JP3692627B2 - 遠心送風機 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠心式送風機に関するもので、車両用空調装置に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
遠心送風機は、周知のように、回転軸方向から吸入した空気を径外方向に吹き出す遠心式ファンと、この遠心多翼式ファンの回転軸周りに渦巻き状に形成されたケーシングとから構成されており、遠心式多翼ファンから、その周速に近い高速の絶対速度でもって吹き出された空気の運動エネルギの一部をケーシングによって圧力エネルギに変換して吹出口から吹き出すものである。そして、吹出口から吹き出される空気の流速および圧力はケーシングの形状に大きく依存しており、その意味において、ケーシングは遠心送風機の送風性能を決定する重要な構成部品である。したがって、ケーシング形状の最適化を図ることは、遠心送風機の送風性能の向上を図る上で重要な意味を有している。
【0003】
このため、ケーシングの巻き始め部位から巻き終わり部位に向かうほどケーシングによって形成される渦巻き状の空気流路内を流れる風量が増加していくので、仮に空気流路の断面積が一定であるとすると、巻き始め部位から巻き終わり部位に向かうほど空気流路内を流れる空気の流速が上昇してしまう。そして、空気流路内を流れる空気の圧力損失は、周知のごとく流速の2乗に比例して大きくなるので、空気流路の断面積を一定にすることは、遠心送風機の効率向上を図る上で好ましくない。
【0004】
したがって、理想的には、空気流路内全域に渡って流速が所定値であることが望ましい。しかし、これを実現しようとすると、ケーシングの外形寸法が大きくなってしまうので現実には難しい。
そこで、例えば、特開平5−195995号公報では、空気流路の断面積は、空気流路内の圧力損失が過度に大きくならない程度にケーシング巻き始めから巻き終わりに向かうほど大きくなるように設計されている。
【0005】
なお、遠心式多翼ファンの軸方向に、単純に空気流路の断面積を拡大すると、遠心式多翼ファンと吸入口側のケーシング内壁との隙間が大きくなるので、送風能力は向上するが、後述するように、騒音は大きくなってしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、遠心式多翼ファンの径方向から吹き出した空気の多くは、ケーシング内を流れて吹出口から吹き出されるが、一部は、図6に示すように、遠心式多翼ファン72と吸入口75側のケーシング74内壁との隙間77cから吸入口側に向けて逆流する。このため、この逆流した空気と吸入空気との間の摩擦が発生し、騒音を発生させる。
【0007】
したがって、この騒音原因の発生を防止するには、隙間77cの間隔を小さくするとともに、遠心式多翼ファン72の径外方端部から吸入口75までに至る隙間77cの長さを長くする手段が有効である。
しかし、隙間77cの間隔を小さくするには、樹脂成形品であるケーシング74や遠心式多翼ファン72の寸法バラツキ、およびケーシング74、遠心式多翼ファン72およびモータ73等の組付け寸法バラツキを小さくする必要があるので、単純に隙間77cの間隔を小さくするいった手段では、遠心送風機の製造原価上昇を招いてしまう。(因みに、上記隙間の間隔は、現状では約3mmである。)
また、隙間77cの長さを単純に長くすると、ケーシング74の高さ寸法Hが、シュラウド77の傾斜面に沿って小さくなってしまうので、空気流路74aの断面積の縮小を招いてしまい、送風能力の低下を招いてしまう(特開平5−296194号公報参照)。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、遠心式送風機において、送風能力を維持しつつ騒音低減を図ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。
請求項1または2に記載の発明では、対向屈曲部位(78)とシュラウド(77)との隙間(77c)に沿って吸入口(75)近傍から径外方に向かう対向屈曲部位(78)の対向長さ(L)は、渦巻き状の巻き始め部位(74c)から渦巻き状の巻き終わり部位(74d)に向かうほど小さくなっている。さらに、対向屈曲部位(78)から連なるケーシング(74)の内壁(74b)と駆動手段(73)側のケーシング(74)の内壁(74e)とのケーシング高さ(H)は、対向長さ(L)が小さくなるほど大きくなることを特徴とする。
【0010】
ところで、隙間(77c)から吸入口(75)側に向けての空気の逆流は、後述するように、渦巻き状の巻き始め部位(74c)に向かうほど大きくなるので、騒音は渦巻き状の巻き始め部位(74c)に向かうほど大きくなる。
そして、本発明によれば、対向屈曲部位(78)の対向長さ(L)は、巻き始め部位(74c)から巻き終わり部位(74d)に向かうほど短くなっているので、巻き始め部位(74c)に向かうほど対向長さ(L)が長くなる。したがって、騒音を有効に防止することができる。
【0011】
さらに、対向長さ(L)の縮小とともに、ケーシング高さ(H)が大きくなっているので、空気流路(74a)の断面積を巻き終わり部位(74d)に向かうほど拡大させることができる。したがって、上述のように、送風能力の向上を図ることができる。
つまり、本発明によれば、送風能力の維持向上を図りつつ、騒音低減を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、対向長さ(L)および前記ケーシング高さ(H)は、渦巻き状の巻き始め部位(74c)から渦巻き状の巻き終わり部位(74d)に渡って連続的に変化していることを特徴とする。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る遠心送風機(以下、送風機と略す。)を水冷エンジン搭載車両の車両用空調装置1に適用した場合の模式図である。
【0014】
空調ケーシング2の空気上流側部位には、車室内気を吸入するための内気吸入口3と外気を吸入するための外気吸入口4とが形成されるとともに、これらの吸入口3、4を選択的に開閉する吸入口切換ドア5が設けられている。また、この吸入口切換ドア5は、サーボモータ等の駆動手段または手動操作によって開閉される。
【0015】
この吸入口切換ドア5の下流側部位には、本実施形態に係る送風機7が配設されており、この送風機7により両吸入口3、4から吸入された空気が、後述する各吹出口14、15、17に向けて送風されている。送風機7の空気下流側には、空気冷却手段をなす蒸発器9が配設されており、送風機7により送風された空気は全てこの蒸発器9を通過する。蒸発器9の空気下流側には、空気加熱手段をなすヒータコア10が配設されており、このヒータコア10は、エンジン11の冷却水を熱源として空気を加熱している。なお、図1に示された送風機の図は、模式図であり、詳細は後述する。
【0016】
空調ケーシング2には、ヒータコア10をバイパスするバイパス通路12が形成されており、ヒータコア10の空気上流側には、ヒータコア10を通る風量とバイパス通路12を通る風量との風量割合を調節するエアミックスドア13が配設されている。この風量割合の調節は、このエアミックスドア13の開度を調節することにより調節される。
【0017】
また、空調ケーシング2の最下流側部位には、車室内乗員の上半身に空調空気を吹き出すためのフェイス吹出口14と、車室内乗員の足元に空気を吹き出すためのフット吹出口15と、フロントガラス16の内面に向かって空気を吹き出すためのデフロスタ吹出口17とが形成されている。
そして、上記各吹出口14、15、17の空気上流側部位には、それぞれ吹出モード切換ドア18、19、20が配設されている。なお、これらの吹出モード切換ドア18、19、20は、サーボモータ等の駆動手段または手動操作によって開閉される。
【0018】
次に、図2を用いて送風機7について詳述する。
この送風機機7は回転軸方向から吸入した空気を径外方に向けて吹き出す遠心式の送風機であり、72は回転軸周りに多数枚の翼(ブレード)71を有する周知の遠心式多翼ファン72(以下、ファンと略す。)である。そして、このファン72はモータ等の駆動手段(以下、モータと呼ぶ。)73によって回転駆動されており、送風量の制御は、このモータ73の回転数を制御することによって行われている。
【0019】
74はファン72を収納するとともに、ファン72から吹き出した空気が流れる空気流路74aを構成し、ファン72の回転軸周りに渦巻き状に形成されたポリプロピレン等の樹脂製のケーシングで、ケーシング74の巻き終わり部位74dの空気下流側には、空調ケーシング2に連通する吹出口75aが形成されている(図3参照)。そして、このケーシング74のうち回転軸方向であって、モータ73の反対側には、ケーシング74内に空気を導く吸入口75が開口している。この吸入口75の外縁部のケーシング74には、吸入口75からファン72の近傍まで延びるベルマウス76が形成されており、このベルマウス76により、吸入空気は吸入口75から翼71に向けて滑らかに導かれる。
【0020】
また、多数枚の翼71のうち吸入口75側端部71aには、回転軸方向の断面形状が吸入口75から径外方に向けて偏向する空気流れに沿うような形状を有する環状のシュラウド77が形成され、このシュラウド77には、端部71aから突出して吸入口75側に延びる突出部77aが形成されている。そして、ベルマウス76は、吸入口75側から端部71a側へと回転軸側からこの突出部77aを覆うようにモータ73側に窪むようにして形成されている。
【0021】
また、ケーシング74のうちベルマウス76近傍には、シュラウド77と所定の隙間77cを有して対向するとともに、ベルマウス76から径外方に向けてシュラウド77の形状に沿うように屈曲する対向屈曲部位78が形成されている。この対向屈曲部位78の対向長さ(隙間77cに沿ってベルマウス76から径外方に向かう長さ)Lは、図4に示すように、ケーシング74の巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに向かうほど小さくなるとともに、対向屈曲部位78に連なる吸入口75側のケーシング内壁74bとモータ73側のケーシング内壁74eとのケーシング高さHは、対向長さLが小さくなるほど大きくなっている。
【0022】
なお、本実施形態では、対向長さLおよびケーシング高さHは、巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに渡って連続的に滑らかに変化している。
次に、本実施形態の特徴を述べる。
先ず、以下の説明の理解を容易にするために、発明者等が送風機の騒音発生原因について調査検討した点について述べる。
【0023】
ケーシング74の巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに向かうほど空気流路74a内を流れる風量が増加していき、かつ、従来の技術の欄で述べたように、空気流路74a内の流速は、空気流路74a内全域に渡って一定ではなく、巻き終わり部位74dに向かうほど小さくなっていくので、本実施形態に限らず、通常、巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに向かうほど空気流路74a内の圧力は上昇していく。
【0024】
そして、空気流路74aは、ノーズ部分(巻き始め部位74cの近傍の部分)にて下流(巻き終わり部位74d)側と上流(巻き始め部位74c)側とが繋がっているので、ノーズ部分を経由して内圧の高い下流側の空気が、内圧の低い下流側に流れ込んでくる。
したがって、上流側ほど隙間77cから吸入口75側に向けて空気が逆流し易く、逆に下流側ほど逆流し難い。つまり、逆流による騒音は、上流側ほど発生し易く、逆に下流側ほど発生し難い。
【0025】
そして、本実施形態によれば、対向屈曲部位78の対向長さLは、ケーシング74の巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに向かうほど小さくなっている。したがって、逆流の発生し易い上流側ほど、対向長さLが長くなっているので、騒音を有効に防止することができる。
さらに、対向長さLの縮小とともに、ケーシング高さHが大きくなっているので、空気流路74aの断面積を下流側に向かうほど拡大させることができるので、上述のように、送風能力の向上を図ることができる。
【0026】
つまり、本実施形態によれば、送風能力の維持向上を図りつつ、騒音低減を図ることができる。
因みに、図5は本実施形態に係る送風機(実線)と、ケーシング高さを(H+α)として一定とした送風機(一点鎖線)と、ケーシング高さをHとして一定とした送風機(破線)とについて、比騒音Ks および圧力係数ψと流量係数φとの関係を比較試験した試験結果である。なお、ここで、αとは、巻き始め部位74cでのケーシング高さと巻き終わり部位74dでのケーシング高さとの差である。
【0027】
図5から明らかなように、本実施形態に係る送風機(実線)は、ケーシング高さを(H+α)として一定とした送風機(一点鎖線)に比べて、比騒音Ks で約2(dBA)改善していることが判る。
また、本実施形態に係る送風機は、圧力係数ψの頂点(ピーク)がケーシング高さをHとして一定とした送風機(破線)に比べて、流量係数φの高いところで現れている。したがって、本実施形態に係る送風機は、送風量を最も必要とする圧力損失の小さいフェイスモードなどでの使用に対して、特に有効であることが判る。
【0028】
なお、発明者等試験検討によれば、圧力係数ψの頂点に対応する流量係数φは、αに略比例する(φ1 /φ2 ∝α)との結果を得ている。つまり、αの値を適当に選定することにより、送風機の仕様に適合した圧力係数ψ特性を有する送風機を得ることが可能となる。
因みに、流量係数φが大きい状態とは、実際の車両用空調装置では、乗員上半身に空気を吹き出すフェイスモードなどの圧力損失の小さい状態での使用状態に相当し、流量係数φが小さい状態とは、乗員足元に空気を吹き出すフットモード等の圧力損失の大きい状態での使用状態に相当する。
【0029】
また、上述のように、隙間77cの間隔を小さくするこなく、逆流を有効に防止することができるので、遠心送風機の製造原価上昇を防止して騒音低減を図ることができる。
ところで、上述の実施形態では、対向長さLおよびケーシング高さHを連続的に滑らかに変化させたが、対向長さLおよびケーシング高さHを巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに掛けて他段階的に変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る遠心送風機を車両用空調装置に適用した場合の全体模式図である。
【図2】本実施形態に係る遠心送風機の断面図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】対向長さLおよびケーシング高さHの変化を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る送風機の比騒音Ks および圧力係数ψと流量係数φとの関係を示すグラフである。
【図6】従来の技術に係る送風機の断面図である。
【符号の説明】
7…遠心送風機、71…翼、72…遠心式多翼ファン、
73…モータ(駆動手段)、74…ケーシング、75…吸入口、
76…ベルマウス、77…シュラウド、78…対向屈曲部位。
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠心式送風機に関するもので、車両用空調装置に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
遠心送風機は、周知のように、回転軸方向から吸入した空気を径外方向に吹き出す遠心式ファンと、この遠心多翼式ファンの回転軸周りに渦巻き状に形成されたケーシングとから構成されており、遠心式多翼ファンから、その周速に近い高速の絶対速度でもって吹き出された空気の運動エネルギの一部をケーシングによって圧力エネルギに変換して吹出口から吹き出すものである。そして、吹出口から吹き出される空気の流速および圧力はケーシングの形状に大きく依存しており、その意味において、ケーシングは遠心送風機の送風性能を決定する重要な構成部品である。したがって、ケーシング形状の最適化を図ることは、遠心送風機の送風性能の向上を図る上で重要な意味を有している。
【0003】
このため、ケーシングの巻き始め部位から巻き終わり部位に向かうほどケーシングによって形成される渦巻き状の空気流路内を流れる風量が増加していくので、仮に空気流路の断面積が一定であるとすると、巻き始め部位から巻き終わり部位に向かうほど空気流路内を流れる空気の流速が上昇してしまう。そして、空気流路内を流れる空気の圧力損失は、周知のごとく流速の2乗に比例して大きくなるので、空気流路の断面積を一定にすることは、遠心送風機の効率向上を図る上で好ましくない。
【0004】
したがって、理想的には、空気流路内全域に渡って流速が所定値であることが望ましい。しかし、これを実現しようとすると、ケーシングの外形寸法が大きくなってしまうので現実には難しい。
そこで、例えば、特開平5−195995号公報では、空気流路の断面積は、空気流路内の圧力損失が過度に大きくならない程度にケーシング巻き始めから巻き終わりに向かうほど大きくなるように設計されている。
【0005】
なお、遠心式多翼ファンの軸方向に、単純に空気流路の断面積を拡大すると、遠心式多翼ファンと吸入口側のケーシング内壁との隙間が大きくなるので、送風能力は向上するが、後述するように、騒音は大きくなってしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、遠心式多翼ファンの径方向から吹き出した空気の多くは、ケーシング内を流れて吹出口から吹き出されるが、一部は、図6に示すように、遠心式多翼ファン72と吸入口75側のケーシング74内壁との隙間77cから吸入口側に向けて逆流する。このため、この逆流した空気と吸入空気との間の摩擦が発生し、騒音を発生させる。
【0007】
したがって、この騒音原因の発生を防止するには、隙間77cの間隔を小さくするとともに、遠心式多翼ファン72の径外方端部から吸入口75までに至る隙間77cの長さを長くする手段が有効である。
しかし、隙間77cの間隔を小さくするには、樹脂成形品であるケーシング74や遠心式多翼ファン72の寸法バラツキ、およびケーシング74、遠心式多翼ファン72およびモータ73等の組付け寸法バラツキを小さくする必要があるので、単純に隙間77cの間隔を小さくするいった手段では、遠心送風機の製造原価上昇を招いてしまう。(因みに、上記隙間の間隔は、現状では約3mmである。)
また、隙間77cの長さを単純に長くすると、ケーシング74の高さ寸法Hが、シュラウド77の傾斜面に沿って小さくなってしまうので、空気流路74aの断面積の縮小を招いてしまい、送風能力の低下を招いてしまう(特開平5−296194号公報参照)。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、遠心式送風機において、送風能力を維持しつつ騒音低減を図ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。
請求項1または2に記載の発明では、対向屈曲部位(78)とシュラウド(77)との隙間(77c)に沿って吸入口(75)近傍から径外方に向かう対向屈曲部位(78)の対向長さ(L)は、渦巻き状の巻き始め部位(74c)から渦巻き状の巻き終わり部位(74d)に向かうほど小さくなっている。さらに、対向屈曲部位(78)から連なるケーシング(74)の内壁(74b)と駆動手段(73)側のケーシング(74)の内壁(74e)とのケーシング高さ(H)は、対向長さ(L)が小さくなるほど大きくなることを特徴とする。
【0010】
ところで、隙間(77c)から吸入口(75)側に向けての空気の逆流は、後述するように、渦巻き状の巻き始め部位(74c)に向かうほど大きくなるので、騒音は渦巻き状の巻き始め部位(74c)に向かうほど大きくなる。
そして、本発明によれば、対向屈曲部位(78)の対向長さ(L)は、巻き始め部位(74c)から巻き終わり部位(74d)に向かうほど短くなっているので、巻き始め部位(74c)に向かうほど対向長さ(L)が長くなる。したがって、騒音を有効に防止することができる。
【0011】
さらに、対向長さ(L)の縮小とともに、ケーシング高さ(H)が大きくなっているので、空気流路(74a)の断面積を巻き終わり部位(74d)に向かうほど拡大させることができる。したがって、上述のように、送風能力の向上を図ることができる。
つまり、本発明によれば、送風能力の維持向上を図りつつ、騒音低減を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、対向長さ(L)および前記ケーシング高さ(H)は、渦巻き状の巻き始め部位(74c)から渦巻き状の巻き終わり部位(74d)に渡って連続的に変化していることを特徴とする。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る遠心送風機(以下、送風機と略す。)を水冷エンジン搭載車両の車両用空調装置1に適用した場合の模式図である。
【0014】
空調ケーシング2の空気上流側部位には、車室内気を吸入するための内気吸入口3と外気を吸入するための外気吸入口4とが形成されるとともに、これらの吸入口3、4を選択的に開閉する吸入口切換ドア5が設けられている。また、この吸入口切換ドア5は、サーボモータ等の駆動手段または手動操作によって開閉される。
【0015】
この吸入口切換ドア5の下流側部位には、本実施形態に係る送風機7が配設されており、この送風機7により両吸入口3、4から吸入された空気が、後述する各吹出口14、15、17に向けて送風されている。送風機7の空気下流側には、空気冷却手段をなす蒸発器9が配設されており、送風機7により送風された空気は全てこの蒸発器9を通過する。蒸発器9の空気下流側には、空気加熱手段をなすヒータコア10が配設されており、このヒータコア10は、エンジン11の冷却水を熱源として空気を加熱している。なお、図1に示された送風機の図は、模式図であり、詳細は後述する。
【0016】
空調ケーシング2には、ヒータコア10をバイパスするバイパス通路12が形成されており、ヒータコア10の空気上流側には、ヒータコア10を通る風量とバイパス通路12を通る風量との風量割合を調節するエアミックスドア13が配設されている。この風量割合の調節は、このエアミックスドア13の開度を調節することにより調節される。
【0017】
また、空調ケーシング2の最下流側部位には、車室内乗員の上半身に空調空気を吹き出すためのフェイス吹出口14と、車室内乗員の足元に空気を吹き出すためのフット吹出口15と、フロントガラス16の内面に向かって空気を吹き出すためのデフロスタ吹出口17とが形成されている。
そして、上記各吹出口14、15、17の空気上流側部位には、それぞれ吹出モード切換ドア18、19、20が配設されている。なお、これらの吹出モード切換ドア18、19、20は、サーボモータ等の駆動手段または手動操作によって開閉される。
【0018】
次に、図2を用いて送風機7について詳述する。
この送風機機7は回転軸方向から吸入した空気を径外方に向けて吹き出す遠心式の送風機であり、72は回転軸周りに多数枚の翼(ブレード)71を有する周知の遠心式多翼ファン72(以下、ファンと略す。)である。そして、このファン72はモータ等の駆動手段(以下、モータと呼ぶ。)73によって回転駆動されており、送風量の制御は、このモータ73の回転数を制御することによって行われている。
【0019】
74はファン72を収納するとともに、ファン72から吹き出した空気が流れる空気流路74aを構成し、ファン72の回転軸周りに渦巻き状に形成されたポリプロピレン等の樹脂製のケーシングで、ケーシング74の巻き終わり部位74dの空気下流側には、空調ケーシング2に連通する吹出口75aが形成されている(図3参照)。そして、このケーシング74のうち回転軸方向であって、モータ73の反対側には、ケーシング74内に空気を導く吸入口75が開口している。この吸入口75の外縁部のケーシング74には、吸入口75からファン72の近傍まで延びるベルマウス76が形成されており、このベルマウス76により、吸入空気は吸入口75から翼71に向けて滑らかに導かれる。
【0020】
また、多数枚の翼71のうち吸入口75側端部71aには、回転軸方向の断面形状が吸入口75から径外方に向けて偏向する空気流れに沿うような形状を有する環状のシュラウド77が形成され、このシュラウド77には、端部71aから突出して吸入口75側に延びる突出部77aが形成されている。そして、ベルマウス76は、吸入口75側から端部71a側へと回転軸側からこの突出部77aを覆うようにモータ73側に窪むようにして形成されている。
【0021】
また、ケーシング74のうちベルマウス76近傍には、シュラウド77と所定の隙間77cを有して対向するとともに、ベルマウス76から径外方に向けてシュラウド77の形状に沿うように屈曲する対向屈曲部位78が形成されている。この対向屈曲部位78の対向長さ(隙間77cに沿ってベルマウス76から径外方に向かう長さ)Lは、図4に示すように、ケーシング74の巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに向かうほど小さくなるとともに、対向屈曲部位78に連なる吸入口75側のケーシング内壁74bとモータ73側のケーシング内壁74eとのケーシング高さHは、対向長さLが小さくなるほど大きくなっている。
【0022】
なお、本実施形態では、対向長さLおよびケーシング高さHは、巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに渡って連続的に滑らかに変化している。
次に、本実施形態の特徴を述べる。
先ず、以下の説明の理解を容易にするために、発明者等が送風機の騒音発生原因について調査検討した点について述べる。
【0023】
ケーシング74の巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに向かうほど空気流路74a内を流れる風量が増加していき、かつ、従来の技術の欄で述べたように、空気流路74a内の流速は、空気流路74a内全域に渡って一定ではなく、巻き終わり部位74dに向かうほど小さくなっていくので、本実施形態に限らず、通常、巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに向かうほど空気流路74a内の圧力は上昇していく。
【0024】
そして、空気流路74aは、ノーズ部分(巻き始め部位74cの近傍の部分)にて下流(巻き終わり部位74d)側と上流(巻き始め部位74c)側とが繋がっているので、ノーズ部分を経由して内圧の高い下流側の空気が、内圧の低い下流側に流れ込んでくる。
したがって、上流側ほど隙間77cから吸入口75側に向けて空気が逆流し易く、逆に下流側ほど逆流し難い。つまり、逆流による騒音は、上流側ほど発生し易く、逆に下流側ほど発生し難い。
【0025】
そして、本実施形態によれば、対向屈曲部位78の対向長さLは、ケーシング74の巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに向かうほど小さくなっている。したがって、逆流の発生し易い上流側ほど、対向長さLが長くなっているので、騒音を有効に防止することができる。
さらに、対向長さLの縮小とともに、ケーシング高さHが大きくなっているので、空気流路74aの断面積を下流側に向かうほど拡大させることができるので、上述のように、送風能力の向上を図ることができる。
【0026】
つまり、本実施形態によれば、送風能力の維持向上を図りつつ、騒音低減を図ることができる。
因みに、図5は本実施形態に係る送風機(実線)と、ケーシング高さを(H+α)として一定とした送風機(一点鎖線)と、ケーシング高さをHとして一定とした送風機(破線)とについて、比騒音Ks および圧力係数ψと流量係数φとの関係を比較試験した試験結果である。なお、ここで、αとは、巻き始め部位74cでのケーシング高さと巻き終わり部位74dでのケーシング高さとの差である。
【0027】
図5から明らかなように、本実施形態に係る送風機(実線)は、ケーシング高さを(H+α)として一定とした送風機(一点鎖線)に比べて、比騒音Ks で約2(dBA)改善していることが判る。
また、本実施形態に係る送風機は、圧力係数ψの頂点(ピーク)がケーシング高さをHとして一定とした送風機(破線)に比べて、流量係数φの高いところで現れている。したがって、本実施形態に係る送風機は、送風量を最も必要とする圧力損失の小さいフェイスモードなどでの使用に対して、特に有効であることが判る。
【0028】
なお、発明者等試験検討によれば、圧力係数ψの頂点に対応する流量係数φは、αに略比例する(φ1 /φ2 ∝α)との結果を得ている。つまり、αの値を適当に選定することにより、送風機の仕様に適合した圧力係数ψ特性を有する送風機を得ることが可能となる。
因みに、流量係数φが大きい状態とは、実際の車両用空調装置では、乗員上半身に空気を吹き出すフェイスモードなどの圧力損失の小さい状態での使用状態に相当し、流量係数φが小さい状態とは、乗員足元に空気を吹き出すフットモード等の圧力損失の大きい状態での使用状態に相当する。
【0029】
また、上述のように、隙間77cの間隔を小さくするこなく、逆流を有効に防止することができるので、遠心送風機の製造原価上昇を防止して騒音低減を図ることができる。
ところで、上述の実施形態では、対向長さLおよびケーシング高さHを連続的に滑らかに変化させたが、対向長さLおよびケーシング高さHを巻き始め部位74cから巻き終わり部位74dに掛けて他段階的に変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る遠心送風機を車両用空調装置に適用した場合の全体模式図である。
【図2】本実施形態に係る遠心送風機の断面図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】対向長さLおよびケーシング高さHの変化を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る送風機の比騒音Ks および圧力係数ψと流量係数φとの関係を示すグラフである。
【図6】従来の技術に係る送風機の断面図である。
【符号の説明】
7…遠心送風機、71…翼、72…遠心式多翼ファン、
73…モータ(駆動手段)、74…ケーシング、75…吸入口、
76…ベルマウス、77…シュラウド、78…対向屈曲部位。
Claims (2)
- 回転軸周りに多数枚の翼(71)を有し、前記回転軸方向から吸入した空気を径外方に向けて吹き出す遠心式多翼ファン(72)と、
前記遠心式多翼ファン(72)を収納するとともに前記遠心式多翼ファン(72)から吹き出した空気が流れる空気流路(74a)を構成し、前記遠心式多翼ファン(72)の回転軸周りに渦巻き状に形成されたケーシング(74)と、
前記ケーシング(74)に形成され、前記回転軸方向一端側に開口する吸入口(75)と、
前記回転軸方向他端側に配置され、前記遠心式多翼ファン(72)を回転駆動する駆動手段(73)と、
前記多数枚の翼(71)のうち前記吸入口(75)側の端部(71a)に形成され、前記回転軸方向の断面形状が前記吸入口(75)から径外方に向けて偏向する空気流れに沿うような形状を有する環状のシュラウド(77)と、
前記ケーシング(74)のうち前記吸入口(75)近傍に形成され、前記シュラウド(77)と所定の隙間(77c)を有して対向するとともに、前記吸入口(75)から径外方に向けて前記シュラウド(77)の形状に沿うように屈曲する対向屈曲部位(78)とを備え、
前記隙間(77c)に沿って前記吸入口(75)近傍から径外方に向かう前記対向屈曲部位(78)の対向長さ(L)は、前記渦巻き状の巻き始め部位(74c)から前記渦巻き状の巻き終わり部位(74d)に向かうほど小さくなり、
さらに、前記対向屈曲部位(78)から連なる前記ケーシング(74)の内壁(74b)と前記駆動手段(73)側の前記ケーシング(74)の内壁(74e)とのケーシング高さ(H)は、前記対向長さ(L)が小さくなるほど大きくなることを特徴とする遠心送風機。 - 前記対向長さ(L)および前記ケーシング高さ(H)は、前記渦巻き状の巻き始め部位(74c)から前記渦巻き状の巻き終わり部位(74d)に渡って連続的に変化していることを特徴とする請求項1に記載の遠心送風機。
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