻し過程の450℃付近で単独析出することが知られているが、こうしたCuの単独析出現象とも関連しているものと思われる。
【0035】
そして、こうした調質条件設定による耐食性向上効果は、Cuと共に0.015〜0.10%のTiを含むボルト用鋼を使用した場合に更に顕著に発揮される。即ちTiも錆を緻密化する作用が確認されているが、Tiも熱処理によって様々の化合物を形成する元素であり、上記調質処理条件がTiにとっても耐食性の一層の向上に有効な存在形態を与えるためと考えている。
【0036】
尚本発明のボルト用鋼から得られるボルトは、前述した通り裸のままで使用した場合でも、塩分腐食環境下での使用に耐える優れた耐候性を有すると共に、その表面には緻密な酸化皮膜(錆)が形成され、表面粗度が小さくて締結時の摩擦係数も小さく且つ安定しているが、このボルトの利用形態は裸使用に限定される訳ではなく、めっきボルトや塗装ボルト等としても勿論有効に活用できる。
【0037】
例えばめっきボルトに適用する場合、めっき層が薄くても安定して低い締め付けトルクを得ることができ、まためっき層が損傷した後も高耐候性が確保されるので、めっき層を薄くしてめっきボルトとしての製造効率の向上に寄与できる。また、初期の錆の流出を防止し、均一で安定な錆を早期に生成させるために施される錆安定化処理、或いはその他めっき以外の表面処理(化成皮膜処理や有機塗装処理など)を施して使用する場合にも有効に活用できる。
【0038】
【実施例】
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実験例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0039】
実験例1
表1に示す成分組成の供試鋼を実験炉にて溶製し、直径21mmの線材に圧延した。これに軟化焼鈍、酸洗を施した後、直径19.65mmとなる様に引抜き加工し、更に冷間鍛造およびねじ転造加工を施して、M22のボルト形状とした。その後、これらを860℃で60分間加熱処理してオーステナイト化し、水焼入れした後に、表1に示した各温度で60分間焼戻しを行なった。得られた各供試ボルトについて、下記の方法で摩擦係数と耐食性(腐食減量)を調べた。
【0040】
[摩擦係数]
各供試ボルトを使用し、無処理の場合と潤滑油(市販のマシン油)を塗布した場合の摩擦係数をJIS−B1084に準じて測定(N=15)し、平均値と標準偏差を求めた。
【0041】
[腐食減量]
腐食減量評価用として、圧延線材にボルトと同等の調質処理を施した長さ100mmの供試線材を使用し、下記環境A、Bの2種の条件下で腐食減量を調べた。
環境A:複合サイクル試験機内で塩水噴霧×8時間と温度35℃、湿度60%×16時間を交互に2週間繰り返す腐食促進試験、
環境B:週1回5%食塩水を散布しながら屋外に3ケ月放置する大気暴露試験。いずれも試験前の重量と、試験後に錆を化学除去した後の重量との差を表面積で除して腐食減量を算出した。
【0042】
【表1】
Figure 0003696011
【0043】
No.1〜8は本発明の規定要件を満たす実施例であり、これらの中でもNo.3,4,8は、適量のTiを添加したもの、No.6〜8はCu、Niの添加量を多めにしたもの、No.3,5,8は適量のBを添加したものを示している。
【0044】
No.9〜13は本発明の規定要件を欠く比較例であり、No.9,10は各々Ni、Cuが規定量に満たない。No.11〜13は、Cu、Niは比較的多量含まれているが、No.11はMoが過剰であり、No.12,13はCrが過剰である。特にNo.13はASTMに記載された耐候性ボルト用鋼の成分範囲内の鋼材である。
【0045】
摩擦係数および腐食減量の測定結果は下記表2に示す通りであり、本発明の規定要件を満たす実施例は、熱処理肌(裸まま)および潤滑油塗布後のいずれの摩擦係数も低く、且つ標準偏差も小くてバラツキが少ないことが分かる。こうした傾向は、特にCu、Niを多く含むNo.6〜8で顕著に認められる。
【0046】
腐食減量についてもNo.1〜8はいずれも小さな値を示しており、特にCu、Niが多く添加されたNo.6〜8、およびTiが添加されたNo.3,4,8で効果が顕著である。
【0047】
これらに対し、No.11を除く他の比較材(No.9,10,12,13)はいずれも腐食減量が大きく、またNo.11は、耐候性向上元素であるCr、Cu、Ni、Tiは夫々適量含まれているため耐食性は良好であるが、Mo量が過剰であるため摩擦係数が高く且つその標準偏差も大きい。
【0048】
【表2】
Figure 0003696011
【0049】
実験例2
表3に示す成分組成の供試鋼を実験炉で溶製し、直径21mmの線材に圧延した。尚No.14〜17はボルト用鋼としての規定要件を満たす実施例鋼、No.18は、Cuを積極添加していない比較鋼である。これらの各ボルト用鋼に軟化焼鈍、酸洗を施してから引抜き加工し、更に冷間鍛造を行なってネジ山のないボルトを作製した(軸部の直径19.65mm)。
【0050】
【表3】
Figure 0003696011
【0051】
各ボルトに、表4に示す様々の条件でオーステナイト化→焼入れ→焼戻しの処理を施した。尚、オーステナイト化および焼戻しは共に小型大気炉を使用し、時間は在炉60分とした。表4に示したオーステナイト化温度および焼戻し温度は、炉内温度の設定値であるが、各供試ボルトに熱電対を装着して測温することで、炉内へ装入してから約10分後には各供試ボルト自身もほぼこの温度になっていることを確かめた。
【0052】
得られた各供試ボルトについて、前記環境Aとして示した腐食促進試験を行ない、試験前の重量と試験後に錆を化学除去した後の重量との差から腐食減量を計算し、結果を表4に示した。また図1は、該表4の結果より、各供試材について腐食減量と焼戻し温度の関係をグラフ化して示したものである。図1において、黒く塗り潰したプロットは、オーステナイト化温度が840℃未満であったデータを示している。
【0053】
【表4】
Figure 0003696011
【0054】
上記表4および図1からも明らかな様に、Cuを積極的に添加していないボルト用鋼を用いたNo.18のボルトは、調質条件に関わらずいずれも耐食性が相対的に悪い。また、好ましい化学成分のボルト用鋼を用いた場合でも、本発明で定める好適条件で調質処理を行なったボルトは、該好適条件を外れる調質処理を行なったボルトに比べて一段と優れた耐食性を有していることを確認できる。
【0055】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、ボルト用鋼としての化学成分を適正に調整することによって、裸のままの状態でも締付け時の摩擦係数が低く且つ安定しており(バラツキが小さく)、しかも、例えば海岸地帯や寒冷地域の如く塩水や融雪塩の飛来等によって塩分腐食環境下に曝される橋梁などの構造物の締結に適用した場合でも優れた耐食性(耐候性)を有するボルトを得ることができる。また、該好ましい化学成分を満たすボルト用鋼を使用し、ボルト加工時の調質処理条件を適正に制御することによって、耐食性の一段と優れたボルトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例2におけるボルトの焼戻し温度と腐食減量の関係を示すグラフ化して示す図である。

Claims (7)

  1. Ni:0.5〜2.7%(質量%を意味する、以下同じ)とCu:0.2〜1.6%を含み、且つNiとCuの総含有量が1.5%以上であり、更に他の元素として、Ti:0.1%以下(0%を含まない)が含まれており、Cr:0.06%以下(0%を含む)、Mo:0.06%以下(0%を含む)に制限された鋼材からなることを特徴とするボルト用鋼。
  2. C含有量が0.16〜0.45%、Si含有量が0.1〜0.6、Mn含有量が0.5〜1.5%である請求項1に記載のボルト用鋼。
  3. 更に他の元素としてB:0.004%以下(0%を含まない)が含まれている請求項1または2に記載のボルト用鋼。
  4. 裸のままで使用されるものである請求項1〜のいずれかに記載のボルト用鋼。
  5. めっき処理および/または塗装処理を施して使用されるものである請求項1〜のいずれかに記載のボルト用鋼。
  6. 防錆安定化処理を施して使用されるものである請求項1〜のいずれかに記載のボルト用鋼。
  7. 前記請求項1〜のいずれかに記載のボルト用鋼を用いてボルトを製造するに当たり、調質処理を下記の条件で行なうことを特徴とする耐食性ボルトの製法。
    焼入れ前のオーステナイト化温度の最大値[℃]≧845℃
    焼戻し温度の最大値[℃]<(410+120×Cu[%])
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