JP3695345B2 - 頭部保護エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のピラー部及びルーフサイドレール部に沿って折り畳み状態で収納されたバッグを、車体側部への所定の高荷重作用時にカーテン状に展開させる頭部保護エアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
乗員保護補助装置としてのエアバッグ装置には種々の形態があるが、近年、フロントピラー部からルーフサイドレール部に沿ってバッグが収納され、側面衝突時やロールオーバー時(本明細書では、両者を含めて「車体側部への高荷重作用時」と称す)に当該バッグをカーテン状に展開させて乗員の頭部を保護する頭部保護エアバッグ装置が搭載されるようになってきている。
【0003】
この種の頭部保護エアバッグ装置については既に数多くの出願がされているが、本件の発明の先行技術としては特開平10−119707号公報に開示された技術が好適であるので、以下に簡単に説明する。
【0004】
この頭部保護エアバッグ装置では、Aピラー部(フロントピラー部)乃至Cピラー部(クォータピラー部)に亘ってエアバッグ装置が格納されており、ルーフサイドレール部においては、ルーフサイドレールインナパネルとルーフヘッドライニング(成形天井)の端末部との間のスペースに長尺状に折り畳まれたバッグが収納されている。そして、ルーフヘッドライニングの端末部の裏面(車室外側の面)側には、当該端末部が車室内側へ円滑に展開するように断面U字状又はV字状のノッチが形成されている。
【0005】
上記構成の頭部保護エアバッグ装置によれば、車体側部への所定の高荷重作用時になると、Aピラー部に配設されたインフレータからガスが噴出され、折り畳み状態のバッグ内へガスが供給される。バッグの膨張圧が所定圧力に達すると、ルーフヘッドライニングの端末部がノッチ形成部位を展開起点として車室内側へ展開される。これにより、バッグがルーフサイドレール部の下方へカーテン状に展開される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成の頭部保護エアバッグ装置による場合、ルーフヘッドライニングの端末部の裏面側にノッチを形成する構成であるため、その部分の剛性が低下する。このため、ルーフヘッドライニングの車体への取付作業も慎重に行う必要があり、ルーフヘッドライニングの取付作業性が低下する。
【0007】
前記不具合を解消するために、ルーフヘッドライニングの端末部の裏面側に別物を貼り付ける等して、ルーフヘッドライニングの端末部の展開起点(折れ線)を形成する手法も考えられるが、別物を端末部の裏面に貼り付けるとなると、部品点数の増加及び組付工数の増加によるコストアップは避けられないため、採用に難がある。
【0008】
本発明は上記背景を考慮し、コストアップを招くことなく或いはコストアップを最小限に抑えつつ、車体側部への所定の高荷重作用時に天井材の端末部を円滑に展開させることができる頭部保護エアバッグ装置を得ることが目的である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、長尺状に折り畳まれたバッグの上縁部を車両のルーフサイドレールインナパネルに固定すると共に、内装部品である天井材の端末部で当該バッグを車室内側から覆い、車体側部への所定の高荷重作用時に天井材の端末部を車室内側へ折り曲げながらルーフサイドレール部の下方にカーテン状にバッグを展開させる頭部保護エアバッグ装置において、前記天井材の端末部の裏面側に一体的に固定されかつ天井材の端末部をルーフサイドレールインナパネルに固定するアシストグリップに対して車両前後方向に略一直線に配置される長尺状の既存部品を利用して天井材の端末部に剛性差を付与することにより、車体側部への所定の高荷重作用時における天井材の端末部の折れ線を設定した、ことを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項1記載の発明において、前記既存部品は、車室内側から天井材の端末部に所定値以上の荷重が作用することにより変形してエネルギー吸収を行う頭部保護用エネルギー吸収部材、並びに、車両の空調システムの一部を構成する空調用ダクトの少なくとも一方である、ことを特徴としている。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、車体側部に所定の高荷重が作用すると、車両のルーフサイドレール部に沿って長尺状に折り畳まれたバッグが膨張し、天井材の端末部を車室内側へ折り曲げながら、ルーフサイドレール部の下方へカーテン状に展開される。これにより、乗員の頭部と車体側部の内側面との間にバッグが介在され、乗員の頭部が効果的に保護される。
【0013】
ここで、本発明では、天井材の端末部の裏面側に一体的に固定される長尺状の既存部品を利用することにより、天井材の端末部に剛性差が付与される。つまり、既存部品が存在する部位では天井材の端末部の剛性が高くなり、既存部品が存在しない部位では天井材の端末部の剛性が低くなるため、両者の境界部分に剛性急変部が形成されることになる。そして、この剛性急変部が天井材の端末部の折れ線として機能する結果、天井材の端末部に所定のバッグ膨張圧が作用すれば、天井材の端末部は折れ線に沿って車室内側へ円滑に展開される。
【0014】
また、本発明では、上記の如く、既存部品を利用しているので、基本的にはコストアップは生じない。仮にコストアップが生じたとしても、別部品を設置する場合に比べれば、僅かな額であるため、最小限のコストアップに抑えることができる。
さらに、本発明によれば、以下の作用が得られる。すなわち、通常、天井材の端末部は、アシストグリップによってルーフサイドレールインナパネルに固定されている。本発明では、このアシストグリップに対して車両前後方向に略一直線に上記の既存部品を配置したので、天井材の端末部の折れ線も車両前後方向に一直線になる。
【0015】
請求項2記載の本発明の如く、上述した既存部品としては、車室内側から天井材の端末部に所定値以上の荷重が作用することにより変形してエネルギー吸収を行う頭部保護用エネルギー吸収部材が利用可能であり、又車両の空調システムの一部を構成する空調用ダクトも利用可能であり、更に両者を組み合わせて利用することも可能である。
【0016】
ここで、これらのエネルギー吸収部材や空調ダクトは、元々長尺状の部材であるため、天井材の端末部に車両前後方向に沿って剛性差を設ける手段としては利用し易い。また、これらのエネルギー吸収部材やダクトを搭載している車両は比較的多いため、広範な車種に適用することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図5を用いて、本発明の一実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置10について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方方向を示しており、矢印UPは車両上方方向を示しており、矢印INは車両室内方向を示している。
【0019】
図5には、本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置10が搭載された車両の室内外観が斜視図にて示されている。また、図4には、頭部保護エアバッグ装置10が作動してバッグ12が展開した状態が側面視で拡大して示されている。これらの図に示されるように、頭部保護エアバッグ装置10は、車体側部への所定の高荷重作用状態を検出するためのセンサ14と、作動することによりガスを噴出する略円柱形状のインフレータ16と、インフレータ16からガスの供給を受けて膨張し展開するバッグ12とを主要構成要素として構成されている。
【0020】
センサ14は一例としてBピラー(センタピラー)部18の下端部付近に配設されており、所定値以上の高荷重が車体側部に作用した場合にこの状態を検出し、図示しないコントローラに出力するようになっている。また、インフレータ16はCピラー(クォータピラー)部20に配設されており、図示しないコントローラと接続されてその作動が制御されている。
【0021】
図5に示されるように、バッグ12は、Aピラー(フロントピラー)部22からルーフサイドレール部24に沿って後述する折り畳み方によって折り畳まれた状態で格納(収納)されている。図4に示されるように、バッグ12は、バッグ前部26、バッグ本体部28、バッグ後部30の三つの要素によって構成されている。つまり、バッグ12は、前後方向に三分割されている。このうち、バッグ本体部28がバッグ12の主要部を構成する部分である。バッグ本体部28は、側面視で略矩形状に形成されており、その周縁部は非膨張部32として構成されている。非膨張部32の上縁部32Aには複数の取付片34が形成されており、ボルト36及びナット38(図1参照)でルーフサイドレール部24の車体側構成部材(ルーフサイドレールインナパネル40)に固定されている。
【0022】
バッグ前部26は非膨張部として構成されており、略台形状に形成された基部26Aと、この基部26Aの前端から延出された帯状のストラップ部26Bとから成る。基部26Aの後端部は、バッグ本体部28の非膨張部32の前縁部32Bに固定されている。また、基部26Aの上縁部には取付片42が形成されており、図示しないボルト及びナットでAピラー部22の車体側構成部材(フロントピラーインナパネル)の上部に固定されている。さらに、ストラップ部26Bの先端部には一対の取付片44が形成されており、図示しないボルト及びナットでAピラー部22の車体側構成部材(フロントピラーインナパネル)の中間部に固定されている。
【0023】
同様に、バッグ後部30は非膨張部として構成されており、略三角形状に形成された基部30Aと、この基部30Aの後端から延出された帯状のストラップ部30Bとから成る。基部30Aの前端部は、バッグ本体部28の非膨張部32の後縁部32Cに固定されている。また、基部30Aの上縁部には取付片46が形成されており、図示しないボルト及びナットでルーフサイドレール部24の車体側構成部材(ルーフサイドレールインナパネル40)に固定されている。さらに、ストラップ部30Bの先端部には一対の取付片48が形成されており、図示しないボルト及びナットでルーフサイドレール部24の車体側構成部材(ルーフサイドレールインナパネル40)に固定されている。
【0024】
上述したバッグ本体部28の上縁側には、ルーフサイドレール部24に沿って略直線状に形成されたガス導入路50が形成されている。ガス導入路50の前端部50Aは閉塞されているが、後端部50Bは開放されており、インフレータ16と接続されたガス案内管52の先端部が接続されている。
【0025】
また、上述したバッグ本体部28のガス導入路50の下方には、ガス導入路50と直交するかたちで複数の膨張室54が設けられている。複数の膨張室54は、バッグ本体部28の上下方向中間部に略T字形状、略逆J字形状、略I字形状にそれぞれ形成された非膨張部56、58、60をバッグ前後方向に所定の間隔で設定することにより形成されている。なお、各膨張室54の上端部はガス導入路50に連通されており、ガス導入路50からガスの供給を受けてバッグ厚さ方向に膨張するようになっている。
【0026】
上記構成のバッグ12は、ガス導入路50にあっては二つ折りに、又複数の膨張室54にあっては蛇腹状にそれぞれ折り畳まれている。なお、バッグ12は、軟質材料によって構成されかつ所定値以上のバッグ膨張圧が作用することにより破断する図示しない筒状のソックス(カバー)によって覆われることで保形されている。
【0027】
次に、上述したバッグ12のルーフサイドレール部24における収納構造(頭部保護エアバッグ装置10の格納構造)について説明する。
【0028】
図1及び図2に示されるように、バッグ12は、「天井材」としてのルーフヘッドライニング62の幅方向の端末部62Aとルーフサイドレールインナパネル40との間に形成された空間64に収納されている。
【0029】
より具体的に説明すると、ルーフサイドレール76は、車室内側に配設された前述のルーフサイドレールインナパネル40と、車室外側に配設されたルーフサイドレールアウタパネル66とを有し、閉断面構造に構成されている。なお、図1及び図2において、ルーフサイドレール76の外側に描かれているのは、ドアガラス80及びドアフレーム82を含んで構成されたサイドドア84の一部である。
【0030】
上記構成のルーフサイドレール76の端末部には、ゴム等の弾性材料によって構成されたオープニングトリム78が装着されている。オープニングトリム78は車室内側へ延びるリップ部78Aを備えており、このリップ部78Aには成形天井である「天井材」としてのルーフヘッドライニング62の端末部62Aが係止されている。ルーフヘッドライニング62の端末部62Aはルーフサイドレールインナパネル40に対して所定距離だけ離間して配置されており、これによりバッグ12の収納スペースとなる空間64が形成されている。
【0031】
ここで、上述したルーフヘッドライニング62の端末部62Aの裏面側には、バッグ12に隣接するかたちで、「既存部品」としての長尺状のエネルギー吸収部材68が接着剤70によって固着されている。エネルギー吸収部材68はパッド材(ウレタン発泡成形品)によって構成されており、図3に示される如く、ルーフサイドレール部24の前部に沿って(即ち、図5の前席100に着座する乗員に対応して)配設されている。これにより、図1及び図2に示される如く、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aには、エネルギー吸収部材68の外端に沿って高剛性部72と低剛性部74とが形成されて、両者の境界部分75に剛性差が生じるようになっている。
【0032】
また、上記のエネルギー吸収部材68の車両後方側には、空調システムの一部を成す「既存部品」としての空調用ダクト86が連続的に配設されている。なお、空調用ダクト86は、Bピラー部18からDピラー部88に亘って連続的に配設されている。この空調用ダクト86も、エネルギー吸収部材68と同様の手法(即ち、接着剤70による固着)或いは個別の手法によってルーフヘッドライニング62の端末部62Aの裏面に固着されている。従って、図示は省略するが、Bピラー部18からDピラー部88に亘る部位においても、高剛性部と低剛性部とが形成されて剛性差が生じるようになっている。
【0033】
さらに、図3に示されるように、上記のエネルギー吸収部材68及び空調用ダクト86は、前席100(図5参照)用のアシストグリップ90及び中間席102(図5参照)用のアシストグリップ92に対して、車両前後方向に略一直線に配置されている。従って、図3に一点鎖線で示したルーフヘッドライニング62の端末部62Aの折れ線94も車両前後方向に略一直線に形成される構成である。なお、上記アシストグリップ90、92を利用して、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aがルーフサイドレールインナパネル40に固定されている。具体的には、アシストグリップ90、92はボルト及びナット等の固定具でルーフヘッドライニング62の端末部62Aと共にルーフサイドレールインナパネル40に共締めされており、その際にバッグ本体部28の取付片34も共締めされるようになっている。
【0034】
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0035】
車体側部に所定の高荷重が作用すると、この状態がセンサ14によって検出され、インフレータ16からガスが噴出される。インフレータ16はガス案内管52を介してルーフサイドレール部24に沿って略直線状に形成されたガス導入路50の後端部50Bと接続されているため、インフレータ16から噴出されたガスはガス案内管52を介してガス導入路50内へ流入される。これにより、図2に示される如く、二つ折りされたガス導入路50が最初に膨張し、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aの裏面に膨張圧が作用する。かかる膨張圧が所定値以上に達すると、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aがオープニングトリム78のリップ部78Aから外れ、当該端末部62Aが折れ線94に沿って車室内側へ折れ曲がりながら、蛇腹状に折り畳まれた複数の膨張室54が車室内側へ押出される。そして、最終的には、蛇腹状に折り畳まれた複数の膨張室54が膨張してルーフサイドレール部24の下方へカーテン状に展開される(図2のニ点鎖線参照)。これにより、乗員の頭部と車体側部の内側面との間にバッグ12が介在され、乗員の頭部が効果的に保護される。
【0036】
また、頭部保護エアバッグ装置10が作動しない程度の荷重が車体側部に作用することにより、乗員の頭部がルーフヘッドライニング62の端末部62Aに当接(二次衝突)することがある。このような場合、本実施形態では、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aの裏面にエネルギー吸収部材68が固着されているため、当該エネルギー吸収部材68が変形することにより当接時の荷重(二次衝突エネルギー)が吸収される。これにより、乗員の二次衝突時に乗員の頭部が効果的に保護される。
【0037】
ところで、上述した如く、車体側部への所定の高荷重作用時には頭部保護エアバッグ装置10が作動しなければならない。そのためには、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aの裏面に作用するバッグ膨張圧が所定値以上になったときに、当該端末部62Aが車室内側へ円滑に展開することが必要である。
【0038】
ここで、本実施形態では、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aの裏面側に一体的に固定される長尺状の既存部品であるエネルギー吸収部材68及び空調用ダクト86を利用することにより、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aに剛性差が付与される。つまり、エネルギー吸収部材68及び空調用ダクト86が存在する部位ではルーフヘッドライニング62の端末部62Aの剛性が高くなり(高剛性部72が形成され)、エネルギー吸収部材68及び空調用ダクト86が存在しない部位ではルーフヘッドライニング62の端末部62Aの剛性が低くなる(低剛性部74が形成される)ため、両者の境界部分75に剛性急変部が形成されることになる。そして、この剛性急変部である境界部分75がルーフヘッドライニング62の端末部62Aの折れ線94として機能する結果、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aに所定のバッグ膨張圧が作用すれば、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aは折れ線94に沿って車室内側へ円滑に展開される。その結果、本実施形態によれば、車体側部への所定の高荷重作用時に、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aを車室内側へ円滑に展開させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記の如く、既存部品を利用しているので、基本的にはコストアップは生じない。仮にコストアップが生じたとしても、別部品を設置する場合に比べれば、僅かな額であるため、コストアップを最小限に抑えることができる。
【0040】
これらの結果、本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置10によれば、コストアップを招くことなく或いはコストアップを最小限に抑えつつ、車体側部への所定の高荷重作用時にルーフヘッドライニング62の端末部62Aを円滑に展開させることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置10では、上述した既存部品として、元々長尺状の部材であるエネルギー吸収部材68及び空調用ダクト86を用いたため、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aに車両前後方向に沿って剛性差を設ける手段としては利用し易い(利用性が良い)。また、これらのエネルギー吸収部材68や空調用ダクト86を搭載している車両は比較的多いため、広範な車種に適用することができる(汎用性がある)。
【0042】
さらに、本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置10では、アシストグリップ90、92に対して車両前後方向に略一直線にエネルギー吸収部材68及び空調用ダクト86を配置したので、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aの折れ線94も車両前後方向に一直線になる。その結果、本実施形態によれば、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aをエネルギーロスすることなく展開させることができる。つまり、仮にアシストグリップ90、92によってルーフヘッドライニング62の端末部62Aがルーフサイドレールインナパネル40に固定されているものの、エネルギー吸収部材68及び空調用ダクト86については配置されていないという構造にした場合、図3に一点鎖線で示した如く、折れ線96が波打ってしまい、本実施形態のような一直線にはならない。しかし、上記の如く、エネルギー吸収部材68及び空調用ダクト86で剛性差を設定し、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aの折れ線94を規定しておけば、車体側部への所定の高荷重作用時に、ルーフヘッドライニング62の端末部62Aを安定してかつ迅速に(早い展開速度で)展開させることができる。
【0043】
なお、上述した本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置10は、Aピラー部22からルーフサイドレール部24に沿って配設されて前席100(図5参照)に着座する乗員の頭部保護用として用いられるタイプであったが、これに限らず、前席100及び中間席102に亘って、或いは、前席100乃至後席104に亘って乗員の頭部を保護する頭部保護エアバッグ装置に対して本発明を適用してもよい。この場合、インフレータ16の配設位置・配設個数、バッグ12の大きさ・形状等は、用途に応じて適宜変更される。但し、本実施形態の場合、エネルギー吸収部材68及び空調用ダクト86の双方を利用した結果、前席100、中間席102、後席104のすべての範囲をカバーしているので、これらについてはそのまま用いることができる。
【0044】
また、上述した本実施形態では、エネルギー吸収部材68及び空調用ダクト86の双方を使用する構成を採ったが、これに限らず、いずれか一方のみを利用する構成を採ってもよい。
【0045】
さらに、上述した本実施形態では、パッド材(ウレタン発泡成形品)によって構成されたエネルギー吸収部材68を使用したが、これに限らず、種々の構成のエネルギー吸収部材を用いることができる。例えば、縦リブ及び横リブの複合体として構成された中空樹脂部材によって構成されたエネルギー吸収部材を使用してもよい。
【0046】
また、上述した本実施形態では、エネルギー吸収部材68をルーフヘッドライニング62の端末部62Aの裏面に固着するための手段として接着剤70を使用したが、これに限らず、エネルギー吸収部材68をルーフヘッドライニング62に一体化して端末部62Aの裏面に剛性差を設定することができる手段であればすべて適用可能である。例えば、所定の接着力を有する両面テープを使用してもよい。また例えば、エネルギー吸収部材を上記の中空樹脂部材等の樹脂成形品によって構成するのであれば、ルーフヘッドライニング62は元々成形天井であるので、一体成形することも可能である。
【0047】
さらに、バッグ12について補足すると、上述した本実施形態では、バッグ12の膨張室54が蛇腹状に折り畳まれるように構成したが、これに限らず、ロール状に折り畳まれるように構成してもよい。また、本実施形態では、バッグ12のガス導入路50が二つ折りされるように構成したが、これに限らず、二つ折り以外の少数折り又は折り無しの構成を採ってもよい。要は、ガス導入路50におけるガス流入抵抗が低くなる構成であればよい。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、天井材の端末部の裏面側に一体的に固定される長尺状の既存部品を利用して天井材の端末部に剛性差を付与することにより、車体側部への所定の高荷重作用時における天井材の端末部の折れ線を設定したので、コストアップを招くことなく或いはコストアップを最小限に抑えつつ、車体側部への所定の高荷重作用時に天井材の端末部を円滑に展開させることができるという優れた効果を有する。
また、請求項1記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、上述した既存部品を、天井材の端末部をルーフサイドレールインナパネルに固定するアシストグリップに対して車両前後方向に略一直線に配置したので、天井材の端末部の折れ線も車両前後方向に一直線にすることができ、その結果、天井材の端末部をエネルギーロスすることなく展開させることができるという優れた効果を有する。
【0049】
請求項2記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、請求項1記載の発明において、上述した既存部品を、車室内側から天井材の端末部に所定値以上の荷重が作用することにより変形してエネルギー吸収を行う頭部保護用エネルギー吸収部材、並びに、車両の空調システムの一部を構成する空調用ダクトの少なくとも一方としたので、利用性が良く、しかも汎用性があるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置の要部構造を示す図5の1−1線に沿う要部拡大断面図である。
【図2】図1に示される状態のバッグが膨張・展開していく過程を示す図1に対応する拡大断面図である。
【図3】エネルギー吸収部材及び空調用ダクトの配置関係をアシストグリップとの関係で示す拡大側面図である。
【図4】本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置が作動してバッグが展開した状態を拡大して示す拡大側面図である。
【図5】本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置が搭載された車両の室内外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 頭部保護エアバッグ装置
12 バッグ
24 ルーフサイドレール部
40 ルーフサイドレールインナパネル
62 ルーフヘッドライニング(天井材)
62A 端末部
68 エネルギー吸収部材(既存部品)
70 接着剤
86 空調用ダクト(既存部品)
90 アシストグリップ
92 アシストグリップ
94 折れ線
Claims (2)
- 長尺状に折り畳まれたバッグの上縁部を車両のルーフサイドレールインナパネルに固定すると共に、内装部品である天井材の端末部で当該バッグを車室内側から覆い、車体側部への所定の高荷重作用時に天井材の端末部を車室内側へ折り曲げながらルーフサイドレール部の下方にカーテン状にバッグを展開させる頭部保護エアバッグ装置において、
前記天井材の端末部の裏面側に一体的に固定されかつ天井材の端末部をルーフサイドレールインナパネルに固定するアシストグリップに対して車両前後方向に略一直線に配置される長尺状の既存部品を利用して天井材の端末部に剛性差を付与することにより、車体側部への所定の高荷重作用時における天井材の端末部の折れ線を設定した、
ことを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。 - 前記既存部品は、車室内側から天井材の端末部に所定値以上の荷重が作用することにより変形してエネルギー吸収を行う頭部保護用エネルギー吸収部材、並びに、車両の空調システムの一部を構成する空調用ダクトの少なくとも一方である、
ことを特徴とする請求項1記載の頭部保護エアバッグ装置。
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