JP3691202B2 - 半導体発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光素子に逆方向の電圧が印加されても破壊しにくい半導体発光素子に関する。さらに詳しくは、交流電圧で駆動される場合でも素子が破壊せず、しかも輝度が大幅に向上する半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体発光素子は、p形層とn形層とが直接接合するpn接合、またはその間に活性層が挟持されるダブルヘテロ接合の構造になっており、p形層とn形層との間に順方向の電圧が印加されることにより、pn接合部または活性層でキャリアが再結合して発光する。
【0003】
このような半導体発光素子で、たとえば赤色系(赤色から黄色)の光を発光する発光素子チップ(以下、LEDチップという)は、たとえば図3(a)に示されるような構造になっている。すなわち、n形のGaAsからなる半導体基板21上に、たとえばn形のAlGaInP系の半導体材料からなるn形クラッド層(n形層)22、クラッド層よりバンドギャップエネルギーが小さくなる組成のノンドープのAlGaInP系の半導体材料からなる活性層23、p形のAlGaInP系の半導体材料からなるp形クラッド層(p形層)24がそれぞれエピタキシャル成長され、ダブルヘテロ接合構造の発光層形成部29が形成されている。さらにその表面にGaPからなるp形のウィンドウ層(電流拡散層)25が順次エピタキシャル成長され、その表面にp側電極(パッド)27、半導体基板21の裏面側にn側電極(パッド)28がそれぞれAu-Zn-Ni合金やAu-Ge-Ni合金などにより形成されることにより構成されている。
【0004】
このようなLEDチップは、図3(b)に等価回路図が示されるように、ダイオード構造になっているため、逆方向の電圧が印加されても電流が流れない整流作用を利用して、直流電圧を両電極間に印加しないで交流電圧を印加することにより、交流で順方向電圧になる場合にのみ流れる電流を利用して発光させる使用方法も採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
半導体発光素子に用いられる赤色系のAlGaInP系化合物半導体もしくはAlGaAs系化合物半導体、緑色系のGaP系化合物半導体、または青色系のチッ化ガリウム系化合物半導体などの化合物半導体からなる発光素子は、逆方向電圧の印加に対して耐圧が弱く破壊しやすい。そのため、半導体発光素子を交流電圧駆動すると、素子の劣化が進み、寿命が短くなったり、初期段階でも破壊する場合があり、歩留りが下がったり、信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、発光素子に逆方向の電圧が印加されても、また交流電圧で駆動する場合にも素子の破壊や劣化を抑制し、むしろ逆に交流電圧駆動により輝度が大幅に向上し得る半導体発光素子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による半導体発光素子は、基板と、該基板上に発光層を形成すべくn形層およびp形層を含む半導体層が積層される第1の発光部と、前記基板上にまたは前記積層される半導体層の上にさらに発光層を形成すべくn形層およびp形層を含む半導体層が積層される第2の発光部とからなり、前記第1の発光部のp形層および前記第2の発光部のn形層が電気的に接続され、かつ、前記第1の発光部のn形層および前記第2の発光部のp形層が電気的に接続され、前記積層される半導体層の表面側から光を取り出す半導体発光素子であって、前記第1および第2の発光部の表面側に設けられる電極パッドは、前記第1および第2の発光部に共通して1個のみで形成されている。
【0008】
この構成にすることにより、発光素子の両端に交流電圧が印加されても2つの発光部のうちいずれか一方の発光部は順方向の電圧になる。順方向の電圧の印加であれば電流が流れて高い電圧が印加され続けることがなく、逆方向となる発光部への逆方向電圧の印加の負担は低くなる。その結果、交流が印加されてもいずれの発光部にも逆方向の高い電圧が印加されず、素子の破壊や劣化を招かない。一方、交流の正負のいずれの位相でもどちらかの発光部が発光し、同じ交流電圧の印加に対して、従来の半サイクルごとに発光する場合に比べて倍の輝度が得られる。さらに、前記第1および第2の発光部の表面側に設けられる電極パッドが共通して設けられることにより、発光面側に設けられる電極の面積を小さくすることができ、光の遮断が少なくなり、外部に取り出すことができる光の割合である外部発光効率が向上する。
【0009】
前記第1および第2の発光部がそれぞれ同じ半導体材料で発光層を形成し、同じ波長の光を発光するように形成されれば、同じ色の輝度の大きい発光素子が得られる。また、異なる半導体材料で発光層を形成し、異なる波長の光を発光するように形成すれば、同時に異なる波長の光を発光させたり、2色の混色を得ることができる。
【0010】
前記第1および第2の発光部の少なくとも一方の発光層を形成する半導体材料がAlGaInP系またはAlGaAs系の化合物半導体であれば、赤色系の可視光を含む発光素子が得られる。ここにAlGaInP系化合物半導体とは、(Alx Ga1-x )0.51In0.49Pの形で表され、xの値が0と1との間で種々の値のときの材料を意味する。なお、(Alx Ga1-x )とInの混晶比率の0.51および0.49はAlGaInP系化合物半導体が積層されるGaAsなどの半導体基板と格子整合される比率であることを意味する。なお、たとえばAlGaAs系化合物半導体とは、AlとGaの混晶比率が種々変わり得ることを意味し、他の化合物半導体についても同様である。
【0011】
請求項1に係る発明の具体的な構造としては、前記第1および第2の発光部の積層された半導体層の表面に絶縁膜を介して配線膜が形成され、該配線膜が前記絶縁膜に設けられるコンタクト孔を介して前記第1および第2の発光部の表面側に形成されている、異なる導電形層に接続され、かつ、該配線膜と連続して前記第1および第2の発光部に共通の電極パッドが形成される構造にすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎに、図面を参照しながら本発明の半導体発光素子について説明をする。
【0013】
本発明の半導体発光素子は、その一実施形態の断面説明図が図1(a)に示されるように、同一の半導体基板1上に第1の発光部16と第2の発光部17とが形成され、第1の発光部16を形成するp形層(p形ウインドウ層6またはp形クラッド層4)およびn形層(n形クラッド層2またはn形基板1)がそれぞれ第2の発光部17のn形層(n形コンタクト層11またはn形クラッド層9)およびp形層(p形クラッド層7またはp形AlGaAs系化合物半導体層6a)と電気的に接続されている。図1(a)に示される例では、それぞれの発光部に独立してp側とn側の電極12、13および14、15がそれぞれ設けられ、第1の発光部16のp側電極12と第2の発光部17のn側電極15、および第1の発光部16のn側電極13と第2の発光部17のp側電極14とがそれぞれ電気的に接続されている。その結果、図1(b)に等価回路図が示されるように、2つの発光部16、17のダイオード特性が逆向きに並列接続され、その両端に電極端子18、19が設けられる構造になっている。
【0014】
第1の発光部16は、n形GaAs基板1上にn形AlGaInP系化合物半導体からなるn形クラッド層(n形層)2と、該クラッド層よりバンドギャップエネルギーの小さい組成のノンドープのAlGaInP系化合物半導体からなる活性層3と、n形クラッド層と同じ組成のp形AlGaInP系化合物半導体からなるp形クラッド層(p形層)4からなる発光層形成部5が積層され、その表面にAlGaAs系化合物半導体からなるp形ウインドウ層6が設けられ、その表面にp側電極12が、GaAs基板1の裏面にn側電極13が、それぞれAu-Ti合金またはAu-Zn-Ni合金やAu-Ge-Ni合金などにより設けられることにより形成されている。
【0015】
第2の発光部17は、第1の発光部の各半導体層が積層された表面のp形AlGaAs系半導体層6a上に、さらに第1の発光部16と同じ材料で、p形AlGaInP系化合物半導体からなるp形クラッド層(p形層)7、該クラッド層よりバンドギャップエネルギーの小さい組成のノンドープのAlGaInP系化合物半導体からなる活性層8、およびn形AlGaInP系化合物半導体からなるn形クラッド層(n形層)9、からなる発光層形成部10が積層され、その表面にn形GaAsからなるコンタクト層11が設けられ、その表面にn側電極15がAu-Ge-Ni合金により、積層された半導体層7〜11の一部がエッチングされて露出するp形AlGaAs層6aにp側電極14がそれぞれAu-Ti合金またはAu-Zn-Ni合金などにより設けられることにより形成されている。
【0016】
第1の発光部16のための発光層形成部5およびウインドウ層6は、第1の発光部16と第2の発光部17との間の分離溝20により分離され、同じp形AlGaAs系化合物半導体層のウインドウ層6に第1の発光部16のp側電極12が設けられ、第2の発光部17側のp形AlGaAs系化合物半導体層6aに第2の発光部17のp側電極14が設けられている。そして、両発光部16、17のp側電極とn側電極12と15および14と13がそれぞれ電気的に接続されている。この電気的接続は、金線などのワイヤによる外部での接続や、表面に設けられる配線膜によりなされる。
【0017】
本発明によれば、同一の基板1上に第1の発光部16と第2の発光部17が設けられており、それぞれの発光部の順方向特性が逆になるように(両発光部のp形層とn形層とがそれぞれ電気的に接続されるように)並列接続されている。そのため、交流電圧が印加されると2つの発光部のうちいずれか一方は、常に順方向になり、常にどちらかの発光部に電流が流れて発光する。そのため、発光部に印加される逆方向電圧による負担は少なく、外部からのサージ電圧または交流電圧の印加による逆方向電圧による破壊または劣化が生じない。一方、交流電圧の印加により駆動する場合、半サイクルごとに正負が反転するが、いずれの位相でもどちらかの発光部が発光し、両発光部の発光波長が同じであれば、従来の発光素子に交流電圧を印加して発光させる場合に比べて倍の輝度で発光する。その結果、破壊しにくく信頼性が高いと共に、輝度の大きな半導体発光素子が得られる。
【0018】
このような半導体発光素子の製法を具体例により説明する。まず、たとえば有機金属化学気相成長法(MOCVD法)により、n形のGaAs基板1をMOCVD装置内に入れ、反応ガスのトリエチルガリウム(以下、TEGという)またはトリメチルガリウム(以下、TMGという)、トリメチルアルミニウム(以下、TMAという)、トリメチルインジウム(以下、TMInという)、およびホスフィン(以下、PH3 という)と、SeのドーパントガスであるH2 Seとをキャリアガスの水素(H2 )と共に導入し、たとえば(Al0.7 Ga0.3 )0.51In0.49Pからなるn形クラッド層2を0.5μm程度、反応ガスのTMAを減らしてTEGまたはTMGを増やし、たとえばノンドープの(Al0.25Ga0.75)0.51In0.49Pからなる活性層3を0.5μm程度、n形クラッド層3と同様の反応ガスで、H2 Seの代わりに、Znのドーパントガスとしてのジメチル亜鉛(DMZn)を導入して(Al0.7 Ga0.3 )0.51In0.49Pからなるp形クラッド層4を0.5μm程度エピタキシャル成長し、発光層形成部5を形成する。さらに、反応ガスのPH3 をアルシン(以下、AsH3 という)に変更すると共に、TMInを止めて、p形のAlGaAs系化合物半導体からなるウインドウ層6を0.1〜20μm程度成長する。
【0019】
さらに、反応ガスのAsH3 を再度PH3 に変えると共に、TMInを導入し、(Al0.7 Ga0.3 )0.51In0.49P化合物半導体からなるp形クラッド層7を0.5μm程度、ドーパントガスを止めると共に反応ガスのTMAを減らしてTEGまたはTMGを増やし、ノンドープの(Al0.25Ga0.75)0.51In0.49Pからなる活性層8を0.5μm程度、p形クラッド層7と同様の反応ガスで、DMZnの代わりにH2 Seを導入して(Al0.7 Ga0.3 )0.51In0.49Pからなるn形クラッド層9を0.5μm程度エピタキシャル成長し、発光層形成部10を形成する。さらに、反応ガスをTEGまたはTMGとAsH3 にしてGaAsからなるn形のコンタクト層11を0.05〜0.5μm程度形成する。
【0020】
その後、第2の発光部17の形成のために積層した発光層形成部10を、第1の発光部16の形成部および第2の発光部17の一部の領域でエッチングして、p形AlGaAs系化合物半導体層6、6aを露出させる。その後、第1の発光部16の形成のために積層したウインドウ層6および発光層形成部5を、第1の発光部16と第2の発光部17とで分離するように、n形クラッド層2またはGaAsからなる基板1が露出するまでエッチングをし、分離溝20を形成する。
【0021】
その後、エッチングにより露出するウインドウ層6およびAlGaAs系化合物半導体層6aの表面、積層された半導体層のn形GaAsからなるコンタクト層11の表面、および基板1の裏面にそれぞれAu-Ti合金またはAu-Zn-Ni合金などからなるp側電極12、14およびAu-Ge-Ni合金などからなるn側電極13、15をそれぞれ形成し、ダイシングしてチップ化する。そして第1の発光部16のp側電極12と第2の発光部17のn側電極15とを、また第1の発光部16のn側電極13と第2の発光部17のp側電極14とを、たとえば金線などを各電極間にワイヤボンディングすることにより、それぞれ電気的に接続する。
【0022】
図2は、両発光部16、17の半導体層を電気的に接続する他の例を示す平面説明図で、各半導体層がすべて積層された後に、その表面にSiO2 などの絶縁膜21が設けられ、その上に設けられる配線膜22により絶縁膜21に設けられるコンタクト孔23を介して接続されるものである。この場合、その配線膜22に電気的に接続して電極パッド12が設けられれば、外部回路との接続用の電極パッド12を、両発光部で共用することができる。このようにすることにより、ワイヤボンディングをするために大きな電極パッドを各発光部の半導体層の表面に設けなくてもよいため、光を遮断する電極面積を小さくすることができて外部発光効率が向上する。
【0023】
前述の例では、第1の発光部と第2の発光部の発光層形成部の半導体材料に同じ材料を用い、同じ波長の光を発光させ、輝度の大きい半導体発光素子としたが、第1と第2の発光部で異なる半導体材料を用い、異なる波長の光を発光させることもできる。この場合、両発光部の光を混合して混色で発光させることもできるし、それぞれ異なる側の側面から異なる波長の光を発光させることもできる。たとえば前述の図1に示される第1の発光部の半導体層の積層が終った後に、GaP層を積層することにより、第1の発光部を赤色系、第2の発光部を緑色系にすることができる。また、赤色系の発光部を形成するのにAlGaInP系化合物半導体を用いたが、AlGaAs系化合物半導体を用いることもできる。
【0024】
さらに前述の例では、第1の発光部と第2の発光部との間の分離溝20をGaAs基板1に達するまで入れているが、それぞれのp側電極が接続されるp形層が分離されていればよい。
【0025】
さらに前述の例では、第2の発光部を形成するための半導体層の積層を第1の発光部用の半導体層の上にさらに積層しているが、半導体基板上にそれぞれ部分的に選択成長をすることにより、基板上に直接別々に発光部を形成してもよい。また、基板は導電性の半導体基板が用いられているが、青色系のチッ化ガリウム系化合物半導体のように、サファイアなどの絶縁性基板上に半導体層が積層されてもよい。
【0026】
さらに、前述の例では、各発光部の発光層形成部がn形層とp形層とにより活性層が挟持されるダブルヘテロ接合構造であるが、発光層形成部はこのような構造でなくても、ホモpn接合構造などの他の構造であってもよく、また第1および第2の発光部で異なる構造の発光層形成部であってもよい。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、2個の発光部がその順方向特性が逆になるように並列に接続されているため、交流電圧が印加されても各発光部のどちらかは常に順方向になり、他方の発光部の逆方向電圧による負担が減り、逆耐圧の低い発光素子用の半導体でも破壊したり、劣化することがない。また、交流電圧が印加されることにより、交流の正負のいずれの位相でもどちらかの発光部が常に発光する。そのため、信頼性が高く、かつ、交流電圧駆動により輝度の高い半導体発光素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体発光素子の一実施形態の断面説明図である。
【図2】本発明の半導体発光素子の他の実施形態の平面説明図である。
【図3】従来の半導体発光素子の構造例を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 n形クラッド層
4 p形クラッド層
5 発光層形成部
7 p形クラッド層
9 n形クラッド層
10 発光層形成部
16 第1の発光部
17 第2の発光部
Claims (5)
- 基板と、該基板上に発光層を形成すべくn形層およびp形層を含む半導体層が積層される第1の発光部と、前記基板上にまたは前記積層される半導体層の上にさらに発光層を形成すべくn形層およびp形層を含む半導体層が積層される第2の発光部とを有し、前記第1の発光部のp形層および前記第2の発光部のn形層が電気的に接続され、かつ、前記第1の発光部のn形層および前記第2の発光部のp形層が電気的に接続され、前記積層される半導体層の表面側から光を取り出す半導体発光素子であって、前記第1および第2の発光部の表面側に設けられる電極パッドは、前記第1および第2の発光部に共通して1個のみで形成されてなる半導体発光素子。
- 前記第1および第2の発光部がそれぞれ同じ半導体材料で発光層を形成し、同じ波長の光を発光する請求項1記載の半導体発光素子。
- 前記第1および第2の発光部がそれぞれ異なる半導体材料で発光層を形成し、異なる波長の光を発光する請求項1記載の半導体発光素子。
- 前記第1および第2の発光部の少なくとも一方の発光層を形成する半導体材料がAlGaInP系化合物半導体である請求項1、2または3記載の半導体発光素子。
- 前記第1および第2の発光部の積層された半導体層の表面に絶縁膜を介して配線膜が形成され、該配線膜が前記絶縁膜に設けられるコンタクト孔を介して前記第1および第2の発光部の表面側に形成されている、異なる導電形層に接続され、かつ、該配線膜と連続して前記第1および第2の発光部に共通の電極パッドが形成されてなる請求項1、2、3または4記載の半導体発光素子。
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