JP3694206B2 - 光情報記録再生ヘッド装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光磁気ディスクに対する情報の記録、再生、消去を行う光情報記録再生ヘッド装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光磁気ディスクなどの光情報記録媒体からの反射光を分割し、一対の受光素子により受光してサーボ信号を得る構成の光情報記録再生装置が知られている。例えば、特開平7−326084号公報に示されている光情報記録再生ヘッド装置は次のように構成されている。
光磁気ディスクからの反射レーザ光(戻り光)が、ウォラストンプリズムによって偏光方向の異なる3光束に分離され、そのうちの1光束がサーボ信号用光束、他の2光束がデータ信号用光束として用いられる。更にホログラム板によって、サーボ信号用光束をウォラストンプリズムによる光束の分離方向と直交する方向に分離すると共に、これらの分離光束に、光軸方向に関する正負方向のデフォーカスを生じさせる。ホログラム板から射出されたサーボ信号用光束は集光レンズを介して、一対のサーボ用センサに入射され、サーボ用センサの出力に基づいてサーボ信号が得られる。
上記光情報記録再生ヘッド装置は、2光束に分割されたデータ信号用光束もホログラム板によって、ウォラストンプリズムによる光束分離方向と直交する方向に分割され、上記一対のサーボ用センサの上下に位置する2対のデータ用センサに入射され、データ用センサの出力に基づいてデータ信号(MO)を得るように構成されている。
【0003】
図11は上記従来の光情報記録再生ヘッド装置の信号処理部52と、データ用センサ50、50、50’、50’およびサーボ用センサ51、51’との結線関係を示す図である。光磁気ディスクからの反射レーザ光の光束はトラッキング方向に相当する方向(以下、トラッキング相当方向と記載)に分離される。サーボ用センサ51、51’はそれぞれ一対のデータ用センサ50の中央、一対のデータ用センサ50’の中央に配置されている。サーボ用センサ51、51’はその分割線の方向がトラッキング相当方向と直交する方向に沿った分割線により三分割された分割受光面51a〜51c、51a’〜51c’を有する。
【0004】
信号処理部52は演算用ICから構成され、加算器53〜59、減算器60〜62を備えている。各加算器53〜58と各センサ50、51、50’、51’とは図11に示すように結線され、各減算器60〜62及び加算器59は図のように各加算器53〜58に結線されて、各減算器60〜62によりフォーカスエラー信号FES、トラッキングエラー信号TES、データ信号MOが生成され、加算器59によりプリフォーマット信号ROが生成される。
【0005】
上記の従来の光情報記録再生ヘッド装置によれば、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号が光情報記録媒体(光情報が記録されたディスク)からの戻り光の偏光状態の影響を受けにくい。また、調整部品、調整箇所が比較的少ないため、調整工程も少ない。更に、信号を電気的に帯域分離する必要がないので、安価な汎用のICを使用することができ、コストメリットの大きい光情報記録再生ヘッド装置を提供できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の光情報記録再生ヘッド装置では、光スポットが光磁気ディスクのトラックを横切るたびに回折光成分が変動することに起因して、実際には光磁気ディスクの情報記録面に対して光ピックアップの対物レンズがデフォーカスしてないにも拘わらずデフォーカスが生じているかのようなフォーカスエラー信号(T/Fクロストークによるフォーカスエラー信号)が発生するという問題があった。
このため、従来の光情報記録再生ヘッド装置においては、所定のトラックピッチを有する光磁気ディスクがセットされた場合にこのT/Fクロストークが極小となるように調整が為されていた。
【0007】
しかし、近年、光磁気ディスクの大容量化への要求から、トラックピッチの小さいものが用いられるようになってきている。通常、光情報記録再生ヘッド装置においては、半導体レーザ(LD)の波長、対物レンズの開口数(NA)、対物レンズの有効径は一定である。
【0008】
しかし、トラックの溝の形状、溝のピッチに起因して、光磁気ディスクにより反射された回折光の回折角が異なるため、トラックピッチが異なる光磁気ディスクを使用した場合、各センサの受光面で受光される光スポットのうちの回折成分の大きさや強度分布が異なる。
【0009】
m次回折光の回折角θは、λをレーザ光の波長、Tpをトラックピッチとして、sinθ=±m・λ/Tpで表されることが知られている。
【0010】
従って、サーボ用センサにより生成されるトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号の振幅強度、単位変化当たりの感度がトラックピッチTpの変化によって影響を受けると共に、T/FクロストークもトラックピッチTpの変化による影響を受ける。
【0011】
従来の光情報記録再生ヘッド装置では、サーボ用センサ51、51’の三分割線の方向は図11、12に示すようにトラッキング相当方向と直交する方向となっているので、トラックピッチの異なる光磁気ディスクがセットされた場合、各分割受光面51a〜51c、51a’〜51c’に当たる、0次光成分63と重なる±1次の回折光成分(斜線で示す部分)64の位置が変化する。すなわち、各分割受光面51a〜51c、51a’〜51c’の三分割線の方向がトラッキング相当方向と直交する方向となっており、図12に示すように±1次の回折光成分64により形成されるスポットがそれぞれ2分割されるのみであるので、例えば、トラックピッチの狭い光磁気ディスクがセットされ、±1次の回折光成分64の間隔が破線で示すように大きくなると、各分割受光面で受光される±1次の回折光成分64の受光量が大きく変化し、T/Fクロストークが発生しやすい状態となる。
【0012】
従来の光情報記録再生ヘッド装置では、所定のトラックピッチの光磁気ディスクがセットされた場合にはT/Fクロストークが極小となるように調整されているが、これとは異なるトラックピッチを有する光磁気ディスクが光情報記録再生ヘッド装置にセットされた場合、T/Fクロストークが充分にキャンセルされず、残留するおそれがある。しかし、実用上は、異なるトラックピッチを有する光磁気ディスクが光情報記録再生ヘッド装置にセットされた場合でもT/Fクロストークが十分に抑えられることが望ましい。
【0013】
また、上記の場合とは逆に、高密度(大容量)の、トラックピッチの狭い光磁気ディスクについてT/Fクロストークが極小となるように調整された光情報記録再生ヘッド装置に低密度のトラックピッチの大きな光磁気ディスクがセットされた場合でも、安定したサーボ動作がかかり、高速シークを行えるようにすることが望ましい。
【0014】
本発明の目的は、上記の事情に鑑み、トラックピッチの異なる光磁気ディスクがセットされた場合でも、安定したサーボ信号を得ることができ、またT/Fクロストークも抑制することができる光情報記録再生ヘッド装置を提供することである。
また、ホログラム板を用いて光束を分割して2つのセンサ上にそれぞれ光スポットを形成する構成のセンサシステムの場合、光束の波長の変動により回折角が変動して光スポットの間隔が変化し、検出信号に悪影響を与える場合がある。本発明は、そのような波長変動の影響も抑制できるような光情報記録再生ヘッド装置を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、光情報が記録されたディスクからの反射レーザ光を2分割すると共にこの2分割された各光束に光軸方向に関して正負方向のデフォーカスを発生させる光束分割手段と、前記2分割された光束を受光する一対の受光素子とを備え、前記一対の受光素子の一方の出力と、前記一対の受光素子のもう一方の出力とをそれぞれ使用して演算された、少なくともフォーカスエラー信号、及び前記レーザ光の波長変動による、前記一対の受光素子上での前記2分割された光束により形成されるスポットの間隔の変化を表す信号を検出し、前記スポットの間隔の変化を表す信号を用いて前記フォーカスエラー信号を補正する補正手段を有する、ことを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、前記一対の受光素子はそれぞれ、前記ディスクのラジアル方向に相当する方向と平行な分割線により分割された少なくとも3つの受光エレメントを有していることが好ましい。なお、前記光束分割手段は、ディスクのタンジェンシャル方向に相当する方向に光束を分割する回折素子により構成することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、光情報が記録されたディスクからの反射レーザ光を2分割すると共にこの2分割された各光束に光軸方向に関して正負方向のデフォーカスを発生させる光束分割手段と、前記2分割された光束を受光する一対の受光素子とを備え、前記一対の受光素子はそれぞれ、前記ディスクのラジアル方向に相当する方向と平行な分割線により少なくとも3つに分割されると共に、前記ディスクのタンジェンシャル方向に相当する方向と平行な分割線により2つに分割された、少なくとも6個の受光エレメントを有しており、前記一対の受光素子の一方の受光エレメントの出力と、前記一対の受光素子のもう一方の受光エレメントの出力とをそれぞれ使用して演算された、フォーカスエラー信号、トラックエラー信号、及び前記レーザ光の波長変動による、前記一対の受光素子上での前記2分割された光束により形成されるスポットの間隔の変化を表す信号を検出し、前記スポットの間隔の変化を表す信号を用いて前記フォーカスエラー信号を補正する補正手段を有することを特徴としている。
【0017】
なお、前記光束分割手段は、ディスクのタンジェンシャル方向に相当する方向に光束を分割する回折素子により構成することができる(請求項4)。また、前記一対の受光素子は、略同一平面上に配置することができる(請求項5)。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、光磁気記録媒体からの反射レーザー光を、光軸に沿って進行するサーボ信号用光束と、前記光磁気記録媒体のトラッキング方向と直交する方向に相当する第1の方向において、該光軸を中心として対称な方向に進行する一対のデータ信号用光束との偏光方向の異なる3光束に分離する光束分離手段と、前記光磁気記録媒体のトラッキング方向に対応する第2の方向に、前記分離されたサーボ用信号光束と前記一対のデータ信号用光束とをそれぞれ2分割すると共に、2分割された各光束に前記光軸方向に関して正負方向のデフォーカスを発生させる回折素子と、前記2分割されたサーボ信号用光束を受光する一対のサーボ信号用受光素子と、前記2分割された一対のデータ信号用光束を受光するデータ信号用受光素子とを備え、前記一対のサーボ用受光素子は前記第1の方向と平行な分割線により2分割されると共に前記第2の方向と平行な方向の分割線により3分割されて、6分割されたマトリックス型の分割受光面を備え、前記一対のサーボ用受光素子の一方の6分割された分割受光面の1行目の出力を左から順にk、a、g、2行目の出力を左から順にl、b、hとし、前記一対のサーボ用受光素子の他方の6分割された分割受光面の1行目の出力を左から順にe、i、c、2行目の出力を左から順にf、j、dとしたとき、(k+l+g+h+i+j)−(a+b+e+f+c+d)
に基づいてフォーカスサーボ信号を生成し、さらに、{(k+l)−(g+h)}+{(c+d)−(e+f)}
に基づいて前記フォーカスサーボ信号を補正することを特徴とする光磁気ヘッド装置。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る光情報記録再生ヘッドの構成を示す斜視図である。光情報記録再生ヘッドは、光源部1、対物光学系2、信号検出部3、処理部4を有する。光源部1は発散レーザ光を発生する半導体レーザ5、この半導体レーザ5から出射された発散レーザ光を平行光束に変換するコリメータレンズ6、このコリメーターレンズ6により平行光束とされたレーザ光の断面形状を整形するアナモフィックプリズム7を有する。このアナモフィックプリズム7により整形された平行光束はプリズムブロック部8に導かれる。
【0020】
プリズムブロック部8は、アナモフィックプリズム9、集光レンズ10、直角プリズム11を有する。集光レンズ10はアナモフィックプリズム9に接合されている。アナモフィックプリズム9はアナモフィックプリズム7で整形された平行光束をさらに整形して、光束の断面形状をほぼ円形状にする。アナモフィックプリズム9と直角プリズム11との間の接合面はハーフミラー面12として形成されている。ハーフミラー面12は、光源部11から出射された平行光束の一部を集光レンズ10に向けて反射する。集光レンズ10はオートパワーコントロール(APC)用の受光素子13上に光束を収束させる。受光素子13の受光出力に基づき、半導体レーザ5の出力が自動制御される。
【0021】
対物光学系2は、立ち上げミラープリズム14と、対物レンズ15とから概略構成される。ハーフミラー面12を透過した断面円形状の平行光束は、立ち上げミラープリズム14で図中上方に向けて(光磁気ディスク16に向けて)反射され、対物レンズ15により光磁気ディスク16の情報記録面上に収束される。
【0022】
この光磁気ディスク16は、情報記録面としての裏面に同心円状の記録トラックが形成されており、図示を略す回転駆動手段により回転される。図1には座標軸X’Y’Z’からなる直交座標系を示す。X’軸はディスク16の半径方向(すなわちトラッキング方向)、Y’軸はトラッキング方向と直交する方向(タンジェンシャル方向)、Z’軸はフォーカシング方向(対物レンズ15の光軸方向)を示すものとする。
対物レンズ15は、光磁気ディスク16の半径方向(トラッキング方向)X’に駆動される光学ヘッド(図示を略す)内に立ち上げミラープリズム14と共に設けられている。この対物レンズ15は光学ヘッド内のアクチュエータの駆動によりZ’方向に移動され、光磁気ディスク16の情報記録面上に合焦される。
【0023】
光磁気ディスク16により反射された反射レーザ光束は、対物レンズ15を透過した後、立ち上げミラープリズム14によりプリズムブロック部8に向けて90度偏向され、ハーフミラー面12で反射されて90度偏向され、信号検出部3に導かれる。ここで、信号検出部3において、XYZ直交座標系を規定する。信号検出部3におけるX軸、Y軸、Z軸はそれぞれディスク上でのX’軸、Y’軸、Z’軸に相当する。
【0024】
信号検出部3は、光束分離手段としてのウォラストンプリズム17、光束分割手段としてのホログラム板18、集光レンズ19、複合センサ20を有する。ウォラストンプリズム17は複屈折性を有する結晶性偏光素子である。このウォラストンプリズム17は、信号検出部3の拡大図である図2に示すように、矢印Pa方向に直線偏光している反射レーザ光Lを特定平面内において偏向方向の異なる3光束A1、B1、C1に分離する。ここでは、光磁気ディスクからの反射レーザ光を、偏光方向の異なる3光束、
(1)光軸Oに沿って進行するサーボ信号用光束と、
(2)光軸Oを中心として、光磁気ディスク上でのトラッキング方向X’に相当する、トラッキング相当方向Xにおいて分離される一対のデータ信号用光束と、
に分離する。
【0025】
このウォラストンプリズム17は、所定の光量分割比を得るために、第1結晶材料を光束入射側から見た状態でその結晶軸方向をトラッキング相当方向(X方向)に対し、光軸0の回りに+45度あるいは−45度傾け、同様に第2の結晶材料をY方向に対し、光軸0の回りに−71.5度あるいは+71.5度傾け、これら両結晶材料を接合することによって構成されている。なお、結晶方向の組み合わせはこれに限られるものではなく、これ以外の任意の結晶軸方向の組み合わせによって所望の光量分割比を得ることができる。
【0026】
光束A1は光束Lの偏光方向Paと略平行な方向に偏光方向をもつ偏光成分であり、光束C1は光束Lの偏光方向Paと略直交する方向Pbの偏光方向をもつ偏光成分である。また、光束A1と光束C1の間に位置する光束B1は、これらPa、Pb両方向の偏光成分を有する。
【0027】
ホログラム板18は、偏光特性がない位相型の非偏光ホログラム素子からなり、通常のパターニングと同様の方法で作成される。このようなホログラムは、元来、物体で反射される光束の波面、あるいは物体を透過する光束の波面に参照波面を加えて干渉させ、その干渉縞の強度を記録媒体に記録したものであり、周知のデフォーカス波面(球面波)、チルト波面(傾斜した平面波)等を単独に、あるいは、組み合わせた干渉パターンとして記録したものである。
【0028】
図3はホログラム板18の断面図である。ホログラム板18は、同心円状でかつ断面が矩形状の多数の凹凸部18a、18bを有する透明基材19’の一部を切り取ることにより形成されている。
【0029】
図4に示すように、同心円状の凹凸部18a、18bの曲率中心はY軸上に位置している。すなわち、円弧状のパターンとしての凹凸部18a、18bは透明基材19’の同心円状のデフォーカスパターンの、中心部からY軸方向にシフトした任意の部分を切り取ったパターンと考えることができる。なお、隣接する凹部18aと凸部18bのデューティ比は略1:1である。
【0030】
ただし、凹凸部18a、18bは、上記同心円状のデフォーカスパターンの外周部ほどピッチTpが二次関数的に密になる同心円状のパターン(デフォーカス波面発生機能)と、X軸方向に凹凸部18a、18bと同ピッチを持つ直線状のパターン(チルト波面発生横能)とを合わせ持っている。
【0031】
すなわちホログラム板18は、入射光束をY軸方向に分割すると共に、分割された光束に対し光軸方向に正負のデフォーカスを与えることができる。
【0032】
各構成要素は、レーザ光束が光磁気ディスク16の情報記録面に適正に収束したとき、ホログラム板18によって分割された一対の光束のそれぞれのスポット形状が略同じサイズの円形となるように設定されている。この一対の光束は、光磁気ディスク16に対する光学ヘッドの離反・接近に起因して光磁気ディスク16の情報記録面に適正に合焦されないとき、一対のサーボ用受光素子上に形成されるスポットの形状が変化するため、受光出力が変化する。この受光出力に、後述する所定の演算処理を行って、フォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号を得るものである。
【0033】
なお、ここでは、ホログラム板18の断面形状は矩形状であるが、これに限られるものではなく、サイン波形状、階段波形状、鋸歯状など、他の形状でも良い。また、図3に示す溝深さTdを変更することにより、所望の光量比率に設定できる。
【0034】
ホログラム板18は、ウォラストンプリズム17によって図2の上下方向(トラッキング相当方向:X方向)において3つに分離された光束A1、B1、C1を、この方向と直交する方向(タンジェンシャル相当方向:Y方向)において2つの光束群A2、B2、C2及び光束群A2’、B2’、C2’に分割し、この2分割された光束群に、図5に示すように、光軸O方向に関する正負方向のデフォーカス(レンズ19を透過した±1次回折光が、センサ位置に対しホログラム板側とその逆側で収束するようなデフォーカス)を生じさせる。図5において、F1は+1次回折光による合焦位置であり、F2は−1次回折光による合焦位置である。ここで、光軸Oとは信号検出部3の中心軸をいう。
【0035】
ウォラストンプリズム17およびホログラム板18により、光束Lは6分割される。この6分割された光束のうち、光束A2、A2’及び光束C2、C2’は後述するデータ用受光素子に受光され、データ信号としての光磁気記録信号MO及びプリフォーマットROの生成に用いられる。光束B2、B2’は後述するサーボ用受光素子に受光され、サーボ信号としてのフォーカスエラー信号FES及びトラッキングエラー信号TESの生成に用いられる。
【0036】
光束A2、A2’、B2、B2’、C2、C2’のスポットSは、いずれもデフォーカスが与えられているため、非合焦時には、上下のスポットは径が異なり、左右のスポットは略同径となる。つまり、非合焦時には、光束A2、B2、C2のスポット径は略同径であり、光束A2’、B2’、C2’のスポット径も略同径であるが、光束A2、B2、C2、のスポット径と光束A2’、B2’、C2’のスポット径とは異なる。
【0037】
複合センサ20は、図2、図5、図6に示すように、ホログラム板18から射出され集光レンズ19を透過した、6分割された光束をそれぞれ受光して電気信号に変換する、データ用受光素子21a、21b、23a、23b及びサーボ用受光素子22a、22bを有する。これらの受光素子21a、21b、23a、23b、22a、22bは、光束Lと直交する同一平面上に配置された状態で、パッケージ20aに収容されてコンパクト化されている。
【0038】
受光素子21aと21b、22aと22b、23aと23b、がそれぞれ対になっている。一対のサーボ用受光素子22a、22bはトラッキング相当方向(X方向)と直交する方向の分割線により2分割されると共に、トラッキング方向と平行な方向の分割線により3分割されたマトリックス型の分割受光面(受光エレメント)を備えている。
サーボ用受光素子22aの1行目の分割受光面に図中左から順にk、a、g、2行目の分割受光面に左から順にl、b、hの符号を付し、サーボ用受光素子22bの1行目の分割受光面に左から順にe、i、c、2行目の分割受光面に左から順にf、j、dの符号を付する。また、データ用受光素子21a、21b、23a、23bの受光面にm、n、P、qの符号を付する。また、以下の記載において、各受光面の出力には、各受光面に付した符号と同一符号を用いることとする。
【0039】
上記受光面の出力は処理部4に入力され、処理部4においてフォーカスエラー信号およびトラックエラー信号が検出される。本実施の形態の光情報記録再生ヘッドでは、スポットサイズ法によりフォーカスエラー信号を検出すると共に、ラジアルプッシュプル法によりトラックエラー信号を検出している。
【0040】
処理部4は、図7に示すように、第1加算器24〜第11加算器34と第1減算器35〜第3減算器37を有する。
第1加算器24は出力i、h、lを加算し、第2加算器25は出力j、k、gを加算し、第3加算器26は出力a、f、dを加算し、第4加算器27は出力b、c、eを加算する。
第5加算器28は、第1加算器24の加算出力(i+h+l)と第2加算器25の加算出力(j+k+g)とを加算して、その加算出力(i+h+l+j+k+g)を第1減算器35の一方の入力端子に出力し、第6加算器29は、第3加算器26の加算出力(a+f+d)と第4加算器27の加算出力(b+c+e)とを加算して、加算出力(a+f+d+b+c+e)を第1減算器35の他方の入力端子に出力する。
【0041】
第1減算器35は、第5加算器28の加算出力(i+h+l+j+k+g)と第6加算器29の加算出力(a+f+d+b+c+e)と差を取ることにより、フォーカスエラー信号FESを生成する。
【0042】
第7加算器30は、第2加算器25の加算出力(j+k+g)と第3加算器26の加算出力(a+f+d)とを加算して、加算出力(j+k+g+a+f+d)を第2減算器36の一方の入力端子に出力し、第8加算器31は、第1加算器24の加算出力(i+h+l)と第4加算器27の加算出力(b+c+e)とを加算して、加算出力(i+h+l+b+c+e)を第2減算器36の他方の入力端子に出力する。
第2減算器36は、第7加算器30の加算出力(j+k+g+a+f+d)と第8加算器31の加算出力(i+b+l+b+c+e)との差を取ることにより、トラッキングエラー信号TESを生成する。
【0043】
第9加算器32は、データ用受光素子23a、23bの出力p、qを加算し、第10加算器33はデータ用受光素子21a、21bの出力m、nを加算する。
第11加算器34は、第9加算器32の加算出力(p+q)と第10加算器33の加算出力(m+n)とを加算して、プリフォーマット信号ROを出力する。
第3減算器37は、第9加算器32の加算出力(p+q)と第10加算器33の加算出力(m+n)との差を取ってデータ信号MOを生成する。
【0044】
本発明によれば、図8に示すように、フォーカスエラー信号FESの生成に係る分割線65の方向をトラッキング相当方向(X方向)と平行になるようにし、かつ各分割受光面と信号処理部4との配線を工夫してスポットサイズ法によりフォーカスエラー信号FESを生成することとしたので、トラックピッチが異なることにより±1次の回折光成分64の間隔がサーボ用受光素子22a(22b)の受光面上で変化したとしても、±1次の回折光成分64により形成されるスポットがそれぞれトラッキング方向と平行に3分割されることになり、内側エリア(a、i、b、j)で受光される±1次の回折光成分64と外側エリア(k、l、e、f、g、h、c、d)で受光される±1次の回折光成分64の比率は従来のセンサに比べて変化しにくい。従って、トラックピッチが異なることに起因した±1次の回折光成分64の間隔の変化に基づく各分割受光面上での±1次の回折光成分64の受光量の変化を抑制できることになる。従って、トラックピッチが異なることに起因するT/Fクロストークを極力低減できる。
【0045】
図8では、実線で示す回折光成分64は、トラックピッチの広い光磁気ディスクにより反射された戻り光の±1次の回折光成分64の位置を示しており、破線で示す回折光成分64はトラックピッチの狭い光磁気ディスクにより反射された戻り光の±1次の回折光成分64を示している。斜線は各分割受光面上での±1次の回折光成分64の受光面積の変化を示しており、±1次の回折光成分64の間隔が広がったとしても、各分割受光面上での受光面積の変化の割合は従来に比べて小さい。
【0046】
また、トラッキングエラー信号TESはサーボ用センサ22a、22bの分割線66の方向がトラッキング相当方向Xと直交する方向(Y方向)となるように、センサを二分割してプッシュプル法により生成している。このため、サーボ用センサ22a、22bの受光面は全体として6分割されることになり、その分割受光面の個数は増えることになるが、信号処理部4の結線関係の工夫により、従来と同じ回路構成を採用することができる。従って、センサ22a、22b用の特別の演算用IC(カスタムIC)を用いることなく、汎用の演算用ICを用いることができ、コストアップを図ることなくフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を生成することができる。
【0047】
また、光束分離手段による反射レーザ光を3光束に分離する方向をトラッキング相当方向と直交する方向とし、ホログラム板18による光束2分割方向をトラッキング相当方向として、光磁気ディスクの上下方向に対応させる構成としたため、装置全体の薄型化を図ることができる。
【0048】
ところで、光情報記録再生ヘッドにおいては、データ記録時と再生時でのレーザビームのパワーの相違や、その他の理由により、光源であるレーザダイオードの温度が変化して、レーザビームの波長が変化する場合がある。
上記のような構成の光情報記録再生ヘッドにおいては、レーザビームの波長が変化すると、ホログラム板18による回折角度が波長により変動するため、一対の受光素子上のスポットの間隔が変化するという問題がある。
【0049】
すなわち、レーザビームの波長の変動により、図7におけるビームスポットSの間隔が変動するため(すなわちトラッキング相当方向と直交する方向に各ビームスポットの位置がシフトするため)、フォーカシング信号FESに誤差が生じるという問題が発生する。
【0050】
図9は、フォーカスエラー感度(デフォーカス量とフォーカシングエラー信号の強度との関係)を、スポット幅の変動幅ごとに示したグラフである。この例の場合、スポットSの直径を約200μmとし、6分割センサの中央部分のセンサエリアの幅(図7におけるa、b、i、jのエリアの短辺方向の幅)をスポットSの直径の略1/3とした場合に得られるフォーカスエラー感度を示して、基準としている。図に示すように、スポット幅の変動が0μm〜20μm程度の場合には、デフォーカス量に対するフォーカシングエラー信号強度は略一定であるが、スポット幅の変動が50μmを越えると、あるデフォーカス量に対するフォーカシングエラー信号の強度が通常より小さくなる。言い換えれば、レーザビームの波長が変動して受光素子上のビームスポット間隔が変化すると、フォーカシングエラー信号に基づいて行われるフォーカシング動作は、実際のデフォーカス量に対し不十分なものとなり、完全にデフォーカスを取り除くことができない。
【0051】
さらに、スポットの変動幅が100μmに達すると、デフォーカス量にかかわらず、フォーカシング信号強度はほぼ0となり、フォーカシング信号に基づいてデフォーカスを検出することができなくなる。
【0052】
このため、本実施の形態においては、波長変動によるスポット幅変化を検出して、フォーカスエラー信号FESを補正するようにしている。
【0053】
図9に、フォーカスエラー信号FESを補正するための回路例を示す。なお、図9に示す回路も図7の回路と同様、処理部4に含まれるものであるが、図面が煩雑になるのを避けるため、補正回路のみを取り出して示すものである。
【0054】
補正回路は、加算器38〜41、減算器42、43および加算器44を有する。加算器38は出力k、lを、加算器39は出力g、hを、加算器40は出力c、dを、加算器41は出力e、fを加算し出力する。
減算器42は、加算器38と加算器39の出力の差(k+l)−(g+h)を出力し、減算器43は、加算器40と加算器41の出力の差(c+d)−(e+f)を出力する。そして、加算器44は、減算器42と減算器43の出力との和{(k+l)−(g+h)}+{(c+d)−(e+f)}を出力する。この加算器44の出力が、波長変動によるスポット間隔の変動を表す波長信号αである。
補正回路は、さらに、アンプ45を有している。アンプ45は、増幅率が上記波長信号の関数G(α)で表されるアンプで、前述のフォーカスエラー信号FESが入力されると、図9に示すスポット幅の増大に対するフォーカスエラー感度の劣化を相殺するように増幅された、補正フォーカスエラー信号CFESを出力する。
【0055】
なお、図9に示すスポット間隔の変動は1例であり、この値は装置の構成により異なるのもで有り、本発明により補正されるフォーカスエラー信号は図9に示すスポット間隔の変動幅に対応したものに限られるものではない。
【0056】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、フォーカスエラー信号の生成に関与するサーボ用センサの分割線の方向がトラッキング相当方向と平行な方向になるようにサーボ用センサを三分割する構成とし、トラッキングエラー信号の生成に関与するサーボ用センサの分割線の方向はトラッキング相当方向と直交する方向となるようにサーボ用センサを二分割する構成とし、かつ波長変動によるフォーカスエラー感度の劣化を相殺するようフォーカスエラー信号を補正する構成としたので、トラックピッチの異なる光磁気ディスクが装着された場合でも、T/Fクロストークを抑制することができ、安定したサーボ信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光情報記録再生ヘッド装置の実施の形態の要部構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す光情報記録再生ヘッド装置の信号検出部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図1に示すホログラム板の断面を部分的に示す拡大断面図である。
【図4】図3に示すホログラム板の平面図である。
【図5】図2に示す信号検出部を側方から見た側面図である。
【図6】図2に示す信号検出部を上方から見た平面図である。
【図7】受光素子と処理部との接続開係を示す回路図である。
【図8】サーボ用受光素子上での0次光成分と±1次の回折光成分とにより形成されるビームスポットを示す説明図である。
【図9】フォーカスエラー感度を示すグラフである。
【図10】受光素子と補正回路との接続関係を示す回路図である。
【図11】従来のセンサと倍号処理部との結線関係を示す回路図である。
【図12】従来のサーボ用センサの分割線の方向を説明するための平面図である。
【符号の説明】
16・・・光磁気ディスク
17・・・ウォラストンプリズム(光束分離手段)
18・・・ホログラム板(回折素子)
L ・・・反射レーザ光
Claims (6)
- 光情報が記録されたディスクからの反射レーザ光を2分割すると共にこの2分割された各光束に光軸方向に関して正負方向のデフォーカスを発生させる光束分割手段と、
前記2分割された光束を受光する一対の受光素子とを備え、
前記一対の受光素子の一方の出力と、前記一対の受光素子のもう一方の出力とをそれぞれ使用して演算された、少なくともフォーカスエラー信号、及び前記レーザ光の波長変動による、前記一対の受光素子上での前記2分割された光束により形成されるスポットの間隔の変化を表す信号を検出し、
前記スポットの間隔の変化を表す信号を用いて前記フォーカスエラー信号を補正する補正手段を有する、ことを特徴とする光情報記録再生ヘッド装置。 - 前記一対の受光素子はそれぞれ、前記ディスクのラジアル方向に相当する方向と平行な分割線により分割された少なくとも3つの受光エレメントを有していることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録再生ヘッド装置。
- 光情報が記録されたディスクからの反射レーザ光を2分割すると共にこの2分割された各光束に光軸方向に関して正負方向のデフォーカスを発生させる光束分割手段と、
前記2分割された光束を受光する一対の受光素子とを備え、
前記一対の受光素子はそれぞれ、前記ディスクのラジアル方向に相当する方向と平行な分割線により少なくとも3つに分割されると共に、前記ディスクのタンジェンシャル方向に相当する方向と平行な分割線により2つに分割された、少なくとも6個の受光エレメントを有しており、
前記一対の受光素子の一方の受光エレメントの出力と、前記一対の受光素子のもう一方の受光エレメントの出力とをそれぞれ使用して演算された、フォーカスエラー信号、トラックエラー信号、及び前記レーザ光の波長変動による、前記一対の受光素子上での前記2分割された光束により形成されるスポットの間隔の変化を表す信号を検出し、
前記スポットの間隔の変化を表す信号を用いて前記フォーカスエラー信号を補正する補正手段を有することを特徴とする光情報記録再生ヘッド装置。 - 前記光束分割手段は、前記ディスクのタンジェンシャル方向に相当する方向に光束を分割する回折素子であることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の光情報記録再生ヘッド。
- 前記一対の受光素子は略同一平面上に設けられていることを特徴とする、請求項2から請求項4のいずれかに記載の光情報記録再生装置。
- 光磁気記録媒体からの反射レーザー光を、光軸に沿って進行するサーボ信号用光束と、前記光磁気記録媒体のトラッキング方向に相当する第1の方向において、該光軸を中心として対称な方向に進行する一対のデータ信号用光束との偏光方向の異なる3光束に分離する光束分離手段と、
前記光磁気記録媒体のトラッキング方向と直交する方向に対応する第2の方向に、前記分離されたサーボ用信号光束と前記一対のデータ信号用光束とをそれぞれ2分割すると共に、2分割された各光束に前記光軸方向に関して正負方向のデフォーカスを発生させる回折素子と、前記2分割されたサーボ信号用光束を受光する一対のサーボ信号用受光素子と、
前記2分割された一対のデータ信号用光束を受光するデータ信号用受光素子とを備え、
前記一対のサーボ用受光素子は前記第1の方向と平行な分割線により3分割されると共に前記第2の方向と平行な方向の分割線により2分割されて、6分割されたマトリックス型の分割受光面を備え、
前記一対のサーボ用受光素子の一方の6分割された分割受光面の1行目の出力を左から順にk、a、g、2行目の出力を左から順にl、b、hとし、前記一対のサーボ用受光素子の他方の6分割された分割受光面の1行目の出力を左から順にe、i、c、2行目の出力を左から順にf、j、dとしたとき、
(k+l+g+h+i+j)−(a+b+e+f+c+d)
に基づいてフォーカスサーボ信号を生成し、さらに、{(k+l)−(g+h)}+{(c+d)−(e+f)}
に基づいて前記フォーカスサーボ信号を補正することを特徴とする光磁気ヘッド装置。
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