JP3690186B2 - インクジェット式記録ヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数種類のインクを用い、上記インクをインク滴として吐出するインクジェット式記録ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インクジェット式記録装置は、インクカートリッジから供給されたインクを、圧電振動子の振動により吐出孔からインク滴として記録紙上に吐出し、この記録紙上にインクのドットを形成させて印刷することが行われる。そして、一台の記録装置で、ブラック(以下「BK」という),イエロー(以下「Y」という),マゼンダ(以下「M」という),シアン(以下「C」という)等の複数色のインクを使用し、カラー印刷やモノクロ印刷を実施することが行われている。
【0003】
このようなインクジェット式記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド(以下「記録ヘッド」という)としては、例えば、図9および図10に示すようなものが用いられている。この記録ヘッドは、たわみ振動モードの圧電振動子が取り付けられた記録ヘッドであり、複数の圧力発生室2が形成されたアクチュエータユニット1と、ノズル開口3およびインク貯留室4が形成され上記アクチュエータユニット1の下面に貼着された流路ユニット5と、上記アクチュエータユニット1の上面に貼着された圧電体6とを備え、上記圧電体6の振動により圧力発生室2に圧力を発生させ、ノズル開口3からインク滴を吐出させるようになっている。
【0004】
上記アクチュエータユニット1は、圧力発生室2を形成する空間が形成された圧力室形成基板10と、この圧力室形成基板10の上面に位置して上記空間の上面開口を塞ぐ振動板11と、上記圧力室形成基板10の下面に位置する蓋部材14とから構成されている。この蓋部材14には、インク貯留室4と圧力発生室2を連通させる第1インク流路12と、圧力発生室2とノズル開口3を連通させる第2インク流路13とが形成されている。
【0005】
上記流路ユニット5は、インク貯留室4を形成する4つの空間が形成された貯留室形成基板16と、ノズル開口3が穿設され、上記貯留室形成基板16の下面に位置するノズルプレート17と、上記貯留室形成基板16の上面に位置する供給口形成板18とから構成されている。上記貯留室形成基板16には、ノズル開口3に連通するノズル連通口9が形成されている。また、上記供給口形成板18には、インク貯留室4から第1インク流路12を介して圧力発生室2にインクを供給するインク供給口15が穿設されるとともに、圧力発生室2および第2インク流路13とノズル連通口9ならびにノズル開口3とを連通させる連通口8が形成されている。
【0006】
上記アクチュエータユニット1の振動板11の上面には、下部電極19が形成されている(図9には下部電極19は示していない)。この下部電極19の上面に、それぞれ平板状の圧電体6が形成され、上記圧電体6の上面には、上部電極20が形成されている。そして、上記圧電体6,上部電極20ならびに下部電極19により圧電振動子23が構成されている。
【0007】
また、上記アクチュエータユニット1の上面両端部には、各圧電体6の上部電極20に導通する端子21が形成され、上記端子21の上面には、フレキシブル回路板22が張設され、端子21および上部電極20を介して圧電体6に駆動信号を印加するようになっている。
【0008】
この例では、上記アクチュエータユニット1が3組搭載され、記録紙の幅方向に並設されている。そして、各アクチュエータユニット1には、図11に示すように、並列する圧力発生室2の列が2列づつ設けられ、記録ヘッド全体では合計6列の圧力発生室2の列が設けられている。そして、上記各アクチュエータユニット1において、圧力発生室2の内側に位置する端部にノズル開口3の列が設けられ、他端にインク貯留室4から圧力発生室2にインクを供給するインク供給口15が設けられ、6列のノズル列からインクを吐出するようになっている。
【0009】
一方、上記各圧力発生室2に供給するインクが貯留されるインク貯留室4は、上記圧力発生室2の列に対応して長穴状に形成されている。そして、この例では、図示の左側の3本のインク貯留室4が連通しており、このインク貯留室4がBKインク用貯留室4bになっている。このBKインク用貯留室4b以外の3つのインク貯留室4は、それぞれY,M,Cの各インク用貯留室4y,4m,4cになっている。したがって、6列のノズル列のうち、図示の左端から3列のノズル列からBKインクが吐出され、以降順に、Yインク,Mインク,Cインクが吐出されるノズル列になっている。図9において、24はインクカートリッジ57から各インク貯留室4にインクを補給するインク補給口である。
【0010】
上記記録ヘッドにおいて、圧電体6に駆動信号が印加されると、圧電体6が横方向に収縮する。このとき、圧電体6の振動板11に固定された下面側は収縮せず、上面側だけが収縮するため、圧電体6および振動板11が下方にたわみ、圧力発生室2を圧縮する。そして、圧力発生室2内の圧力上昇により、圧力発生室2内のインクがノズル開口3からインク滴として吐出され、記録紙にドットが形成されて印刷が行われる。ついで、圧電体6が放電されて元の状態に戻ると、圧力発生室2内が減圧され、各インク貯留室4からインク供給口15を通して圧力発生室2へ新しいインクが供給される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記記録ヘッドでは、両端に位置するノズル開口3列の距離(図示のL寸法)を小さくしたいという要請から、各アクチュエータユニット1において、圧力発生室2の内側に位置する端部にノズル開口3の列が設けられ、他端にインク供給口15が設けられている。しかしながら、このような構造では、各アクチュエータユニット1内のノズル開口3同士の距離(図示のT寸法)が小さく、ノズル面をワイピング等したときに色の異なるインクが混じってしまい、打ちはじめの印刷品質が低下するおそれがあった。
【0012】
また、写真や絵などのカラー印刷を行う場合には、BK,Y,M,Cの4色のインクが用いられ、文字等のモノクロ印刷を行う場合には、BK1色だけが用いられて印刷が行われる。一般に、文字等のモノクロ印刷をする場合には、記録紙への浸透性が低いインクを用いてエッジがシャープになるように印刷したほうが良く、絵や写真等のカラー印刷をする場合には、記録紙への浸透性が高いインクを用い、色の異なるインクが記録紙に浸透する前に混じらないようにした方が良い。
【0013】
このように、カラー印刷とモノクロ印刷とでは、それぞれ適するインクの浸透性が異なるため、最近では、BKインクとY、M、Cインクとで浸透性の異なるインクを用いることも検討されている。ところが、上記従来の記録ヘッドでは、各アクチュエータ1内のノズル開口3同士の距離(図示のT寸法)が小さく、ワイピングしたときに浸透性の異なるインクが混じってしまうおそれがあった。このように、浸透性の異なるインクが混じると、インクの性質が変化してしまい、記録紙やインク同士の浸透性が変化し、印刷品質が低下したり色剤の凝集が起こってインクの固化や析出をまねき、最悪の場合にはノズル開口が目詰まりしてしまう等の弊害が生じるおそれがある。このため、BKインクとY,M,Cインクとで浸透性の異なるインクを用いる場合には、BKインク用の記録ヘッドとY,M,Cインク用の記録ヘッドとの異なる記録ヘッドを設けた装置にすることが行われ、装置の大型化や記録ヘッド同士の位置調整が必要であるという不都合が避けられなかった。
【0014】
これらのような事情から、ワイピング時等に複数種類のインクが混じり難く、上記各種の問題点を改善する記録ヘッドの開発が望まれていた。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ワイピング時等にインクが混じり難いインクジェット式記録ヘッドの提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のインクジェット式記録ヘッドは、複数の圧力発生室が並列して形成された圧力発生室列が設けられた圧力発生ユニットを複数備え、上記圧力発生室列内において各圧力発生室の一端部にインク貯留室が連通するとともに、他端部にノズル開口が連通し、上記各圧力発生室内の圧力を変動させて上記ノズル開口からインク滴を吐出させる圧力発生素子が設けられたインクジェット式記録ヘッドであって、上記複数の圧力発生ユニットが記録ヘッドの主走査方向に並設されており、上記主走査方向の中央領域に配置された圧力発生ユニットは、1つの圧力発生室列とこれに隣接する圧力発生室列との間で、ノズル開口が連通する端部同士が対向しないように構成され、上記主走査方向の両端部に配置された圧力発生ユニットは、端部側に位置する圧力発生室列におけるノズル開口が連通する端部がそれぞれ対向する位置に設けられていることを特徴とする。
また、係るインクジェット式記録ヘッドにおいて、上記隣接する圧力発生室列で、種類が異なるインクが吐出されるものであることを特徴とする。
また、係るインクジェット式記録ヘッドにおいて、上記隣接する圧力発生室列で、記録紙への浸透性が異なるインクが吐出されるものであることを特徴とする。
また、係るインクジェット式記録ヘッドにおいて、上記ノズル開口が穿設されたノズルプレートのノズル面に、ノズル開口列と略同じ方向に延びる溝が形成されていることを特徴とする。
また、係るインクジェット式記録ヘッドにおいて、上記圧力発生ユニットはそれぞれ2列の圧力発生室列を有し、同じ圧力発生ユニットが並設されていることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0025】
図1は、本発明のインクジェット式記録ヘッド(以下「記録ヘッド」という)が適用されるインクジェット式記録装置の周辺構造の一例を示す図である。この装置は、上部にインクカートリッジ30が搭載され、下面に記録ヘッド31が取り付けられたキャリッジ32と、上記記録ヘッド31を封止等するキャッピング装置33とを備えている。上記記録ヘッド31は、基本的には図9および図10に示すものと同様であり、以下、同様の箇所は、同じ符号を用いて説明する。
【0026】
上記インクカートリッジ30は、ブラック(BK)インクが収容されたブラック用カートリッジと、内部が3つのインク室に区画され、各インク室に、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),の3種類のインクが収容されたカラー用カートリッジの2種類が搭載されている。
【0027】
上記キャリッジ32は、タイミングベルト37を介してステッピングモータ34に接続され、ガイドバー35に案内されて記録紙36の紙幅方向に往復移動するようになっている。また、上記キャリッジ32には、記録紙36と対向する面(この例では下面)に、記録ヘッド31が取り付けられている。そして、この記録ヘッド31に各インクカートリッジ30からインクが供給され、キャリッジ32を移動させながら記録紙36上面にインク滴を吐出させて記録紙36に画像や文字をドットマトリックスにより印刷するようになっている。
【0028】
上記キャッピング装置33は、キャリッジ32の移動範囲内の非印刷領域に設けられ、印刷休止中に記録ヘッド31のノズル開口3を封止することによりノズル開口3の乾燥をできるだけ防ぐようになっている。また、このキャッピング装置33は、フラッシング動作等によって記録ヘッド31から吐出されたインク滴を受ける容器として作用することもある。さらに、上記キャッピング装置33は、吸引ポンプ38に接続され、クリーニング動作時には記録ヘッド31のノズル開口3に負圧を与えてノズル開口3からインクを吸引するようになっている。
【0029】
上記キャッピング装置33の近傍には、ワイパー装置39が取りつけられている。このワイパー装置39は、図2に示すように、ゴム板等の弾性板41と、インク吸収材42とが貼り合わせられ、これらがレバー40に取りつけられて構成されている。このワイパー装置39は、記録ヘッド31がキャッピング装置33に移動するときキャリッジ32の移動に連動してノズルプレート17のノズル面に当接するように上昇するか、記録紙36の送り方向に水平移動してノズル面のインクをふき取るようになっている。
【0030】
ここで、上記記録ヘッド31について詳しく説明すると、上記記録ヘッド31は、図3および図4に示すように、同じアクチュエータユニット1が記録ヘッド31の走査方向(記録紙36の紙幅方向)に3組並設されている。そして、各アクチュエータユニット1には、並列する圧力発生室2の列が2列づつ設けられ、記録ヘッド31全体では合計6列の圧力発生室2の列が設けられ、各圧力発生室2の列に対応してノズル開口3の列が設けられ、6列のノズル列からインクを吐出するようになっている。
【0031】
上記3組のアクチュエータユニット1のうち、両端に位置するものでは、2列の圧力発生室2の、対向する内側に位置する端部にノズル開口3が連通するようノズル開口3の列が設けられ、他端にインク貯留室4が連通するよう圧力発生室2にインクを供給するインク供給口15が設けられている。また、中央に位置するアクチュエータユニット1では、隣接する2列の圧力発生室2の列の間で、ノズル開口3が連通する端部が同じ側(図示の右側)に設けられ、ノズル開口3が連通する端部同士が対向しないようになっている。
【0032】
また、上記各圧力発生室2に供給するインクが貯留されるインク貯留室4は、上記圧力発生室2の列に対応して長穴状に形成されている。そして、図示の左側の3本のインク貯留室4が連通しており、このインク貯留室4がBKインク用貯留室4bになっている。このBKインク用貯留室4b以外の3つのインク貯留室4は、それぞれY,M,Cの各インク用貯留室4y,4m,4cになっている。
【0033】
そして、上記ノズル開口3が穿設されたノズルプレート17は、図5に示すように、そのノズル面に、ノズル開口3の列と略同じ方向に延びる溝25が形成されている。上記溝25の長さWdは、ワイパー装置39の長さWpよりも長くなるよう設定されている。また、ワイパー装置39の長さWpは、ノズル開口3列の長さWnよりも長くなるよう設定されている。図において、26はノズル開口3の開口縁の周辺に形成された微小凹部である。
【0034】
上記のようにノズルプレート17のノズル面に溝25を形成させることにより、ノズル面のワイピング等時に、ワイピング装置39が上記溝25の上を通過する際、ワイピング装置39に付着したインクが擦り取られ、ワイピング能力の低下が防止される。また、ノズル開口3の開口縁周辺に微小凹部26が形成されていることによって、ワイピング時にワイピング装置39が直接ノズル開口3の開口縁に摺接しないことから、ある程度インクの混色等が防止される。
【0035】
ここで、上記記録ヘッド31に用いられるインクについて説明する。上記インクは、記録紙への浸透性が異なる2種類のものが用いられる。すなわち、BKインクは、文字等の印刷のときにエッジがシャープになるように、記録紙への浸透性が比較的低く、乾燥しながら記録紙に定着するものが用いられる。一方、Y,M,Cのカラーインクは、写真や画像の印刷の際に、記録紙に着弾したインク滴が速やかに浸透し、記録紙への定着前に混色しにくくなるように、比較的浸透性の高いものが用いられる。
【0036】
上記記録ヘッドでは、例えば、つぎのようにして印刷が行われる。まず、記録紙への浸透性が異なる低浸透性のBKと高浸透性のY,M,Cインクを準備し、それぞれのインクが収容されたインクカートリッジ57をキャリッジ1に搭載する。そして、圧電体6に駆動信号が印加されると、圧電体6が横方向に収縮して圧電体6および振動板11が下方にたわみ、圧力発生室2を圧縮する。そして、圧力発生室2内の圧力上昇により、圧力発生室2内のインクがノズル開口3からインク滴として吐出され、記録紙にドットが形成される。
【0037】
ついで、圧電体6が放電されて元の状態に戻ると、圧力発生室2内が減圧され、各インク貯留室4からインク供給口15を通して圧力発生室2へ新しいインクが供給される。そして、キャリッジ32を記録紙36の紙幅方向に走査させながら記録紙36上面にインク滴を吐出して記録紙36にドットを形成し、画像や文字がドットマトリックスにより印刷される。
【0038】
そして、文字等の印刷を実行する場合には、浸透性の低いBKインクを用いたモノクロ印刷が行われ、写真や画像等の印刷を行う場合には、上記BKインクと浸透性の高いY,M,Cインクを用いたカラー印刷が行われる。
【0039】
そして、所定時間連続印刷されると、インクの吐出頻度が少ないノズル開口3では、ノズル開口3付近のインクが乾燥して目詰まりが生じるため、一定時間毎に記録ヘッド31をキャッピング装置33のところに移動させ、印刷とは無関係の信号を圧電体6に与えることにより各ノズル開口3から強制的にインク滴を吐出させて目詰まりを回復させるフラッシングが行われる。
【0040】
上記フラッシング時に、記録ヘッド31をキャッピング装置33のところに移動させる際、ワイパー装置39がキャリッジ32の移動に連動してノズルプレート17のノズル面に当接するように上昇し、ノズル面のインクをふき取ることが行われる。このとき、上記記録ヘッド31では、中央に位置するアクチュエータユニット1において、隣接する圧力発生室2の列の間でノズル開口3が連通する端部が同じ側に設けられているため、ノズル開口3の列間の距離(図示のT寸法)が有効に離れ、ノズル面をワイピングしたときに浸透性の異なるBKインクとYインクとが混じることがほとんどなくなる。
【0041】
このように、上記記録ヘッドによれば、ワイピング時に浸透性の異なるインクが混じることがほとんどなく、、印刷品質の低下やノズル開口の目詰まり等のトラブルを未然に防止できる。したがって、記録ヘッド31自体や記録装置の大型化・複雑化を避け、コストアップすることなく、2種類のインクを同一の記録ヘッド31から吐出することができる。そして、浸透性の異なるインクを用いることにより、浸透性が低いBKインクと浸透性の高いY,M,Cインクとを用い、1つの記録ヘッドでカラー印刷とモノクロ印刷を行う場合に、浸透性の低いBKインクでモノクロ印刷を行って、エッジがシャープな良質の印刷を実現でき、浸透性の高いY,M,Cインクでカラー印刷を行って、高解像度の印刷を実現できる。
【0042】
さらに、両端部のアクチュエータユニット1の端部側に位置する圧力発生室2列において、ノズル開口3が連通する端部が内側に位置するため、複数のアクチュエータユニット1間で両端に位置するノズル開口3の列同士の距離(図示のL寸法)が必要以上に大きくならない。したがって、記録ヘッド31自体の走査距離やキャッピング装置33のサイズが必要以上に大きくならず、装置の大型化を防止できる。
【0043】
図6は、本発明の第2の実施の形態の記録ヘッドを示している。このものでは、3組のアクチュエータユニット1のうち、両端に位置するものでは、2列の圧力発生室2の、対向する内側に位置する端部にノズル開口3が連通するようノズル開口3の列が設けられ、他端にインク貯留室4が連通するよう圧力発生室2にインクを供給するインク供給口15が設けられている。また、中央に位置するアクチュエータユニット1では、隣接する2列の圧力発生室2の列の間で、ノズル開口3が連通する端部が離反する側(両端側)に設けられ、ノズル開口3が連通する端部同士が対向しないようになっている。それ以外は、図3〜図5に示す第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0044】
この記録ヘッドでは、隣接する圧力発生室列2同士の間でノズル開口3の列間の距離(図示のT寸法)が一層離れ、ノズル面をワイピング等したときに浸透性の異なるインクが混じることがほとんどななる。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0045】
図7は、本発明の第3の実施の形態の記録ヘッドを示している。このものでは、3組のアクチュエータユニット1すべてにおいて、隣接する2列の圧力発生室2の列の間で、ノズル開口3が連通する端部同士が対向しないようになっている。そして、両端に位置するものでは、2列の圧力発生室2の列のノズル開口3が連通する端部がいずれも図示の中央側に設けられ、他端側にインク供給口15が設けられている。それ以外は、図3〜図5に示す第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0046】
この記録ヘッドでは、すべてのアクチュエータユニット1において、隣接する圧力発生室列2同士の間でノズル開口3列間の距離(図示のT寸法)が離れているため、ワイピング時等に、MインクとCインク等異なる色のインクが混じることがほとんどなく、打ち始めの印刷品質が低下しない。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0047】
図8は、本発明の第4の実施の形態の記録ヘッドを示している。このもは、圧力発生室2の列が2列設けられたアクチュエータユニット1がひとつだけ設けられている。上記2列の圧力発生室2の間で、ノズル開口3が連通する端部が離反する側(両端側)に設けられ、ノズル開口3が連通する端部同士が対向しないようになっている。
【0048】
そして、2列のうち一方の圧力発生室2の列(図示の左側)は、BKインク用貯留室4bが連通するBK列になっている。また、他方(図示の右側)は、1列の圧力発生室2の列が3つの区画に区分され、これらの区画の圧力発生室2に、それぞれY,M,Cの各インク用貯留室4y,4m,4cが連通している。それ以外は、図3〜図5に示す第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。このものでも、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0049】
なお、上記各実施の形態では、異なる種類のインクとして、記録紙への浸透性が異なるインクであるものを例示したが、これに限定するものではなく、2種以上の異なるインクであれば各種のインクを適用することができる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、本発明のインクジェット式記録ヘッドによれば、隣接する圧力発生室列同士の間でノズル開口列間の距離が離れ、ノズル面をワイピング等したときに各圧力発生室列から吐出されるインクが混じるようなことがほとんどなくなる。
また、複数の圧力発生ユニットが記録ヘッドの走査方向に並設され、両端部の圧力発生ユニットの端部側に位置する圧力発生室列において、ノズル開口が連通する端部それぞれ対向する位置に設けられているので、複数の圧力発生ユニット間で両端に位置するノズル開口列同士の距離が必要以上に大きくならない。したがって、記録ヘッド自体の走査距離やクリーニング時等に記録ヘッドを封止するキャッピング装置のサイズが必要以上に大きくならず、装置の大型化を防止できる。
【0053】
本発明のインクジェット式記録ヘッドにおいて、上記隣接する圧力発生室列で、種類が異なるインクが吐出されるものである場合には、種類の異なるインクが混じることがほとんどなくなり、打ちはじめの印刷品質が低下するようなトラブルが未然に防止される。したがって、複数の記録ヘッドを設けることによる装置の大型化や、複数の記録ヘッドの位置構成といった複雑化を避け、コストアップすることなく、複数種類のインクを同一のヘッドから吐出することができるようになる。
【0054】
本発明のインクジェット式記録ヘッドにおいて、上記隣接する圧力発生室列で、記録紙への浸透性が異なるインクが吐出されるものである場合には、記録紙への浸透性が異なるインクが混じることがほとんどなくなり、印刷品質の低下やノズル開口の目詰まり等のトラブルを未然に防止できる。そして、浸透性の異なるインクを用いることにより、例えば、浸透性が低いBKインクと浸透性の高いY,M,Cインクとを用い、1つの記録ヘッドでカラー印刷とモノクロ印刷を行う場合に、浸透性の低いBKインクでモノクロ印刷を行って、エッジがシャープな良質の印刷を実現でき、浸透性の高いY,M,Cインクでカラー印刷を行って、高解像度の印刷を実現できる。
【0055】
本発明のインクジェット式記録ヘッドにおいて、上記ノズル開口が穿設されたノズルプレートのノズル面に、ノズル開口列と略同じ方向に延びる溝が形成されている場合には、ノズル面をワイピング等したときに、ワイピング部材が上記溝の上を通過する際、ワイピング部材に付着したインクが擦り取られ、ワイピング能力の低下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット式記録ヘッドが適用されるインクジェット式記録装置の斜視図である。
【図2】ワイパー装置を示す斜視図である。
【図3】本発明のインクジェット式記録ヘッドの一実施の形態を示す分解斜視図である。
【図4】上記インクジェット式記録ヘッドにおける圧力発生室,ノズル開口,インク貯留室の位置関係を示す説明図である。
【図5】上記インクジェット式記録ヘッドのノズルプレートを示す図であり、(a)はノズル面から見た図、(b)は拡大したA−A断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態のインクジェット式記録ヘッドにおける圧力発生室,ノズル開口,インク貯留室の位置関係を示す説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態のインクジェット式記録ヘッドにおける圧力発生室,ノズル開口,インク貯留室の位置関係を示す説明図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態のインクジェット式記録ヘッドにおける圧力発生室,ノズル開口,インク貯留室の位置関係を示す説明図である。
【図9】従来のインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図である。
【図10】上記インクジェット式記録ヘッドの断面図である。
【図11】上記インクジェット式記録ヘッドにおける圧力発生室,ノズル開口,インク貯留室の位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 アクチュエータユニット
2 圧力発生室
3 ノズル開口
4 インク貯留室
6 圧電体
Claims (5)
- 複数の圧力発生室が並列して形成された圧力発生室列が設けられた圧力発生ユニットを複数備え、上記圧力発生室列内において各圧力発生室の一端部にインク貯留室が連通するとともに、他端部にノズル開口が連通し、上記各圧力発生室内の圧力を変動させて上記ノズル開口からインク滴を吐出させる圧力発生素子が設けられたインクジェット式記録ヘッドであって、
上記複数の圧力発生ユニットが記録ヘッドの主走査方向に並設されており、
上記主走査方向の中央領域に配置された圧力発生ユニットは、1つの圧力発生室列とこれに隣接する圧力発生室列との間で、ノズル開口が連通する端部同士が対向しないように構成され、
上記主走査方向の両端部に配置された圧力発生ユニットは、端部側に位置する圧力発生室列におけるノズル開口が連通する端部がそれぞれ対向する位置に設けられていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。 - 上記隣接する圧力発生室列で、種類が異なるインクが吐出されるものである請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッド。
- 上記隣接する圧力発生室列で、記録紙への浸透性が異なるインクが吐出されるものである請求項1または2に記載のインクジェット式記録ヘッド。
- 上記ノズル開口が穿設されたノズルプレートのノズル面に、ノズル開口列と略同じ方向に延びる溝が形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット式記録ヘッド。
- 上記圧力発生ユニットはそれぞれ2列の圧力発生室列を有し、同じ圧力発生ユニットが並設されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット式記録ヘッド。
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