JP3693254B2 - 電気二重層コンデンサ用分極性電極の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状の電気二重層コンデンサ用分極性電極の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層コンデンサ(キャパシタ)は、大容量を有し、充放電サイクル特性にも優れていることから、自動車をはじめ、各種のバックアップ電源として使用が検討されている。自動車などのバックアップ電源として使用する場合には静電容量の大きなものが必要となるため、このような電気二重層コンデンサに用いられる分極性電極としては、長尺なシート状のものが必要となる。そこで、この種のシート状の分極性電極の製造方法として種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、次のような方法がある。活性炭に対して純水にイソプロピルアルコールを混合した水溶液を加え、ミキサを用いて混合し、この混合物にカーボンブラック及びフッ素樹脂を加え、ミキサを用いて混合することで混合物を得た。この混合物をニーダを用いて混練を行った。この混練物を乾燥させた後でミキサにより粒径2mm以下になるように粉砕し、この粉砕粒を調整された並行ロール間に供給する。得られたシート状成形体の平均厚みは約200μm、密度は0.70g/cm3とするものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−307964号公報(段落番号[0034])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の方法によると、原料が均一に分散され難く、混合不良が発生し易いという問題がある。混合工程で混合不良となると、混練工程を経ても原料が均一に分散されず、シート状に成形、圧延した状態で偏析(偏り)が発生しやすく、特に電極の引張り強度が低下し、その後の工程での不良発生を招いていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、原料の混合不良を極力防止でき、品質が安定したシート状の分極性電極を良好に製造することが可能な電気二重層コンデンサ用分極性電極の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、炭素質粉末、導電性助剤及びバインダを含む原料を混合、混練する工程を経て成形材料を作成した後、この成形材料を成形、圧延してシート状の電気二重層コンデンサ用分極性電極を製造する方法であって、前記原料の混合時に、前記炭素質粉末と前記導電性助剤とを一次混合した後、この一次混合物に前記バインダを添加して二次混合するようにしたことを特徴とする。
【0008】
原料の混合時に、まず、炭素質粉末と導電性助剤のみで一次混合することで、炭素質粉末と導電性助剤とが極力均一に分散されて混合される。この一次混合物に、バインダを添加して二次混合することにより、三者が極力均一に分散されて混合されるようになる。これにより、原料の混合不良を極力防止できる。この混合工程で混合が良好に行われることで、これ以降の混練や、成形、圧延などの工程も行い易くなり、偏析などが少ない、品質が安定したシート状の分極性電極を製造することが可能となる。
【0009】
ここで、分極性電極の原料のうち、炭素質粉末としては、主に活性炭が用いられるが、カーボンナノチューブ、繊維状炭素などを用いることもできる。導電性助剤としては、主にカーボンブラックが用いられる。バインダとしては、PTFEをはじめとするフッ素樹脂が好ましい。
【0010】
請求項2の発明は、二次混合する際に添加するバインダは、予めバインダ用助剤を添加して膨潤させたものを用いることを特徴とする。
これによれば、バインダは、予めバインダ用助剤を添加して優先的に膨潤させておくことにより繊維化しやすくなる。この状態のバインダを一次混合物に対して添加して二次混合することにより、バインダが繊維化し易くなるため、そのバインダにより、炭素質粉末と導電性助剤とが絡まり易くなり、混合を一層良好に行うことができる。
この場合、バインダ用助剤としては、IPA(イソプロピルアルコール)、エタノール、メタノールなどのアルコール類の他、エーテル類、ケトン類などが挙げられる。
【0011】
請求項3の発明は、原料を混練する際に、混練物と接触する部分を温度制御するようにしたことを特徴とする。
これによれば、常に同じ温度条件で混練を行うことができるため、混練を良好に行うことができると共に、シート状にした電極の密度、強度等の品質を一層安定させることができる。
ちなみに、混練時の温度を制御しない場合、混練の開始時には混練物と接触する部分の温度が低く、混練に伴い摩擦熱が発生する。特に、連続的に行う場合には、温度が高くなり易い。このような状態では、混練物の温度が不安定となるため、バインダの結着能力が低下して混練物の品質が不安定となり、ひいてはシート状とした場合も、シートの強度が低下して破断を引き起こす場合や、シートの緻密化を妨げるため密度の低下を招く場合がある。この点、請求項3の発明によれば、そのような不具合を確実に防止できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について図面も参照して説明する。
図1には、電気二重層コンデンサ用の電極シートを製造する際の製造工程が示されている。分極性電極を製造する際に使用する原料は、炭素質粉末として活性炭、導電性助剤としてカーボンブラック、バインダとしてPTFEの粉末、バインダ用助剤として液体状のIPA(イソプロピルアルコール)である。原料の配合割合は重量%で、活性炭を80%、カーボンブラックを10%、PTFEを10%とし、IPAは、PTFEと同重量の10%とする。
【0013】
まず、各原料の計量を行う。次に、活性炭とカーボンブラックをミキサの容器内に投入し、回転する撹拌羽根によりこれらを混合する一次混合を行う。これにより、活性炭とカーボンブラックとが極力均一に混合される。これを一次混合物という。この一次混合物の混合状態の模式図を、図2(a)に示す。同図中、塊状のものが活性炭1、この活性炭1より小さな粒状のものがカーボンブラック2である。
そして、予めPTFEとIPAとを混合してPTFEを膨潤させたものを、上記ミキサの容器内に投入し、これと上記一次混合物とを混合する二次混合を行う。これにより、図2(b)の模式図に示すように、活性炭1とカーボンブラック2とPTFE3とが混合されると共に、PTFE3が繊維化して活性炭1とカーボンブラック2とが絡められる。
【0014】
次に、二次混合された混合物を、図3に示す混練機(ニーダ)4の容器5内に収容し、蓋6をして加圧しながら、ブレード7を回転させることにより混練を行う。混練機4の容器5は、周囲部に空間部を形成するように二重壁となっていて、その二重壁の内側の壁に加熱用のヒータが設けられた構成となっている。容器5には、複数の温度センサ8が設けられている。
そして、混練機4が備えた制御装置により、上記温度センサ8の検出温度に基づき、混練物と接触する容器5及び蓋6、ブレード7の熱バインダを循環させることにより温度を制御する構成となっている。このとき、制御装置は、例えば90℃で一定となるように温度制御する。このような構成の混練機4により混練されると、混合物は粘土状に混練されると共に、PTFEが一層繊維化して活性炭とカーボンブラックとが絡められるようになる。
【0015】
次に、上記混練機4で混練された混練物をキザミ機によりきざんで細かい粒にする。次に、このきざまれた粒を分級する。これにより得られた粒が成形材料となる。
次に、カレンダ成形前処理工程において、ミキサの密閉された容器内に、上記成形材料を収容すると共に、原料(活性炭とカーボンブラックとPTFE)の合計重量に対して70%のIPAを添加して、これらを混合する。ミキサの容器は、ほぼ円筒状をなしていて、円周方向に回転されると共に、上下方向へ揺動されるようになっている。このミキサによる混合により、容器内に収容された粒状の成形材料と液体状のIPAとが極力均一となるように混合される。
【0016】
次に、カレンダ成形工程において、上記ミキサにより混合された成形材料の混合物を、カレンダ成形機のホッパに投入し、この混合物を2本のローラ間に通してシート状に成形する。成形されたシート状成形体は、巻取りローラにより巻き取る。このとき、シート状成形体の厚さは例えば200μmとする。
次に、ロール圧延工程において、上記シート状成形体を、2本のローラ間を通して圧延する。このロール圧延工程を複数回行うことにより、所定の厚さ例えば160μmのシート状電極が形成され、このシート状電極が分極性電極となる。
このロール圧延の最終工程において、シート状電極の幅方向の両端部をカッタにより切断する。
【0017】
次に、ラミネート工程において、圧延された上記シート状電極を、集電極となるアルミ箔に貼り合わせる。貼り合わせられた電極シートは、巻取りローラに巻き取る。
次に、乾燥工程において、シート状電極に含まれていた水分及びIPAの残り分が除去される。尚、必要により真空乾燥を行うこともできる。
【0018】
上記した実施例においては、原料の混合時に、まず、炭素質粉末としての活性炭1と導電性助剤となるカーボンブラック2のみで一次混合することで、これら活性炭1とカーボンブラック2とを極力均一に混合することができる。そして、この一次混合物に、予めバインダ用助剤となるIPAを添加して膨潤させた、バインダとなるPTFE3を添加して二次混合することにより、活性炭1とカーボンブラック2とPTFE3の三者が極力均一に分散されて混合が良好に行われるようになる。これにより、原料の混合不良を極力防止できるようになる。この混合工程で混合が良好に行われることで、これ以降の混練や、成形、圧延などの工程における加工性も向上し、偏析などが少なく強度、密度が安定したシート状電極を製造することが可能となる。
【0019】
しかも、このとき添加するPTFE3は、予めIPAを添加して優先的に膨潤させておくことにより繊維化し易くなるため、このPTFE3により活性炭1とカーボンブラック1とが絡まり易くなり、混合を一層良好に行うことができる。
【0020】
また、二次混合した混合物を混練機4により混練する際に、その混練物と接触する部分である、容器5、蓋6、並びにブレード7を温度制御するようにしたので、常に同じ温度条件で混練を行うことができ、混練を良好に行うことができると共に、バインダの結着性、均一性を一層高めることができ、ひいては、一層強度、密度が安定したシート状電極を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示すもので、電気二重層コンデンサ用の電極シートを製造する際の製造工程を説明する図
【図2】 (a)は一次混合した後の状態での模式図、(b)は二次混合した後の状態での模式図
【図3】 混練機の断面図
【符号の説明】
1は活性炭(炭素質粉末)、2はカーボンブラック(導電性助剤)、3はPTFE(バインダ)、4は混練機、5は容器、6は蓋、7はブレード、8は温度センサを示す。
Claims (3)
- 炭素質粉末、導電性助剤及びバインダを含む原料を混合、混練する工程を経て成形材料を作成した後、この成形材料を成形、圧延してシート状の電気二重層コンデンサ用分極性電極を製造する方法であって、
前記原料の混合時に、前記炭素質粉末と前記導電性助剤とを一次混合した後、この一次混合物に前記バインダを添加して二次混合するようにしたことを特徴とする電気二重層コンデンサ用分極性電極の製造方法。 - 前記二次混合する際に添加するバインダは、予めバインダ用助剤を添加して膨潤させたものを用いることを特徴とする請求項1記載の電気二重層コンデンサ用分極性電極の製造方法。
- 前記原料を混練する際に、混練物と接触する部分を温度制御するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の電気二重層コンデンサ用分極性電極の製造方法。
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