JP3692821B2 - 無段変速機用プーリ幅調整装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係る無段変速機用プーリ幅調整装置は、自動車用、産業機械等各種機械装置用の無段変速機に組み込んで、駆動軸と従動軸との間の変速比を変えるべく、駆動プーリ或は従動プーリの幅を調節する為のものである。
【0002】
【従来の技術】
無段変速機は、エンジンの出力を最良の状態で利用できる為、近年自動車用の自動変速機として広く普及する様になっている。このうちの、ベルト式の無段変速機として従来から、特許第2744038号公報等に記載されたものが知られている。ベルト式の無段変速機は、例えばこの公報に記載されている様に、それぞれが幅を調節自在とした、駆動軸側に設けたプーリ(プライマリプーリ)と従動軸側に設けたプーリ(セカンダリプーリ)との間に無端ベルトを掛け渡して成る。駆動軸と従動軸との間の変速比を変える場合には、上記プライマリプーリ及びセカンダリプーリの幅を、互いに同期して逆方向に変化させる。例えば、増速側に変化させる場合には、プライマリプーリの幅を狭くすると共にセカンダリプーリの幅を広くして、上記無端ベルトをプライマリプーリの外径側に移動させると共にセカンダリプーリの内径側に移動させる。反対に、減速側に変化させる場合には、プライマリプーリの幅を広くすると共にセカンダリプーリの幅を狭くして、上記無端ベルトをプライマリプーリの内径側に移動させると共にセカンダリプーリの外径側に移動させる。
【0003】
上述の様な無端ベルト式の無段変速機のプーリの幅を調整する為の無段変速機用プーリ幅調整装置として従来から、図7〜8に示す様な構造のものが知られている。先ず、図7に示した第1例の構造は、工作機械用等に使用される無段変速機用の、手動式のプーリ幅調整装置を示している。駆動軸又は従動軸である回転軸1の中間部に固定側プーリ片2を、止めねじ3により固定している。又、この回転軸1の中間部でこの固定側プーリ片2から軸方向(図7の左右方向)にずれた位置には、変位側プーリ片4を支持している。この変位側プーリ片4の内周面と上記回転軸1の外周面とはキー係合させて、この変位側プーリ片4がこの回転軸1の軸方向に亙り変位はするが、この回転軸1と同期した回転を自在としている。そして、上記変位側プーリ片4を、枢軸5を中心として揺動する調整レバー6と、スリーブ7と、玉軸受8とを介して、上記回転軸1の軸方向に変位駆動自在としている。変速比を変える場合には、上記枢軸5を中心として調整レバー6を揺動させ、上記変位側プーリ片4を軸方向に変位させて、この変位側プーリ片4の内側面と上記固定側プーリ片2の内側面との間隔であるプーリ幅を、駆動側と従動側とを同期させて変える。
【0004】
又、図8に示した第2例の構造は、自動車用変速機等に使用される無段変速機の、電動式のプーリ幅調整装置を示している。回転軸1aの一端部(図8の右端部)に固定側プーリ片2aを固定し、この回転軸1aの中間部に変位側プーリ片4aを、この回転軸1aに対する軸方向に亙る変位のみ自在に支持している。この変位側プーリ片4aには回転筒10を、深溝型の玉軸受11により、この変位側プーリ片4aに対する回転のみ自在に支持している。そして、上記回転筒10の片端部(図8の左端部)内周面に形成した雌ねじ12と、変速機ハウジング等の固定の部分に支持固定した固定筒13の外周面に形成した雄ねじ14とを螺合させている。更に、上記回転筒10の外周面に形成した従動ギヤ15と、駆動軸16に設けた駆動ギヤ17とを螺合させて、上記回転筒10を回転駆動自在としている。変速比を変える場合には、この回転筒10を回転させ、この回転筒10と共に上記変位側プーリ片4aを軸方向に変位させて、この変位側プーリ片4aの内側面と上記固定側プーリ片2aの内側面との間隔であるプーリ幅を、駆動側と従動側とを同期させて変える。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な従来構造のうち、図7に示した第1例の場合は、簡単な構造であるが、自動化が難しく、変速比の微調節も難しい。又、図8に示した第2例の場合は、雌ねじ12と雄ねじ14との螺合部の伝達効率が悪く、回転筒10を回転駆動させる為に要するトルクが大きくなる。この為、プーリ幅を調節する為の電動モータとして大きなものを使用するか、減速比の大きな減速機を使用する必要が生じる等、何れにしてもプーリ幅調整装置が大型化し、消費電力が嵩む事が避けられない。
【0006】
螺合部にボールねじを採用する等により、この螺合部の伝達効率を向上させる事も可能ではあるが、動力の伝達方向に可逆性があるボールねじを採用すると、プーリ幅を固定する為の構造が別途必要になる。例えば、駆動用の電動モータとしてブレーキ付のものが必要になる等、コスト並びに設置スペースが嵩む事が避けられない。
本発明は、上述の様な不都合を何れも解消できる無段変速機用プーリ幅調整装置を実現する事を目的に発明したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の無段変速機用プーリ幅調整装置は、前述の図8に示した、従来から知られている無段変速機用プーリ幅調整装置と同様に、無端ベルトの一部を掛け渡したプーリの幅を変える事により駆動軸と従動軸との間の変速比を変える無段変速機に組み込んで、上記プーリの幅を変える為に、このプーリを、回転軸の周囲にこの回転軸の軸方向に関する変位を阻止した状態でこの回転軸と同期した回転を自在として支持された固定側プーリ片と、この回転軸の軸方向に亙る変位及びこの回転軸と同期した回転を自在として支持された変位側プーリ片と、この変位側プーリ片を上記回転軸の軸方向に亙り変位させる為のアクチュエータとから構成している。
【0008】
特に、本発明の無段変速機用プーリ幅調整装置に於いては、上記アクチュエータは、固定の部分に対して回転のみ自在に支持された第一の筒状部材と、この筒状部材と異なる直径を有し、上記変位側プーリ片に対しこの変位側プーリ片に対する回転のみ自在に、且つ上記第一の筒状部材に対し偏心した状態で支持された第二の筒状部材と、これら第一、第二の筒状部材の周面のうちで互いに対向する1対の周面のうちの一方の周面に形成された螺旋状のねじ溝と、上記第一、第二の筒状部材の周面のうちで互いに対向する1対の周面のうちの他方の周面に円周方向に亙って形成された、上記ねじ溝と同じピッチを有する係合溝と、第一、第二の筒状部材のうちの一方の筒状部材を回転駆動する為のモータとを備え、上記ねじ溝の円周方向の一部と上記係合溝の円周方向の一部とを互いに噛合させたものである。又、上記ねじ溝と上記係合溝とを噛合させる部分と、上記プーリに上記無端ベルトの一部を掛け渡す部分との上記円周方向に関する位相を互いに一致させている。
【0009】
【作用】
上述の様に構成する本発明の無段変速機用プーリ幅調整装置を構成するアクチュエータは、第一、第二の筒状部材のうちの一方の筒状部材を回転させる事により、第二の筒状部材を回転させつつ軸方向に変位させ、変位側プーリ片を軸方向に変位させる。
即ち、上記一方の筒状部材の回転に伴って他方の筒状部材が、ねじ溝と係合溝との係合に基づき、回転する。この際、これらねじ溝の周速と係合溝の周速とは互いに等しくなる。又、互いに噛合するねじ溝のピッチと係合溝のピッチとは互いに等しい。これに対して、これらねじ溝のピッチ円直径と係合溝のピッチ円直径とは異なる為、上記一方の筒状部材が1回転する間に、上記他方の筒状部材は1回転を越えて回転するか、或は1回転未満しか回転しない。この結果、一方の筒状部材と他方の筒状部材との回転量の差分だけ、第二の筒状部材及びこの第二の筒状部材に結合した変位側プーリ片が軸方向に変位し、この変位側プーリ片の内側面と固定側プーリ片の内側面との間隔である、プーリ幅が変化する。この場合に、上記ねじ溝と上記係合溝とを噛合させる部分と、上記プーリに上記無端ベルトの一部を掛け渡す部分との円周方向に関する位相を互いに一致させている為、上記ねじ溝と上記係合溝との噛合部の作動を円滑に行なわせる事ができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。ベルト式の無段変速機を構成する駆動軸又は従動軸である回転軸1bは、変速機ケース18に対して、それぞれが深溝型又はアンギュラ型である、1対の玉軸受19、19により、回転のみ自在に支持している。又、上記回転軸1bの片半部(図1の左半部)の周囲には第一の筒状部材20を配置し、この第一の筒状部材20の基端部(図1の左端部)を上記変速機ケース18の内面に、深溝型の玉軸受21により、回転のみ自在に支持している。尚、上記回転軸1bの中心軸αと、上記第一の筒状部材20の中心軸βとは、δ分偏心している。
【0011】
又、上記回転軸1bの一端部(図1の右端部)に固定側プーリ片2bを固定し、この回転軸1bの中間部に変位側プーリ片4bを、この回転軸1bに対する軸方向に亙る変位のみ自在に支持している。即ち、この回転軸1bの外周面に係止したキー23と、上記変位側プーリ片4bの内周面に形成したキー溝24とを係合させて、この変位側プーリ片4bを上記回転軸1bに、この回転軸1bの軸方向に亙る変位を自在に、且つこの回転軸1bと同期した回転を自在に支持している。又、上記変位側プーリ片4bの外側面内周寄り部分に形成した円筒部25の周囲に第二の筒状部材22の一端部(図1の右端部)を、深溝型の玉軸受11aにより、上記変位側プーリ片4bに対する回転のみ自在に支持している。上記第二の筒状部材22の中間部及び他端部の内径は、上記第一の筒状部材20の先半部(図1の右半部)の外径よりも大きい。
【0012】
又、上記第二の筒状部材22の外周面にはウォームホイール歯26を、全周に亙って形成している。更に、このウォームホイール歯26を、正転、逆転自在な電動モータ27により回転駆動されるウォーム28と噛合させて、上記第二の筒状部材22を所望方向に回転駆動自在としている。尚、上記ウォームホイール歯26は、この第二の筒状部材22の軸方向変位に拘らず、上記ウォーム28との噛合状態を確保する為、軸方向(図1の左右方向)に亙る幅寸法を十分に確保している。又、上記第二の筒状部材22の他端部内周面には、ピッチ円直径がD0 である雌ねじ29を形成している。一方、前記第一の筒状部材20の先半部(図1の右半部)の外周面には、ピッチ円直径がd0 である雄ねじ30を形成している。前述した、回転軸1bの中心軸αと第一の筒状部材20の中心軸βとの偏心量δは、上記両ピッチ円直径の差の1/2[δ{=(D0 −d0 )/2}]としている。従って、上記第一の筒状部材20の外周面に形成した雄ねじ30は、上記第二の筒状部材22の内周面に形成した雌ねじ29に対して、円周方向の一部のみ噛合している。本例の場合、これら雄ねじ30と雌ねじ29とのうちの一方が、請求項に記載したねじ溝に相当し、他方が同じく係合溝に相当する。尚、上記雄ねじ30と雌ねじ29とを噛合させる部分と、プーリに無端ベルト9の一部を掛け渡す部分との、上記円周方向に関する位相は、図示の様に互いに一致させて、上記両ねじ30、29同士の噛合部の作動を円滑に行なわせる様にしている。
【0013】
上述の様に構成する本例の無段変速機用プーリ幅調整装置によりプーリ幅を変える場合には、前記電動モータ27により前記ウォーム28を介して上記第二の筒状部材22を回転させる。そして、この第二の筒状部材22と共に前記第一の筒状部材20を回転させつつ、この第二の筒状部材22を軸方向に変位させ、この第二の筒状部材22に前記玉軸受11aを介して結合した前記変位側プーリ片4bを、軸方向に変位させる。
【0014】
即ち、上記プーリ幅を変える際には、前記電動モータ27により、上記ウォーム28を介して上記第二の筒状部材22を所定方向に回転させる。この第二の筒状部材22の回転に伴って上記第一の筒状部材20が、前記雌ねじ29と雄ねじ30との係合に基づき、回転する。この際、これら雌ねじ29の周速と雄ねじ30の周速とは互いに等しくなる。又、図3に示す様に、互いに噛合する、上記雌ねじ29のピッチPと雄ねじ30のピッチPとは互いに等しい。これに対して、これら雌ねじ29のピッチ円直径D0 と雄ねじ30のピッチ円直径d0 とは互いに異なる(D0 >d0 )。この為、上記第二の筒状部材22が1回転する間に、上記第一の筒状部材20は1回転を越えて(D0 /d0 回)回転する。この結果、この第一の筒状部材20が上記第二の筒状部材22よりも余分に回転する分{第二の筒状部材22が1回転する毎に(D0 /d0 )−1回分}だけ、上記第二の筒状部材22及び玉軸受11aによりこの第二の筒状部材22に結合した前記変位側プーリ片4bが軸方向に[P・{(D0 /d0 )−1}分]変位する。上記第二の筒状部材22は、回転しつつ軸方向に変位するが、上記変位側プーリ片4bはこの第二の筒状部材22に対して回転自在である為、(前記回転軸1bに対して回転する事なく)回転軸1bと共に回転しつつ軸方向に変位して、上記プーリ幅を変える。
【0015】
上記雌ねじ29と雄ねじ30との係合状態は転がり接触に近く、滑り接触状態は僅かである。この為、これら雌ねじ29と雄ねじ30との係合部での動力損失は僅かで、プーリ幅調整装置の駆動部全体として高い伝達効率を得られる。又、上記電動モータ27への通電を停止した状態では、無端ベルト9から上記変位側プーリ片4bに加わるスラスト荷重に拘らず、上記第一、第二の筒状部材20、22が回転する事はない。従って、上記電動モータ27として、特にブレーキ付のものを使用しなくても、上記変位側プーリ片4bを静止させて、上記プーリ幅を調整後の状態のままに維持できる。尚、上記第二の筒状部材22の外周面に形成した前記ウォームホイール歯26の幅は、前述した様に広い為、前記プーリ幅を調節する際に於ける、上記第二の筒状部材22の全ストローク範囲に亙り、上記ウォームホイール歯26と前記ウォーム28とは、適正に噛合した状態のままとなる。
【0016】
次に、図4は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、駆動軸又は従動軸である回転軸1cの片半部(図4の左半部)の周囲に配置した第一の筒状部材20aの基端部(図4の左端部)を変速機ケース18aの内面に、それぞれがアンギュラ型である1対の玉軸受21a、21aにより、回転のみ自在に支持している。本例の場合も、上記回転軸1cの中心軸αと、上記第一の筒状部材20aの中心軸βとは、δ分偏心している。
【0017】
又、上記回転軸1cの一端部(図4の右端部)に固定側プーリ片2cを、スプライン係合と鍔部31による背面支持とにより固定している。又、上記回転軸1cの中間部に変位側プーリ片4cをスプライン係合により、この回転軸1cに対する軸方向に亙る変位のみ自在に支持している。又、上記変位側プーリ片4cの外側面内周寄り部分に形成した円筒部25aの周囲に第二の筒状部材22aの一端部(図4の右端部)を、それぞれがアンギュラ型である1対の玉軸受11b、11bにより、上記変位側プーリ片4cに対する回転のみ自在に支持している。上記第二の筒状部材22aの中間部及び他端部の内径は、上記第一の筒状部材20aの先半部(図4の右半部)の外径よりも大きい。
【0018】
又、上記第一の筒状部材20aの外周面には、平歯車或ははすば歯車である従動歯車32を固設している。更に、この従動歯車32を、正転、逆転自在な図示しない電動モータにより回転駆動される駆動歯車33と噛合させて、上記第一の筒状部材20aを所望方向に回転駆動自在としている。尚、本例の場合には、ベルト幅の調整に拘らず軸方向に変位しない、上記第一の筒状部材20aに従動歯車32を固設している為、この従動歯車32や上記駆動歯車33の幅を特に大きくする必要はない。
【0019】
又、本例の場合も、上記第二の筒状部材22aの他端部内周面にピッチ円直径がD0 である雌ねじ29を、上記第一の筒状部材20aの先半部(図4の右半部)の外周面にピッチ円直径がd0 である雄ねじ30を、それぞれ形成している。本例の場合も、前述した、回転軸1cの中心軸αと第一の筒状部材20aの中心軸βとの偏心量δを、上記両ピッチ円直径の差の1/2[δ{=(D0 −d0 )/2}]として、上記雄ねじ30と上記雌ねじ29とを、円周方向の一部のみ噛合させている。本例の場合も、これら雄ねじ30と雌ねじ29とのうちの一方が、請求項に記載したねじ溝に相当し、他方が同じく係合溝に相当する。
【0020】
上述の様に構成する本例の無段変速機用プーリ幅調整装置によりプーリ幅を変える場合には、図示しない電動モータにより上記駆動歯車33及び従動歯車32を介して、上記第一の筒状部材20aを回転させる。そして、この第一の筒状部材20aと共に上記第二の筒状部材22aを回転させつつ、この第二の筒状部材22aを軸方向に変位させ、この第二の筒状部材22aに前記各玉軸受11b、11bを介して結合した前記変位側プーリ片4cを、軸方向に変位させる。即ち、本例の場合も、上記第一の筒状部材20aが上記第二の筒状部材22aよりも余分に回転する分だけ、上記第二の筒状部材22a及び玉軸受11bによりこの第二の筒状部材22aに結合した前記変位側プーリ片4cが軸方向に変位する。そして、前記変位側プーリ片4cを、前記回転軸1cに対して回転する事なく軸方向に変位させて、上記プーリ幅を変える。この様な本例の場合も、上記駆動歯車33を回転駆動する為の電動モータとして、特にブレーキ付のものを使用しなくても、上記変位側プーリ片4bを静止させて、上記プーリ幅を調整後の状態のままに維持できる。
【0021】
尚、本発明の無段変速機用プーリ幅調整装置を構成して変位側プーリ片を軸方向に亙り変位させる為のアクチュエータとしては、前述した第1例及び上述した第2例の構造を含め、次の▲1▼〜▲4▼の様な態様が考えられる。
▲1▼ 第一の筒状部材の一部外周面に雄ねじを、第二の筒状部材の一部内周面に雌ねじを、それぞれ形成すると共に、これら第一、第二の筒状部材同士を互いに平行に配置して、上記雄ねじの円周方向の一部と上記雌ねじの円周方向の一部とを互いに噛合させる。
▲2▼ 第一の筒状部材の一部外周面に、それぞれが円周方向に設けられた互いに平行な複数本の突条を、第二の筒状部材の一部内周面に雌ねじを、それぞれ形成すると共に、上記第一、第二の筒状部材同士を互いに平行に配置して、上記突条の円周方向の一部と上記雌ねじの円周方向の一部とを互いに噛合させる。
▲3▼ 第一の筒状部材の一部外周面に雄ねじを、第二の筒状部材の一部内周面にそれぞれが円周方向に設けられた互いに平行な複数本の突条を、それぞれ形成すると共に、上記第一、第二の筒状部材同士を互いに平行に配置して、上記突条の円周方向の一部と上記雌ねじの円周方向の一部とを互いに噛合させる。
▲4▼ 上記▲2▼▲3▼の何れかで、雄ねじ又は雌ねじ及び突条のピッチを、それぞれPとし、外径側に配置した(径の大きな)雌ねじ又は突条のピッチ円直径をD0 とした場合に、第二の筒状部材の中心軸を、θ= tan-1{P/(π・D0 )}で表される角度θだけ、第一の筒状部材の中心軸に対し傾斜させる。
【0022】
図5は、このうちの▲2▼に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、第一の筒状部材20bの外周面に、それぞれが円周方向に設けられた互いに平行な複数本の突条34、34を、互いに等間隔に(等ピッチで)形成し、これら各突条34、34を、請求項に記載した係合溝としている。尚、これら各突条34、34のピッチPは、第二の筒状部材22bの内周面に形成した雌ねじ29aのピッチPと同じにしている。
【0023】
上述の様な本例の構造の場合も、上記第一、第二の筒状部材20b、22bのうちの何れかを回転駆動すると、これら両筒状部材20b、22bが同方向に回転しつつ、このうちの第二の筒状部材22bが軸方向に変位する。特に、本例の場合には、第一の筒状部材20bの外周面に雄ねじを形成した第1〜2例の場合に比べて、この第一の筒状部材20bが1回転する毎の、上記第二の筒状部材22bの軸方向に亙る変位量が多くなる。即ち、本例の場合には、この第二の筒状部材22bが1回転する毎にこの第二の筒状部材22bが、軸方向にP分、変位する。その他の構成及び作用は、前述した第1〜2例の何れかと同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0024】
次に、図6は、前述した▲4▼に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合も、上述した第3例の場合と同様に、第一の筒状部材20bの外周面に互いに平行な複数本の突条34、34を互いに等間隔に形成して、この第一の筒状部材20bの外周面に係合溝を形成している。特に、本例の場合には、上記第一の筒状部材20bの中心軸βを、第二の筒状部材22bの中心軸αに対し、角度θだけ傾斜させている。この傾斜角度θは、この第二の筒状部材22bの内周面に形成した雌ねじ29a及び上記第一の筒状部材20bの外周面に形成した突条34、34のピッチをPとし、上記雌ねじ29aのピッチ円直径をD0 とした場合に、θ= tan-1{P/(π・D0 )}とする。
この様な本例の場合も、上記第一、第二の筒状部材20b、22bのうちの何れかを回転させると、このうちの第二の筒状部材22bが、回転しつつ軸方向に変位する。第一の筒状部材20bを傾斜させた点以外の構成及び作用は、上述した第3例の場合と同様である。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、小型で効率が良い無段変速機用プーリ幅調整装置を実現して、各種用途に使用するベルト型の無段変速機の小型軽量化と省エネルギ化とを図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す要部断面図。
【図2】一部を省略して示す、図1のA−A断面図。
【図3】一部を省略して示す、図2のB−B断面図。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す要部断面図。
【図5】本発明の実施の形態の第3例を示す、部分略断面図。
【図6】同第4例を示す、部分略断面図。
【図7】従来構造の第1例を示す要部断面図。
【図8】同第2例を示す要部断面図。
【符号の説明】
1、1a、1b、1c 回転軸
2、2a、2b、2c 固定側プーリ片
3 止めねじ
4、4a、4b、4c 変位側プーリ片
5 枢軸
6 調整レバー
7 スリーブ
8 玉軸受
9 無端ベルト
10 回転筒
11、11a、11b 玉軸受
12 雌ねじ
13 固定筒
14 雄ねじ
15 従動ギヤ
16 駆動軸
17 駆動ギヤ
18、18a 変速機ケース
19 玉軸受
20、20a、20b 第一の筒状部材
21、21a 玉軸受
22、22a、22b 第二の筒状部材
23 キー
24 キー溝
25、25a 円筒部
26 ウェームホイール歯
27 電動モータ
28 ウォーム
29、29a 雌ねじ
30 雄ねじ
31 鍔部
32 従動歯車
33 駆動歯車
34 突条
【発明の属する技術分野】
この発明に係る無段変速機用プーリ幅調整装置は、自動車用、産業機械等各種機械装置用の無段変速機に組み込んで、駆動軸と従動軸との間の変速比を変えるべく、駆動プーリ或は従動プーリの幅を調節する為のものである。
【0002】
【従来の技術】
無段変速機は、エンジンの出力を最良の状態で利用できる為、近年自動車用の自動変速機として広く普及する様になっている。このうちの、ベルト式の無段変速機として従来から、特許第2744038号公報等に記載されたものが知られている。ベルト式の無段変速機は、例えばこの公報に記載されている様に、それぞれが幅を調節自在とした、駆動軸側に設けたプーリ(プライマリプーリ)と従動軸側に設けたプーリ(セカンダリプーリ)との間に無端ベルトを掛け渡して成る。駆動軸と従動軸との間の変速比を変える場合には、上記プライマリプーリ及びセカンダリプーリの幅を、互いに同期して逆方向に変化させる。例えば、増速側に変化させる場合には、プライマリプーリの幅を狭くすると共にセカンダリプーリの幅を広くして、上記無端ベルトをプライマリプーリの外径側に移動させると共にセカンダリプーリの内径側に移動させる。反対に、減速側に変化させる場合には、プライマリプーリの幅を広くすると共にセカンダリプーリの幅を狭くして、上記無端ベルトをプライマリプーリの内径側に移動させると共にセカンダリプーリの外径側に移動させる。
【0003】
上述の様な無端ベルト式の無段変速機のプーリの幅を調整する為の無段変速機用プーリ幅調整装置として従来から、図7〜8に示す様な構造のものが知られている。先ず、図7に示した第1例の構造は、工作機械用等に使用される無段変速機用の、手動式のプーリ幅調整装置を示している。駆動軸又は従動軸である回転軸1の中間部に固定側プーリ片2を、止めねじ3により固定している。又、この回転軸1の中間部でこの固定側プーリ片2から軸方向(図7の左右方向)にずれた位置には、変位側プーリ片4を支持している。この変位側プーリ片4の内周面と上記回転軸1の外周面とはキー係合させて、この変位側プーリ片4がこの回転軸1の軸方向に亙り変位はするが、この回転軸1と同期した回転を自在としている。そして、上記変位側プーリ片4を、枢軸5を中心として揺動する調整レバー6と、スリーブ7と、玉軸受8とを介して、上記回転軸1の軸方向に変位駆動自在としている。変速比を変える場合には、上記枢軸5を中心として調整レバー6を揺動させ、上記変位側プーリ片4を軸方向に変位させて、この変位側プーリ片4の内側面と上記固定側プーリ片2の内側面との間隔であるプーリ幅を、駆動側と従動側とを同期させて変える。
【0004】
又、図8に示した第2例の構造は、自動車用変速機等に使用される無段変速機の、電動式のプーリ幅調整装置を示している。回転軸1aの一端部(図8の右端部)に固定側プーリ片2aを固定し、この回転軸1aの中間部に変位側プーリ片4aを、この回転軸1aに対する軸方向に亙る変位のみ自在に支持している。この変位側プーリ片4aには回転筒10を、深溝型の玉軸受11により、この変位側プーリ片4aに対する回転のみ自在に支持している。そして、上記回転筒10の片端部(図8の左端部)内周面に形成した雌ねじ12と、変速機ハウジング等の固定の部分に支持固定した固定筒13の外周面に形成した雄ねじ14とを螺合させている。更に、上記回転筒10の外周面に形成した従動ギヤ15と、駆動軸16に設けた駆動ギヤ17とを螺合させて、上記回転筒10を回転駆動自在としている。変速比を変える場合には、この回転筒10を回転させ、この回転筒10と共に上記変位側プーリ片4aを軸方向に変位させて、この変位側プーリ片4aの内側面と上記固定側プーリ片2aの内側面との間隔であるプーリ幅を、駆動側と従動側とを同期させて変える。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な従来構造のうち、図7に示した第1例の場合は、簡単な構造であるが、自動化が難しく、変速比の微調節も難しい。又、図8に示した第2例の場合は、雌ねじ12と雄ねじ14との螺合部の伝達効率が悪く、回転筒10を回転駆動させる為に要するトルクが大きくなる。この為、プーリ幅を調節する為の電動モータとして大きなものを使用するか、減速比の大きな減速機を使用する必要が生じる等、何れにしてもプーリ幅調整装置が大型化し、消費電力が嵩む事が避けられない。
【0006】
螺合部にボールねじを採用する等により、この螺合部の伝達効率を向上させる事も可能ではあるが、動力の伝達方向に可逆性があるボールねじを採用すると、プーリ幅を固定する為の構造が別途必要になる。例えば、駆動用の電動モータとしてブレーキ付のものが必要になる等、コスト並びに設置スペースが嵩む事が避けられない。
本発明は、上述の様な不都合を何れも解消できる無段変速機用プーリ幅調整装置を実現する事を目的に発明したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の無段変速機用プーリ幅調整装置は、前述の図8に示した、従来から知られている無段変速機用プーリ幅調整装置と同様に、無端ベルトの一部を掛け渡したプーリの幅を変える事により駆動軸と従動軸との間の変速比を変える無段変速機に組み込んで、上記プーリの幅を変える為に、このプーリを、回転軸の周囲にこの回転軸の軸方向に関する変位を阻止した状態でこの回転軸と同期した回転を自在として支持された固定側プーリ片と、この回転軸の軸方向に亙る変位及びこの回転軸と同期した回転を自在として支持された変位側プーリ片と、この変位側プーリ片を上記回転軸の軸方向に亙り変位させる為のアクチュエータとから構成している。
【0008】
特に、本発明の無段変速機用プーリ幅調整装置に於いては、上記アクチュエータは、固定の部分に対して回転のみ自在に支持された第一の筒状部材と、この筒状部材と異なる直径を有し、上記変位側プーリ片に対しこの変位側プーリ片に対する回転のみ自在に、且つ上記第一の筒状部材に対し偏心した状態で支持された第二の筒状部材と、これら第一、第二の筒状部材の周面のうちで互いに対向する1対の周面のうちの一方の周面に形成された螺旋状のねじ溝と、上記第一、第二の筒状部材の周面のうちで互いに対向する1対の周面のうちの他方の周面に円周方向に亙って形成された、上記ねじ溝と同じピッチを有する係合溝と、第一、第二の筒状部材のうちの一方の筒状部材を回転駆動する為のモータとを備え、上記ねじ溝の円周方向の一部と上記係合溝の円周方向の一部とを互いに噛合させたものである。又、上記ねじ溝と上記係合溝とを噛合させる部分と、上記プーリに上記無端ベルトの一部を掛け渡す部分との上記円周方向に関する位相を互いに一致させている。
【0009】
【作用】
上述の様に構成する本発明の無段変速機用プーリ幅調整装置を構成するアクチュエータは、第一、第二の筒状部材のうちの一方の筒状部材を回転させる事により、第二の筒状部材を回転させつつ軸方向に変位させ、変位側プーリ片を軸方向に変位させる。
即ち、上記一方の筒状部材の回転に伴って他方の筒状部材が、ねじ溝と係合溝との係合に基づき、回転する。この際、これらねじ溝の周速と係合溝の周速とは互いに等しくなる。又、互いに噛合するねじ溝のピッチと係合溝のピッチとは互いに等しい。これに対して、これらねじ溝のピッチ円直径と係合溝のピッチ円直径とは異なる為、上記一方の筒状部材が1回転する間に、上記他方の筒状部材は1回転を越えて回転するか、或は1回転未満しか回転しない。この結果、一方の筒状部材と他方の筒状部材との回転量の差分だけ、第二の筒状部材及びこの第二の筒状部材に結合した変位側プーリ片が軸方向に変位し、この変位側プーリ片の内側面と固定側プーリ片の内側面との間隔である、プーリ幅が変化する。この場合に、上記ねじ溝と上記係合溝とを噛合させる部分と、上記プーリに上記無端ベルトの一部を掛け渡す部分との円周方向に関する位相を互いに一致させている為、上記ねじ溝と上記係合溝との噛合部の作動を円滑に行なわせる事ができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。ベルト式の無段変速機を構成する駆動軸又は従動軸である回転軸1bは、変速機ケース18に対して、それぞれが深溝型又はアンギュラ型である、1対の玉軸受19、19により、回転のみ自在に支持している。又、上記回転軸1bの片半部(図1の左半部)の周囲には第一の筒状部材20を配置し、この第一の筒状部材20の基端部(図1の左端部)を上記変速機ケース18の内面に、深溝型の玉軸受21により、回転のみ自在に支持している。尚、上記回転軸1bの中心軸αと、上記第一の筒状部材20の中心軸βとは、δ分偏心している。
【0011】
又、上記回転軸1bの一端部(図1の右端部)に固定側プーリ片2bを固定し、この回転軸1bの中間部に変位側プーリ片4bを、この回転軸1bに対する軸方向に亙る変位のみ自在に支持している。即ち、この回転軸1bの外周面に係止したキー23と、上記変位側プーリ片4bの内周面に形成したキー溝24とを係合させて、この変位側プーリ片4bを上記回転軸1bに、この回転軸1bの軸方向に亙る変位を自在に、且つこの回転軸1bと同期した回転を自在に支持している。又、上記変位側プーリ片4bの外側面内周寄り部分に形成した円筒部25の周囲に第二の筒状部材22の一端部(図1の右端部)を、深溝型の玉軸受11aにより、上記変位側プーリ片4bに対する回転のみ自在に支持している。上記第二の筒状部材22の中間部及び他端部の内径は、上記第一の筒状部材20の先半部(図1の右半部)の外径よりも大きい。
【0012】
又、上記第二の筒状部材22の外周面にはウォームホイール歯26を、全周に亙って形成している。更に、このウォームホイール歯26を、正転、逆転自在な電動モータ27により回転駆動されるウォーム28と噛合させて、上記第二の筒状部材22を所望方向に回転駆動自在としている。尚、上記ウォームホイール歯26は、この第二の筒状部材22の軸方向変位に拘らず、上記ウォーム28との噛合状態を確保する為、軸方向(図1の左右方向)に亙る幅寸法を十分に確保している。又、上記第二の筒状部材22の他端部内周面には、ピッチ円直径がD0 である雌ねじ29を形成している。一方、前記第一の筒状部材20の先半部(図1の右半部)の外周面には、ピッチ円直径がd0 である雄ねじ30を形成している。前述した、回転軸1bの中心軸αと第一の筒状部材20の中心軸βとの偏心量δは、上記両ピッチ円直径の差の1/2[δ{=(D0 −d0 )/2}]としている。従って、上記第一の筒状部材20の外周面に形成した雄ねじ30は、上記第二の筒状部材22の内周面に形成した雌ねじ29に対して、円周方向の一部のみ噛合している。本例の場合、これら雄ねじ30と雌ねじ29とのうちの一方が、請求項に記載したねじ溝に相当し、他方が同じく係合溝に相当する。尚、上記雄ねじ30と雌ねじ29とを噛合させる部分と、プーリに無端ベルト9の一部を掛け渡す部分との、上記円周方向に関する位相は、図示の様に互いに一致させて、上記両ねじ30、29同士の噛合部の作動を円滑に行なわせる様にしている。
【0013】
上述の様に構成する本例の無段変速機用プーリ幅調整装置によりプーリ幅を変える場合には、前記電動モータ27により前記ウォーム28を介して上記第二の筒状部材22を回転させる。そして、この第二の筒状部材22と共に前記第一の筒状部材20を回転させつつ、この第二の筒状部材22を軸方向に変位させ、この第二の筒状部材22に前記玉軸受11aを介して結合した前記変位側プーリ片4bを、軸方向に変位させる。
【0014】
即ち、上記プーリ幅を変える際には、前記電動モータ27により、上記ウォーム28を介して上記第二の筒状部材22を所定方向に回転させる。この第二の筒状部材22の回転に伴って上記第一の筒状部材20が、前記雌ねじ29と雄ねじ30との係合に基づき、回転する。この際、これら雌ねじ29の周速と雄ねじ30の周速とは互いに等しくなる。又、図3に示す様に、互いに噛合する、上記雌ねじ29のピッチPと雄ねじ30のピッチPとは互いに等しい。これに対して、これら雌ねじ29のピッチ円直径D0 と雄ねじ30のピッチ円直径d0 とは互いに異なる(D0 >d0 )。この為、上記第二の筒状部材22が1回転する間に、上記第一の筒状部材20は1回転を越えて(D0 /d0 回)回転する。この結果、この第一の筒状部材20が上記第二の筒状部材22よりも余分に回転する分{第二の筒状部材22が1回転する毎に(D0 /d0 )−1回分}だけ、上記第二の筒状部材22及び玉軸受11aによりこの第二の筒状部材22に結合した前記変位側プーリ片4bが軸方向に[P・{(D0 /d0 )−1}分]変位する。上記第二の筒状部材22は、回転しつつ軸方向に変位するが、上記変位側プーリ片4bはこの第二の筒状部材22に対して回転自在である為、(前記回転軸1bに対して回転する事なく)回転軸1bと共に回転しつつ軸方向に変位して、上記プーリ幅を変える。
【0015】
上記雌ねじ29と雄ねじ30との係合状態は転がり接触に近く、滑り接触状態は僅かである。この為、これら雌ねじ29と雄ねじ30との係合部での動力損失は僅かで、プーリ幅調整装置の駆動部全体として高い伝達効率を得られる。又、上記電動モータ27への通電を停止した状態では、無端ベルト9から上記変位側プーリ片4bに加わるスラスト荷重に拘らず、上記第一、第二の筒状部材20、22が回転する事はない。従って、上記電動モータ27として、特にブレーキ付のものを使用しなくても、上記変位側プーリ片4bを静止させて、上記プーリ幅を調整後の状態のままに維持できる。尚、上記第二の筒状部材22の外周面に形成した前記ウォームホイール歯26の幅は、前述した様に広い為、前記プーリ幅を調節する際に於ける、上記第二の筒状部材22の全ストローク範囲に亙り、上記ウォームホイール歯26と前記ウォーム28とは、適正に噛合した状態のままとなる。
【0016】
次に、図4は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、駆動軸又は従動軸である回転軸1cの片半部(図4の左半部)の周囲に配置した第一の筒状部材20aの基端部(図4の左端部)を変速機ケース18aの内面に、それぞれがアンギュラ型である1対の玉軸受21a、21aにより、回転のみ自在に支持している。本例の場合も、上記回転軸1cの中心軸αと、上記第一の筒状部材20aの中心軸βとは、δ分偏心している。
【0017】
又、上記回転軸1cの一端部(図4の右端部)に固定側プーリ片2cを、スプライン係合と鍔部31による背面支持とにより固定している。又、上記回転軸1cの中間部に変位側プーリ片4cをスプライン係合により、この回転軸1cに対する軸方向に亙る変位のみ自在に支持している。又、上記変位側プーリ片4cの外側面内周寄り部分に形成した円筒部25aの周囲に第二の筒状部材22aの一端部(図4の右端部)を、それぞれがアンギュラ型である1対の玉軸受11b、11bにより、上記変位側プーリ片4cに対する回転のみ自在に支持している。上記第二の筒状部材22aの中間部及び他端部の内径は、上記第一の筒状部材20aの先半部(図4の右半部)の外径よりも大きい。
【0018】
又、上記第一の筒状部材20aの外周面には、平歯車或ははすば歯車である従動歯車32を固設している。更に、この従動歯車32を、正転、逆転自在な図示しない電動モータにより回転駆動される駆動歯車33と噛合させて、上記第一の筒状部材20aを所望方向に回転駆動自在としている。尚、本例の場合には、ベルト幅の調整に拘らず軸方向に変位しない、上記第一の筒状部材20aに従動歯車32を固設している為、この従動歯車32や上記駆動歯車33の幅を特に大きくする必要はない。
【0019】
又、本例の場合も、上記第二の筒状部材22aの他端部内周面にピッチ円直径がD0 である雌ねじ29を、上記第一の筒状部材20aの先半部(図4の右半部)の外周面にピッチ円直径がd0 である雄ねじ30を、それぞれ形成している。本例の場合も、前述した、回転軸1cの中心軸αと第一の筒状部材20aの中心軸βとの偏心量δを、上記両ピッチ円直径の差の1/2[δ{=(D0 −d0 )/2}]として、上記雄ねじ30と上記雌ねじ29とを、円周方向の一部のみ噛合させている。本例の場合も、これら雄ねじ30と雌ねじ29とのうちの一方が、請求項に記載したねじ溝に相当し、他方が同じく係合溝に相当する。
【0020】
上述の様に構成する本例の無段変速機用プーリ幅調整装置によりプーリ幅を変える場合には、図示しない電動モータにより上記駆動歯車33及び従動歯車32を介して、上記第一の筒状部材20aを回転させる。そして、この第一の筒状部材20aと共に上記第二の筒状部材22aを回転させつつ、この第二の筒状部材22aを軸方向に変位させ、この第二の筒状部材22aに前記各玉軸受11b、11bを介して結合した前記変位側プーリ片4cを、軸方向に変位させる。即ち、本例の場合も、上記第一の筒状部材20aが上記第二の筒状部材22aよりも余分に回転する分だけ、上記第二の筒状部材22a及び玉軸受11bによりこの第二の筒状部材22aに結合した前記変位側プーリ片4cが軸方向に変位する。そして、前記変位側プーリ片4cを、前記回転軸1cに対して回転する事なく軸方向に変位させて、上記プーリ幅を変える。この様な本例の場合も、上記駆動歯車33を回転駆動する為の電動モータとして、特にブレーキ付のものを使用しなくても、上記変位側プーリ片4bを静止させて、上記プーリ幅を調整後の状態のままに維持できる。
【0021】
尚、本発明の無段変速機用プーリ幅調整装置を構成して変位側プーリ片を軸方向に亙り変位させる為のアクチュエータとしては、前述した第1例及び上述した第2例の構造を含め、次の▲1▼〜▲4▼の様な態様が考えられる。
▲1▼ 第一の筒状部材の一部外周面に雄ねじを、第二の筒状部材の一部内周面に雌ねじを、それぞれ形成すると共に、これら第一、第二の筒状部材同士を互いに平行に配置して、上記雄ねじの円周方向の一部と上記雌ねじの円周方向の一部とを互いに噛合させる。
▲2▼ 第一の筒状部材の一部外周面に、それぞれが円周方向に設けられた互いに平行な複数本の突条を、第二の筒状部材の一部内周面に雌ねじを、それぞれ形成すると共に、上記第一、第二の筒状部材同士を互いに平行に配置して、上記突条の円周方向の一部と上記雌ねじの円周方向の一部とを互いに噛合させる。
▲3▼ 第一の筒状部材の一部外周面に雄ねじを、第二の筒状部材の一部内周面にそれぞれが円周方向に設けられた互いに平行な複数本の突条を、それぞれ形成すると共に、上記第一、第二の筒状部材同士を互いに平行に配置して、上記突条の円周方向の一部と上記雌ねじの円周方向の一部とを互いに噛合させる。
▲4▼ 上記▲2▼▲3▼の何れかで、雄ねじ又は雌ねじ及び突条のピッチを、それぞれPとし、外径側に配置した(径の大きな)雌ねじ又は突条のピッチ円直径をD0 とした場合に、第二の筒状部材の中心軸を、θ= tan-1{P/(π・D0 )}で表される角度θだけ、第一の筒状部材の中心軸に対し傾斜させる。
【0022】
図5は、このうちの▲2▼に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、第一の筒状部材20bの外周面に、それぞれが円周方向に設けられた互いに平行な複数本の突条34、34を、互いに等間隔に(等ピッチで)形成し、これら各突条34、34を、請求項に記載した係合溝としている。尚、これら各突条34、34のピッチPは、第二の筒状部材22bの内周面に形成した雌ねじ29aのピッチPと同じにしている。
【0023】
上述の様な本例の構造の場合も、上記第一、第二の筒状部材20b、22bのうちの何れかを回転駆動すると、これら両筒状部材20b、22bが同方向に回転しつつ、このうちの第二の筒状部材22bが軸方向に変位する。特に、本例の場合には、第一の筒状部材20bの外周面に雄ねじを形成した第1〜2例の場合に比べて、この第一の筒状部材20bが1回転する毎の、上記第二の筒状部材22bの軸方向に亙る変位量が多くなる。即ち、本例の場合には、この第二の筒状部材22bが1回転する毎にこの第二の筒状部材22bが、軸方向にP分、変位する。その他の構成及び作用は、前述した第1〜2例の何れかと同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0024】
次に、図6は、前述した▲4▼に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合も、上述した第3例の場合と同様に、第一の筒状部材20bの外周面に互いに平行な複数本の突条34、34を互いに等間隔に形成して、この第一の筒状部材20bの外周面に係合溝を形成している。特に、本例の場合には、上記第一の筒状部材20bの中心軸βを、第二の筒状部材22bの中心軸αに対し、角度θだけ傾斜させている。この傾斜角度θは、この第二の筒状部材22bの内周面に形成した雌ねじ29a及び上記第一の筒状部材20bの外周面に形成した突条34、34のピッチをPとし、上記雌ねじ29aのピッチ円直径をD0 とした場合に、θ= tan-1{P/(π・D0 )}とする。
この様な本例の場合も、上記第一、第二の筒状部材20b、22bのうちの何れかを回転させると、このうちの第二の筒状部材22bが、回転しつつ軸方向に変位する。第一の筒状部材20bを傾斜させた点以外の構成及び作用は、上述した第3例の場合と同様である。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、小型で効率が良い無段変速機用プーリ幅調整装置を実現して、各種用途に使用するベルト型の無段変速機の小型軽量化と省エネルギ化とを図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す要部断面図。
【図2】一部を省略して示す、図1のA−A断面図。
【図3】一部を省略して示す、図2のB−B断面図。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す要部断面図。
【図5】本発明の実施の形態の第3例を示す、部分略断面図。
【図6】同第4例を示す、部分略断面図。
【図7】従来構造の第1例を示す要部断面図。
【図8】同第2例を示す要部断面図。
【符号の説明】
1、1a、1b、1c 回転軸
2、2a、2b、2c 固定側プーリ片
3 止めねじ
4、4a、4b、4c 変位側プーリ片
5 枢軸
6 調整レバー
7 スリーブ
8 玉軸受
9 無端ベルト
10 回転筒
11、11a、11b 玉軸受
12 雌ねじ
13 固定筒
14 雄ねじ
15 従動ギヤ
16 駆動軸
17 駆動ギヤ
18、18a 変速機ケース
19 玉軸受
20、20a、20b 第一の筒状部材
21、21a 玉軸受
22、22a、22b 第二の筒状部材
23 キー
24 キー溝
25、25a 円筒部
26 ウェームホイール歯
27 電動モータ
28 ウォーム
29、29a 雌ねじ
30 雄ねじ
31 鍔部
32 従動歯車
33 駆動歯車
34 突条
Claims (1)
- 無端ベルトの一部を掛け渡したプーリの幅を変える事により駆動軸と従動軸との間の変速比を変える無段変速機に組み込んで、上記プーリの幅を変える為に、このプーリを、回転軸の周囲にこの回転軸の軸方向に関する変位を阻止した状態でこの回転軸と同期した回転を自在として支持された固定側プーリ片と、この回転軸の軸方向に亙る変位及びこの回転軸と同期した回転を自在として支持された変位側プーリ片と、この変位側プーリ片を上記回転軸の軸方向に亙り変位させる為のアクチュエータとから構成した無段変速機用プーリ幅調整装置に於いて、このアクチュエータは、固定の部分に対して回転のみ自在に支持された第一の筒状部材と、この筒状部材と異なる直径を有し、上記変位側プーリ片に対しこの変位側プーリ片に対する回転のみ自在に、且つ上記第一の筒状部材に対し偏心した状態で支持された第二の筒状部材と、これら第一、第二の筒状部材の周面のうちで互いに対向する1対の周面のうちの一方の周面に形成された螺旋状のねじ溝と、上記第一、第二の筒状部材の周面のうちで互いに対向する1対の周面のうちの他方の周面に円周方向に亙って形成された、上記ねじ溝と同じピッチを有する係合溝と、第一、第二の筒状部材のうちの一方の筒状部材を回転駆動する為のモータとを備え、上記ねじ溝の円周方向の一部と上記係合溝の円周方向の一部とを互いに噛合させたものであり、上記ねじ溝と上記係合溝とを噛合させる部分と、上記プーリに上記無端ベルトの一部を掛け渡す部分との上記円周方向に関する位相が互いに一致している事を特徴とする無段変速機用プーリ幅調整装置。
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