JP3694401B2 - 自動変速機のロックアップ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動変速機のロックアップ制御装置に関し、詳しくは、車両用の自動変速機において、自動変速機油(以下、ATFと略す)の温度上昇を抑制するためのロックアップ制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、流体トルクコンバータにロックアップクラッチを備えた自動変速機において、前記ロックアップクラッチを締結させる運転領域であるロックアップ領域を、ATFの温度上昇を抑制すべく変更する構成としたロックアップ制御装置が知られている。
【0003】
例えば、特開昭62−205829号公報には、油温センサで検出されるATF温度が高いときに、ロックアップ領域を拡大する構成の開示がある。
また、特開平5−302671号公報には、車両の荷重を計測する荷重センサの信号に基づき、荷重が大きいときにロックアップ領域を低車速側に拡大する構成の開示がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両の荷重増大は、流体トルクコンバータのスリップを増大させることになって、このスリップによる発熱がATFの温度上昇を招くことになるが、スリップによる発熱は荷重増大以外の要因によっても発生するため、荷重変化のみからATFの温度上昇を抑制するためのロックアップ領域の拡大を行わせると、荷重以外の要因による温度上昇に対応してロックアップ領域を制御することができないという問題があった。
【0005】
一方、油温センサを備えるシステムであれば、ATFの温度上昇を抑制するためのロックアップ領域の制御を最適に行わせることが可能であるが、温度センサを設けることで、コストアップになってしまうという問題があった。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、温度センサを設けることなく、流体トルクコンバータの発熱によってATFの温度上昇が生じる走行条件を的確に判断して、ロックアップ領域の制御を行えるロックアップ制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そのため、請求項1記載の発明は、図1に示すように構成される。
図1において、流体トルクコンバータは、エンジンの出力軸と変速機の入力軸との間に介装され、ロックアップクラッチは、流体トルクコンバータの入力軸と出力軸とを機械的に直結するクラッチである。
【0007】
スリップ回転数検出手段は、前記流体トルクコンバータにおけるスリップ回転数を検出する。また、エンジン負荷検出手段は、エンジン負荷を検出する。そして、ロックアップ領域変更手段は、前記流体トルクコンバータの入力軸回転数が出力軸回転数よりも高い加速時においてのみ、前記エンジン負荷が大きくなるほど、かつ、前記スリップ回転数が大きくなるほど、前記ロックアップクラッチを締結させるロックアップ領域をより低車速側に拡大する。
【0009】
かかる構成によると、エンジン負荷が大きくなるほど、かつ、スリップ回転数が大きくなるほど、即ち、流体トルクコンバータにおける発熱が大きくなるほど、より低車速側からロックアップが行われるようにする。また、流体トルクコンバータの入力軸回転数(エンジンの出力軸回転数)が出力軸回転数よりも高い加速時においては、ロックアップ領域の変更を行うが、逆に、流体トルクコンバータの入力軸回転数(エンジンの出力軸回転数)が出力軸回転数よりも低い状態、即ち、エンジンが駆動輪側から回されるような減速状態では、ロックアップ領域の変更は行わない。
【0010】
請求項2記載の発明では、前記ロックアップ領域変更手段が、前記スリップ回転数の加重平均値と前記エンジン負荷の加重平均値とから前記ロックアップ領域を変更する構成とした。かかる構成によると、一時的にスリップ回転数,エンジン負荷が大きくなってもATFの温度上昇に結びつかないので、平均的にスリップ回転数,エンジン負荷が大きな状況を、スリップ回転数,エンジン負荷の加重平均値から判断し、ロックアップ領域を制御する。
【0012】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によると、流体トルクコンバータの発熱が大きいときほど、より低車速側からロックアップを行わせることができ、以って、無用なロックアップ領域の拡大を回避しつつ、ATFの温度上昇を確実に抑制できると共に、エンジンが駆動輪側から回されるような状態であって、比較的流体トルクコンバータの負荷が小さい状態で無用にロックアップ領域が変更されることを回避できるという効果がある。
【0013】
請求項2記載の発明によると、一時的なスリップ回転数,エンジン負荷の増大に影響されることなく、ロックアップ領域の拡大が真に要求される状態においてのみ、ロックアップ領域を変更させることができるという効果がある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図2は、実施の形態における車両駆動系のシステム構成図であり、図示しない車両に搭載されたエンジン1の出力側に自動変速機2が接続されている。
この自動変速機2は、エンジン1の出力側に介在する流体トルクコンバータ3と、この流体トルクコンバータ3を介して連結され、エンジン出力トルクがこの流体トルクコンバータ3を介して伝達される歯車式変速機4と、各種摩擦要素(フロントクラッチ,リヤクラッチ,ブレーキバンド,ロックアップクラッチ等)の結合・解放操作を行うソレノイドバルブ群5とを備える。前記ソレノイドバルブ群5は、ロックアップソレノイド,シフトソレノイドA,シフトソレノイドB,ライン圧ソレノイド等によって構成される。尚、歯車式変速機4を、無段変速機に置き換えても良い。
【0016】
前記ソレノイドバルブ群5を制御する自動変速機用コントロールユニット6には、各種のセンサからの信号が入力される。前記自動変速機用コントロールユニット6は、エンジンルーム内や車室内に設置する構成であっても良いし、また、自動変速機2のオイルパン内に収容する構成であっても良い。
前記各種のセンサとしては、エンジン1の吸入空気量を調整するスロットル弁7の開度TVOを検出するポテンショメータ式のスロットルセンサ8が設けられている。また、自動変速機2の出力軸に、該出力軸の所定回転角毎にパルス信号を発する車速センサ9が設けられている。更に、エンジン1の回転数Ne(rpm)を検出するエンジン回転センサ10(クランク角センサ)と、流体トルクコンバータ3のタービン回転数Nt(rpm)を検出するタービンセンサ11が設けられている。
【0017】
自動変速機用コントロールユニット6は、運転者が操作するセレクトレバーの操作位置信号に基づき、例えばセレクトレバーがドライブレンジ(Dレンジ)の状態では、予め設定された変速パターンのマップ(図5参照)を参照し、スロットル弁開度TVOと車速VSPとに従って1速〜4速の変速位置を自動設定し、ソレノイドバルブ群5を介して歯車式変速機4をその変速位置に制御する自動変速制御を行う。
【0018】
また、前記流体トルクコンバータ3には、図3に示すようなロックアップクラッチ40が備えられており、このロックアップクラッチ40を締結することによって流体トルクコンバータ3の入力軸と出力軸とを機械的に直結できるようになっている。
図3において、ケース42の駆動軸41側部分の内壁42aに相対して、クラッチフェーシング48を有するロックアッププレート49(油圧クラッチ)がトーションダンパー50と一体に配設されており、トーションダンパー50はクラッチハブ51とスプライン嵌合し、更に、クラッチハブ51は被駆動軸44にスプライン嵌合している。
【0019】
これにより、ロックアッププレート49は被駆動軸54の軸方向に移動可能となり、ロックアッププレート49の両側に形成される圧力室52,53の圧力P1,P2に応じて移動する。尚、圧力室52には、圧力通路54bを介してコンバータ油圧(作動油圧)が供給され、圧力室53には、圧力通路54aを介してコンバータ油圧が供給されるようになっている。
【0020】
ここで、P1>P2のときに、ロックアッププレート49は図で左方に移動して、ケース42の内壁42aに圧接し、駆動軸41と被駆動軸54とを機械的に接続するロックアップ状態(クラッチ直結状態)となり、逆にP2>P1のときに、ロックアッププレート49は図で右方に移動して、ケース42の内壁42aから離れ、解放状態(トルクコンバータ状態)となる。ここで、前記油圧通路54b,54aを介した圧力室52,53へのコンバータ油圧(作動油圧)の供給は、前記ソレノイドバルブ群5の中のロックアップソレノイド55によって制御されるようになっている。
【0021】
即ち、ロックアップソレノイド55を制御することで、ロックアップコントロールバルブ56の作動を制御し、ロックアップコントロールバルブ56に接続されているコンバータ油圧回路を、ロックアッププレート49の解放側と締結側とに切り換えるものである。ここでは、ロックアップソレノイド55は、コントロールユニット6によってデューティ制御されるようになっており、OFF時間が長い場合には、オイルポンプ57から供給されるコンバータ油圧が圧力室53に作用し、更に圧力室53から圧力室52にオイルが流入するため、P2>P1となってロックアップ解除状態(解放状態)となり、逆に、OFF時間が短い場合には、コンバータ油圧が圧力室52に作用しP1>P2となり、ロックアッププレート49はケース42の内壁42aに押し付けられて締結状態となる。更に、前記OFF時間割合に基づいて圧力室53に作用するコンバータ油圧P2を適度に低下させて、半クラッチ状態(スリップロック状態)とすることができるようになっている。
【0022】
尚、前記駆動軸41がエンジン1の出力軸に連結しており、被駆動軸44が歯車式変速機4の入力軸に連結している。
前記自動変速機用コントロールユニット6は、前記自動変速制御と同様に、スロットル弁開度TVOと車速VSPとに応じて予め設定されたロックアップ制御マップ(図5参照)を参照し、ロックアップソレノイドの制御を介して前記ロックアップクラッチ40の締結・解放を制御する。
【0023】
また、本実施の形態においては、ATFの温度上昇を抑制するために、前記ロックアップ領域を変更するようになっており、係るロックアップ領域の変更制御を、図4のフローチャートに従って説明する。
図4のフローチャートにおいて、S1では、[エンジン回転数Ne]−[タービン回転数Nt]として、流体トルクコンバータ3におけるスリップ回転数Ns(rpm)を算出する(スリップ回転数検出手段)。従って、スリップ回転数Nsは、エンジン回転数Neがタービン回転数Ntよりも高いときにプラスの値として算出され、エンジン回転数Neがタービン回転数Ntよりも低いエンジンブレーキ状態では、マイナスの値に算出されるようになっている。尚、タービンセンサ11を備えない場合には、車速VSPとギヤ比とからタービン回転数Ntを算出するようにしても良い。
【0024】
S2では、前記S1で今回算出されたスリップ回転数Nsと、前回までの加重平均値Nsavとを加重平均し、その結果を新たな加重平均値Nsavとする。
S3では、スロットルセンサ8で検出されるスロットル弁7の開度TVOを、エンジン負荷を代表する値として読み込む(エンジン負荷検出手段)。尚、変速段の決定にスロットル開度TVOを用いるので、エンジン負荷を代表する値として本実施形態ではスロットル開度TVOを用いるが、この他、電子制御燃料噴射装置における基本燃料噴射量や吸入空気量を、エンジン負荷を示す値として用いる構成であっても良い。
【0025】
そして、S4では、前記S3で今回読み込まれたスロットル開度TVOと、前回までの加重平均値TVOavとを加重平均し、その結果を新たな加重平均値TVOavとする。
S5では、予め前記スリップ回転数Nsの加重平均値Nsav及びスロットル開度TVOの加重平均値TVOavに応じてロックアップ領域の低車速化度合いを記憶したマップを参照し、ロックアップ領域の変更を設定する。
【0026】
具体的には、図4中に示すように、スリップ回転数Nsの加重平均値Nsavがマイナスのときには、ロックアップ領域は変更せず、スリップ回転数Nsの加重平均値Nsavがプラスのときには、加重平均値Nsavの値が大きいときほど、かつ、加重平均値TVOavが大きいときほど、ロックアップ領域をより低車速側に拡大する設定を行う。
【0027】
一般的に、一般道,渋滞路,高速道路に比較して登坂路においては、スリップ回転数Ns及びスロットル開度TVO(エンジン負荷)の平均的な値が共に高い状態になり、このときには、流体トルクコンバータ3の負荷が大きく発熱量が多くなるので、ATFの温度も一般道,渋滞路,高速道路を走行している場合に較べて高くなる。同様に、車両の乗員数や積載重量の増加によって車両の荷重が多くなっている場合も、スリップ回転数Ns及びスロットル開度TVO(エンジン負荷)の平均的な値が登坂路と同様な傾向を示し、流体トルクコンバータ3の発熱によってATF温度が上昇する。
【0028】
従って、スリップ回転数Ns及びスロットル開度TVO(エンジン負荷)の平均的な値から、流体トルクコンバータ3の負荷が大きく、流体トルクコンバータ3の発熱によってATFの温度が上昇する状態を判断することができ、スリップ回転数Nsが高いほど、また、スロットル開度TVOが大きいほど、ATFの温度上昇が高いものと推定できる。
【0029】
S6では、前記S5における設定に応じてロックアップ領域を変更する(ロックアップ領域変更手段)。即ち、S5でロックアップ領域をより低車速側に拡大する設定が行われた場合には、図5に示すように、ロックアップを行う最小車速を各スロットル開度TVO毎に規定するロックアップ線を、低車速側にシフトさせて、ロックアップ領域の拡大を図る。従って、前記S5で加重平均値Nsav及び加重平均値TVOavに応じてロックアップ領域の低車速化度合いを設定するときに、前記ロックアップ線をシフトさせるときの車速幅を低車速化度合いとして設定させれば良い。
【0030】
ロックアップ領域を低車速側に拡大すれば、ロックアップが行われる機会、即ち、流体トルクコンバータ3の入力軸と出力軸とが機械的に直結されてスリップの発生しない状態が増え、流体トルクコンバータ3の発熱による温度上昇を抑制し得る。
尚、ロックアップ制御マップを変更する代わりに、ロックアップ制御マップを参照するときの車速VSPを増大補正するようにして、結果的により低車速側からロックアップが行われるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1に係る発明の基本構成を示すブロック図。
【図2】実施の形態における車両駆動系のシステム構成図。
【図3】実施の形態におけるロックアップクラッチを詳細に示す断面図。
【図4】実施の形態におけるロックアップ領域の制御を示すフローチャート。
【図5】実施の形態におけるロックアップ制御マップを示す線図。
【符号の説明】
1 エンジン
2 自動変速機
3 流体トルクコンバータ
4 歯車式変速機
5 ソレノイドバルブ群
6 自動変速機用コントロールユニット
7 スロットル弁
8 スロットルセンサ
9 車速センサ
10 エンジン回転センサ
11 タービンセンサ
Claims (2)
- エンジンの出力軸と変速機の入力軸との間に介装された流体トルクコンバータの入力軸と出力軸とを機械的に直結するロックアップクラッチを備える自動変速機のロックアップ制御装置であって、
前記流体トルクコンバータにおけるスリップ回転数を検出するスリップ回転数検出手段と、
エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、
前記流体トルクコンバータの入力軸回転数が出力軸回転数よりも高い加速時においてのみ、前記エンジン負荷が大きくなるほど、かつ、前記スリップ回転数が大きくなるほど、前記ロックアップクラッチを締結させるロックアップ領域をより低車速側に拡大するロックアップ領域変更手段と、
を備えたことを特徴とする自動変速機のロックアップ制御装置。 - 前記ロックアップ領域変更手段が、前記スリップ回転数の加重平均値と前記エンジン負荷の加重平均値とから前記ロックアップ領域を変更することを特徴とする請求項1記載の自動変速機のロックアップ制御装置。
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JP11213598A JP3694401B2 (ja) | 1998-04-22 | 1998-04-22 | 自動変速機のロックアップ制御装置 |
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JPH11303985A JPH11303985A (ja) | 1999-11-02 |
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JP (1) | JP3694401B2 (ja) |
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