JP3695953B2 - 被膜形成基体、及び該基体の形成方法 - Google Patents

被膜形成基体、及び該基体の形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、清浄作用と高硬度化を必要とする基体、例えばシェーバー刃(内刃、外刃)、エアコン、空気清浄器、及び空気清浄作用を機能として持つ各種製品の摺動部材、更に清浄(抗菌)作用を機能として持つ各種製品の摺動部材からなる高機能被膜形成基体、及び該基体の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば、電気シェーバーにおいては、刃の表面改質の技術が取り入れられ、シェーバー外刃の母材表面にZrN、或いは高硬度被膜が形成され、耐摩耗性、耐食性、切れ味の向上を図る改良が為されており、その技術が特開平7−62561号公報(Int6:C23C 26/00)に開示されている。
【0003】
一方、電気シェーバーは直接外刃が人間の顔の皮膚に触れるため、その衛生面では考慮されるべき製品である。このような観点から、最近では抗菌材料が着目されており、その抗菌材料が特開平8-134630号公報(Int6:C23C 14/08)に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
然し乍ら、これまでは、高硬度性、及び清浄作用の双方の特性を備えた基体、特に刃を搭載したシェーバーが開発されていないのが現状である。
【0005】
従って、本発明は、耐摩耗性、耐食性、摺動特性の点で優れ、かつ清浄作用を有する基体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の被膜形成基体は、母材の一方の主面に炭素を含有した酸化チタンを含む被膜が形成され、被膜中の炭素の濃度は、母材側から該被膜表面側に向かって減少していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の被膜形成基体は、被膜と母材との間に中間層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の被膜形成基体は、中間層が硬質炭素被膜であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の被膜形成基体は、母材の他方の主面にダイヤモンド被膜、ダイヤモンド構造と非晶質炭素構造との混合被膜、或いは非晶質炭素被膜のうちいずれかである硬質炭素被膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の被膜形成基体は、母材の他方の主面にセラミックス被膜が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の被膜形成基体は、硬質炭素被膜または前記セラミックスと前記母材との間に中間層が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の被膜形成基体は、中間層が Si,Ti,Zr,Ge,Ru,Mo,W 或るいはこれらの混合物、又は、これらの単体或いは混合物の酸化物、窒化物、もしくは炭化物、或いは硬質炭素被膜であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の被膜形成基体は、中間層上に形成される被膜原子のうち少なくとも一種類の原子を中間層に混入しており、その原子が中間層側から被膜側に向かって多くなっていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の被膜形成基体は、母材が Ni,Al,Fe, ステンレス系の合金、或いは Ti,Zr,Al,Si,Cr,Hf,Ge の元素を有するセラミックスであることを特徴とする
【0016】
に、本発明の被膜形成基体の形成方法は、酸素およびメタンガスを供給しながら Ti のスパッタを行い、母材の一方の主面上に Ti を供給するとともに、メタンガスの供給を減少させていくことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態および参考の形態を図1乃至図5に基づいて説明する。
【0019】
尚、本発明の実施の形態および参考の形態における硬質炭素被膜は、ダイヤモンド被膜、ダイヤモンド構造と非晶質炭素構造との混合被膜、或るいは非晶質炭素被膜のうちいずれであっても良い。
【0020】
また、中間層はSi、Ti、Zr、Ge、Ru、Mo、W或るいはこれらの酸化物、これらの窒化物、もしくはこれらの炭化物が該当する。
【0021】
図1は、本発明において、硬質炭素被膜を形成することができるECRプラズマCVD装置の一例を示す概略断面図である。
【0022】
図1を参照して、真空チャンバ8の内部には、プラズマ発生室4と、基体ホルダ9が設置される反応室が設けられている。プラズマ発生室4には、導波管2の一端が取り付けられており、導波管2の他端には、マイクロ波供給手段1が設けられている。
【0023】
マイクロ波供給手段1で発生したマイクロ波は、導波管2及びマイクロ波導入窓3を通って、プラズマ発生室4に導かれる。プラズマ発生室4には、プラズマ発生室4内にアルゴン(Ar)ガス等の放電ガスを導入させるための放電ガス導入管5が設けられている。また、プラズマ発生室4の周囲には、プラズマ磁界発生装置6が設けられている。
【0024】
真空チャンバ8内の反応室には、ドラム状のホルダ9が、図1の紙面に垂直な回転軸のまわりを回転自在となるように設置されており、ホルダ9には、図示省略するモータが連結されている。
【0025】
ホルダ9の外周面には、複数(本実施例では24個)のシェーバー刃の基体が等しい間隔で装着されている。ホルダ9には、高周波電源(図示せず)が接続されている。
【0026】
ホルダ9の周囲には、金属製の筒状のシールドカバー(図示せず)がホルダ9から約5mmの距離隔てて設けられている。このシールドカバーは、接地電極に接続されており、このシールドカバーは、被膜を形成するときに、ホルダ9に印加される高周波(RF)電圧によって被膜形成箇所以外のホルダ9と真空チャンバ8との間の放電が発生するのを防止するために設けられている。
【0027】
シールドカバーには、開口部が形成されている。この開口部を通って、プラズマ発生室4から引き出されたプラズマが、ホルダ9に装着された基体に放射されるようになっている。真空チャンバ8内には、反応ガス導入管10が設けられている。この反応ガス導入管10の先端は、シールドカバーの開口部の斜め上方に位置する。
【0028】
参考例1>
図2は、本発明の基体の一例の構造を示したものであり、図2(a)は、母材の一主面(A)に酸化チタンを形成し、(一主面とは反対側の)他の主面(B)にSi中間層を形成した後、硬質炭素被膜を形成した基体の例である。
【0029】
前述した被膜形成装置を用いてシェーバー外刃(Ni電鋳)上に、図2(a)に示すような硬質炭素被膜を形成すると共に、その硬質炭素被膜を形成した面とは反対側の主面に酸化チタンを形成する実施例について以下具体的に説明する。
【0030】
まず、シェーバー外刃の裏面に中間層を形成し、その後、硬質炭素被膜を形成する実施例について述べる。
【0031】
最初に、真空チャンバ8内を10-5〜10-7Torrに排気して、ホルダ9を約10rpmの速度で回転させる。
【0032】
中間層は、ターゲット7にSiターゲットを設置し、ホルダ9とターゲット7間に高周波電力を印加し、プラズマ中のイオンの衝突によるターゲット7のスパッタを行うマグネトロンスパッタ法により約30nmの膜厚で形成した。
【0033】
次に、放電ガス導入管5からArガスを5.7×10-4Torrで供給すると共に、マイクロ波供給手段1から2.45GHz、100Wのマイクロ波を供給して、プラズマ発生室4内に形成されたArプラズマをシェーバー外刃の表面に放射する。
【0034】
これと同時に、反応ガス管10からCH4ガスを1.3×10-3Torrで供給しながら、高周波電源から13.56MHzのRF電力をホルダ9に印加する。
【0035】
以上の工程により、シェーバー外刃上に、膜厚210nmの硬質炭素被膜を形成した。
【0036】
更に、シェーバー外刃の表裏を反対にしてホルダ9に設置し、シェーバー外刃上にマグネトロンスパッタ法により酸化チタンを形成した。この時、ターゲット7はSiからTiに変更し、また、チャンバー内には1.0×10-3Torrの酸素を導入し、酸化チタンを形成した。
【0037】
なお、この酸化チタンの硬度は1,000ビッカースであり、保護特性に優れた膜であることが分かった。また、膜は透明であり、膜厚を変化させ、光の干渉を利用することにより、様々な色調の変化も可能であることも分かった。
【0038】
ところで、酸化チタンについては、既に光触媒作用による清浄(抗菌)作用があることは見出されている。酸化チタンは、そのバンドギャップが3.2eVであり、波長380nm以下の紫外線で励起され、内部に電子、正孔対が生成される。酸化チタン表面で吸着物質と電子による反応と正孔による反応が起こり、酸化チタンは、正孔の持つ強い酸化力により、吸着物質を分解する、所謂光触媒反応に優れている。
【0039】
従って、酸化チタンを形成した基体は既に、清浄(抗菌)作用を有する基体となっている。例えば、シェーバーなどの応用では、光触媒効果、清浄効果が果たす役割は大きいと考えられる。
【0040】
なお、この酸化チタンの形成については、前述の実施例では、酸素分圧を1.0×10-3Torrとしたが、より大きい分圧とすると酸化チタンの構造はより疎となり、表面積を大きくすることができ、反応性を高めることが可能である。
【0041】
また、中間層材料については、ターゲット材料をSiからTi、Zr、Ge、Ru、Mo、Wに取り替えることによってSiと同様な作用効果をもたらすことが可能である。
【0042】
更に、窒素、酸素、炭素を含むガスを導入することにより、それらの窒化物、酸化物、炭化物にすることが可能である。
【0043】
本発明では、このような清浄(抗菌)作用を持つ基体に対して、摺動特性が優れた基体を提供することをその一つの目的としている。
【0044】
従って、硬質炭素被膜を形成した基体の裏面の硬度を測定し、その結果、本基体の裏面の硬度は約3,000ビッカースであり、硬質炭素被膜を形成していないものに比べて約6倍の高硬度化が実現できていることが分かった。
【0045】
更に、ビッカース圧子による押し込み試験(1kg)でも剥離はなく、密着性においても優れていることを確認している。
【0046】
また、硬質炭素被膜を形成した基体と形成していない基体とにおいて、アルミナボールを用いた摺動試験を行った結果、硬質炭素被膜を形成した基体では、荷重10gで約3,000回の摺動でも全くその表面には傷などが見られないのに対し、未コーティングの基体では、摩耗痕が見られ、硬質炭素被膜を形成することにより、明らかに耐摩耗性が向上することが分かった。
【0047】
更に、前述のシェーバー外刃の代わりにSi基体を用いて、膜厚250nmの硬質炭素系被膜を形成し、アルミナボールを用いた摩耗試験(荷重:200g)を行い、摩耗深さにより摩耗特性を評価し、図3にその結果を示す。
【0048】
尚、この時、基体に印加する基体バイアス電圧を0から−150Vまで変化させて硬質炭素被膜を形成した。
【0049】
バイアス電圧を印加しない場合には、硬質炭素被膜の摩耗により、下地Siが露出したのに対し、バイアス電圧を印加した場合には、摩耗深さは数十nm以下と摩耗特性は飛躍的に向上していることが分かる。
【0050】
以上のように、本発明により、その表面に抗菌特性を持ち、かつ裏面には優れた耐摩耗性を同時に有する基体が実現できていることが分かる。
【0051】
尚、清浄(抗菌)作用を有する酸化チタン以外に、硫化カドミウム、硫化亜鉛、ニオブ、酸化第二鉄のうちいずれかを含有する被膜を形成しても、酸化チタンと同様な効果を奏すると考えられる。
【0052】
<実施例
次に、表面がより高硬度となるように、酸化チタン中に炭素が添加されている基体の形成例を図2(b)に示す。図2(b)は、母材の一主面(A)に炭素原子が添加された酸化チタンを形成し、(一主面とは反対側の)他の主面(B)にSi中間層を形成した後、硬質炭素被膜を形成した基体の例である。
【0053】
この時、プロセス中の例えばメタンガス(CH4)の流量を減少させることにより、酸化チタン中の炭素を母材側から被膜表面側に向かって減少させた傾斜機能構造を有する基体を作製することが可能となる。
【0054】
母材の裏面の硬質炭素被膜形成については、前述の実施例1と同様である。母材の表面に関しては、シェーバー外刃の表裏を反対にしてホルダに設置し、放電ガス導入管5からArガスを5.7×10-4Torrで供給すると共に、マイクロ波供給手段1から2.45GHz、100Wのマイクロ波を供給して、プラズマ発生室4内に形成されたArプラズマをシェーバー外刃の表面に放射する。
【0055】
これと同時に、反応ガス管10からCH4ガスを1.3×10-3Torr、酸素を1.0×10-3Torr供給しながら、高周波電源から13.56MHzのRF電力をホルダ9に印加する。これと同時にマグネトロンスパッタ法により、Tiのスパッタを行い、基体上にTiを供給する。
【0056】
以上の工程により、シェーバー外刃表面上に、炭素を含有した酸化チタン被膜を形成した。この時、プロセスが進行するに従い、供給するCH4ガスを減少させていくと、母材側から被膜表面側に向かって、炭素の濃度が減少した、いわゆる傾斜機能化した被膜を形成することができる。
【0057】
<実施例
実施例では、基体として髭(ひげ)を導入する開口部を有するシェーバー外刃に炭素を含有した酸化チタン及び硬質炭素被膜の形成について図4に従って述べる。図4は、基体ホルダへのシェーバー外刃の取り付け例を示す。
【0058】
シェーバー外刃20は、髭(ひげ)を導入する開口部21が存在する。この開口部を利用して、酸化チタン形成面22と反対側の面23の硬質炭素被膜形成を先に行うが、この際、基体ホルダ24とシェーバー外刃20とをあらかじめ浮かせておき、酸化チタン形成面にも炭素を回り込ませておく。
【0059】
その後、酸化チタンをマグネトロンスパッタ法により、基体バイアス電圧-100Vで形成すると、Tiのイオンが運動エネルギーを持ち、酸化チタンに炭素が混合した層が形成される。
【0060】
これによって、最表面では酸化チタンのみであるので、清浄(抗菌)作用は失われることなく、炭素の含有により、酸化チタンのみの被膜に比べてより高硬度な被膜の形成が可能となり、この面でも優れた保護特性を有する基体の作製が可能となる。
【0061】
なお、この基体の反対側の硬質炭素被膜については前述と同様の特性を持つことを確認している。
【0062】
また、このような母材に開口部が存在すると、この開口部を通して酸化チタン表面のみならず、母材裏面(酸化チタンが形成されている面と反対側の面)からも光が酸化チタンに入射するため、より光触媒効果、清浄効果が高められる。
【0063】
更に、内刃への硬質炭素被膜形成、或いは酸化チタン被膜形成も前述と同様の方法で可能である。さらに、内刃に開口部を設けて同様の効果が存在することを確認している。
【0064】
<実施例
実施例では、参考例1および実施例1における酸化チタンが形成された面とは反対側の面に窒化ジルコニウム(ZrN)被膜を形成する形成方法について図面を用いて説明する。
【0065】
図5は窒化ジルコニウムの被膜を形成するための真空チャンバ及びイオン注入装置を示し、11は10-5〜10-7Torrに排気される真空チャンバ、12は該真空チャンバ11内に配置され、図5の矢印方向に10〜20rpmの速度で回転可能にされたホルダー、13はシェーバー外刃、14は電子ビームによってジルコニウム(Zr)原子を蒸発させ、シェーバー外刃13に向けて放射する蒸発源、15はシェーバー外刃13の方向に窒素イオン(Nイオン)を放射するか、或いは窒素ガス(N2)を供給するかのいずれかを行うことができるアシストイオンガンである。
【0066】
次に前述の装置を用いてシェーバー外刃13の表面にZrN被膜を形成する方法について説明する。
【0067】
まず、真空チャンバ11内を10-5〜10-7Torrに排気し、アシストイオンガン15にN2ガスを供給し、Nイオンを取り出して、これをシェーバー外刃13の表面に照射する。この時のNイオンの加速電圧は、700eV、イオン電流密度は0.38mA/cm2に設定した。
【0068】
一方、Nイオンの照射と同時に蒸発源14を駆動し、Zr原子を蒸発させてシェーバー外刃13の表面に放射する。この時のZrの蒸発速度はシェーバー外刃13上での成膜速度に換算して650Å/min.に設定した。
【0069】
以上の工程を30秒から1分程度行い、シェーバー外刃13の表面に膜厚250Å〜500ÅのZrNの第1被膜層を形成した。
【0070】
次にNイオンの照射を止めて、イオンガン15よりイオン化されていないN2ガスをチャンバ11内に供給すると共に、このN2雰囲気中で蒸発源14よりZrN原子をシェーバー外刃13上の第1被膜層表面に向かって放射した。この時のZrの蒸発速度は第1被膜層表面での成膜速度に換算して650Å/min.に設定した。
【0071】
以上の工程を4分から4分30秒程度行い、ZrNの第1被膜層表面に、膜厚2650Å〜2900Åを有するZrNの第2被膜層を形成した。以上の工程の結果、シェーバー外刃13の表面に膜厚2900〜3400ÅのZrN被膜が形成されることになる。
【0072】
このZrN被膜の硬度は、1600ビッカースであり、ビッカース圧子による押し込み試験(1kg)でも剥離はなく、密着性においても優れていることを確認している。また、硬質炭素被膜と同様に摺動試験を行った。荷重10gで3000回の摺動でも表面の状態には変化がなく、大幅に寿命が向上したことを確認した。
【0073】
また、本実施例では、二つの工程からなる被膜形成方法を述べているが、ZrN形成は必ずしも本方法に限定されるものではなく、第1工程の方法、即ち膜形成中終始窒素イオンを照射する方法だけでも、ビッカース圧子による押し込み試験(1kg)で剥離はなく、密着性においても優れていることを確認している。
【0074】
<実施例
Zrの蒸着とNイオン照射を同時に行って、ZrN被膜を形成する際に、Zrの蒸着速度は、シェーバー外刃13上での成膜速度に換算して650Å/min.に設定し、Nイオンの加速電圧は700eVに設定した。但し、イオン電流密度は当初0.6mA/cm2とし、2分間で0.38mA/cm2で一定とし、合計5分間のプロセスで約3150ÅのZrN被膜を形成した。
【0075】
このようにして形成したZrN被膜の膜中窒素量をSIMSで測定した結果、母材からZrN被膜表面側に向かって減少し、その後、一定となっていることが分かった。
【0076】
この被膜については、密着性、摺動試験を行った結果、優れていることが分かった。
【0077】
また、同様の高硬度のZrN被膜は、イオンのみならず、Nラジカルを用いても形成できることは実験において確認している。
【0078】
更に、本実施例では、ZrN被膜について述べたが、本実施例の膜としては、Zr以外にセラミックス、Ti、Hf、Cr、Fe、B、Al、Si、Ge、Mg、Ta、Wの窒化物、或いは酸化物、炭化物でもZrN被膜の効果と同様の効果を発揮することを確認済である。
【0079】
また、この場合も母材に開口部が存在すると、炭素系被膜と同様に両面からの光の入射が可能となり、光触媒効果、清浄効果が高められる。
【0080】
尚、本実施例は例えばシェーバーであれば、外刃のみならず内刃でも適用が可能であり、更にコンプレッサ、印刷用マスク、スキージ、薄膜磁気ヘッド等の摺動部材、更には太陽電池、半導体装置に対して本発明を適用することが可能である。
【0081】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、耐摩耗性、耐食性、摺動特性の点で優れ、かつ清浄作用を有する基体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 硬質炭素被膜を形成することができるECRプラズマCVD装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】 図2(a)は、母材の一主面に酸化チタンを形成し、(一主面とは反対側の)他の主面にSi中間層を形成した後、硬質炭素被膜を形成した基体を示し、一方図2(b)は、母材の一主面に炭素原子が添加された酸化チタンを形成し、(一主面とは反対側の)他の主面にSi中間層を形成した後、硬質炭素被膜を形成した基体を示す。
【図3】 アルミナボールを用いた摩耗試験(荷重:200g)を行い、摩耗深さにより摩耗特性を評価した結果である。
【図4】 母材に開口部が存在するシェーバー外刃を基体ホルダに取り付ける一例を示す概略断面図である。
【図5】 窒化ジルコニウムの被膜を形成するための真空チャンバ及びイオン注入装置を示したものである。
【符号の説明】
1 …マイクロ波供給手段
2 …導波管
3 …マイクロ波導入窓
4 …プラズマ発生室
5 …放電ガス導入管
6 …プラズマ磁界発生装置
7 …ターゲット
8 …真空チャンバ
9 …ホルダ
10…反応ガス導入管
20…シェーバー外刃
21…開口部
22…酸化チタン形成面
23…酸化チタン形成面と反対側の面
24…基体ホルダ

Claims (10)

  1. 母材の一方の主面に炭素を含有した酸化チタンを含む被膜が形成され、前記被膜中の炭素の濃度は、前記母材側から該被膜表面側に向かって減少していることを特徴とする被膜形成基体。
  2. 前記被膜と前記母材との間に中間層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の被膜形成基体。
  3. 前記中間層がダイヤモンド被膜、ダイヤモンド構造と非晶質炭素構造との混合被膜、或いは非晶質炭素被膜のうちいずれかである硬質炭素被膜であることを特徴とする請求項2に記載の被膜形成基体。
  4. 前記母材の他方の主面にダイヤモンド被膜、ダイヤモンド構造と非晶質炭素構造との混合被膜、或いは非晶質炭素被膜のうちいずれかである硬質炭素被膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の被膜形成基体
  5. 前記母材の他方の主面にセラミックス被膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載の被膜形成基体。
  6. 前記硬質炭素被膜または前記セラミックスと前記母材との間に中間層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の高機能被膜形成基体。
  7. 前記中間層が Si Ti Zr Ge Ru Mo W 或るいはこれらの混合物、又は、これらの単体或いは混合物の酸化物、窒化物、もしくは炭化物、或いはダイヤモンド被膜、ダイヤモンド構造と非晶質炭素構造との混合被膜、或いは非晶質炭素被膜のうちいずれかである硬質炭素被膜であることを特徴とする請求項6に記載の高機能被膜形成基体。
  8. 前記母材が Ni,Al,Fe, ステンレス系の合金、或いは Ti,Zr,Al,Si,Cr,Hf,Ge の元素を有するセラミックスであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちいずれかに記載の被膜形成基体。
  9. 前記基体が電気シェーバーの外刃であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のうちいずれかに記載の被膜形成基体。
  10. 酸素およびメタンガスを供給しながら Ti のスパッタを行い、母材の一方の主面上に Ti を供給するとともに、前記メタンガスの供給を減少させていくことを特徴とする被膜形成基体の形成方法。
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