JP3689796B2 - 冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性測定方法、その方法を使用した測定装置及び電極 - Google Patents
冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性測定方法、その方法を使用した測定装置及び電極 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する方法、その方法を利用した測定装置及び電極に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、熱媒体を間接的に利用した冷却または冷暖房システムが普及している。例えば冷却システムは、自動車などの内燃機関における冷却装置、ビール工場や乳製品工場における醸造発酵工程、化学品工場における化学反応工程などの冷却装置、製氷工場や冷却倉庫、さらには漁船、コンテナ船における保冷冷却装置、氷蓄熱システムなどに適用されている。
【0003】
一方冷暖房システムは、セントラルヒーティング、ソーラーシステム、床暖房システム、ガスヒートポンプ、スーパーヒートポンプなどの家庭用暖房用、コージェネレーションなどの産業機械用、融雪、融氷、霜取などのロードヒーティング用、工場、ビルなどの大型規模空調システムにおける冷暖房用などに適用されている。
【0004】
これら冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体には、冷却系または冷暖房系に使用されている各種金属が腐食するのを防止するために、腐食防止剤が添加されている。ところが、この腐食防止剤は長期間の使用により、又冷却または冷暖房システムの使用時における熱等により劣化したり、補水により濃度低下を起こしたりして、腐食防止の機能が低下し、冷却系または冷暖房系に使用されている金属が腐食されるという問題がある。このため、一定期間を経過した熱媒体は新液と交換することが行われている。
【0005】
しかしながら、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の晒される状況はその用途によってまちまちであり、一定期間を経過する以前に、既に腐食防止剤が劣化して金属が腐食したり、冷却または冷暖房システムを運転する時間が少なくほとんど劣化していないのに、新しい液と交換してしまい無駄であったりするといった問題が発生している。
【0006】
現在、熱媒体の腐食防止性を測定する方法としては、熱媒体の濃度、pH、熱媒体中の金属イオン量、腐食防止剤量などの熱媒体の性状が使用前の状態から変化したことを熱媒体中の濃度、pH、金属イオン量、腐食防止剤量などを分析して調べる方法がある。又、金属腐食試験を実施し、直接腐食防止性を調べる方法も行われている。
【0007】
しかしながら、熱媒体の性状の変化を調べる方法では、熱媒体の腐食防止性が有効なものなのかどうかを判別する基準が曖昧であり、しかも熱媒体の種類によりその性状も様々で一定しておらず、正確な判定を下すことができないという不具合があった。さらに、この方法にあっては、熱媒体中の濃度、pH、金属イオン量、腐食防止剤量など熱媒体の性状の変化を調べるのに高価な分析機器が必要であり、研究室内でしか実施できない等の問題があった。
【0008】
一方、金属腐食試験を実施して、直接腐食防止性を調べる方法では、専用の設備が必要であり、研究室内でしか実施できないといった問題があった。
【0009】
そこで、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を簡単にしかも正確に測定することができる簡易な測定装置が特公昭63−19815号公報に示されている。この装置は、自動車の冷却装置(ラジエータ)に利用される熱媒体、つまり冷却水の腐食防止性を測定するものであり、冷却水と接触するように配置される銀よりなる基準電極と鋼及びアルミニウムからなる感知電極との間で生じる酸化還元電位を測定し、この電位の大小によって冷却液の腐食防止性の有無の判定ができるようにしたものである。
【0010】
ところが、特公昭63−19815号公報に示された装置は、長期に渡って使用することで電極部分に腐食が発生し、測定された値が真値よりも大きくなってしまうという不具合があり、このため、腐食防止性を十分有する冷却水でも、「新しく交換する必要がある」という誤った判定を下してしまうこともあった。
【0011】
このような事情から、長寿命センサー(電極)を有し、かつ熱媒体の腐食防止性を簡便にしかも正確に測定できる装置が、一般ユーザー、ディーラー、整備業者等から求められているというのが現状であった。
【0012】
本発明は、このような要求に応えるべくなされたものであり、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を、長期に渡って、簡単にしかも正確に測定することができる簡易な測定方法、その方法を使用した測定装置及び電極を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する方法であって、カーボンにより形成されている基準電極と、ステンレスにより形成されている感知電極とを、両電極が電気的に離隔された状態に熱媒体と接触するように配置して、前記感知電極側における防錆皮膜の形成に伴う電子の放出と、基準電極側における電子の消費とを生ぜしめ、これら防錆皮膜の形成に伴う電子の放出及び電子の消費により発生する酸化還元電位を測定することを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定方法をその要旨とした。
【0014】
請求項2記載の発明は、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する装置であって、熱媒体と接触するように配置される基準電極と、同じく熱媒体と接触するように配置され、かつ前記基準電極から電気的に離隔された感知電極と、前記両電極に結合された電圧応答装置とを有しており、前記基準電極がカーボンにより形成されていると共に感知電極がステンレスにより形成されていることを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定装置をその要旨とした。
【0015】
請求項3記載の発明は、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する装置において、互いに電気的に離隔された状態に熱媒体と接触するように配置される基準電極と感知電極とからなり、前記基準電極がカーボンにより形成されると共に前記感知電極がステンレスにより形成され、かつこれら基準電極と感知電極とが電気絶縁材を介して一体に設けられていることを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定装置における電極をその要旨とした。
【0016】
請求項4記載の発明は、円筒状に設けたステンレスの感知電極の内側に電気絶縁材を介して棒状の端子が配置され、その端子の先端部分が円筒状の感知電極から露出していて、この露出部分にカーボンシールよりなる基準電極が貼着されていることを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定装置における電極をその要旨とした。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性測定方法、その方法を使用した測定装置及び電極を詳細に説明する。本発明の冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性の測定方法(以下単に測定方法という)は、図1に示すように、カーボンにより形成されている基準電極1とステンレスにより形成されている感知電極2とを用いて、これら両電極1、2を電気的に離隔された状態に熱媒体C1と接触するように配置したときに、両電極1、2間に生じる電子の授受に伴う酸化還元電位を測定することで、熱媒体の腐食防止性を把握するというものである。
【0018】
熱媒体には、鋳鉄、銅、アルミニウム、鋼、はんだ、黄銅といった冷却系または冷暖房系の各種金属の腐食を防止するため、その主成分である水、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのアルコール類に加えて、モリブデン酸塩、脂肪酸塩、安息香酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、トリアゾール類、チアゾール類、アミン塩類などの腐食防止剤が含まれている。これらの腐食防止剤は熱媒体中においてイオン化して存在している。
【0019】
この熱媒体C1(十分な腐食防止性を有するもの)中にカーボンよりなる基準電極1とステンレスよりなる感知電極2とを両電極1、2が電気的に離隔された状態に配置すると、感知電極2側では、熱媒体C1中にイオンとして存在している安息香酸イオンやリン酸イオンなどの腐食防止剤イオンが電子を放出することでステンレス表面に付着して皮膜3を形成し、ステンレスの腐食が防止されるようになる。感知電極2は、この防錆皮膜3の形成に伴って安息香酸イオンやリン酸イオンなどの腐食防止剤イオンから電子を受け取るのである(電子の放出)。
【0020】
一方、基準電極1側では、熱媒体C1のpH濃度により下記の2つの反応が起こる。すなわち、
熱媒体C1が中性溶液の場合
1/2O2 +H2O +2e- → 2OH- ・・・(1)(酸素消費型)
熱媒体C1が酸性溶液の場合
2H+ +2e- → H2 ↑ ・・・(2)(水素発生型)
といった反応が生じ、ここに電子の消費が生じることになる。
【0021】
上記の如く、基準電極1と感知電極2との間では酸化還元反応が生じ、これにより感知電極2側がアノードに、基準電極1側がカソードとなって、電子(e- )の流れができ、その電子の量が酸化還元電位として現れることになる。そして、この酸化還元反応により生じた電位を、例えば両電極1、2に電圧応答装置4を結合するなどして数値化し読みとるのである。
【0022】
基準電極と感知電極との間で生じる酸化還元電位は、熱媒体の腐食防止性能が低下すればするほど小さくなる傾向がある。つまり腐食防止性能が低下した熱媒体C2中では、溶存する腐食防止剤イオンの量が少なくなっている。このため、図2に示すように、熱媒体C2中に両電極1、2を配置したとき、感知電極2側における防錆皮膜3は、溶存する腐食防止剤イオンの量だけからしか形成されないため、図1の場合に比べてその防錆皮膜3の量は少なくなり、防錆皮膜3の形成に伴う腐食防止剤イオンからの電子の受け取り量(電子の発生量)も少なくなる。
【0023】
また基準電極1側においても、感知電極2側における防錆皮膜3の形成量が低下し、電子の受け取り量(電子の発生量)が少なくなるに従って上記反応(1)または反応(2)の発生も少なくなり、電子の消費量も減ることになる。
【0024】
このように熱媒体C2における腐食防止性能の低下は、感知電極2側における防錆皮膜3の形成量の低下、基準電極1側における電子の消費量の減少という結果を生ぜしめ、これら両電極1、2間における酸化還元電位が低下するという現象を導くことになる。
【0025】
そして、この熱媒体における腐食防止性能に従って変化する基準電極及び感知電極間における酸化還元電位の大小を捉えることによって熱媒体における腐食防止性の有効性を判断できるようにしたのが本発明の測定方法なのである。
【0026】
次に、本発明の冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性測定装置(以下単に測定装置という)並びに電極について説明する。尚、この測定装置は上述の測定方法をそのまま使用したものであり、ここでの上記測定方法の説明は割愛する。図1に示すようにこの測定装置は、基準電極1と感知電極2と、これら両電極1、2に結合された電圧応答装置4とを有している。
【0027】
基準電極はカーボンにより形成されている。カーボンは熱媒体中で変化せず、しかも導電性材料として安定であることから、熱媒体の腐食防止性の測定用としてきわめて有用である。このカーボンにより形成されている基準電極としては、従来より炭素電極として用いられている人造黒鉛電極、天然黒鉛電極、自焼成電極、炭素質電極など所定の電極形状に成形された市販品を用いることができる。また基準電極は、電極形状に限らず円盤状、管状といった形態に成形することもできる。
【0028】
さらに基準電極は、粉末状、粒状、繊維状のカーボン材料を用いて、これに合成樹脂や合成繊維などの他の材料を複合した態様を採ることもできる。例えば繊維状のカーボンを用いて、これを合成繊維よりなる織物、編物あるいは不織布の構成繊維中に含ませたり、粉末状カーボンを用いて、これを合成繊維よりなる織物、編物あるいは不織布の構成繊維表面または構成繊維間隙に接着剤を介して付着させたりしてなるカーボンシートや、粉末状、粒状、あるいは繊維状のカーボンを樹脂中に分散しておき、これを発泡成形したカーボン入り発泡成形体などを挙げることができる。
【0029】
尚、基準電極として、カーボン材料と複合した態様とするとき、他の材料として上述の電子の交換に影響を及ぼすものは好ましくない。
【0030】
感知電極はステンレス製である。ステンレス鋼は金属(合金)であり、前述の如く熱媒体と接触するように配置したとき、その表面には腐食防止剤の皮膜が形成されるが、ステンレス鋼自体、表面が緻密なクロム酸化物の層に覆われていて腐食し難いという性質を持っている。感知電極にはステンレス鋼として、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、オーステナイト・フェライト系、析出硬化系のいずれの種類のものでも用いることができる。
【0031】
その形態も基準電極と同じく任意であり、棒状、板状、円盤状、管状、シート状など、当該測定装置の用途や大きさなどを考慮して適宜決定すればよい。
【0032】
また感知電極は、薄い箔状に成形しておき、これに合成樹脂シートや合成繊維よりなる織物、編物あるいは不織布を接合して複合一体化した態様を採ることもできる。尚、この場合、感知電極として、合成樹脂シートや合成繊維よりなる織物など、他の材料と複合した態様とするとき、他の材料が上述の電子の交換に影響を及ぼすものは好ましくない。
【0033】
上記基準電極及び感知電極は、これら基準電極と感知電極とが電気絶縁材を介して一体に設けられている態様を採ることができる。例えば図3に示したものは、円筒状に設けたステンレスの感知電極12の内側に電気絶縁材13を介して棒状の端子14が配置され、その端子14の先端部分14aが円筒状の感知電極12から露出していて、この露出した先端部分14aにカーボンシール11よりなる基準電極が貼着されているものである。
【0034】
図4に示すように、カーボンシール11は、合成繊維よりなる不織布20を基材として、この不織布20の構成繊維表面及び繊維間隙にカーボン粉末を接着材を介して付着させたものである。そして、このカーボンシール11の両表面には粘着剤よりなる層22が形成されていて、簡単に被粘着物(この態様では端子14の先端部分14a)に貼り付けることができるようになっている。
【0035】
前述の如くカーボンよりなる基準電極側では、ステンレスよりなる感知電極側で発生した電子を消費する反応(1)または反応(2)が起きている。周知の如くカーボンは微細な孔を持つ多孔質体であり、当該基準電極を熱媒体と接触するように配置したとき、熱媒体は同電極の表面のみならず、孔内にまで入り込み、ここで上記反応(1)または反応(2)が生じることになる。
【0036】
ところが、反応が進むにつれて、基準電極の表面及び内部において、これと接触状態にある熱媒体中の酸素や水素原子の量が減り、電子の消費量が減ることになる。このため、このままの状態で同基準電極を再度用いて腐食防止性を測定しようとしても、基準電極の表面及び内部には、酸素や水素原子の量が少ない熱媒体が付着したままであることから、電子の消費が少なく、電位の発生も低くなる。
【0037】
そこで、熱媒体の腐食防止性を正確に測定するためには、使用ごとに基準電極を新しくするか、熱媒体(酸素や水素原子の量の減少した熱媒体)が付着している部分を削るかのいずれかの方法を採らなければならない。
【0038】
図3及び図4に示す態様は、このような煩雑さを解決するために提案したものであり、カーボンシール11を用い、これを測定毎に端子14の先端部分14aに貼り換えて使用するようにしたのである。
【0039】
図5に示すものは、電気絶縁材としての合成樹脂シート30の一方表面に基準電極としてのカーボンシール11を貼り付けるとともに他方表面に感知電極としてのステンレス泊31を接着したものである。この態様の場合も、測定毎にカーボンシール11を合成樹脂シート30に貼り換えて使用するようになっている。
【0040】
上記基準電極1と感知電極2との間で生じる酸化還元電位は、両電極1、2に結合された電圧応答装置4によって数値化されるようになっている。この場合、感知電極2と電圧応答装置4との間の回路内あるいは電圧応答装置4内部に増幅器を配し、両電極1、2間で生じる酸化還元電位を増幅して、熱媒体における腐食防止性をより高感度で捉えることができるようにしてもよい。
【0041】
尚、両電極と電圧応答装置との間の回路内あるいは電圧応答装置内部に測定値の大小によって熱媒体における腐食防止性の有効性を判断する判定部を設けることもできる。更に、この判定部には測定値が「継続使用不可」のレベルに達したとき、ブザーやランプで警告するシステムを組み込むこともできる。
【0042】
【実施例】
以下にその実施例を表に基づいて説明する。腐食防止性測定に使用する床暖房実機回収液(循環液)についての性状、すなわち循環液中の濃度、pH、金属イオン量、腐食防止剤量を分析して調べ、同時に金属腐食試験も実施し、その結果並びに試験結果に基づく各循環液における腐食防止性の判定結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
尚、循環液における腐食防止性の判定基準は、循環液の性状については、pHが6.5〜11:金属イオン濃度が10ppm以下を各々可(継続使用可能)とし、上記範囲外の場合不可(継続使用不可であり、交換が必要)とした。同様に金属腐食についても、その質量変化(mg/cm2 )アルミ鋳物が±0.3以内、鋳鉄が±0.15以内、鋼が±0.15以内、黄銅±0.15以内、はんだ±0.30以内、銅±0.15以内を各々可とし、上記範囲外の場合不可とした。
【0045】
次に、ステンレス(SUS304)にカーボンシールを貼ったものを基準電極とし、ステンレス(SUS304)、アルミニウム、亜鉛、銅、はんだ、鋼、鋳鉄、クロメートメッキ、ニッケルメッキの各種金属により感知電極を構成して、両電極を各循環液に漬けて皮膜形成に伴う酸化還元電位を測定した。これらの各電極による測定結果を表2に示した。
【0046】
【表2】
電極の説明
(1) 電極はすべて10mm×10mmの100mm2 。
(2) ステンレス(SUS304)、アルミニウム、亜鉛、銅、はんだは#800耐水研磨紙で研磨した後エタノール中で超音波洗浄を行い、乾燥させた後使用。
【0047】
上記表2に示された測定値に基づいて判定基準を設けると、表3のようになる。
【0048】
腐食防止剤の金属に対する皮膜形成に伴う酸化還元電位は、より腐食し難い環境(循環液)、すなわち循環液の腐食防止性が強ければ強いほど大きくなるが、表2より明らかなように、その傾向を示す感知電極はステンレス(304)と銅の2点である。ところが銅は、一般に酸化しやすく銅の状態を維持するのが困難である。このため、ステンレス(SUS304)が基準電極として望ましいことが解る。
【0049】
【発明の効果】
請求項1記載の測定方法は、熱媒体中にカーボンよりなる基準電極とステンレスよりなる感知電極とを両電極が電気的に離隔された状態に配置することで、感知電極側では、熱媒体中にイオンとして存在している安息香酸イオンやリン酸イオンなどの腐食防止剤イオンが電子を放出することでステンレス表面に付着して防錆皮膜を形成すると共に、基準電極側では、上述の反応(1)または反応(2)が生じて電子が消費され、これら基準電極と感知電極との間で生じた酸化還元電位を測定することで、熱媒体の腐食防止性を測定する方法であり、熱媒体の腐食防止性を簡単にしかも正確に測定することができる。
【0050】
また、基準電極としてカーボン、感知電極としてステンレスを用いているので、長期に使用しても電極部分に腐食が発生し難く、常に正確な測定を行うことができる。
【0051】
請求項2記載の測定装置は、熱媒体中にカーボンよりなる基準電極とステンレスよりなる感知電極とを両電極が電気的に離隔された状態に配置することで、感知電極側では、熱媒体中にイオンとして存在している安息香酸イオンやリン酸イオンなどの腐食防止剤イオンが電子を放出することでステンレス表面に付着して防錆皮膜を形成すると共に、基準電極側では、上述の反応(1)または反応(2)が生じて電子が消費され、これら基準電極と感知電極との間で生じた酸化還元電位を測定することで、熱媒体の腐食防止性が測定できるようになっており、熱媒体の腐食防止性を簡単にしかも正確に測定することができる。
【0052】
またこの測定装置は、基準電極がカーボンにより形成されていると共に感知電極がステンレスにより形成されているので、腐食し難く、長期に渡って使用しても常に正確な測定がなされる。
【0053】
またこの測定装置は、カーボンよりなる基準電極と、ステンレスよりなる感知電極と、これら両電極に結合された電圧応答装置の簡易な構成となっているので、手軽に持ち運びができ、必要なときにいつでも何処でも測定ができる。
【0054】
請求項3記載の電極は、カーボンにより形成された基準電極とステンレスにより形成された感知電極とが電気絶縁材を介して一体に設けられていることから、より一層手軽に取り扱うことができる。
【0055】
またこの電極は、基準電極がカーボンにより形成されていると共に感知電極がステンレスにより形成されているので、腐食し難く、長期に渡って使用しても常に正確な測定がなされる。
【0056】
請求項4記載の電極は、基準電極としてカーボンシールを用いていて、これを測定毎に端子の先端部分に貼り換えて使用できるようになっているので、酸素や水素原子の量の減少した熱媒体(電子の消費が既になされた熱媒体)が付着していることで、各電極における電子の消費ができなくなり、正確な測定ができなくなるという恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測定装置を熱媒体(十分な腐食防止性を有するもの)中に配置した状態を模式的に示した模式図。
【図2】本発明の測定装置を熱媒体(腐食防止性が低下したもの)中に配置した状態を模式的に示した模式図。
【図3】本発明の測定装置における電極を示した拡大断面図。
【図4】基準電極としてのカーボンシールを示した要部拡大断面図。
【図5】本発明の測定装置における電極の別例を示した拡大断面図。
【符号の説明】
1・・・基準電極
2・・・感知電極
3・・・防錆皮膜
4・・・電圧応答装置
11・・・カーボンシール
C・・・熱媒体
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する方法、その方法を利用した測定装置及び電極に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、熱媒体を間接的に利用した冷却または冷暖房システムが普及している。例えば冷却システムは、自動車などの内燃機関における冷却装置、ビール工場や乳製品工場における醸造発酵工程、化学品工場における化学反応工程などの冷却装置、製氷工場や冷却倉庫、さらには漁船、コンテナ船における保冷冷却装置、氷蓄熱システムなどに適用されている。
【0003】
一方冷暖房システムは、セントラルヒーティング、ソーラーシステム、床暖房システム、ガスヒートポンプ、スーパーヒートポンプなどの家庭用暖房用、コージェネレーションなどの産業機械用、融雪、融氷、霜取などのロードヒーティング用、工場、ビルなどの大型規模空調システムにおける冷暖房用などに適用されている。
【0004】
これら冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体には、冷却系または冷暖房系に使用されている各種金属が腐食するのを防止するために、腐食防止剤が添加されている。ところが、この腐食防止剤は長期間の使用により、又冷却または冷暖房システムの使用時における熱等により劣化したり、補水により濃度低下を起こしたりして、腐食防止の機能が低下し、冷却系または冷暖房系に使用されている金属が腐食されるという問題がある。このため、一定期間を経過した熱媒体は新液と交換することが行われている。
【0005】
しかしながら、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の晒される状況はその用途によってまちまちであり、一定期間を経過する以前に、既に腐食防止剤が劣化して金属が腐食したり、冷却または冷暖房システムを運転する時間が少なくほとんど劣化していないのに、新しい液と交換してしまい無駄であったりするといった問題が発生している。
【0006】
現在、熱媒体の腐食防止性を測定する方法としては、熱媒体の濃度、pH、熱媒体中の金属イオン量、腐食防止剤量などの熱媒体の性状が使用前の状態から変化したことを熱媒体中の濃度、pH、金属イオン量、腐食防止剤量などを分析して調べる方法がある。又、金属腐食試験を実施し、直接腐食防止性を調べる方法も行われている。
【0007】
しかしながら、熱媒体の性状の変化を調べる方法では、熱媒体の腐食防止性が有効なものなのかどうかを判別する基準が曖昧であり、しかも熱媒体の種類によりその性状も様々で一定しておらず、正確な判定を下すことができないという不具合があった。さらに、この方法にあっては、熱媒体中の濃度、pH、金属イオン量、腐食防止剤量など熱媒体の性状の変化を調べるのに高価な分析機器が必要であり、研究室内でしか実施できない等の問題があった。
【0008】
一方、金属腐食試験を実施して、直接腐食防止性を調べる方法では、専用の設備が必要であり、研究室内でしか実施できないといった問題があった。
【0009】
そこで、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を簡単にしかも正確に測定することができる簡易な測定装置が特公昭63−19815号公報に示されている。この装置は、自動車の冷却装置(ラジエータ)に利用される熱媒体、つまり冷却水の腐食防止性を測定するものであり、冷却水と接触するように配置される銀よりなる基準電極と鋼及びアルミニウムからなる感知電極との間で生じる酸化還元電位を測定し、この電位の大小によって冷却液の腐食防止性の有無の判定ができるようにしたものである。
【0010】
ところが、特公昭63−19815号公報に示された装置は、長期に渡って使用することで電極部分に腐食が発生し、測定された値が真値よりも大きくなってしまうという不具合があり、このため、腐食防止性を十分有する冷却水でも、「新しく交換する必要がある」という誤った判定を下してしまうこともあった。
【0011】
このような事情から、長寿命センサー(電極)を有し、かつ熱媒体の腐食防止性を簡便にしかも正確に測定できる装置が、一般ユーザー、ディーラー、整備業者等から求められているというのが現状であった。
【0012】
本発明は、このような要求に応えるべくなされたものであり、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を、長期に渡って、簡単にしかも正確に測定することができる簡易な測定方法、その方法を使用した測定装置及び電極を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する方法であって、カーボンにより形成されている基準電極と、ステンレスにより形成されている感知電極とを、両電極が電気的に離隔された状態に熱媒体と接触するように配置して、前記感知電極側における防錆皮膜の形成に伴う電子の放出と、基準電極側における電子の消費とを生ぜしめ、これら防錆皮膜の形成に伴う電子の放出及び電子の消費により発生する酸化還元電位を測定することを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定方法をその要旨とした。
【0014】
請求項2記載の発明は、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する装置であって、熱媒体と接触するように配置される基準電極と、同じく熱媒体と接触するように配置され、かつ前記基準電極から電気的に離隔された感知電極と、前記両電極に結合された電圧応答装置とを有しており、前記基準電極がカーボンにより形成されていると共に感知電極がステンレスにより形成されていることを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定装置をその要旨とした。
【0015】
請求項3記載の発明は、冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する装置において、互いに電気的に離隔された状態に熱媒体と接触するように配置される基準電極と感知電極とからなり、前記基準電極がカーボンにより形成されると共に前記感知電極がステンレスにより形成され、かつこれら基準電極と感知電極とが電気絶縁材を介して一体に設けられていることを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定装置における電極をその要旨とした。
【0016】
請求項4記載の発明は、円筒状に設けたステンレスの感知電極の内側に電気絶縁材を介して棒状の端子が配置され、その端子の先端部分が円筒状の感知電極から露出していて、この露出部分にカーボンシールよりなる基準電極が貼着されていることを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定装置における電極をその要旨とした。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性測定方法、その方法を使用した測定装置及び電極を詳細に説明する。本発明の冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性の測定方法(以下単に測定方法という)は、図1に示すように、カーボンにより形成されている基準電極1とステンレスにより形成されている感知電極2とを用いて、これら両電極1、2を電気的に離隔された状態に熱媒体C1と接触するように配置したときに、両電極1、2間に生じる電子の授受に伴う酸化還元電位を測定することで、熱媒体の腐食防止性を把握するというものである。
【0018】
熱媒体には、鋳鉄、銅、アルミニウム、鋼、はんだ、黄銅といった冷却系または冷暖房系の各種金属の腐食を防止するため、その主成分である水、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのアルコール類に加えて、モリブデン酸塩、脂肪酸塩、安息香酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、トリアゾール類、チアゾール類、アミン塩類などの腐食防止剤が含まれている。これらの腐食防止剤は熱媒体中においてイオン化して存在している。
【0019】
この熱媒体C1(十分な腐食防止性を有するもの)中にカーボンよりなる基準電極1とステンレスよりなる感知電極2とを両電極1、2が電気的に離隔された状態に配置すると、感知電極2側では、熱媒体C1中にイオンとして存在している安息香酸イオンやリン酸イオンなどの腐食防止剤イオンが電子を放出することでステンレス表面に付着して皮膜3を形成し、ステンレスの腐食が防止されるようになる。感知電極2は、この防錆皮膜3の形成に伴って安息香酸イオンやリン酸イオンなどの腐食防止剤イオンから電子を受け取るのである(電子の放出)。
【0020】
一方、基準電極1側では、熱媒体C1のpH濃度により下記の2つの反応が起こる。すなわち、
熱媒体C1が中性溶液の場合
1/2O2 +H2O +2e- → 2OH- ・・・(1)(酸素消費型)
熱媒体C1が酸性溶液の場合
2H+ +2e- → H2 ↑ ・・・(2)(水素発生型)
といった反応が生じ、ここに電子の消費が生じることになる。
【0021】
上記の如く、基準電極1と感知電極2との間では酸化還元反応が生じ、これにより感知電極2側がアノードに、基準電極1側がカソードとなって、電子(e- )の流れができ、その電子の量が酸化還元電位として現れることになる。そして、この酸化還元反応により生じた電位を、例えば両電極1、2に電圧応答装置4を結合するなどして数値化し読みとるのである。
【0022】
基準電極と感知電極との間で生じる酸化還元電位は、熱媒体の腐食防止性能が低下すればするほど小さくなる傾向がある。つまり腐食防止性能が低下した熱媒体C2中では、溶存する腐食防止剤イオンの量が少なくなっている。このため、図2に示すように、熱媒体C2中に両電極1、2を配置したとき、感知電極2側における防錆皮膜3は、溶存する腐食防止剤イオンの量だけからしか形成されないため、図1の場合に比べてその防錆皮膜3の量は少なくなり、防錆皮膜3の形成に伴う腐食防止剤イオンからの電子の受け取り量(電子の発生量)も少なくなる。
【0023】
また基準電極1側においても、感知電極2側における防錆皮膜3の形成量が低下し、電子の受け取り量(電子の発生量)が少なくなるに従って上記反応(1)または反応(2)の発生も少なくなり、電子の消費量も減ることになる。
【0024】
このように熱媒体C2における腐食防止性能の低下は、感知電極2側における防錆皮膜3の形成量の低下、基準電極1側における電子の消費量の減少という結果を生ぜしめ、これら両電極1、2間における酸化還元電位が低下するという現象を導くことになる。
【0025】
そして、この熱媒体における腐食防止性能に従って変化する基準電極及び感知電極間における酸化還元電位の大小を捉えることによって熱媒体における腐食防止性の有効性を判断できるようにしたのが本発明の測定方法なのである。
【0026】
次に、本発明の冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性測定装置(以下単に測定装置という)並びに電極について説明する。尚、この測定装置は上述の測定方法をそのまま使用したものであり、ここでの上記測定方法の説明は割愛する。図1に示すようにこの測定装置は、基準電極1と感知電極2と、これら両電極1、2に結合された電圧応答装置4とを有している。
【0027】
基準電極はカーボンにより形成されている。カーボンは熱媒体中で変化せず、しかも導電性材料として安定であることから、熱媒体の腐食防止性の測定用としてきわめて有用である。このカーボンにより形成されている基準電極としては、従来より炭素電極として用いられている人造黒鉛電極、天然黒鉛電極、自焼成電極、炭素質電極など所定の電極形状に成形された市販品を用いることができる。また基準電極は、電極形状に限らず円盤状、管状といった形態に成形することもできる。
【0028】
さらに基準電極は、粉末状、粒状、繊維状のカーボン材料を用いて、これに合成樹脂や合成繊維などの他の材料を複合した態様を採ることもできる。例えば繊維状のカーボンを用いて、これを合成繊維よりなる織物、編物あるいは不織布の構成繊維中に含ませたり、粉末状カーボンを用いて、これを合成繊維よりなる織物、編物あるいは不織布の構成繊維表面または構成繊維間隙に接着剤を介して付着させたりしてなるカーボンシートや、粉末状、粒状、あるいは繊維状のカーボンを樹脂中に分散しておき、これを発泡成形したカーボン入り発泡成形体などを挙げることができる。
【0029】
尚、基準電極として、カーボン材料と複合した態様とするとき、他の材料として上述の電子の交換に影響を及ぼすものは好ましくない。
【0030】
感知電極はステンレス製である。ステンレス鋼は金属(合金)であり、前述の如く熱媒体と接触するように配置したとき、その表面には腐食防止剤の皮膜が形成されるが、ステンレス鋼自体、表面が緻密なクロム酸化物の層に覆われていて腐食し難いという性質を持っている。感知電極にはステンレス鋼として、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、オーステナイト・フェライト系、析出硬化系のいずれの種類のものでも用いることができる。
【0031】
その形態も基準電極と同じく任意であり、棒状、板状、円盤状、管状、シート状など、当該測定装置の用途や大きさなどを考慮して適宜決定すればよい。
【0032】
また感知電極は、薄い箔状に成形しておき、これに合成樹脂シートや合成繊維よりなる織物、編物あるいは不織布を接合して複合一体化した態様を採ることもできる。尚、この場合、感知電極として、合成樹脂シートや合成繊維よりなる織物など、他の材料と複合した態様とするとき、他の材料が上述の電子の交換に影響を及ぼすものは好ましくない。
【0033】
上記基準電極及び感知電極は、これら基準電極と感知電極とが電気絶縁材を介して一体に設けられている態様を採ることができる。例えば図3に示したものは、円筒状に設けたステンレスの感知電極12の内側に電気絶縁材13を介して棒状の端子14が配置され、その端子14の先端部分14aが円筒状の感知電極12から露出していて、この露出した先端部分14aにカーボンシール11よりなる基準電極が貼着されているものである。
【0034】
図4に示すように、カーボンシール11は、合成繊維よりなる不織布20を基材として、この不織布20の構成繊維表面及び繊維間隙にカーボン粉末を接着材を介して付着させたものである。そして、このカーボンシール11の両表面には粘着剤よりなる層22が形成されていて、簡単に被粘着物(この態様では端子14の先端部分14a)に貼り付けることができるようになっている。
【0035】
前述の如くカーボンよりなる基準電極側では、ステンレスよりなる感知電極側で発生した電子を消費する反応(1)または反応(2)が起きている。周知の如くカーボンは微細な孔を持つ多孔質体であり、当該基準電極を熱媒体と接触するように配置したとき、熱媒体は同電極の表面のみならず、孔内にまで入り込み、ここで上記反応(1)または反応(2)が生じることになる。
【0036】
ところが、反応が進むにつれて、基準電極の表面及び内部において、これと接触状態にある熱媒体中の酸素や水素原子の量が減り、電子の消費量が減ることになる。このため、このままの状態で同基準電極を再度用いて腐食防止性を測定しようとしても、基準電極の表面及び内部には、酸素や水素原子の量が少ない熱媒体が付着したままであることから、電子の消費が少なく、電位の発生も低くなる。
【0037】
そこで、熱媒体の腐食防止性を正確に測定するためには、使用ごとに基準電極を新しくするか、熱媒体(酸素や水素原子の量の減少した熱媒体)が付着している部分を削るかのいずれかの方法を採らなければならない。
【0038】
図3及び図4に示す態様は、このような煩雑さを解決するために提案したものであり、カーボンシール11を用い、これを測定毎に端子14の先端部分14aに貼り換えて使用するようにしたのである。
【0039】
図5に示すものは、電気絶縁材としての合成樹脂シート30の一方表面に基準電極としてのカーボンシール11を貼り付けるとともに他方表面に感知電極としてのステンレス泊31を接着したものである。この態様の場合も、測定毎にカーボンシール11を合成樹脂シート30に貼り換えて使用するようになっている。
【0040】
上記基準電極1と感知電極2との間で生じる酸化還元電位は、両電極1、2に結合された電圧応答装置4によって数値化されるようになっている。この場合、感知電極2と電圧応答装置4との間の回路内あるいは電圧応答装置4内部に増幅器を配し、両電極1、2間で生じる酸化還元電位を増幅して、熱媒体における腐食防止性をより高感度で捉えることができるようにしてもよい。
【0041】
尚、両電極と電圧応答装置との間の回路内あるいは電圧応答装置内部に測定値の大小によって熱媒体における腐食防止性の有効性を判断する判定部を設けることもできる。更に、この判定部には測定値が「継続使用不可」のレベルに達したとき、ブザーやランプで警告するシステムを組み込むこともできる。
【0042】
【実施例】
以下にその実施例を表に基づいて説明する。腐食防止性測定に使用する床暖房実機回収液(循環液)についての性状、すなわち循環液中の濃度、pH、金属イオン量、腐食防止剤量を分析して調べ、同時に金属腐食試験も実施し、その結果並びに試験結果に基づく各循環液における腐食防止性の判定結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
尚、循環液における腐食防止性の判定基準は、循環液の性状については、pHが6.5〜11:金属イオン濃度が10ppm以下を各々可(継続使用可能)とし、上記範囲外の場合不可(継続使用不可であり、交換が必要)とした。同様に金属腐食についても、その質量変化(mg/cm2 )アルミ鋳物が±0.3以内、鋳鉄が±0.15以内、鋼が±0.15以内、黄銅±0.15以内、はんだ±0.30以内、銅±0.15以内を各々可とし、上記範囲外の場合不可とした。
【0045】
次に、ステンレス(SUS304)にカーボンシールを貼ったものを基準電極とし、ステンレス(SUS304)、アルミニウム、亜鉛、銅、はんだ、鋼、鋳鉄、クロメートメッキ、ニッケルメッキの各種金属により感知電極を構成して、両電極を各循環液に漬けて皮膜形成に伴う酸化還元電位を測定した。これらの各電極による測定結果を表2に示した。
【0046】
【表2】
電極の説明
(1) 電極はすべて10mm×10mmの100mm2 。
(2) ステンレス(SUS304)、アルミニウム、亜鉛、銅、はんだは#800耐水研磨紙で研磨した後エタノール中で超音波洗浄を行い、乾燥させた後使用。
【0047】
上記表2に示された測定値に基づいて判定基準を設けると、表3のようになる。
【0048】
腐食防止剤の金属に対する皮膜形成に伴う酸化還元電位は、より腐食し難い環境(循環液)、すなわち循環液の腐食防止性が強ければ強いほど大きくなるが、表2より明らかなように、その傾向を示す感知電極はステンレス(304)と銅の2点である。ところが銅は、一般に酸化しやすく銅の状態を維持するのが困難である。このため、ステンレス(SUS304)が基準電極として望ましいことが解る。
【0049】
【発明の効果】
請求項1記載の測定方法は、熱媒体中にカーボンよりなる基準電極とステンレスよりなる感知電極とを両電極が電気的に離隔された状態に配置することで、感知電極側では、熱媒体中にイオンとして存在している安息香酸イオンやリン酸イオンなどの腐食防止剤イオンが電子を放出することでステンレス表面に付着して防錆皮膜を形成すると共に、基準電極側では、上述の反応(1)または反応(2)が生じて電子が消費され、これら基準電極と感知電極との間で生じた酸化還元電位を測定することで、熱媒体の腐食防止性を測定する方法であり、熱媒体の腐食防止性を簡単にしかも正確に測定することができる。
【0050】
また、基準電極としてカーボン、感知電極としてステンレスを用いているので、長期に使用しても電極部分に腐食が発生し難く、常に正確な測定を行うことができる。
【0051】
請求項2記載の測定装置は、熱媒体中にカーボンよりなる基準電極とステンレスよりなる感知電極とを両電極が電気的に離隔された状態に配置することで、感知電極側では、熱媒体中にイオンとして存在している安息香酸イオンやリン酸イオンなどの腐食防止剤イオンが電子を放出することでステンレス表面に付着して防錆皮膜を形成すると共に、基準電極側では、上述の反応(1)または反応(2)が生じて電子が消費され、これら基準電極と感知電極との間で生じた酸化還元電位を測定することで、熱媒体の腐食防止性が測定できるようになっており、熱媒体の腐食防止性を簡単にしかも正確に測定することができる。
【0052】
またこの測定装置は、基準電極がカーボンにより形成されていると共に感知電極がステンレスにより形成されているので、腐食し難く、長期に渡って使用しても常に正確な測定がなされる。
【0053】
またこの測定装置は、カーボンよりなる基準電極と、ステンレスよりなる感知電極と、これら両電極に結合された電圧応答装置の簡易な構成となっているので、手軽に持ち運びができ、必要なときにいつでも何処でも測定ができる。
【0054】
請求項3記載の電極は、カーボンにより形成された基準電極とステンレスにより形成された感知電極とが電気絶縁材を介して一体に設けられていることから、より一層手軽に取り扱うことができる。
【0055】
またこの電極は、基準電極がカーボンにより形成されていると共に感知電極がステンレスにより形成されているので、腐食し難く、長期に渡って使用しても常に正確な測定がなされる。
【0056】
請求項4記載の電極は、基準電極としてカーボンシールを用いていて、これを測定毎に端子の先端部分に貼り換えて使用できるようになっているので、酸素や水素原子の量の減少した熱媒体(電子の消費が既になされた熱媒体)が付着していることで、各電極における電子の消費ができなくなり、正確な測定ができなくなるという恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測定装置を熱媒体(十分な腐食防止性を有するもの)中に配置した状態を模式的に示した模式図。
【図2】本発明の測定装置を熱媒体(腐食防止性が低下したもの)中に配置した状態を模式的に示した模式図。
【図3】本発明の測定装置における電極を示した拡大断面図。
【図4】基準電極としてのカーボンシールを示した要部拡大断面図。
【図5】本発明の測定装置における電極の別例を示した拡大断面図。
【符号の説明】
1・・・基準電極
2・・・感知電極
3・・・防錆皮膜
4・・・電圧応答装置
11・・・カーボンシール
C・・・熱媒体
Claims (4)
- 冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する方法であって、カーボンにより形成されている基準電極と、ステンレスにより形成されている感知電極とを、両電極が電気的に離隔された状態に熱媒体と接触するように配置して、前記感知電極側における防錆皮膜の形成に伴う電子の放出と、基準電極側における電子の消費とを生ぜしめ、これら防錆皮膜の形成に伴う電子の放出及び電子の消費により発生する酸化還元電位を測定することを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定方法。
- 冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する装置であって、熱媒体と接触するように配置される基準電極と、同じく熱媒体と接触するように配置され、かつ前記基準電極から電気的に離隔された感知電極と、前記両電極に結合された電圧応答装置とを有しており、前記基準電極がカーボンにより形成されていると共に感知電極がステンレスにより形成されていることを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定装置。
- 冷却または冷暖房システムに利用される熱媒体の腐食防止性を測定する装置において、互いに電気的に離隔された状態に熱媒体と接触するように配置される基準電極と感知電極とからなり、前記基準電極がカーボンにより形成されると共に前記感知電極がステンレスにより形成され、かつこれら基準電極と感知電極とが電気絶縁材を介して一体に設けられていることを特徴とする熱媒体の腐食防止性測定装置における電極。
- 円筒状に設けたステンレスの感知電極の内側に電気絶縁材を介して棒状の端子が配置され、その端子の先端部分が円筒状の感知電極から露出していて、この露出部分にカーボンシールよりなる基準電極が貼着されていることを特徴とする請求項3記載の熱媒体の腐食防止性測定装置における電極。
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