JP3694075B2 - コーンクラッチおよびこれを備えたディファレンシャル装置 - Google Patents

コーンクラッチおよびこれを備えたディファレンシャル装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーンクラッチおよびこれを差動制限機構として備えたディファレンシャル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特公昭47−10484号公報に図6ようなディファレンシャル装置201が記載されている。このディファレンシャル装置201は、デフケ−ス203に固定されたピニオンシャフト205と、このピニオンシャフト205上に回転自在に支持されたピニオンギヤ207と、このピニオンギヤ207と噛み合う一対のサイドギヤ209,211とからなるベベルギヤ式の差動機構213と、差動制限用の一対のコーンクラッチ215,217などを備えている。
【0003】
コーンクラッチ215,217は一対のクラッチ部材219,221とデフケ−ス203との間に形成されており、これらのクラッチ部材219,221はサイドギヤ209,211と共に各車軸223,225に軸方向移動自在にスプライン連結されている。また、クラッチ部材219,221のコーン部(摺動部)219a,221aには潤滑用の油溝219b,221bが形成されている。駆動力伝達時には、クラッチ部材219,221はサイドギヤ209,211から軸方向外方へ押圧されて、デフケ−ス203と摩擦係合している。
【0004】
デフケ−ス203がリングギヤ227を介してエンジンにより回転駆動されると、駆動力はピニオンシャフト205とピニオンギヤ207を経てサイドギヤ209,211(車軸223,225)に分配される。車軸223,225間に駆動抵抗差が生じるとピニオンギヤ207が自転を始め、駆動力は車軸223,225間に差動分配される。このとき、コーンクラッチ215,217のコーン部219a,221aには相対回転が生じ、摩擦抵抗力により車軸223,225間の差動は制限される。また、コーン部219a,221aは油溝219b,221bから導入されたオイルによって潤滑される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような構成により、クラッチ部材219,221にはコーン部219a,221aと油溝219b,221bとの加工を施すが、どちらを後工程にして加工しても油溝219b,221bの縁部にはバリが生じるため、バリを除去する工程が必要となり加工が面倒である。また、初期にバリを除去しても、作動の継続によりコーン部219a,221aが摩耗したときに、摩耗により油溝219b,221bの縁部にやはりバリが生じる。このバリは作動時にコーン部219a,221aのかじりや焼き付き発生の要因となるものであり、ディファレンシャル装置201の耐久性を損なう恐れがある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、コーンクラッチの耐焼き付き性の向上およびこのクラッチを備えたディファレンシャル装置の提供を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、内外各側の部材が円錐台形状の動力伝達部を有し、駆動側と従動側との間の動力伝達を断続するコーンクラッチであって、前記部材のうちの一側部材の動力伝達部が、円錐台の軸直角断面において楕円の一部形状からなる接触部を周方向に複数個備えると共に各接触部の中間に非接触部を備え、該接触部が他側部材の動力伝達部に摺動接触することを特徴とする。
【0008】
したがって、接触部が楕円の一部形状からなるので、接触部にはエッジ部は生じない。また、各接触部の中間の非接触部が潤滑用油路としての役割を果たすので、コーンクラッチの耐焼き付き性が向上する。これにより接触部の摺動が安定し、コーンクラッチの耐久性が向上する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、内外各側の部材が円錐台形状の動力伝達部を有し、駆動側と従動側との間の動力伝達を断続するコーンクラッチであって、
前記部材のうちの一側部材の動力伝達部が、円錐台の軸直角断面において円に接し、かつ該円の半径と異なる半径の円弧からなる接触部を周方向に複数個備えると共に各接触部の中間に非接触部を備え、該接触部が他側部材の動力伝達部に摺動接触することを特徴とする。
【0010】
したがって、請求項1記載の発明と同等の作用・効果が得られる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、エンジンの駆動力により回転駆動されるデフケ−スと、デフケ−スの回転を一対のサイドギヤを介して車軸側に分配する差動ギヤ機構と、デフケ−スとサイドギヤとの間に形成されサイドギヤの噛み合い反力を受けて摺動し前記差動ギヤ機構の差動を制限するコーンクラッチとを備えたディファレンシャル装置であって、前記差動を制限するコーンクラッチが、請求項1または2に記載のコーンクラッチであることを特徴とする。
【0012】
したがって、一対のサイドギヤ間に駆動抵抗差が生じると駆動力は差動ギヤ機構によりサイドギヤに差動分配されるが、このときコーンクラッチは摺動し、その摩擦抵抗により差動は制限される。この摺動時、コーンクラッチは請求項1または2記載の発明と同等に作用するので、ディファレンシャル装置の差動制限作用が安定し、耐久性が向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施形態を図1〜図3により説明する。図1は本実施形態のコーンクラッチを備えたディファレンシャル装置の全体断面図であり、図2は図1のサイドギヤのA−A矢視図である。図3はコーンクラッチの要部拡大図である。
【0014】
図1に示すように、このディファレンシャル装置1のデフケース(外側部材)3はデフケ−ス本体5とカバー7とがボルト(図示せず)により結合されて構成され、そのボス部5a,7aの外周部5b,7bにて図示しないデフキャリアにベアリングを介して回転自在に支持されている。また、デフケース3には図示しないリングギヤが固定され、このリングギヤを介してデフケース3はエンジンにより回転駆動される。そして、上記デフキャリアにはオイル溜りが形成され、ディファレンシャル装置1は油浴潤滑される。また、上記ボス部5a,7aの内周には螺旋状の油溝5c,7cが形成されている。一方、デフケース3の外周側には開口5d,7dが形成されている。
【0015】
また、デフケース3には、その回転軸に直交してピニオンシャフト9が固定され、ピニオンシャフト9はデフケース3と一体に回転する。デフケース3の内部には、このピニオンシャフト9を挟んで一対の出力側サイドギヤ(内側部材)11,13がデフケース3と同軸に対向配置されている。また、ピニオンシャフト9上には一対のピニオンギヤ15が回転自在に支持され、サイドギヤ11,13と噛み合っている。ピニオンギヤ15の受けるスラストは背面のデフケース3が受けている。また、サイドギヤ11,13の内周には左右の車軸(図示省略)がそれぞれスプライン連結される。サイドギヤ11,13はこの車軸上を移動可能に配置されている。こうして、差動ギヤ機構が構成されている。
【0016】
図1および図2に示すように、サイドギヤ11,13外周の動力伝達部としてのコーン部17,17は軸方向外方に円錐の頂点を有し、かつ円錐軸に直角の断面が楕円状に形成されている。すなわち、コーン部17,17は、軸直角断面において、楕円の長径部形状からなる接触部17aを周方向に2個備え、その頂部17cが後述するデフケース3側の対向円錐面と接触する。各接触部17aの中間の短径部(非接触部)17bは接触しない。
【0017】
一方、このコーン部17に対向するデフケース3の内周には、上記頂部17cの円錐母線に沿い、かつ軸直角断面が頂部17cに外接する円形である円錐面(動力伝達部)19,19が形成されている。こうして、デフケース3の円錐面19はコーン部17の頂部17c(円錐母線)と接触する。そして、その接触時に円錐面19は短径部17bとは接触しないので、円錐面19と短径部17bとの間に軸方向に延びる2つの三日月形柱状の隙間が生じ、この隙間が油路21となる。こうして、サイドギヤ11,13側のコーン部17とデフケース3側の円錐面19とがコーンクラッチ23を構成している。
【0018】
なお、上記とは逆にデフケース3側の軸直角断面を楕円に形成してもよく、その場合は楕円の短径部形状からなるデフース3側の短径部が接触部となってサイドギヤ11,13側と接触し、デフース3側の長径部が非接触部となる。
【0019】
サイドギヤ11,13の背面とデフケース3との間にはオイル通路25,25が設けられ、これらのオイル通路25,25はボス部5a,7a内周の油溝5c,7cと、コーンクラッチ23,23部の油路21と、デフケース3の開口5d,7dとを連通している。
【0020】
なお、サイドギヤ11,13の断面楕円形のコーン部17は、数値制御による旋削または鍛造等により形成することができる。
【0021】
つぎに、このコーンクラッチ23およびこれを備えたディファレンシャル装置1の作用を説明する。
【0022】
リングギヤを介してエンジンの駆動力がデフケース3に入力されると、駆動力はピニオンシャフト9、ピニオンギヤ15およびサイドギヤ11,13を経て左右の車軸に分配される。このとき、サイドギヤ11,13はピニオンギヤ15との噛み合いによりスラストを受けて車軸上を外方へ移動し、そのコーン部17がデフケース3の円錐面19に押圧される。左右の車軸間に駆動抵抗差がなければ、サイドギヤ11,13はピニオンギヤ15と共にデフケース3と一体に回転し、コーンクラッチ23は締結されている。
【0023】
左右の車軸間に駆動抵抗差が生じると、ピニオンギヤ15の自転によりサイドギヤ11,13間の相対回転が許容される。このとき、デフケース3は左右のサイドギヤ11,13の回転数の平均の回転数で回転するので、コーンクラッチ23に相対回転が生じ、コーン部17と円錐面19とが摺動する。そして、摩擦力がサイドギヤ11,13とデフケース3間の差動に抵抗するため、つまりサイドギヤ11,13間の差動に抵抗するため、左右のサイドギヤ11,13(左右の車軸)は差動回転しつつ差動制限を受ける。こうして、例えば悪路を走行する車両の一側の車輪(車軸)がスリップしても、他側の車輪ではコーンクラッチ23の摩擦抵抗による駆動力が付加され車両の走破性が向上される。
【0024】
上記のコーンクラッチ23の摺動時、コーン部17の頂部17cにはエッジ部がなく、また短径部17bとは滑らかに接続しているので、油路21中のオイルが頂部17c(摺動部)に入り易い。したがって潤滑が良好で、その摺動(差動制限作用)は安定している(図3参照)。また油路21への潤滑オイルの導入は、図1に示すように、ボス部5a,7aの油溝5c,7cからサイドギヤ背面のオイル通路25を経て、または開口5d,7dを経て容易に導入される。そして、摺動部を潤滑したオイルは、さらにピニオンギヤ15の噛み合い部およびその背面部を潤滑する。
【0025】
こうして本実施形態によれば、サイドギヤ11,13のコーン部17に油路21を形成しているので、前記従来例のような油溝の加工を行わなくとも、バリが初期になく、また作動後にも生じないため、コーンクラッチ23のかじりや焼き付きの恐れが解消される。
【0026】
また、コーン部17(三日月形柱状の油路21)の小径側から大径側への潤滑オイルの導入が容易である。さらに、コーン部17が楕円形状であるため、頂部17cは滑らかに摺接する。これらにより、潤滑オイルが油路21から頂部17cに入り込み易いため油膜が形成され易い。その結果コーンクラッチ23の耐焼き付き性が向上する。
【0027】
これにより、コーンクラッチ23の摩擦力が安定し、耐久性が向上すると共に、これを備えたディファレンシャル装置1の差動制限作用が安定し、耐久性が向上する。
【0028】
つぎに、本発明の第2実施形態を図4および図5により説明する。図4は本実施形態のコーンクラッチを備えたディファレンシャル装置101の全体断面図であり、図5は図4のサイドギヤのB−B矢視図である。
【0029】
本実施形態はコーンクラッチのコーン部の断面形状が上記第1実施形態と異なる。したがって、相違部以外の部材には上記第1実施形態と同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0030】
サイドギヤ(内側部材)111,113外周のコーン部(動力伝達部)117は、図4および図5に示すように、軸方向外方に円錐の頂点を有する円錐台状で、かつ軸直角断面が花びら状に形成されている。すなわち、コーン部117は、軸直角断面において円に内接し、かつその円の半径よりも小さい半径の円弧からなる接触部117aを周方向に5個放射状に備え、この接触部117aの頂部117c(最大径部)が後述するデフケース3の対向円錐面119と接触する。そして、各接触部117aの中間の凹部(非接触部)117bは接触しない。
【0031】
一方、この花びら状のコーン部117に対向するデフケース3の内周には、接触部117aの頂部117cの円錐母線に沿い、かつ軸直角断面が円形の円錐面119が形成されている。したがって、コーン部117の各頂部117c(各母線)がデフケース3の円錐面119と接触する。そして、接触時には、コーン部117の各凹部117bにおいては軸方向に延びる略三日月形柱状の隙間が生じ、この隙間が油路121となる。こうして、サイドギヤ111,113側のコーン部117とデフケース3側の円錐面119とがコーンクラッチ123を構成している。
【0032】
なお、上記とは逆に、デフケース3側を花びら状に形成してもよく、その場合には、デフケース3側の接触部の円弧は、円錐軸に向って凸の円弧となり、その頂部がサイドギヤ111,113側のコーン部と接触する。そして、隣接する頂部の中間部が非接触部となる。
【0033】
本実施形態の上記凹部117bは適当な曲率をもって連続する形状に形成してもよい。また、接触部117aの個数も5個に限定されるものではない。また、サイドギヤ111,113のコーン部117は、数値制御による旋削または鍛造等により形成することができる。
【0034】
このような構成により、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同等の作用・効果が得られるうえに、サイドギヤ111,113の接触部117aの数が増加しているので接触部の面圧が軽減され耐摩耗性が一層向上する。
【0035】
なお、上記いずれの実施形態でも、本発明のコーン部形状をサイドギヤ側に適用して例示したが、サイドギヤやデフケース以外の別部材に本発明のコーン部形状を適用し、コーンクラッチを構成してもよいことは勿論である。その場合、本発明の形状をプレス加工にて形成することも可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、コーンクラッチの接触部が楕円の一部形状からなるので、接触部にはエッジ部は生じない。また、各接触部の中間の非接触部が潤滑用油路としての役割を果たすので、コーンクラッチの耐焼き付き性が向上する。これにより接触部の摺動が安定し、コーンクラッチの耐久性が向上する。
【0037】
請求項2に記載の発明によれば、コーンクラッチの接触部が円弧からなる点のみが請求項1記載の発明と相違するので、請求項1記載の発明と同等の効果が得られる。
【0038】
請求項3に記載の発明によれば、差動を制限するコーンクラッチに請求項1または2記載の発明による効果が得られるので、ディファレンシャル装置の差動制限作用が安定し、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のディファレンシャル装置の全体断面図である。
【図2】図1のサイドギヤのA−A矢視図である。
【図3】第1実施形態のコーンクラッチの要部拡大図である。
【図4】第2実施形態のディファレンシャル装置の全体断面図である。
【図5】図4のサイドギヤのB−B矢視図である。
【図6】従来例の断面図である。
【符号の説明】
3 デフケース(外側部材)
9 ピニオンシャフト
11,13,111,113 サイドギヤ(内側部材)
15 ピニオンギヤ
17,117 コーン部(動力伝達部)
17a,117a 接触部
17b 短径部(非接触部)
17c,117c 頂部
19,119 デフケースの円錐面(動力伝達部)
21,121 三日月形柱状の油路
23,123 コーンクラッチ
117b 凹部(非接触部)

Claims (3)

  1. 内外各側の部材が円錐台形状の動力伝達部を有し、駆動側と従動側との間の動力伝達を断続するコーンクラッチであって、
    前記部材のうちの一側部材の動力伝達部が、円錐台の軸直角断面において楕円の一部形状からなる接触部を周方向に複数個備えると共に各接触部の中間に非接触部を備え、該接触部が他側部材の動力伝達部に摺動接触することを特徴とするコーンクラッチ。
  2. 内外各側の部材が円錐台形状の動力伝達部を有し、駆動側と従動側との間の動力伝達を断続するコーンクラッチであって、
    前記部材のうちの一側部材の動力伝達部が、円錐台の軸直角断面において円に接し、かつ該円の半径と異なる半径の円弧からなる接触部を周方向に複数個備えると共に各接触部の中間に非接触部を備え、該接触部が他側部材の動力伝達部に摺動接触することを特徴とするコーンクラッチ。
  3. エンジンの駆動力により回転駆動されるデフケ−スと、デフケ−スの回転を一対のサイドギヤを介して車軸側に分配する差動ギヤ機構と、デフケ−スとサイドギヤとの間に形成されサイドギヤの噛み合い反力を受けて摺動し前記差動ギヤ機構の差動を制限するコーンクラッチとを備えたディファレンシャル装置であって、
    前記コーンクラッチが、請求項1または2に記載のコーンクラッチであることを特徴とするディファレンシャル装置。
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