JP2006144106A - 塗膜密着性に優れた高強度鋼板 - Google Patents

塗膜密着性に優れた高強度鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】 塗膜密着性に優れた高強度鋼板を提供する。
【解決手段】 鋼板表面と直交しかつダレが2μm以下の断面を、電界放出型走査型電子顕微鏡を用いて加速電圧20kV、倍率5000倍で反射電子像として観察し、鋼板表面から深さ方向にネットワーク状または毛根状に派生するSiおよび/またはMn含有酸化物の析出状況を確認したときに、 上記ネットワーク状または毛根状に派生するSiおよび/またはMn含有酸化物の鋼板表面における起点の平均間隔が5μm以上であり、かつ、 鋼板表面を含み深さ12μmで幅20μmの視野における上記酸化物の総長さが10μm以下であることを特徴とする塗膜密着性に優れた高強度鋼板。
【選択図】図4

Description

本発明は、自動車部品用鋼板等として最適な塗膜密着性に優れた高強度鋼板に関するものである。
自動車の燃費向上や軽量化を背景に鋼材の高強度化が求められており、冷延鋼板、熱延鋼板の分野でもハイテン化(高強度化)が進んでいる。高強度化を図るには、合金元素の添加が有効であるが、該合金元素量の増加に伴い、製造条件によってはこれら合金元素の様々な酸化物が鋼板表面に形成される。この鋼板表面に形成された酸化物は、化成処理性を劣化させたり塗装の施された鋼板の塗膜密着性を劣化させる原因となるため、合金元素添加による高強度化と表面品質確保は相反する関係にある。
ところで表面品質の中でも耐食性は、従来より、電気化学的に成分組成によるところが大きいと云われてきた(例えば非特許文献1)。即ち、鋼板表面の電気化学的な状態は、合金濃度によって決定されるとの考え方が主流であり、従来は、成分組成の制御により耐食性の改善が図られていた。しかし、耐食性の改善を目的に成分組成を限定すると、十分に高強度化が図れなくなったり非常に高コストになる等の不具合が生じていた。
一方、鋼中の成分組成を制御するのではなく、鋼板表面にFeめっき等の鉄被覆層を形成して鋼板表面を酸化物の存在しない状態とすることで、化成処理性や耐食性を確保するといった技術が例えば特許文献1に提案されている。しかしこの様にFe被覆層を形成させる場合には、製造工程が複雑になったり非常に高コストになる等の問題点がある。
また特許文献2には、表面を覆うように存在する酸化膜の厚さを制御することで耐食性を確保した冷延鋼板が示されている。これは、鋼板表面の酸化膜が塗装後の耐食性に悪影響を及ぼすため酸化膜厚さの上限を規定し、一方、酸化膜が薄すぎる場合にも鋼板自体の耐食性が劣化するため、酸化膜厚の下限を設定した技術である。しかし、上記特許文献2の様に鋼板表面の酸化膜厚さを規定しても、より優れた耐食性を確実に達成することができない場合がある。
特許文献3には、微細なクラックや表面疵の原因となる粒界酸化物を抑制すべく、成分組成を規定すると共に熱間圧延前の再加熱条件や冷間圧延後の焼鈍を規定している。また本発明者らも、鋼板の化成処理性向上を図るべく、鋼板表面から深さ10μm以下の粒界酸化物について規定した技術を提案している(特許文献4)。該技術は、化成処理時に化成処理結晶の付着し難い粒界酸化物の存在部位を低減することで化成処理性を確保したものである。しかし、更に優れた耐食性をより確実に実現するには、更なる改善が必要であるものと考えられる。
特開平5−320952号公報 特開平8−225888号公報 特開昭60−187625号公報 特開2004−244698号公報 前田重義「材料と環境」vol.43(1994),p.448
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、優れた塗膜密着性を有しており、腐食環境下でも優れた耐食性を発揮する高強度鋼板を提供することにある。
本発明に係る高強度鋼板とは、鋼板表面と直交しかつダレが2μm以下の断面を、電界放出型走査型電子顕微鏡を用いて加速電圧20kV、倍率5000倍で反射電子像として観察し、鋼板表面から深さ方向にネットワーク状または毛根状に派生するSiおよび/またはMn含有酸化物の析出状況を確認したときに、
上記ネットワーク状または毛根状に派生するSiおよび/またはMn含有酸化物の鋼板表面における起点の平均間隔が5μm以上であり、かつ、
鋼板表面を含み深さ12μmで幅20μmの視野における上記酸化物の総長さが10μm以下であるところに特徴を有する。
本発明は、上記要件を満たすものであって、鋼板表面の60度鏡面光沢度(JIS Z 8741に規定される60度鏡面光沢度)が30以上40以下の冷延鋼板も規定する。また、上記要件を満たすものであって、鋼板表面の60度鏡面光沢度(JIS Z 8741に規定される60度鏡面光沢度)が20以上40以下の熱延鋼板も規定する。
上記鋼板としては、化学成分組成が、C:0.04〜0.2%(質量%の意味)、Si:2.0%以下(0%を含む)、Mn:0.2〜4%を満たすものであればよい。
本発明によれば、自動車用に最適な高強度鋼板の塗膜密着性を確実に高めて、腐食環境下でも耐食性に優れた鋼板を提供できる。特に本発明では、耐食性向上のために成分組成を限定することなく、機械的特性と表面特性の両特性を向上させることができる。
本発明者らは、塗膜密着性に優れた鋼板として、上述の通り鋼板表面から深さ10μm以下の粒界酸化物について規定した鋼板を特許文献4で提案した。該技術は、具体的には図1(上記特許文献4の図4)に示した粒界に生成する線状酸化物を制御することで化成処理性の向上を図ったものであるが、該粒界酸化物を抑制しても、塗膜密着性をある程度向上させることはできるものの、より高めようとするには限度があった。
そこで、鋼板表層内部に存在する線状酸化物について更に検討を行ったところ、上記図1の線状酸化物の間に派生した微細なネットワーク状または毛根状の酸化物(薄いグレーの線状部分)が確認されるが、この小さな酸化物の析出状況を制御すれば、塗膜密着性が著しく向上することを見出した。
即ち従来技術では、粒界に存在する線状酸化物を制御対象としていたが、該線状酸化物よりも細かいピッチで存在する亜粒界に生成する酸化物または内部酸化物が成長してできた極微細な線状酸化物、具体的には、亜粒界や特定の結晶面を生成サイトとして成長したり内部酸化物が成長することによって形成された、鋼材の結晶粒径(粒界と粒界との間隔)よりも小さな領域に存在するネットワーク状または毛根状の線状酸化物を制御対象とすることによって、鋼板表層内部の線状酸化物を原因とする塗膜密着性の低下を根本的に解決できたのである。
尚、上記ネットワーク状または毛根状の酸化物の生成機構については未だ十分に明らかではないが、内部酸化物が上記の通り亜粒界または特定の結晶面に生成し、これらが成長した結果、結合してネットワーク状または毛根状になったことが可能性として考えられる。
本発明では、上記ネットワーク状または毛根状の小さな線状酸化物の観察条件も特定した。従来の観察方法では、例えば鋼板表面にダレが存在して本発明で対象とする微細な酸化物を確認することができない等、観察条件によっては、上記酸化物を定量的に把握することが不可能な場合も生じ得るからである。
即ち本発明では、鋼板表面と直交しかつダレ(鋼板切断面にみられるR形状部位)が2μm以下の断面を、電界放出型走査型電子顕微鏡を用いて加速電圧20kV、倍率5000倍で反射電子像として観察し、上記酸化物の析出状況を確認することとした。
尚、上記ダレを2μm以下とするには、集束イオンビーム装置、ミクロトームまたはバフ研磨のいずれかを用いて行なうことができる。
そして本発明では、上記の通り、鋼材の結晶粒径よりも小さくネットワーク状または毛根状に派生しているSiおよび/またはMn含有酸化物(以下「微細線状酸化物」ということがある)の析出状況を確認したときに、
(a)上記微細線状酸化物の鋼板表面における起点の平均間隔が5μm以上であり、かつ、
(b)鋼板表面を含み深さ12μmで幅20μmの視野における上記微細線状酸化物の総長さが10μm以下であることを要件とした。
上記微細線状酸化物が耐食性を低下させる理由として、該微細線状酸化物が、腐食環境下で腐食の助長経路となることが考えられる。即ち、この微細線状酸化物は、成分としてSiおよび/またはMnを含有する酸化物(主としてSiとMnの複合酸化物)であると判断されるが、その周辺が腐食環境下で腐食されやすく、結果として、後述する図10に示す様に鋼板表層内部で腐食が連鎖的に進行するものと考えられる。
そこで本発明者らは、腐食の助長経路を断ち切りその進行を抑制するには、上記(a)の通り微細線状酸化物の鋼板表面における起点の平均間隔を5μm以上となるようにすればよいことを見出した。好ましくは上記平均間隔が7μm以上、より好ましくは上記平均間隔が10μm以上の場合である。
尚、上記「平均間隔」とは、後述する実施例に示す通り、鋼板表面を含み深さ12μmで幅20μmの視野を任意に10視野観察し、この10視野における「鋼板表面における微細線状酸化物の起点の間隔」を測定して求めた平均値をいう。
また、この様な腐食助長経路となりうる微細線状酸化物の存在量を減少させることも重要であり、本発明では上記(b)の通り、鋼板表面を含み深さ12μmで幅20μmの視野における上記微細線状酸化物の総長さを10μm以下とした。好ましくは総長さが7μm以下、より好ましくは総長さが5μm以下の場合である。
本発明では、上記の通り、耐食性を支配する成分以外の因子として、鋼板表面の組織因子を解明し、これを制御することにより鋼板の耐食性を改善することができたものである。そしてその結果、耐食性の向上を目的とした成分組成の制約を緩和でき、成分組成を厳密に限定することなく機械的特性の確保と表面特性の向上を達成できた点に意義がある。
更に本発明者らは、上記要件を満たすと共に、鋼板表面の光沢度を一定値以下とすることによって耐食性がより向上することも見出した。具体的には、鋼板表面の60度鏡面光沢度(JIS Z 8741に規定される60度鏡面光沢度)を40以下(好ましくは38以下)とするのがよい。この様に鏡面光沢度を下げることによって、耐食性が向上する理由については未だ十分に明らかではないが、次の様に考えられる。即ち、光沢度を上記の通り一定値以下にして鋼板表面の凹凸を増大させることで、腐食の際の腐食距離が長くなり、その結果、同じ腐食環境下でも巨視的な腐食距離が短くなり、腐食膨れ幅が減少するためと考えられる。また、化成処理時のりん酸亜鉛結晶の核生成サイトが凹凸量に比例して密に生成し、その結果、化成処理皮膜が鋼板に良好に密着して耐食性が向上するためとも考えられる。
上記観点からは、鏡面光沢度をより下げることが望ましいが、冷延鋼板の場合は、鋼板表面の美麗性が求められることから、上記鏡面光沢度は30以上であることが好ましい。また熱延鋼板の場合であっても、品質確保の観点から表面外観の良好なものを得るには、上記鏡面光沢度を20以上とすることが望ましい。
本発明によれば、耐食性の観点からの成分組成の制約を十分に緩和できるが、高強度鋼板としての特性を確保したり、更なる特性を付与するには、下記化学成分を満たすようにすることが推奨される。
<C:0.04〜0.2%>
Cは、強度確保に寄与する炭化物(主にセメンタイトであり、NbやTi、V等の添加によるこれらの炭化物を含む)の形成に必要な元素であり、0.04%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.05%以上である。しかしCが過剰に存在すると、溶接性や延性が低下するので0.2%以下に抑えるのが好ましい。より好ましくは0.17%以下である。
<Si:2.0%以下(0%を含む)>
Siは、優れた強度−延性バランスを確保するのに有効な元素であり、この様な観点から0.2%以上添加してもよいが、Si含有量が過剰になると、上記鋼板の組織制御が困難となるほどSi酸化物が形成したり、固溶強化作用が過大となって圧延負荷が増大するため2.0%以下に抑えるのが好ましい。より好ましくは1.8%以下である。
<Mn:0.2〜4%>
Mnは、鋼の脆化を招くS(硫黄)をMnSとして固定するのに有効な元素であり、このような効果を発揮させるには0.2%以上、好ましくは0.3%以上含有させる。しかし過剰になると延性が劣化するため、4%以下、好ましくは3.5%以下に抑える。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであり、残部成分は実質的にFeであるが、鋼中に、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素として、0.1%以下のAl、0.1%以下のP(りん)、0.02%以下のS(硫黄)、0.01%以下のN(窒素)、0.01%以下のO(酸素)等の不可避不純物が含まれることが許容されるのは勿論のこと、前記本発明の作用に悪影響を与えない範囲で、更に他の元素としてCr、Mo、Ti、Nb、Cu、Niを積極的に含有させることも可能である。
即ちCr、Mo、Ti、Nb、Cu、Niは、鋼板の強度を高める観点から添加してもよく、それぞれCr:0.1%以上、Mo:0.1%以上、Ti:0.005%以上、Nb:0.005%以上、Cu:0.05%以上、Ni:0.1%以上含有させてもよいが、過剰に添加すると延性低下や溶接性の低下を招くため、Crは1%以下、Moは0.5%以下、Ti、Nbはそれぞれ0.1%以下、Cu、Niはそれぞれ0.2%以下に抑えることが好ましい。
本発明は、鋼板内部の金属組織まで規定するものではなく、例えばフェライトとマルテンサイトからなるDP(デュアル・フェーズ)鋼板、残留オーステナイトを含むTRIP鋼板、フェライトとパーライトからなる鋼板、ベイナイトからなる鋼板、析出物により強化された鋼板等に適用することができる。
本発明の高強度鋼板は、引張強度が450MPa以上(好ましくは590MPa以上)の鋼板を対象とする。引張強度が450MPa未満の場合には、高強度化や高延性化のために合金元素を多量に添加する必要がなく、上述したような酸化物の生成による塗膜密着性や耐食性の劣化といった問題もほとんど生じないからである。
本発明は、上記高強度鋼板の製造方法まで規定するものではないが、上記鋼板表層部の態様を制御したり、鋼板表面の鏡面光沢度を達成するには、成分組成を満足させる他、製造工程における鋼板の表面処理として、酸洗を行う場合には温度:50〜100℃で行うのがよく、研磨を行う場合には240〜1200番手の研磨紙を用いて行なうのがよく、また研削を行う場合には、エンドミル送りピッチを50〜1000ミクロンとすることが推奨される。
上記酸洗、研磨または研削によって、SiまたはMnを含有する酸化物を十分除去できる程度に、SiまたはMnを含有する酸化物の生成を抑制するには、熱間圧延条件を巻き取り温度を400〜700℃とすることが推奨される。また熱間圧延後の焼鈍を加熱温度:750〜950℃で行うことが推奨される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
まず下記に示す通り、試料として熱延鋼板試料または冷延鋼板試料を製造した。
<熱延鋼板試料の製造>
表2に示す熱延鋼板試料は次の様にして得た。即ち、表1に示す化学成分組成の鋼材を溶製し、鋳造して得られたスラブを用いて、加熱温度:1200℃、仕上圧延温度:900℃の条件で熱間圧延を行い板厚2.5mmの熱延鋼板を得た。それから表面のスケールを除去すべく、液温80℃で15%の塩酸に20秒間浸漬する酸洗を行ない、その後、下記に示す通り鋼板の表面処理を施してから組織の観察や特性の評価を行った。
<冷延鋼板試料の製造>
表2に示す冷延鋼板試料は次の様にして得た。即ち、表1に示す化学成分組成の鋼材を溶製し、鋳造して得られたスラブを用いて、上記と同様に熱間圧延と酸洗を施した後、更に冷間圧延を行い板厚1.2mmの冷延鋼板を得た。それから冷延鋼板を70mm×150mmに切断し、雰囲気ガスが制御可能な赤外線加熱炉と独立に雰囲気制御可能なチャンバ内に置かれた水槽を用いて該試料の焼入れ焼戻し処理を行った。
赤外線加熱炉内で加熱する際には、雰囲気ガスとしてN2にH2を15%混合したガスまたはN2ガスを流入させた。加熱温度は850℃とし、加熱保持時間は80秒とした。加熱終了後、赤外線加熱炉に連続したチャンバとの間のシャッターを開け、同チャンバ内にある水槽に加熱した鋼材を浸漬して焼入処理をした。その際、シャッター解放から水槽へ試料を浸漬させるまでの時間は約5秒であった。尚、水槽の設置されているチャンバの雰囲気はN2ガスとした。そして焼入処理後の試料表面の水分を十分に乾燥させてから、再度、赤外線加熱炉で300℃×140秒の焼き戻し処理を行った。その際の雰囲気は、焼入れ処理時と同じくN2にH2を15%混合したガスを用いた。それから、下記に示す通り鋼板の表面処理を施したのち組織の観察や特性の評価を行った。
<鋼板の表面処理>
上記熱延鋼板および冷延鋼板に酸洗、表面研削または研磨を施した。酸洗は、液温80℃で15%の塩酸に熱延鋼板の場合は120秒間、冷延鋼板の場合は10秒間浸漬して行なった。ここで、熱延鋼板の酸洗時間が冷延鋼板よりも長いのは、熱間圧延工程で厚く形成された鋼板表面の酸化スケールを酸洗で確実に除去するためである。一方、冷延鋼板は美麗性が求められ表面光沢をある程度確保する必要があるため、酸洗時間を比較的短くした。また研削は、エンドミルで鋼板表面を機械的に研削除去して行なった。研磨は、表面研削後に1000番の研磨紙で十分に行った。
また比較例として、これらの処理を施さず熱間圧延まま又は冷間圧延ままの試料も用意した。
<試料観察方法>
上記酸洗、表面研削または研磨後、鋼板を切断し、顕微鏡観察用にミクロトームまたはバフ研磨で断面を鏡面研磨して表面のダレを2μm以下とし、エッチングを施さないままの試料を用意した。
そして、鋼板表面と直交する方向の断面において、鋼板表面から深さが12μmで鋼板表面長さが20μmの視野を、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM,日立製作所製S−4500)を用いて加速電圧20kV、倍率5000倍で撮影した反射電子像を観察し、鋼材の平均結晶粒径(結晶粒界の平均間隔)よりも小さなネットワーク状または毛根状のSiおよび/またはMn含有酸化物の「鋼板表面における起点の平均間隔」と「上記1視野における総長さ」を測定した。
具体的には、上記「鋼板表面における起点の平均間隔」は、鋼板表面から深さが12μmで鋼板表面長さが20μmの視野を任意に10視野観察し、この10視野における「鋼板表面における微細線状酸化物の起点の間隔」を測定して平均値を求めた。また「上記1視野における上記酸化物の総長さ」も、上記任意に観察した10視野で測定して10視野の平均値を求めた。
更に、バフで鏡面研磨後エッチングを施した試料を別途用意し、該試料の平均結晶粒径を顕微鏡で観察して測定した。また鋼板の60度鏡面光沢度(JIS Z 8741に規定する60度鏡面光沢度)を測定した。これらの結果を表2に併記する。
<塗膜密着性(耐食性)評価>
同試料の塗膜密着性(耐食性)を次の通り評価した。即ち、サイズ70mm×150mmの鋼板に下記の条件で化成処理と電着塗装を施した後、鋼板にクロスカットを入れ、これをサンプルとしてJIS Z 2371に規定の塩水噴霧試験を行なった。
試験では、5%中性塩化ナトリウム水溶液(35℃)を168時間噴霧した。そして試験後に、クロスカット部にセロハンテープを貼り、テープを剥がしてクロスカットラインの左右それぞれのはがれ具合を調べ、その中での最大はがれ幅を該試料の塗装はがれ最大幅とした。そして、該塗装はがれ最大幅が1.8mm以下である場合を耐食性に優れている(○)とし、最大の塗装はがれ幅が1.8mmよりも大きければ耐食性に劣っている(×)と評価した。これらの結果を表2に併記する。
化成処理条件
・化成処理液:日本パーカライジング社製 パルボンド L 3020
・化成処理工程:脱脂 → 水洗 → 表面調整 → 化成処理
電着塗装条件
・電着塗料:日本ペイント社製パワートップ1100
・浴温度:30℃,通電時間:2分間,通電電圧:200V
・塗膜膜厚:20μm
・通電方法:ドカン法
・水洗:上水スプレー水洗
・焼付条件:180℃×20分間
<機械的特性の評価>
得られた鋼板からJIS5号試験片を採取して引張試験を行い、引張強度(TS)を求めた。その結果、冷間圧延材の引張強度はいずれも750〜1050MPaの範囲にあり、熱間圧延材の引張強度はいずれも450〜800MPaの範囲であった。
Figure 2006144106
Figure 2006144106
表1、2から、以下の様に考察できる(尚、下記No.は実験No.を示す)。即ちNo.1〜17は、鋼板表層の断面組織が本発明の要件を満たしているため、塗膜密着性に優れており、塗装鋼板の耐食性に優れることがわかる。
これに対し、No.18〜29は、鋼板表層の断面組織が本発明の要件を満たしていないため、塗膜が剥離しやすく、塗装鋼板の耐食性に劣る結果となった。
即ち、No.18〜21は冷延鋼板ままで酸洗等の表面処理を行わず、またNo.22〜25も、熱延鋼板ままで酸洗等の表面処理を行わず、いずれもネットワーク状の酸化物が多量に残存したため、良好な塗膜密着性を確保できず、塗装鋼板の耐食性に劣るものとなった。
No.26〜29は、冷延鋼板の表面を研削したものであり、鋼板表層の断面組織が本発明の要件を満たしているため、塗装鋼板の耐食性に優れている。しかし研削によって望ましい表面光沢度を確保できず、美麗な冷延鋼板が得られなかった。
参考までに、本実施例で得られた鋼板表面の断面SEM観察写真、及び塩水噴霧試験後の腐食先端近傍の断面SEM観察写真を示す。尚、塩水噴霧試験後の腐食先端近傍の断面SEM観察写真は、図3(試料を模式的に示した図2のA−A断面)の腐食先端近傍領域Bを撮影したものである。
図4は、本発明例であるNo.1の鋼板表面の断面SEM観察写真であるが、この図4から、鋼板表層領域には、毛根状酸化物がわずかに存在しているのみであることがわかる。また図5は、同じく本発明例であるNo.8の鋼板断面SEM観察写真であるが、この図5から、No.8の鋼板表層領域にはネットワーク状酸化物が存在していないことがわかる。
図6は、上記No.1の塩水噴霧試験後における腐食先端近傍の断面SEM観察写真であるが、この図6から、塩水噴霧試験後に一部腐食がみられるが、それ以外の部分では化成処理膜を介して塗膜が鋼材に良好に密着していることがわかる。
図7は、比較例であるNo.18の鋼板表面の断面SEM観察写真であり、図8は、比較例であるNo.21の鋼板表面の断面SEM観察写真であるが、この図7および図8から、鋼板表層領域にネットワーク状または毛根状の酸化物が形成されていることがわかる。
尚、図9は、上記No.18の塩水噴霧試験後における腐食先端近傍の断面SEM観察写真であるが、この図9から、前記図6よりも塩水噴霧試験後の腐食が著しいことがわかる。また図10は、前記図9の領域Aを拡大したSEM観察写真であるが、この図10から、腐食を助長するネットワーク状または毛根状の線状酸化物が存在していることがわかる。
特許文献4の図4として示される鋼板表面の断面FE−SEM観察写真(倍率:5000倍)である。 塩水噴霧試験後の試料を模式的に示した斜視図である。 上記図2のA−A断面を模式的に示した断面図である。 実施例No.1(本発明例)の鋼板表面の断面SEM観察写真である。 実施例No.8(本発明例)の鋼板表面の断面SEM観察写真である。 実施例No.1(本発明例)の塩水噴霧試験後における腐食先端近傍の断面SEM観察写真(倍率:1000倍)である。 実施例No.18(比較例)の鋼板表面の断面SEM観察写真である。 実施例No.21(比較例)の鋼板表面の断面SEM観察写真である。 実施例No.18(比較例)の塩水噴霧試験後における腐食先端近傍の断面SEM観察写真(倍率:1000倍)である。 実施例No.18(比較例)の塩水噴霧試験後における腐食先端近傍の断面SEM観察写真(倍率:5000倍)である。

Claims (4)

  1. 鋼板表面と直交しかつダレが2μm以下の断面を、電界放出型走査型電子顕微鏡を用いて加速電圧20kV、倍率5000倍で反射電子像として観察し、鋼板表面から深さ方向にネットワーク状または毛根状に派生するSiおよび/またはMn含有酸化物の析出状況を確認したときに、
    上記ネットワーク状または毛根状に派生するSiおよび/またはMn含有酸化物の鋼板表面における起点の平均間隔が5μm以上であり、かつ、
    鋼板表面を含み深さ12μmで幅20μmの視野における上記酸化物の総長さが10μm以下であることを特徴とする塗膜密着性に優れた高強度鋼板。
  2. 鋼板表面の60度鏡面光沢度(JIS Z 8741に規定される60度鏡面光沢度)が30以上40以下の冷延鋼板である請求項1に記載の高強度鋼板。
  3. 鋼板表面の60度鏡面光沢度(JIS Z 8741に規定される60度鏡面光沢度)が20以上40以下の熱延鋼板である請求項1に記載の高強度鋼板。
  4. 質量%で(化学成分について以下同じ)、
    C :0.04〜0.2%、
    Si:2.0%以下(0%を含む)、
    Mn:0.2〜4%
    を満たす請求項1〜3のいずれかに記載の高強度鋼板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013237912A (ja) * 2012-05-16 2013-11-28 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp 化成処理性に優れた高張力冷延鋼帯とその製造方法
US8608871B2 (en) 2008-10-08 2013-12-17 Jfe Steel Corporation High-strength steel tube having excellent chemical conversion treatability and excellent formability and method for manufacturing the same
CN107429343A (zh) * 2015-03-23 2017-12-01 新日铁住金株式会社 热轧钢板、其制造方法以及冷轧钢板的制造方法
CN114318126A (zh) * 2020-09-30 2022-04-12 上海梅山钢铁股份有限公司 一种耐酸腐蚀搪瓷换热器用热轧酸洗钢板及其制造方法

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