JP3692983B2 - 蛍光測定方法及び蛍光測定装置 - Google Patents

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    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N21/00Investigating or analysing materials by the use of optical means, i.e. using sub-millimetre waves, infrared, visible or ultraviolet light
    • G01N21/62Systems in which the material investigated is excited whereby it emits light or causes a change in wavelength of the incident light
    • G01N21/63Systems in which the material investigated is excited whereby it emits light or causes a change in wavelength of the incident light optically excited
    • G01N21/64Fluorescence; Phosphorescence
    • G01N21/645Specially adapted constructive features of fluorimeters
    • G01N21/6456Spatial resolved fluorescence measurements; Imaging

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,核酸,蛋白質等の生体高分子の分析に用いる電気泳動装置及び電気泳動方法に使用される蛍光測定方法及びに蛍光測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ励起により蛍光を検出する電気泳動方法は,高感度と簡便さから,核酸や蛋白質等の生体高分子を分析するための基本的な技術の一つとして広く用いられている。近年,生体高分子分析の分野では,主流であったスラブゲル電気泳動に変わり,泳動時に発生するジュール熱が少ないため高電圧が使用でき,その結果,より短時間で分析できるキャピラリー電気泳動が普及しつつある。電気泳動路の長さは一般的に50cm〜20cmであるが,分析時間の短縮と,分析システムの小型化のため,泳動路を短縮するため様々な技術が開発されている。
【0003】
フォトリソグラフィーの技術を応用して基板上にキャピラリー状の流路を形成し,その流路で電気泳動することにより,泳動路長0.75cm〜2.2cmで複数の蛍光標識がなされたアミノ酸を分離する方法が,Science,261,895-897(1993)(従来技術−1)に記載されている。
【0004】
単分子検出が行われる条件下では,実質的な泳動路長0.25mmで数種類のデオキシリボ核酸(DNA)が分離可能であることが,Anal. Chem.,67,31813186(1995)(従来技術−2)に記載されている。
【0005】
700μmの周期で配置される300μmの幅をもつ55個の検出スリットを介して,泳動路を泳動する試料から発する蛍光を経時的に検出して,蛍光強度のフーリエ変換により,試料の速度を測定する方法が,Anal. Chem.,71,21302138(1999)(従来技術−3)に記載されている。
【0006】
蛍光物質を含む試料中に励起光の干渉縞を形成し,蛍光物質から放射された蛍光のゆらぎの相関関数を測定することにより,試料の流速を求める方法(蛍光相関法(FCS:Fluorescence correlations)と呼ばれる手法の1種)が特開昭53−40586号公報(従来技術−4)に記載されている。
【0007】
従来技術1と同様の構成で泳動路長を5mmに短縮した時,理論段数が5800となることが,Anal. Chem.,65,2637-2642(1993)(従来技術−5)に記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
一般的な条件での従来技術の電気泳動では,電気泳動路の試料注入端に注入した試料のバンド幅により,試料の泳動分離が制限され,mmオーダーの泳動路長で,移動度が近接した試料に対して良好な分離を得るのは難しいという課題があった。実際に,従来技術−1では,泳動路長2.2cmでは移動度の差が10%以下の試料を分離しているが,泳動路長0.75cmでは移動度の差が20%以上の試料しか分離できていない。
【0009】
従来技術−3に於いても,検出スリットの周期は,注入した試料のバンド幅によって制限され,無制限に小さくできず,検出スリットの個数もまた,分離性能を左右するため任意に減らせないという課題がある。従来技術−3での検出スリットの周期は0.7mm,検出スリットの個数は55であり,実質的な泳動長は約4cmであり,従来技術−1での泳動路長より長くなっている。
【0010】
従来技術−1,3では狭いバンド幅で試料を注入するため,基板上に流路を2本以上形成し,十字に交差させる必要があった。
【0011】
また,これまで従来技術−4に記載される技術の電気泳動分野への利用は検討されたことがない。本発明では,従来技術4に記載される技術を改良してこれを電気泳動に適用することを検討した。
【0012】
本発明の目的は,上記課題を解決し,電気泳動路の試料注入端に注入した試料のバンド幅に制限されずに,mmオーダーの泳動路長で,異なる移動度を持つ複数種類の試料を良好に分離検出できる蛍光測定方法及び蛍光測定装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の蛍光測定方法では,試料を電気泳動し,泳動路で試料を検出する検出領域の全体に連続して分布させて,検出領域に試料の泳動方向(電場の方向)に,試料分子のサイズより大きな周期で,周期的に変化する強度分布をもつ励起光を照射するか,または,検出領域と蛍光を検出する検出器との間に,試料分子のサイズより大きな周期で,周期的に透過率分布をもつスリットを配置して,検出領域で試料から発生する蛍光のゆらぎのパワースペクトルを求める。あるいは,蛍光を検出する検出器としてアレイ状のセンサを使用して,検出領域から発生する蛍光の泳動方向での分布を測定し,アレイ状のセンサの各検出素子で検出された蛍光の強度と所定の周期関数との積和を求め,積和のパワースペクトルを求める。
発明の原理の説明
まず,本発明の原理を以下に説明する。単色の励起光で照射される1種類の蛍光体で標識された試料を想定し,励起光により試料から発生する蛍光を光電子増倍管(photomultiplier,PM)で検出することを考える。PMの出力電流i(t)は,位置rベクトル=r(x,y,z),時刻tに於ける試料のモル濃度C(r,t)と,位置rに於ける励起光強度と位置rにある試料から発生する蛍光がPMの光電面に集光される効率との積I(r)を用いて,(数1)により表される。
【0014】
【数1】
Figure 0003692983
dr=dxdydz,εは試料のモル吸光係数,Qは試料の蛍光量子収率,hはプランク定数,cは光速,λは励起光の波長,ηはPMの量子効率,eは電気素量,gはPMの電流増倍率である。g=1とすることにより,(数1)はフォトダイオードにも適用できる。FCS(Fluorescence correlations:蛍光相関法)は,試料の濃度分布が熱平衡状態にある時のi(t)のゆらぎδi(t)=i(t)−〈i(t)〉の解析に基づいている。なお,〈X(t)〉はX(t)のアンサンブル平均を表す。ゆらぎδi(t)の時間依存性を表す基本量である,規格化された自己相関関数G(t)を(数2)により定義する。
【0015】
【数2】
G(t)=〈δi(0)δi(t)〉/〈(δi(t))〉 …(数2)
更に,δi(t)を周波数領域で解析するため,δi(t)の規格化されたパワースペクトルS(ν)をδi(t)/〈(δi(t))1/2のパワースペクトル(より詳しくは片側パワースペクトル)として定義する。Wiener-Khintchineの定理により,S(ν)は(数3)により表される。積分∫の下限は0,上限は∞である。
【0016】
【数3】
S(ν)=4∫G(t)cos(2πνt)dt …(数3)
以下では,I(r)として,(数4)で表されるように,x軸方向に幅L(e−2幅)のガウス状包絡線を持ち,周期pで正弦的に振動し,y,z方向にそれぞれ幅W(e−2幅),H(e−2幅)のガウス状プロファイルを持つ分布を考える。但し,(数5)の条件を満足するものとする。
【0017】
【数4】
Figure 0003692983
【0018】
【数5】
1μm<p《L,W,H …(数5)
このようなI(r)は,例えば,光軸をxy平面上に置くy軸に関して対称な2本の楕円ガウシアンビームを,原点近傍に置かれた試料セル内で交錯させて干渉縞を形成し,z軸方向からy方向にガウシアンの透過率プロファイルを持つスリットを介して蛍光を検出することにより実現できる。試料がx軸方向に一様な速度Vで動いており,試料の並進拡散係数Dに対して(数6)が満たされる場合には,(数4)のI(r)に対するG(t)は,(数7)によりで与えられる。なお,(数7)導出の詳細は後述する。
【0019】
【数6】
D≪VL/4 …(数6)
【0020】
【数7】
Figure 0003692983
(数7)の右辺の第1項が示すように,G(t)は試料の速度Vに比例した周波数V/pで振動する成分を持つ。従って,パワースペクトルS(ν)は試料の速度に比例した周波数のピークを持つことになる。もし試料の速度Vが電気泳動に由来するものであれば,S(ν)のグラフは従来の電気泳動図に相当する。
【0021】
図1は,本発明の原理を説明する模式図である。試料1−1〜1−Nは泳動媒体(バッファ溶液,ゲル,高分子等)で満たされた電気泳動路2の検出領域全体にわたって分布しており,電源3と泳動媒体に接する電極4,5によって所定の速度Vで電気泳動される。検出領域は試料の泳動方向に周期pで強度が変化する励起光6で照射され,励起光により試料から発生する蛍光は,検出器7で検出され,検出器7の出力電流のゆらぎδi(t)はスペクトル解析装置8により解析され,求められたスペクトルが表示される。
【0022】
なお,(数4)のような周期的に変化するI(r)を近似的に実現する代表的な方法は,大別して次の3通りである。
(1)図1に示すように,干渉縞等により励起光の強度分布に周期的な変化を与える。
(2)検出領域と検出器の間に透過率が周期的に変化するスリットを設け,このスリットを介して試料から発生する蛍光を検出する。
(3)蛍光を検出する検出器としてイメージセンサを用い,蛍光強度の分布を時間的・空間的に分解して計測してC(r,t)を求めて,周期的に変化するI(r)に対する(数1)の右辺を計算する。
本発明に於ける分離効率の説明
異なる速度で移動する複数種類の試料を含む場合,PMの出力電流及びそのゆらぎは各試料に由来する光電流とそのゆらぎの和となる。試料は十分希薄で試料間の相互作用は無視できるとすれば,ゆらぎの和のパワースペクトルもまた,各試料に由来するゆらぎのパワースペクトルの和となる。従って,適切な条件下では,S(ν)のグラフ上で,試料の種類と同数の異なる中心周波数を持つピークを分離して検出できる。以下では,本発明の方法による試料の分離効率について考察する。そのため分離効率を表す指標である理論段数(number of theoretical plate,NTP)を導入する。NTPを,S(ν)のV/pに位置するピークの半値全幅(full width at half maximum,FWHM)を用いて,(数8)により定義する。
【0023】
【数8】
NTP=(8ln2){V/(p×FWHM)} …(数8)
(数7)から明らかなように,S(ν)はガウシアンとローレンチアンの畳み込みとなるため,FWHMを解析的に表現することは難しい。そこで,まずコヒーレンス時間τを,(数7)の右辺の第1項の振動部分の振幅がe−1になる時間として定義し,同一のコヒーレンス時間を持つ純粋なガウシアンのフーリエ変換でS(ν)を近似する。この近似によれば,NTPは(数9)となる。pは(数10)により定義する。
【0024】
【数9】
Figure 0003692983
【0025】
【数10】
=π(DL/V)1/2 …(数10)
図2(A)に示す曲線は,(NTP)1/2/(L/p)をp/pの関数として示す。この曲線から,p以外のパラメータが固定された条件で良い分離を得るには,p≒pとするのが望ましく,(p/p)=31/4の時,分離効率は最大となる。
【0026】
例えば,L=1mm,p=p=10μmとすると,(数9)より,NTP≒(L/p/1.18となるので,NTP≒8470に達し,従来技術−5に於いて5mmの泳動路長で得られている理論段数5800の約1.5倍となる。
【0027】
一般に,等しいFWHMをもつ2つのピークに対して,ピークの中心間の距離がFWHM/(2ln2)1/2より大である時,2つのピークはほとんど完全に分離していると定義されている。μAVを2つの試料の移動度の平均値,Δμを2つの試料の移動度の差とする時,異なる移動度をもつ2種類の試料に対して,ほぼ完全な分離を得る条件は,(数11)により表される。例えば,Δμ/μAV=0.1の場合,NTP≧3600を満たす必要がある。
【0028】
【数11】
NTP≧36(μAV/Δμ) …(数11)
本発明に於ける信号対雑音比の説明
次に,本発明の方法に於ける信号対雑音比(signal to noise ratio,SNR)について考察する。検出される試料の分子数の平均をNとすると,(数12)が成り立つ。
【0029】
【数12】
〈{δi(t)}〉=〈{i(t)}〉/N …(数12)
PMの出力電流は,そのパワースペクトルを求めるため,多数の異なった中心周波数を持つ透過帯域幅Δνのバンドパスフィルタに入力される(現在では,実際にはデータの標本化と離散フーリエ変換がこのようなマルチフィルタの役目を果たす)。中心周波数νのフィルタが出力する信号電流i(t)の2乗平均値は(数13)となる。《{X(t)}》はX(t)の2乗平均値を表わすものとする。
【0030】
【数13】
《i(t)》=〈{δi(t)}〉S(ν)Δν …(数13)
また,ショット雑音電流iNS(t)と熱雑音電流iNT(t)の2乗平均値はそれぞれ,(数14),(数15)となる。eは電気素量,i(t)はPMの暗電流と蛍光以外の背景光によって誘起される光電流の和,kはボルツマン定数,Tは絶対温度,Rはフィルタ出力に接続される負荷抵抗である。(数13)〜(数15)より,SNRは(数16)となる。
【0031】
【数14】
Figure 0003692983
【0032】
【数15】
《{iNT(t)}》=4kTR−1Δν …(数15)
【0033】
【数16】
Figure 0003692983
《{iNS(t)}》≫《{iNT(t)}》,かつ,〈i(t)〉≫〈i(t)〉と仮定し,(数12)の関係を用いると,(数17)が得られる。iは(数18)により定義する。iは,1種類の試料による蛍光によってPMの陰極に誘起される光電流である。
【0034】
【数17】
SNR=S(ν)i/(2e) …(数17)
【0035】
【数18】
=〈i(t)〉/(gN) …(数18)
(数18)から,Nが十分大きい極限ではSNRはNによらず一定であり,その値は単一分子あたりの光電流で決まる。また,分離効率を評価した時と同様の近似を行うと,S(ν)のν>0に於ける極大値SMAX≒S(V/p)は,(数19)により表される。
【0036】
【数19】
Figure 0003692983
図2(B)に示す曲線は,{π1/2L/(6V)}で規格化したSmaxのp/pに対する依存性を示す。SNRの点からはp≧pが望ましい。従って,分離効率及びSNRを両立させる最も好適な条件として,(数20)が得られる。
【0037】
【数20】
p≒p …(数20)
図2(A),図2(B)から,分離効率及びSNRを極端に劣化させることなく,種類の異なる試料を分離して検出するためには,1≦p/p≦5を満たす必要がある。
(数7)の導出の詳細な説明
以下,(数7)の導出の詳細な説明を行なう。位置ベクトルr=r(x,y,z),dr=dxdydz,ベクトル変数q=q(q,q,q),dq=dqdqdqとして,I(r)の空間フーリエ変換を(数21)に示すI(q),(数22)に示す濃度のゆらぎδC(r,t)の空間フーリエ変換の相関関数を(数23)に示すF(q,t)とすると,(数24)が成り立つ。(数21),(数22)に於いて,jは虚数単位である。
【0038】
【数21】
I(q)=∫I(r)exp(jq・r)dr …(数21)
【0039】
【数22】
δC(q,t)=∫δC(r,t)exp(jq・r)dr …(数22)
【0040】
【数23】
F(q,t)=〈δC(q,0)δC(q,t)〉 …(数23)
【0041】
【数24】
Figure 0003692983
以下では,計算の見通しを良くするため,k=2π/p,σ=L/4,σ=W/4,σ=H/4,τ=σ/D(i=x,y,z)とおく。(数7)のI(r)に対しては,(数25),(数26)とおくことにより,I(q)は(数27)により表される。
【0042】
【数25】
Figure 0003692983
【0043】
【数26】
Figure 0003692983
【0044】
【数27】
I(q)=I(q)I(q)I(q) …(数27)
また,jを虚数単位として,(数28)のように定義すると,F(q,t)は(数29)となる。
【0045】
【数28】
(q,t)=exp(jqVt−q Dt),
(q,t)=exp(−q Dt)(i=y,z) …(数28)
【0046】
【数29】
F(q,t)=
F(q,0)F(q,t)F(q,t)F(q,t) …(数29)
(数5)より│q│>10であるqに対しては,(数25),(数26)よりI(q)はほとんど0となる。一方,│q│>10であるqに対しては,相転移近傍を除き,F(q,0)はqによらず一定と見なせる。そこで,G(t)を(数30)とおけば,G(t)は(数31)となる。
【0047】
【数30】
Figure 0003692983
【0048】
【数31】
G(t)=G(t)G(t)G(t) …(数31)
(数25)より,│I(q)│は(数32)となるが,σk≫1なので,大括弧[ ]内は最初の3項以外は無視できる。そこで,積分∫の下限を−∞,上限を+∞とし,jを虚数単位として,B(k,t)を(数33)のように定義すると,(数30)と(数32)とから,G(t)は(数34)となる。
【0049】
【数32】
Figure 0003692983
…(数32)
【0050】
【数33】
Figure 0003692983
【0051】
【数34】
Figure 0003692983
(数4)よりσ≪V/τなので,(数33)は,(数35)のように近似できる。jは虚数単位である。
【0052】
【数35】
B(k,t)=π1/2σ −1×exp[jkVt−kDt−{Vt/(2σ)}]…(数35)
(数34)と(数35)より,G(t)は(数36)となる。
【0053】
【数36】
Figure 0003692983
(数36)の右辺と,(数7)の右辺は同一である。一方,G(t),G(t)は(数26),(数28),及び(数30)より直ちに求められ,G(t)は(数37)により表されるが,(数5)より1/(kD)≪τ(i=y,z)なので,G(t)が0に減衰する前のtに対しては,G(t),G(t)は1と見なせる。従って,(数31)及び(数36)から(数7)を得ることができる。
【0054】
【数37】
(t)={(1+(t/τ)}−1/2(i=y,z) …(数37)
【0055】
【発明の実施の形態】
本発明の蛍光測定方法の第1の構成では,荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させて,試料の泳動方向で周期的に変化する強度分布を与えた励起光を,試料の濃度分布が熱平衡状態にあり,試料が泳動媒体中に連続して分布する領域に照射し,試料から発生する蛍光を検出し,蛍光の強度のゆらぎのパワースペクトルを求める。上記強度分布は,単一の光源から放射された励起光を分割して2つの光束とし,2つの光束を上記領域で交錯させて干渉させて生成する,あるいは,励起光を照射する角度方向を所定の周波数で周期的に走査し,所定の周波数の整数倍の周波数で励起光を点滅させて生成する。試料の並進拡散係数をD,試料の泳動速度をV,試料の泳動方向での励起光が照射される領域の長さをL,励起光の強度分布の周期をpとする時,p≒π(DL/V)1/2とする。
【0056】
本発明の蛍光測定方法の第2の構成では,荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させて,励起光を,試料の濃度分布が熱平衡状態にあり,試料が泳動媒体中に連続して分布する領域に照射し,試料から発生する蛍光による蛍光像を,試料の泳動方向で周期的に変化する透過率分布を持つスリット上に結像して蛍光像を検出し,蛍光の強度のゆらぎのパワースペクトルを求める。試料の並進拡散係数をD,試料の泳動速度をV,試料の泳動方向での励起光が照射される領域の長さをL,蛍光像を検出する倍率をM,スリットの透過率分布の周期をpとする時,p≒πM(DL/V)1/2とする。
【0057】
本発明の蛍光測定方法の第3の構成では,荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させて,励起光を,試料の濃度分布が熱平衡状態にあり,試料が泳動媒体中に連続して分布する領域に照射し,試料から発生する蛍光による蛍光像を,試料の泳動方向に配列される複数個(Nとする)の光電変換素子を具備するアレイセンサにより検出し,泳動方向に配列される光電変換素子のi番目の光電変換素子で検出される蛍光強度をqとし,Kを絶対値1を含む定数として,変数iを変数とする所定の周期関数をf(Ki)とする時,i=1,2,…,Nに対する積和Q=Σqf(Ki)を求め,Qのパワースペクトルを求める。試料の並進拡散係数をD,試料の泳動速度をV,試料の泳動方向での励起光が照射される領域の長さをL,光電変換素子が配列されるピッチをp,蛍光像を検出する倍率をM,所定の周期関数f(Ki)の周期をpとする時,p≒πM(DL/V)1/2とする。試料を電気泳動する複数の電気泳動路のそれぞれの少なくとも一部を同一の平面上に平行に配置し,各電気泳動路が平行に並ぶ部分で,上記平面に平行又は垂直な方向から励起光を電気泳動路に垂直に照射する。
【0058】
本発明の蛍光測定装置の第1の構成では,荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させる電気泳動路と,励起光を発生する光源と,試料の泳動方向で周期的に変化する強度分布を与えた励起光を,試料の濃度分布が熱平衡状態にあり,試料が泳動媒体中に連続して分布する領域に照射して,試料から発生する蛍光を検出する手段とを有する。蛍光の強度のゆらぎのパワースペクトルは演算装置により求める。単一の光源から放射された励起光を分割して2つの光束とする分割手段を具備し,2つの光束を上記領域で交錯させて干渉させて上記強度分布を生成する,または励起光を照射する角度方向を所定の周波数で周期的に走査する手段と,所定の周波数の整数倍の周波数で励起光を点滅させる手段とによって上記強度分布を生成する,あるいは,励起光を照射する角度方向を所定の周波数で周期的に走査する手段と,所定の周波数の整数倍の周波数で励起光の強度の強弱を変化させる手段とによって上記強度分布を生成する。試料の並進拡散係数をD,試料の泳動速度をV,試料の泳動方向での励起光が照射される領域の長さをL,励起光の強度分布の周期をpとする時,p≒π(DL/V)1/2とする。
【0059】
本発明の蛍光測定装置の第2の構成では,荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させる電気泳動路と,試料の濃度分布が熱平衡状態にあり,試料が泳動媒体中に連続して分布する領域に照射する励起光を発生する光源と,試料から発生する蛍光による蛍光像を,試料の泳動方向で周期的に変化する透過率分布を持つスリット上に結像するレンズと,蛍光像を検出する検出器とを有し,スリットが領域と検出器との間に配置される。蛍光の強度のゆらぎのパワースペクトルは演算装置により求められる。試料の並進拡散係数をD,試料の泳動速度をV,試料の泳動方向での励起光が照射される領域の長さをL,レンズの倍率をM,スリットの透過率分布の周期をpとする時,p≒πM(DL/V)1/2とする。
【0060】
本発明の蛍光測定装置の第3の構成では,荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させる電気泳動路と,試料の濃度分布が熱平衡状態にあり,試料が泳動媒体中に連続して分布する領域に照射する励起光を発生する光源と,試料の泳動方向に配列される複数個(Nとする)の光電変換素子を具備し,試料から発生する蛍光による蛍光像を検出するアレイセンサと,泳動方向に配列される光電変換素子のi番目の光電変換素子で検出される蛍光強度をqとし,Kを絶対値1を含む定数として,変数iを変数とする所定の周期関数をf(Ki)とする時,i=1,2,…,Nに対する積和Q=Σqf(Ki)を求め,Qのパワースペクトルを求める演算装置とを有する。試料の並進拡散係数をD,試料の泳動速度をV,試料の泳動方向での励起光が照射される領域の長さをL,光電変換素子が配列されるピッチをp,蛍光像を検出する倍率をM,所定の周期関数f(Ki)の周期をpとする時,p≒πM(DL/V)1/2とする。複数の電気泳動路を具備し,各電気泳動路の少なくとも一部を同一の平面上に平行に配置し,各電気泳動路が平行に並ぶ部分で,上記平面に平行又は垂直な方向から励起光を各電気泳動路に垂直に照射する。
【0061】
本発明の蛍光測定装置の第4,第5の構成では,荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させる各電気泳動路の少なくとも一部が同一の平面上に平行に配置される複数の電気泳動路と,試料の濃度分布が熱平衡状態にあり,試料が泳動媒体中に連続して分布する領域に照射する励起光を発生する光源とを具備する。
【0062】
本発明の蛍光測定装置の第4の構成では,さらに,試料の泳動方向に配列される複数個(Nとする)の光電変換素子を具備し,各電気泳動路が平行に並ぶ部分で,上記平面に平行又は垂直な方向から励起光を各電気泳動路に垂直に照射して,試料から発生する蛍光による蛍光像を検出する2次元検出器と,泳動方向に配列される光電変換素子のi番目の光電変換素子で検出される蛍光強度をqとし,Kを絶対値1を含む定数として,変数iを変数とする所定の周期関数をf(Ki)とする時,i=1,2,…,Nに対する積和Q=Σqf(Ki)を求め,Qのパワースペクトルを求める演算装置とを有する。
【0063】
本発明の蛍光測定装置の第5の構成では,さらに,試料の泳動方向に配列したN(N≧2)個の光電変換素子で構成されたアレイを,試料の泳動方向に直交する方向にN(N≧2)列並べて構成され,各電気泳動路が平行に並ぶ部分で,上記平面に平行又は垂直な方向から励起光を各電気泳動路に垂直に照射して,試料から発生する蛍光による蛍光像を検出する2次元検出器と,蛍光像を光電変換素子の面に結像するレンズと,光電変換素子の2次元配列の試料の泳動方向でi番目にあり,光電変換素子の2次元配列の試料の泳動方向と直交する方向でj番目にある光電変換素子により検出される蛍光強度をqijとし,Kを絶対値1を含む定数,変数iを変数とする所定の周期関数f(Ki)とする時,1≦n<n≦Nを満たす整数n,nに対し,1≦i≦N,n≦j≦nを満たすi,jに対する積和Q=Σqijを求め,Qのパワースペクトルを求める演算装置とを有する。
【0064】
本発明の構成によれば,蛍光強度の測定のみから試料の泳動速度を測定でき,従来の電気泳動で必要とされる試料注入点から試料検出点までの長い距離での,試料の泳動が不要となり,電気泳動路の試料注入端に注入した試料のバンド幅に起因する泳動分離の低下も起こらないため,泳動路長の著しい短縮が期待できる。
【0065】
本発明の蛍光測定方法及び蛍光測定装置は,DNA,RNA等の核酸又は核酸断片,アミノ酸,蛋白質等の荷電をもつ生体分子の分析,荷電をもつ蛍光色素等の分子を結合させた糖等の中性分子の分析を行なう電気泳動方法及び電気泳動装置に好適に適用される。
(第1の実施例)
図3は本発明の第1の実施例の蛍光測定装置の外観図である。装置本体9は直方体の形状をしており,その内部は点線で示される隔壁13によって2つの領域に分離される。扉12を含む領域(試料室)には,試料,電気泳動路,泳動媒体が置かれ,温度調節がなされる。他方の領域には,光源,光源の電源,コンピュータとの通信を制御するユニット,モーターのコントローラ等が設置され,光源から発生した熱は排気孔14から放熱される。装置本体9はパーソナルコンピュータ10と接続ケーブル11を介して接続され,ケーブル11を介して装置本体の制御とデータの通信が行われる。データはパーソナルコンピュータ10内部のプロセッサにより解析され,解析結果はディスプレイに表示される。第1の実施例の詳細な説明を行うため,図3に示すように装置本体の各辺に平行な座標軸を持つxyz座標系を用いる。yz平面は,励起光束の光軸及び電気泳動路の中心軸を含む面に平行である。
【0066】
図4は第1の実施例の装置本体9の,yz平面に平行で励起光束の光軸を通る断面を,x軸方向から見た図である。光源15は波長488nm,出力10mWのアルゴンイオンレーザである。光源15からの光を,波長488±10nmの光だけを通すフィルタ17を透過させて,フィルタの透過光18が試料の励起光として用いられる。フィルタ17はホルダー16によって光源15に取付けられる。励起光18はビームスプリッター19によって強度比1:1で振幅分割され,ビームスプリッターの透過光21はミラー22で反射されてビームスプリッターによる反射光20と電気泳動路2の位置で交わり,干渉縞を形成する。電気泳動路は角型石英製キャピラリーの内部に形成され,電気泳動路の断面形状は,内周が一辺75μmの正方形,外周が一辺350μmの正方形である。電気泳動路の全長は30mmであり,キャピラリーは泳動方向がz軸となるよう設置される。
【0067】
キャピラリーの下端から励起光の照射点,即ち,蛍光の検出点(検出領域)までは10mmである。反射光20と透過光21の径を,電気泳動路を効率良く照射するよう円筒面レンズ23により,光束の電気泳動路に直交する方向(x方向)で絞る。光源15は直径(e−2直径)1mmの平行光束を出力する。円筒面レンズの焦点距離は50mmである。電気泳動路上での励起光束の断面の強度分布は,直径(e−2直径)が,z方向で1mm,x方向で50μmの楕円状ガウシアンである。また,電気泳動路に照射される励起光のパワーは,フィルタ,レンズ等の損失により,7mWとなる。
【0068】
キャピラリー2の下端は,所定の濃度の試料24に浸かっており,試料24を介して電極4に接続される。キャピラリーの上端は分岐ブロック25を介して泳動媒体で満たされたシリンジ26に接続される。シリンジ26がステッピングモーターを組み込んだ自動直進ステージ28で押されることにより,シリンジ内の泳動媒体がキャピラリー内に充填される。シリンジ26と自動直進ステージ28の間には圧力センサ27が設けられており,モーターのコントローラが泳動媒体のキャピラリー内への充填時の圧力をモニタしてフィードバックすることにより,所定の一定圧力を保ちつつ泳動媒体がキャピラリー2に充填される。キャピラリーの全長が30mmと非常に短いため,1kgfの圧力で20秒間充填することにより,泳動媒体が3%のポリアクリルアミド水溶液である場合,キャピラリ内容積の8倍以上に相当する量の泳動媒体を充填できる。以下の説明では,キャピラリー下端を試料注入端,キャピラリー上端を泳動媒体注入端と呼ぶ。
【0069】
図5は第1の実施例の装置本体9の,xz平面に平行で励起光束21の光軸を通る断面を,y軸の負方向から見た図である。光源15は鉛直下向きに光を出力するようブラケット29に取付けられる。ビームスプリッター19は,直進ステージ31−aに搭載される回転ステージ32−aにマウントされ,ミラー22は,直進ステージ31−bに搭載される回転ステージ32−bにマウントされており,ビームスプリッター19とミラー22の位置と角度を微調整できる。ビームスプリッターの反射光20の光軸と,ビームスプリッター19の透過光21のミラー22による反射光の光軸とがなす角の2等分線が,泳動路2と垂直になるように,ビームスプリッター19とミラー22の位置と角度が調整される。この状態で,キャピラリー及び泳動媒体の屈折率によらず,電気泳動路上での干渉縞の周期pが,(数38)で与えられる。
【0070】
【数38】
p=λ/(2sin(θ/2)) …(数38)
θはビームスプリッターの反射光20の光軸と,ビームスプリッター19の透過光21のミラー22による反射光の光軸とが,空気中でなす角度である。第1の実施例ではθを1.5°〜6°の範囲の任意の値に設定でき,その結果,pは約5μm〜20μmの範囲で連続的に設定できる。光源15で発生した熱はファン30により放熱される。
【0071】
図6は装置本体9の試料室内を,扉12を開いて前方(y軸方向)から見た図である。試料室は,装置本体の外壁33と装置内部の隔壁13により囲まれており,内部には送風機46による風が常に循環し,温度が一様に保持される。
【0072】
試料の分析が開始すると,ヒーター47と温度センサ48により,風の温度はパーソナルコンピュータ上で設定された値に制御される。温度センサ48は白金測温抵抗体である。分岐ブロック25はシリンジ26とキャピラリー2をフェラル34を介して接続するだけでなく,中央部のT字分岐によって,チューブ36とニップル35−a,35−bを介して,バッファータンク37とキャピラリー2の泳動媒体注入端を接続する。バッファータンク内は泳動用のバッファーで満たされており,電極5がバッファーに浸るように,バッファータンクを設ける。電極5に正の高圧が印加され試料の注入と泳動が行われる。第1の実施例で用いた泳動用バッファーは,89mMのTris,89mMのホウ酸,1mMのEDTAの組成を持つTBEである。
【0073】
なお,第1の実施例では負イオンであるデオキシリボ核酸(DNA)を主な分析対象としているため,試料注入端の電極4に対して泳動媒体注入端に接続された電極5の電位を正としているが,正に帯電した試料を分析する場合は,電圧の極性を逆にすれば良い。
【0074】
バッファータンク内の流路はソレノイド39に固定されたピストン38によって開閉が制御され,泳動媒体注入時には流路が閉じられ,泳動時は開かれる。分析される試料24,24−2は自動回転ステージ40及び自動z軸ステージ41の上に搭載される。自動回転ステージ40には,直径100mmの円周上に,24本の試料と洗浄用水槽60と泳動媒体廃棄用水槽61を配置できる穴をもつ。
【0075】
自動z軸ステージ41の上下動と自動回転ステージ40の回転及び自動直進ステージ28が連動することにより,キャピラリーの試料注入端の洗浄,泳動媒体の充填,24本までの試料の分析が自動で実行される。試料をセットする穴には1〜24の番号がついており,以後この番号を試料番号と呼ぶ。
【0076】
キャピラリー内の試料から発生する蛍光は,レンズ42によって集光されて平行光束にされた後に,蛍光の波長成分のみを通し,励起光を遮断するフィルタ43を透過し,レンズ44によってスリット45上に実像を結ぶ。第1の実施例ではフィルタ43の透過域は510nm−560nmであり,フルオロセイン,シアゾールオレンジ,オキサゾ―ルイエロー系の蛍光色素で標識された試料に好適に使用できる。スリット45は,キャピラリーの中心軸に平行な細長い穴を有する厚さ0.1mmのステンレス板であり,励起光のキャピラリー表面に於ける散乱光を遮断し,試料からの蛍光を通すためのものである。
【0077】
2つのレンズ42,44から構成されるレンズ系の倍率は20倍,開口数は0.4であり,スリット上のキャピラリー像の大きさは,外壁の幅が7.2mm,内側の泳動路の幅が1.5mmである。外壁に於ける散乱光を良く遮断し,泳動路からの蛍光を効率良く通すため,レンズ系によるボケと収差の影響を考慮してスリット45の穴の幅は4mmとしてある。スリット45の穴を通過した光は検出器7によって検出される。検出器7はヘッドオン型の光電子増倍管(photomultiplier,PM)であり,量子効率は約10%,電流増倍率は約50万倍,光電面は直径25mmの円形である。
【0078】
図7は第1の実施例に於ける,検出器の出力信号の処理と,自動ステージ等の制御の流れを示す系統図である。検出器7の出力電流は,電流電圧変換回路49によって電圧信号に変換された後に,ハイパスフィルタ50でDC成分が遮断され,更に,ローパスフィルタ51で周波数帯域が制限された後に,アナログデジタル(AD)変換ユニット52によって,250Hzのサンプリング周波数で,16ビットの分解能でデジタル信号として標本化される。
【0079】
電流電圧変換回路49のゲインは10V/A,ハイパスフィルタ50はAC結合の増幅器を兼ねており,そのゲインは0.2Hz〜50kHzに於いて20±0.5dBである。また,ローパスフィルタは8次の連立チェビシェフ型で,そのゲインは,DC〜96Hzの範囲で±0.2dB以内で平坦であり,150Hz以上では−80dB以下となっており,サンプリング周波数250Hzでは100Hz以下でのエイリアスは−80dB以下に押さえられる。従って,周波数範囲0.2Hz〜96Hzの範囲で有効な,精度±0.7dB以内,ダイナミックレンジ80dBのスペクトル解析を行うことが可能である。
【0080】
AD変換ユニット52による変換結果は,装置本体9の内部に組み込まれた中央処理ユニット53とLANコントローラ54を介し,パーソナルコンピュータ10内のメモリに転送される。パーソナルコンピュータ10内のマイクロプロセッサはユーザによって設定された所定の個数のデータを基にPMの出力電流のゆらぎのパワースペクトルを計算し,結果をディスプレイに表示する。
【0081】
なお,第1の実施例では,一連のデータを高速フーリエ変換(FFT)によってフーリエ変換し,その絶対値の2乗として,パワースペクトルを求める。ユーザはFFTに用いるデータの個数を128〜4096の間の任意の2のべき乗の値に設定できる。
【0082】
第1の実施例では装置本体9とパーソナルコンピュータ10の間のインタフェースとして,LANインタフェースを採用したが,RS−232C,GP−IB,USB等標準的なインタフェースならば何でも良い。信号と同様に,パーソナルコンピュータ10で設定された試料室内の温度,シリンジを押す圧力,時間,泳動電圧,分析する試料の番号は,LANインタフェースを介して中央処理ユニット53に送られる。
【0083】
中央処理装置53は,モーターコントローラ55を介して自動直進ステージ28,自動回転ステージ40,自動z軸ステージ41を制御し,また,温度コントローラ56を介してヒーター47へ入力される電力を制御する。モータコントローラ55は圧力センサ27の出力を基に自動直進ステージ28の移動速度を制御し,温度コントローラ56は温度センサ48の抵抗値を基にヒーター47へ入力する電力を制御する。
【0084】
また,中央処理装置53は,デジタル出力58を介して高圧電源3のオンオフ,ソレノイド39によるバッファータンク37の開閉,光源15の電源59のオンオフを制御し,低電圧のアナログ出力57を介して高圧電源3の出力電圧を制御する。
【0085】
図8は第1の実施例によるDNA試料の実際の分析結果例であり,同一の試料に対して,泳動媒体を泳動バッファと同一のTBEとして,4種の泳動電圧50,100,150,200V/cmで泳動を行った時の蛍光のゆらぎのパワースペクトルを示す。泳動電圧以外の条件は共通であり,干渉縞の周期p=10μm,温度は30°C,FFTを実行するためのデータの収集個数は256個,時間的には約1秒間である。データの収集は,50V/cmでの試料の注入を開始してから約2分待ち,キャピラリー内の検出領域(泳動方向の長さL=1mm)の全体に試料が分布してから行い,その後,泳動電圧を100,150,200V/cmに変化させて,それぞれの泳動電圧の場合に,約1秒ずつデータを収集した。
【0086】
試料は,蛍光色素TOTO−1を結合した塩基長約48000bpの2本鎖λ−DNAである。濃度0.1μMのTOTO−1のジメチルスルホオキシド(DMSO)溶液10μLと,試料溶液を,濃度500ng/mLのλ−DNAのTBE溶液150μLを混合することにより調整した。蛍光色素TOTO−1はモレキュラープローブ社から発売されているシアゾールオレンジの誘導体の2量体であり,20塩基〜30塩基に1分子の割合で2本鎖DNAと結合し,その吸収ピークは514nm,蛍光ピークは533nmである。
【0087】
図8に示すスペクトルのピークの中心周波数は17Hz,33Hz,52Hz,68Hzであり,対応する試料の泳動速度はそれぞれ,0.17mm/s,0.33mm/s,0.52mm/s,0.68mm/sとなり,ほぼ泳動電圧に比例する。これらの結果から求めたTBE中に於けるλ−DNAの移動度は,3.4×10−8−1−1となり,従来技術−2に記載の図3から求めた移動速度の値,約3.5×10−8−1−1と良く一致する。
【0088】
図9は,第1の実施例に於いて複数の異なる試料を,連続自動運転により分析する時のフローチャートである。このフローチャートは,泳動媒体として3%のポリアクリルアミドのTBE溶液を用い,泳動電圧200V/cm,温度30°Cで,100bp〜1000bpのTOTO−1で染色されたDNAの分析を想定している。この条件でのDNAの泳動速度は,0.26mm/s〜0.45mm/sの範囲であるので,注入開始から検出点(検出領域)に試料が到達するには40秒あれば十分である。分析する試料は,試料1,試料2,…,試料NのN個である。
【0089】
装置本体は,電源投入時の初期動作として,キャピラリの試料注入端が泳動媒体廃棄用水槽61に浸かるようになっており,測定は必ずこの状態からスタートする。測定が開始時に1の値に初期化されるパラメータnとNとの大小を比較して,測定すべき試料がまだ残っているかどうか判断し,無ければ測定終了となる。測定すべき試料があれば,設定温度を目標として温度制御を開始し,温度の実測値が目標値と±0.1°C以内で一致する場合,ゲル充填を20秒行う。その後,キャピラリの試料注入端を洗浄用の水槽60に浸して10秒間待ち,キャピラリ試料注入端を洗浄した後に,測定すべき試料を連続的に注入し始め,40秒後から設定されたデータの収集数に応じた時間,データを収集する。
【0090】
データ収集終了後は泳動用の電源をオフし,キャピラリーの試料注入端を再び泳動媒体廃棄用水槽61へ戻し,n=n+1としてから,次の測定サイクルへと進む。第1の実施例では,泳動媒体廃棄用の水槽と洗浄用の水槽を分離し,キャピラリーの試料注入端が,洗浄用水槽60へ浸る前に必ず泳動媒体廃棄用水槽61に浸るプロトコルとなっており,キャピラリ先端に付着した試料が洗浄用水槽60へ混ざりこむのを防ぎ,試料の連続測定に於けるキャリーオーバーをほぼ完全に防いでいる。
【0091】
100bp〜1000bpのDNAの核酸係数Dをほぼ10−11/sのオーダーと見積もり,この値とL=1mm,V=0.3mm/sを用い,(数10)よりpを求めると,p=18μmとなる。100bp〜1000bpの範囲のDNAの分析時には,p=20μmとする。他の試料を分析する場合には,その試料の泳動速度と拡散係数に応じて,(数20)に従ってpを設定すれば良い。
【0092】
第1の実施例の条件(L=1mm,p=20μm,p=18μm)では,(数9)から理論段数(NTP)=2810であり,(数11)より,移動度の平均値がμAV,移動度の差がΔμである2種の検体に対してほぼ完全な分離が得られる条件は,Δμ/μAV≧0.113となる。
【0093】
図10は,図9のプロトコルを用いて,図8の測定と同様にTOTO−1で染色された2本鎖DNA試料の分析の,(数3)と(数7)を用いた数値シミュレーション結果例を表すパワースペクトルである。図10(A)は,300bpのDNAと500bpのDNAの混合試料の分析の数値シミュレーション結果例,図10(B)は,400bpのDNAと500bpのDNAの混合試料の分析の数値シミュレーション結果例を,図10(C)は,450bpのDNAと500bpのDNAの混合試料の分析の数値シミュレーション結果例を,図10(D)は,490bpのDNAと500bpのDNAの混合試料の分析の数値シミュレーション結果例を,それぞれ示す図である。なお,泳動電圧200V/cmに於ける,300bp,400bp,450bp,490bp,500bpのDNAの泳動速度をそれぞれ,0.347mm/s,0.323mm/s,0.313mm/s,0.305mm/s,0.303mm/sとし,L=1mm,p=20μm,p=18μm,D=1×10−11/sとした。
【0094】
図10(A)に示す例では,Δμ/μAV=0.135であり,2つのピークの裾野の間はノイズレベルまで下がっており,2つのピークは,ピーク全体として完全に分離されている。図10(B)に示す例では,Δμ/μAV=0.064であり,2つのピークは,2つのピークの裾野の間でわずかにオーバーラップしており,2つのピークはピーク全体として理想的に完全に分離されていない。図10(C)に示す例では,Δμ/μAV=0.032であり,2つのピークは,2つのピークの間でオーバーラップしており,ピーク位置は分離して検出されるが,2つのピークは全体として分離されていない。図10(D)に示す例では,Δμ/μAV=0.007であり,2つのピークは,重複しており分離されていない。
【0095】
図10のスペクトルは,約8秒間収集した4096点のデータから計算したパワースペクトルを直接表示しており,ノイズが見られるが,データの収集とパワースペクトルの計算を繰返し,得られるパワースペクトルを積算すればSNRを向上できる。
【0096】
第1の実施例では,試料を標識する蛍光色素としてTOTO−1を使用したが,YOYO−1(モレキュラープローブ社から発売されている)を使用しても,殆ど同様の解析が可能である。YOYO−1は,DNAに結合する数がTOTO−1よりも多いため,より高いSNRを得ることが可能である。色素に応じて光源15とフィルタ43を交換すれば他の色素,例えば,ローダミン系色素等も好適に使用できる。また,2量体によって予め染色するのではなく,泳動媒体中にTO−PRO−1,YO−PRO−1(モレキュラープローブ社から発売されている)等の単量体色素を分散させておき,無標識のDNAを注入して電気泳動路内で,DNAに色素に結合させても良い。
(第2の実施例)
図11は本発明に於ける第2の実施例の蛍光測定装置の主要部の構成を示す図である。第2の実施例の構成要素は,光干渉系を用いない点,スリット45の構成の点で第1の実施例と異なる。第2の実施例では,出力10mW,波長488nmのアルゴンイオンレーザ(光源15)から,励起光が,直径(e−2直径)1mmの円形断面を持つ平行光束として,水平方向に射出される。励起光は,励起光フィルタ17を透過した後に,円筒面レンズ23で鉛直方向の径を50μmに絞られ,水平方向に配置される第1の実施例と同じ寸法を持つ角型石英製キャピラリーに形成される電気泳動路2に照射される。電気泳動路中の試料から発生する蛍光は,レンズ42,フィルタ43,レンズ44,スリット45,検出器7からなる検出光学系で検出される。検出光学系の構造は,光軸が鉛直下向きになっている他は第1の実施例とほぼ同じであり,スリット45が置かれた位置に倍率20倍で検出領域の実像が結像される。
【0097】
図12は第2の実施例に使用されるスリット45の拡大図である。スリット45は,表面を黒色処理され,3つの長方形の穴を持つ金属板である。長方形の穴のそれぞれに,試料が電気泳動される方向で透過率が,三角関数又は矩形関数に従い周期的に変化する基板68−a,68−b,68−cが埋め込まれる。検出領域の実像が形成される位置に置かれる基板は,スリット45を長手方向にスライドさせて,3種類の基板から任意に選択できる。
【0098】
基板68−a,68−b,68−cの透過率が変化する周期pは,それぞれ,0.2mm,0.4mm,0.8mmである。図12に示す基板68−a,68−b,68−cの例では,透過率の大の部分(白色部)と透過率の小の部分(黒色部)の対はそれぞれ,100個,50個,25個形成されている。
【0099】
基板に結像される像の倍率が20倍であるので,これらの基板を像位置に設置することは,(数4)に於いてそれぞれ,p=10μm,p=20μm,p=40μmとすることとほぼ等価となる。第2の実施例で分析する試料は,第1の実施例で用いた300bpのDNAと500bpのDNAの混合溶液,400bpのDNAと500bpのDNAの混合試料,450bpのDNAと500bpのDNAの混合試料,490bpのDNAと500bpのDNAの混合試料であるので,p=20μmを選択し,第1の実施例と同様に検出器7の出力を処理することにより,第1の実施例と同一の結果を得ることが出来る。より一般的には,スリット45上に結像される像の倍率をMとすると,(数20)は(数39)に相当する。
【0100】
【数39】
p/M〜p …(数39)
第2の実施例では励起光の照射光学系に光干渉系を使用しないため,振動や衝撃に強いという効果があり,その結果,ポータブルの装置とすることが可能である。また,pの変更は,スリット45をスライドするだけで迅速に実行でき,微動ステージの調整等の作業が不要であり,試料の拡散係数が未知で複数のpに対して分析を行なう場合等に好適である。
【0101】
図13は,第2の実施例の蛍光測定装置の電気泳動路2の周辺の,泳動路を含む鉛直な面による拡大断面図である。図14は,図13に示された電気泳動路の周辺部を下方から見た図である。キャピラリーで構成される電気泳動路2は,透明なポリカーボネート製の支持体63に埋め込まれ,電気泳動路2の両端は支持体63に穿たれた試料槽64とバッファー槽65に連結する。試料槽64とバッファー槽65の底はそれぞれ,表面が絶縁処理された厚さ0.1mmのステンレス製の底板67−a,67−bで封じられる。
【0102】
支持体63,電気泳動路2,底板67−a,67−bは,相互に接着剤によりシールされる。穴66−a,66−bは,支持体63を検出光学系に固定するための穴である。まず,バッファー槽65及び電気泳動路2に,シリンジによって泳動バッファーを兼ねた泳動媒体が充填される。試料槽64に,マイクロピペットにより試料が分注された後に,電極4と電極5によって電気泳動が実行される。
【0103】
第2の実施例では,キャピラリーの全長は6mmであり,検出領域は,その中心に位置し,幅1mmである。従って,泳動を開始してから,検出領域全体に試料が分布するまでに必要な泳動長さは,わずか3.5mmであり,例えば,0.3mm/s〜0.4mm/sの泳動速度を持つ試料については,泳動開始からデータ収集までの待ち時間は10秒前後で済むという利点がある。更に,泳動路の全長がわずか6mmであるので,例えば,200V/cmの電圧勾配の時の両端の電位差は120Vにすぎず,従来の電気泳動に用いられたような10kV以上の高圧電源は不要であり,高圧用の絶縁対策も不要である。
【0104】
また,図13のような構造にして,下方から蛍光を検出を行なうので,作動距離の短い非常に明るいレンズを使用でき,第1の実施例に比べて,高い感度を実現できる。第2の実施例では,レンズ42として開口数0.75,作動距離0.61mmの対物レンズを使用する。
【0105】
第2の実施例では,図13に示した支持体63と電気泳動路2の部分は,使い捨てであり,意図しない異なる試料の混入が起こらず,空気中の浮遊物質等の混入の危険も,電気泳動路を繰返し使用する場合より低く押さえることができ,RNAや蛋白質のように酵素と反応しやすく,DNAよりも不安定な物質でも安全に分析できる。
(第3の実施例)
図15は本発明の第3の実施例の蛍光測定装置の主要部の構成を示す図である。第3の実施例では,点滅するビームスポットを高速にスキャンして,三角関数又は矩形関数に従い周期的に変化する強度分布を持つ励起光を電気泳動路の検出領域に照射する。光源15として,波長λ=532nm,出力10mW,ビーム直径3mmのガウシアンビームを出力するネオジウムヤグ(NdYAG)の第2高調波レーザを使用する。
【0106】
光源15から放射された光束を,中心波長532nm,半値幅10nmのフィルタ17を透過させて,スペクトル純度を高めた後に,音響光学偏向器(AOD)70に入力される。AOD70は,超音波トランスデューサ75が貼り付けられたモリブデン酸塩の単結晶である。超音波トランスデューサ75は,AODドライバー71から入力されたラジオ周波数(RF)信号を超音波に変換する。超音波はAOD70内を伝搬する。
【0107】
AOD70に入力された光束は,この超音波によって回折を受け,RF信号の周波数に応じて,その進行方向を変える。図13では,AOD70による回折を受けなかった時の透過光を点線で,回折光を太い実線で示す。RF信号がオフの時は,AOD70に入力された光は回折を受けず全て透過光となり,ビームストップ76に吸収される。RF信号の周波数νと,回折角θの間には(数40)の関係が有る。cはAOD内の音速であり,第3の実施例では,c=3630m/sである。
【0108】
【数40】
θ=2sin−1{λν/(2c)} …(数40)
AODドライバ71には,RF信号の出力端子の他に,変調信号と同調信号との2つの入力端子がある。RF信号の振幅は,0〜1Vの範囲の変調信号VMに比例して,0から最大出力まで振れられる。回折光の強度は,RF信号の振幅に比例するので,その結果,変調信号に比例する。また,RF信号の周波数νと,2V〜12Vの範囲の同調信号V[V]との間には,(数41)の関係があり,60MHz〜100MHzの範囲で変調できる。
【0109】
【数41】
ν=4(V−2)+60[MHz] …(数41)
AODドライバ71の変調信号入力に任意波形発生器72の出力out1が入力され,AODドライバ71の同調信号入力に任意波形発生器72の出力out2が入力される。out1から最小値が0V,最大値が1Vの正弦波が出力され,out2から最小値が2V,最大値が12Vの鋸波が出力される。out1とout2は,任意波形発生器72に内蔵された共通の200MHzの基準クロック信号から生成され,出力信号の周波数比を正確に整数とし,位相を完全に同期させることができる。
【0110】
AOD70による回折光は,波長550nm以下の光を反射し,波長550nm以上の光を透過させるダイクロイックミラー73で反射させられ,レンズ42で直径20μmに絞られ,石英基板74の上に彫られた電気泳動路2の中心に照射される。
【0111】
電気泳動路2の泳動方向の長さは1.5mmであり,電気泳動路2の泳動方向に直交する断面は,幅,深さともに50μmの正方形である。レンズ42は,明るさ0.95,焦点距離f=105mmのカメラレンズである。レンズ42の光軸は,AODドライバ71のRF信号の周波数が平均値ν=80MHzの時のAOD70による回折光の光軸と一致させてある。
【0112】
石英基板74には,電気泳動路2に連結した試料槽64とバッファー槽65が設けられる。マイクロピペットにより泳動媒体をバッファー槽65と電気泳動路2に満たし,マイクロピペットにより試料を試料槽64に満たす。その後,電源3により,試料槽の中に設けられた電極5とバッファー槽の中に設けられた電極4との間に電圧が印可され,試料が電気泳動される。
【0113】
第3の実施例では,泳動路長は1.5mmであるから,200V/cmの電圧を印加しても必要とされる電源電圧は30Vにすぎず,弱電用の電源で十分であり,高圧用の絶縁対策は不要である。
【0114】
試料から発生する蛍光は,レンズ42によって集光され,平行光束となってダイクロイックミラー73と,中心波長570nm,半値幅40nmのフィルタ44,スリット45を透過し,レンズ44でスリット45上に結像し,検出器7で検出される。
【0115】
第3の実施例は,POPO−3(モレキュラープローブ社から発売されている)等で標識された試料に好適に適用できる。第3の実施例では,レンズ44の焦点距離を210mmとして倍率2倍の結像系を構成し,スリット45の幅は50μmである。
【0116】
検出器7の出力は,第1の実施例と全く同様に処理され,サンプリング周波数250Hzで標本化される。第3の実施例の条件の下では,(数40)は,θ=λν/cと近似できるので,ビームスポットの中心位置からの変位δは(数42)により表され,ビームスポットは変調信号の周波数で点滅しながら同調信号の周波数で走査される。
【0117】
【数42】
δ=fλ(ν−ν)/c …(数42)
同調信号の周波数が十分高ければ,(数4)に於いて,Lを(数43)とし,pを(数44)とした場合と同一の効果を実現できる。νMAXはRF信号周波数の最大値であり,νMINはRF信号周波数の最小値である。第3の実施例では,νMAX=100MHz,νMIN=60MHzである。mは変調信号と同調信号の周波数比である。第3の実施例では,同調信号の周波数を10kHzとしており,これは検出器出力のサンプリング周波数250Hzに比べ十分高い。(数42)に第3の実施例での数値を代入すると,L=0.59mmとなる。
【0118】
図16は,m=10の場合の,変調信号,同調信号,及びRF信号周波数のタイミングチャートであり,p=59μmである。
【0119】
【数43】
L=fλ(νMAX−νMIN)/c …(数43)
【0120】
【数44】
p=L/m …(数44)
第3の実施例では,励起光照射用のレンズと蛍光集光用のレンズを共通にしているため,レンズの枚数及び光学系の調整個所を減少させるという利点がある。また,第2の実施例と同様,光学系に干渉系を含まないため振動や衝撃に強く,野外での使用にも適する。更に,励起光強度分布の周期pの変更を,機械的な可動部なしで純電気的に行えるので,同一の試料に対して多くのpの値に対するデータを自動的に取得する測定に適する。
【0121】
なお,第3の実施例では,励起光の進行方向を変化させてスキャンするために音響光学偏向器を用いたが,ガルバノミラーを用いても良い。また,第3の実施例では,レーザビームスポットの強度を,三角関数に従い周期的に変調したが,矩形関数に従い周期的に強弱をつけて,検出領域を高速にスキャンし,周期的に変化する強度分布を持つ励起光を照射しても良い。
【0122】
以下に説明する実施例では,周期的に変化する強度分布を持つ励起光を照射しないで,一様な強度をもつ励起光を検出領域に照射し,1次元又は2次元の光検出器を使用して試料から発生する蛍光を検出して,演算処理装置により検出された蛍光のパワースペクトルを求める。
(第4の実施例)
図17は本発明の第4の実施例の蛍光測定装置の主要部の構成を示す図である。第4の実施例の構成は,第2の実施例と類似の構成である。即ち,光源15からの励起光を電気泳動路2に照射して,試料から発生する蛍光をレンズ44で結像するまでは同一である。第4の実施例では,第2の実施例でのスリット45を使用せず,検出器7として1次元のイメージセンサを用いる。電気泳動される試料の像が動く方向と,イメージセンサの各光電変換素子が並ぶ方向とを一致させて配置する。イメージセンサの光電変換素子の面はレンズ44の結像位置に置かれる。
【0123】
図18は,検出器7として用いたイメージセンサの光電変換素子の面の拡大図である。24.5mm×1mmの光電変換素子の面のエリアが,1024個の光電変換素子80−1〜80−1024に分割される。各光電変換素子のサイズは0.024mm×1mmである。検出器7では,(1)8msの露光,(2)その後の2msの時間で,各光電変換素子に蓄積された電荷の読み出しからなるサイクルが繰り返される。
【0124】
読み出された電荷はAD変換され,AD変換結果はパーソナルコンピュータ10のメモリに転送される。パーソナルコンピュータ10のマイクロプロセッサは,光電変換80−1〜80−1024に蓄積された電荷の値q〜q1024を基に,(数45)の値qを計算する。Σは,i=1〜1024について行なう。pは周期関数の周期であり,k=2π/pは,試料を含む溶液の性質に応じて定められべき定数である。qの値は(数1)に(数46)を代入して得られる値に近似的に比例する。
【0125】
【数45】
q=Σ{qcos(ki)} …(数45)
【0126】
【数46】
I(r)=Iexp{−8(x/L)}exp{2πMx/(p)}×exp{−8(y/W)}exp{−8(z/H)} …(数46)
は,光電変換素子80−1〜80−1024のピッチ,Mは光電変換素子の面に結像される像の倍率,第4の実施例では,p=0.024mm,M=20である。Lは,電気泳動路2上での励起光束の泳動方向の幅である,Hは,電気泳動路2上での励起光束の泳動方向に直角な方向の幅である。Wは,(光電変換素子の泳動方向に直交する方向の長さ)/(倍率M)の値である。第4の実施例では,L=1mm,H=0.05mm,W=0.05mmである。
【0127】
(数45)のqのパワースペクトルの計算により,第4の実施例に於いても,他の実施例とほぼ同様の結果を得ることができる。第4の実施例では,1回のデータの収集だけで,(数45)に於けるkの値を変えた計算により,第1の実施例に於いてpを変えて複数回のデータの収集を行うのと同じ結果が得られるという利点がある。第4の実施例では,第1の実施例に於いてp=20μmとしたのと同様の効果を得るため,p=16.7μmとする。より一般的には,(数47)が(数20)に相当する。
【0128】
【数47】
/M≒p …(数47)
(第5の実施例)
本発明の第5の実施例では,図17に示す励起光照射及び蛍光検出をする光学系は第4の実施例の構成と殆ど同一の構成であり,検出器7として2次元のイメージセンサを用いる。電気泳動路の周辺部の構造は,第2の実施例及び第4の実施例での電気泳動路の周辺部の構造と類似であるが,第5の実施例では,複数の電気泳動路を集積化し,同時に複数種類の試料を分析できる構成である。
【0129】
図19は,電気泳動路の周辺部を下方から見た拡大図であり,第2の実施例に於ける図14に相当する。電気泳動路2−1〜2−4は,円形断面をもつ,外径200μm,内径50μmの石英製キャピラリーである。キャピラリー2−1〜2−4は,励起光が照射される蛍光の検出点(検出領域)の近傍で,0.24mmピッチで同一平面をなすように配置される。検出領域の近傍のキャピラリー2−1〜2−4は励起光に垂直に配置される。励起光は,キャピラリー2−1〜2−4が検出領域の近傍でなす平面に平行な方向から照射される。
【0130】
キャピラリー2−1を透過した励起光束は,円形断面をもつキャピラリー自身がもつレンズ効果によって,電気泳動路2−2,2−3,2−4の中心に次々と集光される。キャピラリー2−1〜2−4の一端はそれぞれ,別々の試料を注入できるよう,個別の試料槽64−1〜64−4へ接続される。キャピラリー2−1〜2−4他端は,一つの共通のバッファー槽65に接続される。試料槽64−1〜64−4,バッファー槽65にそれぞれ,電気泳動のための電極が配置される。
【0131】
2次元イメージセンサとして,正方形の光電変換素子を1024行×1024列ならべた冷却CCDを使用する。冷却CCDの光電変換素子は,キャピラリー2−1〜2−4を試料が泳動する泳動方向,及び,泳動方向と直交する方向の2方向のそれぞれに,ピッチ24μmで配列される。励起光が照射されたキャピラリー2−1〜2−4の部分(検出領域)の実像が,倍率20倍で冷却CCDの光電変換素子の面に結像される。
【0132】
i行j列の光電変換素子に蓄積された電荷量をqijとして,(数48)で表されるqを,n=1,2,3,4のそれぞれの場合に対して計算する。Σはj=1〜1024についての加算,Σはi=200n+92〜200n+131(n=1,2,3,4)についての加算を示す。この結果,電気泳動路2−1〜2−4のそれぞれに対して,(数45)の値を計算した場合と同一の結果が得られ,各qのパワースペクトルの計算により,試料槽64−1〜64−4の試料を同時に分析できる。
【0133】
【数48】
=Σ{cos(kj)}Σ{qij} …(数48)
第5の実施例では,共通の一台の光源から生成された単一の励起光束を,電気泳動路自身がもつレンズ効果を利用して,全ての電気泳動路に同時に照射する。また,電気泳動用の電源も全ての電気泳動路で共通である。その結果,第4の実施例とほぼ同額の部品コストで,4倍のスループットを実現できる。
(第6の実施例)
本実施例では,第1の実施例と同一の構成を用いて,本発明をヒト血液から抽出したゲノムDNAの品質評価に応用した。ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction, PCR)のテンプレートとしてゲノムDNAを好適に用いるには,ゲノムDNA断片長が数10kbp以上に分布していることが望まれる。しかし,抽出時の攪拌や保管時の凍結解凍などの影響により,ゲノムDNAが数kbp以下の長さに切断される場合がある。そこでPCRにあたっては,随時ゲノムDNAの品質評価をすることが好ましい。
【0134】
本実施例で評価したゲノムDNAは,ヒト全血100μLを原料とし,キアゲン (Qiagen) 社から市販されているDNA抽出キットを使用して,以下のプロトコルに従って抽出した。全血100μLに,キットに添付されたプロテアーゼKを10μLとライシスバッファーを100μL加え,攪拌した後に,56℃で10分間インキュベートし,その後エタノールを加え,攪拌する。反応液を抽出カラムに移し,1分間遠心分離を行い,ろ過液を廃棄する。その後,抽出カラムに洗浄液500μLを注いで1分間遠心分離を行うという工程を2回繰り返す。その後70℃の溶離液をカラムに加え,5分間インキュベート後,1分間遠心分離し,ゲノムDNAを回収する。
【0135】
本実施例で用いた試料は,上記のプロトコルでヒト血液から抽出したゲノムDNAのTBE溶液と,分子量マーカーとして用いる10kbpと48kbpと97kbpのDNAの混合TBE溶液であり,DNAは第一の実施例と同様にして蛍光色素TOTO-1で染色し,トータルのDNA濃度を30ng/mLに調整した。
【0136】
本実施例では分離媒体としてヒドロキシプロピルメチルセルロースの濃度0.25%のTBE溶液を用い,泳動電圧は50V/cm,観測領域の長さL=1mmとした。この条件で数10kbpの2本鎖DNAの泳動速度はV=0.15〜0.3mm/s, 並進拡散係数D≒10−12/sであり,(数10)から求めたp=7.6〜10.7μmとなるので,本実施例においてはp=10μmとした。
【0137】
図20(A)は分子量マーカーである10kbpと48kbpと97kbpのDNAの混合溶液に対する,(数3)と(数7)を用いた数値シミュレーション結果であり,3つのバンドが良好に分離されている。図20(B)はゲノムDNA溶液に対する,(数3)と(数7)を用いた数値シミュレーション結果である。ゲノムDNAは分子量マーカーのように単分散でないため,ピークが広がったスペクトルとなっており,そのためSNRが図20(A)に比べ低下しているが,DNA断片長さが数10kbp〜100kbpに分布していることを明瞭に示している。従って本実施例に用いたゲノムDNAはPCRのテンプレートとして好適に用いることが可能である。
【0138】
数10kbp以上のDNA分析はアガロース電気泳動などで数10分〜数時間かけて行われていたが,本実施例の分析結果は1試料あたり2分以内で得られており,大幅な時間短縮がなされている。その結果,PCR度にテンプレートを評価することも容易である。
【0139】
【発明の効果】
従来の電気泳動で必要とされた,複数種の試料を空間的に分離する泳動が不要となる。電気泳動路の試料注入端に注入した試料のバンド幅により生じる,泳動分離の低下の影響を受けない。泳動路及び分析時間の著しい短縮が可能となり,装置の小型化,軽量化が可能となる。また,試料を狭いバンド幅で注入する必要がなく,試料を単に注入するだけですむ。試料を短時間だけ電気泳動させて,試料を連続的に検出領域に分布させれば良いので,泳動路長は,励起光を照射して試料からの蛍光を検出する検出領域の長さであれば良く,泳動用の電源も低電圧電源ですむ。更に,試料濃度が,単分子検出が行われるような超希薄濃度に限定されず,広い範囲の試料濃度に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明する模式図。
【図2】本発明の蛍光測定方法に於ける,(A)分離効率,及び,(B)信号対雑音比の励起光強度分布の周期に対する依存性を示す図。
【図3】本発明の第1の実施例の蛍光測定装置の外観図。
【図4】本発明の第1の実施例の装置本体の断面図。
【図5】本発明の第1の実施例の装置本体の断面図。
【図6】本発明の第1の実施例の装置本体の試料室内部を説明する図。
【図7】本発明の第1の実施例に於ける,検出器の出力信号の処理と,自動ステージ類の制御の流れを示す系統図。
【図8】本発明の第1の実施例に於ける,TOTO−1で標識したλ−DNA試料の分析結果例を示す図。
【図9】本発明の第1の実施例に於いて,複数の異なる試料を連続自動運転により分析する時のフローチャート。
【図10】本発明の第1の実施例に於いて,(A)300bpのDNAと500bpのDNAの混合試料の分析の数値シミュレーション結果例,(B)400bpのDNAと500bpのDNAの混合試料の分析の数値シミュレーション結果例,(C)450bpのDNAと500bpのDNAの混合試料の分析の数値シミュレーション結果例,(D)490bpのDNAと500bpのDNAの混合試料の分析の数値シミュレーション結果例をそれぞれ示す図。
【図11】本発明の第2の実施例の蛍光測定装置の主要部の構成を示す図。
【図12】本発明の第2の実施例に使用されるスリットの拡大図。
【図13】本発明の第2の実施例の蛍光測定装置の電気泳動路の周辺部の電気泳動路を含む鉛直な面による拡大断面図。
【図14】図13に示された電気泳動路の周辺部を下方から見た図。
【図15】本発明の第3の実施例の蛍光測定装置の主要部の構成を示す図。
【図16】本発明の第3の実施例に於ける変調信号,同調信号,及びRF信号周波数のタイミングチャート。
【図17】本発明の第4の実施例の蛍光測定装置の主要部の構成を示す図。
【図18】本発明の第4の実施例で使用するイメージセンサの光電変換素子の面の拡大図。
【図19】本発明の第5の実施例に於ける電気泳動路の周辺部の拡大図。
【図20】本発明の第6の実施例に於ける,TOTO−1で標識した分子量マーカーとゲノムDNAの分析の数値シミュレーション結果例を示す図。
【符号の説明】
1−1〜1−N…試料,2,2−1〜2−4…電気泳動路,3…電源,4…電極,5…電極,6…励起光,7…検出器,8…スペクトル解析装置,9…装置本体,10…パーソナルコンピュータ,11…接続ケーブル,12…扉,13…隔壁,14…排気孔,15…光源,16…ホルダー,17…フィルター,18…励起光,19…ビームスプリッター,20…反射光,21…透過光,22…ミラー,23…円筒面レンズ,24,24−2…試料,25…分岐ブロック,26…シリンジ,27…圧力センサ,28…自動直進ステージ,29…ブラケット,30…ファン,31−a,31−b…直進ステージ,32−a,32−b…回転ステージ,33…外壁,34…フェラル,35−a,35−b…ニップル,36…チューブ,37…バッファータンク,38…ピストン,39…ソレノイド,40…自動回転ステージ,41…自動z軸ステージ,42…レンズ,43…フィルタ,44…レンズ,45…スリット,46…送風機,47…ヒーター,48…温度センサ,49…電流電圧変換回路,50…ハイパスフィルタ,51…ローパスフィルタ,52…アナログデジタル変換ユニット,53…中央処理ユニット,54…LANコントローラ,55…モーターコントローラ,56…温度コントローラ,57…アナログ出力,58…デジタル出力,59…光源の電源,60…洗浄用水槽,61…泳動媒体廃棄用水槽,63…支持体,64…試料槽,65…バッファー槽,66−a,66−b…穴,67−a,67−b…底板,68−a,68−b,68−c…基板,70…音響光学偏向器,71…音響光学偏向器ドライバー,72…任意波形発生器,73…ダイクロイックミラー,74…基板,75…トランスデューサ,76…ビームストップ,80−1〜80−1024…光電変換素子。

Claims (23)

  1. 荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させて,前記試料の泳動方向で周期的に変化する強度分布を与えた励起光を,前記試料が前記泳動媒体中に連続して分布する領域に照射する工程と,前記試料から発生する蛍光を検出する工程とを有することを特徴とする蛍光測定方法。
  2. 請求項1に記載の蛍光測定方法に於いて,単一の光源から放射された前記励起光を分割して2つの光束とし,前記2つの光束を前記領域で交錯させて干渉させて,前記強度分布を生成することを特徴とする蛍光測定方法。
  3. 請求項1に記載の蛍光測定方法に於いて,前記励起光を照射する方向を所定の周波数で周期的に走査し,前記所定の周波数の整数倍の周波数で前記励起光を点滅させることを特徴とする蛍光測定方法。
  4. 請求項1に記載の蛍光測定方法に於いて,前記蛍光の強度のゆらぎのパワースペクトルを求めることを特徴とする蛍光測定方法。
  5. 請求項1に記載の蛍光測定方法に於いて,前記試料の並進拡散係数をD,前記試料の泳動速度をV,前記試料の泳動方向での前記励起光が照射される前記領域の長さをL,前記励起光の前記強度分布の周期をpとするとき,p≒π(DL/V)1/2であることを特徴とする蛍光測定方法。
  6. 荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させて,励起光を前記試料が前記泳動媒体中に連続して分布する領域に照射する工程と,前記試料から発生する蛍光による蛍光像を,前記試料の泳動方向で周期的に変化する透過率分布を持つスリット上に結像し,前記蛍光像を検出する工程とを有し、前記試料の並進拡散係数をD,前記試料の泳動速度をV,前記試料の泳動方向での前記励起光が照射される前記領域の長さをL,前記蛍光像を検出する倍率をM,前記スリットの前記透過率分布の周期をpとするとき,p≒πM(DL/V) 1/2 であることを特徴とする蛍光測定方法。
  7. 荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させて,励起光を前記試料が前記泳動媒体中に連続して分布する領域に照射する工程と,前記試料から発生する蛍光による蛍光像を,前記試料の泳動方向に配列される複数個(Nとする)の光電変換素子を具備するアレイセンサにより検出する工程と,前記泳動方向に配列される前記光電変換素子のi番目の前記光電変換素子で検出される蛍光強度をqとし,Kを絶対値1を含む定数として,変数iを変数とする所定の周期関数をf(Ki)とするとき,i=1,2,…,Nに対する積和Q=Σqf(Ki)を求める工程とを有することを特徴とする蛍光測定方法。
  8. 請求項7に記載の蛍光測定方法に於いて,前記Qのパワースペクトルを求めることを特徴とする蛍光測定方法。
  9. 請求項7に記載の蛍光測定方法に於いて,前記試料の並進拡散係数をD,前記試料の泳動速度をV,前記試料の泳動方向での前記励起光が照射される前記領域の長さをL,前記光電変換素子が配列されるピッチをp,前記蛍光像を検出する倍率をM,前記所定の周期関数f(Ki)の周期をpとするとき,p≒πM(DL/V)1/2であることを特徴とする蛍光測定方法。
  10. 請求項7に記載の蛍光測定方法に於いて,前記試料を電気泳動する複数の電気泳動路のそれぞれの少なくとも一部を同一の平面上に平行に配置し,前記各電気泳動路が平行に並ぶ部分で,前記励起光を前記電気泳動路に垂直に照射することを特徴とする蛍光測定方法。
  11. 荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させる電気泳動路と,励起光を発生する光源と,前記試料の泳動方向で周期的に変化する強度分布を与えた前記励起光を,前記試料が前記泳動媒体中に連続して分布する領域に照射して,前記試料から発生する蛍光を検出する手段とを有することを特徴とする蛍光測定装置。
  12. 請求項11に記載の蛍光測定装置に於いて,単一の前記光源から放射された前記励起光を分割して2つの光束とする分割手段を具備し,前記2つの光束を前記領域で交錯させて干渉させて,前記強度分布を生成することを特徴とする蛍光測定装置。
  13. 請求項11に記載の蛍光測定装置に於いて,前記励起光を照射する方向を所定の周波数で周期的に走査する手段と,前記所定の周波数の整数倍の周波数で前記励起光を点滅させる手段とを有することを特徴とする蛍光測定装置。
  14. 請求項11に記載の蛍光測定装置に於いて,前記励起光を照射する方向を所定の周波数で周期的に走査する手段と,前記所定の周波数の整数倍の周波数で前記励起光の強度の強弱を変化させる手段とを有することを特徴とする蛍光測定装置。
  15. 請求項11に記載の蛍光測定装置に於いて,前記蛍光の強度のゆらぎのパワースペクトルを求める演算装置を有することを特徴とする蛍光測定装置。
  16. 請求項11に記載の蛍光測定装置に於いて,前記試料の並進拡散係数をD,前記試料の泳動速度をV,前記試料の泳動方向での前記励起光が照射される前記領域の長さをL,前記励起光の前記強度分布の周期をpとするとき,p≒π(DL/V)1/2であることを特徴とする蛍光測定装置。
  17. 荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させる電気泳動路と,前記試料が前記泳動媒体中に連続して分布する領域に照射する励起光を発生する光源と,前記試料から発生する蛍光による蛍光像を,前記試料の泳動方向で周期的に変化する透過率分布を持つスリット上に結像するレンズと,前記蛍光像を検出する検出器とを有し,前記スリットが前記領域と前記検出器との間に配置され、前記試料の並進拡散係数をD,前記試料の泳動速度をV,前記試料の泳動方向での前記励起光が照射される前記領域の長さをL,前記レンズの倍率をM,前記スリットの透過率分布の周期をpとするとき,p≒πM(DL/V)1/2であることを特徴とする蛍光測定装置。
  18. 荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させる電気泳動路と,前記試料が前記泳動媒体中に連続して分布する領域に照射する励起光を発生する光源と,前記試料の泳動方向に配列される複数個(Nとする)の光電変換素子を具備し,前記試料から発生する蛍光による蛍光像を検出するアレイセンサと,前記泳動方向に配列される前記光電変換素子のi番目の前記光電変換素子で検出される蛍光強度をqとし,Kを絶対値1を含む定数として,変数iを変数とする所定の周期関数をf(Ki)とするとき,i=1,2,…,に対する積和Q=Σqf(Ki)を求める演算装置とを有することを特徴とする蛍光測定装置。
  19. 請求項19に記載の蛍光測定装置に於いて,前記演算装置は前記Qのパワースペクトルを求めることを特徴とする蛍光測定装置。
  20. 請求項19に記載の蛍光測定装置に於いて,前記試料の並進拡散係数をD,前記試料の泳動速度をV,前記試料の泳動方向での前記励起光が照射される前記領域の長さをL,前記光電変換素子が配列されるピッチをp,前記蛍光像を検出する倍率をM,前記所定の周期関数f(Ki)の周期をpとするとき,p≒πM(DL/V)1/2であることを特徴とする蛍光測定装置。
  21. 請求項19に記載の蛍光測定装置に於いて,複数の前記電気泳動路を具備し,前記各電気泳動路の少なくとも一部を同一の平面上に平行に配置し,前記各電気泳動路が平行に並ぶ部分で,前記励起光を前記各電気泳動路に垂直に照射することを特徴とする蛍光測定装置。
  22. 荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させる各電気泳動路の少なくとも一部が同一の平面上に平行に配置される複数の電気泳動路と,前記試料が前記泳動媒体中に連続して分布する領域に照射する励起光を発生する光源と,前記試料の泳動方向に配列される複数個(Nとする)の光電変換素子を具備し,前記各電気泳動路が平行に並ぶ部分で,前記励起光を前記各電気泳動路に垂直に照射して,前記試料から発生する蛍光による蛍光像を検出する2次元検出器と,前記泳動方向に配列される前記光電変換素子
    のi番目の前記光電変換素子で検出される蛍光強度をqとし,Kを絶対値1を含む定数として,変数iを変数とする所定の周期関数をf(Ki)とするとき,i=1,2,…,Nに対する積和Q=Σqf(Ki)を求め,前記Qのパワースペクトルを求める演算装置とを有することを特徴とする蛍光測定装置。
  23. 荷電を有し異なる移動度を持つ複数種類の試料を,泳動媒体中で電場を印加して電気泳動させる各電気泳動路の少なくとも一部が同一の平面上に平行に配置される複数の電気泳動路と,前記試料が前記泳動媒体中に連続して分布する領域に照射する励起光を発生する光源と,前記試料の泳動方向に配列したN(N≧2)個の光電変換素子で構成されたアレイを,前記試料の泳動方向に直交する方向にN(N≧2)列並べて構成され,前記各電気泳動路が平行に並ぶ部分で,
    前記励起光を前記各電気泳動路に垂直に照射して,前記試料から発生する蛍光による蛍光像を検出する2次元検出器と,前記蛍光像を前記光電変換素子の面に結像するレンズと,前記光電変換素子の2次元配列の前記試料の泳動方向でi番目にあり,前記光電変換素子の2次元配列の前記試料の泳動方向と直交する方向でj番目にある前記光電変換素子により検出される蛍光強度をqijとし,Kを絶対値1を含む定数,変数iを変数とする所定の周期関数f(Ki)とするとき,1≦n<n≦Nを満たす整数n,nに対し,1≦i≦N,n≦j≦nを満たすi,jに対する積和Q=Σqijを求め,前記Qのパワースペクトルを求める演算装置とを有することを特徴とする蛍光測定装置。
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